(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085853
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】膨化蛋白素材の製造方法及び膨化蛋白素材
(51)【国際特許分類】
A23J 3/16 20060101AFI20240620BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20240620BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240620BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240620BHJP
【FI】
A23J3/16 501
A23J3/00 502
A23L13/00 A
A23L5/00 E
A23L5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200626
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大澤 怜
(72)【発明者】
【氏名】中野 康行
(72)【発明者】
【氏名】米元 博子
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC03
4B035LE05
4B035LG33
4B035LP32
4B035LT05
4B042AC05
4B042AD36
4B042AK13
4B042AP21
4B042AT10
(57)【要約】
【課題】
蛋白原料として大豆粉のような含脂大豆原料を用いた場合でも組織化が十分に行われ、肉様蛋白素材として用いた場合十分なかみ応えがある蛋白素材を提供することを目的とする。
【解決手段】
少なくとも含脂大豆原料と水を含む製造原料を、該製造原料中における、無脂固形分、油分、水分を特定の範囲に調整して、3軸以上のエクストルーダーに導入して混練及び加圧加熱を行い、常圧下に押し出して混練物を膨化させて製造することで課題を解決できることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも含脂大豆原料と水を含む製造原料を、該製造原料中における、無脂固形分の含有率を45~74重量%、油分を11~18重量%、水分を12~43重量%に調整して、3軸以上のエクストルーダーに導入して混練及び加圧加熱を行い、常圧下に押し出して混練物を膨化させることを特徴とする膨化蛋白素材の製造方法。
【請求項2】
製造原料中における油分の含有率が11~17重量%である、請求項1記載の膨化蛋白素材の製造方法。
【請求項3】
以下の(A)~(C)の特徴を有する膨化蛋白素材。
(A)固形分中の蛋白質含量が20~70重量%。
(B)固形分中の油分が8~26重量%。
(C)テクスチャーアナライザを用いた、最大応力の測定値が40gf/cm2以上。
【請求項4】
さらに、(D)ふるいで10メッシュONが80%以上である、請求項3記載の膨化蛋白素材。
【請求項5】
請求項3または4記載の膨化蛋白素材を含有する畜肉代替食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨化蛋白素材の製造方法及び膨化蛋白素材に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆などの植物由来のたんぱく質原料を主原料として、エクストルーダーと呼ばれる装置使用し、高温高圧化で組織加工することで、肉様の食感を持つ組織状たん白素材を製造できることが知られている。近年ではSDGsへの関心の高まりか組織状たん白素材を使用した植物ベースの代替肉食品の開発が広く行われている。その中で、各社組織状たん白素材の開発が活発化しており、例えば、大豆蛋白原料・でん粉・カルシウム塩を組み合わせることで、繊維状組織化物を得られる製造方法が知られている(特許文献1)。また、4軸以上のエクストルーダーを用いることで、くちどけが良好でのど通りがいいながらも噛みだしの硬さもあるという畜肉らしい膨化たん白素材を製造できることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-279099号公報
【特許文献2】WO2020/071310号公報
【特許文献3】特開平9-000161号公報
【特許文献4】特開昭61-025457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、より風味の良い膨化蛋白素材のニーズも高まってきており、その1つの手段として、大豆を原料として検討する場合、豆本来の風味を有する含脂大豆原料を原料とすることが考えられる。この含脂大豆原料を用いた技術として、原料として丸大豆を用いてエクストルーダーから吐出したものを冷却ダイを用いて強制的に冷却する「非膨化タイプ」の蛋白素材を製造する技術があるが、膨化していないため調理工程で味染みが悪いと評価される場合がある(特許文献3)。
