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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085860
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 23/04 20060101AFI20240620BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240620BHJP
   F02D 11/02 20060101ALI20240620BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20240620BHJP
   G05G 1/10 20060101ALI20240620BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20240620BHJP
   G05G 25/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B62K23/04
F02D9/02 351J
F02D11/02 R
F02D11/10 U
G05G1/10 Z
G05G5/03 B
G05G25/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200639
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 龍基
(72)【発明者】
【氏名】植松 恭彦
【テーマコード(参考)】
3D013
3G065
3J070
【Fターム(参考)】
3D013CH01
3G065BA01
3G065CA22
3G065JA03
3J070AA02
3J070BA15
3J070CC71
3J070DA04
(57)【要約】
【課題】スロットルグリップの回転操作開始時であって連動部材の回転前に操作荷重を生じさせることができるスロットルグリップ装置を提供する。
【解決手段】スロットルグリップGに連動して回転し得る連動部材2と、連動部材2を回転自在に保持するケース1と、スロットルグリップGの回転角度を検出し得る磁気センサ9とを具備し、スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転操作されたとき、磁気センサ9で検出されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、連動部材2に取り付けられるとともに、スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転するとき、係合部Gaが被係合部2aに当接するまでの間に係合部Gaに付勢力を付与する初期位置付勢手段4を具備したものである。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、
前記連動部材を回転自在に保持するケースと、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
を具備し、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転操作されたとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、
前記連動部材に取り付けられるとともに、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、前記係合部が前記被係合部に当接するまでの間に前記係合部に付勢力を付与する初期位置付勢手段を具備したことを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記初期位置付勢手段は、前記スロットルグリップが所定方向に回転するときに前記係合部に当接する当接部と、前記当接部を前記係合部に向かって付勢する付勢部材と、前記付勢部材が取り付けられた本体部と、を具備することを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記連動部材は、前記本体部が取り付けられる取付凹部と、前記取付凹部と前記被係合部とを連通して前記当接部を挿通させる連通孔と、を有することを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記被係合部は、前記連動部材の一方の面において同心円状に複数形成されるとともに、前記取付凹部は、前記連動部材の他方の面における前記被係合部と隣接する位置にそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項3記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記初期位置付勢手段は、前記スロットルグリップが回転操作前の初期位置にあるとき、前記係合部に当接して付勢力を付与することを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両の駆動源が制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をセンサにて検出し、その検出値を電気信号として二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、二輪車においては、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいて二輪車の駆動源(たとえばエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉)が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップに形成された係合部を連動部材に形成された被係合部に係合することにより、スロットルグリップと連動部材とを連結させ、連動部材の回転角度をセンサにて検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-90065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、係合部が被係合部に当接するまでの間に操作荷重が発生しないため、操作性に慣れた汎用のワイヤ式のスロットルグリップとは操作感が著しく相違してしまい、操作性が悪化してしまう虞があった。
【0006】
