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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085829
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】気化装置及び太陽熱発電装置
(51)【国際特許分類】
   F24S 23/30 20180101AFI20240620BHJP
   F24S 23/71 20180101ALI20240620BHJP
   F24S 30/45 20180101ALN20240620BHJP
【FI】
F24S23/30
F24S23/71
F24S30/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200582
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】522487929
【氏名又は名称】ふくろうシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100224487
【弁理士】
【氏名又は名称】元吉 剛一
(72)【発明者】
【氏名】浜名 恵吾
(57)【要約】
【課題】小型でも効率的に集熱することが可能な気化装置及び太陽熱発電装置を提案する。
【解決手段】本開示に係る気化装置は、内部に液体を貯留するための空洞を有し、重力方向の傾きが一定である集熱容器と、前記集熱容器の第1面側に凹面状の反射面を向けて配置された放物面鏡と、前記集熱容器に対して前記第1面側と反対側である第2面側に配置され、前記集熱容器により前記放物面鏡への入射が遮られる太陽光を前記集熱容器に集光する集光レンズと、を備える。
【選択図】 図12


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留するための空洞を有し、重力方向の傾きが一定である集熱容器と、
前記集熱容器の第1面側に凹面状の反射面を向けて配置された放物面鏡と、
前記集熱容器に対して前記第1面側と反対側である第2面側に配置され、前記集熱容器により前記放物面鏡への入射が遮られる太陽光を前記集熱容器に集光する集光レンズと、
を備える気化装置。
【請求項2】
前記集光レンズ及び前記放物面鏡を太陽と正対する方向に配向させる太陽光追尾装置をさらに備える、
請求項1に記載の気化装置。
【請求項3】
前記集熱容器は、前記放物面鏡の焦点及び前記集光レンズの焦点との距離を維持できる形状であり、
前記太陽光追尾装置は、前記放物面鏡の焦点及び前記集光レンズの焦点が前記集熱容器と近接又は一致する位置関係を維持しつつ、前記集光レンズ及び前記放物面鏡を太陽と正対する前記方向に配向させる
請求項2に記載の気化装置。
【請求項4】
前記集熱容器の前記第2面側を覆うように配置され、太陽光を透過させる透明カバーと、
前記集熱容器の前記第1面側を覆うように配置され、前記透明カバーとともに前記集熱容器及び前記放物面鏡を収容する筐体を構成する背面カバーと、
をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の気化装置。
【請求項5】
前記集熱容器は、銅以上の耐食性を備え且つアルミニウム以上の熱伝導率を備えた素材で構成され、
前記集熱容器の表面は、黒色である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の気化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の気化装置と、
前記集熱容器で発生した蒸気を用いて発電を行う発電機と、
を備える太陽熱発電装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気化装置及び太陽熱発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽熱を利用する装置として、太陽熱発電機、太陽熱調理器、太陽炉などが広く知られている。例えば、ソーラークッカーなどの太陽熱調理器などは、近年のアウトドアレジャーの人気に伴いその需要が高まってきている。また、太陽熱発電機や太陽炉などは、エネルギー価格の高騰や電力需要のひっ迫、SDGs(Sustainable Development Goals)に対する企業や個人レベルでの取り組みなどから、次世代のエネルギー供給源として注目されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-327962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来における太陽熱を利用する装置では、太陽光の集光量が十分でなく、必要な熱量を得られない場合が存在した。このような問題に対処するためには、集光器を拡大あるいは増設して目的の熱量を達成することが考えられるが、従来の太陽熱発電装置として知られているパラボラ・トラフ型やリニア・フレネル型やタワー型などの太陽熱発電装置は、そもそも一般家庭への設置には不向きな構造であって且つ一般家庭に設置するには大き過ぎるため、熱量の向上のために更なる大型化を図ることは現実的ではなかった。
【0005】
