(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085846
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】成形装置、および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 7/58 20060101AFI20240620BHJP
B29B 11/10 20060101ALI20240620BHJP
B29C 31/08 20060101ALI20240620BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20240620BHJP
B29C 48/05 20190101ALI20240620BHJP
【FI】
B29B7/58
B29B11/10
B29C31/08
B29C48/30
B29C48/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200609
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小鉄 貴広
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AA24
4F201BA03
4F201BA06
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK80
4F201BM06
4F201BM14
4F201BQ09
4F201BQ20
4F201BQ33
4F201BQ40
4F207AA24
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KL57
4F207KL62
4F207KL63
4F207KL94
4F207KW41
(57)【要約】
【課題】ノズルの吐出口から溶融樹脂組成物が管状になって吐出する現象を防止する。
【解決手段】成形装置(10)において、溶融樹脂組成物を金型へ供給するノズル(31)は、ノズル本体(31a)と、プランジャー(31c)と、金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部(31b)と、を備え、ガイド部(31b)は、略筒形状であり、ノズル本体の先端から伸びる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型と、
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、
前記溶融樹脂組成物を前記金型へ供給するノズルを有する供給部と、を備え、
前記ノズルは、
ノズル本体と、
プランジャーと、
前記金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部と、を備え、
前記ガイド部は、略筒形状であり、前記ノズル本体の先端から伸びる、成形装置。
【請求項2】
前記ノズル本体の先端の出口の内径と、前記ガイド部の入口の内径とは、略同じである、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記ガイド部の長さは、2.5mm以上である、請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記ノズル本体の先端の出口の内径は、3.5mm以上である、請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項5】
さらに、前記溶融部から前記供給部へ前記溶融樹脂組成物を移送する移送部を備える、請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項6】
前記移送部は、ギアポンプを備える、請求項5に記載の成形装置。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記金型と離間している、請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項8】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、
ノズルから金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を含み、
前記ノズルは、
ノズル本体と、
プランジャーと、
前記金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部と、を備え、
前記ガイド部は、略筒形状であり、前記ノズル本体の先端から伸びる、成形品の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、請求項8に記載の成形品の製造方法。
【請求項10】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される1種類以上である、請求項9に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置、および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機などにより熱可塑性樹脂を加熱し溶融樹脂組成物を調製し、樹脂供給装置の吐出部から吐出した溶融樹脂組成物を定量的に金型へ供給して、プレス成形により製品を製造するプレス成形法が知られている。このプレス成形法において、溶融樹脂組成物を定量供給する際、自動開閉ノズルを用いる。このとき、自動開閉ノズル内部に溶融樹脂組成物が残る場合と残らない場合との間で吐出の定量性が悪くなるおそれがある。そこで、吐出量の定量性を考慮して、通常は自動開閉ノズル内部に残存する樹脂がないゼロキャビティノズルを使用する。
