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特開2024-85827ガス検知器およびガス検知器の作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085827
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガス検知器およびガス検知器の作動方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G01N27/12 A
G01N27/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200577
(22)【出願日】2022-12-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 裕正
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA10
2G046BA01
2G046EB05
2G046EB06
2G046FB08
2G046FE11
(57)【要約】
【課題】ガス検知部の感度の低下を抑制し、ガス検知部を長寿命化できるガス検知器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のガス検知器1は、特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサ2を備え、ガスセンサ2が、ハロゲン化銅を含むガス検知部3と、ガス検知部3を加熱する加熱部4と、ガス検知部3に検知用電圧を印加し、加熱用電圧を加熱部4に印加する電圧印加手段51とを備え、加熱用電圧は、加熱部4に印加されると、特定温度域よりも高い温度でガス検知部3の表面を加熱可能な電圧であり、電圧印加手段51は、ガス検知動作時に、加熱部4に加熱用電圧を印加することなく、ガス検知部3に検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施し、ガス非検知動作時に、ガス検知部3に検知用電圧を印加することなく、加熱部4に加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施するように構成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器であって、前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段は、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施し、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する
ように構成される、ガス検知器。
【請求項2】
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記ガス検知部の表面を70~120℃で加熱可能な電圧である、
請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第2電圧印加モードを間歇的に実施するように構成される、
請求項1または2に記載のガス検知器。
【請求項4】
前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第1電圧印加モードと前記第2電圧印加モードとを交互に繰り返して実施するように構成される、
請求項1または2に記載のガス検知器。
【請求項5】
前記ガス検知部が、前記検知対象ガスとして10ppb以下の濃度のアンモニアを検知可能に構成される、
請求項1または2に記載のガス検知器。
【請求項6】
前記ガス検知器が、前記ガス検知器を動作させるための電源を備え、
前記ガス検知器が、
前記電源がオンの状態で、前記ガス検知動作が可能な測定モードと、
前記電源がオフの状態で、前記ガス検知動作が不能で、前記電圧印加手段の動作が可能な待機モードと
を切り替え可能であり、
前記電圧印加手段は、前記待機モードにおいて、前記第2電圧印加モードを実施するように構成される、
請求項1または2に記載のガス検知器。
【請求項7】
特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、
前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段により、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作持に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知器およびガス検知器の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンモニアを検知するために、たとえば特許文献1に開示されたガスセンサが用いられている。特許文献1のガスセンサは、ガス検知部として機能する臭化第一銅膜を有するガス感応素子を備えている。この臭化第一銅膜に所定の電圧を印加すると、銅イオンをキャリアとするイオン伝導が生じるが、臭化第一銅膜の周囲にアンモニアが存在すると、銅イオンが優先的にアンモニアと反応して銅-アンミン錯体を形成することで、イオン伝導が阻害され、臭化第一銅膜の抵抗が上昇する。臭化第一銅膜の周囲のアンモニアの濃度と、臭化第一銅膜の抵抗の変化率との間には相関関係があり、この相関関係を利用することで、アンモニアの濃度を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-227514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
臭化第一銅膜を有するガス感応素子は、検知可能なアンモニア濃度が非常に低い(数ppb~)だけでなく、銅イオンと錯形成反応を起こす分子にしか応答を示さないため選択性が非常に高く、また、銅イオンとアンモニアの反応が室温で進行するために、基本的にはガス感応素子を加熱する加熱機構を必要としないという特長を有している。その一方で、臭化第一銅膜を有するガス感応素子は、室内環境において無通電で保管される場合、表面が数日で変質して、アンモニアに対する感度が低下し、また、アンモニアの検知動作を継続し、所定の電圧を臭化第一銅膜に印加し続ける場合、銅イオンのマイグレーションが進み、アンモニアに対する感度が低下する。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、ガス検知部の感度の低下を抑制し、ガス検知部を長寿命化できるガス検知器およびガス検知器の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス検知器は、特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器であって、前記ガスセンサが、ハロゲン化銅を含むガス検知部と、前記ガス検知部を加熱する加熱部と、前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段とを備え、前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、前記電圧印加手段は、前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施し、前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施するように構成されることを特徴とする。
【0007】
また、前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記ガス検知部の表面を70~120℃で加熱可能な電圧であることが好ましい。
【0008】
また、前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第2電圧印加モードを間歇的に実施するように構成されることが好ましい。
【0009】
また、前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第1電圧印加モードと前記第2電圧印加モードとを交互に繰り返して実施するように構成されることが好ましい。
【0010】
また、前記ガス検知部が、前記検知対象ガスとして10ppb以下の濃度のアンモニアを検知可能に構成されることが好ましい。
【0011】
また、前記ガス検知器が、前記ガス検知器を動作させるための電源を備え、前記ガス検知器が、前記電源がオンの状態で、前記ガス検知動作が可能な測定モードと、前記電源がオフの状態で、前記ガス検知動作が不能で、前記電圧印加手段の動作が可能な待機モードとを切り替え可能であり、前記電圧印加手段は、前記待機モードにおいて、前記第2電圧印加モードを実施するように構成されることが好ましい。
【0012】
本発明のガス検知器の作動方法は、特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、前記ガスセンサが、ハロゲン化銅を含むガス検知部と、前記ガス検知部を加熱する加熱部と、前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段とを備え、前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、前記電圧印加手段により、前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作持に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガス検知部の感度の低下を抑制し、ガス検知部を長寿命化できるガス検知器およびガス検知器の作動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るガス検知器の構成を示す概略図である。