そこで本開示では、小型でも効率的に集熱することが可能な気化装置及び太陽熱発電装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る気化装置は、内部に液体を貯留するための空洞を有し、重力方向の傾きが一定である集熱容器と、前記集熱容器の第1面側に凹面状の反射面を向けて配置された放物面鏡と、前記集熱容器に対して前記第1面側と反対側である第2面側に配置され、前記集熱容器により前記放物面鏡への入射が遮られる太陽光を前記集熱容器に集光する集光レンズと、を備える。
【0007】
また、本開示の一実施形態に係る太陽熱発電装置は、上記気化装置と、前記集熱容器で発生した蒸気を用いて発電を行う発電機と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る集熱器の外観図である。
図2図1に示す集熱器のA-A’線を含む垂直断面図である。
図3図1に示す集熱器のB-B’線を含み且つA-A’線と垂直な面の垂直断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る集熱器組立体の概略構成例を示す外観図である。
図5】本開示の一実施形態に係るパイプ部材の側視図である。
図6図5に示すパイプ部材を長手方向に沿って切断した際の断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係るパイプ部材を集熱器に連結させるためのジョイント部材の概略構成例を示す外観図である。
図8】本開示の一実施形態に係る集光容器の分解図である。
図9】本開示の一実施形態に係る集光容器の組立図である。
図10】本開示の一実施形態に係る太陽光追尾装置の機能構成例を示すブロック図である。
図11】本開示の一実施形態に係る太陽光追尾装置の概略構成例を示す外観図である。
図12】本開示の一実施形態に係る気化装置の概略構成例を示す外観図である。
図13】本開示の一実施形態に係る太陽熱発電装置の概略構成例を示す図である。
図14】本開示の一実施形態に係る給水タンクの概略構成例を示す外観図である。
図15図14に示す給水タンクの内部構造例を示す断面図である。
図16】本開示の一実施形態に係る蒸気タービン式発電機の概略構成例を示す外観図である。
図17】本開示の一実施形態に係る冷却器の概略構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
太陽熱発電機、太陽熱調理器、太陽炉などの太陽熱を利用した装置では、太陽光の集光量が十分でなく、必要な熱量を得られない場合が存在する。例えば、熱媒体である液体を太陽熱で加熱することで発生する蒸気を利用する装置では、太陽光の入射面に対して背面側に配置された反射鏡を用いて集熱容器に太陽光を集光することで集熱容器内の液体を加熱する構成が考えられるが、このような構成では、反射鏡に集熱容器やこれに接続された部品の影が形成されてしまい、集熱効率が低減してしまうという課題が存在する。
【0010】
このような、必要な熱量を得られないことへの対処手段としては、集光器を拡大あるいは増設して目的の熱量を達成することが考えられる。ここで、従来の太陽熱発電装置としては、パラボラ・トラフ型やリニア・フレネル型やディッシュ型やタワー型などが知られているが、これら従来の太陽熱発電装置は、そもそも一般家庭への設置には不向きな構造であり、一般家庭に設置するには大き過ぎるという問題が存在した。例えば、パラボラ・トラフ型及びリニア・フレネル型の場合、集光ミラーに一定の長さが必要であり、ディッシュ型の場合は、集光ミラーを大きくする必要があり、タワー型の場合は、ヘリオスタットを増やす必要があった。また、例えば、パラボラ・トラフ型及びリニア・フレネル型の場合、長い配管に熱媒体を流すための動力損失などが課題であり、そのため集熱管には熱損失の小さい真空二重管を使用する必要があった。
【0011】
これらのように、従来の太陽熱発電装置において熱量の向上のために更なる大型化を図ることは、一般家庭向けの太陽熱発電装置としては現実的ではなかった。
【0012】
また、液状の熱媒体を加熱し生成される蒸気を発電等に利用する場合、集熱器に一定量の液体を貯めて加熱し、気化した分を補充するほうが効率的であると言えるが、一般家庭用に小型化された装置において太陽光を追尾して集熱効率を上げようとすると、集熱器の傾斜により排出口が液体で塞がれてしまい、集熱器が破損するという問題が存在した。
【0013】
また、十分な熱量を得られない場合、少ない熱量で十分な気化を行うために沸点の低い液体を熱媒体として使用することが考えられるが、例えば水や海水などよりも沸点が低い液体には可燃性のものや高価で入手が困難なものが多く、安全性を確保するために装置を大型化及び強靭化する必要が生じたり、コストが高くなってしまったりという課題が存在した。
【0014】
さらに、時刻や季節によって入射角が変化する太陽光を利用して安定した集熱を実現するためには、太陽光を追尾して集熱効率を上げる構成が考えられるが、このように構成した場合、筐体の傾斜により排出口が液体により塞がれてしまい、熱の利用効率の低下や装置の破損などの不具合が発生する可能性があるという課題が存在した。
【0015】
そこで、以下で例示する実施形態では、小型でも効率的に集熱することが可能な気化装置及び太陽熱発電装置を提案する。例えば、以下の実施形態で例示する気化装置及び太陽熱発電装置は、熱媒体である液体の注入口と排出口とを有し、重力方向に対する傾きが一定である集熱容器と、集熱容器に対して太陽光の入射方向と反対側(背面側又は第1面側ともいう)に配置され、入射した太陽光を集熱容器に集光させる放物面鏡と、太陽光の入射方向に対して集熱容器の前面側(正面側又は第2面側ともいう)に配置され、入射した太陽光を集熱容器に集光させる集光レンズと、放物面鏡と集光レンズとが太陽に正対するように追尾する追尾装置とを備えてもよい。
