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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085858
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 23/04 20060101AFI20240620BHJP
   F02D 11/02 20060101ALI20240620BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20240620BHJP
   G05G 1/10 20060101ALI20240620BHJP
   G05G 25/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B62K23/04
F02D11/02 R
F02D11/10 U
G05G1/10 Z
G05G25/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200637
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 龍基
(72)【発明者】
【氏名】植松 恭彦
【テーマコード(参考)】
3D013
3G065
3J070
【Fターム(参考)】
3D013CH01
3G065BA01
3G065CA32
3G065JA03
3J070AA02
3J070BA67
3J070CC71
3J070DA04
(57)【要約】
【課題】連動部材とケースとの間を容易にシールすることができ、確実に防水及び防塵することができるスロットルグリップ装置を提供する。
【解決手段】スロットルグリップGに連動して回転し得る連動部材2と、連動部材2を回転自在に保持するケース1と、ケース1の開口側端部N1を覆うとともに、連動部材2の被係合部2aが形成された表面端部F1をスロットルグリップG側に臨ませる開口部11aが形成されたカバー部材11と、連動部材2の回転角度を検出することによりスロットルグリップGの回転角度を検出し得る磁気センサ9とを具備し、磁気センサ9で検出されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、連動部材2は、ケース1の底面側端部N2まで延設された筒状部2eを有するものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、
開口側端部及び底面側端部を有するとともに、前記連動部材を回転自在に保持するケースと、
前記ケースの開口側端部を覆うとともに、前記連動部材の被係合部が形成された表面端部を前記スロットルグリップ側に臨ませる開口部が形成されたカバー部材と、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、
前記連動部材は、前記ケースの底面側端部まで延設された筒状部を有することを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記スロットルグリップが回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する付勢手段を具備するとともに、前記ケースと前記連動部材の前記筒状部との間の間隙に前記付勢手段が収容されたことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記連動部材と前記カバー部材の前記開口部との間をシールする第1シール部材と、前記連動部材の前記筒状部と前記ケースの前記底面側端部との間をシールする第2シール部材とを具備したことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記ケースにおける前記開口側端部の周縁部と前記カバー部材の周縁部との間をシールする第3シール部材を具備したことを特徴とする請求項3記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記連動部材と共に回転する回転部材を有し、前記回転角度検出手段が前記回転部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出可能とされるとともに、前記カバー部材は、前記回転部材の配設部位を覆いつつ前記第1シール部材及び第3シール部材で密閉することを特徴とする請求項4記載のスロットルグリップ装置。
【請求項6】
前記回転部材は、軸部材を中心に回転するとともに、前記カバー部材は、前記軸部材の一端を支持する凹部が形成されたことを特徴とする請求項5記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両の駆動源が制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をセンサにて検出し、その検出値を電気信号として二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、二輪車においては、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいて二輪車の駆動源(たとえばエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉)が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップに形成された係合部を連動部材に形成された被係合部に係合することにより、スロットルグリップと連動部材とを連結させ、連動部材の回転角度をセンサにて検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-90065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、連動部材とケースとの間に間隙が生じてしまうため、例えばレース等の過酷な環境下で使用される場合、泥水や粉塵等がケース内に侵入してしまう虞があった。