(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085816
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】転炉吹錬制御方法及び転炉吹錬制御装置
(51)【国際特許分類】
C21C 5/30 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
C21C5/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200561
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 宣子
(72)【発明者】
【氏名】大石 輝希
【テーマコード(参考)】
4K070
【Fターム(参考)】
4K070BD02
4K070BD08
4K070BD12
4K070BE01
4K070BE13
(57)【要約】
【課題】転炉の吹錬処理の操業コストを抑制しつつ、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の何れをも目標値に精度良く適合させる。
【解決手段】本発明に係る転炉吹錬制御方法は、サブランス測定以降、吹錬処理終了時までの、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位、FeO含有副原料の投入量原単位及び冷材の投入量原単位を操作量とし、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値、溶鋼中炭素濃度の推定値及び溶鋼温度の推定値と、前記操作量と、を最適化問題の決定変数とし、前記操作量を用いて計算される吹錬処理の操業コストと、前記推定値を用いて計算される、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティと、の和を最適化問題の目的関数として最適化計算を行うことで、前記操作量の値を決定し、サブランス測定以降に、前記決定された値となるように前記操作量を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉の吹錬処理における操作量を制御する転炉吹錬制御方法であって、
前記吹錬処理中のサブランス測定以降で前記吹錬処理終了時までの、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2、FeO含有副原料の投入量原単位ΔWFeO及び冷材の投入量原単位ΔWcmを操作量とし、
前記吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値PEP、溶鋼中炭素濃度の推定値CEP及び溶鋼温度の推定値TEPと、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmと、を最適化問題の決定変数とし、
前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを用いて計算される前記吹錬処理の操業コストと、前記推定値PEP、CEP及びTEPを用いて計算される、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティと、の和を最適化問題の目的関数とした場合に、
前記目的関数を最小化する最適化計算を行うことで、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定し、
前記サブランス測定以降に、前記決定された値となるように、前記操作量を制御する、
転炉吹錬制御方法。
【請求項2】
転炉の吹錬処理における操作量を制御する転炉吹錬制御装置であって、
前記吹錬処理中のサブランス測定以降で前記吹錬処理終了時までの、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2、FeO含有副原料の投入量原単位ΔWFeO及び冷材の投入量原単位ΔWcmを操作量とし、
前記吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値PEP、溶鋼中炭素濃度の推定値CEP及び溶鋼温度の推定値TEPと、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmと、を最適化問題の決定変数とし、
前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを用いて計算される前記吹錬処理の操業コストと、前記推定値PEP、CEP及びTEPを用いて計算される、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティと、の和を最適化問題の目的関数とした場合に、
前記目的関数を最小化する最適化計算を行うことで、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定し、
前記サブランス測定以降に、前記決定された値となるように、前記操作量を制御する、
転炉吹錬制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉の吹錬処理中のサブランス測定以降で吹錬処理終了時までの、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位、FeO含有副原料の投入量原単位及び冷材の投入量原単位の各操作量を制御する転炉吹錬制御方法及び転炉吹錬制御装置に関する。特に、本発明は、転炉の吹錬処理の操業コストを抑制しつつ、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の何れをも目標値に精度良く適合させることが可能な操作量の値を決定し、決定された値となるように操作量を制御する転炉吹錬制御方法及び転炉吹錬制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転炉の吹錬処理では、吹錬処理終了時(吹き止め時)の溶鋼成分濃度や溶鋼温度を目標値に適合させるために、スタティック制御と、サブランス測定に基づくダイナミック制御とを組み合わせた吹錬制御が行われている。スタティック制御では、吹錬処理の開始前に物質収支・熱収支に基づいた数式モデル等を用いて、吹錬処理終了時の溶鋼成分濃度及び溶鋼温度を目標値に適合させるために必要な吹き込み酸素量や各種副原料の投入量を決定しておき、これに従って吹錬処理を行う。一方、ダイナミック制御では、吹錬処理中にサブランスによって実際に溶鋼温度及び溶鋼中炭素濃度を測定し、物質収支・熱収支に基づいた数式モデル等を用いて、スタティック制御で決定しておいた吹き込み酸素量や各種副原料の投入量を適正化している。さらに、吹錬処理中の排ガス情報(排ガス流量や排ガス成分)を活用して、数式モデルによる溶鋼成分濃度及び溶鋼温度の推定精度を高める手法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、現時点の溶鋼中炭素濃度の推定値及び溶鋼温度の推定値、又は、吹錬処理中のサブランス測定で得られた溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度に基づいて、吹錬処理終了時に目標溶鋼中炭素濃度及び目標溶鋼温度を達成するための吹き込み酸素量、投入するFeO含有副原料及び冷材の量を計算する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、溶鋼中りん濃度が吹錬処理終了時に目標値を達成するか否かは考慮されていない。したがって、特許文献1、2に記載の方法で計算された吹き込み酸素量で溶鋼中りん濃度の目標値を達成できないと考えられる場合には、例えば、オペレータによって吹き込み酸素量の追加を行うことが考えられる。しかしながら、転炉の後工程では脱りんができず、転炉での目標未達時のデメリットが大きいため、結果として過脱りん操業となってしまい、歩留まりの低下や操業コストの悪化を招くという問題がある。