すなわち、汎用のワイヤ式のスロットルグリップは、スロットルグリップと連結されたワイヤが常時エンジン側から張力を付与された状態とされており、その張力によって、スロットルグリップの回転操作開始時から操作荷重が発生するのに対し、従来技術においては、スロットルグリップの回転操作開始時に係合部が被係合部に当接するまで(連動部材が連動して回転する前)操作荷重が生じることがなく、操作感が著しく相違してしまうのである。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スロットルグリップの回転操作開始時であって連動部材の回転前に操作荷重を生じさせることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、前記連動部材を回転自在に保持するケースと、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段とを具備し、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転操作されたとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両の駆動源を制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、前記連動部材に取り付けられるとともに、前記スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、前記係合部が前記被係合部に当接するまでの間に前記係合部に付勢力を付与する初期位置付勢手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記初期位置付勢手段は、前記スロットルグリップが所定方向に回転するときに前記係合部に当接する当接部と、前記当接部を前記係合部に向かって付勢する付勢部材と、前記付勢部材が取り付けられた本体部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、前記本体部が取り付けられる取付凹部と、前記取付凹部と前記被係合部とを連通して前記当接部を挿通させる連通孔と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のスロットルグリップ装置において、前記被係合部は、前記連動部材の一方の面において同心円状に複数形成されるとともに、前記取付凹部は、前記連動部材の他方の面における前記被係合部と隣接する位置にそれぞれ形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記初期位置付勢手段は、前記スロットルグリップが回転操作前の初期位置にあるとき、前記係合部に当接して付勢力を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、連動部材に取り付けられるとともに、スロットルグリップが初期位置から所定方向に回転するとき、係合部が被係合部に当接するまでの間に係合部に付勢力を付与する初期位置付勢手段を具備したので、スロットルグリップの回転操作開始時であって連動部材の回転前に操作荷重を生じさせることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、初期位置付勢手段は、スロットルグリップが所定方向に回転するときに係合部に当接する当接部と、当接部を係合部に向かって付勢する付勢部材と、付勢部材が取り付けられた本体部と、を具備するので、スロットルグリップの回転操作開始時であって連動部材の回転前に操作荷重を確実に生じさせることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、連動部材は、本体部が取り付けられる取付凹部と、取付凹部と被係合部とを連通して当接部を挿通させる連通孔とを有するので、本体部を安定して連動部材に取り付けることができるとともに、当接部を確実に係合部に当接させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、被係合部は、連動部材の一方の面において同心円状に複数形成されるとともに、取付凹部は、連動部材の他方の面における被係合部と隣接する位置にそれぞれ形成されたので、係合部の被係合部に対する係合を妨げることなく初期位置付勢手段を連動部材に取り付けることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、初期位置付勢手段は、スロットルグリップが回転操作前の初期位置にあるとき、係合部に当接して付勢力を付与するので、スロットルグリップの回転操作開始時であって連動部材の回転前に操作荷重を生じさせることができるとともに、係合部と被係合部との間のガタを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置を示す全体斜視図
図2】同スロットルグリップ装置のスイッチケースを取り外した状態を示す斜視図
図3】同スロットルグリップ装置の主要部品のユニットを示す3面図
図4図3におけるIV-IV線断面図
図5図3におけるV-V線断面図
図6】同スロットルグリップ装置の主要部品(正面側)を示す分解斜視図
図7】同スロットルグリップ装置の主要部品(背面側)を示す分解斜視図
図8】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップを示す斜視図
図9】同スロットルグリップ装置のケースを示す2面図
図10】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す2面図
図11】同スロットルグリップ装置の初期位置付勢手段を示す3面図
図12】同スロットルグリップ装置の連動部材に初期位置付勢手段を取り付けた状態を示す3面図
図13図12におけるXIII-XIII線断面図
図14】スロットルグリップ装置において、初期位置付勢手段が取り付けられたものと取り付けられないものとの操作トルクを比較したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1、2に示すように、二輪車(車両)のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信して駆動源(エンジン)を制御するためのものである。具体的に本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1~7に示すように、スロットルグリップGと、ケース1と、連動部材2と、付勢手段3と、初期位置付勢手段4と、回転部材5と、磁気センサ9(回転角度検出手段)と、抵抗力付与手段7とを有して構成されている。なお、スイッチケースSは、車両の電装品を操作するための各種スイッチWが取り付けられている。
【0020】
ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたスイッチケースS内(図1、2参照)に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2及び回転部材5等を回転自在に保持するものである。かかるケース1は、図9に示すように、連動部材2を回転自在に収容する第1収容部1aと、回転部材5を回転自在に収容する第2収容部1bと、抵抗力付与手段7を収容する第3収容部1cと、付勢手段3の一端部を係止可能な係止部1dと、磁気センサ9及びプリント基板8を収容する収容凹部1eとが形成された成形部品から成る。なお、符号10は、ケース1の開口側を塞ぐための板状のカバー部材を示している。
【0021】
