(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085823
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】脱出シュート
(51)【国際特許分類】
A62B 3/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A62B3/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200571
(22)【出願日】2022-12-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】522488188
【氏名又は名称】大牟田 國男
(71)【出願人】
【識別番号】522488214
【氏名又は名称】大牟田 節子
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】大牟田 國男
(72)【発明者】
【氏名】大牟田 節子
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA04
2E184AA05
2E184DD12
(57)【要約】
【課題】迅速に且つ安全に避難することができ、しかも、使い勝手の良い低コストな脱出シュートを提供する。
【解決手段】脱出シュート1は、上下に並ぶ4つの足場ユニット4と、各足場ユニット4を上下一列に所定の間隔をあけて連結する4つの連結ロープ5と、各足場ユニット4を互いに近づけると蛇腹状に折り畳まれる一方、互いに離間させると筒状に展延する柔軟性を有するカバー部材6と、マンションの所定の位置に吊下げる把持ロープ3とを備える。各連結ロープ5の上端部分には、マンションの所定の位置に取り付ける第1フック部5aが設けられる。カバー部材6の側面には、避難者がカバー部材6の内側と外側とを行き来可能な出入口部6aが設けられる。足場ユニット4は、避難者を支持可能な支持プレートと、避難者が通過可能な避難用通過口と、避難用通過口を開閉可能な扉部材9とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難者が建物からの脱出に使用する脱出シュートであって、
上下に並ぶ複数の板状をなす足場ユニットと、
上下に延び、且つ、前記足場ユニットの外周縁部に沿って並設され、当該各足場ユニットを上下一列に所定の間隔をあけて連結する複数の連結ロープと、
前記各足場ユニットを囲うように設けられ、且つ、前記避難者が上下に通過可能に構成され、前記各足場ユニットを互いに近づけると蛇腹状に折り畳まれる一方、互いに離間させると筒状に展延する柔軟性を有するカバー部材と、
該カバー部材の内側に上下に延びる姿勢となるよう前記建物の所定の位置に吊下げ可能に構成され、前記避難者が脱出時に把持する把持ロープと、を備え、
前記各連結ロープの上端部分には、前記建物の所定の位置に取付可能な取付部が設けられ、
前記カバー部材の側面には、前記避難者が前記カバー部材の内側と外側とを行き来可能な出入口部が設けられ、
前記足場ユニットは、前記避難者を支持可能な支持プレートと、前記避難者が上下に通過可能に開口する避難用通過口と、該避難用通過口を開閉可能な扉部材と、を備えていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項2】
請求項1に記載の脱出シュートにおいて、
前記カバー部材の側面には、前記出入口部を開閉可能な非常ドア部が設けられ、
該非常ドア部は、前記カバー部材側面の一部領域が囲われるように当該カバー部材を切断することにより形成された当該切断部分の内側領域で構成され、
前記非常ドア部と前記カバー部材の前記非常ドア部を除く領域とは、線ファスナーによって繋ぎ合わされるようになっていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項3】
請求項1に記載の脱出シュートにおいて、
前記カバー部材は、不透明な樹脂材で形成されていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の脱出シュートにおいて、
隣り合う2つの前記足場ユニットにおける一方の前記足場ユニットの前記支持プレートは、他方の前記足場ユニットの前記避難用通過口と上下に対応する位置となっており、
隣り合う2つの前記足場ユニットにおける一方の前記足場ユニットの前記避難用通過口は、他方の前記足場ユニットの前記支持プレートと上下に対応する位置となっていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載の脱出シュートにおいて、
前記足場ユニットは、平面視で環状をなすフレーム部材を備え、
該フレーム部材は、当該フレーム部材の内部一側領域を覆うように前記支持プレートが取り付けられる一方、内部他側領域が前記避難用通過口として設定され、
前記扉部材は、当該扉部材の前記支持プレート側が上下動するよう前記フレーム部材に回動可能に支持されていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項6】
請求項5に記載の脱出シュートにおいて、
前記足場ユニットは、前記扉部材を下方に付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1つに記載の脱出シュートにおいて、
前記足場ユニットは、格子状に延びる可撓性ロープからなる補強ネットを備え、
該補強ネットは、前記支持プレートの下面全域を覆う位置に設けられていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1つに記載の脱出シュートにおいて、
