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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085817
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ソレノイドアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20240620BHJP
   H01F 7/13 20060101ALI20240620BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01F7/16 N
H01F7/16 E
H01F7/16 D
H01F7/13
F16K31/06 305E
F16K31/06 305J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200563
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 俊樹
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA02
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB22
3H106DB32
3H106EE34
3H106GA13
3H106GA15
3H106JJ02
3H106JJ06
5E048AA08
5E048AD03
5E048AD04
5E048CA07
(57)【要約】
【課題】製造コストの削減とストローク後半における推力低下の抑制とを両立可能なソレノイドアクチュエータを提供する。
【解決手段】ソレノイドアクチュエータ1は、コイル3と、コイル3の周りに磁路4を形成するように、軸方向においてエアギャップ11を隔てて配置される第1固定子10及び第2固定子20と、コイル3への通電によって生じる磁力により、第1固定子10の径方向内側の原位置(X=0)から第2固定子20に向かって最大ストローク位置(X=Xmax)まで軸方向に移動可能に構成された可動子50と、を備える。可動子50は、可動子50の周縁部から軸方向に突出する環状凸部100を有する。第2固定子20は、第2ヨーク24と、磁性体により構成されるとともに、最大ストローク位置(X=Xmax)における可動子50の環状凸部100を受け入れるための環状凹部120を少なくとも部分的に形成するように第2ヨーク24の内周側に設けられた第2プレス部品40と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
前記コイルへの通電によって生じる磁力により、前記第1固定子の径方向内側の原位置から前記第2固定子に向かって最大ストローク位置まで前記軸方向に移動可能に構成された可動子と、
を備え、
前記可動子は、該可動子の周縁部から前記軸方向に突出する環状凸部を有し、
前記第2固定子は、
第2ヨークと、
磁性体により構成されるとともに、前記最大ストローク位置における前記可動子の前記環状凸部を受け入れるための環状凹部を少なくとも部分的に形成するように前記第2ヨークの内周側に設けられた第2プレス部品と、
を含む
ソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子の前記環状凸部は、該環状凸部の先端に近づくにつれて拡径するテーパ状の内周面を有し、
前記第2プレス部品は、前記最大ストローク位置において前記環状凹部に侵入した前記環状凸部の前記内周面に対向する対向面を有し、
前記第2プレス部品の前記対向面は、前記環状凹部の径方向内側の境界を画定するとともに、前記軸方向において前記可動子に近づくにつれて縮径するテーパ形状を有する
請求項1に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
前記環状凸部の外周面に対して前記環状凸部の前記内周面がなす角度をθ_refとし、前記軸方向に対して前記環状凸部の前記内周面がなす角度をθ_taperとしたとき、
θ_taper≧0.75×θ_ref
の関係を満たす
請求項2に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項4】
前記第2プレス部品は、
前記第2プレス部品の最外周側に位置し、前記環状凹部の底から前記第1固定子に向かって前記軸方向に延在するリム部と、
前記リム部の内周側に位置し、前記リム部とともに前記環状凹部を画定するように前記環状凹部の前記底から前記可動子に向かって隆起する隆起部と、
を含む
請求項1乃至3の何れか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1固定子と前記第2プレス部品の前記リム部とは、前記軸方向において前記エアギャップを隔てて対向するように配置された
請求項4に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1固定子は、
第1ヨークと、
前記第1ヨークの内周側に固定され、前記第2プレス部品の前記リム部との間に前記エアギャップを形成する筒状ガイドと、
を含む
請求項4に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項7】
前記環状凹部の前記底からの前記隆起部の隆起高さは、前記環状凹部の前記底からの前記リム部の延在高さよりも小さい
請求項4に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項8】
前記可動子は、
プランジャと、
前記プランジャに接続されたシャフトと、
を含み、
前記第2プレス部品は、
前記隆起部から径方向内側に延びるディスク部と、
前記ディスク部の内周縁から前記軸方向に前記可動子から離れる方向に延在し、前記シャフトを摺動自在に支持するように構成された軸受部と、
を含む
請求項4に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項9】
前記第2プレス部品の前記軸受部は、前記ディスク部の前記内周縁から前記第2ヨークの外側端面の軸方向位置まで延在する
請求項8に記載のソレノイドアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソレノイドアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルの周りに磁路を形成する固定子を配置し、コイルへの通電によって生じる磁力により可動子を吸引することで、可動子を軸方向に移動可能としたソレノイドアクチュエータが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、可動子コアの最大ストローク位置側に設けられた第1固定子コアと、可動子コアのストローク開始位置(原位置)側に設けられた第2固定子コアを含むリニアソレノイドが記載されている。