【0016】
以下で例示する実施形態によれば、太陽光の集熱効率を向上することが可能となるため、小型化した場合でも十分な熱量を得ることが可能となる。例えば、集熱容器の前面側に配置された集光レンズと背面側に配置された放物面鏡とで太陽熱を効率的に集熱容器に集めることが可能となるため、小型化した場合でも十分な熱量を得ることが可能となる。
【0017】
以下、本開示の実施形態に係る気化装置及び太陽熱発電装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
なお、以下の実施形態では、熱媒体として水又は海水を用いた場合を例示する。水や海水は、不燃性であり且つ安価で入手が容易であるため、これを熱媒体とする気化装置及び太陽熱発電装置の小型化及び低コスト化を実現することが可能である。また、例えば、海水を熱媒体とした場合、副生物として食塩や蒸留温水も得ることが出来、既存の太陽熱発電や太陽熱温水器を使用するよりもはるかに高い効果が得られる。ただし、水や海水に限定されず、安全性が高い液体状の媒体であれば、種々の媒体を用いることが可能である。
【0019】
また、以下の実施形態では、熱媒体を太陽熱で加熱することで発生した蒸気でタービンを駆動して発電を行う蒸気タービン方式の太陽熱発電装置を例示するが、発電方式はこれに限定されず、例えばスクリュ式など、蒸気を利用する種々の発電方式を採用することが可能である。
【0020】
(集熱器10)
図1図3は、本開示の一実施形態に係る集熱器の概略構成例を示す図である。図1は、集熱器の外観図であり、図2は、集熱器のA-A’線を含む垂直断面図であり、図3は、集熱器のB-B’線を含み且つA-A’線と垂直な面の垂直断面図である。
【0021】
図1図3に示すように、集熱器10は、内部に空洞を有する球状の集熱容器11と、集熱容器11の中心を通る直線A-A’に沿って集熱容器11からそれぞれ突出する円筒状の注入管12及び排出管13とを備える。
【0022】
注入管12及び排出管13それぞれの内部空間は、集熱容器11内部の空洞に連続している。注入管12及び排出管13のうち少なくとも一方は、集熱容器11と一体に形成されたものであっていてもよいし、集熱容器11とは別に成形されたものが集熱容器11にねじ止めや溶接等により接続されたものであってもよい。
【0023】
注入管12における集熱容器11と反対側の端は開口された注入口となっており、水や海水などの熱媒体が注入される。注入管12から注入されて集熱容器11内に蓄えられた一定量の熱媒体は、太陽光が集光される集熱容器11の内部で加熱されて蒸気を発生する。
【0024】
図2及び図3に示すように、集熱容器11の内部には、集熱容器11内の空洞と排出管13内の空洞とを連続させる空間を形成するガイド部材15が設けられている。ガイド部材15の排気口16は、集熱容器11内の空間における天井付近に位置されている。これにより、集熱容器11内に蓄えられた熱媒体の排出管13からの流出を抑制しつつ、集熱容器11内で発生した蒸気を排出管13から効率的に排出することが可能となっている。また、排気口16を内部空間の天井付近に配置することで、姿勢制御や地震や衝撃などの何らかの要因によって集熱器10が傾いた場合でも、排気口16が熱媒体によって塞がれて集熱容器11内部の圧力が過剰に上昇することを防止できるため、集熱器10の破損などの不具合の発生を抑制することも可能となる。
【0025】
排出管13における集熱容器11と反対側の端は開口された排出口となっている。熱媒体から発生した蒸気は、排出管13の排出口から排出され、例えば、発電等に利用されてよい。
【0026】
以上のような構成において、少なくとも集熱容器11は、太陽光の吸収率の高い部材で構成されたり、太陽光の吸収率の高い塗料で塗装されたりすることで、太陽熱に対する集熱効率が高められていてもよい。例えば、市販されている塗料には、光の吸収率が99%を超えるものが存在するが、このような塗料を用いて集熱容器11を塗装することで、太陽熱に対する集熱効率を大幅に向上することも可能である。
【0027】
集熱容器11による光の吸収率を高めることで、周囲の物体で反射や散乱されて集熱容器11に入射する光や、集光レンズ60を避けて直接に集熱容器11に入射する光や、放物面鏡40に対して斜めに入射して集熱容器11へ向けて反射される光や、周囲の物体で反射や散乱された後に放物面鏡40で反射されて集熱容器11に入射する光など、光軸Cに沿う光以外の光の吸収を高めることが可能となるため、集熱容器11による集熱効率をより高めることが可能となる。
【0028】
また、少なくとも集熱容器11(好ましくは、注入管12及び排出管13も)には、耐海水合金(例えば、銅やステンレス鋼等)など、耐食性が高く強く且つ熱伝導率の高い材料が使用されてもよい。それにより、熱媒体として例えば海水を使用した場合でも、耐久性及び集熱効率を高めることが可能となる。
【0029】
(集熱器組立体30)
図4は、本実施形態に係る集熱器組立体の概略構成例を示す外観図である。図5及び図6は、本実施形態に係る集熱器に連結されるパイプ部材の概略構成例を示す図であり、図5は、本実施形態に係るパイプ部材の側視図であり、図6は、図5に示すパイプ部材を長手方向に沿って切断した際の断面図である。図7は、本実施形態に係るパイプ部材を集熱器に連結させるためのジョイント部材の概略構成例を示す外観図である。
【0030】
図4に示すように、集熱器10の注入管12には、外部から集熱器10へ熱媒体を供給するためのパイプ部材20が連結され、排出管13には、集熱容器11内で発生した蒸気を外部へ導くためのパイプ部材20が連結される。
