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特開2024-85848滑り軸受の摩耗量を検出するための滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構
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  • 特開-滑り軸受の摩耗量を検出するための滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構 図1
  • 特開-滑り軸受の摩耗量を検出するための滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構 図2
  • 特開-滑り軸受の摩耗量を検出するための滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構 図3
  • 特開-滑り軸受の摩耗量を検出するための滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構 図4
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  • 特開-滑り軸受の摩耗量を検出するための滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085848
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】滑り軸受の摩耗量を検出するための滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/04 20060101AFI20240620BHJP
   B63H 23/32 20060101ALI20240620BHJP
   B63H 23/36 20060101ALI20240620BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20240620BHJP
   F16C 17/24 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F04D29/04 U
B63H23/32 B
B63H23/36
F16C17/02 Z
F16C17/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200612
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】502262872
【氏名又は名称】株式会社帝国機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103986
【弁理士】
【氏名又は名称】花田 久丸
(72)【発明者】
【氏名】西原匡博
【テーマコード(参考)】
3H130
3J011
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AB58
3H130AC01
3H130BA90E
3H130BA91E
3H130BA92E
3H130DA02Z
3H130DB03Z
3H130DC02Z
3H130DF03Z
3H130DG04Z
3H130EA01J
3J011BA02
3J011EA02
(57)【要約】
【課題】従来例では滑り軸受の摩耗量を検出するために、ポンプのケーシング内に圧力検出孔を予め設ける必要があり、その結果として構造が複雑な点である。
【解決手段】本願発明では吐出量が大きく変化するポンプの場合に、ポンプのケーシング内部に圧力検出孔を特別に設けることなく、摩耗前後で液圧が変化しない位置と摩耗前後で液圧が変化する位置とを連通する外付けバイパス・パイプを、ポンプの筐体外側(ケーシング外側)に配置する。そしてその外付けしたバイパス・パイプがポンプ筐体に取付けられた位置に夫々圧力センサーを取付ける。その上で、取付けられたこれ等2個の圧力センサーから得られた圧力差により、滑り軸受の摩耗量を推測検出することを最も主要な特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプのケーシング(150)内部に、モーター回転軸(200)と同期回転するインペラー回転軸(120)に固着したインペラー(110)が回転自在に装着され、該インペラー回転軸(120)はメカニカルシール(160)によりメカグランド(140)に封止されると共に、該インペラー回転軸(120)の下端は滑り軸受(130)により回転自在に支承されているポンプにおいて:
滑り軸受(130)の軸受摩耗量を検出する滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)が該ポンプ(100)のケーシング(150)の外部に外付けされ、