特許文献1記載のリニアソレノイドは、可動子コアの原位置側に位置するヨークの底部に穴(凹部)を設け、この穴(凹部)に第2固定子コアの一部を篏合した構成を有する。可動子コアの磁気伝達部の軸方向長さは、ヨーク底部の穴(凹部)への第2固定子コアの篏合によって長くなる。これにより、第2固定子コアから第1固定子コアに向かう可動子コアのストロークの後半においても、可動子コアと磁気伝達部との軸方向の重なり量を十分に確保できる。その結果、可動子コアの最大ストローク位置近傍において、可動子コアと磁気伝達部との間で伝達される磁束密度の増加が抑制され、可動子コアを軸方向にて後方(第2固定子コア側)に引っ張る磁気吸引力の急激な増大が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5720638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可動子コアのストロークの後半におけるソレノイドアクチュエータの推力低下の原因は、特許文献1に記載された可動子コアを後方に引っ張る磁気吸引力の急激な増大に限られず、他の原因も存在する。
例えば、可動子および固定子の形状によっては、最大ストローク位置に近づくにつれて可動子と固定子との間に作用する磁力の軸方向成分と径方向成分の割合が変化し、ストローク後半において可動子に印加される推力が低下する場合がある。
【0006】
可動子および固定子の形状を変更することで、ストローク後半における可動子と固定子との間に作用する磁力の方向を調整可能であるが、可動子および固定子の形状の複雑化に起因して、ソレノイドアクチュエータの製造コストが増加してしまう。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、製造コストの削減とストローク後半における推力低下の抑制とを両立可能なソレノイドアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係るソレノイドアクチュエータは、
コイルと、
コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
コイルへの通電によって生じる磁力により、第1固定子の径方向内側の原位置から第2固定子に向かって最大ストローク位置まで軸方向に移動可能に構成された可動子と、
を備え、
可動子は、可動子の周縁部から前記軸方向に突出する環状凸部を有し、
第2固定子は、
第2ヨークと、
磁性体により構成されるとともに、最大ストローク位置における可動子の環状凸部を受け入れるための環状凹部を少なくとも部分的に形成するように第2ヨークの内周側に設けられた第2プレス部品と、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、最大ストローク位置近傍において可動子と第2固定子との間での磁気の受け渡し面積が増加し、可動子に印加される推力の低下を抑制できる。その結果、全ストローク範囲にわたって推力の変動が小さいフラットな吸引特性を実現することができる。
また、第2固定子の環状凹部が少なくとも部分的に第2プレス部品によって形成されるので、環状凹部を有する第2固定子を一体物の切削加工品によって構成する場合に比べて製造コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
図2】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が原位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。
図3】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が最大ストローク位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。
図4】他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が最大ストローク位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。
図5】さらに別の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が最大ストローク位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。
図6A】一実施形態に係る可動子の環状凸部を概略的に示す部分断面図である。
図6B】他の実施形態に係る可動子の環状凸部を概略的に示す部分断面図である。
図7A】可動子が原位置にあるときの比較例に係るソレノイドアクチュエータの磁束分布を示す概略図である。
図7B】可動子が中間位置にあるときの比較例に係るソレノイドアクチュエータの磁束分布を示す概略図である。
図7C】可動子が最大ストローク位置近傍にあるときの比較例に係るソレノイドアクチュエータの磁束分布を示す概略図である。
図8A】可動子が原位置にあるときの一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの磁束分布を示す概略図である。
図8B】可動子が中間位置にあるときの一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの磁束分布を示す概略図である。
図8C】可動子が最大ストローク位置近傍にあるときの一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの磁束分布を示す概略図である。
図9】実施形態および比較例のソレノイドアクチュエータの吸引特性を示すグラフである。
図10】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
図2は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が原位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。図3は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が最大ストローク位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。図4は、他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が最大ストローク位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。図5は、さらに別の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの部分断面図であり、可動子が最大ストローク位置にある状態における可動子と第2固定子との間の磁束の受け渡し領域を示す。