したがって、本出願人は、連動部材とケースとの間にシール部材やシール構造を形成して防水効果及び防塵効果を高めることを検討するに至ったが、従来技術においては、連動部材とケースとの間の間隙(クリアランス)がケース内部に位置するため、そのケース内部の位置にシール部材やシール構造を形成して確実に防水及び防塵するのは困難であることが分かった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連動部材とケースとの間を容易にシールすることができ、確実に防水及び防塵することができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、開口側端部及び底面側端部を有するとともに、前記連動部材を回転自在に保持するケースと、前記ケースの開口側端部を覆うとともに、前記連動部材の被係合部が形成された表面端部を前記スロットルグリップ側に臨ませる開口部が形成されたカバー部材と、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段とを具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、前記連動部材は、前記ケースの底面側端部まで延設された筒状部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記スロットルグリップが回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する付勢手段を具備するとともに、前記ケースと前記連動部材の前記筒状部との間の間隙に前記付勢手段が収容されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材と前記カバー部材の前記開口部との間をシールする第1シール部材と、前記連動部材の前記筒状部と前記ケースの前記底面側端部との間をシールする第2シール部材とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のスロットルグリップ装置において、前記ケースにおける前記開口側端部の周縁部と前記カバー部材の周縁部との間をシールする第3シール部材を具備したことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材と共に回転する回転部材を有し、前記回転角度検出手段が前記回転部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出可能とされるとともに、前記カバー部材は、前記回転部材の配設部位を覆いつつ前記第1シール部材及び第3シール部材で密閉することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のスロットルグリップ装置において、前記回転部材は、軸部材を中心に回転するとともに、前記カバー部材は、前記軸部材の一端を支持する凹部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、連動部材は、ケースの底面側端部まで延設された筒状部を有するので、筒状部の突端部とケースの底面側端部との間でシールすることができ、連動部材とケースとの間を容易にシールすることにより、確実に防水及び防塵することができるとともに、連動部材がカバー部材の開口部に臨ませた表面端部からケースの底面側端部まで延設されるため、連動部材を安定して回転させることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、スロットルグリップが回転したとき、連動部材を初期位置に向かって付勢する付勢手段を具備するとともに、ケースと連動部材の筒状部との間の間隙に付勢手段が収容されたので、ケースと連動部材の筒状部との間の間隙を有効利用することができ、デッドスペースを低減させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、連動部材とカバー部材の開口部との間をシールする第1シール部材と、連動部材の筒状部とケースの底面側端部との間をシールする第2シール部材とを具備したので、連動部材の両端をシールしつつ連動部材を安定して回転させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、ケースにおける開口側端部の周縁部とカバー部材の周縁部との間をシールする第3シール部材を具備したので、連動部材とケースとの間のシールに加えて、ケースとカバー部材との間をシールすることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、連動部材と共に回転する回転部材を有し、回転角度検出手段が回転部材の回転角度を検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出可能とされるとともに、カバー部材は、回転部材の配設部位を覆いつつ第1シール部材及び第3シール部材で密閉するので、第1シール部材及び第3シール部材にて回転部材の配設部位に対するシールを行わせることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、回転部材は、軸部材を中心に回転するとともに、カバー部材は、軸部材の一端を支持する凹部が形成されたので、カバー部材が回転部材の配設位置を覆う機能と、軸部材の一端を支持する機能とを兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置を示す全体斜視図
図2】同スロットルグリップ装置のスイッチケースを取り外した状態を示す斜視図
図3】同スロットルグリップ装置の主要部品のユニットを示す3面図
図4図3におけるIV-IV線断面図
図5図3におけるV-V線断面図
図6】同スロットルグリップ装置の主要部品(正面側)を示す分解斜視図
図7】同スロットルグリップ装置の主要部品(背面側)を示す分解斜視図
