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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085863
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】車体フレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200647
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】小嶌 良
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB20
3D203BB22
3D203CA66
(57)【要約】
【課題】室内空間を確保しつつ、トランスミッション支持部の剛性を向上させる。
【解決手段】トンネルサイドフレーム200を含む車体フレーム構造Fにおいて、フロアトンネル部FTの車両前方端部に配設され、車両底部から車幅方向内側上方に向かう傾斜部SL1と、傾斜部SL1の車両上方部から車幅方向外側上方に向かう傾斜部SL2と、傾斜部SL2の車両上方部から車幅方向内側上方に向かう傾斜部SL3を成す車幅方向断面形状を有するクロスメンバフロアフロント230と、トランスミッション部30を載置固定するトランスミッションクロスメンバ240と、を備え、トランスミッションクロスメンバ240は、傾斜部SL1の車両上方側においてクロスメンバフロアフロント230と固定されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両底部に、U字形状を成し、トランスミッション部の車両後方部およびプロペラシャフト部を収容し、車幅方向中央部の前後方向に延設するフロアトンネル部を含む車体フレーム構造において、
前記フロアトンネル部の車両前方端部に配設され、車両底部から車幅方向内側上方に向かう第1の傾斜部を成すとともに、前記第1の傾斜部の車両上方部から車幅方向外側上方に向かう第2の傾斜部を成し、さらに前記第2の傾斜部の車両上方部から車幅方向内側上方に向かう第3の傾斜部を成す車幅方向断面形状を有するクロスメンバフロアフロントと、
前記トランスミッション部の車両後方部が載置固定され、前記クロスメンバフロアフロントの前記第1の傾斜部に固定されるトランスミッションクロスメンバと、
を備え、
前記クロスメンバフロアフロントは、前記第2の傾斜部の車両上方側において車両上下方向に分割された部材を結合して形成され、
前記トランスミッションクロスメンバは、前記第1の傾斜部の車両上方側において前記クロスメンバフロアフロントと固定されていることを特徴とする車体フレーム構造。
【請求項2】
前記トランスミッションクロスメンバを前記クロスメンバフロアフロントに固定する締結部材は、前記第3の傾斜部が前記クロスメンバフロアフロントの車両前後方向外側に形成する平面を車両下方外側に延長した平面の車幅方向内側に収納されることを特徴とする請求項1に記載の車体フレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両下方車幅方向中央部には、トランスミッションおよび車両の前後方向に延在するプロペラシャフト等が搭載されている。トランスミッションは、車幅方向外側に設けられたサイドフレーム間に架設されたトンネルクロスメンバおよびトランスミッションの車両後方部を固定するトランスミッションクロスメンバ等の支持部によって支持されている。
【0003】
トンネルクロスメンバ等のトランスミッションの支持部には、車両走行に伴うサスペンションからの捩れ方向および上下方向の荷重が伝達される。また、トランスミッションの後部からは、トランスミッションクロスメンバの中央部には、上下方向の荷重が入力される。そして、車両操縦の安定性、騒音、乗心地等を向上させるために、トランスミッションの固定部においては、大きな応力に耐えられる剛性が求められている。
【0004】
一方、フロア下方のトランスミッション後方側にバッテリユニットが取り付けられる電気自動車等においては、モータ搭載等による重量増加に対応するとともに、バッテリユニットを保護するために、トランスミッションやバッテリユニットの支持部を強固なものにすることが求められている。
【0005】
これらの要求に伴って、トランスミッションの車両後方部は、トランスミッションクロスメンバの上に支持され、トランスミッションクロスメンバは、左右のフロントサイドフレームに架け渡されたトンネルクロスメンバ(クロスメンバフロアフロント部)の開放された下方を橋渡しするように固定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6546487号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、トランスミッションの車両後方部は、クロスメンバフロアフロント部の下方に取り付けられたトランスミッションクロスメンバのみで支えている。また、トランスミッションクロスメンバにおいては、トランスミッションの固定部と、クロスメンバフロアフロント部との固定部との距離が離れている。