前記足場ユニット又は前記カバー部材には、前記建物の所定の位置に引っ掛け可能な1つ以上の係合爪が設けられていることを特徴とする脱出シュート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災や地震等の災害が発生した際において、建物の2階以上に住んでいる避難者が建物の外側へと脱出する際に使用する脱出シュートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火災や地震等の非常時においてマンションやアパ―ト等の建物から効率良く、且つ、安全に脱出するのを目的とした避難装置や避難用ツールが一般的に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている避難装置は、建物のベランダに設置可能に構成されており、可撓性ワイヤを網状に組んで得た吊下ネットと、回転軸心が水平方向に延び、且つ、外周面に吊下ネットの一端が固定された巻上ホイールと、該巻上ホイールを一方に回転させることにより吊下ネットを巻き上げる一方、他方に回転させることにより吊下ネットを下方に繰り出すウインチ機構とを備えている。そして、非常時には、ウインチ機構を作動させて吊下ネットを建物の外側に繰り出して展開状態にした後、避難者は、吊下ネットの網目に手や足を掛けて当該吊下ネットを伝って下側へと降りることにより建物から脱出するようになっている。
【0004】
また、特許文献2に開示されている避難用ツールは、上下に細長く延びる筒状をなし、ベランダ等から建物の外側に垂れ下げられる避難用ロープを内部に挿通させたパイプ部材を備え、該パイプ部材は、避難用ロープに沿って上下にスライド可能になっている。パイプ部材の上端寄りの位置には、パイプ部材のスライド動作にブレーキを掛けるハンドブレーキが設けられる一方、パイプ部材下端には、 避難者が足を載せる足場部材と、パイプ部材のスライド動作にブレーキを掛けるフットブレーキとが設けられている。そして、非常時には、避難用ロープをパイプ部材に挿通させた後、避難用ロープとパイプ部材とをベランダの外側に垂らし、その後、避難者がパイプ部材を把持するとともに足場部材に足を掛け、且つ、避難用ロープに沿って下方にスライドさせるパイプ部材の速度をハンドブレーキとフットブレーキとで調整しながら、避難用ロープを伝って下側へと降りることにより建物から脱出するようになっている。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されている避難用ツールは、上下に延びる避難用梯子を覆う筒状をなしており、当該避難用梯子を避難者が上り下りする側をネット部としている。該ネット部は、上側領域と下側領域とが長手方向に緊張した伸縮性狭幅部である一方、中途部領域が横方向に緊張した非伸縮性広幅部となっている。そして、非常時において避難者が避難用梯子を降りる際、横方向に伸縮性を有する伸縮性狭幅部において避難者を緊迫状態で支えて当該避難者の不安感を取り除くことができるようになっている。また、避難者が避難用梯子を降りる際において、伸縮性狭幅部と非伸縮性広幅部との境界の段差部分において避難者の休憩を可能にするだけでなく、上記境界部分において避難者が避難用梯子から足を踏み外した際に引っ掛かるようにして避難者の転落を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-284786号公報
【特許文献2】特開2006-280869号公報
【特許文献3】実開昭48-69700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の避難装置は、吊下ネットの巻き上げ動作、或いは、繰り下げ動作をウインチ機構により行う構造になっているので、設備導入にコストが嵩んでしまう。また、避難者が上下に延びる姿勢の吊下ネットにしがみ付きながら当該吊下ネットを伝って下側へと降りる必要があるため、もし仮に足を踏み外してしまうと転落してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献2の避難用ツールは、降りる速度の調整を避難者自身が2つのブレーキを操作して行わなければならず、非常時の緊迫した状況下においては焦って操作を誤ってしまうおそれがある。それに加えて、避難者がパイプ部材にしがみ付いた状態で建物の下側へと降りる構成になっており、避難者の周囲には当該避難者を支えるものがないので、避難者に不意に衝撃が加わると勢い余って転落してしまうおそれがある。さらには、非常時において下側から上側へと登ることができないので、例えば、逃げ遅れた避難者を下から助けに登るといったことができないという課題もある。
【0009】
さらに、特許文献3の避難用ツールは、上側領域と下側領域とが狭幅となっているので、避難者がツール内を移動し難くて避難時に掛かる時間が増加するおそれがある。また、非常時において避難用梯子を覆うように避難用ツールを装着する必要があり、使用前準備が煩雑で使い勝手が悪いという課題もある。さらには、避難用ツールが避難用梯子の全域を覆う構成となっているので、非常時において避難用梯子を高層階から地上へと掛け渡す場合、中層階や低層階の避難者が避難する際に避難用ツールが邪魔になって避難用梯子を使用することができない。したがって、階層毎に避難用ツールと避難用梯子とが必要となるので、導入コストが嵩んでしまう。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、迅速に且つ安全に避難することができ、しかも、使い勝手の良い低コストな脱出シュートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る脱出シュートは、上下に伸縮可能な構造にして持ち運びやすくするとともに、使用時において簡単に設置できるよう工夫を凝らし、さらには、使用時において、避難者が通過可能な筒状のカバー部の中に上下に所定の間隔をあけて複数の足場ユニットを設けて当該各足場ユニットを利用して簡単且つ安全に避難できるようにしたことを特徴とする。