図8】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップを示す斜視図
図9】同スロットルグリップ装置のケースを示す2面図
図10】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す3面図
図11】同スロットルグリップ装置のカバー部材を示す3面図
図12】同スロットルグリップ装置の連動部材に第1付勢手段、第1シール手段及び第2シール手段が取り付けられた状態を示す斜視図
図13】同スロットルグリップ装置において第1付勢手段、抵抗力付与手段、第1シール手段及び第2シール手段がそれぞれ取り付けられた場合の操作角度とトルクとの関係を示すグラフ
図14】同スロットルグリップ装置において第1付勢手段と他の部品(抵抗力付与手段、第1シール手段及び第2シール手段)とが組み合わせて取り付けられた場合の操作角度とトルクとの関係を示すグラフ
図15】本発明の他の実施形態に係るスロットルグリップ装置を示す断面図
図16】同他の実施形態に係るスロットルグリップ装置の連動部材に第1付勢手段、第1オイルシール及び第2オイルシールが取り付けられた状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1、2に示すように、二輪車(車両)のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信して駆動源(エンジン)を制御するためのものである。具体的に本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1~7に示すように、スロットルグリップGと、ケース1と、連動部材2と、第1付勢手段3と、第2付勢手段4と、回転部材5と、磁気センサ9(回転角度検出手段)と、抵抗力付与手段7と、シール手段としての第1シール部材12及び第2シール部材13とを有して構成されている。
【0021】
ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたスイッチケースS内(図1、2参照)に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2及び回転部材5等を回転自在に保持するものである。かかるケース1は、図6、7、9に示すように、開口側端部N1及び底面側端部N2を有した容器状部材から成り、開口側端部N1から各種部品がケース1内に挿入されるよう構成されている。なお、スイッチケースSは、車両の電装品を操作するための各種スイッチWが取り付けられている。
【0022】
また、本実施形態に係るケース1は、図9に示すように、連動部材2を回転自在に収容する第1収容部1aと、回転部材5を回転自在に収容する第2収容部1bと、抵抗力付与手段7を収容する第3収容部1cと、付勢力選択手段6の突出部6aが当接可能なストッパ部1dと、第1付勢手段3の一端部を係止可能な係止部1eと、第2シール部材13が取り付けられる環状凹部1fと、磁気センサ9及びプリント基板8を収容する収容凹部1gと、第3シール部材14が取り付けられる取付凹部1hとが形成された成形部品から成る。
【0023】
カバー部材11は、図3、4に示すように、ケース1の開口側端部N1を覆うとともに、連動部材2の被係合部2aが形成された表面端部F1をスロットルグリップG側に臨ませる開口部11aが形成された板状部材から成る。かかるカバー部材11は、図11に示すように、ケース1の開口側端部N1の外輪郭に沿った形状とされており、ケース1における回転部材5の配設位置(第2収容部1b)に対応する部位には、軸部材Lの一端を支持する凹部11bが形成されている。
【0024】
スロットルグリップGは、スイッチケースSから延設されるとともに、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされたもので、図1、2に示すように、初期位置から軸回りに所定方向の正回転a及び当該所定方向とは逆方向の逆回転bが可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端側には、突出形状から成る係合部Ga(図8参照)が形成されており、この係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(図3、6、10等参照)に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0025】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る凹形状から成る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの正回転a及び逆回転bに連動して回転し得るものである。具体的には、本実施形態に係る連動部材2は、図10に示すように、被係合部2aと、一対の収容部2bと、フランジ2cと、ギア2dと、筒状部2eと、円環状壁部2fと、取付溝部2hとを有した成形部材から成る。更に、本実施形態に係る連動部材2には、抵抗力付与手段7を摺動させる摺動面nが形成されている。
【0026】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Gaと対応した位置にそれぞれ形成された凹形状から成り、当該被係合部2aに係合部Gaが嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、連動部材2は、スロットルグリップGの回転に伴って回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面端部F1に形成されており、ケース1に組み付けられた際、図3に示すように、カバー部材11の開口部11aを介して外部に臨むようになっている。
【0027】