さらに該滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)は、所定長の外付けバイパス・パイプ(10)の一端を、圧力センサー(20)、オリフィス(50)を経由し、パイプ取付用ユニオン(60)で、滑り軸受(130)の摩耗量には直接は影響されないポンプの高圧側に取付け、更に該バイパス・パイプ(10)の他端を、圧力センサー(20’)を経由して接続用のパイプ取付用ユニオン(60)で、滑り軸受(130)の摩耗量に直接影響される中間圧側へ取付けるように構成し、該2つの圧力センサー(20、20’)で検出される2つの検知圧力の差圧が所定の閾値を超えた場合に、滑り軸受(130)の摩耗量が所定量を超えたものとして該滑り軸受(130)の交換時期を推定することが可能となるように構成されたことを特徴とする滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)付きのポンプ(100)。
【請求項2】
中間圧側に取付けられた圧力センサー(20’)に代えて流量センサーを設置し、軸受摩耗量が正常である時の高圧側の圧力センサー(20)の所定値Pに対する正常流量値Vから、前記流量センサーにより常時監視される計測流量値Xが一定幅以上逸脱する時を、異常軸受摩耗と判断するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)付きのポンプ(100)。
【請求項3】
摩耗量検出機構を有しない既存のポンプへ後付けするために用いる改造セットとしての外付け式摩耗量検出機構において;
バイパス・パイプ(10)と、高圧側に晒される圧力センサー(20)およびオリフィス(50)と、中間圧側に晒される圧力センサー(20’)または流量センサーと、そしてパイプ取付用ユニオン(60)、とで構成される外付け式摩耗量検出機構(A)。
【請求項4】
請求項1記載のポンプの高圧側の吐出流量が一定の場合、前記2つの圧力センサー(20、20’)に代えて、前記バイパス・パイプ(10)の途中に流量センサー(30)を1個装着して流量を測定すると共に、前記滑り軸受(130)の正常摩耗状態での正常な流量を予め計測しておき、前記測定された流量を前記正常な流量と比較監視することにより、滑り軸受(130)の摩耗量が所定量を超えたものとして前記滑り軸受(130)の交換時期を的確に判断するように構成されたことを特徴とする滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)付きのポンプ(100)。
【請求項5】
前記流量センサー(30)に代えて圧力センサー(20)を中間圧側の近傍に設置し、滑り軸(130)の摩耗量増加に伴う検出圧力の低下から、滑り軸受(130)の摩耗量が所定量を超えたものとして前記滑り軸受(130)の交換時期を的確に判断するように構成されたことを特徴とする請求項4記載の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)付きのポンプ(100)。
【請求項6】
摩耗量検出機構を有しない既存のポンプへ後付けするために改造セットとしての用いる外付け式摩耗量検出機構において;
バイパス・パイプ(10)、流量センサー(30)およびオリフィス(50)、そしてパイプ取付用ユニオン(60)、で構成されている外付け式摩耗量検出機構(B)。
【請求項7】
前記インペラー回転軸(120)に代えて、プロペラ軸(180)に装着された滑り軸受(130)の摩耗量が所定量を超えたものとして、該滑り軸受(130)の交換時期を的確に判断するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A’’)付きのポンプ(100)。
【請求項8】
前記インペラー回転軸(120)に代えて、プロペラ軸(180)に装着された滑り軸受(130)の摩耗量が所定量を超えたものとして、該滑り軸受(130)の交換時期を的確に判断するように構成されたことを特徴とする請求項4記載の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B’’)付きのポンプ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ポンプのインペラー軸や船舶のスクリュー軸等に用いられる滑り軸受の摩耗量を検出するために用いる滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構と、この滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構を装着したポンプと船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明で検出すべきは滑り軸受の摩耗量であり、この摩耗量が所定のレベルを超えた場合には交換作業を要する。この軸受は大別して、転がり軸受と滑り軸受の2種類が存在する。前者の転がり軸受とは図10(A)に示すように、軸(内輪)と外輪の間に転動体(”玉“または”ころ“)が備え付けられている構成である。すなわち転動体の転がりによって軸の動きを受け、摩擦抵抗を低減する。高速回転に強く、規格があるため互換性のある製品を入手し易いというメリットを有する。一方本願発明に係る後者の滑り軸受は図10(B)に示すように、軸と滑り軸受の面が直接接触し、軸の動きが面で支えられる構成である。この構成は、振動に強く、構造が簡単で小型、省スペース設計が可能であり、更に高速回転・衝撃荷重に対する耐性に優れている。なお軸と軸受面の間隙では、通過する僅かな油、水、危険な化学液等の液膜によって、軸が軸受面に対して浮遊回転されつつ支承されている。