なお、可動子は、0≦X≦Xmaxの範囲で軸方向において可動である。図2図5において、可動子の先端(後述の環状凸部100の先端)の軸方向位置を基準として可動子の位置を表している。図2のように原位置にあるとき、可動子の先端位置XはX=0を満たす。図3図5のように最大ストローク位置にあるとき、可動子の先端位置XはX=Xmaxを満たす。図2及び図3には、矢印により可動子と第2固定子との間に生じる磁束分布を概略的に示している。
図6Aは、一実施形態に係る可動子の環状凸部を概略的に示す部分断面図である。図6Bは、他の実施形態に係る可動子の環状凸部を概略的に示す部分断面図である。
【0013】
図1では、ソレノイドアクチュエータの樹脂モールドの図示を省略している。また、コイル3の片側(図中の左側の部分)のみについて磁路4を示しているが、環状に設けられたコイル3の両側(図中の右側の部分)にも同様な磁路4が形成されている。
【0014】
幾つかの実施形態では、図1に示すように、ソレノイドアクチュエータ1は、コイル3と、コイル3の周りに磁路4を形成するための固定子10,20と、コイル3が生成する磁力により軸方向に移動可能な可動子50と、を含む。
【0015】
コイル3は、例えば銅又は銅合金等の導体により構成される線材をソレノイドアクチュエータ1の中心軸O周りに巻くことで構成される。コイル3は、全体として、中心軸Oを中心とする略環状である。コイル3には不図示のターミナルが電気的に接続されており、ターミナルを介してコイル3に電力が供給される。コイル3の通電時、可動子50を吸引するための磁力が生成される。
なお、コイル3は、不図示のボビンに収容されていてもよい。
【0016】
固定子10,20は、ソレノイドアクチュエータ1の軸方向においてコイル3を挟んで両側に位置する第1固定子10および第2固定子20を含む。固定子10,20は、例えば鉄であってもよい磁性体により構成され、コイル3を取り囲むように中心軸O周りに環状に設けられる。
【0017】
第1固定子10及び第2固定子20は、コイル3の内周側、かつ、後述の可動子50の外周側において、エアギャップ11を隔てて軸方向に互いに対向するように配置される。
エアギャップ11は、可動子50を経由せずに第1固定子10から第2固定子20に直接向かう磁束流れを制限し、第1固定子10から可動子50を経由して第2固定子20に向かう磁束を効率的に流すために設けられる。
【0018】
図1に示す例では、第1固定子10と第2固定子20は、コイル3の外周側に位置する当接部12において当接する。
この場合、第1固定子10と第2固定子20が、コイル3の内周側でエアギャップ11を介して対向し、かつ、コイル3の外周側の当接部12で当接した状態で、不図示の樹脂モールドによって一体的に成形されてもよい。
なお、第1固定子10と第2固定子20との当接部12の位置は特に限定されず、図1の例のように軸方向におけるコイル3の中央位置に当接部12が位置してもよいし、コイル3の中央位置とは異なる位置に当接部12が存在してもよい。
【0019】
他の実施形態では、ソレノイドアクチュエータ1は第1固定子10及び第2固定子20が当接する箇所を有しない。
例えば、ソレノイドアクチュエータ1が、第1固定子10及び第2固定子20以外の1以上の他の固定子を含む場合、1以上の他の固定子は、第1固定子10と第2固定子20との間に位置し、第1固定子10及び第2固定子20とともに磁路4を形成してもよい。こうして、第1固定子10及び第2固定子の間に他の固定子が介在することで、第1固定子10及び第2固定子20が直接当接しない構成になっていてもよい。
また、第1固定子10及び第2固定子20を含む複数の固定子の間に空隙が存在してもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、可動子50は、プランジャ52を含む。プランジャ52には、ソレノイドアクチュエータ1の出力軸としてのシャフト54が接続される。図1に示す例では、可動子50は、プランジャ52と、プランジャ52よりも外径が小さいシャフト54とを含む。
図1に示す実施形態では、プランジャ52は、シャフト54が圧入される貫通穴を有する。シャフト54は、シャフト54の軸芯とプランジャ52の軸芯とが一致するように、プランジャ52の貫通穴に圧入される。
【0021】
可動子50としてのプランジャ52は、例えば鉄であってもよい磁性体により形成され、シャフト54の外周側に取り付けられる。
プランジャ52の直径は、シャフト54の直径よりも大きく、後述する第1固定子10の筒状ガイド30の内径よりも小さい。また、プランジャ52の直径は、後述する第2固定子20によって形成される環状凹部120の外周側の境界の直径よりも小さい。
【0022】
コイル3が非励磁状態であるとき、不図示のスプリングによってシャフト54は矢印Bとは反対方向に付勢され、可動子50としてのプランジャ52は第1固定子10(筒状ガイド30)の径方向内側に位置する。このとき、プランジャ52は、実質的に筒状ガイド30の径方向内側に位置していればよく、プランジャ52の端部が、第1固定子10(筒状ガイド30)から第2固定子20側に突出していてもよい。
これに対し、コイル3への通電により、可動子50としてのプランジャ52は、矢印B方向に吸引され、第2固定子20によって形成されるキャビティ28への侵入を開始する。このとき、プランジャ52は、少なくとも一部が第2固定子20のキャビティ28に位置していればよく、プランジャ52の残りの部分が、キャビティ28から第1固定子10側に突出していてもよい。
【0023】
上記構成のプランジャ52が固定されるシャフト54は、第2固定子20を貫通してソレノイドアクチュエータ1の外部へと延びる。シャフト54は、ソレノイドアクチュエータ1の作動によって矢印Bの方向へと移動し、不図示の外部機器にソレノイドアクチュエータ1の駆動力を伝達する。
ソレノイドアクチュエータ1によって駆動される外部機器は特に限定されないが、例えば、車両のエンジンの吸気バルブや排気バルブのバルブタイミングを油圧によって制御するスプールであってもよい。
【0024】
シャフト54は、軸受を介して摺動可能に第2固定子20に支持されてもよい。
図1に示す実施形態では、第2固定子20の一部を構成する第2プレス部品40のうち径方向内側の部位(後述の内筒部48)が軸受部53として機能し、シャフト54は第2プレス部品40の軸受部53によって摺動自在に支持される。
【0025】
プランジャ52は、プランジャ52を軸方向に貫通する1以上の連通孔51を有してもよい。図1に示す例では、2個の連通孔51が、シャフト54を挟んで互いに反対側の周方向位置にそれぞれ設けられる。各々の連通孔51は、第2固定子20に対向する可動子50の軸方向端面56に開口する。
