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特開2024-85844電力融通装置、電力融通システム、および電力融通装置の制御方法
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  • 特開-電力融通装置、電力融通システム、および電力融通装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085844
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電力融通装置、電力融通システム、および電力融通装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20240620BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240620BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240620BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
H02J7/00 L
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200606
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】片元 優太
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA07
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】電圧源となる装置に加わる過大な負荷を抑制する電力融通装置を実現する。
【解決手段】スレーブ装置(30)は、マスタ装置(20)によって電圧が制御される直流バス(10)との間で、電力を入出力する変換部(34)と、蓄電装置の充電量に応じて、変換部における電力の入出力に関する特性を管理する特性管理部(32)と、変換部において入出力する電流を、直流バスの電圧と時間とに応じて変化させる電流調整部(33)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力融通装置であって、
電力を貯蔵する蓄電装置と、
マスタ装置によって電圧が制御される直流バス配線との間で、前記電力融通装置に対する電力を入出力する変換部と、
前記蓄電装置の充電量に応じて、前記変換部における電力の入出力に関する特性を管理する特性管理部と、
前記変換部において入出力する電流を、前記直流バス配線の電圧と時間とに応じて変化させる電流調整部と、を備える電力融通装置。
【請求項2】
前記特性は、前記変換部に前記電力融通装置に対して電力を入力させる入力特性と、前記変換部に前記電力融通装置に対して電力を出力させる出力特性と、前記変換部に前記電力融通装置に対して電力の入出力を減少させる待機特性と、を含む、請求項1に記載の電力融通装置。
【請求項3】
前記電流調整部は、前記特性が前記入力特性または前記出力特性である場合において、前記電圧が所定の範囲の場合に、前記電流の絶対値を増加させる、請求項2に記載の電力融通装置。
【請求項4】
前記電流調整部は、前記特性が前記入力特性または前記出力特性である場合において、前記電圧が所定の範囲外の場合に、前記電流を維持する、請求項2に記載の電力融通装置。
【請求項5】
前記電流調整部は、前記特性が前記待機特性である場合において、前記電圧が所定の範囲の場合に、時間に応じて前記電流の絶対値を減少させる、請求項2に記載の電力融通装置。
【請求項6】
前記電流調整部は、前記特性が前記待機特性である場合において、前記電圧が所定の範囲外の場合に、前記電流を維持する、請求項2に記載の電力融通装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力融通装置と、
前記マスタ装置と、
前記直流バス配線と、を含む、電力融通システム。
【請求項8】
前記マスタ装置は、前記直流バス配線から前記マスタ装置に入出力される電流に応じて、前記直流バス配線の電圧を制御する、請求項7に記載の電力融通システム。
【請求項9】
電力を貯蔵する蓄電装置を備え、マスタ装置によって電圧が制御される直流バス配線との間で電力を入出力する電力融通装置の制御方法であって、
前記蓄電装置の充電量に応じて、前記電力融通装置に対する電力の入出力に関する特性を決定する特性決定ステップと、
