(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008582
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】共振型電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240112BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240112BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240112BHJP
H03K 17/13 20060101ALI20240112BHJP
H03K 17/695 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H02M7/48 P
H02M3/155 Q
H02M3/28 Q
H03K17/13
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110569
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 敏祐
(72)【発明者】
【氏名】山上 滋春
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730BB11
5H730BB21
5H730BB61
5H730EE04
5H730EE08
5H770AA02
5H770DA01
5H770DA18
5H770EA23
5H770JA11X
5H770JA13X
5J055AX25
5J055AX55
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX13
5J055CX19
5J055DX13
5J055EY05
5J055EY07
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子にかかる電圧を抑制でき、負荷が変動した時でもZVSを達成できる共振型電力変換装置。
【解決手段】共振型電力変換装置は、スイッチング素子Q0と、スイッチング素子Q0に並列に接続された入力キャパシタC0と、入力側がスイッチング素子Q0に並列に接続されたE級インバータ回路13とを備える。E級インバータ回路13は、一端がスイッチング素子Q0の一端に接続された第1共振回路11と、スイッチング素子Q0に並列に接続された第2共振回路12とを備える。第2共振回路12の共振周波数は、スイッチング周波数f
sの2倍の周波数に設定されている。第2共振回路12の特性インピーダンスZ
2の絶対値は、出力端子Toに接続される負荷部30のインピーダンスの最大値の絶対値よりも大きい値に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電源を接続可能な正負一対の入力端子と、
一端が前記正負一対の入力端子の少なくともいずれか一方に接続された入力インダクタと、
前記入力インダクタを介して前記正負一対の入力端子に並列に接続され、所定のスイッチング周波数でスイッチ可能なスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に並列に接続された入力キャパシタと、
一端が前記スイッチング素子の一端に接続された第1共振回路と、前記スイッチング素子に並列に接続された第2共振回路とを備えたE級インバータ回路と、
前記第1共振回路の他端と、前記スイッチング素子の他端とにそれぞれ接続される一対の出力端子と
を備え、
前記第1共振回路の共振周波数は、前記スイッチング周波数に応じた周波数に設定され、
前記第2共振回路の共振周波数は、前記スイッチング周波数の2倍の周波数に設定され、
前記第2共振回路の特性インピーダンスの絶対値は、前記出力端子に接続される負荷のインピーダンスの最大値の絶対値よりも大きい値に設定される
共振型電力変換装置。
【請求項2】
前記第1共振回路は、第1共振インダクタと第1共振キャパシタが直列に接続された直列共振回路である
請求項1に記載の共振型電力変換装置。
【請求項3】
前記第2共振回路は、第2共振インダクタと第2共振キャパシタが直列に接続された直列共振回路である
請求項1に記載の共振型電力変換装置。
【請求項4】
前記負荷は、前記出力端子に接続される整流回路を備え、
前記入力インダクタと、前記スイッチング素子と、前記E級インバータ回路と、前記整流回路とにより、DC/DCコンバータが構成されている