各々の連通孔51は、プランジャ52の軸方向における両側の空間を連通させ、プランジャ52の軸方向両側の空間を実質的に等圧に維持する。このため、プランジャ52の軸方向への移動が阻害されることがない。
【0026】
幾つかの実施形態では、図1図5に示すように、可動子50(プランジャ52)は、可動子50の周縁部から第2固定子20に向かって軸方向に突出する環状凸部100を有する。環状凸部100は、周方向に連続するように設けられ、第2固定子20に対向する可動子50の軸方向端面56の周縁部から第2固定子20に向かって突出する。
環状凸部100は、図3図5に示すように、可動子50が最大ストローク位置(X=Xmax)に到達したとき、後述の第2固定子20の環状凹部120に侵入する。環状凸部100の環状凹部120への侵入の結果、可動子50は、最大ストローク位置の手前から、環状凸部100と環状凹部120との間に生じる磁束によって第2固定子20側に引き寄せられる(図3参照)。よって、可動子50の最大ストローク位置付近においても、ソレノイドアクチュエータ1の推力を維持可能である。
なお、図1に示す例示的な実施形態では、環状凸部100は、各々の連通孔51の径方向外側に設けられる。
【0027】
図1図4に示す実施形態では、環状凸部100は、径方向において固定子10,20と対向する外周面102と、環状凸部100の先端に近づくにつれて拡径するテーパ状の内周面110とを含む。すなわち、環状凸部100の内周面110は、連通孔51の径方向外側における環状凸部100の根元を起点として、環状凸部100の先端に向かって軸方向に対して斜めに延在する。
なお、図1図4に示す例示的な実施形態では、環状凸部100のテーパ状の内周面110は、環状凸部100の根元を起点として環状凸部100の先端に向かって延在する直線状の輪郭によって形成される。他の実施形態では、環状凸部100のテーパ状の内周面110は曲線を含む輪郭によって形成される。
【0028】
幾つかの実施形態では、図6A及び図6Bに示すように、環状凸部100の外周面102に対して環状凸部100の内周面110がなす角度をθ_refとし、軸方向に対して環状凸部100の内周面110がなす角度をθ_taperとしたとき、
θ_taper≧0.75×θ_ref
の関係を満たす。
なお、図6Aに示す例示的な実施形態では、環状凸部100の外周面102は軸方向に平行であり、角度θ_taperと角度θ_refとが一致する。これに対し、図6Bに示す例示的な実施形態では、外周面102が環状凸部100の先端に近づくにつれて縮径しており、角度θ_refは角度θ_taperよりも大きい。
【0029】
図1及び図2に示すように、可動子50(プランジャ52)は、原位置において、第1固定子10によって実質的に取り囲まれる。
幾つかの実施形態では、図1図5に示すように、原位置における可動子50を取り囲む第1固定子10は、第1ヨーク14と、第1ヨーク14の内周側に固定される筒状ガイド30とを含む。他の実施形態では、第1固定子10の全体が一体物で形成される。
【0030】
第1ヨーク14の内周側に固定される筒状ガイド30は、軸方向において、第1固定子10と第2固定子20との間のエアギャップ11を隔てて第2固定子20と対向する。すなわち、筒状ガイド30の先端31は、第2固定子20の先端部21に接しておらず、エアギャップ11によって隔てられている。
ここで、エアギャップ11とは、コイル3の内周側における、第1ヨーク14及び筒状ガイド30を含む第1固定子10と第2固定子20との間の最小の間隙を意味する。
【0031】
筒状ガイド30は、図1図5に示すように、第2固定子20の先端部21と少なくとも部分的にオーバーラップする径方向位置範囲に筒状ガイド30の先端31が位置するように配置されてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、図1図5に示すように、筒状ガイド30は、第1ヨーク14から第2固定子20側に先端31が突出するように配置される。すなわち、筒状ガイド30は、第1ヨーク14の先端位置を越えて第2固定子20側へ軸方向に延在する。
このように、第1ヨーク14の先端位置を越えて第2固定子20側へ筒状ガイド30を延ばすことで、筒状ガイド30(後述する磁性筒32)と可動子50との間の磁気受け渡し面積を確保しやすくなり、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を増大させることができる。
【0033】
図2図5に示す実施形態では、筒状ガイド30は、第1ヨーク14の第1貫通穴15の内壁に接触する外周面を有する磁性筒32と、磁性筒32の内周面に形成される非磁性層34と、を含む。
【0034】
磁性筒32は、例えば鉄であってもよい磁性体により構成され、エアギャップ11を隔てて第2固定子20と対向する。すなわち、第1ヨーク14及び筒状ガイド30を含む第1固定子10の磁性体部分のうち磁性筒32が、第2固定子20の先端部21に最も近接して配置される。
径方向における磁性筒32の位置範囲は、磁性筒32との間にエアギャップ11を形成する第2固定子20の先端部21の径方向の位置範囲と少なくとも部分的にオーバーラップしていてもよい。
【0035】
筒状ガイド30の非磁性層34は、可動子50の外周面に対向するように磁性筒32の内周面に設けられる。
これにより、筒状ガイド30は、非磁性層34に可動子50を摺接させることで可動子50を軸方向に案内することができる。
なお、非磁性層34は、例えば、銅やPTFE(polytetrafluoroethylene)等の低摩擦材料によって構成してもよい。非磁性層34は、例えば、焼結や含浸等の施工方法によって筒状ガイド30の内面に成膜されてもよい。例示的な実施形態では、非磁性層34は、焼結により形成される銅合金の多孔質層にPTFEを含む樹脂材を含浸することで形成される。
【0036】
一般に、可動子の径方向位置を拘束して可動子を軸方向に案内するガイド(軸受)は、ヨークと可動子との間の径方向の磁気ギャップとは別の場所に設けられる。この場合、可動子の径方向位置を規制するガイドに対してヨークの軸心が偏芯していると、可動子と可動子の外周側のヨークとの間の磁気ギャップもその影響を受ける。このため、ガイド(軸受)に対するヨークの軸ずれの影響を考慮して、可動子と可動子の外周側のヨークとの間に比較広い磁気ギャップを確保する必要がある。
この点、図2図5に示す実施形態のように、非磁性層34によって可動子50を軸方向に案内するガイド機能を実現可能な筒状ガイド30を第1ヨーク14の内周側に固定すれば、筒状ガイド30に対する第1ヨーク14の軸ずれの影響を実質的に無くすことができる。このため、筒状ガイド30と可動子50との間に確保すべき径方向隙間trは、可動子50の組付けが可能な程度の大きさで足りる。その結果、第1固定子10と可動子50との間の磁気ギャップを減少させ、第1固定子10から可動子50に向かう磁束を増大させることができる。