【0003】
上述の滑り軸受の問題点は、この滑り軸が装置の外装カバー内部あるいは装置筐体内(ケーシング内)に格納設置されることが多いため、滑り軸受の摩耗状態を外部から直接目視確認することが困難な点にある。この問題を解決するために例えば特許出願公告平5-35278号には、無漏洩ポンプ内のインペラーローターが滑り軸受により回転自在に支承される場合、該滑り軸受の摩耗量を検出する滑り軸受摩耗量の検出機構が開示されている。すなわち無漏洩ポンプにおいて吐出流量が変化した場合でも滑り軸受の摩耗により生ずる摩耗量を検知するために、滑り軸受が摩耗することによるローターの位置変化や滑り軸受摺動部の隙間変化により液圧が変化する部分と、滑り軸受が摩耗することにより液圧が変化しない部分の、少なくとも2ケ所に圧力検出手段を設け、これ等2カ所の圧力検出手段で計測した圧力差を計測することにより、滑り軸受の摩耗量を検出することを特徴とする滑り軸受摩耗量の検出機構が開示されている。この構成で少なくとも2ケ所に圧力検出手段を設ける理由は、吐出流量(高圧側)の変化に影響されずに、滑り軸受の摩耗量を圧力差により確実に摩耗量を検出するためである。
【0004】
より具体的には該引例に係る滑り軸受摩耗量の検出機構は、引例図1に示すように、バイパス孔(引例符号23)に連通する摩耗前後で液圧が変化する位置に検出孔(引例符号33)を設け、この圧力検出孔の他端の外部に圧力センサー(引例符号30)を設けるとともに、更にケーシング(引例符号2)内の高圧部の摩耗前後で液圧が変化しない位置に圧力検出孔(引例符号32)を設け、この圧力検出孔の他端の外部に圧力センサー(引例符号31)を設けている。この2ケ所に設けた圧力センサー(引例符号30,31)により同時に2つの圧力を計測して、この2つの計測圧力の圧力差より滑り軸受の摩耗量を検出している。
【0005】
この滑り軸受摩耗量の検出機構の構成は、流量の変化が大きい場合、摩耗前後で液圧が変化する位置と変化しない位置の2カ所に設置した2つの圧力センサーで計測した圧力差により滑り軸受の摩耗度を検出するため、高圧側の吐出流量の変化に拘束されないというメリットを有する。しかしながらこの構成には以下のような欠点を有する。
1.当該引例の滑り軸受摩耗量の検出機構は、摩耗前後で変化する液圧を測定するために、ケーシング(引例符号2)内に穿孔加工された圧力検出孔(引例符号33)とバイパス孔(引例符号23)、そしてシャフト(引例符号6)内に穿孔加工された中空孔(引例符号24)が必要となり、不可避的に構造が複雑になる。
2.またこの滑り軸受摩耗量の検出機構は無漏洩ポンプでの使用に限定され、広く使用されている無漏洩ポンプ以外のポンプに導入するには構造が複雑すぎる欠点を有する。特にキャンドモータポンプ等の無漏洩ポンプ以外の既存のポンプの滑り軸受に当該摩耗量検出機構を追加設置することは、構造上、不可能であるという欠点を有する。
ポンプ
【0006】
上記欠点は例えば特許出願公告昭62-20400,および実用新案出願公告昭63-37510においても同様であり、ケーシング等内に圧力検出孔を予め設ける必要がある点では同一の欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許出願公告 平5-35278号公報
【特許文献2】特許出願公告 昭62-20400号公報
【特許文献3】実用新案出願公告 昭63-37510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、ポンプのインペラー軸や船舶のスクリュー軸等に用いられる滑り軸受の摩耗量を検出するために、ポンプのケーシング内に圧力検出孔を予め設ける必要があり、その結果として構造が複雑になる点である。また上述の従来技術に係る滑り軸受摩耗量の検出機構を、既存のポンプの滑り軸受の軸受摩耗量の検出用に追加設置することは、構造上、不可能であるという欠点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構は、ポンプのインペラー軸や船舶のスクリュー軸等に用いられる滑り軸受の摩耗量を検出するために、吐出量が大きく変化するポンプの場合には、ポンプのケーシング内部に圧力検出孔を特別に設けることなく、摩耗前後で液圧が変化しない位置と摩耗前後で液圧が変化する位置とを連通する外付けバイパス・パイプを、ポンプの筐体外側(ケーシング外側)に配置する。すなわちポンプ筐体内に特別な圧力検出孔を設ける必要はなく、単に筐体外側に新たな外付けバイパス・パイプを追加設置するだけで済む構成である。そして実施例1では、上記ポンプの筐体外側に配置した外付けバイパス・パイプを、滑り軸受の摩耗前後で液圧が変化しない位置と摩耗前後で液圧が変化する位置の間を連通するようにポンプ筐体の外側(ケーシング外側)に取付ける。そしてその外付けしたバイパス・パイプがポンプ筐体に取付けられた位置に夫々圧力センサーを取付ける。その上で、取付けられたこれ等2個の圧力センサーから得られた圧力差により、滑り軸受の摩耗量を推測検出することを最も主要な特徴とする。