(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085862
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】光学部材、照明装置および画像投影装置
(51)【国際特許分類】
F21V 13/04 20060101AFI20240620BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240620BHJP
G02B 3/02 20060101ALI20240620BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240620BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20240620BHJP
G02B 5/09 20060101ALI20240620BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20240620BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20240620BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240620BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20240620BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20240620BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240620BHJP
【FI】
F21V13/04
G02B27/01
G02B3/02
G02B3/00 A
G02B5/10 A
G02B5/09
H10K50/858
H10K59/00
B60K35/00 A
H01L33/58
H01L33/60
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200646
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
3D344
3K107
5F142
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA10
2H042DA11
2H042DA12
2H042DB08
2H042DB09
2H042DC02
2H042DD01
2H042DD04
2H042DD06
2H042DD07
2H042DD09
2H042DE04
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA30
2H199DA34
2H199DA43
3D344AA19
3D344AA22
3D344AC25
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB08
3K107CC10
3K107EE29
3K107FF15
5F142AA13
5F142CE03
5F142DB32
5F142DB42
5F142EA34
5F142GA28
(57)【要約】
【課題】限られた表示領域に対して均一に照射光を照射するとともに、照射光の利用効率を高めることが可能な光学部材、照明装置および画像投影装置を提供する。
【解決手段】内面に反射面(12)が形成され、反射面(12)の一端に開口された光入射口(17)と、反射面(12)の他端に開口された光出射口(16)とを有する反射部(10)と、反射部(10)の光出射口(16)に配置されたレンズ部(20)とを備え、レンズ部(20)は中央に位置する中央領域(21)と、中央領域(21)の周囲に設けられた周縁領域(22)とを備え、中央領域(21)の光学的パワーが周縁領域(22)よりも大きい光学部材(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に反射面が形成され、前記反射面の一端に開口された光入射口と、前記反射面の他端に開口された光出射口と、を有する反射部と、
前記反射部の前記光出射口に配置されたレンズ部とを備え、
前記レンズ部は、中央に位置する中央領域と、前記中央領域の周囲に設けられた周縁領域とを備え、前記中央領域の光学的パワーが前記周縁領域よりも大きいことを特徴とする光学部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記光出射口と前記中央領域との距離Dと、前記光出射口の幅Woutとは、D≦0.5Woutの関係を満たすことを特徴とする光学部材。
【請求項3】
請求項2に記載の光学部材であって、
前記中央領域は、光入射面が前記反射部の方向に突出した凸レンズ形状を有していることを特徴とする光学部材。
【請求項4】
請求項3に記載の光学部材であって、