なお、この場合における第1固定子10と可動子50との間の磁気ギャップとは、上述の径方向隙間trと、非磁性層34の厚さとの合計である。
【0037】
図2に示すように、筒状ガイド30の磁性筒32と第2固定子20(第2プレス部品40)との間の最小距離d1は、原位置における可動子50と第2固定子20(第2プレス部品40)との最小距離d2よりも大きい。
図2に示す例示的な実施形態では、原位置における可動子50の環状凸部100が、筒状ガイド30(磁性筒32)の先端31の軸方向位置を越えて第2固定子20側に延在することで、d1>d2の関係が成立している。
【0038】
このように、d1>d2の関係を満たすことで、磁性筒32と第2固定子20とのギャップにおける磁気抵抗が、原位置にある可動子50と第2固定子20との間のギャップにおける磁気抵抗よりも大きくなる。その結果、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を増大させることができる。
よって、原位置における可動子50と第1固定子10及び第2固定子20との磁気の受け渡しを効果的に行うことが可能となり、コンパクトかつ高推力のソレノイドアクチュエータ1を実現できる。
【0039】
幾つかの実施形態では、図2に示すように、筒状ガイド30は、第1ヨーク14の先端位置X_yokeを越えて第2固定子20側へ軸方向に延在する。筒状ガイド30の磁性筒32と第2固定子20(第2プレス部品40)との間の最小距離d1は、第1ヨーク14と第2固定子20(第2プレス部品40)との間の最小距離d3よりも小さくてもよい。
第1ヨーク14の先端位置X_yokeを越えて第2固定子20側へ筒状ガイド30を延ばすことで、筒状ガイド30の磁性筒32と可動子50との間の磁気受け渡し面積を確保しやすくなり、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を増大させることができる。
他方、筒状ガイド30の先端を第2固定子20に近づけ過ぎると、可動子50を経由せずに磁性筒32と第2固定子20との間を流れる磁束が増大し、結果的に可動子50と第2固定子20との間における磁束が減少してしまうおそれがある。この点、上述したd1>d2の関係を満たすように筒状ガイド30(磁性筒32)の先端位置について制限を課すことで、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を十分に確保できる。
【0040】
第1固定子10の第1ヨーク14は、例えば鉄であってもよい磁性体によって形成され、コイル3を取り囲むように配置される。第1ヨーク14は、コイル3の外周側で当接部12において第2固定子20と当接してもよい。
第1ヨーク14は、筒状ガイド30を受け入れるための第1貫通穴15を有する。第1貫通穴15は、ソレノイドアクチュエータ1の中心軸Oと同心の円形穴であってもよい。
【0041】
第1ヨーク14の第1貫通穴15の内壁は、図1に示すように、筒状ガイド30の外周面と接触する接触領域15aと、筒状ガイド30の外周面と接触しない非接触領域15bとを含む。非接触領域15bは、軸方向において接触領域15aと隣り合う。非接触領域15bは、軸方向において、接触領域15aを挟んで第2固定子20とは反対側に位置する。
【0042】
幾つかの実施形態では、図1に示すように、第1貫通穴15の内径は、接触領域15aと非接触領域15bとで同一である。他の実施形態では、第1貫通穴15の内径は、非接触領域15bの方が接触領域15aよりも大きい。何れの場合であっても、第1貫通穴15の内壁には、第1ヨーク14に対する筒状ガイド30の軸方向位置を規制してしまう段差は存在しない。
このため、第2固定子20に対する筒状ガイド30の軸方向の位置決めを第1貫通穴15の内壁の段差が阻害してしまうことがない。よって、第1ヨーク14への筒状ガイド30の組付けに際し、筒状ガイド30の先端31の軸方向位置の調整を適切に行うことが可能となり、エアギャップ11を高精度に管理することが容易になる。
【0043】
幾つかの実施形態では、第2固定子20は、図1図5に示すように、第2ヨーク24と、第2ヨーク24の内周側に固定される第2プレス部品40と、を含む。
【0044】
第2ヨーク24は、例えば鉄であってもよい磁性体によって形成され、コイル3を取り囲むように配置される。第2ヨーク24は、プレス部品によって構成されてもよい。第2ヨーク24は、コイル3の外周側で当接部12において第1固定子10(第1ヨーク14)と当接してもよい。
図1図5に示す実施形態では、第2ヨーク24は、第2プレス部品40を少なくとも部分的に受け入れるための第2貫通穴25を有する。第2貫通穴25は、ソレノイドアクチュエータ1の中心軸Oと同心の円形穴であってもよい。
【0045】
幾つかの実施形態では、図1及び図2に示すように、第2ヨーク24は、エアギャップ11に向かって厚さtが減少する。すなわち、第2ヨーク24は、エアギャップ11側の先端領域に、エアギャップ11に向かって厚さt(図1参照)が減少する先細部26を有する。先細部26は、第2ヨーク24のうち内周側の部位を形成する。
ここで、第2ヨーク24の厚さtとは、第2ヨーク24の径方向における寸法である。
なお、第2ヨーク24の先細部26は、図1図3及び図5に示すように、後述する第2プレス部品40のリム部42と径方向に隣接して設けられてもよい。
【0046】
第2プレス部品40は、例えば鉄であってもよい磁性体によって構成されるプレス成形品である。
幾つかの実施形態では、第2プレス部品40は、軸方向において可動子50の環状凸部100に対向するように設けられる環状凹部120を少なくとも部分的に形成する。環状凹部120は、環状凸部100に対応する径方向位置に周方向に連続的に設けられる。図1及び図2に示すように、原位置(X=0)にある可動子50の環状凸部100は環状凹部120に侵入していない。これに対し、図3図5に示すように、最大ストローク位置(X=Xmax)にある可動子50の環状凸部100は環状凹部120に少なくとも部分的に侵入している。すなわち、第2プレス部品40の環状凹部120は、最大ストローク位置における可動子50の環状凸部100を受け入れ可能な形状を有する。
【0047】
環状凹部120の形状は特に限定されないが、可動子50の最大ストローク位置近傍において、環状凸部100と環状凹部120との間に適切な磁束を形成する観点から、図1図5に示すように、環状凹部120は環状凸部100の相補的形状を有してもよい。
【0048】
図1図5に示す実施形態では、第2プレス部品40は、最大ストローク位置(X=Xmax)にて環状凹部120に侵入した環状凸部100の内周面110に対向する対向面45を有する。対向面45は、環状凹部120の径方向内側の境界を画定する。対向面45は、環状凸部100の内周面110との間に略一定の大きさのギャップが形成されるように内周面110に沿って延在してもよい。