【0003】
特許文献1には、昇降弁によってノズル先端の弁孔を開閉する多層樹脂形成ダイヘッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来技術のように、自動開閉ノズルを用いて溶融樹脂組成物を吐出した場合、当該自動開閉ノズルの吐出口から溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出する現象が発生することがわかった。管状になった溶融樹脂組成物を金型に供給しプレス成形すると、成形品にプレス痕が残る等の成形不良が発生するおそれがある。
【0006】
本発明の一態様は、ノズルの吐出口から溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出する現象を防止し得る成形装置および成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る成形装置は、金型と、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、前記溶融樹脂組成物を前記金型へ供給するノズルを有する供給部と、を備え、前記ノズルは、ノズル本体と、プランジャーと、前記金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部と、を備え、前記ガイド部は、略筒形状であり、前記ノズル本体の先端から伸びる、構成である。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、ノズルから金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を含み、前記ノズルは、ノズル本体と、
プランジャーと、前記金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部と、を備え、前記ガイド部は、略筒形状であり、前記ノズル本体の先端から伸びる、方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ノズルの吐出口から溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出する現象を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形装置の概略構成を模式的に示した図である。
【
図2】
図1に示す成形装置の吐出部に備えられたノズルの構成例を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る成形品の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0012】
〔本発明の一実施形態の概要〕
上述のように、従来、プレス成形法において、溶融樹脂組成物を金型へ定量供給するために、自動開閉ノズルを用いて溶融樹脂組成物を吐出した場合、当該自動開閉ノズルの吐出口から溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出する現象が発生することがわかった。
【0013】
上記現象を防止し得る成形技術を実現することを目的として、本発明者らが鋭意検討した結果、溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出するのは、バラス効果が原因であることを見出した。バラス効果は、粘弾性流体を細管から噴出させたときに、粘弾性流体が細管の出口付近で細管の内径よりも膨らんで噴出する現象である。そして、本発明者らは、このバラス効果を抑制すれば、溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出する現象を防止し得るという知見を見出した。具体的には、吐出口の先端から伸び、略筒形状のガイド部を設けることにより、吐出口から吐出される溶融樹脂組成物の膨らみ(バラス効果)を抑制し得ることを見出し、本実施形態に至った。
【0014】
さらに、本実施形態によれば、海洋における生分解性樹脂(例えば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系樹脂等)を使用することにより、廃棄による海洋汚染を抑制することができ、これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や目標14「持続可能な開発のために、海・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。以下、本実施形態について、さらに詳述する。
【0015】
(成形装置)
図1は、本実施形態に係る成形装置10の概略構成を模式的に示した図である。
図1に示すように、成形装置10は、押出機1と、移送部2と、吐出部3(供給部)と、加熱切断部4と、を備えている。
【0016】
押出機1は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物11を生成する溶融部に相当する。押出機1では、上記樹脂組成物は、投入口1aから投入される。そして、投入口1aから投入された樹脂組成物は、溶融混錬されて、溶融樹脂組成物11となる。なお、上記溶融部は、
図1に示す押出機1に限定されず、樹脂組成物を溶融できるものであればよい。
【0017】