また、丸大豆を原料として2軸エクストルーダーで組織化する技術があるが、組織化が十分とはいえず、肉様蛋白素材としてかみ応えが十分でないという問題もある(特許文献4)。
本発明は、蛋白原料として大豆粉のような含脂大豆原料を用いた場合でも組織化が十分に行われ、肉様蛋白素材として用いた場合十分なかみ応えがある蛋白素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題の解決に対し鋭意検討を重ねた結果、少なくとも含脂大豆原料と水を含む製造原料を、該製造原料中における、無脂固形分、油分、水分を特定の範囲に調整して、3軸以上のエクストルーダーに導入して混練及び加圧加熱を行い、常圧下に押し出して混練物を膨化させて製造することで課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)少なくとも含脂大豆原料と水を含む製造原料を、該製造原料中における、無脂固形分の含有率を45~74重量%、油分を11~18重量%、水分を12~43重量%に調整して、3軸以上のエクストルーダーに導入して混練及び加圧加熱を行い、常圧下に押し出して混練物を膨化させることを特徴とする膨化蛋白素材の製造方法、
(2)製造原料中における油分の含有率が11~17重量%である、(1)記載の膨化蛋白素材の製造方法、
(3)以下の(A)~(C)の特徴を有する膨化蛋白素材、
(A)固形分中の蛋白質含量が20~70重量%。
(B)固形分中の油分が8~26重量%。
(C)テクスチャーアナライザを用いた、最大応力の測定値が40gf/cm2以上。
(4)さらに、(D)ふるいで10メッシュONが80%以上である、(3)記載の膨化蛋白素材、
(5)(3)または(4)記載の膨化蛋白素材を含有する畜肉代替食品、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、原料として少なくとも含脂大豆原料を用いた、畜肉様の十分な噛み応えのある、膨化蛋白素材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(膨化蛋白素材の製造方法)
本発明の膨化蛋白素材の製造は、少なくとも含脂大豆原料と水を含む製造原料を、該製造原料中における、無脂固形分の含有率を45~74重量%、油分を11~18重量%、水分を12~43重量%に調整して、3軸以上のエクストルーダーに導入して混練及び加圧加熱を行い、常圧下に押し出して混練物を膨化させることを特徴とする。
【0009】
(膨化蛋白素材)
本発明における「膨化蛋白素材」は、いわゆる「組織状蛋白素材」の一種であって組織が「膨化」したタイプを意味する。これは大豆粉を主要な製造原料として、水、その他適当な原料をエクストルーダーに導入して、装置内部が加圧加熱された条件下において、原料を装置内のスクリューで混練し、形成された混練物を装置の出口部分にある「ダイ」と呼ばれる部分の穴から常圧下に押し出して、該押出物を必要により切断及び乾燥して得られるものである。該混練物は高温高圧下からダイを通して常圧下に押し出される際に、組織が膨化した状態の押出物に変化する。
膨化蛋白素材中の蛋白質含量は、該素材の乾燥重量中、少なくとも20重量%以上であるのが適切であり、好ましくは25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上又は50重量%以上とすることができる。
【0010】
(含脂大豆原料)
本発明の膨化蛋白素材は、少なくとも含脂大豆原料を製造原料とするものである。
本発明において含脂大豆原料は、脂肪が含有した大豆原料であり、例えば、丸大豆、全脂大豆粉、圧搾大豆、圧搾大豆粉、発芽大豆、発芽大豆粉、全脂オカラ、全脂オカラ粉の他、これらの原料から一部脱脂したもの等を用いることができる。好ましくは全脂大豆粉である。
本発明の含脂大豆原料の製造に使用する大豆の種類としては、黄大豆,白大豆,青大豆,黒大豆などを限定なく使用することができる。また大豆に含まれる成分の栄養機能を考慮して、育種,遺伝子操作や発芽処理等により、7Sグロブリン,11Sグロブリン,イソフラボン,サポニン,ニコチアナミン,レシチン,オリゴ糖,ビタミン類,ミネラル類などの大豆中の特定の成分が富化された大豆を使用してもよい。
含脂大豆原料は製造原料中、固形分で50重量%以上用いる。好ましくは、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上であり、100重量%とすることが最も好ましい。
本発明の含脂大豆原料中の油分は、概ね10~30重量%である。下限値は好ましくは12重量%以上であり、13重量%以上、15重量%以上とすることもできる。また、上限値は好ましくは、28重量%以下であり、26重量%以下、25重量%以下、23重量%以下、20重量%以下とすることもできる。