前記電力融通装置に対して入出力する電流を、前記直流バス配線の電圧と時間とに応じて変化させる電流調整ステップと、を含む電力融通装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力融通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置を備えた複数の装置間を直流バスで結んだ電力融通システムの導入が進んでいる。蓄電装置には、充電量を表すSOC(State of Charge)という状態量がある。蓄電装置の劣化を防ぐためには、SOCを過剰に大きくまたは小さくせず、所定の範囲に管理することが求められる。
【0003】
特許文献1には、直流バスの電圧およびSOCに応じて、装置が入出力する電流値を決定し、電力融通システム全体でSOCを均一に保つ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-016241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、直流バスの電圧を決定し維持する装置が必要であり、該装置はシステム全体の充放電(入出力)に対応した出力容量が必要になる。仮に、該装置において出力容量が不足した場合は、直流バスの電圧を維持することができなくなり、システムダウンすることになる。そのため、該装置は大容量化し、コストアップすることになる。
【0006】
本発明の一態様は、電圧源となる装置に加わる過大な負荷を抑制する電力融通装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電力融通装置は、電力を貯蔵する蓄電装置と、マスタ装置によって電圧が制御される直流バス配線との間で、前記電力融通装置に対する電力を入出力する変換部と、前記蓄電装置の充電量に応じて、前記変換部における電力の入出力に関する特性を管理する特性管理部と、前記変換部において入出力する電流を、前記直流バス配線の電圧と時間とに応じて変化させる電流調整部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る電力融通システムは、前記電力融通装置と、前記マスタ装置と、前記直流バス配線と、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係る電力融通装置の制御方法は、電力を貯蔵する蓄電装置を備え、マスタ装置によって電圧が制御される直流バス配線との間で電力を入出力する電力融通装置の制御方法であって、前記蓄電装置の充電量に応じて、前記電力融通装置に対する電力の入出力に関する特性を決定する特性決定ステップと、前記電力融通装置に対して入出力する電流を、前記直流バス配線の電圧と時間とに応じて変化させる電流調整ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、電圧源となる装置に加わる過大な負荷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電力融通システムの概要を示す模式図である。
図2】電力融通システムの要部の構成を示すブロック図である。
図3】マスタ装置における入出力電流と電圧指令との関係図である。
図4】スレーブ装置における動作特性の遷移図である。
図5】スレーブ装置における入出力電流を決定する処理を示すフローチャートである。
図6】スレーブ装置の動作をSOCと直流バスの電圧の二軸で整理した図である。
図7】電力融通システムにおける各装置の動作の一例をタイミングチャートにまとめたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
(電力融通システム1の概要)
図1は、電力融通システム1の概要を示す模式図である。電力融通システム1は、複数の電力融通装置20および30a~cから構成されている。電力融通装置20および30a~cは共通した直流バス10に接続されている。なお、電力融通システム1における電力融通装置20および30a~cの台数は少なくとも2台以上であればよい。
【0014】
本実施形態では、電力融通システム1において、電力融通装置20がマスタ装置20として動作し、電力融通装置30a~cがスレーブ装置30a~cとして動作する。すなわち、スレーブ装置30a~cは、マスタ装置20が制御する直流バス10の電圧に基づき動作するが、これに限定されず、電力融通装置20がスレーブ装置として動作し、電力融通装置30a~cのいずれかがマスタ装置として動作しても構わない。つまり、電力融通システム1において、マスタ装置が1台であり、他がスレーブ装置であれば構わない。
【0015】
電力融通システム1では、マスタ装置20が直流バス10の電圧を決定する。各スレーブ装置30a~cは、直流バス10の電圧と、それぞれのSOCに応じて、入出力する電流を決定する。図1において、入出力する電流は、電力融通装置20および30a~cのそれぞれが出力する電流を正で表し、入力する電流を負で表すものとする。
【0016】
図2は、電力融通システム1の要部の構成を示すブロック図である。電力融通システム1は、1台のマスタ装置20と、3台のスレーブ装置30a~cを備える。本実施形態では、スレーブ装置を3台とした例を説明するが、これに限定されず、スレーブ装置が少なくとも1台あればよい。