移送部2は、押出機1から吐出部3へ溶融樹脂組成物11を移送する。移送部2では、溶融樹脂組成物11は吐出部3へ定量移送される。移送部2は、吐出部3へ向けて溶融樹脂組成物11を定量吐出する定量吐出部と、当該定量吐出部から吐出された溶融樹脂組成物11を吐出部3へ移送する移送部本体と、を備えている。具体的には、移送部2は、上記定量吐出部としてのギアポンプ2aと、上記移送部本体としてのホットホース2bと、を備えている。ギアポンプ2aは、押出機1に接続されており、溶融樹脂組成物11を吐出部3へ向けて定量吐出する。ホットホース2bは、ギアポンプ2aと吐出部3との間を中継するホースである。移送部2では、溶融樹脂組成物11は、ギアポンプ2aにて定量吐出され、ホットホース2bを介して吐出部3へ移送される。上記定量吐出部は、ギアポンプ2aに限定されず、溶融樹脂組成物11を定量吐出可能な構成であれば、公知の装置を採用することができる。上記定量吐出部は、ギアポンプ以外に、例えば、ショット式ポンプ(注:注射器のような定積型で吸引吐出を繰り返すポンプ)、マニホールドブロックなどが挙げられる。また、上記移送部本体は、ホットホース2bに限定されず、溶融樹脂組成物11を移送可能な構成であれば、公知の部材を採用することができる。
【0018】
このように、成形装置10によれば、押出機1から吐出部3へ溶融樹脂組成物11を移送する移送部2を備えているので、押出機1から吐出部3への移送が円滑になる。さらに、成形装置10によれば、吐出部3がギアポンプ2aを備えているので、溶融樹脂組成物11を吐出部3へ向けて定量吐出できる。
【0019】
吐出部3は、溶融樹脂組成物11を金型5へ供給するノズル31を有する。金型5は、成形品の成形空間を構成する成形部5aを有する。吐出部3のノズル31は、金型5の成形部5aへ溶融樹脂組成物11を吐出する。ノズル31は、吐出部3の先端に備えられている。溶融樹脂組成物11は、ノズル31から金型5へ定量吐出される。吐出部3は、溶融樹脂組成物11を吐出可能な構成であれば特に限定されず、公知の装置を採用することができる。また、
図1に示す構成では、1つの金型5に対して成形部5aが1つ形成されていた。しかし、金型5は、
図1に示す構成に限定されない。1つの金型5に対して2つ以上の成形部5aが形成されていてもよい。
【0020】
加熱切断部4は、吐出部3から金型5へ吐出した溶融樹脂組成物11に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する。加熱切断部4は、溶融樹脂組成物11に対して熱風を供給する熱風ヒーター4aを備えている。成形装置10によれば、加熱切断部4により、ノズル31と金型5との間の溶融樹脂組成物11の糸引き部分を切断しても新たな糸引き部分が発生せず、金型5へ溶融樹脂組成物11を定量性良く供給できる。
【0021】
なお、加熱切断部4において、熱風ヒーター4aの風力および熱風温度、並びに熱風ヒーター4aと溶融樹脂組成物11との距離といった設定は、溶融樹脂組成物11に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断できれば、特に限定されない。例えば、熱風ヒーター4aと溶融樹脂組成物11との距離に関しては、熱風ヒーター4a先端と溶融樹脂組成物11との距離が10mmに設定され得る。
【0022】
ここで、ノズル31の先端(後述するガイド部31b)は、金型5と離間している。
図1に示す構成では、ノズル31の先端は、上下方向において、金型5と離間している。これにより、ノズル31と金型5との間に溶融樹脂組成物11が介在する空間を確保している。それゆえ、本実施形態に係る成形装置10は、押出成形機のノズルから金型へ溶融樹脂組成物を吐出する際にノズルと金型とを接触させる射出成形と、吐出の形式が異なる。
【0023】
図1に示す成形装置10において、吐出部3のノズル31は、溶融樹脂組成物11と吐出可能な構成であれば、特に限定されない。好ましくは、ノズル31は、溶融樹脂組成物11を間欠吐出する構成である。
図2は、成形装置10の吐出部3に備えられたノズル31の構成例を概略的に示す断面図である。
【0024】
図2に示すように、ノズル31は、ノズル本体31aと、ガイド部31bと、プランジャー31cと、を備えている。ノズル31において、溶融樹脂組成物は、ノズル本体31aに収容される。
【0025】
ガイド部31bは、金型へ溶融樹脂組成物を案内するためのものである。ガイド部31bは、略筒形状であり、ノズル本体31aの先端から伸びている。換言すれば、ガイド部31bは、ノズル本体31aの金型側の先端に設けられた空洞部である。ガイド部31bは、ノズル本体31aの先端から鉛直下方に伸びている。また、ガイド部31bは、ノズル本体31aと連通している。吐出動作中、ノズル本体31a内の溶融樹脂組成物は、ガイド部31bを介して、金型へ吐出される。
図2に示す構成では、ガイド部31bは、ノズル本体31a側の入口31eから金型側の出口まで内径が同じである直管形状となっている。
【0026】
プランジャー31cは、鉛直方向に伸びる棒状であり、ノズル31の開閉機構として機能する。当該開閉機構は、プランジャー31cと、プランジャー31cを上下動させる移動部と、を備えている。プランジャー31cは、ノズル本体31a内を上下動することにより、ノズル本体31aの先端の出口31dを開放または閉塞する。そして、プランジャー31cにより出口31dの開放および閉塞が交互に行われることにより、ノズル31は、溶融樹脂組成物を間欠吐出する。
【0027】
ノズル31は、ノズル本体31aおよびプランジャー31cを備え、溶融樹脂組成物を吐出可能な構成であれば、特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。ノズル31の具体例は、プランジャー式吐出機、プリプランジャー式吐出機である。
【0028】