なおこの圧力差から滑り軸受の摩耗量を検出する構成は、原理的には上述の特許出願公告平5-35278号と同一ではあるが、外付けバイパス・パイプをポンプの筐体(ケーシング)外側に追加配置する点で引例とは大きく異なる。また実施例2では、吐出量が大きく変化しないポンプの場合には、上記外付けバイパス・パイプの途中に圧力センサーに代えて流量センサー1個を取付けて、外付けバイパス・パイプ内を流れる油、水、危険な化学液等の流量変化を検出することにより、滑り軸受の摩耗量を推測検出することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の滑り軸受の摩耗量を検出する滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構は、ポンプのケーシング内部に圧力検出孔を特別に設ける必要が無いため、構造がシンプルである。更に滑り軸受摩耗量の検出手段を持たない既存のポンプ等の筐体外部(ケーシング外側)に、圧力センサー又は流量センサーを取付けた外付けバイパス・パイプを追加設置するだけで、簡便に滑り軸受摩耗量の検出機能を追加設置することが出来るという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はポンプの分解斜視図である。
図2図2は外付けバイパス・パイプ(10)をポンプのケーシング(150)の外側に配置し、この外付けバイパス・パイプの両端取付口近傍に圧力センサー(20、20’)を各1個取付けた実施例1に係る滑り軸受摩耗量を検出する滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)を装着したポンプ(100)の構成図である。
図3図3は実施例1に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)の圧力センサー(20、20’)の圧力差と、滑り軸受と主軸のすき間面積との関係、すなわち滑り軸受の交換時期を示す閾値を示すグラフである。
図4図4図2と同様の検出原理に基づく外付けバイパス・パイプ(10)を配置した実施例1に係る他の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A’)の構成図である。
図5図5はポンプに代わりプロペラ軸(180)の滑り軸受に、図2と同様の検出原理に基づく外付け配管を配置した実施例1に係る他の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A’’)の構成図である。
図6図6は外付けバイパス・パイプ(10)をポンプのケーシング(150)の外側に配置し、この外付けバイパス・パイプの途中に流量センサー(30)1個を取付けた実施例2に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)の構成図である。
図7図7は実施例2に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)における流量センサーにより検出された流量と、滑り軸受と主軸のすき間面積との関係、すなわち滑り軸受の交換時期を示す閾値を示すグラフである。
図8図8図6と同様の検出原理に基づく外付けバイパス・パイプ(10)を配置した実施例2に係る他の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B’)の構成図である。
図9図9はポンプに代わりプロペラ軸(180)の滑り軸受に、図6と同様の検出原理に基づく外付け配管を配置した実施例2に係る他の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B’’)の構成図である。
図10図10(A)(B)は、一般的な転がり軸受と滑り軸受の外観を対比するための外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は一般的なポンプの分解斜視図である。このポンプの内部には、モーター回転軸と同期回転するインペラーが回転自在に装着されている。以下図2を参照して、高圧側の吐出流量が変化した場合にも使用することが可能な本願発明の実施例1に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)を説明する。また更に図6を参照して、高圧側の吐出流量が一定の場合に使用する本願発明の実施例2に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)を説明する。
【実施例0013】