【0004】
特許文献3には、転炉の吹錬処理における排ガス成分及び排ガス流量を定期的に測定し、これらの測定値と操業条件とに基づいて推定される脱りん速度定数を用いて、吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を逐次推定し、推定の結果に応じて操作量を変更することで、吹錬処理終了時の溶鋼中りん濃度の制御精度を高める方法が開示されている。
しかしながら、特許文献3に記載の方法は、吹錬処理毎に変わり得る操業条件の違いを考慮せず、予め変更する操作量に優先順位を定めているため、吹錬処理終了時の溶鋼温度や溶鋼中炭素濃度が目標過達(溶鋼温度が目標値よりも上がり過ぎたり、溶鋼中炭素濃度が目標値よりも下がり過ぎる)となり、結果として操業コストの悪化を招くおそれがある(溶鋼温度が上がり過ぎると、追加のFeO含有副原料及び冷材の投入が必要であったり、転炉耐火物の損耗を加速させたりするおそれがあり、溶鋼中炭素濃度が下がり過ぎると、鉄が燃えるので歩留まりが悪化するおそれがある)。また、副原料の投入が吹錬処理終了までに完了しないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-117090号公報
【特許文献2】特開2006-233324号公報
【特許文献3】特開2013-23696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、転炉の吹錬処理の操業コストを抑制しつつ、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の何れをも目標値に精度良く適合させることが可能な操作量の値を決定し、決定された値となるように操作量を制御する転炉吹錬制御方法及び転炉吹錬制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、転炉の吹錬処理における操作量を制御する転炉吹錬制御方法であって、前記吹錬処理中のサブランス測定以降で前記吹錬処理終了時までの、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2、FeO含有副原料の投入量原単位ΔWFeO及び冷材の投入量原単位ΔWcmを操作量とし、前記吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値PEP、溶鋼中炭素濃度の推定値CEP及び溶鋼温度の推定値TEPと、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmと、を最適化問題の決定変数とし、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを用いて計算される前記吹錬処理の操業コストと、前記推定値PEP、CEP及びTEPを用いて計算される、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティと、の和を最適化問題の目的関数とした場合に、前記目的関数を最小化する最適化計算を行うことで、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定し、前記サブランス測定以降に、前記決定された値となるように、前記操作量を制御する、転炉吹錬制御方法を提供する。
【0008】
前述のダイナミック制御において、吹錬処理終了時における溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度を目標値に適合させるための操作は、一般的に、上吹きランスからの吹き込み酸素量の調整と、冷材の投入量の調整である。一方、吹錬処理終了時における溶鋼中りん濃度を目標値に適合させための操作は、一般的に、上吹きランスからの吹き込み酸素量の調整と、FeO含有副原料の投入量の調整である。すなわち、ダイナミック制御において、上吹きランスからの吹き込み酸素量の調整を行うと、溶鋼中炭素濃度、溶鋼中りん濃度及び溶鋼温度の全てが変化し、FeO含有副原料の投入量の調整を行うと、溶鋼中りん濃度及び溶鋼温度が変化することになる。
このため、本発明によれば、サブランス測定以降で吹錬処理終了時までの、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2、FeO含有副原料の投入量原単位ΔWFeO及び冷材の投入量原単位ΔWcmが、吹錬処理における操作量とされる。そして、これらの各操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmと、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値PEP、溶鋼中炭素濃度の推定値CEP及び溶鋼温度の推定値TEPとが、最適化問題の決定変数とされ、各操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを用いて計算される吹錬処理の操業コストと、各推定値PEP、CEP及びTEPを用いて計算されるこれらの目標値からのずれに対するペナルティとの和が最適化問題の目的関数とされる。
本発明によれば、上記の目的関数を最小化する最適化計算を行うことで、各操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値が決定される。すなわち、吹錬処理の操業コストと、目標値からのずれに対するペナルティとの双方を小さくする、各操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値が決定される。このため、決定された値となるように、各操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを制御することで、操業コストを抑制しつつ、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の何れをも目標値に精度良く適合させることが可能である。
なお、「サブランス測定」とは、サブランスを用いた溶鋼中炭素濃度や溶鋼温度の測定を意味する。
また、「累積吹き込み酸素量原単位」とは、吹き込まれた溶鋼の単位重量当たりの酸素量の累積値、すなわち、吹き込まれた酸素量の累積値を転炉内の溶鋼の重量で除算した値を意味する。
また、「投入量原単位」とは、投入量を転炉内の溶鋼の重量で除算した値を意味する。
さらに、「冷材」とは、溶鋼温度を下げるために用いられる副原料であり、一般的にはFeO含有副原料も含まれるが、本明細書では、FeO含有副原料以外の副原料(鉄源)に限定した意味で用いる。
【0009】