ここで、本実施形態に係る成形装置10によれば、略筒形状のガイド部31bがノズル本体31aの先端から伸びている。それゆえ、ノズル本体31a先端から吐出された溶融樹脂組成物は、ガイド部31bにより、出口31d付近で規制され、必要以上に膨らむことが抑制される。それゆえ、出口31dから吐出した溶融樹脂組成物は、吐出直後にガイド部31bにより膨らみが抑制された状態で、金型へ供給される。すなわち、出口31dから吐出した溶融樹脂組成物は、ガイド部31bにより、バラス効果が抑制される。その結果、本実施形態に係る成形装置10によれば、溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出する現象を防止することができる。このように、ガイド部31bは、バラス効果による溶融樹脂組成物の管状化現象を防止することを目的として、ノズル本体31aに設けられている。ガイド部31bは、特に粘着性が比較的高い熱可塑性樹脂(例えば、P3HA系樹脂等)の溶融樹脂組成物を用いた場合に有効である。
【0029】
また、ガイド部31bの入口31eの内径Aは、バラス効果を抑制できれば、溶融樹脂組成物の特性に応じて、任意の寸法を採用することができる。内径Aは、ノズル本体31aの先端の出口31dの内径Bよりも大きくてもよく、同じであってもよい。好ましくは、定量供給性の観点から、ノズル本体31aの先端の出口31dの内径Bと、ガイド部31bの入口31eの内径Aとは、略同じである。なお、内径Bと内径Aとが「略同じ」とは、内径Aおよび内径Bの測定限界の範囲内で同じであり、内径Bが内径A±0.1mmの誤差範囲内にあることを意味する。
【0030】
また、ガイド部31bの長さLは、バラス効果を抑制できれば、溶融樹脂組成物の特性に応じて、任意の寸法を採用することができる。特に、溶融樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、ガイド部31bの長さLは、2.5mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であることがより好ましい。また、ガイド部31bの長さLが大きければ大きいほど、溶融樹脂組成物は、ノズル本体31aの出口31d付近でバラス効果により管状であっても、ガイド部31bの出口ではバラス効果が抑制され管状が解消される傾向にある。それゆえ、長さLの上限は、特に限定されない。ガイド部31bの加工容易性の観点では、ガイド部31bの長さLは、7.0mm以下であることが好ましく、6.5mm以下であることがより好ましい。長さLの数値範囲の態様は、上記にて規定された上限および下限を適宜組み合わせて設定し得るが、2.5mm~7.0mmであることが好ましく、2.5mm~6.5mmであることがより好ましい。
【0031】
また、ノズル本体31aの出口31dの内径Bは、溶融樹脂組成物の粘度、吐出速度等に応じて適宜設定され得る。粘着性が比較的高い熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物を用いた場合、粘度、吐出速度等を考慮すると、内径Bは、大きいことが好ましい。それゆえ、ノズル本体31aの出口31dの内径Bは、3.5mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましい。また、樹脂定量供給の観点から、ノズル本体31aの出口31dの内径Bは、5.5mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。内径Bの数値範囲の態様は、上記にて規定された上限および下限を適宜組み合わせて設定し得るが、3.5mm~5.5mmであることが好ましく、4.0mm~5.0mmであることがより好ましい。
【0032】
特に粘着性が比較的高い熱可塑性樹脂(例えば、P3HA系樹脂等)の溶融樹脂組成物を用いた場合、ノズル本体31aの出口31dの内径Bが大きいと、上述したバラス効果による溶融樹脂組成物の管状化現象が発生しやすくなる傾向にある。それゆえ、ガイド部31bは、ノズル本体31aの出口31dの内径Bを上記のように大きくした場合に、特に有効である。
【0033】
また、ガイド部31bの内径は、バラス効果を抑制できれば、溶融樹脂組成物の特性に応じて、任意の寸法を採用することができる。
図2に示すようにガイド部31bが直管形状の筒である場合、ガイド部31bの内径は、入口31eの内径Aと同じである。特に、溶融樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、ガイド部31bの内径は、3.5mm以上であることが好ましく、4.0mm以上であることがより好ましい。また、樹脂定量供給の観点から、ガイド部31bの内径は、5.5mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましい。ガイド部31bの内径の数値範囲の態様は、上記にて規定された上限および下限を適宜組み合わせて設定し得るが、3.5mm~5.5mmであることが好ましく、4.0mm~5.0mmであることがより好ましい。
【0034】
なお、
図2に示す構成では、ガイド部31bは、ノズル本体31a側の入口31eから金型側の出口まで内径が同じである直管形状であった。しかし、バラス効果を抑制できる効果を奏する限り、ガイド部31bの形状は、ノズル本体31aの先端から伸びた、任意の略筒形状を採用することができる。例えば、ガイド部31bの形状は、ノズル本体31aの先端から金型へ向かうに従い内径が小さくなったテーパー筒形状であってもよい。
【0035】
(成形品の製造方法)
本実施形態に係る成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、ノズルから金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を含む。そして、上記供給工程にて使用されるノズルが、ノズル本体と、プランジャーと、前記金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部と、を備え、前記ガイド部は、略筒形状であり、前記ノズル本体の先端から伸びる。これにより、溶融樹脂組成物が管状(ストロー状)になって吐出する現象を防止することができる。