図2は、本願発明の実施例1に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)を装着したポンプ(100)の構成図である。ポンプ(100)の内部には、モーター回転軸(200)と同期回転するインペラー回転軸(120)に固着したインペラー(110)が回転自在に装着されている。インペラー回転軸(120)はメカニカルシール(160)によりメカグランド(140)に封止されると共に、下端は滑り軸受(130)により回転自在に支承されている。メカニカルシール(160)は、ポンプやコンプレッサーなどの回転機械の動力を伝える軸部分(シャフト)に設置されるパッキン部品の一種である。自動車、船舶、ロケット、産業プラント用設備から住宅用設備まで、様々な場面で使用されている。その役割は、機械で取り扱われる水や油などの流体が機械の外部(大気中・水中など)への漏れを防ぐことで、これにより、環境汚染の防止、機械の運転の効率化による省エネ、さらには機械の安全確保のために使用されている。ただし実際には、目視不可能なレベルで、水や油などの微細なミスト状の漏洩が存在するのが一般的である。また滑り軸受(130)の内面には銅合金やホワイトメタル、鉛青銅合金、青銅合金などの合金、或いはカーボンや樹脂、ゴムなどが使用され、また鍍金(メッキ)処理により多層構造となっているものも存在する。合金の化学成分や機械的性質により、ディーゼル機関、タービン圧縮機、ポンプ、車両用減速機など様々な滑り軸受が存在する。
【0014】
本願発明の特徴点は、同図左下に明示する滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)の構造にある。すなわち上述の引例特許出願公告平5-35278号では、摩耗前後で変化する液圧を測定するために、ケーシング(引例符号2)内に穿孔加工された圧力検出孔(引例符号33)とバイパス孔(引例符号23)、そしてシャフト(引例符号6)内に穿孔加工された中空孔(引例符号24)を流れてポンプ内の一部の液が循環する構造が開示されている。従ってこれ等の圧力検出孔(引例符号33)、バイパス孔(引例符号23)、そして中空孔(引例符号24)の穿孔加工が当然必要となる。これに対して本願発明では図2に示す滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)をポンプのケーシング(150)の外側に付加する構造であり、上記引例のような穿孔加工は不要である。あくまでも循環すべき一部の液は、外付けのバイパス・パイプ(10)を経由する。この外付けバイパス・パイプ(10)をポンプ(100)へ外付けするのは、引例の様な穿孔加工と比較すると、極めて容易であるという利点を有する。
【0015】
この滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)は、所定長の外付けバイパス・パイプ(10)の一端を高圧側に晒される圧力センサー(20)、オリフィス(50)を経由し、パイプ取付用ユニオン(60)で高圧側に取付けられている。なおこの高圧側の圧力センサー(20)値は、滑り軸受(130)の摩耗量には直接は影響されない。更にこのバイパス・パイプ(10)の他端は中間圧側に晒される圧力センサー(20’)を経由して接続用のパイプ取付用ユニオン(60)で中間圧側へ取付けられている。なおこの中間圧側の圧力センサー(20’)値は、滑り軸受(130)の摩耗量に直接影響され、摩耗量の増大に従い滑り軸受(130)とインペラー回転軸(120)の隙間が増大すると、中間圧力値は低下する。高圧側である液吐出口と連通する外付けバイパス・パイプ(10)の一端を経由して流入する液は、中間圧側と連通するバイパス・パイプ(10)の他端から循環放出され、さらにこの循環放出された液は、インペラー回転軸(120)と滑り軸受(130)との隙間を経由して低圧側へ循環放出される。この場合ベルヌーイの定理に従い、インペラー回転軸(120)と滑り軸受(130)との隙間を流れる液の速度の2乗に反比例して圧力降下が生ずることになる。すなわち滑り軸受(130)はインペラー回転軸(120)との回転摺動時間に比例してその摩耗量は増加し、そのためインペラー回転軸(120)と滑り軸受(130)の隙間が広がる。結果として流れる液の速度は遅くなり、中間圧側に晒されている圧力センサー(20’)の検知圧力は降下することになる。一方、外付けバイパス・パイプ(10)の高圧側に取付けた圧力センサー(20)の検知圧力は、滑り軸受(130)の摩耗量には影響されない。そのため圧力センサー(20)に対する圧力センサー(20’)の差圧は、図3に示すように、摩耗前は小さく、摩耗量の増加に従い大きくなる。この差圧の特性を監視することにより、ポンプ内の高圧側の吐出流量に影響されず、滑り軸受(130)の摩耗量を的確に推定することが可能であり、従って所定の閾値に至るか否かを検知することで、滑り軸受(130)の適切な交換時期を推定することが可能となる。なおこの2つの圧力センサー(20、20’)で検出される2つの検知圧力の差圧によって滑り軸受の摩耗量を推定する原理は、上述の引例特許出願公告平5-35278号に詳細に開示されている原理と同一であるため詳述は省略する。
【0016】
本願発明に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)は、上述の様にポンプに外付けで容易に装着可能である。従ってこの検出機構(A)は、摩耗量の検出機構を有しない既存のポンプに対しても後付けが可能である。これに対してケーシング内に穿孔加工された圧力検出孔やバイパス孔、そしてシャフト内に穿孔加工された中空孔、等を必要とする従来例に係る滑り軸受摩耗量の検出機構を、この検出機構を有しない既存のポンプに後付けすることは不可能であり、この点においても本願発明は従来例に対して大きな利点を有する。