図2】電圧印加手段によりガス検知部および加熱部に印加する電圧の時間変化を示す図である。
図3】電圧印加手段によりガス検知部および加熱部に印加する電圧の時間変化を示す図である。
図4】電圧印加手段によりガス検知部および加熱部に印加する電圧の時間変化を示す図である。
図5】電圧印加手段によりガス検知部および加熱部に印加する電圧の時間変化を示す図である。
図6】電圧印加手段によりガス検知部および加熱部に印加する電圧の時間変化を示す図である。
図7】いずれの動作においてもガス検知部に検知用電圧を印加することなく、加熱部に加熱用電圧を印加する動作と加熱部に加熱用電圧を印加しない動作とを交互に繰り返し実施したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図であり、(a)は、ガス検知部の表面の加熱温度が95℃であり、(b)は、ガス検知部の表面の加熱温度が120℃である。
図8】加熱部に加熱用電圧を印加せずにガス検知部に検知用電圧を印加する動作(第1電圧印加モード)とガス検知部に検知用電圧を印加せずに加熱部に加熱用電圧を印加する動作(第2電圧印加モード)とを交互に繰り返し実施したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図であり、(a)は、ガス検知部の表面の加熱温度が70℃であり、(b)は、ガス検知部の表面の加熱温度が95℃であり、(c)は、ガス検知部の表面の加熱温度が120℃である。
図9】加熱部に加熱用電圧を印加せずにガス検知部に検知用電圧を印加する動作(第1電圧印加モード)とガス検知部に検知用電圧を印加せずに加熱部に加熱用電圧を印加する動作(第2電圧印加モード)とを交互に繰り返し実施したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図である。
図10】(a)は、不使用時に室内でガス検知器を放置したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図であり、(b)は、加熱部に加熱用電圧を印加することなく、ガス検知部に検知用電圧を常時印加したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図である。
図11】(a)は、濃度を変えてアンモニアをガス検知部に曝露したときの曝露時間に対するガス検知部のベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化を示す図であり、(b)は、アンモニアの濃度と、ガス検知部のベース抵抗値と検知抵抗値との比との関係を示す図である。
図12】無通電保管運転と間歇通電運転とを交互に繰り返し実施したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図である。
図13】無通電保管運転と間歇通電運転とを交互に繰り返し実施したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図である。
図14】間歇通電運転後に無通電保管運転に切り替え、無通電保管運転期間中に第1電圧印加モードと第2電圧印加モードとの繰り返し動作を、期間を空けて、繰り返し回数を変えて実施したときの、経過日数に対するガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図である。
図15】(a)は、第2電圧印加モードを間歇的に実施したときの、ガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図であり、(b)は、第1電圧印加モードと第2電圧印加モードとをそれぞれ同じ時間で交互に繰り返して実施したときの、ガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図であり、(c)は、第1電圧印加モードと第2電圧印加モードとを、第1電圧印加モードよりも第2電圧印加モードの方が長い時間となるように、交互に繰り返して実施したときの、ガス検知部のベース抵抗値の変化と、ベース抵抗値と検知抵抗値との比の変化とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るガス検知器およびガス検知器の作動方法を説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例に過ぎず、本発明のガス検知器およびガス検知器の作動方法は、以下の例に限定されることはない。
【0016】
本実施形態のガス検知器1は、図1に示されるように、ガスセンサ2と、ガス検知器1を動作させるための電源6とを備えている。ガス検知器1は、電源6から供給される電力によって駆動され、たとえば大気ガスなど、環境雰囲気を構成する測定対象ガスに含まれる検知対象ガスをガスセンサ2により検知する。電源6は、ガス検知器1を駆動するための電力をガス検知器1に供給することができれば、特に限定されることはなく、ガス検知器1内に設けられるバッテリなどの内部電源であってもよいし、ガス検知器1外に設けられる商用電源などの外部電源であってもよい。ガス検知器1は、本実施形態では、ユーザーの入力を受け付けるボタンなどの入力部7と、後述するガス検知部3の感度特性(検量線)や検知対象ガスの検知結果などを記憶するメモリなどの記憶部8と、検知対象ガスの検知結果などを出力するディスプレイやスピーカなどの出力部9とをさらに備えている。
【0017】
ガスセンサ2は、特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサである。ガスセンサ2の検知の対象とする検知対象ガスとしては、アンモニアが例示される。ただし、ガスセンサ2は、アンモニア以外のガスを検知するように構成することもできる。また、特定温度域とは、検知対象ガスを検知するのに適したガスセンサ2(特に後述するガス検知部3)の動作温度範囲のことを意味する。特定温度域は、本実施形態では、室温近傍の温度域を意味し、たとえば-10~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは10~30℃が例示される。
【0018】
ガスセンサ2は、図1に示されるように、ハロゲン化銅を含むガス検知部3と、ガス検知部3を加熱する加熱部4と、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加し、検知用電圧VCとは別の加熱用電圧VHを加熱部4に印加する電圧印加手段51とを備えている。ガスセンサ2は、本実施形態では、ガス検知部3により得られた信号から検知対象ガスの濃度を算出するガス濃度算出手段52をさらに備えている。電圧印加手段51およびガス濃度算出手段52は、ガスセンサ2に含まれる制御部5に設けられている。制御部5は、特に限定されることはなく、たとえば公知のCPUにより形成される。なお、電圧印加手段51およびガス濃度算出手段52は、ガスセンサ2とは別に、ガス検知器1に設けられたCPUなどの制御部に設けられてもよい。
【0019】
ガス検知部3は、特定温度域で動作して、電圧印加手段51により検知用電圧VCが印加されることにより、検知対象ガスを検知する。検知用電圧VCは、ガス検知部3に印加されると、ガス検知部3に、ハロゲン化銅に含まれる銅イオンをキャリアとするイオン伝導を生じさせ得る電圧である。したがって、ガス検知部3では、検知用電圧VCが印加されると、ハロゲン化銅に含まれる銅イオンをキャリアとするイオン伝導が生じる。ここで、ガス検知部3の周囲に検知対象ガスが存在すると、検知対象ガスと銅イオンが反応して反応生成物(たとえば錯体)を形成することで、キャリアである銅イオンの濃度が低下し、ガス検知部3の抵抗値が増加する。ガス検知部3は、検知対象ガスが周囲に存在すると抵抗値が増加する現象を利用して、検知対象ガスを検知する。たとえば、アンモニアは、容易に銅イオンと反応して錯体を形成するため、好適に検知対象ガスとすることができる。ガス検知部3は、本実施形態では、検知対象ガスとして10ppb以下の濃度のアンモニアを検知可能に構成される。ただし、ガス検知部3は、アンモニア以外にも、銅イオンと反応し得るガスを検知対象ガスとすることができる。
【0020】
ガス検知部3は、ハロゲン化銅を含み、電圧印加手段51により検知用電圧VCが印加されることにより、検知対象ガスを検知することができればよく、その構造は特に限定されない。ガス検知部3は、本実施形態では、図1に示されるように、基板S(たとえばアルミナ基板など)上に薄膜状に形成される。その形成方法は、特に限定されることはなく、公知の成膜技術を採用することができる。ガス検知部3は、たとえば、焼成したハロゲン化銅の粉体を分散剤に混ぜてペースト化したものを基板S上に塗布して焼成することにより得ることができる。ガス検知部3に含まれるハロゲン化銅としては、1種または2種以上のハロゲン元素および銅元素を含む化合物であれば、特に限定されることはなく、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、およびそれらの複合化合物の群から選択される1種または2種以上が例示され、その中でも、アンモニアに対する感度および選択性が高いという点で、臭化銅(I)が好適に用いられる。
【0021】