そのため、クロスメンバフロアフロント部およびトランスミッションクロスメンバに局所的な変形(ひずみ)が発生し、車両の操縦が不安定となり、振動、伝達音等が大きくなる虞があるという課題があった。
また、クロスメンバフロアフロント部との固定部が、略水平面に配設されるため、例えば、締結ボルト等の締結部材が室内側に突出し、室内空間を狭くする虞があるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、室内空間を確保しつつ、トランスミッション支持部の剛性を向上させる車体フレーム構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両底部において、U字形状を成しトランスミッションの車両後方部およびプロペラシャフトを収容し、車幅方向中央部の前後方向に延設するフロアトンネル部を含む車体フレーム構造において、前記フロアトンネル部の車両前方端部に配設され、車両底部から車幅方向内側上方に向かう第1の傾斜部を成し、前記第1の傾斜部の車両上方部から車幅方向外側上方に向かう第2の傾斜部を成し、さらに前記第2の傾斜部の車両上方部から車幅方向内側上方に向かう第3の傾斜部を成す車幅方向断面形状を有するクロスメンバフロアフロントと、前記トランスミッションの車両後方部が載置固定され、前記クロスメンバフロアフロント部の前記第1の傾斜部に固定されるトランスミッションクロスメンバと、を備え、前記クロスメンバフロアフロントは、前記第2の傾斜部の車両上方側において車両上下方向に分割された部材を結合して形成され、前記トランスミッションクロスメンバは、前記第1の傾斜部の車両上方側において前記クロスメンバフロアフロントと固定されている車体フレーム構造を提案している。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記トランスミッションクロスメンバを前記クロスメンバフロアフロントに固定する締結部材は、前記第3の傾斜部が前記クロスメンバフロアフロントの車両前後方向外側に形成する平面を車両下方外側に延長した平面の車幅方向内側に収納される車体フレーム構造を提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、室内空間を確保しつつ、トランスミッション支持部の剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車両を車両下面側から見た構成図である。
図2図1に示す車体フレーム構造を車両下面側から見た構成図である。
図3図2からトランスミッション、プロペラシャフトおよびフロアパネルをはずした状態でフロアトンネル部FTを拡大した下面側から見た斜視図である。
図4図3の矢印A方向から見たA―A線に沿う断面図である。
図5図4にトランスミッションクロスメンバ部にかかる応力を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図5を用いて、本実施形態に係る車体フレーム構造Fが適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、図1に示す車両Vの前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0014】
<実施形態>
図1図4を用いて、車両Vに備えられた本実施形態に係る車体フレーム構造Fの構成について説明する。
【0015】
<車両Vの構成>
車両Vは、例えば、パワーユニット部20に内燃機関あるいは電気モータを駆動源とした自動車である。なお、車両Vは、例えば、エンジンと電気モータとの複数の駆動源を有するハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0016】
図1に示すように、車両Vは、前輪10と、パワーユニット部20と、トランスミッション部30と、プロペラシャフト部40と、フロアパネル部50(図1の斜線部)と、車体フレーム構造F(図1のハッチング部)と、を含んで構成されている。
【0017】
パワーユニット部20は、前輪10を駆動する図示しない内燃機関あるいはモータ、変速機、クラッチ、駆動軸等で構成された駆動装置である。パワーユニット部20は、例えば、車両前方部に配置され、車体フレーム構造Fによって支持されている。
【0018】
トランスミッション部30は、例えば、車両前方下端部に配置され、車体フレーム構造Fによって支持されている変速機である。トランスミッション部30は、車両前方側がパワーユニット部20に結合され、車両後方側には、後述するプロペラシャフト部40が接続されている。
【0019】
プロペラシャフト部40は、トランスミッション部30の後端部から車両前後方向に延在し、パワーユニット部20から伝達される駆動力を、トランスミッション部30を介して後輪側に伝達する。プロペラシャフト部40は、車両前方側がトランスミッション部30に接続され、車両後方側には、図示しない後輪用ディファレンシャルギアに接続されている。
【0020】
