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特開2024-85836シートアンダートレイ及び車両用シート
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  • 特開-シートアンダートレイ及び車両用シート 図1
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  • 特開-シートアンダートレイ及び車両用シート 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085836
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】シートアンダートレイ及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/00 20060101AFI20240620BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240620BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60N3/00 Z
A47C7/62 A
B60R7/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200594
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 一志
【テーマコード(参考)】
3B084
3B088
3D022
【Fターム(参考)】
3B084JA07
3B084JB04
3B088CA02
3D022CA01
3D022CB01
3D022CC22
3D022CD03
(57)【要約】
【課題】車両の急減速時におけるトレイ本体の不用意な飛び出しを防止可能で且つトレイ本体の引出し操作が容易なシートアンダートレイを得る。
【解決手段】シートアンダートレイ20は、車両用シートのシートクッションの下方に設けられ、シートクッションに対してシート前後方向にスライド可能に支持されるトレイ本体30と、シートクッションに対して変位可能に設けられ、車両の急減速時に慣性力で変位することでトレイ係合部32Bがトレイ本体30のストッパ係合部30Cに対してシート前方から対向し、シートクッションに対するトレイ本体30のシート前方へのスライドを制限するストッパ32と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートクッションの下方に設けられ、前記シートクッションに対してシート前後方向にスライド可能に支持されるトレイ本体と、
前記シートクッションに対して変位可能に設けられ、車両の急減速時に慣性力で変位することで一部が前記トレイ本体の一部に対してシート前方から対向し、前記シートクッションに対する前記トレイ本体のシート前方へのスライドを制限するストッパと、
を備えたシートアンダートレイ。
【請求項2】
前記ストッパは、上端部が前記シートクッションに対して回転可能に支持され、車両の急減速時に慣性力でシート前方へ回転し、下端部が前記トレイ本体の一部に対してシート前方に配置される請求項1に記載のシートアンダートレイ。
【請求項3】
前記ストッパの下端部には、錘が設けられている請求項2に記載のシートアンダートレイ。
【請求項4】
乗員が着座するシートクッションと、
前記乗員の背部を支持するシートバックと、
前記トレイ本体が前記シートクッションの下方に配置され、前記ストッパが前記シートクッションに対して変位可能に設けられた請求項1又は請求項2に記載のシートアンダートレイと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特にシートクッションの下方に設けられるシートアンダートレイに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたシートアンダートレイ装置では、車体フロア上に固定もしくは前後方向に移動可能に設けられたシートのシートクッションと車体フロアとの間に前後方向に亘って一対のガイドレールが設けられている。一対のガイドレールには、アンダートレイが支持されており、ガイドレールに沿ってアンダートレイをシート前方に引出し可能とされている。ガイドレールの一部には、アンダートレイの引出しを規制するストッパが設けられている。また、アンダートレイに収縮時にストッパに係合し、伸長時にストッパとの係合が解除される板ばねが設けられている。さらに、アンダートレイの前端部には、上記の板ばねと連動し、アンダートレイの引出し操作時に板ばねを伸張してストッパとの係合を解除する操作ノブが設けられている。この操作ノブが操作されない限り、アンダートレイの引出しが規制される。