スロットルグリップGは、スイッチケースSから延設されるとともに、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされたもので、図1、2に示すように、初期位置から軸回りに所定方向aの回転操作が可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端側には、突出形状から成る係合部Ga(図8参照)が形成されており、この係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(図3、6、10等参照)に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0022】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る凹形状から成る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの所定方向aの回転操作に連動して回転し得るものである。具体的には、本実施形態に係る連動部材2は、図10に示すように、被係合部2aと、一対の取付凹部2bと、フランジ2cと、ギア2dと、連通孔2eとを有した円環状部材から成る。更に、本実施形態に係る連動部材2には、抵抗力付与手段7を摺動させる摺動面nが形成されている。
【0023】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Gaと対応した位置にそれぞれ形成された凹形状から成り、当該被係合部2aに係合部Gaが嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、連動部材2は、スロットルグリップGの回転に伴って回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面(ケース1に組み付けられた際、図3に示すように、外部に臨ませ得る一方の面)に形成されるとともに、他方の面には、取付凹部2bが形成されている。
【0024】
取付凹部2bは、被係合部2aの間の位置に形成された凹形状から成り、その内部には、初期位置付勢手段4の本体部4cがそれぞれ取り付けられるよう構成されている。また、連動部材2には、周方向に亘ってフランジ2cが形成されるとともに、所定範囲に亘ってギア2dが形成されている。このギア2dは、図5に示すように、回転部材5の外周に形成されたギアと噛み合う状態で組み付けられており、連動部材2の回転に伴って回転部材5が回転するようになっている。
【0025】
さらに、本実施形態に係る連動部材2は、図10、13に示すように、取付凹部2bと被係合部2aとを連通して初期位置付勢手段4の当接部4aを挿通させる連通孔2eが形成されている。すなわち、被係合部2aは、連動部材2の一方の面において同心円状に複数形成されるとともに、取付凹部2bは、連動部材2の他方の面における被係合部2aと隣接する位置にそれぞれ形成されており、隣接する被係合部2aと取付凹部2bとが連通孔2eにて連通されている。
【0026】
付勢手段3は、ねじりコイルバネから成り、スロットルグリップGが所定方向aに回転したとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのリターンスプリングである。具体的には、付勢手段3は、その一端がケース1の係止部1dに係止されるとともに、他端が連動部材2に係止されて組み付けられており、スロットルグリップGを回転操作させると、付勢手段3の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0027】
回転部材5は、連動部材2と連動して回転し得るもので、ケース1の第2収容部1b(図9参照)に収容されるとともに、軸部材L(図4参照)を中心として回転自在とされている。そして、回転部材5は、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて軸部材Lを中心として回転するようになっている。かかる回転部材5は、図4に示すように、軸部材Lにより磁石Mと連結されており、回転部材5と共に磁石Mが軸Lを中心に回転するよう構成されている。なお、軸部材Lには、ねじりコイルばねrが組付けられており、かかるねじりコイルばねrによって回転部材5が回転方向に付勢されて連動部材2のギア2dとの間のガタが防止されている。
【0028】
磁気センサ9(回転角度検出手段)は、図4に示すように、軸部材Lの延長線上の位置に配設されたセンサから成り、磁石Mから生じる磁気の変化(磁界の方向の変化)を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ9は、磁石Mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石Mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。なお、本実施形態に係る磁気センサ9は、所定の電気回路が印刷されたプリント基板8に形成される。また、磁気センサ9が実装されたプリント基板8は、ケース1の収容凹部1eに収容された後、所定の樹脂材にてモールドされることにより、防水・防塵されるようになっている。
【0029】
そして、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGが回転するのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材5も連動してギア比(連動部材2及び回転部材5のギア比)に応じて回転し、当該回転部材5に連結された磁石Mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、回転部材5の回転角度によって磁石Mの磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジン(駆動源)が制御され得るようになっている。
【0030】
抵抗力付与手段7は、スロットルグリップGの回転時に摺動抵抗(摺動による摩擦抵抗)を生じさせて回転負荷を生じさせ得るもので、連動部材2の周方向に亘って形成された摺動面nに対して当接状態にて組み付けられた摩擦部材から成るフリクション部材7aと、フリクション部材7aを付勢するばね7bとを有して構成されている。かかる抵抗力付与手段7は、ケース1の第3収容部1cに収容されるとともに、ばね7bの付勢力により連動部材2の摺動面nに対してフリクション部材7aを押圧するように組み付けられている。これにより、スロットルグリップGの回転操作に伴って連動部材2が回転すると、摺動面nに対してフリクション部材7aが摺動して摩擦力を生じさせ、所定の操作トルク(操作荷重)が生じるようになっている。
【0031】
初期位置付勢手段4は、連動部材2に取り付けられるとともに、スロットルグリップGが初期位置から所定方向に回転するとき、係合部Gaが被係合部2aに当接するまでの間に係合部Gaに付勢力を付与するものである。係る初期位置付勢手段4は、図11に示すように、スロットルグリップGが所定方向aに回転するときに係合部Gaに当接するピン状の当接部4aと、当接部4aを係合部Gaに向かって付勢するばね4b(付勢部材)と、ばね4bが取り付けられた本体部4cとを有している。
【0032】