具体的には、避難者が建物からの脱出に使用する脱出シュートを対象とし、次のような対策を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明では、上下に並ぶ複数の板状をなす足場ユニットと、上下に延び、且つ、前記足場ユニットの外周縁部に沿って並設され、当該各足場ユニットを上下一列に所定の間隔をあけて連結する複数の連結ロープと、前記各足場ユニットを囲うように設けられ、且つ、前記避難者が上下に通過可能に構成され、前記各足場ユニットを互いに近づけると蛇腹状に折り畳まれる一方、互いに離間させると筒状に展延する柔軟性を有するカバー部材と、該カバー部材の内側に上下に延びる姿勢となるよう前記建物の所定の位置に吊下げ可能に構成され、前記避難者が脱出時に把持する把持ロープと、を備え、前記各連結ロープの上端部分には、前記建物の所定の位置に取付可能な取付部が設けられ、前記カバー部材の側面には、前記避難者が前記カバー部材の内側と外側とを行き来可能な出入口部が設けられ、前記足場ユニットは、前記避難者を支持可能な支持プレートと、前記避難者が上下に通過可能に開口する避難用通過口と、該避難用通過口を開閉可能な扉部材と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明に係る脱出シュートでは、第1の発明において、前記カバー部材の側面には、前記出入口部を開閉可能な非常ドア部が設けられ、該非常ドア部は、前記カバー部材側面の一部領域が囲われるように当該カバー部材を切断することにより形成された当該切断部分の内側領域で構成され、前記非常ドア部と前記カバー部材の前記非常ドア部を除く領域とは、線ファスナーによって繋ぎ合わされるようになっていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明に係る脱出シュートでは、第1の発明において、前記カバー部材は、不透明な樹脂材で形成されていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明に係る脱出シュートでは、第1から第3のいずれか1つの発明において、隣り合う2つの前記足場ユニットにおける一方の前記足場ユニットの前記支持プレートは、他方の前記足場ユニットの前記避難用通過口と上下に対応する位置となっており、隣り合う2つの前記足場ユニットにおける一方の前記足場ユニットの前記避難用通過口は、他方の前記足場ユニットの前記支持プレートと上下に対応する位置となっていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明に係る脱出シュートでは、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記足場ユニットは、平面視で環状をなすフレーム部材を備え、該フレーム部材は、当該フレーム部材の内部一側領域を覆うように前記支持プレートが取り付けられる一方、内部他側領域が前記避難用通過口として設定され、前記扉部材は、当該扉部材の前記支持プレート側が上下動するよう前記フレーム部材に回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0017】
第6の発明に係る脱出シュートでは、第5の発明において、前記足場ユニットは、前記扉部材を下方に付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする。
【0018】
第7の発明に係る脱出シュートでは、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記足場ユニットは、格子状に延びる可撓性ロープからなる補強ネットを備え、該補強ネットは、前記支持プレートの下面全域を覆う位置に設けられていることを特徴とする。
【0019】
第8の発明に係る脱出シュートでは、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記足場ユニット又は前記カバー部材には、前記建物の所定の位置に引っ掛け可能な1つ以上の係合爪が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明に係る脱出シュートでは、通常時には、各足場ユニットを互いに近づけてカバー部材を蛇腹状に折り畳むことで脱出シュート全体がコンパクトな状態になるので、脱出シュートの保管や移設を行い易くすることができる。一方、非常時には、避難者が各連結ロープの上端部分における取付部と把持ロープの上端部分とをそれぞれ建物の所定の位置に取り付けるとともに、建物の外側において各足場ユニットを離間させるとともにカバー部材を上下に筒状となるよう展延させ、さらには、その内側に把持ロープを上下に延びる姿勢となるように垂らして脱出シュートを使用状態にする。
そして、避難者は、カバー部材の上端開口か、或いは、出入口部を介して建物からカバー部材の内側に入り込んで所定の足場ユニットに載り、その後、当該足場ユニットにおける支持プレートに載った状態で扉部材を操作して避難用通過口を開けるとともに避難用ロープを把持しながら避難用通過口を下方に通過して一段下の足場ユニットに降りる。このように、避難者は、上下に所定の間隔をあけて位置する各足場ユニットに順に載っていきながら建物の下側に順次移動して建物から脱出することができる。
また、避難者は、カバー部材の内側を下方へと通過していくので、避難者が勢い余って脱出シュートから転落するといったおそれが無く、安全に脱出することができる。一方、避難者は、避難用ロープを引き寄せながら避難用通過口を介して一段上の足場ユニットに上がることもできる。
したがって、例えば、逃げ遅れた上層階の他の避難者を助けに行くこともできる。また、脱出シュートを使用状態にするのに特許文献1の如きウインチ機構を必要としないので、コストを低く抑えることができる。
【0021】
さらに、特許文献2のように避難者が非常時においてブレーキを操作するといった必要が無いので、避難者による操作ミスを起因とした被害の発生を防止することができる。それに加えて、特許文献3の如き避難通路を狭くする必要がないので、避難時における避難者の移動がし易くなり、避難時に費やす時間が短くなって効率良く建物から脱出することができる。
さらには、脱出シュートを使用状態にする際、脱出シュートの上端に対応する階層よりも下方に位置する各階層においても出入口部を介してカバー部材の内側と建物との間を行き来できるようになる。したがって、1つの脱出シュートで複数の階層から建物の外側に脱出することができるようになり、階層毎に脱出シュートを用意する必要が無くなるので、導入コストを低く抑えることができる。
【0022】
第2の発明に係る脱出シュートでは、非常ドア部で出入口部を閉めた際、非常ドア部とカバー部材の非常ドア部を除く領域との間が線ファスナーにより連続して繋がるようになる。したがって、非常ドア部で出入口部を閉めたときにカバー部材の強度が高まるようになり、カバー部材を破れ難くすることができる。