該含脂大豆原料中の蛋白質含量は、膨化蛋白素材の蛋白質含量を満たすためになるべく高いことが好ましい。具体的には乾燥重量中、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは22重量%以上、25重量%以上、28重量%以上、30重量%、32重量%以上、35重量%以上とすることもできる。また、上限は70重量%以下であり、好ましくは65重量%以下であり、より好ましくは、60重量%、55重量%以下、50重量%以下、48重量%以下、46重量%以下、45重量%以下とすることができる。
なお、蛋白質含量は試料中の全窒素量をケルダール法により求めて、係数6.25を乗じ試料に対する百分率として測定し固形分換算で表したものである。
【0011】
本発明の膨化蛋白素材の製造原料(含水)中における、無脂固形分の含有率は、下限が45重量%以上であり、好ましくは47重量%以上、49重量%以上、50重量%以上又は52重量%以上とすることもできる。また、上限は74重量%以下であり、好ましくは73重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、66重量%以下とすることができる。
【0012】
(油分)
本発明の膨化蛋白素材の製造原料(含水)中における油分は、少なくとも下限が11重量%以上であり、好ましくは12重量%以上である。また、上限は18重量%以下であり、好ましくは17重量%以下であり、より好ましくは16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下とすることができる。油脂分が少なすぎると本発明の目的とする膨化蛋白素材を得られない。また、油脂分が過大となると本発明の方法によっても連続的かつ安定的な製造が困難となる。
【0013】
(水)
本発明の膨化蛋白素材の製造原料としては、水を用いることが必須である。水としては純粋な水の他、豆乳のように水を含む液体でもよい。
本発明の膨化蛋白素材の製造原料(含水)中における水分は、少なくとも下限が12重量%以上であり、好ましくは13重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上とすることができる。また、上限を43重量%以下であり、好ましくは40重量%以下又は38重量%以下とすることができる。水分が少なすぎると本発明の目的とする膨化蛋白素材を得られない。また、水分が過大となると本発明の方法によっても連続的かつ安定的な製造が困難となる。
【0014】
本発明の膨化蛋白素材の水を除く製造原料(「粉原料」ともいう。)に対する加水率は、製造原料中の水分が12~43重量%となるように計算して条件設定すればよい。好ましくは13~40重量%、より好ましくは15~40重量%とすることができる。
【0015】
(その他の原料)
本発明の膨化蛋白素材の製造原料として、他に種々の副原料を添加することができる。例えば、脱脂大豆、脱脂大豆粉、脱脂豆乳、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、食塩等のアルカリ金属塩、塩化カルシウム等の二価金属塩、卵白やカゼイン等の動物性蛋白、澱粉や多糖類等の糖質、食物繊維、乳化剤、香料、その他の公知の添加物を、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜加えることもできる。
ただし、畜肉や卵、乳については動物性の原料であり、これらを加えると純植物性の膨化蛋白素材とは言い難くなるため、「植物性」の素材を所望する場合には含まないことが好ましい。
【0016】
(エクストルーダー)
◆エクストルーダーの構造
本発明の膨化蛋白素材の製造は、装置としてエクストルーダーを用いて行う。エクストルーダーは一般的に、原料供給口からバレル内でその中に配置されたスクリューによって原料を送り、混練、加圧(圧縮)、加熱する機構を有し、バレル先端部(出口)に種々の形状の穴を有するダイが装着されている。
そして、本発明においては、バレル内に配置されるスクリューを3本以上有するエクストルーダー、すなわち3軸以上のエクストルーダーを用いることが特徴である。従来の汎用型のエクストルーダーである2軸エクストルーダーに比べ、3軸以上のエクストルーダーは、膨化蛋白素材の製造において、より多くの油脂や水を原料として添加する条件であっても、連続的かつ安定的な製造を可能にする。
特に3~8軸のエクストルーダーが好ましく、エネルギー使用量、スクリュー組み立て時の効率性や、スクリュー洗浄時の作業性等の観点から、4~8軸のエクストルーダー、すなわち4軸、5軸、6軸、7軸又は8軸のエクストルーダーがより好ましい。
【0017】
◆スクリューの配置