ガス検知部3は、電圧印加手段51により検知用電圧VCを印加することができ、検知対象ガスの検知に伴って変化する抵抗値を計測できるように配置されていればよく、その回路配置は特に限定されない。本実施形態では、ガス検知部3は、図1に示されるように、ガス検知回路DCに組み込まれる。ガス検知回路DCは、ガス検知部3と、ガス検知部3に接続され、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加するための一対の電極EL1、EL1と、ガス検知部3と電気的に直列に接続された負荷抵抗体Rと、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加するガス検知部用電圧供給部V1とを備えている。ガス検知部用電圧供給部V1は、電圧印加手段51の制御によって、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加する。ガス検知回路DCは、ガス検知部3の抵抗値に対応する値として、負荷抵抗体Rの端子電圧を出力する。ガス検知回路DCは、出力した端子電圧を、ガス検知回路DCに通信可能に接続された制御部5に送信する。なお、ガス検知部用電圧供給部V1は、図示された例ではガス検知器1が備える電源6とは別に設けられているが、ガス検知部3は、ガス検知部用電圧供給部V1の代わりに電源6から検知用電圧VCが印加されてもよい。
【0022】
加熱部4は、電圧印加手段51により加熱用電圧VHが印加されることにより、ガス検知部3を加熱する。加熱用電圧VHは、加熱部4に印加されると、特定温度域よりも高い温度でガス検知部3の表面を加熱可能な電圧である。加熱部4は、特定温度域よりも高い温度でガス検知部3の表面を加熱することにより、以下で詳しく述べるように、ガス検知部3の感度を長期間に亘って維持し、またガス検知部3の低下した感度を改善することができる。ただし、加熱部4は、加熱用電圧VHとは異なる電圧が印加されることにより、加熱用電圧VHにより加熱される温度とは異なる温度でガス検知部3を加熱することもできる。たとえば、加熱部4は、ガス検知部3の表面の温度が特定温度域よりも低い場合に、ガス検知部3の表面の温度を特定温度域まで加熱するように構成されていてもよい。
【0023】
加熱部4は、電圧印加手段51により加熱用電圧VHが印加されることにより、特定温度域よりも高い温度でガス検知部3の表面を加熱することができればよく、その構造は特に限定されない。加熱部4は、本実施形態では、図1に示されるように、基板Sの、ガス検知部3が設けられた面とは反対側の面に薄膜状の抵抗体として形成される。加熱部4は、特に限定されることはなく、スパッタリングなどの公知の成膜技術を用いて白金などを成膜するにより形成することができる。
【0024】
加熱部4は、ガス検知部3を加熱するために、電圧印加手段51により加熱用電圧VHを印加できるように配置されていればよく、その回路配置は特に限定されない。加熱部4は、本実施形態では、図1に示されるように、ガス検知回路DCとは別の加熱回路HCに組み込まれる。加熱回路HCは、加熱部4と、加熱部4に接続され、加熱部4に加熱用電圧VHを印加するための一対の電極EL2、EL2と、加熱部4に加熱用電圧VHを印加する加熱部用電圧供給部V2とを備えている。加熱部用電圧供給部V2は、電圧印加手段51の制御によって、加熱部4に加熱用電圧VHを印加する。なお、加熱部用電圧供給部V2は、図示された例ではガス検知器1が備える電源6とは別に設けられているが、加熱部4は、加熱部用電圧供給部V2の代わりに電源6から加熱用電圧VHが印加されてもよい。
【0025】
以上に述べたように、本実施形態では、ガスセンサ2は、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加するための一対の電極EL1、EL1と、加熱部4に加熱用電圧VHを印加するための一対の電極EL2、EL2とを別々に備えている。つまり、ガスセンサ2は、ガス検知部3および加熱部4にそれぞれ独立して検知用電圧VCおよび加熱用電圧VHを印加し得るように構成されている。したがって、ガスセンサ2は、後述する電圧印加手段51による電圧印加動作を容易に実施することができる。ただし、ガスセンサ2は、後述する電圧印加手段51による電圧印加動作を実施することができれば、本実施形態のような4電極を有する4端子型の回路配置に限定されることはなく、たとえばコイル型のガスセンサ素子を備えたガスセンサのように2電極を有する2端子型の回路配置を有していてもよい。
【0026】
ガスセンサ2では、ガス濃度算出手段52が、ガス検知部3に検知用電圧VCが印加されることで得られる信号に基づいて、検知対象ガスの濃度を算出する。ガス濃度算出手段52は、検知対象ガスが存在しないときに得られるガス検知部3のベース抵抗値R0と、検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に得られるガス検知部3の検知抵抗値RSとの比RS/R0に基づいて、検知対象ガスの濃度を算出する。ガス濃度算出手段52は、たとえば、予め記憶部8に記憶された、検知対象ガスの濃度に対するガス検知部3の感度特性(検量線)を用いて、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0から、検知対象ガスの濃度を算出することができる。ただし、ガスセンサ2は、少なくとも検知対象ガスを定性的に検知することができればよく、すなわち測定対象ガス中に検知対象ガスが存在するか否かを判定することができればよく、検知対象ガスの濃度を算出するためのガス濃度算出手段52を必ずしも備えていなくてもよい。たとえば、ガスセンサ2は、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が所定の値よりも大きい場合に、検知対象ガスが存在すると判定し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が所定の値以下の場合に、検知対象ガスが存在しないと判定するように構成されてもよい。
【0027】
電圧印加手段51は、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加し、加熱部4に加熱用電圧VHを印加するように構成されている。電圧印加手段51は、以下に詳しく述べるように、ガス検知部3および/または加熱部4に対して様々な電圧印加動作を実施するように構成され得る。ガスセンサ2では、電圧印加手段51により、それらの様々な電圧印加動作を実施することができるが、それらの様々な電圧印加動作は、互いに別々に実施することもできるし、互いに組み合わせて実施することもできる。なお、電圧印加手段51は、以下で説明する電圧印加動作以外の電圧印加動作を実施するように構成されていてもよい。
【0028】
電圧印加手段51は、たとえば図2図4に示されるように、検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時Aに、加熱部4に加熱用電圧VHを印加することなく、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加する第1電圧印加モードVAを実施するように構成され得る。つまり、ガスセンサ2は、電圧印加手段51により第1電圧印加モードVAを実施することにより、検知対象ガスを検知するように構成される。また、電圧印加手段51は、検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時Bに、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加することなく、加熱部4に加熱用電圧VHを印加する第2電圧印加モードVBを実施するように構成され得る。ガスセンサ2では、電圧印加手段51により、ガス検知動作時Aに第1電圧印加モードVAを実施し、ガス非検知動作時Bに第2電圧印加モードVBを実施することにより、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化することができる。これは、加熱部4に加熱用電圧VHが印加され、ガス検知部3が加熱されることで、ガス検知部3の表面から水分子が蒸発し、水酸化銅の生成が抑制され、ガス検知部3の表面の変質が抑制されるからであると考えられる。
【0029】
たとえば、ガス検知器1は、定置式(据え置き式)として使用される場合には、長期間に亘って検知対象ガスを継続して監視することが求められることがある。その場合、ガス検知器1では、長期間に亘ってガス検知部3に検知用電圧VCを印加する必要がある。ところが、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加し続けると、ガス検知部3の感度が短期間で低下してしまう。したがって、ガス検知器1は、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加し続けると、長期間に亘って検知対象ガスを継続して監視することが難しい。それに対して、本実施形態のガス検知器1は、上述したように、ガス非検知動作時Bに、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加することなく、加熱部4に加熱用電圧VHを印加する第2電圧印加モードVBを実施することで、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化することができ、長期間に亘って検知対象ガスを継続して監視することができる。
【0030】