請求項1に記載の共振型電力変換装置。
【請求項5】
前記E級インバータ回路は、前記第1共振回路と前記第2共振回路の間を絶縁する絶縁部を更に備える
請求項1に記載の共振型電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振型電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
E級インバータ回路を用いたDC/DCコンバータ回路のような共振型電力変換装置では、一般に、スイッチング素子の両端に印加される電圧のピーク値が電圧共振によって直流入力電圧の約3.7倍まで上昇する。そのために、このような共振型電力変換装置では、直流入力電圧の値に比べて、高耐圧で、それ故に高オン抵抗のスイッチング素子を使用する必要性が生じ、そのことがコストアップや、変換効率の低下等の要因となっていた。
【0003】
引用文献1では、上述のような課題があると定義し、直流入力端子間にスイッチング素子と共に直列に接続された第2共振回路を付与し、第2共振回路のインピーダンスの周波数特性が2つの共振周波数を有し、2つの共振周波数のうちの低域の第1共振周波数がスイッチング素子のスイッチング周波数より高く、2つの共振周波数のうちの高域の第2共振周波数がスイッチング周波数の略2倍であり、第2共振回路のインピーダンスが、第1共振周波数で極大となり、第2共振周波数で極小となる構成とすることにより、スイッチング素子の両端電圧を直流入力電圧の約2倍まで抑えることのできる電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように構成された電力変換装置では、出力側に接続される負荷が定格の場合には、スイッチング素子の両端電圧を直流入力電圧の約2倍まで抑えることができるとともに、スイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)を達成することができる。しかしながら、発明者の解析によると、このような電力変換装置では、負荷が変動した時には、スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングを達成することができないために、スイッチング損失が悪化し、変換効率が低下することが分った。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、スイッチング素子の両端電圧の上昇を抑制することができるとともに、負荷が変動した時でもゼロ電圧スイッチングを達成でき、変換効率が低下しない電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係わる共振型電力変換装置は、直流入力電源を接続可能な正負一対の入力端子と、一端が入力端子の少なくともいずれか一方に接続された入力インダクタと、入力インダクタを介して正負一対の入力端子に並列に接続され、所定のスイッチング周波数でスイッチ可能なスイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続された入力キャパシタと、入力側がスイッチング素子に並列に接続されたE級インバータ回路とを備える。E級インバータ回路は、一端がスイッチング素子の一端に接続された第1共振回路と、スイッチング素子に並列に接続された第2共振回路とを備える。第1共振回路の他端と、スイッチング素子の他端とが、それぞれ一対の出力端子に接続されている。第1共振回路の共振周波数は、スイッチング周波数に応じた周波数に設定されている。第2共振回路の共振周波数は、スイッチング周波数の2倍の周波数に設定されている。第2共振回路の特性インピーダンスの絶対値は、出力端子に接続される負荷のインピーダンスの最大値の絶対値よりも大きい値に設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチング素子の両端電圧を抑制することができるとともに、負荷が変動した時でもゼロ電圧スイッチングを達成でき、変換効率が低下しない共振型電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る共振型電力変換装置の構成を示す回路図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る共振型電力変換装置の第2共振回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る共振型電力変換装置において、スイッチング素子がオフの時に、負荷部から直流入力電源側を見た時のインピーダンスの絶対値の周波数特性を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る共振型電力変換装置において、共振型電力変換装置のスイッチング素子のゲート信号を所定のスイッチング周波数でオン・オフさせたときに、スイッチング素子の両端に印加されるデバイス電圧の波形を示す図である。