前記光入射面の少なくとも一部が、前記光出射口よりも前記光入射口側に挿入されていることを特徴とする光学部材。
【請求項5】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記中央領域の幅Wcと、前記光出射口の幅Woutとは、0.3Wout≦Wc≦0.7Woutの関係を満たすことを特徴とする光学部材。
【請求項6】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記反射面は、横断面が多角形状であることを特徴とする光学部材。
【請求項7】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記反射部および前記レンズ部を複数備え、複数の前記反射部および前記レンズ部が一軸方向に連結して配列されていることを特徴とする光学部材。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載の光学部材と、
前記光入射口側に配置されて光を発光する発光素子とを備え、
前記発光素子の幅Wdと、前記光入射口の幅Winとは、Wd<Winの関係を満たすことを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項8に記載の照明装置と、
前記照明装置から前記光が照射されて画像を表示する画像表示部と、
前記画像表示部からの前記光を投影する投影光学部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、照明装置および画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者等の搭乗者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があり好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、搭乗者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)のような画像投影装置が提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
特許文献1,2の画像投影装置は、画像表示部が画像を含んだ照射光を照射し、自由曲面ミラー等で照射光を反射させて、ウィンドシールド等の表示部を介して空間中に画像が結像するように搭乗者の視点の位置に到達させる。これにより、搭乗者は視点に入射した照射光によって、奥行き方向における結像位置に画像が表示されているように認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像投影装置では、画像表示部として液晶表示装置等を用いて投影画像を表示し、画像表示部における画像の表示領域(照射領域)に対して照明装置から照射光を照射して画像光を投影している。一般的に車載用の画像投影装置では、視界を妨げずに必要な情報を提示するために表示領域のサイズが限定されており、特に高さ方向のサイズを限定して横方向に長い表示領域を有している。したがって、画像投影装置の照明装置には、このような横長の表示領域の全域を均一に照射することが要求されている。
【0007】
しかし、照明装置からの照射光を横方向に均一化しようとすると、高さ方向にも光径が拡大してしまい、表示領域外に到達する光量が増加し、光源から出射された光の利用効率が低下するという問題があった。特に、照明装置の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の発光素子を複数配列する場合には、複数のLEDの間に対する光の均一な照射と、高さ方向における光の利用効率の向上を両立させることは困難であった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、限られた表示領域に対して均一に照射光を照射するとともに、照射光の利用効率を高めることが可能な光学部材、照明装置および画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の光学部材は、内面に反射面が形成され、前記反射面の一端に開口された光入射口と、前記反射面の他端に開口された光出射口と、を有する反射部と、前記反射部の前記光出射口に配置されたレンズ部とを備え、前記レンズ部は、中央に位置する中央領域と、前記中央領域の周囲に設けられた周縁領域とを備え、前記中央領域の光学的パワーが前記周縁領域よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