【0036】
本実施形態に係る成形品の製造方法は、上記溶融工程および上記供給工程を含んでいれば、特に限定されないが、例えば、
図2に示すノズル31を用いた成形品の製造方法が挙げられる。
図3は、本実施形態に係る成形品の製造方法の一例を示す工程図である。
図3に示すように、本実施形態に係る成形品の製造方法は、溶融工程101と、移送工程102と、吐出工程103(供給工程)と、加熱切断工程104と、を含んでいる。
【0037】
溶融工程101では、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する。上記樹脂組成物の溶融方法は、熱可塑性樹脂を含有する溶融樹脂組成物を形成できる方法であれば、従来公知の方法を採用することができる。好ましくは、上記溶融工程は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程を含む。
【0038】
溶融混練工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されない。溶融混練工程の具体例としては、例えば以下(a1)および(a2)の方法が挙げられる:
(a1)混合装置などによる混合またはブレンドによって、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を調製する。その後、当該樹脂組成物を溶融混練装置に供給し、溶融混練する方法;
(a2)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給し、溶融混練装置内で樹脂組成物を調製する(完成させる)とともに、当該樹脂組成物を溶融混練する方法。
【0039】
前記(a1)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を混合またはブレンド(ドライブレンド)する順序は特に限定されない。前記(a2)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給する順序は特に限定されない。
【0040】
前記(a1)の方法において、混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0041】
前記(a1)および(a2)の方法において、溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0042】
溶融混練工程において、例えば上記熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、樹脂組成物を溶融混練するときの温度は、P3HA系樹脂の物性(融点、重量平均分子量等)および使用する添加剤の種類等によるため一概には規定できない。樹脂組成物を溶融混練するときの温度に関して、例えば、吐出部から吐出される溶融樹脂組成物の温度(以下、組成物温度と称する場合がある。)を140℃~190℃とすることが好ましく、150℃~180℃とすることがより好ましく、160℃~170℃とすることがさらに好ましい。組成物温度が150℃以下である場合、P3HA系樹脂の未溶融物が発生してしまう場合がある。一方、組成物温度が180℃以上である場合、P3HA系樹脂が熱分解してしまう場合がある。
【0043】
移送工程102では、上記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する。上記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する方法は、特に限定されず、公知の移送方法を採用することができる。好ましくは、移送工程102では、吐出部へ溶融樹脂組成物を定量的に移送する。また、この場合、移送装置は、溶融樹脂組成物を定量的に移送可能であればよく、例えば、ショット式ポンプ(注:注射器のような定積型で吸引吐出を繰り返すポンプ)、マニホールドブロック、ギアポンプなどが挙げられる。これらの中でも、移送装置として、ギアポンプを用いることが好ましい。すなわち、移送工程102では、ギアポンプを用いて前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送することが好ましい。当該ギアポンプは、溶融樹脂組成物を定量的に吐出部へ移送可能であれば特に限定されず、従来公知の装置を採用できる。
【0044】
また、移送工程102では、移送装置と吐出部との間に移送体を設け、当該移送体を介して、移送装置から吐出部へ溶融樹脂組成物を移送してもよい。上記移送体は、溶融樹脂組成物を移送可能な構成であれば、特に限定されない。上記移送体は、ホットホースであることが好ましい。ホットホースは、上述の組成物温度を有する溶融樹脂組成物を移送可能な構成であり、例えば、ヒーター、保温層、およびインナーチューブ等から構成されている。これらの中でも、耐圧、耐熱の観点から、ホットホースにおけるインナーチューブの材料は、テフロン(登録商標)であることが好ましい。
【0045】
吐出工程103では、ノズルから上記金型へ上記溶融樹脂組成物を供給する。ノズルから上記金型への上記溶融樹脂組成物の供給方法は、特に限定されない。好ましくは、プレス成形体の量産性の観点から、金型の真上にノズルを設置し、当該ノズルから金型へ吐出落下させることにより、上記金型へ溶融樹脂組成物を供給する。
【0046】
特に粘着性が比較的高い溶融樹脂組成物に対しては、吐出工程103において、上記溶融樹脂組成物を間欠吐出することが好ましい。これにより、金型に対する溶融樹脂組成物の供給定量性が向上する。吐出工程103においては、溶融樹脂組成物を間欠吐出可能なノズルは、例えば、吐出口を開閉する開閉機構によって実現することができる。当該開閉機構による吐出口の開動作および閉動作が交互に行われることにより、上記ノズルは、溶融樹脂組成物を間欠吐出する。このようなノズルは、例えば、