これにより、車両の急減速時にアンダートレイが不用意にシート前方へ飛び出すことを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実全平04-013442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、アンダートレイを引出す際に操作ノブを操作して板ばねとストッパとの係合を解除する必要があるため、アンダートレイの引出し操作の操作性を向上させる観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両の急減速時におけるトレイ本体の不用意な飛び出しを防止可能で且つトレイ本体の引出し操作が容易なシートアンダートレイ及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のシートアンダートレイは、車両用シートのシートクッションの下方に設けられ、前記シートクッションに対してシート前後方向にスライド可能に支持されるトレイ本体と、前記シートクッションに対して変位可能に設けられ、車両の急減速時に慣性力で変位することで一部が前記トレイ本体の一部に対してシート前方から対向し、前記シートクッションに対する前記トレイ本体のシート前方へのスライドを制限するストッパと、を備えている。
【0007】
第1の態様のシートアンダートレイによれば、トレイ本体は、車両用シートのシートクッションの下方に設けられ、シートクッションに対してシート前後方向にスライド可能に支持される。ストッパは、シートクッションに対して変位可能に設けられる。車両の急減速時には、ストッパが慣性力で変位することで、ストッパの一部がトレイ本体の一部に対してシート前方から対向する。これにより、シートクッションに対するトレイ本体のシート前方へのスライドが制限される。その結果、車両急減速時におけるトレイ本体の不用意な飛び出しを防止することができる。しかも、ストッパが車両急減速時に慣性で変位する構成であるため、通常時には特別な操作をしなくてもシートクッションに対するトレイ本体のシート前方へのスライド(すなわち引出し)が許容される。よって、トレイ本体の引出し操作が容易である。
【0008】
第2の態様のシートアンダートレイは、第1の態様において、前記ストッパは、上端部が前記シートクッションに対して回転可能に支持され、車両の急減速時に慣性力でシート前方へ回転し、下端部が前記トレイ本体の一部に対してシート前方に配置される。
【0009】
第2の態様のシートアンダートレイでは、上端部がシートクッションに対して回転可能に支持されたストッパが、車両の急減速時に慣性力でシート前方へ回転し、ストッパの下端部がトレイ本体の一部に対してシート前方に配置される。これにより、トレイ本体の不用意な飛び出しが防止される。この態様では、単にシートクッションに対して回転可能なストッパを設ければよいため、ストッパの構成を簡素化することができる。
【0010】
第3の態様のシートアンダートレイは、第3の態様において、前記ストッパの下端部には、錘が設けられている。
【0011】
第3の態様のシートアンダートレイでは、ストッパの下端部に錘が設けられているので、車両の急減速時にストッパの下端部に作用する慣性力が大きくなる。これにより、車両の急減速時にストッパを迅速にシート前方へ回転させることが可能となる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、前記乗員の背部を支持するシートバックと、前記トレイ本体が前記シートクッションの下方に配置され、前記ストッパが前記シートクッションに対して変位可能に設けられた第1の態様又は第2の態様のシートアンダートレイと、を備えている。
【0013】
第4の態様の車両用シートでは、乗員がシートクッションに着座し、乗員の背部がシートバックによって支持される。シートクッションの下方には、シートアンダートレイのトレイ本体が設けられており、シートクッションには、シートアンダートレイのストッパが変位可能に設けられている。このシートアンダートレイは、第1の態様又は第2の態様のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係るシートアンダートレイ及び車両用シートでは、車両の急減速時におけるトレイ本体の不用意な飛び出しを防止可能で且つトレイ本体の引出し操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る車両用シートの部分的な構成を示す側面図である。
図2】実施形態に係るシートアンダートレイとその周辺の構成を示す斜視図である。
図3】車両の急減速時の状況を示す図2に対応した斜視図である。
図4】比較例に係るシートアンダートレイとその周辺の構成を示す側面図である。
図5】比較例に係るシートアンダートレイのトレイ本体を引出す際の状況を示す図1に対応した側面図である。