このような本発明の光学部材では、反射部の光出射口にレンズ部を配置し、レンズ部の中央領域が周縁領域よりも光学的パワーが大きいため、光源から中央領域および周縁領域に直接入射した光が照射する領域と、反射部で反射されて周縁領域に入射した光が照射する領域をそれぞれ設定することができる。これにより、限られた表示領域に対して均一に照射光を照射するとともに、照射光の利用効率を高めることが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記光出射口と前記中央領域との距離Dと、前記光出射口の幅Woutとは、D≦0.5Woutの関係を満たす。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記中央領域は、光入射面が前記反射部の方向に突出した凸レンズ形状を有している。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記光入射面の少なくとも一部が、前記光出射口よりも前記光入射口側に挿入されている。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記中央領域の幅Wcと、前記光出射口の幅Woutとは、0.3Wout≦Wc≦0.7Woutの関係を満たす。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記反射面は、横断面が多角形状である。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記反射部および前記レンズ部を複数備え、複数の前記反射部および前記レンズ部が一軸方向に連結して配列されている。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、上記何れか一つに記載の光学部材と、前記光入射口側に配置されて光を発光する発光素子とを備え、前記発光素子の幅Wdと、前記光入射口の幅Winとは、Wd<Winの関係を満たすことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、前記照明装置から前記光が照射されて画像を表示する画像表示部と、前記画像表示部からの前記光を投影する投影光学部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、限られた表示領域に対して均一に照射光を照射するとともに、照射光の利用効率を高めることが可能な光学部材、照明装置および画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る光学部材100の概要を示す模式断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る照明装置の概要を示す模式断面図であり、
図2(a)はレンズ部20を光出射口16の内部に挿入して配置した例を示し、
図2(b)はレンズ部20と光出射口16から離間して配置した例を示している。
【
図3】光学部材100での光の照射領域について説明する模式図であり、
図3(a)は周縁領域22を介した光路を模式的に示し、
図3(b)は中央領域21を介した光路を模式的に示し、
図3(c)は全体の光路を模式的に示している。
【
図4】比較例と実施例における光の照射領域を示す図であり、
図4(a)はレンズのみを用いた比較例1を示し、
図4(b)はTIRレンズのみを用いた比較例2を示し、
図4(c)は第1実施形態の光学部材100を用いた実施例を示している。
【
図5】第2実施形態の光学部材200の概要を示す模式断面図である。
【
図6】第3実施形態の光学部材100においてボディ部11を省略して反射面12とキャビティ15との形状のみを示した模式図であり、
図6(a)は側面図であり、
図6(b)は上面図であり、
図6(c)は光入射口17側からの斜視図であり、
図6(d)は光出射面24側からの斜視図である。
【
図7】第4実施形態の光学部材100においてボディ部11を省略して反射面12とキャビティ15との形状のみを示した模式図であり、
図7(a)は側面図であり、
図7(b)は光出射面24側からの斜視図であり、
図7(c)は光入射口17側からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る光学部材100の概要を示す模式断面図である。
図1に示すように光学部材100は、反射部10とレンズ部20を備えている。
【0022】
反射部10は、光源から照射された光を反射してレンズ部20の一部に到達させる部分である。
図1に示すように反射部10は、ボディ部11と、反射面12と、天面13と、底面14と、キャビティ15と、光出射口16と、光入射口17を備えている。反射部10の光出射口16側にはレンズ部20が配置されている。
【0023】
ボディ部11は、反射部10の外形を構成するとともに、内部にキャビティ15が形成されて内面に反射面12が形成された部分である。
図1では光学部材100の幅方向に沿った断面図を示しているが、紙面に垂直な方向にボディ部11が延伸して形成されており、複数のキャビティ15が紙面に垂直な方向に複数設けられている。また、
図1ではボディ部11として肉厚なブロック形状のものを示しているが、ボディ部11の形状や構造は限定されず、反射面12に沿った薄肉な構造であってもよい。また、ボディ部11を構成する材料は限定されず、透明または非透明な樹脂材料で構成するとしてもよく、セラミック材料や金属材料で構成するとしてもよい。