【
図5】
図5は、比較例の電力変換装置において、スイッチング素子がオフの時に、負荷部から直流入力電源側を見た時のインピーダンスの絶対値の周波数特性を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例の電力変換装置において、スイッチング素子を所定のスイッチング周波数のゲート信号でオン・オフさせたときに、スイッチング素子の両端に印加されるデバイス電圧の波形を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態において、第2共振回路に設定した負荷部のインピーダンスの最大値が実際の負荷部のインピーダンスよりも大きい場合に、スイッチング素子を所定のスイッチング周波数のゲート信号でオン・オフさせたときに、スイッチング素子に流れるデバイス電流とスイッチング素子の両端に印加されるデバイス電圧の関係を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態において、第2共振回路に設定した負荷部のインピーダンスの最大値が実際の負荷部のインピーダンスよりも小さい場合に、スイッチング素子を所定のスイッチング周波数のゲート信号でオン・オフさせたときに、スイッチング素子に流れるデバイス電流とスイッチング素子の両端に印加されるデバイス電圧の関係を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係わる共振型電力変換装置の構成を示す回路図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係わる共振型電力変換装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態に係る共振型電力変換装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。各実施形態に係る共振型電力変換装置の図中の同一または相当部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る共振型電力変換装置10の構成を説明する。共振型電力変換装置10は、正負一対の入力端子Tiと、入力インダクタL0と、スイッチング素子Q0と、入力キャパシタC0と、E級インバータ回路13と、一対の出力端子Toとを備える。正負一対の入力端子Tiには、直流入力電源20から直流電圧Viが供給される。正側の入力端子Tiには、入力インダクタL0一端が接続される。スイッチング素子Q0が、入力インダクタL0の他端と負側の入力端子Tiとの間に接続されている。スイッチング素子Q0には、入力キャパシタC0が並列に接続されている。スイッチング素子Q0と入力キャパシタC0には、E級インバータ回路13の入力側が並列に接続されている。E級インバータ回路13は、第1共振回路11と第2共振回路12とを備える。第1共振回路11の一端は、スイッチング素子Q0の正側に接続される。第2共振回路12は、スイッチング素子Q0と入力キャパシタC0に並列に接続されている。一対の出力端子Toが、第1共振回路11の他端と、スイッチング素子Q0の負側とにそれぞれ接続されている。一対の出力端子Toには、負荷部30が接続される。共振型電力変換装置10は、出力端子Toに交流電圧を出力する。
【0012】
なお、入力インダクタL0の一端が負側の入力端子Tiに接続され、スイッチング素子Q0が正側の入力端子と入力インダクタL0の他端との間に接続されていてもよく、入力インダクタL0を2つ設け、入力インダクタL0の一端が正側及び負側の入力端子Tiにそれぞれ接続され、スイッチング素子Q0が2つの入力インダクタL0の他端の間に接続されてもよい。また、第1共振回路11の一端は、スイッチング素子Q0の負側に接続されていてもよく、この場合、一対の出力端子Toは、スイッチング素子Q0の正側と第1共振回路11の他端とにそれぞれ接続されている。
【0013】
スイッチング素子Q0には、本実施形態では、Nチャネル型MOSFETを用いた例として説明されるが、それ以外の半導体スイッチング素子により構成されていてもよい。
【0014】
スイッチング素子Q0は、所定のスイッチング周波数fsの矩形波パルス状のゲート信号Vgsをゲートに印加することにより、オンとオフがスイッチされるように制御される。