3軸以上のエクストルーダーとの組合せにおいて、バレル内に配置される各スクリューは、原料を連続的かつ安定的に、均一に混練できることを条件にいかなる形状に噛み合わされていても良いが、実施形態として各スクリューの断面が垂直方向又は水平方向に一直線となるように、噛み合わされていることが好ましい。当該スクリューの配置は、4~8軸エクストルーダーとの組合せにおいて好ましく、特に4軸エクストルーダーとの組合せにおいてさらに好ましい。各スクリューがバレル内でこのように配置されることにより、バレル内壁面とスクリューとの摩擦領域がより多くなり、機械的なエネルギーをより多く原料の混練物に与えることができる。
【0018】
◆運転条件
膨化蛋白素材の製造原料をエクストルーダーに供給し、加圧加熱下からダイより常圧下に押し出す際の運転条件は、公知の条件に基づいて適宜選択及び調整できる。非限定的な例を示すと、加熱条件としてバレル先端部の温度は120~220℃が好ましく、140~200℃がさらに好ましい。加圧条件としてバレル先端部のダイの圧力は2~100kg/cm2が好ましく、5~40kg/cm2がさらに適当である。
【0019】
本発明において、原料の混練物を加圧加熱下でダイより常圧下に押し出し、膨化させて得られた膨化物は、必要により適当な大きさにカッター等で切断し、乾燥させれば良いが、当該条件は公知の条件に基づいて適宜選択及び調整できる。非限定的な例を示すと、流動層乾燥機を用いて乾燥する場合、例えば60℃~100℃の熱風に膨化物を10~30分間程度当てることによって乾燥させることが適当である。乾燥後に得られる膨化蛋白素材の水分は、保存性の点から15重量%以下が好ましく、1~12重量%がさらに好ましく1~10重量%がさらに適当である。
【0020】
以上の製造方法によって得られる膨化蛋白素材は以下の特徴を(A)~(C)の特徴を有する。すなわち、
(A)固形分中の蛋白質含量が20~70重量%。
(B)固形分中の油分が8~26重量%。
(C)テクスチャーアナライザを用いた、最大応力の測定値が40gf/cm2以上。
である。
また、さらに、(D)の要件として、篩で10メッシュオンが80%以上であることが好ましい。
【0021】
上記、(A)の要件において、膨化蛋白素材の固形分中の蛋白質含量は好ましくは、22重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上、28重量%以上、30重量%以上、32重量%以上、35重量%以上とすることもできる。また、上限は70重量%以下である。好ましくは65重量%以下であり、より好ましくは60重量%以下、55重量%以下、53重量%以下、50重量%以下、48重量%以下、46重量%以下、45重量%以下とすることができる。
【0022】
上記、(B)の要件において、膨化蛋白素材の固形分中の油分は、下限が好ましくは13重量%以上であり、より好ましくは14重量%以上、15重量%以上、16重量%以上とすることもできる。また、上限は好ましくは24重量%以下であり、より好ましくは23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、20重量%以下とすることもできる。
なお、油分はジエチルエーテルを用いたソックスレ-抽出法で測定する。
【0023】
上記、(C)の要件において最大応力を規定している。これは、膨化蛋白素材の噛み応えの度合いの指標とするものである。本発明においては膨化蛋白素材の噛み応えの評価をテクスチャーアナライザ(EZ-SX、(株)島津製作所製)を用いた最大応力の測定により行う。詳細は後述する。
膨化蛋白素材の最大応力の測定値は、好ましくは42gf/cm2以上であり、より好ましくは44gf/cm2以上、45gf/cm2以上、47gf/cm2以上、49gf/cm2以上とすることができる。また、上限は好ましくは600gf/cm2以下、より好ましくは580gf/cm2以下、さらに好ましくは570gf/cm2以下、550gf/cm2以下、530gf/cm2以下、500gf/cm2以下、450gf/cm2以下、440gf/cm2以下である。
【0024】
上記、(D)の要件において、膨化蛋白素材の10メッシュオンは、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0025】
また、さらに(E)の要件として、膨化蛋白素材中水分含量が、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは12重量%以下、10重量%以下である。下限は好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上である。
【0026】
(膨化蛋白素材の膨化度合)
以上の製造法によって得られる膨化蛋白素材は、原料中に油脂分や水分を比較的多量に含むにも関わらず、連続的かつ安定的に製造され、従来の膨化蛋白素材と同等のまとまりのある形状を有しかつ十分に膨化されているものである。
本発明の膨化蛋白素材において、膨化の程度は吸水倍率を指標とすることができ、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.8倍以上、さらに好ましくは2倍以上の吸水倍率を有する。