また、前記課題を解決するため、本発明は、転炉の吹錬処理における操作量を制御する転炉吹錬制御装置であって、前記吹錬処理中のサブランス測定以降で前記吹錬処理終了時までの、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2、FeO含有副原料の投入量原単位ΔWFeO及び冷材の投入量原単位ΔWcmを操作量とし、前記吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値PEP、溶鋼中炭素濃度の推定値CEP及び溶鋼温度の推定値TEPと、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmと、を最適化問題の決定変数とし、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを用いて計算される前記吹錬処理の操業コストと、前記推定値PEP、CEP及びTEPを用いて計算される、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティと、の和を最適化問題の目的関数とした場合に、前記目的関数を最小化する最適化計算を行うことで、前記操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定し、前記サブランス測定以降に、前記決定された値となるように、前記操作量を制御する、転炉吹錬制御装置としても提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転炉の吹錬処理の操業コストを抑制しつつ、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の何れをも目標値に精度良く適合させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る転炉吹錬制御装置を備えた精錬設備の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す精錬設備を用いた、本発明の第1実施形態に係る転炉吹錬制御方法の概略工程を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す第1実施形態の演算装置30が実行する最適化計算の対象となる最適化問題の決定変数の定義を説明する図である。
【
図4】
図1に示す第1実施形態の演算装置30が取り扱う他の変数の定義を説明する図である。
【
図5】
図1に示す第1実施形態の演算装置30が取り扱う他の変数の定義を説明する図である。
【
図6】
図1に示す第1実施形態の操業データ321の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示す第1実施形態の初期値計算部333が実行する計算手順の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る転炉吹錬制御装置を備えた精錬設備の概略構成を模式的に示す図である。
【
図9】
図8に示す精錬設備を用いた、本発明の第2実施形態に係る転炉吹錬制御方法の概略工程を示すフローチャートである。
【
図10】
図8に示す第2実施形態の演算装置30が実行する最適化計算の対象となる最適化問題の決定変数の定義を説明する図である。
【
図11】
図8に示す第2実施形態の演算装置30が取り扱う他の変数の定義を示す図である。
【
図12】
図8に示す第2実施形態の演算装置30が取り扱う他の変数の定義を示す図である。
【
図13】
図8に示す第2実施形態の操業データ321の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成や機能を有する構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る転炉吹錬制御装置を備えた精錬設備の概略構成を模式的に示す図である。
図2は、
図1に示す精錬設備を用いた、本発明の第1実施形態に係る転炉吹錬制御方法の概略工程を示すフローチャートである。
第1実施形態は、最適化計算を、吹錬処理中のサブランス測定時に1度実行する形態である。本発明では、最適化計算に、吹錬処理中のサブランス測定で取得した溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度を使用するため、
図2に示すように、吹錬処理中のサブランス測定を実施するまで(
図2のステップST2で「YES」になるまで)は、吹錬処理中の操業データの収集(
図2のステップST1)を繰り返す。そして、第1実施形態では、サブランス測定の実施を起点として、1度だけ最適化計算(ST3)を実行し、サブランス測定以降で吹錬処理終了時までの操作量の値を決定する。
以下、
図1を参照して、第1実施形態について、具体的に説明する。
【0014】
図1に示すように、第1実施形態の精錬設備100は、転炉設備10と、計測制御装置20と、演算装置30と、を備える。第1実施形態において、計測制御装置20の制御系及び演算装置30は、本発明に係る転炉吹錬制御装置としても機能する。演算装置30は、転炉の吹錬処理の操業を繰り返しながら、吹錬処理に関する操業データを蓄積する。また、演算装置30は、サブランス測定以降で吹錬処理終了時までに必要な操作量の値を最適化計算によって決定する。計測制御装置20の制御系は、演算装置30で決定した操作量の値となるように、操作量を制御する。以下、精錬設備100の各構成要素について、具体的に説明する。
【0015】
転炉設備10は、転炉11と、上吹きランス12と、煙道13と、底吹き羽口14と、投入シュート15を有する投入装置と、を具備する。転炉設備10では、転炉11の炉口から挿入された上吹きランス12が、転炉11内の溶銑MSに酸素ガスG1を吹き込む。吹錬処理で起こる脱炭反応では、溶銑MS内の炭素が酸素ガスG1と反応することによって、COガス又はCO2ガスが生成され、これらのガスは煙道13を経由して排出される。吹錬処理を経た溶銑MSは、溶鋼MIとして次工程に送られる。また、吹錬処理では、溶銑MS内のりん及びケイ素も、酸素ガスG1、又はスラグSLに含まれる副原料と反応し、スラグSL中に取り込まれて安定化する。一方、底吹き羽口14からは、窒素ガスやアルゴンガスなどの底吹きガスG2が吹き込まれて溶銑MSを攪拌し、上記の反応を促進する。投入装置の投入シュート15からは、スラグSLを構成する生石灰や石灰石、FeO含有副原料や冷材を含む副原料AMを転炉11内に投入する。なお、副原料AMが粉体である場合には、上吹きランス12を用いて酸素ガスG1と共に吹き込むことも可能である。
【0016】
計測制御装置20は、転炉設備10における精錬処理に関する各種の計測及び精錬処理の制御を実行する。
具体的には、計測制御装置20は、計測系として、サブランス21と、排ガス分析計22と、排ガス流量計23と、スラグレベル計28と、を具備する。サブランス21は、上吹きランス12と共に転炉11の炉口から挿入され、先端に設けられた測定装置を吹錬処理中の所定のタイミングで溶鋼MIに浸漬させることによって、溶鋼MIの成分分析用のサンプルを採取したり、溶鋼MIの炭素濃度や温度を測定したりする。このようなサブランス21を用いた測定を、サブランス測定という。排ガス分析計22は、煙道13を経由して排出されるガスの成分を分析する。具体的には、排ガス分析計22は、排ガスに含まれるCO、CO2及びO2の濃度(各成分の濃度を排ガス成分濃度と称する)を測定する。一方、排ガス流量計23は、煙道13を経由して排出されるガスの流量(排ガス流量と称する)を測定する。スラグレベル計28は、転炉11内のスラグSLのレベルを、転炉11の炉口から非接触式で測定する。上記のサブランス測定の結果、並びに排ガス分析計22、排ガス流量計23及びスラグレベル計28の測定結果は、演算装置30に送信(具体的には、後述の通信部31に送信)される。