【0015】
第1共振回路11の共振周波数f1は、スイッチング周波数fsに応じた周波数に設定される。換言すると、第1共振回路11の共振周波数f1は、スイッチング周波数fsまたはその近傍の周波数に設定される。
【0016】
第1共振回路11は、例えば、
図1に示すように、第1共振インダクタL1と第1共振キャパシタC1が直列に接続された直列共振回路により構成されている。この場合、第1共振インダクタL1のインダクタンスL
1と第1共振キャパシタC1のキャパシタンスC
1による共振周波数f
1は、式1のようにスイッチング周波数f
sに略等しい値に設定される。
【数1】
…(式1)
【0017】
なお、第1共振回路11は、
図1のような形態に限定されず、共振周波数f
1がスイッチング周波数f
sの近傍となるように構成されていればよい。
【0018】
第2共振回路12の共振周波数は、スイッチング周波数fsの2倍の周波数2fsに設定されている。また、第2共振回路12の特性インピーダンスZ2は、出力端子Toに接続される負荷部30のインピーダンスZLの絶対値|ZL|よりも大きい値に設定されている。
【0019】
第2共振回路12は、例えば、
図2に示すように、第2共振インダクタL2と第2共振キャパシタC2が直列に接続された直列共振回路により構成される。この場合、第2共振インダクタL2のインダクタンスL
2と第2共振キャパシタC2のキャパシタンスC
2による共振周波数f
2は、式2のように、スイッチング周波数f
sに対して2倍の周波数2f
sに設定されている。
【数2】
…(式2)
【0020】
なお、第2共振回路12は、
図2のような形態に限定されず、共振周波数がスイッチング周波数f
sの2倍の周波数2f
sに略等しい値となるように構成されていればよい。
第2共振回路12が、
図2に示すように構成されている場合、式3のように、第2共振回路12の特性インピーダンスZ
2は、負荷部30のインピーダンスZ
Lの絶対値|Z
L|よりも大きい値に設定されている。
【数3】
…(式3)
【0021】
図1または
図2のように構成された共振型電力変換装置10において、スイッチング素子Q0がオフ(オープン)の時に、負荷部30から直流入力電源20側を見た時のインピーダンスZの絶対値|Z|の周波数特性を
図3に示す。
【0022】
式2と式3の条件を満たすことにより、
図3に示すように、共振型電力変換装置10のインピーダンスZの絶対値|Z|の周波数特性に関して、スイッチング周波数f
sの時のインピーダンスの絶対値|Z(f
s)|、スイッチング周波数f
sの3次高調波3f
sの時のインピーダンスの絶対値|Z(3f
s)|、スイッチング周波数f
sの2次高調波2f
sの時のインピーダンスの絶対値|Z(2f
s)|の順で大きさが小さくなっていく、すなわち、式4のような関係となっている。
【数4】
…(式4)
【0023】
図4は、共振型電力変換装置10のスイッチング素子Q0を所定のスイッチング周波数f
sのゲート信号V
gsでオン・オフさせたときに、スイッチング素子Q0の両端に印加されるデバイス電圧V
dsの波形を示す図であり、横軸が時間tとなっている。ここで、デバイス電圧V
dsとは、スイッチング素子Q0のドレイン・ソース間電圧のことである。デバイス電圧V
dsの波形において、実線が負荷部30の負荷の大きさが定格の時の波形、鎖線が負荷部30の負荷の大きさが定格よりも大きいが式3の条件を満たしている時の波形である。このように、スイッチング素子Q0のゲート信号V
gsが時刻t11でオフされることにより、スイッチング素子Q0の両端にデバイス電圧V
dsが発生する。そして、ゲート信号V
gsがオフの期間に、負荷部30の負荷の大きさが定格の時(実線)と定格よりも大きいとき(鎖線)のいずれもデバイス電圧V
dsがゼロとなった状態で、時刻t12でスイッチング素子Q0のゲート信号V
gsがオンとされるゼロ電圧スイッチングが達成されている。換言すると、式4のような関係を満たすことにより、デバイス電圧V
dsの2次高調波2f
s成分が減衰してデバイス電圧V
dsの大きさが抑制されとともに、負荷が式3の範囲内で変動した場合でも、デバイス電圧V
dsに3次高調波3f
s成分が発生することを抑制することができるので、ゼロ電圧スイッチングを達成させることができる。
【0024】
比較のために、
図5に、特許文献1のような回路構成の比較例の電力変換装置において、スイッチング素子がオフの時に、負荷部から直流入力電源側を見た時のインピーダンスZの絶対値|Z|の周波数特性を示す。また、