また、ガス検知器1は、検知対象ガスの検知動作をしないときに、電源6がオフにされて、ガス検知部3および加熱部4に電圧が印加されない状態で保管される場合がある。このようにガス検知部3および加熱部4に電圧が印加されない状態で保管されると、短期間でガス検知部3の感度が低下してしまう。このような場合に、ガス検知器1を、電源6がオンの状態で、ガス検知動作が可能な測定モードと、電源6がオフの状態で、ガス検知動作が不能で、電圧印加手段51の動作が可能な待機モードとを切り替え可能に構成してもよい。そして、電圧印加手段51は、その待機モードにおいて、上述した第2電圧印加モードVBを実施するように構成されてもよい。待機モードにおいて、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加することなく、加熱部4に加熱用電圧VHを印加する第2電圧印加モードVBを実施することで、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化することができる。また、待機モードにおいて、第2電圧印加モードVBを実施することで、以下でも述べるように、ガス検知部3の感度が低下していたとしても、ガス検知部3の感度を改善することができる。
【0031】
電圧印加手段51は、図2に示されるように、ガス非検知動作時B(または待機モード)の全体に亘って第2電圧印加モードVBを連続的に実施するように構成されていてもよいし、図3および図4に示されるように、ガス非検知動作時B(または待機モード)において第2電圧印加モードVBを間歇的に実施するように構成されていてもよい。ここで、「第2電圧印加モードを間歇的に実施する」とは、第2電圧印加モードVBを実施する動作と、第2電圧印加モードVBを実施しない動作とをそれぞれ少なくとも1回以上交互に繰り返すことを意味する。ガスセンサ2では、第2電圧印加モードVBを間歇的に実施することで、ガス検知部3の感度の低下をさらに抑制し、ガス検知部3をさらに長寿命化することができる。なお、第2電圧印加モードVBを実施しない動作期間において、図3に示されるように第1電圧印加モードVAを実施しなくてもよいし、図4に示されるように第1電圧印加モードVAを実施してもよい。つまり、電圧印加手段51は、ガス非検知動作時B(または待機モード)において、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施するように構成されていてもよい。ガスセンサ2では、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施することで、ガス検知部3の感度の低下をよりさらに抑制し、ガス検知部3をよりさらに長寿命化することができる。なお、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施するために、図2に示されるように、第1電圧印加モードVAを実施するガス検知動作(ガス検知動作時Aを参照)と第2電圧印加モードVBを実施するガス非検知動作(ガス非検知動作時Bを参照)とを交互に繰り返して実施してもよい。
【0032】
第2電圧印加モードVBを間歇的に実施する際の、第2電圧印加モードVBを実施する動作、および第2電圧印加モードVBを実施しない動作のそれぞれの持続時間は、特に限定されることはない。たとえば、図2に示されるように、第2電圧印加モードVBを実施するガス非検知動作と第2電圧印加モードVBを実施しないガス検知動作とが繰り返される場合において、ガス非検知動作の持続時間(ガス非検知動作時Bを参照)が、ガス検知動作の持続時間(ガス検知動作時Aを参照)よりも長いことが好ましい。これにより、ガス検知部3の感度の低下をよりさらに抑制し、ガス検知部3をよりさらに長寿命化することができる。また、図3および図4に示されるように、ガス非検知動作時Bにおいて、第2電圧印加モードVBを実施する動作と、第2電圧印加モードVBを実施しない動作とが繰り返される場合においても、第2電圧印加モードVBを実施する動作の持続時間が、第2電圧印加モードVBを実施しない動作の持続時間よりも長いことが好ましい。これにより、ガス検知部3の感度の低下をよりさらに抑制し、ガス検知部3をよりさらに長寿命化することができる。このとき、図4に示されるように、ガス非検知動作時Bにおいて、第2電圧印加モードVBを実施しない動作時に第1電圧印加モードVAを実施することで、よりさらに、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化することができる。
【0033】
加熱用電圧VHは、上述したように、加熱部4に印加されると、特定温度域よりも高い温度でガス検知部3の表面を加熱可能な電圧であればよく、特に限定されることはない。ただし、加熱用電圧VHは、加熱部4に印加されると、ガス検知部3の表面を70~120℃で加熱可能な電圧であることが好ましい。ガス検知部3の表面を70~120℃で加熱することにより、ガス検知部3の感度の低下をさらに抑制し、ガス検知部3をさらに長寿命化することができる。同様の観点から、加熱用電圧VHは、加熱部4に印加されると、ガス検知部3の表面を85~105℃で加熱可能な電圧であることがさらに好ましく、90~100℃で加熱可能な電圧であることがよりさらに好ましく、93~97℃で加熱可能な電圧であることが最も好ましい。
【0034】
ガス検知器1は、図2に示されるように加熱用電圧VHを印加しないガス検知動作と加熱用電圧VHを印加するガス非検知動作とを繰り返す場合において、ガス検知動作時Aにおいて、ガス検知部3に対する検知用電圧VCの印加開始から所定時間経過後に、検知対象ガスを検知するように構成されることが好ましい。ガス検知器1は、ガス検知部3に対する検知用電圧VCの印加開始から所定時間経過後に(たとえば、検知用電圧VCの印加を停止する直前であって、加熱用電圧VHを印加する直前に)、加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで特定温度域よりも高い温度で加熱されたガス検知部3の表面の温度が特定温度域に戻るので、検知対象ガスを精度よく検知することができる。特に、加熱部4への加熱用電圧VHの印加の後にガス検知部3に検知用電圧VCを印加して検知対象ガスを検知することで、より優れた線形性を有するガス検知部3の感度(検知対象ガスの濃度と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0との関係)を得ることができ、より高い精度で検知対象ガスの濃度を求めることができる。
【0035】
上述した例に加えて、または上述した例とは別に、ガス検知部3の感度が低下した場合にその感度を改善するという目的のために、電圧印加手段51は、たとえば図5および図6に示されるように、加熱部4に加熱用電圧VHを印加することなく、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加する第1電圧印加モードVAと、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加することなく、加熱部4に加熱用電圧VHを印加する第2電圧印加モードVBとを実施可能に構成されてもよい。ガスセンサ2では、たとえばガス検知部3の感度が低下した際に、電圧印加手段51により、第2電圧印加モードVBを実施することにより、ガス検知部3の感度を改善することができる。これは、第2電圧印加モードVBを実施することにより、ガス検知部3の表面から水分子が蒸発するとともに、水酸基を含む銅化合物の分解が促進されるからであると考えられる。
【0036】
たとえば、ガス検知器1は、ポータブル式(持ち運び式)として使用される場合には、検知対象ガスの検知が必要なときだけガス検知動作が行なわれ、それ以外の期間ではガス検知動作が行なわれることなく、ガス検知部3および加熱部4に電圧が印加されない状態で保管されることが多い。ガス検知部3は、上述したように、検知用電圧VCが印加され続けると、短期間で感度が低下してしまうが、逆に、ガス検知部3および加熱部4に電圧が印加されない状態で保管されても、短期間で感度が低下してしまう。ガスセンサ2では、このようにガス検知部3の感度が低下してしまっても、上述したように、電圧印加手段51により第2電圧印加モードVBを実施することで、ガス検知部3の感度を改善することができる。
【0037】
電圧印加手段51は、ガス検知部3の感度が低下した場合にその感度を改善するという目的のために、少なくとも第2電圧印加モードVBを実施することができればよく、その実施するタイミングは特に限定されない。たとえば、電圧印加手段51は、図5および図6に示されるように、第2電圧印加モードVBを間歇的に実施するように構成されてもよい。ここで、「第2電圧印加モードVBを間歇的に実施する」とは、上でも述べたように、第2電圧印加モードVBを実施する動作と、第2電圧印加モードVBを実施しない動作とをそれぞれ少なくとも1回以上交互に繰り返すことを意味する。ガスセンサ2では、第2電圧印加モードVBを間歇的に実施することで、ガス検知部3の感度をさらに改善することができる。なお、第2電圧印加モードVBを実施しない動作期間において、第1電圧印加モードVAを実施しなくてもよいし、図5および図6に示されるように第1電圧印加モードVAを実施してもよい。つまり、電圧印加手段51は、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施するように構成されてもよい。ガスセンサ2では、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施することで、ガス検知部3の感度をよりさらに改善することができる。このとき、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとは、交互に繰り返して実施されればよく、図5に示されるように、連続して交互に繰り返して実施されてもよいし、図6に示されるように、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとの間に検知用電圧VCおよび加熱用電圧VHがともに印加されない期間が存在してもよい。