【0017】
一方、計測制御装置20は、制御系として、ランス駆動装置24と、酸素供給装置25と、底吹きガス供給装置26と、投入制御装置27と、を具備する。ランス駆動装置24は、上吹きランス12を上下方向に駆動する。これによって、上吹きランス12の高さ(すなわち、転炉11内で酸素ガスG1が供給される位置の溶銑MSからの距離)を調節することができる。酸素供給装置25は、上吹きランス12に酸素ガスG1を供給する。吹込み酸素流量、すなわち供給される酸素ガスG1の単位時間あたりの流量は調節可能である。底吹きガス供給装置26は、底吹き羽口14に底吹きガスG2を供給する。供給される底吹きガスG2の流量も調節可能である。投入制御装置27は、投入装置の投入シュート15からの副原料AMの投入を制御する。具体的には、投入制御装置27は、副原料AMの投入タイミング及び投入量を制御する。上記のランス駆動装置24、酸素供給装置25、底吹きガス供給装置26及び投入制御装置27の動作は、演算装置30とは別個に制御可能であってもよいし、
図1に示すように、演算装置30からの(具体的には、後述の通信部31から送信された)制御信号に従って制御可能であってもよい。
【0018】
演算装置30は、通信部31と、記憶部32と、演算部33と、入出力部34と、を具備し、例えば、コンピュータによって構成される。通信部31は、計測制御装置20の各構成要素と有線又は無線で通信する各種の通信装置であり、計測制御装置20で得られた測定結果を受信すると共に、計測制御装置20に制御信号を送信する。通信部31は、計測制御装置20と異なる外部装置と通信可能であってもよい。
【0019】
以下、演算装置30の各部の具体的な内容について説明するが、その前に、演算装置30で取り扱う変数の定義を示す。
図3は、第1実施形態の演算装置30が実行する最適化計算の対象となる最適化問題の決定変数の定義を説明する図である。
図3に示す決定変数のうち、ΔO
2、ΔW
FeO及びΔW
cmが、吹錬処理の操作量となる。
図4及び
図5は、第1実施形態の演算装置30が取り扱う他の変数の定義を説明する図である。以下の説明では、
図3~
図5に記載の変数を用いるが、その意味については、
図3~
図5に記載の定義を参照することとし、明細書では、その説明を適宜省略する。
【0020】
記憶部32は、各種のデータを格納することが可能なストレージである。第1実施形態の記憶部32には、転炉11の吹錬処理に関する操業データ321、パラメータ322及び最適化初期値323が格納される。
図6は、操業データ321の一例を示す図である。
図6に示す例では、操業データ321は、吹錬処理毎に決められるチャージ番号(CHNO)をキーとして、同じチャージ番号の吹錬処理に関する各種の操業データが同一の行に格納されていくものである(
図6では、図示の便宜上、2段に分けて示している)。操業データ321の中には、後述の最適化計算で使用される各種の操業データが含まれる。
例えば、操業データ321の中には、主原料総重量Wst[ton]として、後述のデータ前処理部332によって計算された、転炉11に装入された主原料(精錬を実施する対象)の重量の合計値が格納される。主原料は、例えば、溶銑、スクラップなどである。
また、操業データ321の中には、吹錬処理開始から吹錬処理中のサブランス測定までに、上吹きランス12から吹き込まれた累積吹き込み酸素量(酸素量の累積値)V
O2L[Nm
3]や、底吹き羽口14から吹き込まれた累積吹き込み酸素量V
O2b[Nm
3]が格納される。累積吹き込み酸素量は、吹き込まれた酸素量の計測値(例えば、酸素供給装置25や底吹きガス供給装置26が酸素量を計測するセンサを具備する場合、そのセンサの計測値)があればその値を用い、計測値が無ければ酸素供給装置25及び底吹ガス供給装置26の指示値を用いて、データ前処理部332が計算可能である。
また、操業データ321の中には、吹錬処理開始から吹錬処理中のサブランス測定までに副原料(FeO含有副原料や冷材を含む、投入された全ての副原料)から発生した発生酸素量V
auO2[Nm
3]が格納される。V
auO2は、本発明者らが出願した特願2022-106342号の式(10)に記載のように、副原料の銘柄毎の投入量(投入重量)[kg]と、副原料の銘柄毎の単位重量当たりの含有酸素量(含有酸素体積)[Nm
3/kg]との積の、全銘柄についての総和を求めることで、データ前処理部332が計算可能である。
さらに、操業データ321の中には、吹錬処理中のサブランス測定以降で、吹錬処理終了時までの、上吹きランス12からの酸素供給スピード設定値F
O2SL[Nm
3/sec]及び底吹き羽口14からの酸素供給スピード設定値F
O2SLb[Nm
3/sec]が格納される。
図6に示す例では、サブランス測定以降で、吹錬処理終了時までの酸素供給スピード設定値が一定値であるとして、それぞれ1項目にしているが、サブランス測定以降で、吹錬処理終了時までに酸素供給スピード設定値が何段階かに変化する場合には、その全ての設定値と設定変更のタイミング(累積吹き込み酸素量等)とを、操業データ321として格納すればよい。
【0021】
パラメータ322は、吹錬処理毎に(チャージ番号毎に)整理された操業データ321とは別に記憶部32に格納される。パラメータ322としては、前述の
図4又は
図5に示す、後述の統計モデルに使用するパラメータであるC
cr、k
2、k
P、k
Tや、後述の最適化計算に使用する定数C
L、O
2auFeO、O
2aucm、I
FeO、I
cm、ct
Feo、ct
cm、tt
FeO、tt
cm、mt
FeO、mt
cm、cost_O2、cost_FeO、cost_cm、cost_p、cost_c、cost_Tが格納される。本実施形態では、FeO含有副原料及び冷材がそれぞれ1銘柄であるとして、定数O
2auFeO、O
2aucm、I
FeO、I
cm、ct
Feo、ct
cm、tt
FeO、tt
cm、mt
FeO、mt
cmを定義しているが、複数銘柄存在する場合には、銘柄毎の定数をパラメータ322として記憶部32に格納すればよい。
【0022】
最適化初期値323は、操業データ321やパラメータ322とは別に記憶部32に格納される。最適化初期値323としては、前述の
図3に示す最適化問題の決定変数ΔO
2、ΔW
FeO、ΔW
cm、P
EP、C
EP、T
EPに設定する初期値が格納される。本実施形態では、初期値は、初期値計算部333によって後述の
図7に示すような手順で決定するが、予め決めた定数にしてもよい。
【0023】
演算部33は、例えば、CPU(Central Processing Unit)など一又はそれ以上の数のハードウェアプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)など一又はそれ以上の数のメモリーを具備し、メモリーに格納される一又はそれ以上の数のプログラムが一又はそれ以上の数のハードウェアプロセッサにより実行されることで各種の演算を実行する。演算部33は、格納されたプログラムに従って動作することにより、データ収集部331、データ前処理部332、初期値計算部333及び最適化計算部334として機能する。なお、演算部33は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアによって実現してもよい。以下、演算部33によって実現される各部の機能について説明する。