吸水倍率とは、膨化蛋白素材の重量に対し、該素材に吸水する水の重量の倍率を意味する。吸水倍率の具体的な算出方法は、後述する(実施例)に記載の方法を用いればよい。
【0027】
(用途)
本発明により得られる膨化蛋白素材は、ハンバーグやミートボール,ギョーザ,肉まん,シューマイ,メンチカツ,コロッケ,そぼろ等の加工食品にミンチなどの畜肉の代替素材として添加して利用することができる。また、直接調理してチャーシューのような薄切り肉や唐揚げの肉などの蓄肉代替素材として利用することもできる。
【実施例0028】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。尚、例中の部及び%は特に断らない限り重量基準を意味するものとする。
【0029】
(実施例1~4、比較例1~2)
エクストルーダーとして4軸エクストルーダー「WDR40 QD」((株)テクノベル製)を用いた。該エクストルーダーは、バレル内に4本のスクリューが平行に配置され、スクリューの先端側(断面)からみると水平方向に一直線に配置されているものである。
原料として全脂大豆粉(コトユタカ、油分17.8%、蛋白質含量(固形分換算)46.9%)と水を表1の上欄に示す割合で該エクストルーダーに供給し、混合しながら加熱、加圧処理を行い、原料混練物をバレル先端のダイから常圧下に押し出した。該押出物を長さ10mm程度となるようにダイからの出口直後にカッターで切断した後、乾燥機にて80℃で4時間程度、水分5重量%となるように熱風で乾燥を行い、膨化蛋白素材を得た。
【0030】
なお、エクストルーダーは以下の条件で運転した。
・ダイ :開口部が円形状(直径3.5mm×5穴)
・粉体原料流量 : 58kg/時間
・スクリュー径 :40mm
・バレル温度 :入口側:80℃,中央部:120℃,出口側:165℃
【0031】
(蛋白質含量の分析方法)
蛋白質含量は試料中の全窒素量をケルダール法により求めて、係数6.25を乗じ試料に対する百分率として測定し固形分換算で表す。
【0032】
(最大応力の評価方法)
1.各膨化蛋白素材30gに対して80℃のお湯を180g加えて10分間静置後、5分間ザルを用いて水切りする。
2.内径φ58mm、高さ35mmシャーレに15gサンプルを加える。
3.テクスチャーアナライザ(EZ-SX、(株)島津製作所製)を用いて、φ48mmの円柱プランジャーで10mm/secのスピードでシャーレ内部のサンプルを10mmの厚みまで押したのち、再度8mmの厚みまで押した際の最大応力を測定する。
最大応力の値が、40gf/cm2以上であれば、畜肉様の噛み応えがあり合格と判断した。
【0033】
(粒度の評価方法)
6メッシュの篩(目開き:3.35mm)または10メッシュの篩(目開き:1.7mm)に、各膨化蛋白素材100gを入れて、篩い、篩にオンした量の割合を算出した。10メッシュの篩にオンした割合が80%以上であれば合格と判断した。
【0034】
(吸水倍率の測定方法)
得られた各膨化蛋白素材30gに80℃の温水300mlを加え、10分間吸収させた後、濾布を使用して5分間自然放置させ過剰の水を分離させる。吸水後の試料の重さW(g)を測定し、
吸水倍率(倍)=(W-30)/30
の計算式により吸水倍率を求める。
【0035】
(食感評価)
各膨化蛋白素材10gに対し、10倍加水して10分間吸水させた後、5分間ザルを用いて水切りしたものについて、パネラー5名が以下の評価基準に基づき食感評価を行い、パネラーの合議により評価点を決定した。評価がA、Bの場合、合格と判断した。
(評価基準)
A:畜肉と同様の十分な噛み応えがあり非常に良好である。
B:畜肉と同様の噛み応えがあるが、Aよりはやや劣るものの良好である。
C:畜肉に比べて、噛み応えがやや劣る。
D:畜肉に比べて、噛み応えが劣る。
【0036】
【0037】
実施例1~4の膨化蛋白素材は、最大応力が40gf/cm2以上であり、噛み応えが良好な結果となった。一方、原料供給時の条件として、比較例1のように水が多すぎたり、比較例2のように水が少なすぎると、蛋白素材の原料として大豆粉を100%用いた場合、組織化が十分に行えず、膨化蛋白素材を得ることができなかった。
【0038】
(実施例5~9)
原料として表2に記載の各種全脂大豆粉と水を用い、表2記載の流量とした以外は実施例1と同様にして、膨化蛋白素材を得た。各膨化蛋白素材について実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。なお、各全脂大豆粉の蛋白質含量(固形分換算)は、納豆小粒が43.9%、フクユタカが44.9%、スズマルが41.0%、コトユタカが46.9%、とよまさりが39.0%であった。
【0039】
【0040】
実施例1とは異なる品種の大豆粉を原料とした実施例5~9の膨化蛋白素材は、最大応力が40gf/cm2以上であり、噛み応えが良好な結果となった。