【0038】
電圧印加手段51は、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施するように構成されていればよく、第1電圧印加モードVAおよび第2電圧印加モードVBのそれぞれの持続時間は特に限定されない。たとえば、電圧印加手段51は、図5および図6に示されるように、第2電圧印加モードVBの持続時間が、第1電圧印加モードVAの持続時間よりも長くなるように、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを切り替えて実施するように構成されてもよい。ただし、第2電圧印加モードVBの持続時間は、第1電圧印加モードVAの持続時間と同じであってもよいし、第1電圧印加モードVAの持続時間よりも短くてもよい。
【0039】
加熱用電圧VHは、上述したように、加熱部4に印加されると、特定温度域よりも高い温度でガス検知部3の表面を加熱可能な電圧であればよく、特に限定されることはない。ただし、加熱用電圧VHは、加熱部4に印加されると、ガス検知部3の表面を70~120℃で加熱可能な電圧であることが好ましい。ガス検知部3の表面を70~120℃で加熱することにより、ガス検知部3の感度をさらに改善することができる。同様の観点から、加熱用電圧VHは、加熱部4に印加されると、ガス検知部3の表面を85~105℃で加熱可能な電圧であることがさらに好ましく、90~100℃で加熱可能な電圧であることがよりさらに好ましく、93~97℃で加熱可能な電圧であることが最も好ましい。
【0040】
以上において、本発明の一実施形態に係るガス検知器およびガス検知器の作動方法を説明した。しかし、本発明のガス検知器およびガス検知器の作動方法は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態は、主に、以下の構成を有する発明を説明するものである。
【0041】
(1)特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器であって、前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段は、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施し、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する
ように構成される、ガス検知器。
【0042】
(2)前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記ガス検知部の表面を70~120℃で加熱可能な電圧である、
(1)に記載のガス検知器。
【0043】
(3)前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第2電圧印加モードを間歇的に実施するように構成される、
(1)または(2)に記載のガス検知器。
【0044】
(4)前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第1電圧印加モードと前記第2電圧印加モードとを交互に繰り返して実施するように構成される、
(1)~(3)のいずれか1つに記載のガス検知器。
【0045】
(5)前記ガス検知部が、前記検知対象ガスとして10ppb以下の濃度のアンモニアを検知可能に構成される、
(1)~(4)のいずれか1つに記載のガス検知器。
【0046】
(6)前記ガス検知器が、前記ガス検知器を動作させるための電源を備え、
前記ガス検知器が、
前記電源がオンの状態で、前記ガス検知動作が可能な測定モードと、
前記電源がオフの状態で、前記ガス検知動作が不能で、前記電圧印加手段の動作が可能な待機モードと
を切り替え可能であり、
前記電圧印加手段は、前記待機モードにおいて、前記第2電圧印加モードを実施するように構成される、
(1)~(5)のいずれか1つに記載のガス検知器。
【0047】
(7)特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、
前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段により、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作持に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程と
を含む、方法。
【実施例0048】
以下において、実施例をもとに本実施形態のガス検知器1およびガス検知器1の作動方法の優れた効果を説明する。ただし、本発明のガス検知器およびガス検知器の作動方法は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(ガス検知器)
図1に示されるガスセンサ2を備えたガス検知器1を用意した。ガス検知部3は、焼成した臭化銅(I)の粉体を分散剤に混ぜてペースト化したものをアルミナ基板S上に塗布して焼成することにより得た。加熱部4は、アルミナ基板Sの、ガス検知部3が設けられた面とは反対側の面に、スパッタリングにより白金を成膜することにより得た。
【0050】
(ガス検知部の寿命評価)
実施例として、図3および図4に示されるようにガス非検知動作時Bにおいて加熱部4に加熱用電圧VHを間歇的に印加して第2電圧印加モードVBを間歇的に実施する電圧印加動作を継続して実施したときの、経過日数に対するガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを測定した。検知対象ガスとしては、0.05ppm、0.1ppmおよび1ppmのアンモニアを用いた。加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで加熱されるガス検知部3の表面温度は、70℃、95℃および120℃とした。比較例として、不使用時に室内(22℃、50%RH)でガス検知器1を放置したときの、経過日数に対するガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを測定した。また、別の比較例として、室内(22℃、50%RH)において、加熱部4に加熱用電圧VHを印加することなく、ガス検知部3に検知用電圧VCを常時印加したときの、つまり第1電圧印加モードVAのみを連続して実施したときの、経過日数に対するガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを測定した。
【0051】
まず、比較例として、図10(a)に、不使用時に室内でガス検知器1を放置したときの結果を示し、図10(b)に、ガス検知部3に検知用電圧VCを常時印加したときの結果を示す。図10(a)および図10(b)において、経過日数が7日を超えたあたりから、ベース抵抗値R0が上昇し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が低下している。この結果から、不使用時にガス検知器1を放置し、またはガス検知部3に検知用電圧VCを常時印加すると、約7日程度で、ガス検知部3の感度が低下し、ガス検知部3が劣化することが分かる。
【0052】
つぎに、実施例として、図7に、図3に示される電圧印加動作のガス非検知動作時Bにおいて、いずれの動作においてもガス検知部3に検知用電圧VCを印加することなく、加熱部4に加熱用電圧VHを印加する動作(第2電圧印加モードVB)を2分間、加熱部4に加熱用電圧VHを印加しない動作を2分間、交互に繰り返し実施したときの結果を示す。加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで加熱されるガス検知部3の表面温度は、95℃(図7(a))および120℃(図7(b))とした。図7(a)および図7(b)において、経過日数が80日までは、ベース抵抗値R0や、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化していない。つまり、図7(a)、(b)に示された実施例では、図10(a)および図10(b)に示された比較例と比べて、ベース抵抗値R0や、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化しない経過日数が大幅に延びている。この結果から、ガス非検知動作時Bにおいて加熱部4に加熱用電圧VHを間歇的に印加する(第2電圧印加モードVBを間歇的に実施する)ことで、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化することができることが分かる。また、ガス検知部3の表面の加熱温度が95℃の図7(a)と、ガス検知部3の表面の加熱温度が120℃の図7(b)とを比較すると、図7(b)と比べて図7(a)の方が、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が高く、アンモニアに対する感度が高い。この結果から、アンモニアに対する感度を高く維持するという観点で、ガス検知部3の表面の加熱温度が、120℃よりも95℃であることが好ましいことが分かる。
【0053】