【0024】
データ収集部331は、記憶部32に格納される操業データ321を収集する。具体的には、例えば、吹錬処理開始前に判明する溶銑重量等のデータは、吹錬処理開始前に外部装置(
図1には図示せず)に格納された転炉吹錬データベースから通信部31を介してデータ収集部331で取得され、データ収集部331によって操業データ321の当該吹錬処理(CHNO)の行の該当項目内に格納される。吹錬処理開始以降には、計測制御装置20が具備する計測系の各種装置によって取得されたデータが、通信部31を介してデータ収集部331で取得され、データ収集部331によって操業データ321の当該吹錬処理(CHNO)の行の該当項目内に格納される。
【0025】
データ前処理部332は、上記の操業データ321の前処理を実施する。例えば、データ前処理部332は、吹錬処理開始から吹錬処理終了までに定周期でデータ収集部331によって取得されたデータを、平均計算したり、累積計算したり、様々な数値処理を行い、データ収集部331がデータ前処理部332による前処理を経たデータを操業データ321の当該吹錬処理(CHNO)行の該当項目内に格納する。また、データ前処理部332は、データの正規化処理を実行してもよい。なお、以下の説明では、データ前処理部332による前処理を経たデータについても操業データ321として扱うが、記憶部32には前処理されていないこれらのデータと前処理を経たデータとが別に格納されていてもよい。
【0026】
初期値計算部333は、操業データ321及びパラメータ322から必要なデータを抽出して、後述の
図7に示すような手順を実行し、最適化計算の決定変数に設定する初期値を計算する。詳細については、後述する。
【0027】
最適化計算部334は、吹錬処理中のサブランス測定で溶鋼中炭素濃度CSLや溶鋼温度TSLを取得した後、操業データ321、パラメータ322及び最適化初期値323から必要なデータを抽出して、最適化計算を実行する。以下、最適化計算部334が実行する最適化計算について説明する。
【0028】
最適化計算部334が実行する最適化計算の対象となる最適化問題の目的関数Jは、以下の式(1)で表される。
J=ΔO2×Wst×cost_O2+ΔWFeO×Wst×cost_FeO+ΔWcm×Wst×cost_cm+(PAIM-PEP)2×cost_p+(CAIM-CEP)2×cost_c+(TAIM-TEP)2×cost_T ・・・(1)
上記の式(1)において、最適化問題の決定変数は、ΔO2、ΔWFeO、ΔWcm、PEP、CEP、TEPである。式(1)の右辺の第1~第3項が、値を決定した操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmに対する吹錬処理の操業コストを表しており、第4~第6項が、吹錬処理終了時における溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティを表している。すなわち、最適化問題の目的関数Jは、吹錬処理の操業コストと、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティとの和で表されている。
最適化計算部334は、後述の制約条件下で、上記の式(1)で表される目的関数Jを最小化する最適化計算を行うことで、操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定する。なお、例えば、式(1)のペナルティに関わるコスト係数cost_p、cost_c及びcost_Tを大きく設定すれば、最適計算を行うことで、目標値と一致する溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度が得られる。
なお、最適化計算部334が実行する最適化計算としては、公知の二次計画法など、種々の計算方法を適用可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0029】
上記の最適化問題の制約条件としては、以下に説明する式(2)~式(23)が挙げられる。ただし、これに限るものではなく、吹錬処理の操業上、更に必要な制約条件があれば、適宜追加すればよい。以下、制約条件について、順次説明する。
【0030】
決定変数の一つである吹錬処理終了時における溶鋼中りん濃度の推定値PEPは、以下の式(2)~式(7)に従って計算される。
PEP=Piniexp(-kP×(ΔO2+O2SL+O2SLS)) ・・・(2)
O2SL=(VO2L+VO2b+VauO2)/Wst ・・・(3)
O2SLS=(VbO2SLS+VauO2SLS)/Wst ・・・(4)
VbO2SLS=FO2SLb×(ΔO2×Wst/FO2SL) ・・・(5)
VauO2SLS=O2auFeO×ΔWFeO×Wst+O2aucm×ΔWcm×Wst ・・・(6)
kP=f11(ΔWFeO) ・・・(7)
【0031】
上記の式(2)は、本発明者らが出願した特願2022-106342号の式(6)における吹錬処理開始からの累積酸素供給量原単位O2[Nm3/ton]を、サブランス測定以降で吹錬処理終了時までの上吹きランス12から累積吹き込み酸素量原単位ΔO2、吹錬処理開始からサブランス測定までの累積酸素供給量原単位O2SL、サブランス測定以降で吹錬処理終了時までに底吹き羽口14から吹き込まれる累積吹き込み酸素量原単位と副原料から発生する発生酸素量原単位との合計の予定値O2SLSの3つに分解して表したものであり、考え方は特願2022-106342号の式(6)と同じである。
具体的には、特許文献3に記載のような従来技術では、溶鋼中りん濃度を推定する際に、溶鋼中りん濃度の単位時間当たりの変化量が溶鋼中りん濃度に比例すると仮定し、その比例定数を脱りん速度定数kPとして定義している。この場合には、吹錬処理の途中で吹錬処理を停止する場合に、脱りん速度定数kPの推定誤差、ひいては溶鋼中りん濃度の推定誤差が大きくなってしまうおそれがあった。このため、特願2022-106342号では、転炉に供給された累積酸素供給量原単位に対する溶鋼中りん濃度の変化量が溶鋼中りん濃度に比例すると仮定した場合の比例定数を脱りん速度定数kPとして定義することで、吹錬処理の途中で吹錬処理を停止する場合であっても、脱りん速度定数kPを精度良く推定でき、ひいては溶鋼中りん濃度を精度良く推定している。上記の式(2)に示す脱りん速度定数kPは、この特願2022-106342号と同様に、累積酸素供給量原単位に対する溶鋼中りん濃度の変化量が溶鋼中りん濃度に比例すると仮定した場合の比例定数として表されている。
【0032】
上記の式(7)は、特願2022-106342号の式(4)と同様に、脱りん速度定数kpを目的変数とし、最適化計算の対象となる吹錬処理に関する操業データを説明変数とする統計モデル(重回帰式f11)を表しており、予め構築されて、記憶部32に格納され、最適化計算部334で用いられる。以下の式(A)で表される脱りん反応は、スラグSL中のFeO濃度が高くなると促進されるため、本実施形態では統計モデルの説明変数の1つに、最適化問題の決定変数であるΔWFeOを必ず含むように、統計モデルを構築している。
3(CaO)+5(FeO)+2[P]=(3CaO・P2O5)+5[Fe] ・・・(A)
上記の式(A)において、( )はスラグSL内を示し、[ ]は溶銑MS内を意味する。
【0033】
決定変数の一つである吹錬処理終了時における溶鋼中炭素濃度の推定値C
EPは、以下の式(8)~式(10)に従って計算される。
【数1】
C
cr=f
12(X