【0023】
第3の発明に係る脱出シュートでは、脱出時において避難者がカバー部材内部を通過する際、カバー部材の外側の景色が見えなくなる。したがって、例えば、高層ビルから脱出する際において避難者の恐怖心や不安を和らげて足が竦むのを防ぐことができるようになり、多くの避難者を迅速に脱出させることができる。
【0024】
第4の発明に係る脱出シュートでは、避難者が脱出時において足場ユニットにおける避難用通過口を下方に通過する際、必ず一段下の足場ユニットにおける支持プレートの上に着地するようになる。したがって、避難者が各足場ユニットを一段ずつ確実に降りて行くことができるようになり、避難者による脱出作業を安全に行うことができる。
【0025】
第5の発明に係る脱出シュートでは、足場ユニットの支持プレートに載る避難者が扉部材側を向くとともに当該扉部材の手前側を把持して上に持ち上げると、当該扉部材が上方に回動して避難用通過口が開口するようになる。したがって、避難者は避難時において支持プレートの位置から効率良く避難用通過口を介して下方へと移動することができる。
【0026】
第6の発明に係る脱出シュートでは、避難者が扉部材を上方に回動させた状態において避難用通過口を下方へと通過した後、付勢部材の付勢力によって扉部材が自動的に下方に回動して避難用通過口が閉まるようになる。したがって、次にその足場ユニットの上方から移動してくる避難者が当該足場ユニットに安全に着地することができる。
【0027】
第7の発明に係る脱出シュートでは、補強ネットが支持プレートを下方から支えるようになるので、足場ユニットの剛性をさらに高めることができ、足場ユニットに載る避難者の安定感を増すことができる。
【0028】
第8の発明に係る脱出シュートでは、避難者による建物からの脱出時において、脱出シュートが建物から離間し難くなって脱出シュート全体が揺れ難くなる。したがって、避難者の避難時における足場が安定するようになって、避難者による脱出動作をさらに安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る脱出シュートを使用して避難者がマンションから脱出している状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る脱出シュートの使用状態を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る脱出シュートの使用前状態を示す正面図である。
【
図6】足場ユニットの避難用通過口を開いた状態を示す
図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
図1は、本発明の実施形態に係る脱出シュート1を使用状態にして取り付けた状態の4階建てのマンションM(建物)を示す。脱出シュート1は、例えば、火災や地震等の災害が発生した際において、マンションMの2階以上に住んでいる避難者HがマンションMの外側に脱出する際に使用するものであり、
図2及び
図3に示すように、脱出時に避難者Hが内部を下方に通過するシュート本体2と、脱出時に避難者Hが把持する把持ロープ3とを備えている。
【0031】
シュート本体2は、上下に並ぶ4つの板状をなす足場ユニット4と、4本の連結ロープ5と、柔軟性を有する不透明な樹脂材で形成されたカバー部材6とを備えている。
足場ユニット4は、
図4に示すように、平面視で略正方形の環状をなす金属製のフレーム部材7と、略長方形板状をなす樹脂製の支持プレート8と、該支持プレート8に並設され、略長方形板状をなす可能性を有する樹脂製の扉部材9とを備えている。但し、足場ユニット4やフレーム部材7は略正方形に限定するものではなく、略長方形の他、略円形、略楕円形でもよく、その形状に応じてカバー部材6、支持プレート8あるいは扉部材9も構成される。
フレーム部材7の略中央には、当該フレーム部材7の内部を一側領域と他側領域とに区分けする補強フレーム7aが設けられ、フレーム部材7の内部一側領域を覆うように支持プレート8が配設される一方、フレーム部材7の内部他側領域は、避難者Hが上下に通過可能に開口する避難用通過口10として設定されている。
尚、フレーム部材7の略中央から2分割して、これをジョイントを介して接続できるようにしてもよい。分割が可能な場合はフレーム部材の大きさを半分にすることが可能であり、運搬時や収納時に場所を取らないという効果を発揮することができる。
【0032】
支持プレート8は、その外周縁部に沿って複数のハトメ8aが設けられており、各ハトメ8aにそれぞれ独立した無端状ロープ8bを通過させるとともに当該各無端状ロープ8bをフレーム部材7と補強フレーム7aとにそれぞれ巻き掛けることによりフレーム部材7に取り付けられていて、これにより、避難者Hを下方から支持可能になっている。
支持プレート8の補強フレーム7a側中央には、非常時において把持ロープ3を挿通させることが可能な挿通孔8cが形成されている。
扉部材9は、避難用通過口10の全域と支持プレート8における補強フレーム7a側の一部領域とを覆う形状になっており、その長手方向が補強フレーム7aに沿う姿勢となっている。
扉部材9における支持プレート8側の縁部には、当該支持プレート8の板面に沿って張り出す張出片部9aが扉部材9の長手方向両側に離れて一対設けられている。
【0033】
一方、扉部材9の支持プレート8から離れた側の縁部寄りの位置には、複数の取付孔9bが等間隔に形成されている。
扉部材9は、各取付孔9bにそれぞれステンリング9cを通過させるとともに当該各ステンリング9cをフレーム部材7に巻き掛けることにより、
図5及び
図6に示すように、扉部材9の支持プレート8側が上下動するようフレーム部材7に回動可能に支持されている。そして、扉部材9を上下動させることにより、避難用通過口10を開閉させることができるようになっている。
扉部材9の長手方向両端寄りには、一端が扉部材9の下面に接続される一方、他端がフレーム部材7に接続されたコイルバネ11(付勢部材)が配設され、該各コイルバネ11は、上方に回動させた状態の扉部材9を下方に付勢するようになっている。