【0024】
反射面12は、ボディ部11の内面に形成されて、光入射口17から入射した光の一部を反射する曲面部分である。反射面12は、光の照射軸方向(図中左右方向)に沿った断面が放物面形状、楕円面形状または自由曲面形状とされている。反射面12は、光の照射方向を中心とした回転面として形成されていてもよく、紙面に対して奥行き方向および上下方向に曲面形状が延伸して形成されているとしてもよい。反射面12の内側にはキャビティ15が形成され、天面13側には光出射口16が設けられ、底面14側には光入射口17が設けられている。反射面12は、ボディ部11を構成する材料の内面に鏡面加工を施して光を反射する構成としてもよく、ボディ部11の内面に蒸着法やメッキ法を用いて反射率の高い金属膜等の反射膜を形成するとしてもよい。
【0025】
天面13は、ボディ部11の光出射側を構成する面である。底面14は、ボディ部11の光入射側を構成する面である。キャビティ15は、ボディ部11の内部に設けられた凹部であり、天面13側が光出射口16に連通し、底面側が光入射口17に連通している。光出射口16は、反射面12の光出射側に設けられた開口である。光入射口17は、反射面12の光入射側に設けられた開口である。
図1では図示を省略しているが、天面13にはレンズ部20を保持する保持部を設けるとしてもよい。また、底面14には後述する搭載基板40に搭載して固定するための固定部を設けるとしてもよい。
【0026】
レンズ部20は、反射部10の光出射口16に配置され、光源から照射された光と反射部10で反射された光が入射し、それぞれの光を屈折して透過する部分である。
図1に示すようにレンズ部20は、中央領域21と、周縁領域22と、光入射面21a,22aと、境界部23と、光出射面24とを備えている。レンズ部20を構成する材料は限定されず、可視光を良好に透過して屈折することができれば、公知の樹脂材料やガラス材料を用いることができる。
【0027】
中央領域21は、レンズ部20の中央に位置する領域であり、周縁領域22よりも光学的パワーが大きくなるように設定されている。中央領域21の反射部10側は光入射面21aであり、反射部10と反対側は光出射面24である。
図1では、中央領域21として光入射面21aが光出射口16方向に突出した凸レンズ形状を示したが、レンズ部20の中央に位置して光学的パワーが周縁領域22よりも大きい条件を満たせば、レンズの表面形状は限定されない。一例としては、光出射面24が光出射方向(図中右方向)に突出した凸レンズであってもよく、メニスカス形状のレンズであってもよい。
【0028】
周縁領域22は、中央領域21の周囲に設けられた領域であり、中央領域21よりも光学的パワーが小さくなるように設定されている。周縁領域22の反射部10側は光入射面22aであり、反射部10と反対側は光出射面24である。
図1では、周縁領域22として最外周が薄く、中央領域21に向かって厚くなり光出射口16方向に突出した凸レンズ形状を示したが、中央領域21よりも外周側に設けられて光学的パワーが中央領域21よりも小さい条件を満たせば、レンズの表面形状は限定されない。一例としては、光出射面24が最外周から中央領域21に向けて厚くなり光出射方向に突出した凸レンズであってもよく、メニスカス形状のレンズであってもよい。
【0029】
境界部23は、中央領域21と周縁領域22の境界を構成する部分である。
図1では、境界部23として中央領域21と周縁領域22の曲率が不連続に変化して、表面に屈曲した領域が構成される例を示しているが、中央領域21と周縁領域22の曲率が徐々に変化するとしてもよい。曲率が徐々に変化する場合には、中央領域21と周縁領域22の切り替わる境界が鮮明ではなく、両者の光学的パワーも徐々に変化する。この場合には、光学的パワーの変化における変曲点や、光学的パワーの最大値と最小値の中間を境界部23と見做すことができる。
【0030】
光出射面24は、レンズ部20の光出射側を構成する面である。
図1では光出射面24として、中央領域21および周縁領域22の光出射側を一枚の平面とした例を示しているが、光出射面24の表面形状は限定されない。一例としては、中央領域21および周縁領域22の光出射側が異なる角度で交差するとしてもよく、それぞれ別の曲面形状で構成されるとしてもよい。
【0031】
図2は、本実施形態に係る照明装置の概要を示す模式断面図であり、
図2(a)はレンズ部20を光出射口16の内部に挿入して配置した例を示し、
図2(b)はレンズ部20と光出射口16から離間して配置した例を示している。
図2に示すように、照明装置は、光学部材100を構成する反射部10およびレンズ部20と、発光素子30と、搭載基板40を備えている。また
図2に示した照明装置は、画像を表示する画像表示部と、画像表示部からの光を投影する投影光学部を備える画像投影装置に用いられる。
【0032】