i) ・・・(9)
k
2=f
13(X
i) ・・・(10)
【0034】
上記の式(8)は、特許文献1の式(2)と同一である。
上記の式(9)は、特許文献1の式(3)と同様の式であり、脱炭酸素効率減衰定数Ccrを目的変数とし、最適化計算の対象となる吹錬処理に関する操業データを説明変数Xiとする統計モデル(重回帰式f12)を表しており、予め構築されて、記憶部32に格納され、最適化計算部334で用いられる。
上記の式(10)は、特許文献1の式(4)と同様の式であり、最大脱炭酸素効率k2を目的変数とし、最適化計算の対象となる吹錬処理に関する操業データを説明変数Xiとする統計モデル(重回帰式f13)を表しており、予め構築されて、記憶部32に格納され、最適化計算部334で用いられる。
【0035】
決定変数の一つである吹錬処理終了時における溶鋼温度の推定値TEPは、以下の式(11)、式(12)に従って計算される。
TEP=TSL+kT×ΔO2-(ΔWFeO×IFeO+ΔWcm×Icm) ・・・(11)
kT=f14(Xi) ・・・(12)
【0036】
上記の式(11)及び式(12)は、吹錬処理中のサブランス測定以降の温度モデルを表している。式(11)では、サブランス測定以降の温度上昇量[℃]が、上吹きランスからの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2[Nm3/ton]に昇温効率kT[℃/(Nm3/ton)]を乗算することで表現できると仮定している。温度上昇量は、溶鋼中の成分など、各種操業条件によって変化することが考えられるため、式(12)に示すように、昇温効率kTは、昇温効率kTを目的変数とし、最適化計算の対象となる吹錬処理に関する操業データを説明変数Xiとする統計モデル(重回帰式f14)によって吹錬処理毎に推定される。この統計モデルは、予め構築されて、記憶部32に格納され、最適化計算部334で用いられる。
また、式(11)では、吹錬処理中のサブランス測定以降の温度降下量[℃]が、投入した副原料(FeO含有副原料及び冷材)によって表現できると仮定している。副原料の銘柄毎に、冷却係数IFeO、Icm[℃/(kg/ton)]が定義されているため、吹錬中のサブランス測定以降で、吹錬処理終了時までの、副原料の投入量原単位ΔWFeO、ΔWcmに、それぞれIFeO、Icmを乗算して、温度降下量を計算する。
すなわち、式(11)に示すように、吹錬処理終了時における溶鋼温度の推定値TEPは、サブランス測定で得た溶鋼温度TSLに、サブランス測定以降の温度上昇量を加算し、サブランス測定以降の温度降下量を減算することで計算される。
【0037】
吹錬処理終了時において、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度が目標値に到達するには、以下の式(13)~式(15)を満足することが必要である。
PAIM≧PEP ・・・(13)
CAIM≧CEP ・・・(14)
TAIM≦TEP ・・・(15)
【0038】
サブランス測定以降で吹錬処理終了時までに、副原料(FeO含有副原料、冷材)を投入するのに要する時間は、上吹きランス12からの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2の吹き込みが終了するまでに要する時間以下である必要があるため、以下の式(16)及び式(17)を満足することが必要である。
ΔO2×Wst/FO2SL≧ΔWFeO×Wst×ctFeO+ttFeO+ΔWFeO×mtFeO ・・・(16)
ΔO2×Wst/FO2SL≧ΔWcm×Wst×ctcm+ttcm+ΔWcm×mtcm ・・・(17)
【0039】
各操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmは、0以上の値である必要があるため、以下の式(18)~式(20)を満足することが必要である。
ΔO2≧0 ・・・(18)
ΔWFeO≧0 ・・・(19)
ΔWcm≧0 ・・・(20)
【0040】
吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値PEP、溶鋼中炭素濃度の推定値CEP及び溶鋼温度の推定値TEPは、0以上の値である必要があるため、以下の式(21)~式(23)を満足することが必要である。
PEP≧0 ・・(21)
CEP≧0 ・・・(22)
TEP≧0 ・・・(23)
【0041】
最適化計算部334は、以上に説明した式(1)~式(23)で表される最適化問題を解くことで、吹錬処理の操業コストと、目標値からのずれに対するペナルティとの双方を小さくする操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定することができる。そして、計測制御装置20の制御系が、サブランス測定以降に、最適化計算部334で決定した操作量の値となるように、操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを制御することで、操業コストを抑制しつつ、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の何れをも目標値に精度良く適合させることが可能である。
【0042】
なお、本実施形態では、FeO含有副原料と冷材とを、それぞれ1銘柄として定式化しているが、複数銘柄の副原料が存在する場合には、その全ての銘柄について、前述と同様の目的関数・制約条件を考慮すればよい。また、式(16)、式(17)で用いられる溶解時間係数mt
FeO、mt
cmについては、温度によってその値が変化することが考えられるため、以下の表1に示すようなデータテーブルを記憶部32に格納し、温度区分毎に定義してもよい。
【表1】
【0043】
以下、
図7を参照しつつ、初期値計算部333が実行する、最適化計算の決定変数に設定する初期値の計算手順について説明する。
図7は、初期値計算部333が実行する計算手順の一例を概略的に示すフローチャートである。
図7に示す計算手順(ステップST31~ST39)は、特許文献1の「制御工程S3」に記載の手順を一部利用した手順(ステップST31~ST36が特許文献1に記載の手順)である。
なお、操作量ΔO
2、ΔW
FeO及びΔW
cmの初期値には、
図7に示す計算手順で決定した値を設定してもよいし、直近の実績値の平均値を設定してもよいし、全て0にしてもよい。吹錬処理終了時における推定値P
EP、C
EP及びT
EPの初期値には、
図7に示す計算手順で決定した操作量ΔO
2、ΔW
FeO及びΔW
cmの初期値を、前述の式(2)、式(8)及び式(12)に代入して求まる値を設定すればよい。
【0044】
図7に示すように、初期値計算部333は、サブランス測定で取得した溶鋼中炭素濃度C
SL(
図7のステップST31)から、吹錬処理終了時における目標溶鋼中炭素濃度C
AIMになるための必要な累積吹き込み酸素量原単位ΔO
2を計算する(
図7のステップST32)。具体的には、前述の式(8)のC
EPにC
AIMを代入して、累積吹き込み酸素量原単位ΔO
2を計算する。
次に、計算したΔO
2を用いて、吹錬処理終了時における溶鋼温度の推定値T
EPを計算する(
図7のステップST33)。具体的には、前述の式(11)に上記のΔO
2を代入して、T
EPを計算する(この際、式(11)のΔW
FeO及びΔW
cmには0を代入する)。計算したT
EPと、吹錬処理終了時における目標溶鋼温度T
AIMとを比較し、T
EP>T