扉部材9の支持プレート8側上面の中央部分には、幅広な略U字状をなす把手部9dが取り付けられ、避難者Hは、該把手部9dを把持して上方に力を加えることにより、コイルバネ11の付勢力に抗して扉部材9を上方に回動させて避難用通過口10を開くことができるようになっている。
【0034】
足場ユニット4は、複数の可撓性ロープを結んで網状にした補強ネット12を備えている。該補強ネット12は、平面視で格子状に延びる姿勢でフレーム部材7と補強フレーム7aとに括り付けられていて、支持プレート8の下面全域を覆う位置となっている。
そして、
図1に示される上下4段の足場ユニット4のうち、隣り合う2つの足場ユニット4における一方の足場ユニット4の支持プレート8は、他方の足場ユニット4の避難用通過口10と上下に対応する位置となっており、隣り合う2つの足場ユニット4における一方の足場ユニット4の避難用通過口10は、他方の足場ユニット4の支持プレート8と上下に対応する位置となっている。
すなわち、各足場ユニット4の支持プレート8は、脱出シュート1の側面視において上下方向に所定の間隔をあけながら千鳥状に配置されており、各足場ユニット4の避難用通過口10は、脱出シュート1の側面視において上下方向に所定の間隔をあけながら千鳥状に配置されている。
尚、本発明の実施形態における略正方形の足場ユニット4の一辺の長さは例えば1m程度であり、上下に隣り合う2つの足場ユニット4間の距離は例えば1.3~1.8mで避難者が無理なく退避可能な高さとするが、マンションMの各階間の距離も考慮して設計する必要がある。すなわち、脱出シュート1の大きさや高さについては設置する建物の状況に応じて設計することが望まれる。
【0035】
各連結ロープ5は、
図2乃至
図4に示すように、上下に延び、且つ、足場ユニット4の各隅部にそれぞれ取り付けている。すなわち、各連結ロープ5は、外周縁部に沿って並設され、各足場ユニット4を上下一列に所定の間隔をあけて連結している。
各連結ロープ5の上端部分は、一つに纏められていて、当該纏められた部分には、例えば、マンションMの梁等の所定の位置に引っ掛けて取り付けることができる第1フック部5a(取付部)が設けられている。
カバー部材6は、
図2及び
図3に示すように、各足場ユニット4を囲うように当該各足場ユニット4に取り付けられている。
カバー部材6は、各足場ユニット4を互いに近づけると蛇腹状に折り畳まれる一方、互いに離間させると角筒状に展延するようになっていて、角筒状に展延させた状態で避難者Hが上下に通過可能に構成されている。尚、カバー部材6は保管時には蛇腹状に折り畳まれ、使用時には展延されるため柔軟性の高い材料であることが最重要であり、その他の足場ユニット4、フレーム部材7、支持プレート8あるいは扉部材9も曲がりや割れあるいは抜けや錆びといった様々な障害となるような材質は用いないことが重要である。
展延状態のカバー部材6の外周面における一つの側面には、
図2に示すように、避難者Hがカバー部材6の内側と外側とを行き来可能な略矩形状をなす複数の出入口部6aが形成されている。
【0036】
該各出入口部6aは、隣り合う2つの足場ユニット4の間にそれぞれ対応するように形成されている。
また、カバー部材6の外周面における一つの側面には、出入口部6aを開閉可能な非常ドア部6bが設けられている。
該非常ドア部6bは、カバー部材6の側面の一部領域が囲われるように当該カバー部材6を横向きU字状に切断することにより形成された当該切断部分の内側領域で構成され、非常ドア部6bとカバー部材6の非常ドア部6bを除く領域とは、線ファスナー6cによって繋ぎ合わされている(
図7参照)。
カバー部材6の上端開口周縁には、
図1に示すように、マンションMのベランダの手摺りや窓枠等に上方から引っ掛け可能な一対の係合爪6dが設けられ、該各係合爪6dは、カバー部材6における各出入口部6aと同じ側面に位置している。
また、カバー部材6の外周面には、展延状態のカバー部材6をマンションMの手摺り等に括り付けて固定する複数の固定用ロープ6eが設けられている。
【0037】
把持ロープ3の一端には、
図1乃至
図3に示すように、第2フック部3a(取付部)が設けられている。把持ロープ3は、第2フック部3aをマンションMの梁等の所定の位置に引っ掛け、且つ、各足場ユニット4の挿通孔8cに挿通させてカバー部材6の内側に上下に延びる姿勢となるように吊下げるとともに、他端部分を地上に設けられたアンカー部材13に括り付けて使用するようになっている。
【0038】
次に、災害時における脱出シュート1を用いた4階建てのマンションMからの避難者Hの脱出の仕方について詳述する。尚、脱出シュート1は、把持ロープ3が各足場ユニット4の挿通孔8cに挿通された状態で折り畳まれてマンションMの4階ベランダに設置されているものとする。
災害が発生すると、
図1に示すように、まず、避難者Hの1人がマンションMの4階ベランダの梁等に脱出シュート1の第1フック部5aと把持ロープ3の第2フック部3aとをそれぞれ引っ掛けて取り付ける。このとき、避難者Hは、第1フック部5aと第2フック部3aとを別の梁等の構造物に取り付ける。その後、シュート本体2をベランダの手摺りの外側に運んで落下させる。すると、各足場ユニット4が落下しながら互いに離間し、それに伴ってカバー部材6が下方に展延して上下に延びる角筒状となる。
また、カバー部材6の内側に位置する把持ロープ3も上下に延びる姿勢になる。このとき、落下させるシュート本体2が地上にいる人に勢いよく接触するのを防止するために、所定のロープを用意して、その一端をシュート本体2の下端に括り付けるとともに、そのロープを少しずつベランダの手摺りの外側において下方に垂らしながらカバー部材6を徐々に下方に展延させるようにしてもよい。
【0039】
次に、4階のベランダにいる避難者Hは、シュート本体2を手前に引き寄せて2つの係合爪6dをベランダの手摺りに上方から引っ掛ける。すると、カバー部材6において各係合爪6dと同じ側に設けられた各出入口部6aがマンションM側を向くとともに当該マンションMに接近する。尚、使用状態における各足場ユニット4及び各出入口部6aの位置は、マンションMにおける各階層の高さにそれぞれ対応するように設定されている。
次いで、2階及び3階にいる避難者Hは、固定用ロープ6eをベランダの所定の位置に括り付けて展延状態のカバー部材6の中途部をマンションMに固定する。さらに、地上にいる避難者Hは、把持ロープ3の下端をアンカー部材13に括り付ける。