収容部2bは、被係合部2aの間の位置に弧状に形成された一対の溝形状から成り、その内部には、第2付勢手段4がそれぞれ収容可能とされている。また、連動部材2には、周方向に亘ってフランジ2cが形成されるとともに、所定範囲に亘ってギア2dが形成されている。このギア2dは、図5に示すように、回転部材5の外周に形成されたギアと噛み合う状態で組み付けられており、連動部材2の回転に伴って回転部材5が回転するようになっている。
【0028】
さらに、本実施形態に係る連動部材2は、図4に示すように、ケース1の底面側端部N2まで延設された筒状部2eが一体形成されている。かかる筒状部2eは、被係合部2aから突端部F2までの延設寸法がT(図4参照)とされた円筒形状から成り、ケース1内に組付けられた状態において、連動部材2との間の間隙に第1付勢手段3が収容されるよう構成されている。
【0029】
円環状壁部2fは、図7、10に示すように、収容部2bの外周に沿って弧状に形成された壁形状から成り、その一部には切欠き部2gが形成されている。かかる切欠き部2gは、図12に示すように、連動部材2の背面側に付勢力選択手段6が取り付けられたとき、付勢力選択手段6の突出部6aが挿通されるようになっている。取付溝部2hは、連動部材2における表面端部F1の外周面に沿って形成された溝形状から成り、第1シール部材12が嵌め込まれるようになっている。
【0030】
第1付勢手段3は、ねじりコイルバネから成り、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのリターンスプリングである。具体的には、第1付勢手段3は、その一端がケース1の係止部1eに係止されるとともに、他端が連動部材2に係止されて組み付けられており、スロットルグリップGを正回転aさせると、第1付勢手段3の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0031】
第2付勢手段4は、連動部材2の収容部2bに収容されるとともに、付勢力選択手段6に形成されたスプリング受け部6b(図5、6参照)に一端が当接して取り付けられた一対のコイルスプリングから成り、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのものである。具体的には、第2付勢手段4は、スロットルグリップGを逆回転bさせると、付勢力選択手段6の突出部6aがケース1のストッパ部1dに係止されるので、付勢力選択手段6が停止しつつ連動部材2が回転することとなり、第2付勢手段4の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。なお、第2付勢手段4は、スロットルグリップGを正回転aさせると、付勢力選択手段6の突出部6aがケース1のストッパ部1dに係止されないので、付勢力選択手段6と共に回転することとなり、付勢力が生じないようになっている。
【0032】
回転部材5は、連動部材2と連動して回転し得るもので、ケース1の第2収容部1b(図9参照)に収容されるとともに、軸部材L(図4参照)を中心として回転自在とされている。そして、回転部材5は、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて軸部材Lを中心として回転するようになっている。かかる回転部材5は、図4に示すように、軸部材Lを介して磁石Mと連結されており、回転部材5と共に磁石Mが軸部材Lを中心に回転するよう構成されている。なお、軸部材Lには、ねじりコイルばねrが組付けられており、かかるねじりコイルばねrによって回転部材5が回転方向に付勢されて連動部材2のギア2dとの間のガタが防止されている。
【0033】
磁気センサ9(回転角度検出手段)は、図4に示すように、軸部材Lの延長線上の位置に配設されたセンサから成り、磁石Mから生じる磁気の変化(磁界の方向の変化)を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ9は、磁石Mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石Mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。なお、本実施形態に係る磁気センサ9は、所定の電気回路が印刷されたプリント基板8に形成される。また、磁気センサ9が実装されたプリント基板8は、ケース1の収容凹部1gに収容された後、所定の樹脂材にてモールドされることにより、防水・防塵されるようになっている。
【0034】
そして、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGが正回転aするのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材5も連動してギア比(連動部材2及び回転部材5のギア比)に応じて回転し、当該回転部材5に連結された磁石Mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、回転部材5の回転角度によって磁石Mの磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジン(駆動源)が制御され得るようになっている。
【0035】
一方、回転部材5は、スロットルグリップGが逆回転bするのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、連動してギア比(連動部材2及び回転部材5のギア比)に応じて回転し、当該回転部材5に取り付けられた磁石Mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、回転部材5の回転角度によって磁石Mの磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、スロットルグリップGの逆回転bを検出することができる。
【0036】
このように、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGの逆回転bが検出されると、二輪車が具備する所定の機能を作動又は非作動とすることができるようになっている。本実施形態においては、走行速度を一定に保持する定車速保持装置(オートクルーズ装置)を備えた二輪車に適用されており、スロットルグリップGを逆回転bさせると、当該定車速の保持制御を停止(キャンセル)させ得るよう構成されている。