別の実施例として、図8に、図4に示される電圧印加動作のガス非検知動作時Bにおいて、加熱部4に加熱用電圧VHを印加せずにガス検知部3に検知用電圧VCを印加する動作(第1電圧印加モードVA)を2分間、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加せずに加熱部4に加熱用電圧VHを印加する動作(第2電圧印加モードVB)を8分間、交互に繰り返し実施したときの結果を示す。加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで加熱されるガス検知部3の表面温度は、70℃(図8(a))、95℃(図8(b))および120℃(図8(c))とした。図8(a)では、経過日数が20日まで、図8(b)および図8(c)では、経過日数が150日まで、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化していない。つまり、図8(a)~(c)に示された実施例では、図10(a)および図10(b)に示された比較例と比べて、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化しない経過日数が大幅に延びている。この結果から、加熱部4に加熱用電圧VHを間歇的に印加する(第2電圧印加モードVBを間歇的に実施する)ことで、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化することができることが分かる。さらに、それぞれ加熱部4に加熱用電圧VHを印加したときのガス検知部3の表面温度が同じである図7(a)と図8(b)と、図7(b)と図8(c)とを比較すると、図7(a)および図7(b)と比べて図8(b)および図8(c)の方が、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化しない経過日数が大幅に延びている。この結果から、加熱部4に加熱用電圧VHを印加しない(第2電圧印加モードVBを実施しない)期間にガス検知部3に検知用電圧VCを印加する(第1電圧印加モードVAを実施する)ことにより、ガス検知部3の感度の低下をさらに抑制し、ガス検知部3をさらに長寿命化することができることが分かる。また、ガス検知部3の表面の加熱温度が70℃の図8(a)と、ガス検知部3の表面の加熱温度が95℃の図8(b)とを比較すると、図8(a)と比べて図8(b)の方が、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化しない経過日数が長い。この結果から、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化するという観点で、ガス検知部3の表面の加熱温度が、70℃よりも95℃であることが好ましいことが分かる。一方、ガス検知部3の表面の加熱温度が95℃の図8(b)と、ガス検知部3の表面の加熱温度が120℃の図8(c)とを比較すると、図8(c)と比べて図8(b)の方が、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が高く、アンモニアに対する感度が高いとともに、ベース抵抗値R0の経時変化も小さい。この結果から、アンモニアに対する感度を高く維持するとともに、ガス検知部3の状態を一定に維持するという観点で、ガス検知部3の表面の加熱温度が、120℃よりも95℃であることが好ましいことが分かる。
【0054】
さらに別の実施例として、図9に、図4に示される電圧印加動作のガス非検知動作時Bにおいて、加熱部4に加熱用電圧VHを印加せずにガス検知部3に検知用電圧VCを印加する動作(第1電圧印加モードVA)を5分間、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加せずに加熱部4に加熱用電圧VHを印加する動作(第2電圧印加モードVB)を5分間、交互に繰り返し実施したときの結果を示す。加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで加熱されるガス検知部3の表面温度は、95℃とした。図9において、経過日数が30日までは、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0がわずかに低下するものの大きくは低下していない。つまり、図9に示された実施例では、図10(a)および図10(b)に示された比較例と比べて、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化しない経過日数が延びている。この結果から、ガス非検知動作時Bにおいて加熱部4に加熱用電圧VHを間歇的に印加する(第2電圧印加モードVBを間歇的に実施する)ことで、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化することができることが分かる。一方、それぞれ加熱部4に加熱用電圧VHを印加したときのガス検知部3の表面温度が同じ95℃である図9図8(b)とを比較すると、図9と比べて図8(b)の方が、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が大きく変化しない経過日数が大幅に延びている。この結果から、ガス検知部3の感度の低下を抑制し、ガス検知部3を長寿命化するという観点で、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加せずに加熱部4に加熱用電圧VHを印加する動作時間(第2電圧印加モードVBの持続時間)が、加熱部4に加熱用電圧VHを印加せずにガス検知部3に検知用電圧VCを印加する動作時間(第1電圧印加モードVAの持続時間)よりも長い方が好ましいことが分かる。
【0055】
(ガス検知部の感度評価)
実施例として、図2に示されるように、加熱部4に加熱用電圧VHを印加せず、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加するガス検知動作と、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加せず、加熱部4に加熱用電圧VHを印加するガス非検知動作とを繰り返し実施している状況で、異なる濃度の検知対象ガスをガス検知部3に曝露したときの、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化を測定した。検知対象ガスとしては、0ppb、50ppb、100ppb、200ppb、500ppbのアンモニアとした。ガス検知動作およびガス非検知動作の持続時間はともに、2分間とした。加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで加熱されるガス検知部3の表面温度は、95℃とした。比較例として、加熱部4に加熱用電圧VHを印加することなく、ガス検知部3に検知用電圧VCを連続して印加している状況で、異なる濃度の検知対象ガスをガス検知部3に曝露したときの、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化を測定した。検知対象ガスとしては、実施例と同様に、0ppb、50ppb、100ppb、200ppb、500ppbのアンモニアとした。
【0056】
図11(a)は、図中、一点鎖線で示されるように、4分間隔で濃度を変えてアンモニアをガス検知部3に曝露したときの、曝露時間に対するベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化を示している。図11(a)において、ガス検知部3に検知用電圧VCを連続して印加する比較例(点線)では、曝露時間が0分から16分にかけてアンモニアの濃度が増加するに伴って、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加する一方で、曝露時間が16分においてアンモニアの濃度が0ppbになっても、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が急激に低下することなく、時間経過とともにゆるやかに低下している。アンモニアの濃度が0ppbになっても、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0がすぐに低下しないことから、ガス検知部3に検知用電圧VCを連続して印加し続けることで、ガス検知部3の応答性が低下することが分かる。それに対して、ガス検知部3への検知用電圧VCの印加と加熱部4への加熱用電圧VHの印加とを交互に繰り返す(第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返す)実施例(実線)では、曝露時間が0分から16分にかけてアンモニアの濃度が増加するに伴って、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加する一方で、曝露時間が16分においてアンモニアの濃度が0ppbになると、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が急激に低下している。アンモニアの濃度が0ppbになると、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0がすぐに低下することから、加熱部4への加熱用電圧VHの印加によってガス検知部3の応答性が改善されていることが分かる。また、それぞれの濃度のアンモニアを暴露している期間において、それぞれの濃度のアンモニアの曝露開始から、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。これは、それぞれの濃度のアンモニアの曝露開始直前まで、加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで特定温度域よりも高い温度でガス検知部3の表面が加熱されていることによるものと考えられる。この結果から、ガス検知部3への検知用電圧VCの印加と加熱部4への加熱用電圧VHの印加とを交互に繰り返す場合、アンモニアを精度よく検知するためには、ガス検知部3に対する検知用電圧VCの印加開始(加熱部4に対する加熱用電圧VHの印加停止後)から所定時間経過後(たとえば、ガス検知部3に対する検知用電圧VCの印加を停止する直前であって、加熱部4に対する加熱用電圧VHの印加を開始する直前)に、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0を測定し、測定されたベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0に基づいてアンモニアを検知することが好ましいことが分かる。