【0031】
図1及び図2に示されているように、注入管12の注入口側の端及び排出管13の排出口側の端には、それぞれねじ部(ネジ山)14が設けられている。一方、図5に示すように、各パイプ部材20における集熱器10への取り付け端には、ねじ部(ネジ山)24が設けられている。なお、ねじ部14とねじ部24との山(又は溝)の向き(ねじの向きともいう)は、同一方向であってもよいし、反対方向であってもよい。
【0032】
図6に示すように、各パイプ部材20の内部は空洞21となっており、外部から供給された熱媒体、又は、集熱器10内で発生した蒸気が流通可能に構成されている。パイプ部材20におけるねじ部24と反対側の端付近には、後述する軟性又は硬性の管(図13における管151~154参照)とのはめ込み強度を高めるために、溝22が設けられていてもよい。
【0033】
パイプ部材20と注入管12又は排出管13とは、例えば、図7に示すような、ジョイント部材25を用いて連結されてもよい。ジョイント部材25は、例えば、ジョイントナットと呼ばれるような、一方の端に注入管12又は排出管13のねじ部14と螺合するねじ穴26を備え、他方の端にパイプ部材20のねじ部24と螺合するねじ穴26を備える部材であってもよい。但し、これに限定されず、パイプ部材20と注入管12又は排出管13とは、単一の部材であってもよいし、互いに溶接されていてもよい。
【0034】
パイプ部材20は、後述する太陽光追尾装置90が集熱器10を支持するための支持部材としても機能し得る。そのため、各パイプ部材20は、熱に対する耐久性が高く且つ集熱器10を支持し得る程度の剛性を備える材料(例えば、ステンレスなど)で構成されることが好ましい。
【0035】
(集光容器80)
図8及び図9は、本実施形態に係る集熱器を収容する集光容器の概略構成例を示す図である。図8は、本実施形態に係る集光容器の分解図であり、図9は、本実施形態に係る集光容器の組立図である。
【0036】
図8及び図9に示すように、集光容器80は、放物面鏡40と、透明カバー50と、集光レンズ60と、背面カバー70とで構成される。
【0037】
放物面鏡40は、光軸Cと平行又は略平行に入射した太陽光を光軸C上に設定された焦点(以下、放物面鏡焦点又は第1焦点ともいう)に集光するように反射する凹面状(放物面状であってもよい)の反射面41を備える。この放物面鏡40は、透明カバー50及び背面カバー70よりなる筐体内に収容されて保持されてよい。放物面鏡40が筐体内に保持された状態での放物面鏡焦点には、集熱容器11が位置されてよい。
【0038】
透明カバー50は、例えば、太陽光を透過する材料で構成されてよい。太陽光を透過する材料としては、例えば、ガラスやアクリル樹脂やその他のプラスチックなど、熱に対してある程度の耐久性を備える透明な材料が用いられてもよい。その際、透明カバー50に熱容量が大きい材料や二重構造などを採用することで、透明カバー50から外部への放熱を抑制することが可能となるため、筐体内に収容された集熱容器11の集熱効率を高めることが可能となる。なお、放物面鏡40には、透明カバー50を透過した太陽光が入射してよい。
【0039】
背面カバー70は、放物面鏡40を保持し、集熱容器11(及び放物面鏡40)の背面側を覆うカバーであってよい。この背面カバー70は、太陽光を吸収する材料で構成されてもよいし、太陽光を反射する材料で構成されてもよいし、太陽光を透過する材料で構成されてもよい。その際、背面カバー70に熱容量が大きい材料や二重構造などを採用することで、背面カバー70から外部への放熱を抑制することが可能となるため、筐体内に収容された集熱容器11の集熱効率を高めることが可能となる。
【0040】
透明カバー50及び背面カバー70は、例えば、それぞれ半球状の形状を有し、互いに組み合わせられることで、内部に空洞を有する球状の筐体を構成してもよい。筐体を球状とすることで表面積を低減することが可能となるため、筐体表面からの放熱を抑制することが可能となる。それにより、筐体内に収容された集熱容器11の集熱効率を高めることが可能となる。ただし、これに限定されず、筐体の形状は、円柱や多角柱や円錐や多角錐など、種々変形されてもよい。
【0041】
また、集熱容器11の周囲を筐体で囲うことで、集熱容器11の周りの空気を温めることが可能となるため、保温効果が得られるとともに、天候による影響を受け難くすることも可能となる。それにより、集熱容器11の集熱効率をより高めることが可能となる。例えば、晴天であっても、気温が氷点下で強い風が吹いている日など、一般的な太陽光調理器具(ソーラークッカー)等ではその影響を受けて使えなくなることがあるが、本実施形態のように、集熱容器11を透明カバー50及び背面カバー70よりなる筐体で囲む構成とすることで、そのような外的な要因による集熱効率の低下を抑制することが可能となる。
【0042】
また、太陽熱発電装置で良く知られる、パラボラ・トラフ型の場合、構造上約15m/s以上の風速で運転を停止し、リニア・フレネル型の場合でも約25m/s以上の風速で運転を停止するが、本実施形態のように、集熱容器11の周囲が筐体で保護されていることで、強風への影響も少なくすることが可能である。
【0043】
透明カバー50の頂点には、中心が光軸C上に位置し且つ焦点(以下、レンズ焦点又は第2焦点ともいう)が光軸C上に位置する集光レンズ60が設けられる。ここで、集光レンズ60の光軸と放物面鏡40の光軸とは光軸Cとして一致していてよい。なお、透明カバー50の頂点とは、集光容器80を太陽に対して正対させた際に光軸Cを通る透明カバー50上の点であってよい。