図6に、比較例の電力変換装置において、スイッチング素子をスイッチング周波数f
sのゲート信号V
gsでオン・オフさせたときに、スイッチング素子の両端に印加されるデバイス電圧V
dsの波形を示す。
図6のデバイス電圧V
dsの波形において、実線が負荷が定格の時、鎖線が負荷が定格よりも高負荷の時、一点鎖線が負荷が鎖線の時よりもさらに高負荷の時となっている。なお、
図5,6共に発明者による解析結果に基づくものである。
【0025】
図5より、比較例の電力変換装置では、インピーダンスZの絶対値|Z|の周波数特性に関して、式5のような関係になっていることが分る。
【数5】
…(式5)
【0026】
式5のようなインピーダンスZの絶対値|Z|の周波数特性の場合、負荷が定格の時では、
図6の実線で表す波形のように、スイッチング素子のゲート信号V
gsが時刻t21でオフされることにより、スイッチング素子の両端にデバイス電圧V
dsが発生する。そして、ゲート信号V
gsがオフの期間に、デバイス電圧V
dsに2次高調波2f
s成分が減衰して、デバイス電圧V
dsの大きさが抑制されとともに、デバイス電圧V
dsがゼロとなった状態で、時刻t22でスイッチング素子Q0がオンとされるゼロ電圧スイッチングが達成されている。
【0027】
負荷が定格よりも高負荷になると、
図6の破線や一点鎖線で示す波形のように、スイッチング素子のゲート信号V
gsが時刻t21でオフされることにより、スイッチング素子の両端にデバイス電圧V
dsが発生する。この時、デバイス電圧V
dsの2次高調波2f
s成分が減衰して、デバイス電圧V
dsの大きさが抑制されているが、デバイス電圧V
dsに3次高調波3f
s成分が発生することにより、デバイス電圧V
dsが0Vになる前に時刻t22でゲート信号V
gsがオンとなってしまう。このように、ゼロ電圧スイッチングを達成することができなくなってしまうために、スイッチング損失が悪化し、変換効率の低下の一因となっている。
【0028】
これに対して、第1実施形態では、
図1や
図2のような回路構成の共振型電力変換装置10において、第2共振回路12を式2と式3の条件を満たすように設計することにより、式4のようなインピーダンスZの絶対値|Z|の周波数特性を実現する。このことにより、負荷部30のインピーダンスの絶対値|Z
L|が式3で設定した最大値|Z
L_Max|よりも小さい範囲内では、スイッチング素子Q0のデバイス電圧V
dsを抑制することができるとともに、負荷部30のインピーダンスZ
Lが変動した時でもゼロ電圧スイッチングを達成することができる。
【0029】
図7は、式3により設定した負荷部30のインピーダンスの最大値|Z
L_Max|が実際の負荷部30のインピーダンス|Z
L|よりも大きいときに、スイッチング素子Q0に流れるデバイス電流I
dとスイッチング素子Q0の両端に印加されるデバイス電圧V
dsの関係を示す図であり、横軸が時間tとなっている。ここで、実線が負荷が定格の時、鎖線が負荷が定格よりも高負荷の時、一点鎖線が負荷が鎖線の時よりも更に高負荷の時となっている。
図7では、時刻t31でゲート信号V
gsがオフとなることにより、デバイス電流(ドレイン電流)I
dが0になるとともに、デバイス電圧V
dsが発生する。そして、時刻t32で、デバイス電圧V
dsが0になっている状態で、ゲート信号V
gsがオンとなるゼロ電圧スイッチングを達成することができており、デバイス電流I
dも過電流となっていない。このように、|Z
L_Max|>|Z
L|の範囲では、負荷部30のインピーダンスZ
Lが変動しても常にゼロ電圧スイッチングを達成することができる。
【0030】
図8は、式3により設定した負荷部30のインピーダンスの最大値|Z
L_Max|が実際の負荷部30のインピーダンス|Z
L|よりも小さいときに、スイッチング素子Q0に流れるデバイス電流I
dとスイッチング素子Q0の両端に印加されるデバイス電圧V
dsの関係を示す図であり、横軸が時間tとなっている。
図8では、時刻t41でゲート信号V
gsがオフとなることにより、デバイス電流(ドレイン電流)I
dが0になるとともに、デバイス電圧V
dsが発生する。そして、時刻t42で、デバイス電圧V
dsが0になっていない状態でゲート信号V
gsがオンとなってしまっており、ゼロ電圧スイッチングを達成することができず、デバイス電流I
dもパルス状の過電流が発生してしまう。このように、|Z
L_Max|<|Z
L|の範囲では、ゼロ電圧スイッチングを達成することができず、スイッチング素子Q0をオンしたときに、スイッチング素子Q0にパルス電流が多く流れ、スイッチング損失が大きくなり、効率が低下する。