【0017】
上述の構成では外付けバイパス・パイプ(10)をポンプ(100)へ外付けし、バイパス・パイプの高圧側に圧力センサー(20)、中間圧側にも圧力センサー(20’)を取付ける構成であり、これ等2つの圧力センサーの検知圧力の差圧によって滑り軸受の摩耗量を推定する原理である。この基本構成に対する他の変形構成として、2つの圧力センサー(20、20’)に代わり、高圧側の圧力センサー(20)はそのままで、中間圧側には圧力センサー(20’)に代わり図示しない流量センサーを設置してもよい。すなわち軸受摩耗量が正常である時の高圧側の圧力センサー(20)の所定値Pに対し、中間圧側で流量センサーにより計測される正常流量値Vを既知データとし、該流量センサーにより常時監視される計測流量値Xが正常流量値Vから一定幅以上逸脱する時を、異常軸受摩耗と判断するように構成してもよい。一般的に流量センサーをバイパス・パイプ(10)の外周に設置するのは、バイパス・パイプに圧力センサー(20’)を設置するよりは容易である利点を有する。なお流量センサーにより常時監視される計測流量値Xが正常流量値Vから一定幅以上逸脱するか否かの判断は、従来技術により容易に構成することが出来るため詳細は割愛する。
【0018】
なお上述の実施例では本願発明に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)付きのポンプ(100)を開示するが、この滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)は摩耗量検出機構を有しない既存のポンプへ後付けするために用いる後付け改造セットとしても有用である。すなわちこの後付け改造セットとしての外付け式摩耗量検出機構(A)は少なくとも、バイパス・パイプ(10)1本、高圧側に晒される圧力センサー(20)およびオリフィス(50)各1個、中間圧側に晒される圧力センサー(20’)または流量センサー1個、そしてパイプ取付用ユニオン(60)2個、で構成されている。摩耗量検出機構を有しない既存のポンプへ追加設置するには、この既存のポンプの高圧側および中間圧側に上記バイパスパイプ(10)と連通する取付穴を新規に加工することにより、この後付け用の外付け式摩耗量検出機構(A)を後付けすることとなる。この後付け加工は上述の引例に開示されているポンプの内部機構に穿孔加工される構成とは異なり、比較的簡便な追加加工で済むためこの後付け改造セットとしての外付け式摩耗量検出機構(A)は有用である。
【0019】
図4には他のタイプのポンプに、本願発明に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A’)を付加した構成を開示する。上述の滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)と同様に、外付けのバイパス・パイプ(10)の一端は、オリフィス(50)および圧力センサー(20)が装着し、滑り軸受の摩耗量により検出圧力が影響受け難い高圧側と連通する。また他端は、滑り軸受の摩耗量により検出圧力が変化し易い中間圧側と連通し圧力センサー(20’)を装着する構成でもよい。
【0020】
更に図5には、同様な構成を船舶のプロペラ軸(180)に応用した滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A’’)を付加した構成を開示する。ポンプとは異なりプロペラ軸の摺動面を冷却するために比較的大容量の冷却水を循環させるために外付けバイパス・パイプ(10)に相当する配管は大口径となるが、原理的には上述と同様の構成で滑り軸受(130)の摩耗度を検出推定することは可能である。なおこの場合は高圧側と中間圧側には、上述の外付けバイパス・パイプ(10)と同程度の小口径パイプを経由して圧力センサー(20、20’)が接続されている。
【実施例0021】
図6に図示する実施例2に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)では、上述の実施例1で装着する2つの圧力センサー(20、20’)に代えて1つの流量センサー(30)を使用する。すなわち実施例1ではポンプの高圧側で吐出流量が変化する場合でも、その吐出流量変化による圧力変化に影響されずに滑り軸受の摩耗量を検出する構成であるが、現実的には、既存設置されている多くのポンプでは高圧側での吐出流量の変化は無く一定吐出流量である場合が多い。このため一定吐出流量を前提として滑り軸受(130)近傍の中間圧側での流量または圧力を検出し、滑り軸受の交換時期を判断すれば足りる場合が多い。すなわちこの実施例2に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)は、この様に高圧側では吐出流量の変化は無く、既知の一定流量であるという前提に立つ構成である。実施例1と同じく、この実施例2に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)でも、外付けバイパス・パイプ(10)は外付けであるが、その近傍には流量センサー(30)が1個設置されている。そして滑り軸受の正常摩耗状態での正常な流量を予め計測しておき、摩耗時の中間圧側での流量を計測する。そして正常な流量と摩耗時の流量を比較監視することにより、滑り軸受の交換時期を的確に判断できる場合が多い。従ってこの実施例2では図6に示すように流量センサー(30)を、滑り軸受の摩耗前後で滑り軸受(130)とインペラー回転軸(120)の隙間拡大による流量変化の影響を受け易い中間圧側に1つ設置すれば実用上は十分であり、上記実施例1の構成のように2つの圧力センサーは必ずしも必要としない。なおこの実施例2で、流量センサー(30)に代えて圧力センサー(20)1個を中間圧側の近傍に設置し、滑り軸(130)の摩耗量増加に伴う検出圧力の低下から、滑り軸受(130)の摩耗量を検出することも可能である。