画像投影装置では、照明装置から照射された光が画像表示部の表示領域に照射され、表示領域に表示された画像が投影光学部で投影される。画像投影装置は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)においては例えば車両のダッシュボードの中に格納されており、画像投影装置からの映像がウィンドシールド等を介して投影されることで虚像が結像される。画像投影装置から照射される光は、必要に応じて平面ミラーや自由曲面ミラー等の投影光学部で反射され、ウィンドシールドを介して運転者の目に導くことで視認される。
【0033】
発光素子30は、反射部10の光入射口17側に配置され、反射部10およびレンズ部20に対して光を照射する部材である。発光素子30は、一例としてはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の半導体発光素子であり、予め定められた方向(
図2の紙面に垂直な方向)に配列されている。発光素子30の発光色は特に限定されないが、本実施形態では一例として白色としている。なお、本実施形態では発光素子30の配列数を1列としているが、2列以上であってもよく、直線状の配列ではなく円弧や曲線を描くように配置して、反射部10のレンズ形状と配置をLEDの配列形状に対応させるとしてもよい。また発光素子30はLEDに限らず有機EL(Electro Luminescence)素子等であってもよい。
【0034】
搭載基板40は、発光素子30を搭載して発光素子30に対して電力を供給する部材である。
図2では図示を省略しているが、搭載基板40の表面又は内部には配線が形成されており、搭載基板40上には複数の電子部品や端子部が搭載されているとしてもよい。また、配線と電子部品で発光素子30の駆動回路を構成するとしてもよい。搭載基板40には外部から端子部を介して電力と制御信号が送られ、制御信号に基づいて発光素子30が発光される。
【0035】
発光素子30から照射された光のうち光出射方向に進行する光は、光入射口17からキャビティ15内に入り、キャビティ15内を進行して中央領域21の光入射面21aと周縁領域22の光入射面22aに入射する。また、発光素子30から照射された光のうち光出射方向に対して斜めに進行する光は、光入射口17からキャビティ15内に入り、反射部10の反射面12に到達して反射される。反射面12で反射された光はキャビティ15内を進行して周縁領域22の光入射面22aに入射する。光入射面21a,22aに入射した光は、それぞれ中央領域21および周縁領域22の光学的パワーを受けて屈折され、光出射面24から光照射方向に対して照射される。
【0036】
図2に示すように、発光素子30の発光面の幅W
dは、光入射口17の幅W
inよりも小さく、W
d<W
inの関係を満たしていることが好ましい。
図2では、発光素子30の上端面が反射部10の底面14の位置と同程度である例を示しているが、発光素子30を光入射口17からキャビティ15内に挿入して配置するとしてもよい。発光素子30と光入射口17の幅が、W
d<W
inの関係を満たすことで、発光素子30から照射される光を効率的にキャビティ15内に取り込むことができる。ここで、発光素子30の発光面の幅W
dとは、発光素子30がLEDチップである場合にはチップサイズに相当し、発光素子30がLEDパッケージの場合には、レンズ部や窓部等の光出射面における幅に相当する。
【0037】
また
図2に示すように、中央領域21の幅W
cは、光出射口16の幅W
outよりも小さく、W
c≦W
outの関係を満たしていることが好ましい。さらに、中央領域21の幅W
cと光出射口16の幅W
outの関係は0.3W
out≦W
c≦0.7W
outを満たしていることがより好ましい。W
cがこの範囲よりも小さいと、中央領域21で屈折される光量が低下し、照射領域内において中心近傍の光量を確保できず、均一な光照射が困難になる。また、W
cがこの範囲よりも大きいと、反射面12で反射されて周縁領域22で屈折される光量が低下し、照射領域内において外周近傍の光量を確保できず、均一な光照射が困難になる。
【0038】
図2(a)に示した例では、光入射面21aが反射部10の方向に突出した凸レンズ形状の中央領域21を有しており、光入射面21aの少なくとも一部が、キャビティ15内の光出射口16よりもキャビティ15内(光入射口17側)に挿入されている。換言すると、光出射口16の天面13位置を基準として光出射方向を正とし光入射方向を負としたとき、光入射面21aの最も突出した位置と天面13位置との距離Dは負の値となっている。光入射面21aがキャビティ15内に挿入されることで、中央領域21および周縁領域22を発光素子30に近づけて配置することができ、光の照射範囲をより限定しやすくなる。
【0039】
図2(b)に示した例では、光入射面21aが反射部10の方向に突出した凸レンズ形状の中央領域21を有しており、光入射面21aの先端と光出射口16が距離Dだけ離間して配置されている。換言すると、光入射面21aの最も突出した位置と天面13位置との距離Dは正の値となっている。光入射面21aと光出射口16が離間して配置されていることで、中央領域21の面積をより広く確保することができる。また、中央領域21の光入射面21aの先端と光出射口16との距離Dは、D≦0.5W