図1図4に示す例では、環状凸部100の内周面110は、環状凸部100の先端に近づくにつれて拡径するテーパ状であり、第2プレス部品40の対向面45は、軸方向において可動子(50)に近づくにつれて縮径するテーパ形状を有する。テーパ状の内周面110とテーパ状の対向面45とは、互いに平行であってもよい。
【0049】
図1図3及び図5に示す実施形態では、リム部42および隆起部44を含む第2プレス部品40によって環状凹部120が形成される。
リム部42は、第2プレス部品40の最外周側に位置し、環状凹部120の底から第1固定子10に向かって軸方向に延在する。リム部42は、第2ヨーク24の先細部26の内周側において周方向に連続して設けられ、環状凹部120の径方向外側の境界を規定する。隆起部44は、リム部42の内周側に位置し、環状凹部120の底から可動子50に向かって隆起する。隆起部44は、周方向に連続して設けられ、環状凹部120の径方向内側の境界を規定する。上述した対向面45は、隆起部44によって形成されてもよい。
環状凹部120は、リム部42及び隆起部44によって画定される。
【0050】
幾つかの実施形態では、第1固定子10と第2プレス部品40のリム部42とは、軸方向においてエアギャップ11を隔てて対向するように配置される。
具体的には、図1図3及び図5に示すように、リム部42は、第1固定子10の筒状ガイド30と少なくとも部分的にオーバーラップする径方向位置に設けられ、筒状ガイド30の先端31とリム部42の先端部21との間にエアギャップ11が形成されてもよい。
【0051】
筒状ガイド30の先端31とリム部42の先端部21との間にエアギャップ11を形成するために、第2プレス部品40のリム部42は、隆起部44よりも広い軸方向範囲に亘って延在していてもよい。すなわち、環状凹部120の底からの隆起部44の隆起高さは、環状凹部120の底からのリム部42の延在高さよりも小さくてもよい。
【0052】
他の幾つかの実施形態では、図4に示すように、環状凹部120は、第2ヨーク24の先細部26と、隆起部44を含む第2プレス部品40とによって形成される。
第2ヨーク24の先細部26は、環状凹部120の径方向外側の境界を少なくとも部分的に規定する。これに対し、第2プレス部品40の隆起部44は、先細部26の内周側において周方向に連続して設けられ、環状凹部120の径方向内側の境界を規定する。
【0053】
図4に示す実施形態では、筒状ガイド30の先端31と第2ヨーク24の先細部26との間にエアギャップ11が形成される。そのため、第2ヨーク24の先細部26は、隆起部44よりも広い軸方向範囲に亘って延在する。すなわち、第2ヨーク24の先細部26の先端部21は、軸方向において、第2プレス部品40の隆起部44の終端部よりも第1固定子10側に位置する。
【0054】
幾つかの実施形態では、図1図5に示すように、第2プレス部品40は、隆起部44から径方向内側に延びるディスク部46と、ディスク部46の内周縁から軸方向にて可動子50から離れる方向に延在する内筒部48とを含む。
内筒部48は、シャフト54を摺動自在に支持するための上述の軸受部53として機能してもよい。
【0055】
ディスク部46は、軸方向において、環状凸部100の内周側に位置する可動子50の軸方向端面56と対向するように、径方向に沿って延在する。
図3図5に示すように、環状凸部100の軸方向端面56からの軸方向の突出長さは、隆起部44が占める軸方向範囲よりも大きく設定される。その結果、可動子50の最大ストローク位置において、可動子50の軸方向端面56と第2プレス部品40のディスク部46との間の軸方向距離は、環状凸部100の先端と環状凹部120の底との間の軸方向距離よりも大きい。
【0056】
幾つかの実施形態では、図1図5に示すように、第2プレス部品40の内筒部48(軸受部53)は、ディスク部46の内周縁から第2ヨーク24の外側端面22の軸方向位置まで延在する。すなわち、第2プレス部品40の内筒部48(軸受部53)のディスク部46とは反対側の軸方向端49は、第2ヨーク24の外側端面22の軸方向位置と一致する。
【0057】
上述した幾つかの実施形態では、最大ストローク位置(X=Xmax)における可動子50の環状凸部100を第2固定子20の環状凹部120に受け入れるようになっている。このため、環状凸部100および環状凹部120を有しないソレノイドアクチュエータに比べて、環状凸部100および環状凹部120の対向領域において、可動子50と第2固定子20との間での磁気の受け渡し面積が増加し(図3の磁束分布参照)、最大ストローク位置近傍にて可動子50に印加される推力の低下を抑制できる。その結果、全ストローク範囲にわたって推力の変動が小さいフラットな吸引特性を実現することができる。
このことについて、図7A図7C図8A図8Cおよび図9を参照しながら説明する。
【0058】
図7A図7Cは、比較例に係るソレノイドアクチュエータのストローク量の増加に伴う磁束分布の変化を示す概略図である。図8A図8Cは、本発明の実施形態に係るソレノイドアクチュエータ1のストローク量の増加に伴う磁束分布の変化を示す概略図である。
図7A及び図8Aは、可動子50が原位置(図9におけるX=0)にある状態を示し、図7B及び図8Bは、可動子50が中間位置(図9におけるX=Xb)にある状態を示し、図7C及び図8Cは、可動子50が最大ストローク位置の近傍(図9におけるX=Xc)にある状態を示す。
図9は、本発明の実施形態および比較例のソレノイドアクチュエータの吸引特性を示すグラフである。
なお、図7A図7C及び図9に示した「比較例」は、環状凸部100及び環状凹部120を有しないソレノイドアクチュエータを意味する。
【0059】
図7Aに示すように、可動子が原位置(X=0)にあるとき、可動子と第2固定子との間に生じる磁束の軸方向成分は比較的大きい。このため、ソレノイドアクチュエータの推力はある程度確保可能である(図9参照)。
図7Bに示すように、可動子が中間位置(X=Xb)に移動すると、可動子と第2固定子との間に生じる磁束が増加する。よって、ソレノイドアクチュエータの推力は増加する(図9参照)。
しかし、図7Cに示すように、可動子が中間位置を越えてさらに最大ストローク位置近傍(X=Xc)まで移動すると、第2固定子内における磁気飽和のために全体としての磁束はそれ以上増加しない。一方、可動子と第2固定子とのギャップがより小さい領域に磁束が集中する。結果的に、軸方向成分が大きい磁束の割合が減少し、最大ストローク位置に近づくにつれて可動子と第2固定子との間に作用する磁力の径方向成分の割合が大きくなってしまう。よって、最大ストローク位置の手前から最大ストローク位置にかけて可動子に印加される推力が低下する(図9参照)。
【0060】
これに対し、図9に示されるように、実施形態に係るソレノイドアクチュエータ1では最大ストローク位置近傍まで大きな推力低下は生じない。