【0044】
集光レンズ60は、例えば、球面凸レンズやフレネルレンズやプリズムなど、所定の焦点に入射光を集光することが可能な光学素子であってよい。フレネルレンズやプリズムを使用する場合、光軸と垂直な断面の形状や、円形に限定されず、四角形や他の多角形や楕円形など、種々変形されてもよい。また、集光レンズ60は、透明カバー50と一体に形成されたものであってもよいし、透明カバー50に設けられた穴又は窪みにはめ込まれた部材であってもよい。
【0045】
レンズ焦点には、集熱容器11が位置されてよい。すなわち、集熱器組立体30は、集熱容器11が放物面鏡焦点及びレンズ焦点の両方と近接又は一致するように、透明カバー50及び背面カバー70(具体的には、後述する切り欠き54及び74)によって位置決めされてよい。それにより、集光レンズ60で集光された太陽光と、放物面鏡40で反射集光された太陽光とを用いて十分な熱量を集熱容器11に与えることが可能となるため、小型化した場合でも十分な熱量を得ることが可能となる。なお、「近接」とは、放物面鏡40/集光レンズ60で集光された太陽光の大部分(少なくとも過半数)を集熱容器11に入射させることができる範囲内で、各焦点が集熱容器11から外れている状態であってもよい。
【0046】
また、集熱容器11の背面側に放物面鏡40を配置した場合、放物面鏡40に集熱容器11の影が形成されてしまい、その分、放物面鏡40で集光される太陽光の光量が低下してしまう場合がある。例えば、集熱容器11を漆黒に塗装した場合では、放物面鏡40に形成される集熱容器11の影が濃くなり、それにより、放物面鏡40で集光される太陽光の光量が低下する恐れがある。
【0047】
そこで、本実施形態では、光軸Cに対して垂直な面における集光レンズ60のサイズ及び形状を、光軸Cに対して垂直な面における集熱容器11のサイズ及び形状と一致又は略一致させる。例えば、集熱容器11を球状とし、集光レンズ60を球面凸レンズとした場合、集光レンズ60の直径を集熱容器11の直径と同程度とする。それにより、集熱容器11によって遮られて影となる分の太陽光を集光レンズ60を用いて集熱容器11に集光させることが可能となるため、集熱容器11の影となることによる集光効率の損失分を集光レンズ60による集光によって補うことが可能となる。また、集光レンズ60のサイズを集熱容器11よりも大きくした場合には、集光レンズ60の影が放物面鏡40に形成されることとなるが、集光レンズ60のサイズと集熱容器11のサイズとを同程度とすることで、集光レンズ60の影が放物面鏡40に形成されることを抑制することが可能となるため、集光レンズ60の影が形成されることによる放物面鏡40の集光効率の低下を抑制することも可能となる。これ以外でも、集熱容器11の形状は球体に限定されるものではなく、正面体や多面体や円柱などの種々の形状を採用することが可能である。その際、集光レンズ60を集熱容器11の形状に略一致させることで同様の効果を得ることができる。
【0048】
透明カバー50及び背面カバー70それぞれには、組み合わされた際に集熱器組立体30のパイプ部材20が貫挿される穴を形成するための半円状の切り欠き54及び74が設けられてもよい。切り欠き54及び74が形成する2つの穴に集熱器組立体30の両脇のパイプ部材20をそれぞれ貫挿させた際の集熱容器11の位置は、透明カバー50と背面カバー70とを組み合わせて成る筐体内の中心であってよい。そして、放物面鏡焦点及びレンズ焦点は、筐体内の中心に位置する集熱容器11に設定されてよい。集熱容器11を筐体の中心に配置することで、透明カバー50と背面カバー70とを組み合わせることで構成された集光容器80をパイプ部材20を軸として上下方向(垂直方向ともいう)に回転させた場合でも、レンズ焦点及び放物面鏡焦点から集熱容器11が外れることを防止することが可能となる。
【0049】
なお、パイプ部材20は、後述する太陽光追尾装置90(具体的には回転台92)に対して集熱器組立体30(例えば、集熱容器11)を保持するための保持部材の一部であってよい。より具体的には、パイプ部材20並びに注入管12及び排出管13は、集光レンズ60及び放物面鏡40から集熱容器11までの距離を維持するための保持部材の一部であってよい。このパイプ部材20は、透明カバー50及び背面カバー70よりなる筐体に集熱器組立体30が固定されないように、透明カバー50及び背面カバー70に設けられた切り欠き54及び74が形成する穴に回動可能に貫挿されてもよい。
【0050】
なお、筐体と集熱器組立体30とを固定した場合、後述する太陽光追尾装置90を用いて筐体を上下方向に回転させると、角度によっては集熱容器11内の排気口16に熱媒体が流入してしまう可能性がある。そのようなケースを回避するためには、本実施形態のように、集熱器組立体30が筐体に固定されないようにパイプ部材20を穴に貫挿する構成が望ましい。ただし、当該説明は、集熱器組立体30が筐体に固定される構成を排除するものではない。
【0051】
また、放物面鏡40の端部には、パイプ部材20との接触を回避するための切り欠き44が設けられていてもよい。放物面鏡40とパイプ部材20との接触を回避することで、放物面鏡40の熱による変形を抑制することが可能となるため、集熱容器11への集光効率の低下を抑制することが可能となる。
【0052】
さらに、パイプ部材20には、切り欠き54及び74が形成する穴と係合するための溝が設けられていてもよい。それにより、集熱容器11の保持位置がパイプ部材20の長手方向に沿ってズレることを抑制することが可能となる。