【0037】
抵抗力付与手段7は、スロットルグリップGの回転時に摺動抵抗(摺動による摩擦抵抗)を生じさせて回転負荷を生じさせ得るもので、連動部材2の周方向に亘って形成された摺動面nに対して当接状態にて組み付けられた摩擦部材から成るフリクション部材7aと、フリクション部材7aを付勢するばね7bとを有して構成されている。かかる抵抗力付与手段7は、ケース1の第3収容部1cに収容されるとともに、ばね7bの付勢力により連動部材2の摺動面nに対してフリクション部材7aを押圧するように組み付けられている。これにより、抵抗力付与手段7は、スロットルグリップGの回転操作に伴って連動部材2が回転すると、摺動面nに対してフリクション部材7aが摺動して摩擦力を生じさせ、所定の操作トルク(操作荷重)が生じるようになっている。
【0038】
ここで、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、連動部材2とカバー部材11の開口部11aとの間をシールする第1シール部材12と、連動部材2の筒状部2eとケース1の底面側端部N2との間をシールする第2シール部材13と、ケース1における開口側端部N1の周縁部とカバー部材11の周縁部との間をシールする第3シール部材14とを具備している。
【0039】
本実施形態に係る第1シール部材12は、第2シール部材13と比べて大径のOリングから成り、図12に示すように、連動部材2の表面端部F1側に形成された取付溝部2hに嵌め込まれるとともに、図4に示すように、カバー部材11における開口部11aの内周縁部にて径方向に押圧されつつ組付けられている。これにより、連動部材2は、第1シール部材12によってカバー部材11の開口部11aとの間がシールされるとともに、スロットルグリップGの回転操作に伴って回転するとき、所定の操作トルク(操作荷重)が生じるようになっている。
【0040】
本実施形態に係る第2シール部材13は、第1シール部材12と比べて小径のOリングから成り、図12に示すように、連動部材2における筒状部2eの突端部F2側に取り付けられるとともに、図4に示すように、ケース1の底面側端部N2に形成された環状凹部1fに嵌め込まれて径方向に押圧されつつ組付けられている。これにより、連動部材2は、第2シール部材13によって筒状部2eとケース1の底面側端部N2との間がシールされるとともに、スロットルグリップGの回転操作に伴って回転するとき、所定の操作トルク(操作荷重)が生じるようになっている。なお、第2シール部材13は、環状凹部1fに嵌め込まれた状態において、抜け止め部材10にて抜け止めされている。
【0041】
本実施形態に係る第3シール部材14は、ガスケットから成り、図9に示すように、ケース1における開口側端部N1の周縁部に沿って形成された取付凹部1hに嵌め込まれるとともに、図4に示すように、カバー部材11の周縁部にて軸方向に押圧されつつ組付けられている。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、ケース1の周縁部とカバー部材11の周縁部との間がシールされるようになっている。
【0042】
さらに、本実施形態に係るカバー部材11は、図4に示すように、回転部材5の配設部位を覆いつつ第1シール部材12及び第3シール部材14で密閉するよう構成されている。すなわち、回転部材5の配設位置である第2収容部1bは、図4、9に示すように、内側の位置に第1シール部材12が組付けられるとともに、外側の位置に第3シール部材14が組付けられるので、カバー部材11が組付けられると、第1シール部材12及び第3シール部材14によって密閉されるようになっている。また、カバー部材11は、軸部材Lの一端を支持する凹部11bが形成されており、回転部材5の配設位置である第2収容部1bの密閉状態が保持されつつ、回転部材5及び磁石Mの回転が許容されるようになっている。
【0043】
一方、スロットルグリップGの回転操作に伴って連動部材2が回転するときの操作トルク(操作荷重)は、図13に示すように、第1付勢手段3で生じる操作トルク(α1)と、抵抗力付与手段7で生じる操作トルク(α2)と、第1シール部材12で生じる操作トルク(α3)と、第2シール部材13で生じる操作トルク(α4)との合算により求めることができる。なお、図13のグラフにおいては、第1付勢手段3、抵抗力付与手段7、第1シール部材12及び第2シール部材13をそれぞれ単独でスロットルグリップ装置に組付けた場合の操作角度と操作トルクとの関係を示している。
【0044】
ここで、本実施形態に係るスロットルグリップ装置においては、抵抗力付与手段7と、第1シール部材12と、第2シール部材13とが任意選択的に取付け可能とし、連動部材2が回転するとき、第1付勢手段3と選択的に取り付けられた抵抗力付与手段7、第1シール部材12又は第2シール部材13(互いに線径が異なるシール手段)とで所定の操作トルク(予め設定された所望の操作トルク)を生じさせるよう構成してもよい。
【0045】
この場合、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、第1付勢手段3に加えて抵抗力付与手段7、第1シール部材12及び第2シール部材13を選択的に取り付けることにより、図14に示すように、各操作トルクを合算(α1+α2+α3+α4)した操作トルク(β1)を生じさせることができる。また、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、第1付勢手段3に加えて抵抗力付与手段7を選択的に取り付けることにより、各操作トルクを合算(α1+α2)した操作トルク(β2)を生じさせることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、第1付勢手段3に加えて第1シール部材12を選択的に取り付けることにより、各操作トルクを合算(α1+α3)した操作トルク(β3)を生じさせることができるとともに、第1付勢手段3に加えて第2シール部材13を選択的に取り付けることにより、各操作トルクを合算(α1+α4)した操作トルク(β4)を生じさせることができる。またさらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、第1付勢手段3に加えて第1シール部材12及び第2シール部材13を選択的に取り付けることにより、各操作トルクを合算(α1+α3+α4)した操作トルク(β5)を生じさせることができる。