【0017】
(マスタ装置20)
マスタ装置20は、蓄電装置21と、発電装置22と、電圧制御部23と、を備えた電力融通装置である。なお、マスタ装置20には図示していない負荷があってもよいし、発電装置22がなくてもよい。マスタ装置20は直流バス10に接続されており、電力を入出力することができる。
【0018】
蓄電装置21は、マスタ装置20において余剰した電力を貯蔵し、マスタ装置20において不足した電力を補填する。発電装置22は、マスタ装置20で使用する電力を発電する。つまり、直流バス10から入出力した電力と、発電装置22が発電した電力と、負荷で使用した電力とがバランスするように、蓄電装置21は電力をマスタ装置20に対して入出力する。
【0019】
電圧制御部23は、マスタ装置20が入出力する電流に応じて、直流バス10の電圧指令値を制御する。図3は、マスタ装置20における入出力電流と電圧指令との関係図である。図3に示すように、マスタ装置20が電力を出力する場合(入出力電流が正)、電圧指令は低下し、マスタ装置20が電力を入力する場合(入出力電流が負)、電圧指令は上昇する。また、マスタ装置20の入出力電流には定格範囲があり、ここでは-5Aから5Aである。本実施形態では、入出力電流が-5A(電力を入力)の場合は電圧指令を400Vとし、入出力電流が5A(電力を出力)の場合は電圧指令を360Vとし、この間を線形補間した関係を用いるものとする。
【0020】
なお、電圧制御部23は、蓄電装置21のSOCに基づき、入出力する電流値および直流バス10の電圧を決定しても構わない。これにより、マスタ装置20は、蓄電装置21のSOCを所定の範囲内に管理することができる。
【0021】
(スレーブ装置30a~c)
スレーブ装置30a~cは、蓄電装置31と、特性管理部32と、電流調整部33と、変換部34と、を備えた電力融通装置である。なお、スレーブ装置30a~cには図示していない負荷があってもよいし、発電装置があってもよい。負荷または発電装置は、蓄電装置31に接続される。スレーブ装置30a~cは直流バス10に接続されており、電力を入出力することができる。
【0022】
蓄電装置31は、スレーブ装置30a~cにおいて余った電力を貯蔵し、スレーブ装置30a~cにおいて不足した電力を補填する。蓄電装置31は、直流バス10に対して変換部34を介して電力を入出力する。
【0023】
特性管理部32は、スレーブ装置30a~cのそれぞれのSOCに応じて、それぞれが動作するモードである、動作特性を決定する。動作特性に関する詳細は後述する。特性管理部32は、動作特性に関して電流調整部33に出力する。
【0024】
電流調整部33は、直流バス10にスレーブ装置30a~cが入出力する電流を、直流バス10の電圧に応じて決定する。なお、電流調整部33は、入出力する電流を時間に応じて変化させる。この変化の仕方に関する詳細は後述する。
【0025】
変換部34は、特性管理部32にて決定された動作特性に基づいて電力の入力か出力かを決定し、電流調整部33にて決定された電流値で電力を入出力する。スレーブ装置30a~c(変換部34)の入出力電流には定格範囲があり、ここでは-5Aから5Aである。
【0026】
(動作特性)
スレーブ装置30a~cは、動作特性として、入力特性と、出力特性と、待機特性と、を含む。図4は、スレーブ装置30a~cにおける動作特性の遷移図である。動作特性は、SOCに応じて遷移し、入力特性は待機特性に遷移し、待機特性は出力特性に遷移する。特性管理部32は、蓄電装置31のSOCに応じて動作特性を決定し、決定した動作特性を電流調整部33に出力する。
【0027】
具体的には、入力特性の場合においてSOCが45%以上になると待機特性に遷移する。待機特性の場合においてSOCが60%以上になると出力特性に遷移する。出力特性の場合においてSOCが55%以下になると待機特性に遷移する。待機特性の場合においてSOCが40%以下になると入力特性に遷移する。ここで、遷移条件のSOCの値は一例であり、適宜設定し得る。
【0028】
入力特性では、変換部34が電力を入力、すなわち入出力電流を負の値として制御し、スレーブ装置30a~cで不足した電力を直流バス10から入力して補填する。この動作特性を続けることで、スレーブ装置30a~cで電力の余剰が生まれ、蓄電装置31が充電され、SOCが増加していく。
【0029】
出力特性では、変換部34が電力を出力、すなわち入出力電流を正の値として制御し、スレーブ装置30a~cで余剰した電力を直流バス10に出力する。この動作特性を続けることで、スレーブ装置30a~cで電力の不足を補うために、蓄電装置31が放電し、SOCが低下していく。
【0030】
待機特性では、変換部34が入出力する電力を時間に応じて徐々に減らしていく。この動作特性は、SOCの変化を抑える効果がある。