【0053】
透明カバー50と背面カバー70とは、例えば、蝶番53を用いて開閉可能に組み立てられてもよい。蝶番53は、例えば、透明カバー50の側部に設けられた平坦面52と背面カバー70の側部に設けられた平坦面72とに取り付けられてもよい。また、背面カバー70に対する透明カバー50の開閉方向は、図8及び図9に例示するように、上開きであってもよいし、下開きであってもよいし、左右どちらかの横開き(斜め方向を含む)であってもよい。ただし、これに限定されず、透明カバー50と背面カバー70とが単にねじ止めされることで筐体を構成していてもよい。
【0054】
透明カバー50と背面カバー70とを蝶番53を用いて開閉可能とした場合、蝶番53が設けられた側と反対側には、透明カバー50及び背面カバー70の開閉を制限するための留め具51及び71が設けられてもよい。留め具51及び71は、例えば、互いが係止する構造(例えば、凸部及び凹部)を備えることで開閉を制限してもよいし、透明カバー50と背面カバー70とを組み合わせた際に位置が重なり合う穴を有し、この穴がねじ止めされることで開閉を制限する構成であってもよい。
【0055】
(太陽光追尾装置90)
図10は、本実施形態に係る太陽光追尾装置の機能構成例を示すブロック図である。図11は、本実施形態に係る太陽光追尾装置の概略構成例を示す外観図である。
【0056】
太陽光追尾装置90は、集光容器80の正面(すなわち、光軸Cの方向)が太陽の方向を追尾するように、集光容器80の姿勢を制御する制御装置である。この太陽光追尾装置90は、図10に示すように、例えば、集光容器80に対する太陽の方向(例えば、方位及び仰角)を検出する検出系97と、検出系で検出された太陽の方向へ集光容器80の正面(集光レンズ60及び放物面鏡40の光軸C方向であって透明カバー50が向く面)が向くように集光容器80の水平方向の回転角(水平回転角ともいう)及び垂直方向の回転角(垂直回転角又は仰角ともいう)を調整する駆動系99と、検出系及び調整系を制御する制御系(制御部ともいう)98とを備えてもよい。
【0057】
例えば、検出系97は、日射計を含み、日射計で計測されるエネルギー量が最大値となる方向(すなわち、太陽の方向)を演算部(太陽方向特定部)において常時又は定期的に特定してもよい。
【0058】
また、検出系97は、例えば、GNSS受信機を備え、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機で受信された信号に基づいて自己位置を推定し、その結果を制御系98に入力してもよい。なお、受信信号に基づく自己位置の推定は、後述する制御系98における演算部において実行されてもよい。
【0059】
さらに、検出系97は、例えば、集光容器80の水平方向の回転角及び垂直方向の回転角をそれぞれ検出する向きセンサを備え、集光容器80が現在向いている正面の方向(以下、集光容器80の向きともいう)を常時又は定期的に検出してもよい。なお、向きセンサとしては、例えば、ロータリーエンコーダやジャイロセンサや加速度センサなど、所定の方向(例えば、重力方向)に対する集光容器80の向きの角度を検出することが可能な種々のセンサが用いられてよい。
【0060】
制御系98は、例えば、演算部を備え、検出系97で特定された太陽の方向と、同じく検出系97で検出された集光容器80の向きとから、集光容器80の向きを太陽の方向へ向けるための回転角制御量(水平回転角制御量及び垂直回転角制御量)を演算部(水平回転角制御量計算部及び垂直回転角制御量計算部)において計算し、計算された水平方向及び垂直方向の回転角制御量から、駆動系99に与える駆動信号(モータ駆動信号)を演算部(モータ駆動信号生成部)において生成してもよい。
【0061】
また、制御系98の演算部は、検出系97から入力された自己位置情報と、現在の日時とから、集光容器80に対する太陽の向きを算出し、算出された太陽の向きから集光容器80の向きを太陽の方向へ向けるための回転角制御量を計算して駆動信号を生成してもよい。例えば、制御系98は、日射量が小さく日射計によって太陽の方向を特定できない場合や特定される太陽方向の精度が低いと判断できる場合、日射計による太陽方向の特定に代えて、GNSSで推定された自己位置から特定される太陽の方向に基づいて回転角制御量を計算してもよい。
【0062】
駆動系99は、例えば、集光容器80の向きを水平方向に回転させるための動力を発生させる水平駆動モータと、垂直方向に回転させるための動力を発生させる垂直駆動モータと、各駆動モータで発生された動力を集光容器80に伝達して集光容器80の向きを変化させる動力伝達機構とを備えてもよい。
【0063】
このような機能構成を備える太陽光追尾装置90は、図11に例示するように、台座部91と、回転台92と、2つの支持脚93と、仰角調整機構95とを備えてもよい。
【0064】
台座部91は、太陽光追尾装置90の基台であり、検出系97、制御系98及び駆動系99それぞれを構成する部品の一部又は全部を収容する。なお、本説明において、水平面及び水平方向とは、台座部91の上面と平行な面及び水平面内の方向であってよく、垂直方向とは、水平面と垂直な方向であってよい。
【0065】
回転台92は、本体に対して水平方向(第1方向ともいう)に回転する回転テーブルを含んでもよい。この回転テーブルは、駆動系99における水平駆動モータで発生された動力によって水平面内での回転角が制御されてよい。
【0066】