【0047】
本実施形態によれば、連動部材は2、ケース1の底面側端部N2まで延設された筒状部2eを有するので、筒状部2eの突端部F2とケース1の底面側端部N2との間でシールすることにより、連動部材2とケース1との間を容易にシールすることができ、確実に防水及び防塵することができるとともに、連動部材2がカバー部材11の開口部11aに臨ませた表面端部F1からケース1の底面側端部N2まで延設されるため、連動部材2を安定して回転させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGが回転したとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢する第1付勢手段3を具備するとともに、ケース1と連動部材2の筒状部2eとの間の間隙に第1付勢手段3が収容されたので、ケース1と連動部材2の筒状部2eとの間の間隙を有効利用することができ、デッドスペースを低減させることができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、連動部材2とカバー部材11の開口部11aとの間をシールする第1シール部材12と、連動部材2の筒状部2eとケース1の底面側端部N2との間をシールする第2シール部材13とを具備したので、連動部材2の両端をシールしつつ連動部材2を安定して回転させることができる。またさらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、ケース1における開口側端部N1の周縁部とカバー部材11の周縁部との間をシールする第3シール部材14を具備したので、連動部材2とケース1との間のシールに加えて、ケース1とカバー部材11との間をシールすることができる。
【0050】
加えて、本実施形態によれば、連動部材2と共に回転する回転部材5を有し、磁気センサ9が回転部材5の回転角度を検出することによりスロットルグリップGの回転角度を検出可能とされるとともに、カバー部材11は、回転部材5の配設部位を覆いつつ第1シール部材12及び第3シール部材14で密閉するので、第1シール部材12及び第3シール部材14にて回転部材5の配設部位に対するシールを行わせることができる。さらに、本実施形態に係る回転部材5は、軸部材Lを中心に回転するとともに、カバー部材11は、軸部材Lの一端を支持する凹部11bが形成されたので、カバー部材11が回転部材5の配設位置を覆う機能と、軸部材Lの一端を支持する機能とを兼ね備えることができる。
【0051】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば本実施形態においては第1シール部材12及び第2シール部材13が互いに径が異なるOリングから成るものとされているが、これに代えて、図15、16に示すように、連動部材2とカバー部材11の開口部11aとの間をシールする第1オイルシール15と、連動部材2の筒状部2eとケース1の底面側端部N2との間をシールする第2オイルシール16としてもよい。なお、第2オイルシール16は、抜け止め部材17にて抜け止めされている。
【0052】
さらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、磁気センサ9に代えてスロットルグリップGの回転角度を検出し得る他のセンサ(磁気を使用しないセンサ等)としてもよい。またさらに、本実施形態においては、スロットルグリップGを逆回転させると、定車速保持装置(オートクルーズ装置)の定車速の保持制御を停止(キャンセル)させるよう構成されているが、スロットルグリップGの逆方向の回転を検知すると、車両が具備する所定の機能を作動又は非作動するものであれば足りるし、逆回転しないスロットルグリップG(専ら正回転するスロットルグリップG)としてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。また、本実施形態が適用される車両は、駆動源がエンジンに限定されるものではなく、例えば電気モータを駆動源とする車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の趣旨に沿ったスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ケース
1a 第1収容部
1b 第2収容部
1c 第3収容部
1d ストッパ部
1e 係止部
1f 環状凹部
1g 収容凹部
1h 取付凹部
2 連動部材
2a 被係合部
2b 収容部
2c フランジ
2d ギア
2e 筒状部
2f 円環状壁部
2g 切欠き部
2h 取付溝部
3 第1付勢手段(ねじりコイルバネ)
4 第2付勢手段(コイルスプリング)
5 回転部材
6 付勢力選択手段
6a 突出部
6b スプリング受け部
7 抵抗力付与手段
7a フリクション部材
7b ばね
8 プリント基板
9 磁気センサ(回転角度検出手段)
10 抜け止め部材
11 カバー部材
11a 開口部
11b 凹部
12 第1シール部材(Oリング)
13 第2シール部材(Oリング)
14 第3シール部材(ガスケット)
15 第1オイルシール
16 第2オイルシール
17 抜け止め部材
G スロットルグリップ
Ga 係合部
M 磁石
n 摺動面
S スイッチケース
F1 表面端部
F2 突端部
N1 開口側端部
N2 底面側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16