AIMであれば(
図7のステップST34で「YES」であれば)、必要な冷材の投入量原単位ΔW
cmを計算する(
図7のステップST35)。具体的には、上記の式(11)から、サブランス測定以降に冷材を投入しない場合(すなわち、ΔW
cm=0の場合)の溶鋼温度の推定値T
EP’は、以下の式(24)で表される。これを用いて、必要となる冷材の投入量原単位ΔW
cmは、以下の式(25)で表される。
T
EP’=T
SL+k
T×ΔO
2-ΔW
FeO×I
FeO ・・・(24)
ΔW
cm=(T
EP’-T
AIM)/I
cm ・・・(25)
上記の式(25)のT
EP’に上記のT
EPを代入し、必要な冷材の投入量原単位ΔW
cmを計算する。一方、T
EP≦T
AIMであれば(
図7のステップST34で「NO」であれば)、目標溶鋼温度T
AIMを達成するのに必要な酸素量原単位を再計算する(
図7のステップST36)。具体的には、前述の式(11)のT
EPにT
AIMを代入してΔO
2について解き、目標溶鋼温度T
AIMを達成するのに必要な酸素量原単位としてΔO
2を更新する。
【0045】
以上の手順(
図7のステップST31~ST36)が特許文献1に記載の手順である。
図7に示す計算手順では、前述の式(2)を用いて、更にΔO
2を再計算する(
図7のステップST37)。具体的には、それまでに計算したΔO
2を式(2)に代入し、吹錬処理終了時における溶鋼中りん濃度の推定値P
EPを計算する。そして、P
EP≧P
AIMであれば(
図7のステップST38で「NO」であれば)、必要な酸素量原単位を再計算する(
図7のステップST39)。具体的には、式(2)のP
EPにP
AIMを代入してΔO
2について解き、目標溶鋼中りん濃度P
AIMを達成するのに必要な酸素量原単位としてΔO
2を更新する。
なお、
図7に示す例では、ΔW
FeOの初期値を0にすることを前提としている。ただし、これに限るものではなく、ΔW
cmの初期値を0にすることを前提として、
図7と同様の計算手順を実行することも可能である。
【0046】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態に係る転炉吹錬制御装置を備えた精錬設備の概略構成を模式的に示す図である。
図9は、
図8に示す精錬設備を用いた、本発明の第2実施形態に係る転炉吹錬制御方法の概略工程を示すフローチャートである。
第2実施形態は、最適化計算を、吹錬処理中のサブランス測定以降、所定の周期で吹錬処理終了時まで逐次実行する形態である点が、第1実施形態と異なる。
図9に示すように、吹錬処理中のサブランス測定を実施するまで(
図9のステップST2で「YES」になるまで)は、吹錬処理中の操業データの収集(
図9のステップST1)を繰り返す点は、第1実施形態と同じである。そして、第2実施形態では、吹錬処理が終了するまで(
図9のステップST4で「NO」になるまで)、最適化計算(ST3)を所定の周期で繰り返し実行し、操作量の値を決定する。
所定の周期で最適化計算を実行する(再計算する)ことのメリットとして、吹錬中のサブランス測定以降に得られる操業データを利用可能な点が挙げられる。このような、操業データは、例えば、排ガス流量や排ガス成分等の計測データや、上吹ランス12及び底吹羽口14からの累積吹き込み酸素量等の実績データである。これらのデータを統計モデルの説明変数として使用することで、脱りん速度定数k
p等をより精度よく推定可能であり、その結果、最適化計算で値を決定する必要な操作量の精度も向上すると考えられる。
以下、第2実施形態について、主に第1実施形態と相違する点を具体的に説明する。
【0047】
第2実施形態のように、所定の周期で最適化計算を繰り返す場合、決定される各操作量の値は、計算時点から吹錬処理終了時までの値となる(第1実施形態では、吹錬中のサブランス測定時から吹錬処理終了時までの値である)。最適化計算の基本的な考え方は、第1実施形態と同じであるが、計算の起点が異なるため、演算装置30で取り扱う変数の定義や式が第1実施形態と異なる。
図10は、第2実施形態の演算装置30が実行する最適化計算の対象となる最適化問題の決定変数の定義を説明する図である。
図10に示す決定変数のうち、ΔO
2、ΔW
FeO及びΔW
cmが、吹錬処理の操作量となる。
図11及び
図12は、第2実施形態の演算装置30が取り扱う他の変数の定義を示す図である。以下の説明では、
図10~
図12に記載の変数を用いるが、その意味については、
図10~
図12に記載の定義を参照することとし、明細書では、その説明を適宜省略する。
【0048】
図13は、第2実施形態において、記憶部32に格納される操業データ321の一例を示す図である。
図13に示す例では、第1実施形態と同様に、操業データ321は、吹錬処理毎に決められるチャージ番号(CHNO)をキーとして、同じチャージ番号の吹錬処理に関する各種の操業データが同一の行に格納されていくものである(
図13では、図示の便宜上、2段に分けて示している)。操業データ321の中には、後述の最適化計算で使用される各種の操業データが含まれる。
第2実施形態では、計算時点以降の必要な操作量の値を決定するため、計算時点までの操業実績が追加されている。例えば、操業データ321の中には、吹錬処理中のサブランス測定以降で、計算時点までの、上吹きランス12からの累積吹き込み酸素量原単位O
2SLnow[Nm
3/ton]が格納される。O
2SLnowは、吹錬処理中のサブランス測定から計算時点までに上吹きランス12から吹き込まれた酸素量の累積値を主原料の総重量W
st[ton]で除算した値である。上吹きランス12からの累積吹き込み酸素量V
O2L[Nm
3]、底吹き羽口14からの累積吹き込み酸素量V
O2b[Nm
3]及び副原料から発生した発生酸素量V
auO2[Nm
3]は、第1実施形態では、吹錬処理開始から吹錬中のサブランス測定までの累積値であったのに対して、第2実施形態では、吹錬処理開始から計算時点までの累積値になっている。また、操業データ321の中には、吹錬中のサブランス測定以降で、計算時点までの、FeO含有副原料の投入量原単位W
FeOSLnow[kg/ton] 、及び、吹錬中のサブランス測定以降で、計算時点までの冷材の投入量原単位W
cmSLnow[kg/ton]が格納される。投入量原単位W
FeOSLnow、W
cmSLnowは、それぞれサブランス測定以降、計算時点までに、既に投入したFeO含有副原料の投入量の累積値[kg]及び既に投入した冷材の投入量の累積値[kg]を、主原料の総重量W
st[ton]で除算した値である。また、
図13に示す例では、第1実施形態と同様に、計算時点から吹錬処理終了時までの、上吹ランス12からの酸素供給スピード設定値F
O2now[Nm
3/sec]及び底吹羽口14からの酸素供給スピード設定値F
O2bnow[Nm
3/sec]が一定値であるとして、それぞれ1項目にしているが、吹錬処理終了時までに酸素供給スピード設定値が何段階かに変化する場合には、その全ての設定値と設定変更のタイミング(累積吹き込み酸素量等)とを、操業データ321として格納すればよい。
【0049】
最適化初期値323としては、第1実施形態と同様に、前述の
図10に示す最適化問題の決定変数ΔO
2、ΔW
FeO、ΔW
cm、P
EP、C
EP、T
EPに設定する初期値が格納される。第2実施形態において、最適化計算1回目の初期値は、前述の
図7を参照して説明した計算手順によって決定するが、予め決めた定数にしてもよい。また、最適化計算2回目以降の初期値としては、前回の最適化計算の結果を格納してもよいし、予め決めた定数にしてもよい。なお、