outの関係を満たしていることが好ましい。距離Dがこの範囲よりも大きいと、発光素子30からキャビティ15内を進行する光が拡がり過ぎて、限定された小さな範囲に均一に光を照射することが困難になる。
【0040】
図3は、光学部材100での光の照射領域について説明する模式図であり、
図3(a)は周縁領域22を介した光路を模式的に示し、
図3(b)は中央領域21を介した光路を模式的に示し、
図3(c)は全体の光路を模式的に示している。図中の点Lは、発光素子30の発光中心を示しており、発光素子30を点光源と見做した場合の光の照射位置を表している。現実の発光素子30は有限の面積の発光面を有しているが、
図3では説明を簡便にするために点光源の場合を用いて説明している。図中に示した矢印は光が進行する光路を示しているが、光路を模式的に示すために簡略化して描いており、矢印の密度が光量や輝度を正確に表現しているわけではない。また、レンズ部20での光の屈折も模式的に示したものであり、光の屈折を正確に示すものでもない。
【0041】
図3(a)に示すように、発光素子30から照射された光のうち、光出射方向(図中右方向)に対して所定の角度より大きく傾斜した方向に進行する光は、反射面12に入射して反射される。反射面12で反射された光は、キャビティ15内を進行して周縁領域22に入射する。周縁領域22に入射する光は反射面12で反射されたものであり、光入射面22aに到達する際の入射角度は、反射面12の形状と位置に応じて異なっている。周縁領域22は、中央領域21よりも光学的パワーが小さいが、正の光学的パワーを有しているため、照射領域の中央に向けて僅かに集光される。
【0042】
図3(b)に示すように、発光素子30から照射された光のうち、光出射方向に対して所定の角度より小さく傾斜した方向に進行する光は、キャビティ15内を進行して中央領域21の光入射面21aおよび周縁領域22の光入射面22aに直接入射する。発光素子30から光入射面21a,22aに直接入射する光は、点Lから放射状に拡がっている。ここで、周縁領域22の光学的パワーは中央領域21よりも小さいため、光入射面22aに入射した光は僅かに集光される。また、光入射面21aに入射した光は、周縁領域22よりも大きな光学的パワーで集光されるが、光入射面21aに到達する際の入射角度が小さいため、僅かに集光される。
【0043】
図3(c)に示すように、反射面12で反射されて光入射面22aに入射する光と、光入射面21a,22aに直接入射する光は、重ね合わせて照射される。上述したように、光入射面21aに入射した光は、比較的に大きな光学的パワーで屈折されて集光され、光入射面22aに入射した光は、比較的に小さな光学的パワーで屈折されて集光される。発光素子30から照射される光は、一般的にガウス分布に近い配光分布を有しているため、中央領域21と周縁領域22の光学的パワーの関係を適切に設定することで、照射領域の中心と外周に均一に光を照射することができる。
【0044】
図3では、反射面12で反射された光が、異なる角度で光入射面22aに入射した例を示し、周縁領域22で屈折された光が交差する例を示した。しかし、反射面12を放物面形状とした場合には、点光源Lが放物面の焦点位置となるように配置することで、反射面12で反射された光を略平行光として光入射面22aに入射させることができる。これにより、周縁領域22で屈折された光を適切な密度で照射領域に照射することが容易になる。また、反射面12を自由曲面ミラーで構成した場合には、発光素子30からの出射口を点光源Lではなく有限の面積を有する発光面として、適切な配光分布となるように反射面12の形状を設定することができる。
【0045】
図4は、比較例と実施例における光の照射領域を示す図であり、
図4(a)はレンズのみを用いた比較例1を示し、
図4(b)はTIRレンズのみを用いた比較例2を示し、
図4(c)は第1実施形態の光学部材100を用いた実施例を示している。図中において左側に示した模式図は、それぞれのレンズ形状を示しており、右側に示した写真は画像投影装置の画像表示部に照射される光束を示している。右側に示した写真中に黒い実線で囲んだ領域が、画像を表示して光を照射する照射領域(表示領域)に相当している。以下では、TIRレンズを用いた比較例2の画像表示部全体と照射領域の光束を基準(100%)として、相対的な光束について説明する。
【0046】
図4(a)に示した凸レンズのみを用いた比較例1では、画像表示部全体の光束が43.7%であり、照射領域の光束が86.9%であった。比較例1では、凸レンズで光を集光するため、照射領域に光束を集中できるが、発光素子30から外側方向に照射される光を有効に利用できない。そのため、画像投影装置で投影される虚像の輝度と視認性を向上させることが困難である。
【0047】