【0057】
図11(b)は、アンモニアの濃度と、それぞれの濃度のアンモニアの曝露開始から所定時間経過(2分)後のベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0との関係を示している。図11(b)において、ガス検知部3に検知用電圧VCを連続して印加する比較例(三角印)では、アンモニアの濃度と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0との関係が、線形関係からわずかにずれているが、ガス検知部3への検知用電圧VCの印加と加熱部4への加熱用電圧VHの印加とを交互に繰り返す(第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返す)実施例(丸印)では、アンモニアの濃度と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0との関係が、比較例と比べて優れた線形関係を有している。この結果から、ガス検知部3に検知用電圧VCを連続して印加するのではなく、ガス検知部3への検知用電圧VCの印加と加熱部4への加熱用電圧VHの印加とを交互に繰り返すことで、より優れた線形性を有するガス検知部3の感度(検知対象ガスの濃度と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0との関係)を得ることができ、より高い精度で検知対象ガスの濃度を求めることができることが分かる。
【0058】
(ガス検知部の感度の改善評価)
アンモニアの検知動作をしないガス非検知動作時に、ガス検知部3および加熱部4に電圧を印加しない状態で、除湿環境下でガス検知器1を保管する無通電保管運転を実施した後に、アンモニアの検知動作をしないガス非検知動作時に、図5に示されるように第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを繰り返し実施する間歇通電運転を実施した。そのときの、経過日数に対するガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを測定した。第1電圧印加モードVAの持続時間は2分間とし、第2電圧印加モードVBの持続時間は8分間とした。検知対象ガスとしては、0.1ppmおよび0.5ppmのアンモニアを用いた。加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで加熱されるガス検知部3の表面温度は、95℃とした。
【0059】
図12および図13は、無通電保管運転と間歇通電運転とを交互に繰り返し実施したときの、経過日数に対するガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを示している。図12では、経過日数が66日まで、図13では、経過日数が180日まで、無通電保管運転によって、ガス検知部3のベース抵抗値R0が増加し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が低下している。図12では、経過日数が67日において、無通電保管運転を間歇通電運転に切り替えることによって、ガス検知部3のベース抵抗値R0が低下し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。また、図13では、経過日数が181日において、無通電保管運転を間歇通電運転に切り替えることによって、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。この結果から、無通電保管運転によってベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が低下し、ガス検知部3の感度が低下しているときに、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを繰り返し実施することにより、ガス検知部3の感度が改善されることが分かる。図12において、経過日数が67~116日の間は、また、図13において、経過日数が181~186日の間は、間歇通電運転によって、ガス検知部3のベース抵抗値R0、およびベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0はともに、ほぼ一定の値を示している。この結果から、間歇通電運転を継続することで、一度改善したガス検知部3の感度を維持できることが分かる。つぎに、図12では、経過日数が116日において、間歇通電運転から無通電保管運転へと切り替えた後は、経過日数が182日まで、ガス検知部3のベース抵抗値R0が低下し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が低下している。そして、図12では、経過日数が186日において、無通電保管運転から間歇通電運転に切り替えることで、ガス検知部3のベース抵抗値R0が増加し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。この結果から、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを繰り返し実施することにより、再度低下したガス検知部3の感度が再度改善されることが分かる。
【0060】
図14は、間歇通電運転後に無通電保管運転に切り替え、その無通電保管運転期間中に第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとの繰り返し動作を、期間を空けて、繰り返し回数(サイクル数)を変えて実施したときの、経過日数に対するガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを示している。図14において、経過日数が34日、36日、38日および40日において、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとの繰り返し動作を実施することで、ガス検知部3のベース抵抗値R0が増加し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。このときの繰り返し回数(サイクル数)はそれぞれ、3回、1回、1回および2回であった。この結果から、ガス検知部3の感度が低下する毎に、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとの繰り返し動作を少なくとも1回実施することで、ガス検知部3の感度が改善されることが分かる。
【0061】
つぎに、ガス検知部3への検知用電圧VCの印加と加熱部4への加熱用電圧VHの印加とを交互に繰り返す(第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返す)ことによりガス検知部3の感度を所定範囲内に維持したあと(28日後)、除湿環境下でガス検知器1を保管する無通電保管運転を実施してガス感知部3の感度が低下した状態で(31日後)、ガス非検知動作時Bにおいて加熱部4に加熱用電圧VHを間歇的に印加した(第2電圧印加モードVBを間歇的に実施した)。そのときの、ガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを測定した。検知対象ガスとしては、0.1ppmおよび0.5ppmのアンモニアを用いた。加熱部4に加熱用電圧VHを印加することで加熱されるガス検知部3の表面温度は、95℃とした。
【0062】
図15(a)は、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加することなく、加熱部4に加熱用電圧VHを間歇印加(2分ON/2分OFF)したときの(第2電圧印加モードVBのみを間歇的に実施したときの)、ガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを示している。図15(b)、(c)は、ガス検知部3への検知用電圧VCの印加と、加熱部4への加熱用電圧VHの印加とを交互に繰り返したときの(第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返したときの)、ガス検知部3のベース抵抗値R0の変化と、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0の変化とを示している。このとき、図15(b)では、第1電圧印加モードVAの持続時間を2分間、第2電圧印加モードVBの持続時間を2分間とし、図15(c)では、第1電圧印加モードVAの持続時間を2分間、第2電圧印加モードVBの持続時間を8分間とした。
【0063】
図15(a)の経過日数が31日において、ガス検知部3に検知用電圧VCを印加することなく、加熱部4に加熱用電圧VHを間歇印加(2分ON/2分OFF)(第2電圧印加モードVBのみを間歇的に実施)することにより、ガス検知部3のベース抵抗値R0が増加し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。この結果から、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が低下し、ガス検知部3の感度が低下しているときに、第2電圧印加モードVBを間歇的に実施することにより、ガス検知部3の感度が改善されることが分かる。