図2に示すノズル31が挙げられる。
【0047】
また、溶融樹脂組成物の間欠吐出は、吐出動作の実行および停止が交互に周期的に行われていてもよいし、非周期的に行われていてもよい。吐出動作の実行および停止が交互に周期的に行われる場合、吐出動作の実行および停止の周期は、組成物温度、溶融樹脂組成物の粘着性等に応じて適宜設定可能である。
【0048】
例えば上記熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、溶融樹脂組成物の間欠吐出において、吐出動作は、1秒~30秒おきに停止することが好ましく、1秒~15秒おきに停止していることがより好ましい。また、吐出動作の停止時間は、1秒~15秒であることが好ましく、1秒~5秒であることがより好ましい。これにより、P3HA系樹脂の溶融樹脂組成物について熱によるP3HA系樹脂の特性が劣化することを防止できるという利点を有する。
【0049】
加熱切断工程104では、上記吐出部から上記金型へ吐出した上記溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する。このように、溶融樹脂組成物を金型へ供給するに際し、ノズル部と金型との間の溶融樹脂組成物に対して非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断することにより、金型へ溶融樹脂組成物を定量性良く供給できる。
【0050】
ここで、「非接触で加熱して切断する」とは、加熱のための熱源と上記溶融樹脂組成物とを接触させることなく、上記溶融樹脂組成物を加熱して切断することを意味する。熱源と上記溶融樹脂組成物との離間距離は、上記溶融樹脂組成物を瞬間的に加熱して切断できれば、特に限定されない。「瞬間的に加熱して切断する」とは、熱源による加熱と同時に上記溶融樹脂組成物を切断することを意味する。ここでいう「熱源による加熱と同時」とは、測定限界内で同時であること意味し、熱源による加熱から3秒以内、好ましくは1秒以内を意図する。
【0051】
加熱切断工程104での、前記溶融樹脂組成物の加熱切断方法は、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断できれば、特に限定されない。例えば、熱源の輻射熱を利用して、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断してもよい。この場合、熱風を用いて、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断してもよい。そして、上記溶融樹脂組成物に対して熱風を供給する熱源として、熱風ヒーターを用いることが好ましい。このように熱風を用いた加熱切断方法を採用することにより、切断された溶融樹脂組成物による新たな糸引き現象が発生しにくくなる。それゆえ、吐出動作毎で、毎回同じ箇所で溶融樹脂組成物を切断できる。その結果、金型に対して、定量的に溶融樹脂組成物を供給できるという効果を奏する。
【0052】
また、加熱切断工程104では、ホットワイヤ(加熱した金属線)を用いて、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断してもよい。この場合、熱源としてのホットワイヤを非接触で上記溶融樹脂組成物に接近させて、ホットワイヤからの輻射熱により、上記溶融樹脂組成物を瞬間的に加熱し切断する。
【0053】
本実施形態に係る成形品の製造方法は、さらに、上記金型を閉じて、上述の工程によって金型に供給された溶融樹脂組成物に対して、プレス成形を行うプレス成形工程を含む。
【0054】
上記プレス成形工程では、上記金型に対して、熱プレス成形機を用いて熱プレスを行う。そして、熱プレスが完了した金型を冷却することによって、プレス成形を実施する。プレス成形後、金型を型開きして、プレス成形品を得ることができる。
【0055】
上記プレス成形工程にて使用される熱プレス成形機は、上記溶融樹脂組成物が供給された金型を熱プレス可能な構成であれば、特に限定されない。当該熱プレス成形機は、従来公知の装置を採用することができる。
【0056】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態に係る成形品の製造方法において使用される樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。当該熱可塑性樹脂は、特に限定されない。好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル、ブタジエン、ポリスチレン、アクリル系ポリマー等の汎用樹脂のほか、例えば、P3HA系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の溶融樹脂組成物は、樹脂組成物の溶融条件によっては、カッターで切断したときに上記糸引き現象が生じ得る。また、本製造方法において使用される樹脂組成物は、プレス成形において使用可能な熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0057】
特に、本実施形態に係る成形品の製造方法において使用される熱可塑性樹脂は、P3HA系樹脂であることが好ましい。本明細書において、「P3HA系樹脂」とは、一般式:〔-CHR-CH2-CO-O-〕で示される3-ヒドロキシアルカン酸繰り返し単位(式中、Rは、CnH2n+1で表されるアルキル基で、nは、1以上15以下の整数である。)を繰り返し単位として含む、ポリヒドロキシアルカノエートである。
【0058】
より具体的には、P3HA系樹脂としては、3-ヒドロキシブチレート(3HB)単位を含むのが好ましい。3HB単位を含むP3HA系樹脂としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)等が挙げられる。