【0031】
(入出力電流の決定)
図5は、スレーブ装置30a~cにおける入出力電流を決定する処理を示すフローチャートである。
【0032】
まず、特性管理部32は、SOCを参照し、動作特性を決定する(S00)。特性管理部32は、決定した動作特性を電流調整部33に出力する。
【0033】
その次に、電流調整部33は、動作特性が入力特性か否かを判断する(S11)。動作特性が入力特性の場合(S11においてYES)、S12に遷移する。動作特性が入力特性ではない場合(S11においてNO)、電流調整部33は、動作特性が出力特性か否かを判断する(S21)。動作特性が出力特性の場合(S21においてYES)、S22に遷移する。動作特性が出力特性ではない場合(S21においてNO)、電流調整部33は、動作特性が待機特性であると判断し、S31に遷移する。
【0034】
入力特性の場合は、電流調整部33は、直流バス10の電圧が360Vより大きいか否かを判断する(S12)。直流バス10の電圧が360V以下の場合(S12においてNO)、S41へ遷移する。直流バス10の電圧が360Vより大きい場合(S12においてYES)、電流調整部33は、入力電流指令値が5A未満か否かを判断する(S13)。入力電流指令値が5A以上の場合(S13においてNO)、S41へ遷移する。入力電流指令値が5A未満の場合(S13においてYES)、電流調整部33は、入力電流指令値を0.1A増加する(S14)。
【0035】
出力特性の場合は、電流調整部33は、直流バス10の電圧が400Vより小さいか否かを判断する(S22)。直流バス10の電圧が400V以上の場合(S22においてNO)、S41へ遷移する。直流バス10の電圧が400Vより小さい場合(S22においてYES)、電流調整部33は、出力電流指令値が5A未満か否かを判断する(S23)。出力電流指令値が5A以上の場合(S23においてNO)、S41へ遷移する。出力電流指令値が5A未満の場合(S23においてYES)、電流調整部33は、出力電流指令値を0.1A増加する(S24)。
【0036】
待機特性の場合は、電流調整部33は、入出力電流が0Aより小さいか否かを判断する(S31)。入出力電流が0A以上の場合(S31においてNO)、S34へ遷移する。入出力電流が0Aより小さい場合(S31においてYES)、スレーブ装置30a~cの変換部34は電力を入力しており、電流調整部33は、直流バス10の電圧が400Vより小さいか否かを判断する(S32)。直流バス10の電圧が400V以上の場合(S32においてNO)、S41へ遷移する。直流バスの電圧が400Vより小さい場合、電流調整部33は、入力電流指令値を0.1A減少させる(S33)。
【0037】
また、電流調整部33は、入出力電流が0Aより大きいか否かを判断する(S34)。入出力電流が0Aの場合(S34においてNO)、スレーブ装置30a~cの変換部34は電力を入出力しておらず、S41へ遷移する。
【0038】
入出力電流が0Aより大きい場合(S34においてYES)、スレーブ装置30a~cの変換部34は電力を出力しており、電流調整部33は、直流バス10の電圧が360Vより大きいか否かを判断する(S35)。直流バス10の電圧が360V以下の場合(S35においてNO)、S41へ遷移する。直流バスの電圧が360Vより大きい場合、電流調整部33は、出力電流指令値を0.1A減少させる(S36)。
【0039】
S41において、変換部34は、電流調整部33が決定した入出力電流の指令値でもって、直流バス10に対する電流を制御する。その後、100msタイマがカウントアップするまで待機、つまり次のサンプリングまで待機する(S42)。
【0040】
以上のように、入力特性または出力特性の場合は、電流調整部33は、直流バス10の電圧が所定の範囲に収まっている場合、変換部34の定格電流の範囲内で(上限を5Aとして)、入出力電流の絶対値の指令値を時間に応じて徐々に増加させる。これは、スレーブ装置30a~cに入出力する電力の余裕または不足があるためである。
【0041】
また、待機特性の場合は、電流調整部33は、直流バス10の電圧が所定の範囲に収まっている間は、入出力する電流の絶対値の指令値を時間に応じて徐々に減少させる。電流調整部33は、入出力する電流の絶対値の指令値が0まで減少すると、入出力を中止する。対して、直流バス10の電圧が所定の範囲に収まっていない場合は、電流調整部33は、入出力する電流を維持し(現状のまま変化させず)、システム全体での電流量のバランスを取ろうとする。
【0042】
図6は、スレーブ装置30a~cの動作をSOCと直流バス10の電圧の二軸で整理した図である。図6は、図5で説明したスレーブ装置30a~cの動作のフローチャートを整理したものでもある。
【0043】
(動作特性の遷移)
図7は、電力融通システム1における各装置の動作の一例をタイミングチャートにまとめたものである。