ソレノイドアクチュエータ1の場合も、図8A及び図8Bに示すとおり、可動子が原位置から中間位置に移動する過程におけるソレノイドアクチュエータ1の磁束分布の変化は、比較例(図7A及び図7B)と同様である。しかし、図8Cに示すように、可動子が最大ストローク位置近傍に到達したとき(X=Xc)、可動子50の環状凸部100が第2固定子20の環状凹部120内に侵入し、環状凸部100の内周面110と第2プレス部品40の隆起部44との間に磁束が形成され始める。すなわち、最大ストローク位置近傍において環状凹部120内に環状凸部100が侵入することで、環状凸部100の内周面110と環状凹部120の対向面45との間でも磁束が受け渡されるようになり、磁束の受け渡し面積が向上する。その結果、最大ストローク位置近傍において可動子50を第2固定子20側に吸引する力が増加し、ソレノイドアクチュエータ1の推力の低下が抑制される(図9参照)。
【0061】
以上述べたソレノイドアクチュエータ1の具体的な構造例について、図10を参照して説明する。
【0062】
図10は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
同図に示すように、ソレノイドアクチュエータ1は、コイル3と、第1固定子10及び第2固定子20と、可動子50(プランジャ52)とを含む。第1固定子10、第2固定子20および可動子50は、図1図3を参照して説明した構成を有する。
コイル3は、銅又は銅合金等の導体により構成される線材をボビン60に巻き回して形成される。ボビン60は、第1固定子10及び第2固定子20に実質的に囲まれる。しかし、第1固定子10(第1ヨーク14)には一部の周方向範囲において切欠きが設けられており、第1ヨーク14の切欠きにおいてボビン60のターミナル保持部62が露出する。ボビン60のターミナル保持部62は、ターミナル64の基端部が埋設される。ターミナル64は、ボビン60の内部においてコイル3を構成する線材と電気的に接続される。
また、ソレノイドアクチュエータ1では、コイル3及びボビン60と、第1固定子10及び第2固定子20とが、樹脂モールド70に一体的に成形されて、樹脂モールド70に埋設される。なお、ターミナル64は、ボビン60のターミナル保持部62から樹脂モールド70を貫通し、樹脂モールド70に設けられた凹部72に突出しており、凹部72に嵌合する外部端子と電気的に接続可能となっている。
なお、樹脂モールド70は、原位置にある可動子50(プランジャ52)の後端に接触する凸部74を有する。
【0063】
上述の幾つかの実施形態に係るソレノイドアクチュエータ1の特徴的な構成を整理すれば、以下のとおりである。
【0064】
[1]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るソレノイドアクチュエータ(1)は、
コイル(3)と、
コイル(3)の周りに磁路(4)を形成するように、軸方向においてエアギャップ(11)を隔てて配置される第1固定子(10)及び第2固定子(20)と、
コイル(3)への通電によって生じる磁力により、第1固定子(10)の径方向内側の原位置(X=0)から第2固定子(20)に向かって最大ストローク位置(X=Xmax)まで軸方向に移動可能に構成された可動子(50)と、
を備え、
可動子(50)は、該可動子(50)の周縁部から軸方向に突出する環状凸部(100)を有し、
第2固定子(20)は、
第2ヨーク(24)と、
磁性体により構成されるとともに、最大ストローク位置(X=Xmax)における可動子(50)の環状凸部(100)を受け入れるための環状凹部(120)を少なくとも部分的に形成するように第2ヨーク(24)の内周側に設けられた第2プレス部品(40)と、
を含む。
【0065】
上記[1]の構成によれば、最大ストローク位置における可動子(50)の環状凸部(100)を第2固定子(20)の環状凹部(120)に受け入れるようにしたので、最大ストローク位置近傍において可動子(50)と第2固定子(20)との間での磁気の受け渡し面積が増加し、可動子(50)に印加される推力の低下を抑制できる。その結果、全ストローク範囲にわたって推力の変動が小さいフラットな吸引特性を実現することができる。
また、第2固定子(20)の環状凹部(120)が少なくとも部分的に第2プレス部品(40)によって形成されるので、環状凹部(120)を有する第2固定子(20)を一体物の切削加工品によって構成する場合に比べて製造コストを削減できる。
【0066】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
可動子(50)の環状凸部(100)は、環状凸部(100)の先端に近づくにつれて拡径するテーパ状の内周面(110)を有し、
第2プレス部品(40)は、最大ストローク位置(X=Xmax)において環状凹部(120)に侵入した環状凸部(100)の内周面(110)に対向する対向面(45)を有し、
第2プレス部品(40)の対向面(45)は、環状凹部(100)の径方向内側の境界を画定するとともに、軸方向において可動子(50)に近づくにつれて縮径するテーパ形状を有する。
【0067】
上記[2]の構成によれば、環状凸部(100)の内周面(110)と環状凹部(120)の対向面(45)とが軸方向に対して斜めに延在する。このため、原位置(X=0)付近のストローク量が小さい領域では、図8A及び図8Bに示すとおり、環状凸部(100)の内周面(110)が環状凹部(120)の対向面(45)から十分に離れ、可動子(50)に過大な推力が印加される事態を回避できる。他方、最大ストローク位置(X=Xmax)近傍において環状凸部(100)が環状凹部(120)に侵入したとき、図8Bに示すとおり、環状凸部(100)の内周面(110)と環状凹部(120)の対向面(45)との間に磁束が形成される。ここで、内周面(110)及び対向面(45)が軸方向に対して斜めに延在することから、可動子(50)が最大ストローク位置近傍に到達した時点で追加的に発生する内周面(110)と対向面(45)との間の磁束は比較的大きな軸方向成分を有する。よって、最大ストローク位置近傍における可動子に印加される推力の低下をより効果的に抑制することができる。
【0068】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]の構成において、
環状凸部(100)の外周面(102)に対して環状凸部(100)の内周面(110)がなす角度をθrefとし、軸方向に対して環状凸部(100)の内周面(110)がなす角度をθtaperとしたとき、
θtaper≧0.75×θref
の関係を満たす。
【0069】
ソレノイドアクチュエータ(1)のコンパクト化の観点から、径方向における環状凸部(100)の形成範囲を制限することが望ましい。
この点、上記[2]のように、θtaper≧0.75×θrefが成立する場合、径方向における環状凸部(100)の形成範囲の制約を満たしながら、環状凸部(100)の内周面(110)のテーパ角度を十分に確保し、全ストローク範囲にわたってフラットな吸引特性を実現することができる。