【0040】
そして、4階にいる避難者Hは、カバー部材6の上端開口から当該カバー部材6の内側に入り込んで最上段の足場ユニット4に載る。その後、避難者Hは、自身が位置する足場ユニット4の支持プレート8に載るとともに、把手部9dを持って扉部材9を上方に持ち上げる。すると、扉部材9が上方に回動して避難用通過口10が開くので、避難者Hは、把持ロープ3を把持しながら避難用通過口10を下方に通過して一段下の足場ユニット4に降りる。このように、避難者Hは、上下に所定の間隔をあけて位置する各足場ユニット4に順に載っていきながらマンションMの下側に順次移動してマンションMから脱出する。
【0041】
一方、2階や3階にいる避難者Hは、カバー部材6側面の線ファスナー6cを操作することにより非常ドア部6bを開けて出入口部6aを開口させた後、当該出入口部6aを介してカバー部材6の内側に入り込んで各階層に対応する足場ユニット4に載る。そして、避難用通過口10を介して各足場ユニット4に順に載っていきながらマンションMの下側に順次移動してマンションMから脱出する。
尚、避難者Hは、把持ロープ3を引き寄せながら避難用通過口10を介して一段上の足場ユニット4に上がることもできる。したがって、例えば、逃げ遅れた上層階の他の避難者Hを助けに行くこともできる。
【0042】
このように、本発明の実施形態によると、避難者Hは、非常時において、脱出シュート1におけるカバー部材6の内側を下方へと通過していくので、避難者Hが勢い余って脱出シュート1から転落するといったおそれが無く、安全に脱出することができる。
また、脱出シュート1を使用状態にする際、脱出シュート1の上端に対応する階層よりも下方に位置する各階層においても出入口部6aを介してカバー部材6の内側とマンションMとの間を行き来できるようになる。したがって、1つの脱出シュート1で複数の階層からマンションMの外側に脱出することができるようになり、階層毎に脱出シュート1を用意する必要が無くなるので、導入コストを低く抑えることができる。
【0043】
一方、通常時には、各足場ユニット4を互いに近づけてカバー部材6を蛇腹状に折り畳むことで脱出シュート1全体がコンパクトな状態になるので、脱出シュート1の保管や移設を行い易くすることができる。
また、脱出シュート1を使用状態にするのに特許文献1の如きウインチ機構を必要としないので、コストを低く抑えることができる。さらに、特許文献2のように避難者Hが非常時においてブレーキを操作するといった必要が無いので、避難者Hによる操作ミスを起因とした被害の発生を防止することができる。それに加えて、特許文献3の如き避難通路を狭くする必要がないので、避難時における避難者Hの移動がし易くなり、避難時に費やす時間が短くなって効率良くマンションMから脱出することができる。
【0044】
非常ドア部6bで出入口部6aを閉めた際、非常ドア部6bとカバー部材6の非常ドア部6bを除く領域との間が線ファスナー6cにより連続して繋がるようになる。したがって、非常ドア部6bで出入口部6aを閉めたときにカバー部材6の強度が高まるようになり、カバー部材6を破れ難くすることができる。
また、カバー部材6が不透明な樹脂材(天然樹脂材の他合成樹脂材も含む)、天然繊維、化学繊維あるいは天然繊維と化学繊維の複合繊維で形成されているので、脱出時において避難者Hがカバー部材6内部を通過する際、カバー部材6の外側の景色が見えなくなる。したがって、例えば、高層ビルから脱出する際において避難者Hの恐怖心や不安を和らげて足が竦むのを防ぐことができるようになり、多くの避難者Hを迅速に脱出させることができる。尚、このようなカバー部材6に通気性が不足することで風力を受け過ぎる場合には通気孔等の抵抗減衰構造をカバー部材6に設けるとよい。
さらに、脱出シュート1を外の景色が見えてもよいような低層階へ設置する場合にはカバー部材6不透明な材料を採用することなく、透明あるいは半透明であってもよい。素材としては前述の樹脂や繊維を用いることができる。但し、火災の際にも避難が可能なように材料として難燃性で、かつ有毒なガスや煙が脱出シュート1内に入り込まないような構造とすることが望ましい。
また、脱出シュート1を使用状態にすると、隣り合う2つの足場ユニット4における一方の足場ユニット4の支持プレート8は、他方の足場ユニット4の避難用通過口10と上下に対応する位置となっており、上下に隣り合う2つの足場ユニット4における一方の足場ユニット4の避難用通過口10は、他方の足場ユニット4の支持プレート8と上下に対応する位置となっているので、避難者Hは必ず一段下の足場ユニット4における支持プレート8の上に着地するようになる。したがって、避難者Hが各足場ユニット4を一段ずつ確実に降りて行くことができるようになり、避難者Hによる脱出作業を安全に行うことができる。
【0045】
また、足場ユニット4における扉部材9は、当該扉部材9の支持プレート8側が上下動するようフレーム部材7に回動可能に支持されているので、支持プレート8に載る避難者Hが扉部材9側を向くとともに当該扉部材9の手前側に設けられた把手部9dを把持して上に持ち上げると、当該扉部材9が上方に回動して避難用通過口10が開口するようになる。したがって、避難者Hは避難時において支持プレート8の位置から効率良く避難用通過口10を介して下方へと移動することができる。
また、各コイルバネ11が扉部材9を下方へと付勢しているので、避難者Hが扉部材9を上方に回動させた状態において避難用通過口10を下方へと通過した後、各コイルバネ11の付勢力によって扉部材9が自動的に下方に回動して避難用通過口10が閉まるようになる。したがって、次にその足場ユニット4の上方から移動してくる避難者Hが当該足場ユニット4に安全に着地することができる。
また、補強ネット12が支持プレート8の下面全域を覆う位置に設けられているので、補強ネット12が支持プレート8を下方から支えるようになる。したがって、足場ユニット4の剛性をさらに高めることができ、足場ユニット4に載る避難者Hの安定感を増すことができる。
【0046】