図4(b)に示したTIRレンズを用いた比較例2では、画像表示部全体にわたって均一に光を照射できているが、照射領域を外れた領域にも光が多く照射されている。これは、TIRレンズの反射面が屈折率差による全反射を利用しており、反射面の傾斜角度と大きさに物理的な限界が存在するためである。したがって、TIRレンズを用いた比較例2では、狭い範囲である照射領域に対して光束を集中させて、虚像の輝度と視認性を向上させることが困難である。
【0048】
図4(c)に示した第1実施形態の光学部材100を用いた実施例では、画像表示部全体の光束が97.5%であり、照射領域の光束が169%であった。したがって、実施例1では、比較例2よりも狭い範囲である照射領域に対して光束を集中させて、虚像の輝度と視認性を向上させることができる。また、
図4(c)の右側に示した写真から、限られた照射領域(表示領域)に対して均一に照射光を照射でき、照射光の利用効率を高めることが可能であることがわかる。
【0049】
上述したように本実施形態の光学部材100、照明装置および画像投影装置では、反射部10の光出射口16にレンズ部20を配置し、レンズ部20の中央領域21が周縁領域22よりも光学的パワーが大きいため、発光素子30から中央領域21および周縁領域22に直接入射した光が照射する領域と、反射部10で反射されて周縁領域22に入射した光が照射する領域をそれぞれ設定することができる。これにより、限られた表示領域に対して均一に照射光を照射するとともに、照射光の利用効率を高めることが可能となる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態の光学部材200の概要を示す模式断面図である。光学部材200は、反射部10とレンズ部20を複数備えており、反射部10およびレンズ部20が一軸方向(図中左右方向)に連結して一体に形成されて配列されている。また、反射部10の両端には、天面13上にレンズ保持部25が立設されており、レンズ部20の両端で周縁領域22がレンズ保持部25で保持されている。また、光学部材200では、レンズ部20の隣接する周縁領域22が一体に形成され、光出射面24が全体で一つの平面を構成している。
【0051】
本実施形態においても、光学部材100、照明装置および画像投影装置では、反射部10の光出射口16にレンズ部20を配置し、レンズ部20の中央領域21が周縁領域22よりも光学的パワーが大きいため、発光素子30から中央領域21および周縁領域22に直接入射した光が照射する領域と、反射部10で反射されて周縁領域22に入射した光が照射する領域をそれぞれ設定することができる。これにより、限られた表示領域に対して均一に照射光を照射するとともに、照射光の利用効率を高めることが可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図6は、本実施形態の光学部材100においてボディ部11を省略して反射面12とキャビティ15との形状のみを示した模式図であり、
図6(a)は側面図であり、
図6(b)は上面図であり、
図6(c)は光入射口17側からの斜視図であり、
図6(d)は光出射面24側からの斜視図である。
【0053】
図6(a)~
図6(d)に示したように、本実施形態では反射部10の反射面12を4つの曲面で構成しており、光出射方向に垂直な横断面において反射面12が正方形とされている。反射面12の横断面が正方形であることで、光出射口16の面積を大きくするとともに、複数の光学部材100を配列する際の密度を向上させて、光出射口16の開口率を高めて光の利用効率を高めることができる。
図6では、反射面12の横断面が正方形の例を示しているが、反射面12の横断面は三角形や6角形等の多角形状であれば、複数の光学部材100を配列する際の密度を向上させることができる。
【0054】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図7は、本実施形態の光学部材100においてボディ部11を省略して反射面12とキャビティ15との形状のみを示した模式図であり、
図7(a)は側面図であり、
図7(b)は光出射面24側からの斜視図であり、
図7(c)は光入射口17側からの斜視図である。
【0055】
図7(a)~
図7(c)に示したように、本実施形態では反射部10の反射面12を光出射方向を中心軸とした回転曲面で構成しており、光出射方向に垂直な横断面において反射面12が円形とされている。反射面12の横断面が円形であることで、発光素子30から照射される光を中心軸周りに均一に照射することができる。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
100,200…光学部材
10…反射部
20…レンズ部
30…発光素子
40…搭載基板
11…ボディ部
12…反射面
13…天面
14…底面
15…キャビティ
16…光出射口
17…光入射口
21…中央領域
21a,22a…光入射面
22…周縁領域
23…境界部
24…光出射面
25…レンズ保持部