【0031】
次に、第2共振回路12の第2共振インダクタL2のインダクタンスL2と第2共振キャパシタC2のキャパシタンスC2の選び方を説明する。
【0032】
第2共振回路12の共振周波数f2が、式2のようにスイッチング周波数fsの2倍となるようなインダクタンスL2とキャパシタンスC2の組み合わせは無限に決まる。しかし、これと同時に、式3のように、第2共振回路12の特性インピーダンスZ2が、負荷部30のインピーダンスの最大値|ZL_Max|よりも大きくなるインダクタンスL2とキャパシタンスC2の組み合わせの選び方は限られたものとなる。このうち、インダクタンスL2が最小となるようなインダクタンスL2とキャパシタンスC2の組み合わせが第2共振回路12における第2共振インダクタL2によるコイル損失が最小となるので、このような条件となるインダクタンスL2とキャパシタンスC2の組み合わせを選定すればよい。
【0033】
第1実施形態に係る共振型電力変換装置10によれば、スイッチング素子Q0の両端にかかるデバイス電圧Vdsの上昇を抑制することができるとともに、負荷部30が変動した時でもゼロ電圧スイッチングを達成でき、変換効率が低下しない共振型電力変換装置10を提供することができる。
【0034】
(第2実施形態)
図9を参照して、第2実施形態の構成を説明する。第2実施形態では、共振型電力変換装置10の構成は第1実施形態と同様であるが、負荷部30は、共振型電力変換装置10の一対の出力端子Toに入力側が接続された整流回路と、整流回路の出力側に接続されて、直流電圧が供給されるバッテリBを備えた充電回路となっている点が相違している。
【0035】
図9に示した例では、整流回路は、ダイオードD1とダイオードD2が直列に接続された第1直列回路と、第1直列回路に並列に接続される、ダイオードD3とダイオードD4が直列に接続された第2直列回路と、第1直列回路と第2直列回路の一方の接続点に一端が接続される出力インダクタL3と、出力インダクタL3の他端と第1直列回路と第2直列回路の他方の接続点との間に接続された出力キャパシタC3を備えた全波整流回路である。ダイオードD1とダイオードD2の接続点が正側の出力端子Toに接続され、ダイオードD3とダイオードD4の接続点が負側の出力端子Toに接続される。バッテリBは、出力キャパシタC3に並列に接続される。
【0036】
なお、整流回路は、
図9の例に限定されず、共振型電力変換装置10の出力端子Toから出力される交流電圧を直流電圧に変換できるものであれば、何でもよい。
【0037】
共振型電力変換装置10の出力端子Toに整流回路を接続することにより、DC/DCコンバータを構成することができる。
【0038】
第2実施形態に係る共振型電力変換装置10でも、スイッチング素子Q0の両端にかかるデバイス電圧Vdsを抑制することができるとともに、負荷部30が変動した時でもゼロ電圧スイッチングを達成でき、変換効率が低下しない共振型電力変換装置10を提供することができる。
【0039】
(第3実施形態)
図10を参照して、第3実施形態の構成を説明する。第3実施形態では、共振型電力変換装置10AのE級インバータ回路13Aに、E級インバータ回路13Aの入力側と出力側を絶縁する絶縁部14が設けられている点が第2実施形態と相違している。
図10では、第2共振回路12と第1共振回路11の間に絶縁部14としての高周波トランスが設けられている例を記載したが、これには限定されず、共振型電力変換装置10Aの入力端子Tiと出力端子Toの間で絶縁が取れればどのような構成でもよい。
【0040】
第3実施形態の共振型電力変換装置10Aの出力端子Toに整流回路を接続することにより、絶縁型DC/DCコンバータを構成することができる。
【0041】
第3実施形態に係る共振型電力変換装置10Aでも、スイッチング素子Q0の両端にかかるデバイス電圧Vdsを抑制することができるとともに、負荷部30が変動した時でもゼロ電圧スイッチングを達成でき、変換効率が低下しない共振型電力変換装置10Aを提供することができる。
【0042】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0043】
10,10A 共振型電力変換装置
11 第1共振回路
12 第2共振回路
13,13A E級インバータ回路
14 絶縁部
20 直流入力電源
30 負荷部
C0 入力キャパシタ
C1 第1共振キャパシタ
C2 第2共振キャパシタ
fs スイッチング周波数
L0 入力インダクタ
L1 第1共振インダクタ
L2 第2共振インダクタ
Q0 スイッチング素子
Ti 入力端子
To 出力端子