さらに、カバー部材6には、マンションMの手摺りに引っ掛け可能な2つの係合爪6dが設けられているので、避難者HによるマンションMからの脱出時において、脱出シュート1がマンションMから離間し難くなって脱出シュート1全体が揺れ難くなる。したがって、避難者Hの避難時における足場が安定するようになって、避難者Hによる脱出動作をさらに安全に行うことができる。
それに加えて、足場ユニット4におけるフレーム部材7及び補強フレーム7aと支持プレート8とは、独立した複数の無端状ロープ8bで繋がっているので、もし仮に、無端状ロープ8bが2,3個切れてしまったとしても他の無端状ロープ8bでしっかりとフレーム部材7及び補強フレーム7aと支持プレート8とを繋いでおくことができるようになり、長く使用できる脱出シュート1にすることができる。
【0047】
尚、本発明の実施形態では、カバー部材6に出入口部6aをマンションMの各階層に対応するように設けているが、各階層全てに対応させて設ける必要はなく、例えば、ひとつおきの階層に対応するように設けるようにし、出入口部6aに対応しない階層の避難者Hは、ベランダに設けられた非常口を介して下の階に移動してその階層のベランダからカバー部材6の内側に入り込むようにしてもよい。そうすると、カバー部材6に設ける開口領域を減らすことができ、カバー部材6の強度を高めることができる。
また、本発明の実施形態では、非常ドア部6bとカバー部材6の非常ドア部6bを除く領域とを線ファスナー6cで繋いでいるが、その他の手段で繋いでもよく、例えば、面ファスナーや多数のボタン等で繋ぐ構成であってもよい。
尚、
図7において線ファスナー6cのスライダーは1個のみであるが、スライダーを2個設けて線ファスナー6cの中央から両側の端部に向けて開くようにしてもよい。また、
図7に示される非常ドア部6bは線ファスナー6cを開けると水平方向に開くが、スライダーを2個設ける場合には、非常ドア部6bが手前側に開くように線ファスナー6cを設けてもよい。
【0048】
また、本発明の実施形態では、非常ドア部6bが正面視で略矩形状をなしているが、その他の形状であってもよく、例えば、三角形状であれば、矩形状よりも開口面積を小さくしてカバー部材6の強度を上げることができる。
また、本発明の実施形態では、扉部材9を下方に回動させる付勢部材としてコイルバネ11を用いているが、これに限らず、例えば、捩りバネや弾性ゴム等であってもよい。
また、本発明の実施形態では、4つの連結ロープ5で各足場ユニット4を連結しているが、5つ以上の連結ロープ5で各足場ユニット4を連結する構成であってもよい。
また、本発明の実施形態では、連結ロープ5を第1フック部5aでマンションMに取り付け、把持ロープ3を第2フック部3aでマンションMに取り付けているが、これに限らず、力が加わった際に脱落せず、強固に固定可能で安全性が高いのであれば、その他の固定手段で取り付けるようにしてもよい。第2フック部3aも同様である。
【0049】
また、本発明の実施形態では、係合爪6dをカバー部材6に設けているが、足場ユニット4に設ける構造であってもよい。さらに、マンションMの壁面に鉄製の手摺りや枠等の磁力を受ける部材が設けられている場合には、カバー部材6や足場ユニット4に固定された磁石を備えてマンションMに対して磁力で固定するようにしてもよい。
尚、本発明の実施形態の把持ロープ3の中途部は、断面形状に変化が無いが、例えば、所定の間隔で結び目を作って避難者Hが把持する際に滑り難くする構造にしてもよい。滑り難くする構造としては結び目の他、避難者Hが把持ロープ3を掴む際に滑らない構造のものであればコブ状のものや円盤状のものを設けてもよく、形状は特定しない。
また、本発明の実施形態では、脱出シュート1をマンションMから脱出する際に使用したが、その他、ビルや家屋などの建物からの脱出時にも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、火災や地震等の災害が発生した際において、建物の2階以上に住んでいる避難者が建物の外側へと脱出する際に使用する脱出シュートに適している。
【符号の説明】
【0051】
1…脱出シュート 3…把持ロープ 4…足場ユニット 5…連結ロープ 5a…第1フック部(取付部) 6…カバー部材 6a…出入口部 6b…非常ドア部 6c…線ファスナー 6d…係合爪 7…フレーム部材 8…支持プレート 9…扉部材 10…避難用通過口 11…コイルバネ(付勢部材) 12…補強ネット H…避難者 M…マンション(建物)
【手続補正書】
【提出日】2023-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難者が建物からの脱出に使用する脱出シュートであって、
上下に並ぶ複数の板状をなす足場ユニットと、
上下に延び、且つ、前記足場ユニットの外周縁部に沿って並設され、当該各足場ユニットを上下一列に所定の間隔をあけて連結する複数の連結ロープと、
前記各足場ユニットを囲うように設けられ、且つ、前記避難者が上下に通過可能に構成され、前記各足場ユニットを互いに近づけると蛇腹状に折り畳まれる一方、互いに離間させると筒状に展延する柔軟性を有するカバー部材と、
該カバー部材の内側に上下に延びる姿勢となるよう前記建物の所定の位置に吊下げ可能に構成され、前記避難者が脱出時に把持する把持ロープと、を備え、
前記各連結ロープの上端部分には、前記建物の所定の位置に取付可能な取付部が設けられ、
前記カバー部材の側面には、前記避難者が前記カバー部材の内側と外側とを行き来可能な出入口部が設けられ、
前記足場ユニットは、前記避難者を支持可能な支持プレートと、前記避難者が上下に通過可能に開口する避難用通過口と、該避難用通過口を開閉可能な扉部材と、平面視で環状をなすフレーム部材と、前記扉部材を下方に付勢する付勢部材と、を備え、
前記フレーム部材は、当該フレーム部材の内部一側領域を覆うように前記支持プレートが取り付けられる一方、内部他側領域が前記避難用通過口として設定され、
前記扉部材は、当該扉部材の前記支持プレート側が上下動するよう前記フレーム部材に回動可能に支持されていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項2】
請求項1に記載の脱出シュートにおいて、
前記カバー部材の側面には、前記出入口部を開閉可能な非常ドア部が設けられ、