図6】実施形態の変形例を示す図2に対応した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図3を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。この車両用シート10の前後左右上下の方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、車両の乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、シートアンダートレイ20とを備えている。この車両用シート10は、例えば所謂右ハンドルの車両の助手席である。シートクッション12は、図示しないクッションフレームと、クッションフレームに支持された図示しないクッションパッドと、クッションパッドの表面を覆ったクッション表皮16と、クッションフレームを車両左方側(車幅方向外側)から覆ったサイドフィニッシャー18とを備えている。このシートクッション12は、図示しないシートスライド機構等を介して車体の床部に連結されている。
【0018】
図1及び図2に示されるように、シートアンダートレイ20は、シートクッション12に取り付けられたワイヤフレーム22と、ワイヤフレーム22を介してシートクッション12に支持されたトレイ本体30と、ワイヤフレーム22に取り付けられたストッパ32とを備えている。ワイヤフレーム22は、シートクッション12の左右両側部の下方側に配置された左右一対のサイドワイヤ24(右側のサイドワイヤ24は図示省略)と、左右のサイドワイヤ24を左右方向に繋いだセンタワイヤ26とを備えている。左右のサイドワイヤ24及びセンタワイヤ26は、金属製の線材によって構成されている。左右のサイドワイヤ24は、前後方向に延在するレール部24Aと、レール部24Aの前後両端部から上方へ延びる前後一対のクッション取付部24Bとを有している。前後のクッション取付部24Bの上端部は、クッションフレームに固定されている。
【0019】
トレイ本体30は、シートクッション12の下方に配置されている。トレイ本体30は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、上方側が開放された角箱状をなしている。トレイ本体30の前端部の上部には、取っ手部30Aが設けられている。トレイ本体30の左右の側面(右側面は図示省略)の上部には、左右のサイドワイヤ24のレール部24Aに支持された被支持部30Bが形成されている。左右の被支持部30Bは、トレイ本体30の左右の側面から左右方向外側へ突出しており、前後方向を長手方向とし且つ上下方向を板厚方向とする長尺板状をなしている。左右の被支持部30Bは、左右のサイドワイヤ24のレール部24Aに対して上方側から接触している。左右の被支持部30Bは、左右のサイドワイヤ24のレール部24Aに対して前後方向にスライド可能(摺動可能)とされている。これにより、トレイ本体30がシートクッション12に対して前後方向にスライド可能に支持されている。
【0020】
トレイ本体30の左側面の前部には、ストッパ係合部30Cが設けられている。ストッパ係合部30Cは、トレイ本体30の左右の側面から左右方向外側へ突出しており、前後方向を板厚方向とし且つ上下方向を長手方向とする長尺板状をなしている。このストッパ係合部30Cは、左側のサイドワイヤ24のレール部24Aにおける前端部の下方に配置されている。
【0021】
左側のサイドワイヤ24のレール部24Aにおける前端部には、ストッパ用ブラケット28が取り付けられている。ストッパ用ブラケット28は、ワイヤフレーム22の一部を構成している。ストッパ用ブラケット28は、例えば金属製の板材がL字状に曲げ加工されたものであり、レール部24Aの上面に溶接された固定部28Aと、固定部28Aの左端部から下方側へ延びる下延部28Bとを有している。下延部28Bの下部には、ストッパ32が変位可能(回転可能)に取り付けられている。
【0022】
ストッパ32は、例えば金属製の板材がL字状に曲げ加工されたものであり、上下方向に延在する本体部32Aと、本体部32Aの下端から左右方向内側へ延びるトレイ係合部32Bとを有している。本体部32Aの上部は、下延部28Bの下部に対して左右方向外側から重ね合わされており、本体部32Aの上端部及び下延部28Bの下部を貫通した連結軸34によって本体部32Aが下延部28Bに連結されている。連結軸34は、左右方向を軸線方向としており、ストッパ32は、ストッパ用ブラケット28に対して連結軸34回りに回転可能とされている。これにより、ストッパ32がストッパ用ブラケット28及び左側のサイドワイヤ24を介してシートクッション12に回転可能(変位可能)に支持されている。
【0023】