【0064】
また、図15(b)、(c)の経過日数が31日において、ガス検知部3への検知用電圧VCの印加と、加熱部4への加熱用電圧VHの印加とを交互に繰り返す(第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返す)ことにより、ガス検知部3のベース抵抗値R0が増加し、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。この結果から、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が低下し、ガス検知部3の感度が低下しているときに、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施することにより、ガス検知部3の感度が改善されることが分かる。
【0065】
特に、図15(a)と図15(b)、(c)とを比較すると、図15(a)と比べて図15(b)、(c)の方が、短時間で、ベース抵抗値R0と検知抵抗値RSとの比RS/R0が増加している。つまり、図15(a)では、元の感度まで回復するのに6時間を要しているが、図15(b)、(c)では、元の感度まで回復するのにそれぞれ40分間(10サイクル)、100分間(10サイクル)で済んでいる。この結果から、第1電圧印加モードVAと第2電圧印加モードVBとを交互に繰り返して実施することにより、ガス検知部3の感度を短時間で改善することができることが分かる。
【符号の説明】
【0066】
1 ガス検知器
2 ガスセンサ
3 ガス検知部
4 加熱部
5 制御部
51 電圧印加手段
52 ガス濃度算出手段
6 電源
7 入力部
8 記憶部
9 出力部
A ガス検知動作時
B ガス非検知動作時
DC ガス検知回路
EL1、EL2 電極
HC 加熱回路
R 負荷抵抗体
0 ベース抵抗値
S 検知抵抗値
S 基板
V1 ガス検知部用電圧供給部
V2 加熱部用電圧供給部
VA 第1電圧印加モード
VB 第2電圧印加モード
C 検知用電圧
H 加熱用電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、
前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段により、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程と
を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明のガス検知器の作動方法は、特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、前記ガスセンサが、ハロゲン化銅を含むガス検知部と、前記ガス検知部を加熱する加熱部と、前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段とを備え、前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、前記電圧印加手段により、前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程とを含むことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
(7)特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、
前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段により、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程と
を含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器であって、前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段は、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施し、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する
ように構成され
前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第2電圧印加モードを間歇的に実施するように構成される、ガス検知器。
【請求項2】
前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第2電圧印加モードを実施した後に、前記ガス検知部および前記加熱部にそれぞれ前記検知用電圧および前記加熱用電圧を印加しないように構成される、請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記ガス検知部および前記加熱部にそれぞれ前記検知用電圧および前記加熱用電圧を印加しない期間の後に、前記第1電圧印加モードを実施するように構成される、
請求項2に記載のガス検知器。
【請求項4】
特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器であって、前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段は、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施し、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する
ように構成され、
前記電圧印加手段は、前記ガス非検知動作時において、前記第1電圧印加モードと前記第2電圧印加モードとを交互に繰り返して実施するように構成される、ガス検知器。
【請求項5】
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記ガス検知部の表面を70~120℃で加熱可能な電圧である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項6】
前記ガス検知部が、前記検知対象ガスとして10ppb以下の濃度のアンモニアを検知可能に構成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項7】
前記ガス検知器が、前記ガス検知器を動作させるための電源を備え、
前記ガス検知器が、
前記電源がオンの状態で、前記ガス検知動作が可能な測定モードと、
前記電源がオフの状態で、前記ガス検知動作が不能で、前記電圧印加手段の動作が可能な待機モードと
を切り替え可能であり、
前記電圧印加手段は、前記待機モードにおいて、前記第2電圧印加モードを実施するように構成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項8】
特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、
前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段により、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程と
を含み、
前記方法が、前記ガス非検知動作時において、前記第2電圧印加モードを間歇的に実施する工程を含む、方法。
【請求項9】
前記方法が、前記ガス非検知動作時において、前記第2電圧印加モードを実施した後に、前記ガス検知部および前記加熱部にそれぞれ前記検知用電圧および前記加熱用電圧を印加しない工程を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記ガス非検知動作時において、前記ガス検知部および前記加熱部にそれぞれ前記検知用電圧および前記加熱用電圧を印加しない期間の後に、前記第1電圧印加モードを実施する工程を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
特定温度域で検知対象ガスを検知するガスセンサを備えるガス検知器を作動する方法であって、
前記ガスセンサが、
ハロゲン化銅を含むガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱する加熱部と、
前記ガス検知部に検知用電圧を印加し、前記検知用電圧とは別の加熱用電圧を前記加熱部に印加する電圧印加手段と
を備え、
前記加熱用電圧は、前記加熱部に印加されると、前記特定温度域よりも高い温度で前記ガス検知部の表面を加熱可能な電圧であり、
前記電圧印加手段により、
前記検知対象ガスを検知するためのガス検知動作時に、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加することなく、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加する第1電圧印加モードを実施する工程と、
前記検知対象ガスを検知しないガス非検知動作時に、前記ガス検知部に前記検知用電圧を印加することなく、前記加熱部に前記加熱用電圧を印加する第2電圧印加モードを実施する工程と
を含み、
前記方法が、前記ガス非検知動作時において、前記第1電圧印加モードと前記第2電圧印加モードとを交互に繰り返して実施する工程を含む、方法。