【0059】
P3HA系樹脂としては、1種のみ含んでいても良く、2種以上含んでも良い。
【0060】
P3HA系樹脂としては、微生物により産生されるP3HA系樹脂(微生物産生P3HA系樹脂)が好ましい。微生物産生P3HA系樹脂は、通常、D体(R体)のポリヒドロキシアルカノエートモノマー単位のみから構成される。微生物産生P3HA系樹脂の中でも、工業的生産が容易である点から、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB3HV3HH、P3HB4HBが好ましく、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBがより好ましい。
【0061】
微生物産生P3HA系樹脂を生産する微生物としては、P3HA系樹脂類の生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、P3HB生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等の天然微生物が挙げられる。これらの微生物ではP3HBが菌体内に蓄積されることが知られている。
【0062】
また、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体の生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA系樹脂合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいP3HA系樹脂に合わせて、各種P3HA系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0063】
また、前記P3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3-ヒドロキシブチレート単位が、全繰り返し単位(100モル%)中、90.0~99.0モル%であり、好ましくは91.0~98.5モル%であり、より好ましくは92.0~98.5モル%であり、さらに好ましくは、93.0~98.0モル%であるのが好ましい。
【0064】
3HB繰り返し単位の組成比が90.0モル%以上であることにより、P3HA系樹脂の剛性がより向上し、また、結晶化速度が速くなり、バリが低減される、生産性向上する傾向がある。一方、3HB繰り返し単位の組成比が99.0モル%以下であることにより、融点が熱分解温度を下回るため、安定かつ連続生産が可能となる。なお、P3HA系樹脂のモノマー組成比は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することができる(例えば、国際公開第2014/020838号参照)。
【0065】
P3HA系樹脂の分子量は、目的とする用途で実質的に十分な物性を示すものであればよく、特に限定されない。P3HA系樹脂の重量平均分子量の範囲は、10万~100万が好ましく、より好ましくは15万~70万、さらに好ましくは20万~50万、特に好ましくは25万~45万である。重量平均分子量が10万以上であると、適度な機械的強度が得られる。また、分子量が100万以下であると溶融粘度の上昇を抑制することができ、成形性に優れる。
【0066】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成する。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0067】
本製造方法における樹脂組成物は、前記P3HA系樹脂に加えて、第2のP3HA系樹脂を含んでいてもよい。前記第2のP3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3HB単位が、全繰り返し単位(100モル%)中、65.0~90.0モル%であることが好ましく、68.0~88.0モル%であることがより好ましく、70.0~85.0モル%であることがさらに好ましい。前記樹脂組成物が第2のP3HA系樹脂をさらに含むことにより、成形品の靭性に優れる。
【0068】
第2のP3HA系樹脂は、前記P3HA系樹脂と異なるものであればよく、特に限定されない。第2のP3HA系樹脂としては、例えば、前記前記P3HA系樹脂として例示された樹脂が挙げられる。
【0069】
前記第2のP3HA系樹脂の含有量は、特に限定されないが、全P3HA系樹脂100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、より好ましくは45重量部以下であり、さらに好ましくは40重量部以下である。前記第2のP3HA系樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。なお、前記第2のP3HA系樹脂としては、上述したP3HA系樹脂を使用することができる。また、本明細書において、「全P3HA系樹脂」とは、本製造方法における樹脂組成物に含まれるすべてのP3HA系樹脂を意図する。
【0070】
前記樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、P3HA系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0071】
前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、全P3HA系樹脂100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、より好ましくは40重量部以下である。さらに好ましくは30重量部以下である。前記他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。