2つの支持脚93は、回転台92から垂直方向上向きに突出するように設けられた部材であり、回転台92に対して集熱器組立体30及び集光容器80を支持する。各支持脚93は集光容器80を保持する位置に穴94を備え、この穴94に集熱器組立体30におけるパイプ部材20の集光容器80と反対側の端が回動可能に貫挿されることで、回転台92に対して集熱器組立体30及び集光容器80を支持する。したがって、回転台92の水平面内における回転角を調整することで、集熱器組立体30と組み合わされた集光容器80の水平方向の向きを東西方向に調整することができる。
【0067】
仰角調整機構95は、駆動系99における垂直駆動モータで発生された動力に基づいて集光容器80の仰角を調整するための機構である。図11に示す例では、仰角調整機構95は、支持脚93に支持された状態の集光容器80の背面部分(背面カバー70)に当接する歯車やタイヤを備え、この歯車やタイヤに垂直駆動モータで発生された動力(回転力)を動力伝達機構を介して伝達することで、集光容器80の仰角(垂直回転角)を制御してもよい。なお、歯車を用いる場合、背面カバー70において歯車が当接する領域には、歯車と噛み合う溝が設けられてもよい。
【0068】
ただし、集光容器80の仰角を調整するための構成は、このような構成に限定されず、例えば、集光容器80の重心位置を調整することで仰角を制御する構成や、パイプ部材20が集光容器80に固定されている場合にはパイプ部材20に回転力を与えて集光容器80の仰角を調整する構成など、種々変形されてもよい。
【0069】
また、仰角調整機構95は省略されてもよい。その場合、季節(月日)に応じて台座部91の設置面に対する傾きを自動又は手動で調整可能な機構が台座部91の脚部分に設けられてもよいし、付属部品として別途用意されてもよい。
【0070】
(気化装置100)
以上のような構成を備える集熱器組立体30、集光容器80及び太陽光追尾装置90を組み立てることで、図12に示すように、太陽熱を集熱容器11に集熱して熱媒体を気化させる気化装置100が構成される。なお、本実施形態に係る気化装置100には、太陽光追尾装置90が含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0071】
図12に示す気化装置100は、太陽光追尾装置90における回転台92を水平方向に回転させることで、太陽光の東西への追尾を行い、仰角調整機構95を用いて集光容器80を上下に回転させることで、太陽光の上下方向への追尾を行う。
【0072】
ここで、支持脚93の穴94にパイプ部材20を固定した場合には、集光容器80の仰角調整に伴って集熱容器11の垂直方向の傾きが変化することを回避することが可能となる。それにより、集熱容器11内の排気口16が熱媒体によって塞がれる可能性を低減することができ、熱の利用効率の低下や集熱器10の破損などの不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0073】
ここで、集光容器80の切り欠き54及び74が形成する穴にパイプ部材20が回動可能に貫挿された構成とすることで、集熱容器11の垂直方向への傾きを変化させずに集光容器80の仰角を調整して太陽光の上下方向への追尾が可能となるため、集熱効率をより向上させ、小型化した場合でも十分な熱量を得ることが可能となる。
【0074】
また、太陽光追尾装置90が集光容器80を上下方向に回転させた場合に集熱容器11と集光レンズ60との距離及び/又は集熱容器11と放物面鏡40との距離が変化してしまうと、集光レンズ60のレンズ焦点及び/又は放物面鏡40の放物面鏡焦点が集熱容器11から外れてしまい、集熱器10による集熱効率が低下してしまう可能性がある。このような可能性に対し、本実施形態では、集熱容器11に球状の容器を用いることで、集光容器80が上下方向に回転した場合でも集熱容器11と集光レンズ60との距離及び集熱容器11と放物面鏡40との距離が変化しないように構成した。ただし、集熱容器11の形状は球状に限定されず、円柱形状や楕円柱形状や正六面体などの多面体形状(柱形状を含む)や円錐や楕円錐や多角錐やパイプを巻いたコイル形状など、種々変形されてもよい。その際、集熱容器11における太陽に正対する側(すなわち、集光レンズ60によって太陽光が集光される側)の形状及びその反対側(すなわち、放物面鏡40によって太陽光が集光される側)の形状が、集光容器80の上下方向の回転によって上記距離を変化させない形状(例えば、円形や扇形)とすることで、集熱容器11による集熱効率を安定化させることが可能となるため、より好適である。
【0075】
(太陽熱発電装置1000)
次に、上述した気化装置100により得られたエネルギーを発電に利用する場合について説明する。図13は、本実施形態に係る太陽熱発電装置の概略構成例を示す図である。図14は、本実施形態に係る給水タンクの概略構成例を示す外観図であり、図15は、図14に示す給水タンクの内部構造例を示す断面図である。また、図16は、本実施形態に係る蒸気タービン方式の発電機(以下、蒸気タービン式発電機ともいう)の概略構成例を示す外観図であり、図17は、本実施形態に係る冷却器の概略構成例を示す外観図である。
【0076】
図13に示すように、太陽熱発電装置1000は、気化装置100と、給水タンク110と、蒸気タービン式発電機120と、冷却器130と、貯水タンク(ウォータパック)140とを備え、これらが塩化ビニール管など軟性又は金属管などの硬性の管151~154を介して熱媒体又はその蒸気を上流側から下流側へ供給可能に連結されている。なお、上流側とは給水タンク110側であってよく、下流側とは貯水タンク140側であってよい。
【0077】