ストッパ32は、通常時には図2に示されるように、下延部28Bから垂下した状態で配置されている。この状態では、ストッパ32のトレイ係合部32Bがトレイ本体30のストッパ係合部30Cに対して後方側かつ下方側に位置している。この状態では、シートクッション12に対するトレイ本体30の前後方向のスライドが許容されている。車両の急減速時には、図3に示されるように、ストッパ32が慣性力によって連結軸34回りに前方へ回転する。これにより、ストッパ32の一部(下端部)であるトレイ係合部32Bが、トレイ本体30の一部であるストッパ係合部30Cに対して前方から対向する。その結果、シートクッション12に対するトレイ本体30の前方へのスライド(すなわちトレイ本体30の引出し)が制限される構成になっている。なお、本実施形態ではストッパ32がシートクッション12の左側のみに設けられているが、ストッパ32がシートクッション12の左右両側に設けられた構成にしてもよい。
【0024】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態によれば、シートアンダートレイ20のトレイ本体30は、車両用シート10のシートクッション12の下方に設けられ、シートクッション12に対して前後方向にスライド可能に支持されている。シートアンダートレイ20のストッパ32は、シートクッション12に対して回転可能に設けられている。車両の急減速時には、ストッパ32が慣性力で前方へ回転することで、ストッパ32のトレイ係合部32Bがトレイ本体30のストッパ係合部30Cに対して前方から対向する。これにより、シートクッション12に対するトレイ本体30の前方へのスライドが制限される。その結果、車両急減速時におけるトレイ本体30の不用意な飛び出しを防止することができる。
【0025】
しかも、ストッパ32が車両急減速時に慣性で変位する構成であるため、通常時には特別な操作をしなくてもシートクッション12に対するトレイ本体30の前方へのスライド(すなわち引出し)が許容される。よって、トレイ本体30の引出し操作が容易である。
【0026】
上記効果について、図4及び図5に示される比較例を用いて補足説明する。この比較例では、トレイ本体30の左右の被支持部30Bの前端部にストッパ片30Dが設けられている。各ストッパ片30Dは、左右の被支持部30Bの前端部から左右方向外側へ延びた後に下方へ延びている。トレイ本体30が図4に示される格納位置に位置する状態では、左右のストッパ片30Dが、左右のサイドワイヤ24における前側のクッション取付部24Bに対して後方側から係合(接触)する。これにより、トレイ本体30の前方へのスライド(すなわち引出し)が規制される。トレイ本体30を引出す際には、図5に示されるようにトレイ本体30の前部を一旦上方へ持ち上げて前側のクッション取付部24Bに対するストッパ片30Dの係合が解除された後に、トレイ本体30が前方へ引出される。このため、トレイ本体30を引出すために2段階の操作が必要となる。これに対し本実施形態では、トレイ本体30を引出す際に、単にトレイ本体30を前方へ引っ張ればよいため、トレイ本体30の引出し操作が容易である。
【0027】
また、本実施形態では、上端部がシートクッション12に対して回転可能に支持されたストッパ32が、車両急減速時に慣性力で前方へ回転し、ストッパ32の下端部であるトレイ係合部32Bがトレイ本体30のストッパ係合部30Cに対して前方から対向する。このように構成されているため、単にシートクッション12に対して回転可能なストッパ32を設ければよく、ストッパ32の構成を簡素化することができる。
【0028】
なお、上記実施形態において、図6に示されるように、ストッパ32の下端部に錘36を設ける構成にしてもよい。これにより、車両急減速時にストッパ32の下端部に作用する慣性力が大きくなるので、ストッパ32を迅速に前方へ回転させることが可能となる。
【0029】
また、上記実施形態において、通常時にストッパ32を垂下させず、前方側へ若干回転した姿勢に保持する構成にしてもよい。あるいは、連結軸34からストッパ32のトレイ係合部32Bまでの距離を、連結軸34からストッパ係合部30Cまでの距離よりも大きく設定する構成にしてもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、トレイ本体30がワイヤフレーム22を介してシートクッション12に支持された構成にしたが、シートクッション12に対するトレイ本体30の支持構造は適宜変更可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、ストッパ32がシートクッション12に対して回転可能に支持された構成にしたが、これに限らず、ストッパ32の構成は適宜変更可能である。例えば、車両急減速時にシートクッションに対して変位するボール部材と、該ボール部材の変位によって移動する移動部材とによってストッパを構成してもよい。
【0032】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
20 シートアンダートレイ
30 トレイ本体
32 ストッパ
36 錘
図1
図2
図3
図4
図5
図6