【0044】
まず、動作開始時は、マスタ装置20およびスレーブ装置30a~cはそれぞれ電流を入出力しておらず、直流バス10の電圧は中央値である380Vである。
【0045】
時刻t0において、マスタ装置20において電力が不足し、スレーブ装置30a~cから入力するために、電圧制御部23は、直流バス10の電圧を上昇させる。この時、スレーブ装置30aの蓄電装置31のSOCが十分に大きかったため、スレーブ装置30aは出力特性になり、電力の出力を開始する。
【0046】
時刻t1において、スレーブ装置30bの蓄電装置31のSOCも十分に大きくなったため、スレーブ装置30bも出力特性になり、電力の出力を開始する。この時、スレーブ装置30aは電力の出力を続けており、電流調整部33は、時間経過とともに電流を徐々に増加している。
【0047】
時刻t2において、マスタ装置20が入力する電流が定格電流(5A)まで上昇したため、直流バス10の電圧を400Vに維持するようになる。これにより、スレーブ装置30aおよび30bの電流調整部33は、出力する電流の増加を停止する。
【0048】
時刻t3において、スレーブ装置30cの蓄電装置31のSOCが十分に低下したため、スレーブ装置30cは入力特性になり、電力の入力を開始する。これにより、マスタ装置20が入力する電流が減少することになった。そのために、マスタ装置20の電圧制御部23は、直流バス10の電圧を低下させる。
【0049】
直流バス10の電圧が400Vから低下したことから、スレーブ装置30aおよび30bは出力電流の指令値を再度、電流調整部33は、時間と共に入出力電流を徐々に増加させていこうとする。この時、動作特性のチャタリングを防止するために、所定の時間のウェイトをおいてから、スレーブ装置30aおよび30bは出力電流の指令値を増加し始める(時刻t4)。このウェイトは、簡略化のために図5においては記載を省略している。
【0050】
時刻t5において、スレーブ装置30aの出力電流が定格電流になったため、出力電流の増加を停止する。この時、スレーブ装置30bは出力電流の増加を続け、スレーブ装置30cは入力電流の増加を続ける。
【0051】
時刻t6において、スレーブ装置30cの入力電流が定格電流になったため、入力電流の増加を停止する。この時、スレーブ装置30bは出力電流の増加を続け、スレーブ装置30aは出力電流を定格電流で維持する。
【0052】
時刻t7において、スレーブ装置30bの出力電流が定格電流になったため、出力電流の増加を停止する。この時、スレーブ装置30aは出力電流を定格電流で維持し、スレーブ装置30bは出力電流を定格電流で維持する。
【0053】
このようにして、電力融通システム1での電力融通は行われる。また、その間、動作特性に応じて、徐々に入出力する電流は変化する。
【0054】
(小括)
スレーブ装置30a~cの特性管理部32は、スレーブ装置30a~cの蓄電装置31のSOCに応じて動作特性を決定する。また、スレーブ装置30a~cの電流調整部33は、動作特性、マスタ装置20が制御する直流バス10の電圧、および時間の経過に応じて、入出力する電流を決定する。なお、電流調整部33は、電流を決定するときに、定格電流を考慮して決定する。スレーブ装置30a~cが入出力する電流の和が、マスタ装置20に入出力される電流となる。マスタ装置20は、マスタ装置20に入出力される電流に応じて直流バス10の電圧を決定する。
【0055】
例えば、マスタ装置20からの出力電流が増加すると(定格電流の上限5Aになると)、直流バス10の電圧は低下し、スレーブ装置30a~cは、(徐々に増加させていた)スレーブ装置30a~cへの入力電流の増加を中止する。その後、いずれかのスレーブ装置30a~cが出力電流を増加させる、または入力電流を減少させると、マスタ装置20の出力電流に余裕が生じ、直流バス10の電圧が上昇する。これによって、他のスレーブ装置30a~cは入力電流の増加を再開することができる。
【0056】
スレーブ装置30a~cがこのように動作することで、マスタ装置20の入出力電流が所定範囲(定格電流)に収まるように、電力融通システム1を制御することができる。この制御は、マスタ装置20とスレーブ装置30a~cとが、互いに通信を行わなくても、または他の装置に中央制御されなくても、スレーブ装置30a~cが直流バス10の電圧を参照して動作することで実現される。そのため、電圧源となるマスタ装置20を、比較的小さい出力容量の範囲内で運転させることができる。すなわち、スレーブ装置30a~cは、電圧源となるマスタ装置20に加わる過大な負荷(電流負荷)を抑制することができる。さらに、特性管理部32が動作特性を状態に応じて変更するために、スレーブ装置30a~cのSOCを所定の範囲内に保つことができる。
【0057】
〔変形例〕
(SOCに応じた入出力電流の増分変化)