図13図14及び図15に示すように、給水タンク110は、上部に配置されたウォータパック113と、下部に配置された蛇腹構造の部材114と、ウォータパック113に水や海水などの熱媒体を注入するための注入口111と、ウォータパック113内の熱媒体を外部へ供給するための供給口112とを備える。供給口112は、管151を介して気化装置100における注入管12に接続されたパイプ部材20に接続される。
【0078】
蛇腹構造の部材114は、ウォータパック113の水の量に応じて伸縮する。それにより、ウォータパック113内の水位が一定に保たれ、ウォータパック113内の熱媒体が供給口112から管151を介して気化装置100へ安定的に供給される。その結果、気化装置100における集熱容器11内の熱媒体が枯渇することが抑制されている。
【0079】
図13及び図16に示すように、気化装置100における排出管13に接続されたパイプ部材20は、管152を介して蒸気タービン式発電機150における吸気口121に接続される。蒸気タービン式発電機120は、内部にタービンを備え、気化装置100から管152を介して供給された蒸気で内部のタービンを回転させることで発電する。これにより発生した電気は、蒸気タービン式発電機120に設けられた送電ケーブルやコンセントなどを介して外部へ送電されてよい。例えば、蒸気タービン式発電機120は、送電ケーブルを介して外部の蓄電池と接続され、発生した電気を蓄電池に蓄えるように構成されてもよい。また、蒸気タービン式発電機120は、発生した電気を冷蔵庫や掃除機などの家電製品等に直接送電してもよい。
【0080】
図13及び図17に示すように、蒸気タービン式発電機120の排出口122は、管153を介して冷却器130の吸入口131に接続される。蒸気タービン式発電機120内で発電に利用された蒸気(それが液化した液体を含んでもよい)は、排出口122から管153を介して冷却器130に供給される。冷却器130は、蒸気(それが液化した液体を含んでもよい)を冷却するのに十分な長さの冷却管133と、冷却管133の熱を放出するように冷却管133に接触する1つ以上の放熱板134とを備え、冷却管133内を通過する蒸気を冷却して液化する。
【0081】
なお、冷却器130は、気温に併せて冷却管の長さを調節できる仕組みを備えてもよい。また、冷却器130は、冷却ファン等の動力を使用した積極的な冷却を行うように構成されてもよい。
【0082】
冷却器130で冷却された液体(例えば、蒸気が気化した温水の蒸留水)は、排出口132から排出される。排出口132は、例えば、管154を介して貯水タンク140に接続されてもよい。冷却器130で冷却された液体を貯水タンク140に貯留しておくことで、これを再利用することが可能になる。ただし、このような構成に限定されず、管154を給水タンク110に接続して冷却された液体を給水タンク110のウォータパック113に戻すように構成されてもよい。このように、熱媒体が、太陽熱発電装置1000を循環する構成とすることで、日照時間が長い季節や地方、日射量が高い季節や地方などに太陽熱発電装置1000を設置した場合でも、給水タンク110へのこまめな給水を必要とせずに給水タンク110内の熱媒体が枯渇することを抑制することが可能となる。また、冷却器130から排出される液体は、例えば、蒸気が気化した温水の蒸留水などの無害な液体であるため、下水管などへ直接排水されてもよい。
【0083】
以上のような構成を備えることで、小型化した場合でも十分な熱量の太陽熱を集熱することが可能となるため、水や海水などを利用した太陽熱発電を実現することが可能となる。
【0084】
また、熱媒体として海水が使用された場合、気化装置100内の集熱容器11内では、水が気化することにより塩分濃度が高くなり、やがて結晶化する。この集熱容器11内部で行われていることは、塩田などで行われていることを簡素化したものであることから、熱媒体として海水が使用された場合には塩を副生物として得ることができる。例えば、海水の塩分濃度が約3.4%であることから、1リットルの海水から約34gの塩を生成することが可能である。
【0085】
以上、本開示の実施形態及びその変形例について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態又はその変形例そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0086】
また、本明細書に記載された実施形態及びその変形例における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 集熱器
11 集熱容器
12 注入管
13 排出管
14、24 ねじ部
15 ガイド部材
16 排気口
20 パイプ部材
22 溝
25 ジョイント部材
26 ねじ穴
30 集熱器組立体
40 放物面鏡
41 反射面
44、54、74 切り欠き
50 透明カバー
51、71 留め具
52、72 平坦面
53 蝶番
60 集光レンズ
70 背面カバー
80 集光容器
90 太陽光追尾装置
91 台座部
92 回転台
93 支持脚
94 穴
95 仰角調整機構
100 気化装置
110 給水タンク
111 注入口
112 供給口
113 ウォータパック
114 蛇腹構造の部材
120 蒸気タービン式発電機
121 吸気口
122 排出口
130 冷却器
131 吸入口
132 排出口
133 冷却管
134 放熱板
140 貯水タンク
151~154 管
C 光軸



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17