【0022】
図7は滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)における流量センサー(30)により検出された流量と、滑り軸受と主軸の隙間すなわち滑り軸受の交換時期を示す閾値との関係を示すグラフであり、流量が所定量を超えた場合、この場合は閾値としての約35[l/min]を超えた場合には、滑り軸受(130)の交換時期と判断される。
【0023】
なお上述の実施例では本願発明に係る滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)付きのポンプ(100)を開示するが、この滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B)は上述の後付け用の外付け式摩耗量検出機構(A)と同様に、摩耗量検出機構を有しない既存のポンプへ後付けするために用いる後付け改造セットとしても有用である。すなわちこの後付け改造セットとしての外付け式摩耗量検出機構(B)は少なくとも、バイパス・パイプ(10)1本、流量センサー(30)およびオリフィス(50)各1個、そしてパイプ取付用ユニオン(60)2個、で構成されている。摩耗量検出機構を有しない既存のポンプへ追加設置するには、この既存のポンプの高圧側および中間圧側に上記バイパスパイプ(10)と連通する取付穴を新規に加工することにより、この後付け用の外付け式摩耗量検出機構(B)を後付けすることとなる。この後付け加工は上述の引例に開示されているポンプの内部機構に穿孔加工される構成とは異なり、比較的簡便な追加加工で済むためこの後付け改造セットとしての外付け式摩耗量検出機構(B)は有用である。
【0024】
図8図6と同様の検出原理に基づき、他のタイプのポンプに外付けバイパス・パイプ(10)を外付けした滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B’)を図示する。すなわちこの構成でも同様に外付けバイパス・パイプ(10)は外付けされ、その近傍に流量センサー(30)が配置されている。また更に図9はポンプに代わりプロペラ軸(180)の滑り軸受に、図6と同様の検出原理に基づき原理的には外付けバイパス・パイプ(10)と同一の配管を配置し、その近傍に流量センサー(30)を配置したプロペラ軸を軸支する滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(B’’)を開示している。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願発明では、外付けバイパス・パイプ(10)がポンプのケーシング(150)の内部ではなく、筐体の外部(ケーシング外側)へ外付けされる構成である。従ってケーシング内に圧力検出孔やバイパス孔を穿孔加工する必要もなく、またシャフト内に中空孔を穿孔加工する必要も無いため、容易に滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)、(B)をポンプに安価に設置可能となる。またこの様な滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構を装備しないポンプへも滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)、(B)を追加設置することは容易であるため、独立の機能製品としてこの滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構(A)、(B)を製品化することも可能となる利点を有する。
【符号の説明】
【0026】
(A) :滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構
(B) :滑り軸受の外付け式摩耗量検出機構
10 :外付けバイパス・パイプ
20 :圧力センサー
20’ :圧力センサー
30 :流量センサー
50 :オリフィス
60 :パイプ取付用ユニオン
100 :ポンプ
110 :インペラー
120 :インペラー回転軸
130 :滑り軸受
140 :メカグラウンド
150 :ケーシング
160 :メカニカルシール
170 :底カバー
180 :プロペラ軸
181 :プロペラ
200 :モーター回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10