そして、初期位置付勢手段4は、図13に示すように、ばね4bを有する本体部4cが取付凹部2bに取り付けられるとともに、連通孔2eに当接部4aを挿通させると、図12、13に示すように、当接部4aの先端側が被係合部2aに向かって突出した状態となる。これにより、初期位置付勢手段4は、スロットルグリップGが回転操作前の初期位置にあるとき、係合部Gaの側面に当接部4aの先端が当接するようになっている。
【0033】
したがって、初期位置付勢手段4は、スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転するとき、係合部Gaが被係合部2aの壁面(連通孔2eが形成された壁面)に当接するまでの間に係合部Gaに対してばね4bの付勢力を付与することができる。また、ばね4bは、その付勢力が付勢手段3の付勢力より小さく設定されている。このため、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、当接部4aが係合部Gaの壁面に当接した後、更にスロットルグリップGを所定方向aに回転させることにより、連動部材2を連動して回転させることができる。
【0034】
すなわち、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGの回転操作時、係合部Gaが被係合部2aの壁面に当接するまでは、初期位置付勢手段4にて付勢力が付与されるものの連動部材2は停止しているので、磁気センサ9にて回転角度が検出されず、車両のエンジン(駆動源)の制御は行われないが、係合部Gaが被係合部2aの壁面に当接した後、更にスロットルグリップGを回転操作することにより、連動部材2が回転し始め、磁気センサ9による回転角度が検出されるようになっている。なお、初期位置付勢手段4は、連動部材2に取り付けられているため、連動部材2の回転に伴って連れ回しされることとなる。
【0035】
次に、初期位置付勢手段4の優位性を示す実験結果について、図14を用いて説明する。なお、同図のグラフにおいて、横軸は磁気センサ9が検出した操作角度(deg)及び縦軸は生じた操作トルク(操作荷重)を示している。
先ず、初期位置付勢手段4を具備しないスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGを初期位置から回転操作したところ、同図中βに示すように、連動部材2の回転開始後(同図の角度0°以降)において、操作トルク(操作荷重)が上昇した。
【0036】
それに対し、初期位置付勢手段4を具備したスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGを初期位置から回転操作したところ、同図中αに示すように、連動部材2の回転開始前(同図の角度0°より前)から操作トルク(操作荷重)が上昇した。これにより、初期位置付勢手段4を具備したスロットルグリップ装置は、スロットルグリップGを回転操作開始しても連動部材2の回転開始前までは初期位置付勢手段4にて付勢力が付与されており、汎用のワイヤ式のスロットルグリップのワイヤの引っ張り荷重に相当する操作トルク(操作荷重)が生じていることが分かる。
【0037】
本実施形態によれば、連動部材2に取り付けられるとともに、スロットルグリップGが初期位置から所定方向aに回転するとき、係合部Gaが被係合部2aに当接するまでの間に係合部Gaに付勢力を付与する初期位置付勢手段4を具備したので、スロットルグリップGの回転操作開始時であって連動部材2の回転前に操作荷重を生じさせることができ、汎用のワイヤ式のスロットルグリップの操作感に近似させることができる。
【0038】
また、初期位置付勢手段4は、スロットルグリップGが所定方向aに回転するときに係合部Gaに当接する当接部4aと、当接部4aを係合部Gaに向かって付勢するばね4b(付勢部材)と、ばね4b(付勢部材)が取り付けられた本体部4cとを具備するので、スロットルグリップGの回転操作開始時であって連動部材2の回転前に操作荷重を確実に生じさせることができる。
【0039】
さらに、本実施形態に係る連動部材2は、本体部4cが取り付けられる取付凹部2bと、取付凹部2bと被係合部2aとを連通して当接部4aを挿通させる連通孔2eとを有するので、本体部4cを安定して連動部材2に取り付けることができるとともに、当接部4aを確実に係合部Gaに当接させることができる。
【0040】
またさらに、本実施形態に係る被係合部2aは、連動部材2の一方の面において同心円状に複数(本実施形態においては2つ)形成されるとともに、取付凹部2bは、連動部材2の他方の面における被係合部2aと隣接する位置にそれぞれ形成されたので、係合部Gaの被係合部2aに対する係合を妨げることなく初期位置付勢手段4を連動部材2に取り付けることができる。
【0041】
また、初期位置付勢手段4は、スロットルグリップGが回転操作前の初期位置にあるとき、係合部Gaに当接して付勢力を付与するので、スロットルグリップGの回転操作開始時であって連動部材2の回転前に操作荷重を生じさせることができるとともに、スロットルグリップGを回転操作しない状態においても、常時、係合部Gaに付勢力を付与することができ、係合部Gaと被係合部2aとの間のガタを防止することができる。
【0042】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば本実施形態においては、スロットルグリップGが回転操作前の初期位置にあるとき、初期位置付勢手段4の当接部4aが係合部Gaに当接して付勢力を付与しているが、スロットルグリップGが回転操作前の初期位置にあるとき、初期位置付勢手段4の当接部4aが係合部Gaに対して所定寸法離間して対峙するものであってもよい。
【0043】
さらに、初期位置付勢手段4は、ばね4bに代えて他の付勢部材(例えば樹脂材やゴム材などの弾性部材)としてもよく、或いは磁気センサ9に代えてスロットルグリップGの回転角度を検出し得る他のセンサ(磁気を使用しないセンサ等)としてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。また、本実施形態が適用される車両は、駆動源がエンジンに限定されるものではなく、例えば電気モータを駆動源とする車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の趣旨に沿ったスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ケース
1a 第1収容部
1b 第2収容部
1c 第3収容部
1d 係止部
1e 収容凹部
2 連動部材
2a 被係合部
2b 取付凹部
2c フランジ
2d ギア
2e 連通孔
3 付勢手段(ねじりコイルバネ)
4 初期位置付勢手段
4a 当接部
4b ばね(付勢部材)
4c 本体部
5 回転部材
6 収容部材
7 抵抗力付与手段
7a フリクション部材
7b ばね
8 プリント基板
9 磁気センサ(回転角度検出手段)
10 カバー部材
G スロットルグリップ
Ga 係合部
M 磁石
n 摺動面
図1
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