実施形態では、入力特性および出力特性における入出力電流の増分は一定(0.1A/100ms)としたが、これに限定されない。電流調整部33は、SOCが中央値(50%)より離れているほど、増分を大きくしてもよい。
【0058】
この場合、SOCが中央値より大幅に大きいスレーブ装置が優先的に電流を出力し、SOCが中央値より若干大きいスレーブ装置は少量の電流を出力するようにすることができる。入力の場合は、上述した例の逆となり、SOCが中央値より大幅に小さいスレーブ装置が優先的に電流を入力し、SOCが中央値より若干小さいスレーブ装置は少量の電流を入力するようにすることができる。
【0059】
(ウェイトの変更)
電流調整部33は、スレーブ装置の発電状況、負荷状況、およびSOCの状況に応じて、入出力電流の増分を変化させてよい。発電している電力が大きい場合、負荷状況が少ない場合、およびSOCが大きい場合に、電流調整部33は、出力する電流の指令値の増分を大きくしてもよい。
【0060】
この場合、出力が必要な蓄電装置ほど、より早く定格電流に到達することができるようになる。
【0061】
(電流指令値が微少な場合)
入出力する電流が十分に小さい場合、スレーブ装置の変換部34は電流の入出力を中止してもよい。これは、変換部における電力の変換効率の関係で、電力をロスすることを防ぐ目的である。
【0062】
なお、電流の入出力を中止している間も、入出力電流の指令値の増加は続け、所定の閾値を超してから電力融通を開始する。
【0063】
また、電流調整部33は、入出力する電流指令値の初期値を0Aではなく、十分に大きな値から計算を始めてもよい。これは、上述した電力のロスを発生させずに、電力融通システム1を動作させる効果がある。
【0064】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る電力融通装置は、電力を貯蔵する蓄電装置と、マスタ装置によって電圧が制御される直流バス配線との間で、前記電力融通装置に対する電力を入出力する変換部と、前記蓄電装置の充電量に応じて、前記変換部における電力の入出力に関する特性を管理する特性管理部と、前記変換部において入出力する電流を、前記直流バス配線の電圧と時間とに応じて変化させる電流調整部と、を備える。
【0065】
本発明の態様2に係る電力融通装置は、前記態様1において、前記特性は、前記変換部に前記電力融通装置に対して電力を入力させる入力特性と、前記変換部に前記電力融通装置に対して電力を出力させる出力特性と、前記変換部に前記電力融通装置に対して電力の入出力を減少させる待機特性と、を含む構成であってもよい。
【0066】
本発明の態様3に係る電力融通装置は、前記態様2において、前記電流調整部は、前記特性が前記入力特性または前記出力特性である場合において、前記電圧が所定の範囲の場合に、前記電流の絶対値を増加させる構成であってもよい。
【0067】
本発明の態様4に係る電力融通装置は、前記態様2または3において、前記電流調整部は、前記特性が前記入力特性または前記出力特性である場合において、前記電圧が所定の範囲外の場合に、前記電流を維持する構成であってもよい。
【0068】
本発明の態様5に係る電力融通装置は、前記態様2から4において、前記電流調整部は、前記特性が前記待機特性である場合において、前記電圧が所定の範囲の場合に、時間に応じて前記電流の絶対値減少させる構成であってもよい。
【0069】
本発明の態様6に係る電力融通装置は、前記態様2から5において、前記電流調整部は、前記特性が前記待機特性である場合において、前記電圧が所定の範囲外の場合に、前記電流を維持する構成であってもよい。
【0070】
本発明の態様7に係る電力融通システムは、前記態様1から6の電力融通装置と、前記マスタ装置と、前記直流バス配線と、を含む。
【0071】
本発明の態様8に係る電力融通システムは、前記態様7において、前記マスタ装置は、前記直流バス配線から前記マスタ装置に入出力される電流に応じて、前記直流バス配線の電圧を制御する構成であってもよい。
【0072】
本発明の態様9に係る電力融通装置の制御方法は、電力を貯蔵する蓄電装置を備え、マスタ装置によって電圧が制御される直流バス配線との間で電力を入出力する電力融通装置の制御方法であって、前記蓄電装置の充電量に応じて、前記電力融通装置に対する電力の入出力に関する特性を決定する特性決定ステップと、前記電力融通装置に対して入出力する電流を、前記直流バス配線の電圧と時間とに応じて変化させる電流調整ステップと、を含む。
【0073】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 電力融通システム
10 直流バス(直流バス配線)
20 マスタ装置
21、31 蓄電装置
22 発電装置
23 電圧制御部
30a~c スレーブ装置(電力融通装置)
32 特性管理部
33 電流調整部
34 変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7