該非常ドア部は、前記カバー部材側面の一部領域が囲われるように当該カバー部材を切断することにより形成された当該切断部分の内側領域で構成され、
前記非常ドア部と前記カバー部材の前記非常ドア部を除く領域とは、線ファスナーによって繋ぎ合わされるようになっていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項3】
請求項1に記載の脱出シュートにおいて、
前記カバー部材は、不透明な樹脂材で形成されていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の脱出シュートにおいて、
隣り合う2つの前記足場ユニットにおける一方の前記足場ユニットの前記支持プレートは、他方の前記足場ユニットの前記避難用通過口と上下に対応する位置となっており、
隣り合う2つの前記足場ユニットにおける一方の前記足場ユニットの前記避難用通過口は、他方の前記足場ユニットの前記支持プレートと上下に対応する位置となっていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載の脱出シュートにおいて、
前記足場ユニットは、格子状に延びる可撓性ロープからなる補強ネットを備え、
該補強ネットは、前記支持プレートの下面全域を覆う位置に設けられていることを特徴とする脱出シュート。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1つに記載の脱出シュートにおいて、
前記足場ユニット又は前記カバー部材には、前記建物の所定の位置に引っ掛け可能な1つ以上の係合爪が設けられていることを特徴とする脱出シュート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
すなわち、第1の発明では、上下に並ぶ複数の板状をなす足場ユニットと、上下に延び、且つ、前記足場ユニットの外周縁部に沿って並設され、当該各足場ユニットを上下一列に所定の間隔をあけて連結する複数の連結ロープと、前記各足場ユニットを囲うように設けられ、且つ、前記避難者が上下に通過可能に構成され、前記各足場ユニットを互いに近づけると蛇腹状に折り畳まれる一方、互いに離間させると筒状に展延する柔軟性を有するカバー部材と、該カバー部材の内側に上下に延びる姿勢となるよう前記建物の所定の位置に吊下げ可能に構成され、前記避難者が脱出時に把持する把持ロープと、を備え、前記各連結ロープの上端部分には、前記建物の所定の位置に取付可能な取付部が設けられ、前記カバー部材の側面には、前記避難者が前記カバー部材の内側と外側とを行き来可能な出入口部が設けられ、前記足場ユニットは、前記避難者を支持可能な支持プレートと、前記避難者が上下に通過可能に開口する避難用通過口と、該避難用通過口を開閉可能な扉部材と、平面視で環状をなすフレーム部材と、前記扉部材を下方に付勢する付勢部材と、を備え、前記フレーム部材は、当該フレーム部材の内部一側領域を覆うように前記支持プレートが取り付けられる一方、内部他側領域が前記避難用通過口として設定され、前記扉部材は、当該扉部材の前記支持プレート側が上下動するよう前記フレーム部材に回動可能に支持されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
第5の発明に係る脱出シュートでは、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記足場ユニットは、格子状に延びる可撓性ロープからなる補強ネットを備え、該補強ネットは、前記支持プレートの下面全域を覆う位置に設けられていることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
第6の発明に係る脱出シュートでは、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記足場ユニット又は前記カバー部材には、前記建物の所定の位置に引っ掛け可能な1つ以上の係合爪が設けられていることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
さらに、特許文献2のように避難者が非常時においてブレーキを操作するといった必要が無いので、避難者による操作ミスを起因とした被害の発生を防止することができる。それに加えて、特許文献3の如き避難通路を狭くする必要がないので、避難時における避難者の移動がし易くなり、避難時に費やす時間が短くなって効率良く建物から脱出することができる。
さらには、脱出シュートを使用状態にする際、脱出シュートの上端に対応する階層よりも下方に位置する各階層においても出入口部を介してカバー部材の内側と建物との間を行き来できるようになる。したがって、1つの脱出シュートで複数の階層から建物の外側に脱出することができるようになり、階層毎に脱出シュートを用意する必要が無くなるので、導入コストを低く抑えることができる。
また、足場ユニットの支持プレートに載る避難者が扉部材側を向くとともに当該扉部材の手前側を把持して上に持ち上げると、当該扉部材が上方に回動して避難用通過口が開口するようになる。したがって、避難者は避難時において支持プレートの位置から効率良く避難用通過口を介して下方へと移動することができる。
さらには、避難者が扉部材を上方に回動させた状態において避難用通過口を下方へと通過した後、付勢部材の付勢力によって扉部材が自動的に下方に回動して避難用通過口が閉まるようになる。したがって、次にその足場ユニットの上方から移動してくる避難者が当該足場ユニットに安全に着地することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
第5の発明に係る脱出シュートでは、補強ネットが支持プレートを下方から支えるようになるので、足場ユニットの剛性をさらに高めることができ、足場ユニットに載る避難者の安定感を増すことができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
第6の発明に係る脱出シュートでは、避難者による建物からの脱出時において、脱出シュートが建物から離間し難くなって脱出シュート全体が揺れ難くなる。したがって、避難者の避難時における足場が安定するようになって、避難者による脱出動作をさらに安全に行うことができる。