図8は、計算2回目以降の初期値に、前回の最適化計算の結果を使用する場合を示している(最適化計算部334から記憶部32に向けて延びる矢印が存在する)。
【0050】
第2実施形態の最適化計算部334が実行する最適化計算の対象となる最適化問題の目的関数Jは、以下の式(26)で表される。
J=ΔO2×Wst×cost_O2+ΔWFeO×Wst×cost_FeO+ΔWcm×Wst×cost_cm+(PAIM-PEP)2×cost_p+(CAIM-CEP)2×cost_c+(TAIM-TEP)2×cost_T ・・・(26)
第1実施形態と同様に、式(26)の右辺の第1~第3項が、値を決定した操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmに対する吹錬処理の操業コストを表しており、第4~第6項が、吹錬処理終了時における溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティを表している。すなわち、第1実施形態と同様に、最適化問題の目的関数Jは、吹錬処理の操業コストと、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の目標値からのずれに対するペナルティとの和で表されている。
最適化計算部334は、以下に説明する式(27)~式(50)の制約条件下で、上記の式(26)で表される目的関数Jを最小化する最適化計算を行うことで、操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定する。ただし、制約条件は、式(27)~式(50)に限るものではなく、吹錬処理の操業上、更に必要な制約条件があれば、適宜追加すればよい。
【0051】
決定変数の一つである吹錬処理終了時における溶鋼中りん濃度の推定値PEPは、以下の式(27)~式(32)に従って計算される。
PEP=Piniexp(-kP×(ΔO2+O2now+O2S)) ・・・(27)
O2now=(VO2L+VO2b+VauO2)/Wst ・・・(28)
O2S=(VbO2S+VauO2S)/Wst ・・・(29)
VbO2S=FO2bnow×(ΔO2×Wst/FO2now) ・・・(30)
VauO2S=O2auFeO×ΔWFeO×Wst+O2aucm×ΔWcm×Wst ・・・(31)
kP=f21(ΔWFeO) ・・・(32)
上記の式(32)は、第1実施形態の式(7)と同様に、脱りん速度定数kpを目的変数とし、最適化計算の対象となる吹錬処理に関する操業データを説明変数とする統計モデル(重回帰式f21)を表しており、予め構築されて、記憶部32に格納され、最適化計算部334で用いられる。第2実施形態では、脱りん速度定数kpを推定するのに用いる統計モデル(重回帰式f21)の説明変数として、吹錬中のサブランス測定以降に得られる操業データを用いることが望ましい。
【0052】
決定変数の一つである吹錬処理終了時における溶鋼中炭素濃度の推定値C
EPは、以下の式(33)~式(36)に従って計算される。
【数2】
【数3】
C
cr=f
22(X
i) ・・・(35)
k
2=f
23(X
i) ・・・(36)
上記の式(33)及び式(34)は、第1実施形態の式(8)から導き出される式である。
上記の式(35)及び式(36)は、それぞれ第1実施形態の式(9)及び式(10)と同様である。第2実施形態では、脱炭酸素効率減衰定数C
crを推定するのに用いる統計モデル(重回帰式f
22)の説明変数X
i、最大脱炭酸素効率k
2を推定するのに用いる統計モデル(重回帰式f
23)の説明変数X
iとして、吹錬中のサブランス測定以降に得られる操業データを用いることが望ましい。
【0053】
第2実施形態では、計算時点の溶鋼温度の推定値Tcalが、以下の式(37)に従って計算される。
そして、決定変数の一つである吹錬処理終了時における溶鋼温度の推定値TEPは、計算したTcalを用いて、以下の式(38)、式(39)に従って計算される。
Tcal=TSL+kT×O2SLnow-(WFeOSLnow×IFeO+WcmSLnow×Icm) ・・・(37)
TEP=Tcal+kT×ΔO2-(ΔWFeO×IFeO+ΔWcm×Icm) ・・・(38)
kT=f24(Xi) ・・・(39)
上記の式(37)及び式(38)は、第1実施形態の式(11)から導き出される式である。
上記の式(39)は、第1実施形態の式(12)と同様である。第2実施形態では、昇温効率kTを推定するのに用いる統計モデル(重回帰式f24)の説明変数Xiとして、吹錬中のサブランス測定以降に得られる操業データを用いることが望ましい。
【0054】
吹錬処理終了時において、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度が目標値に到達するには、以下の式(40)~式(42)を満足することが必要である。
PAIM≧PEP ・・・(40)
CAIM≧CEP ・・・(41)
TAIM≦TEP ・・・(42)
【0055】
計算時点以降で吹錬処理終了時までに、副原料(FeO含有副原料、冷材)を投入するのに要する時間は、上吹きランス12からの累積吹き込み酸素量原単位ΔO2の吹き込みが終了するまでに要する時間以下である必要があるため、以下の式(43)及び式(44)を満足することが必要である。
ΔO2×Wst/FO2now≧ΔWFeO×Wst×ctFeO+ttFeO+ΔWFeO×mtFeO ・・・(43)
ΔO2×Wst/FO2now≧ΔWcm×Wst×ctcm+ttcm+ΔWcm×mtcm ・・・(44)
【0056】
各操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmは、0以上の値である必要があるため、以下の式(45)~式(47)を満足することが必要である。
ΔO2≧0 ・・・(45)
ΔWFeO≧0 ・・・(46)
ΔWcm≧0 ・・・(47)
【0057】
吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度の推定値PEP、溶鋼中炭素濃度の推定値CEP及び溶鋼温度の推定値TEPは、0以上の値である必要があるため、以下の式(48)~式(50)を満足することが必要である。
PEP≧0 ・・(48)
CEP≧0 ・・・(49)
TEP≧0 ・・・(50)
【0058】
最適化計算部334は、以上に説明した式(26)~式(50)で表される最適化問題を解くことで、吹錬処理の操業コストと、目標値からのずれに対するペナルティとの双方を小さくする操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmの値を決定することができる。そして、計測制御装置20の制御系が、計算時点以降に、最適化計算部334で決定した操作量の値となるように、操作量ΔO2、ΔWFeO及びΔWcmを制御することで、操業コストを抑制しつつ、吹錬処理終了時における、溶鋼中りん濃度、溶鋼中炭素濃度及び溶鋼温度の何れをも目標値に精度良く適合させることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10・・・転炉設備
11・・・転炉
20・・・計測制御装置
30・・・演算装置
33・・・演算部
100・・・精錬設備
331・・・データ収集部
333・・・初期値計算部
334・・・最適化計算部
MI・・・溶鋼