なお、図1図5のように、可動子(50)が連通孔(51)を有する場合、連通孔(51)を避けた位置に環状凸部(100)を設ける必要がある。この点、環状凸部(100)がθtaper≧0.75×θrefの関係を満たすことで、可動子(50)の大径化を抑制しながら、連通孔(51)を避けた位置への環状凸部(100)の配置が容易になる。
【0070】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]~[3]の何れかの構成において、
第2プレス部品(40)は、
第2プレス部品(40)の最外周側に位置し、環状凹部(120)の底から第1固定子(10)に向かって軸方向に延在するリム部(42)と、
リム部(42)の内周側に位置し、リム部(42)とともに環状凹部(120)を画定するように環状凹部(120)の底から可動子(50)に向かって隆起する隆起部(44)と、
を含む。
【0071】
上記[4]の構成によれば、第2プレス部品(4)により、最大ストローク位置近傍にて適切な推力を可動子(50)に印加し得る環状凹部(120)の形状を実現できる。このため、環状凹部(120)を有する第2固定子(20)を一体物の切削加工品によって構成する場合に比べて製造コストを削減できる。
【0072】
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]の構成において、
第1固定子(10)とリム部(42)とは、軸方向においてエアギャップ(11)を隔てて対向するように配置される。
【0073】
第1固定子(10)と第2固定子(20)とのエアギャップ(11)は、原位置付近におけるストローク量が小さい領域での可動子(50)の推力に大きく影響する。
この点、原位置付近におけるストローク量が小さい領域での可動子(50)の推力を第2プレス部品(40)のリム部(42)の形状によって制御し、最大ストローク位置付近での可動子(50)の推力を第2プレス部品(40)の隆起部(44)の形状によって制御することが可能となる。よって、第2固定子(20)の第2プレス部品(40)の形状を工夫することで、コスト削減を図りながら、全ストローク範囲にわたってフラットな吸引特性を実現することができる。
【0074】
[6]幾つかの実施形態では、上記[4]の構成において、
第1固定子(10)は、
第1ヨーク(14)と、
第1ヨーク(14)の内周側に固定され、第2プレス部品(40)のリム部(42)との間にエアギャップ(11)を形成する筒状ガイド(30)と、
を含む。
【0075】
上記[6]の構成によれば、第1ヨーク(14)とは別に設けられる筒状ガイド(30)と、第2ヨーク(24)とは別に設けられる第2プレス部品(40)との間にエアギャップ(11)を形成するようにしたので、エアギャップ(11)を高精度に管理することができる。
また、可動子(50)を軸方向に案内するガイド機能を実現可能な筒状ガイド(30)を第1ヨーク(14)の内周側に固定することで、筒状ガイド(30)に対する第1ヨーク(14)の軸ずれの影響を実質的に無くすことができる。このため、筒状ガイド(30)と可動子(50)との間に確保すべき径方向隙間(tr)は、可動子(50)の組付けが可能な程度の大きさで足りる。その結果、第1固定子(10)と可動子(50)との間の磁気ギャップを減少させ、第1固定子(10)から可動子(50)に向かう磁束を増大させることができる。
【0076】
[7]幾つかの実施形態では、上記[4]の構成において、
環状凹部(120)の底からの隆起部(44)の隆起高さは、環状凹部(120)の底からのリム部(42)の延在高さよりも小さい。
【0077】
上記[7]の構成によれば、第2プレス部品(40)の隆起部(44)の高さをリム部(42)の高さよりも小さく設定したので、原位置付近のストローク量が小さい領域では、環状凸部(100)の内周面(110)と第2プレス部品(40)の隆起部(44)との間の距離を十分に確保し、可動子(50)に過大な推力が印加される事態を回避できる。他方、最大ストローク位置近傍において環状凸部(100)が環状凹部(120)に侵入したとき、環状凸部(100)の内周面(110)と第2プレス部品(40)の隆起部(46)との間に作用する磁力によって、最大ストローク位置近傍における可動子(50)に印加される推力の低下を抑制できる。その結果、全ストローク範囲にわたって推力の変動が小さいフラットな吸引特性を実現することができる。
【0078】
[8]幾つかの実施形態では、上記[4]の構成において、
可動子(50)は、
プランジャ(52)と、
プランジャ(52)に接続されたシャフト(54)と、
を含み、
第2プレス部品(40)は、
隆起部(44)から径方向内側に延びるディスク部(46)と、
ディスク部(46)の内周縁から軸方向に可動子(50)から離れる方向に延在し、シャフト(54)を摺動自在に支持するように構成された軸受部(53;内筒部48)と、
を含む。
【0079】
上記[8]の構成によれば、第2プレス部品(40)によって軸受部(53)および環状凹部(120)を形成することで、部品点数の削減を図りながら、可動子(50)のシャフト(54)の支持とフラットな吸引特性の実現とを両立できる。また、ディスク部(46)が径方向内側に延びるため、ディスク部(46)と軸受部(53;内筒部48)との接続位置を隆起部(44)の上端部の軸方向位置に略一致させることができる。このため、ソレノイドアクチュエータ(1)の軸方向寸法の増加を抑制しながら、軸受部(53)の長さ(軸受面積)を確保できる。
【0080】
[9]幾つかの実施形態では、上記[7]の構成において、
第2プレス部品(40)の軸受部(53)は、ディスク部(46)の内周縁から第2ヨーク(24)の外側端面(22)の軸方向位置まで延在する。
【0081】
上記[9]の構成によれば、第2プレス部品(40)の軸受部(53)を第2ヨーク(24)の外側端面(22)の軸方向位置で終端させることで、ソレノイドアクチュエータ(1)の軸方向寸法の縮小と、軸受部(53)における軸受面積の確保とを両立できる。
【0082】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0083】
1 :ソレノイドアクチュエータ
3 :コイル
4 :磁路
10 :第1固定子
11 :エアギャップ
14 :第1ヨーク
20 :第2固定子
22 :外側端面
24 :第2ヨーク
30 :筒状ガイド
40 :第2プレス部品
42 :リム部
44 :隆起部
45 :対向面
46 :ディスク部
50 :可動子
52 :プランジャ
53 :軸受部
54 :シャフト
72 :凹部
74 :凸部
100 :環状凸部
102 :外周面
110 :内周面
120 :環状凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10