【0072】
前記樹脂組成物は、無機フィラーを含有しなくともよいが、無機フィラーをさらに含むことが好ましい。前記樹脂組成物が無機フィラーを含むことにより、結晶化速度が向上し、バリ低減、生産サイクル向上等の効果を奏する。
【0073】
前記無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、タルク、ケイソウ土、白土、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、石英、ガラスファイバー、ガラス粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0074】
前記前記無機フィラーの含有量は、全P3HA系樹脂100重量部に対して、例えば、0~60重量部であり、5~50重量部が好ましく、10~40重量部がより好ましく、15~35重量部が特に好ましい。無機フィラーの含有量が上記の範囲であると、十分な結晶化速度と靭性とを両立することができる。
【0075】
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、P3HA系樹脂と共に使用可能な添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし。2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0076】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
【0078】
<1>金型と、
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、
前記溶融樹脂組成物を前記金型へ供給するノズルを有する供給部と、を備え、
前記ノズルは、
ノズル本体と、
プランジャーと、
前記金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部と、を備え、
前記ガイド部は、略筒形状であり、前記ノズル本体の先端から伸びる、成形装置。
【0079】
<2>前記ノズル本体の先端の出口の内径と、前記ガイド部の入口の内径とは、略同じである、<1>の成形装置。
【0080】
<3>前記ガイド部の長さは、2.5mm以上である、<1>または<2>の成形装置。
【0081】
<4>前記ノズル本体の先端の出口の内径は、3.5mm以上である、<1>~<3>の何れかの成形装置。
【0082】
<5>さらに、前記溶融部から前記供給部へ前記溶融樹脂組成物を移送する移送部を備える、<1>~<4>の何れかの成形装置。
【0083】
<6>前記移送部は、ギアポンプを備える、<5>の成形装置。
【0084】
<7>前記ガイド部は、前記金型と離間している、<1>~<6>の何れかの成形装置。
【0085】
<8>熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、
ノズルから金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を含み、
前記ノズルは、
ノズル本体と、
プランジャーと、
前記金型へ溶融樹脂組成物を案内するガイド部と、を備え、
前記ガイド部は、略筒形状であり、前記ノズル本体の先端から伸びる、成形品の製造方法。
【0086】
<9>
前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、<8>の成形品の製造方法。
【0087】
<10>前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される1種類以上である、<9>の成形品の製造方法。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
溶融吐出機(テクノベル社製)を用いて、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HHと称する場合がある)(全繰り返し単位100モル%中の3HB単位の含有量5.4モル%、重量平均分子量Mw40万)粉末を加熱して145℃の溶融樹脂とした。そして、この溶融樹脂を、165℃に設定したギアポンプおよび165℃に設定したホットホースを介して、165℃に設定した自動ノズル(株式会社プロシード製)に送った。そして、この自動ノズルを用いて、0~5MPa程度の圧力で溶融樹脂を吐出させた。使用した自動ノズル先端の出口の内径Bは、4.5mmとした。
【0090】
また、本実施例では、自動ノズル先端の出口に、
図2に示すようなガイド部を設けた。当該ガイド部の入口の内径Aは、4.5mmであり、長さLは、1.5mmとした。
【0091】
自動ノズルから吐出される溶融樹脂の管状形状(ストロー形状)を、以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果を、表1に示す。
【0092】
<吐出した溶融樹脂の形状の評価基準>
〇:管状形状を形成せずに溶融樹脂が自動ノズルから吐出、
△:内径1mm~2mm程度の管状形状を形成して溶融樹脂が自動ノズルから吐出、
×:内径4mm程度の管状形状を形成して溶融樹脂が自動ノズルから吐出。
【0093】
(実施例2、3)
自動ノズル先端の出口に設けられたガイド部の長さを表1に示す長さとしたこと以外、実施例1と同様の操作を行い、自動ノズルから吐出される溶融樹脂の管状形状を評価した。評価結果を、表1に示す。
【0094】
(比較例1)
自動ノズル先端の出口に、
図2に示すようなガイド部を設けないこと以外、実施例1と同様の操作を行い、自動ノズルから吐出される溶融樹脂の管状形状を評価した。評価結果を、表1に示す。
【0095】