フロアパネル部50は、車両下方部に設けられ、乗員等が収容される図示しないキャビンと車体フレーム構造Fを含む車両外部とを隔てる鋼板等で形成された床材であり、車両前後方向および車幅方向に延在している。フロアパネル部50は、車体フレーム構造Fの直上に設けられており、車体フレーム構造Fを構成している部材等と干渉しないように、構成部材を避けた形状となっている。例えば、車体フレーム構造Fを固定するボルト等がフロアパネル部50に向かって突出している場合には、フロアパネル部50は、その締結部材としてのボルトBTの上部においては、車両室内側に凸部を設けた形状となる。また、例えば、後述するフロアトンネル部FTの上部において、フロアパネル部50には、車両室内側に車両前後に延在する凸部が形成される。
【0021】
<車体フレーム構造Fの構成>
図2に示すように、車体フレーム構造Fは、バンパビーム100と、フロントサイドフレーム110と、クロスメンバ120と、トルクボックス130と、サイドシル140と、トランスミッション支持部としてのフロアトンネル部FTと、を含んで構成されている。
【0022】
バンパビーム100は、車両前方側車幅方向に延在し、車両前方側における骨格を構成している。バンパビーム100は、金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。バンパビーム100は、車幅方向両側のフロントサイドフレーム110における車両前方側先端部に溶接等により結合されている。
【0023】
フロントサイドフレーム110は、車両前部の車幅方向両側に一対となって設けられ、車両Vの前輪を駆動するパワーユニット部20の車幅方向外側に位置し、車両前後方向に延在している。フロントサイドフレーム110は、車両Vの骨格を構成し、高剛性を有する金属等により形成され略矩形閉断面形状を成している。フロントサイドフレーム110の車両前方部側には、前輪10を支持する図示しないフロントサスペンション、パワーユニット部20を支持するエンジンマウント部等が接合される。車幅方向両側のフロントサイドフレーム110の間には、パワーユニット部20が支持されている。また、フロントサイドフレーム110は、パワーユニット部20の後部に一体的に連結されたトランスミッション部30の車両前方側を、パワーユニット部20とともに支持している。
【0024】
クロスメンバ120は、パワーユニット部20の車両後方側において車幅方向に延在し、その両端部は、車幅方向両側のフロントサイドフレーム110と溶接等により結合されている。クロスメンバ120は、金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。
【0025】
トルクボックス130は、車両Vの底面に車幅方向に延在された骨格であり、パワーユニット部20の車両後方側において車幅方向に延在している。トルクボックス130の車幅方向両側は、フロントサイドフレーム110に溶接等により結合されている。トルクボックス130は、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。
【0026】
サイドシル140は、車両車幅方向両側の側方底面に設けられている。サイドシル140は、フロントサイドフレーム110の車幅方向外側に溶接等により結合されている。サイドシル140は、車両前後方向に延在された骨格であり、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。
【0027】
<フロアトンネル部FTの構成>
トランスミッション支持部としてのフロアトンネル部FTは、車両底部において、車両上方側の車室内側に張り出し車両下方側が開放された略U字形状を成し、トランスミッション部30の車両後方部およびプロペラシャフト部40等を収容し、車幅方向中央部の車両前後方向に延設されている。また、トランスミッション部30の車両後方部は、フロアトンネル部FTの車両前方側において、フロアトンネル部FTに固定されている。また、フロアトンネル部FTの車幅方向外側および車両上方側には、図示しないキャビンが配設されている。
フロアトンネル部FTは、図3に示すように、トンネルサイドフレーム200と、トンネルフロア210と、トンネルクロスメンバ220と、クロスメンバフロアフロント230と、トランスミッションクロスメンバ240と、を含んで構成されている。
【0028】
(トンネルサイドフレーム200について)
トンネルサイドフレーム200は、フロアトンネル部FTの車幅方向両側に沿って車両前後方向に延在された骨格であり、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。トンネルサイドフレーム200の車両前方端部は、フロントサイドフレーム110およびトルクボックス130と溶接等により結合され、その車両後方端部は、図示しないリアクロスメンバと結合されている。また、トンネルサイドフレーム200には、フロアトンネル部FTの骨格を形成するトンネルクロスメンバ220およびクロスメンバフロアフロント230が溶接等により結合されている。
【0029】
(トンネルフロア210について)
トンネルフロア210は、フロアトンネル部FTの略U字形状を形成する鋼板等の平板である。トンネルフロア210は、フロアパネル部50の車両下方部に設けられ、フロアトンネル部FTの壁を形成している。具体的には、トンネルフロア210は、フロアトンネル部FTの骨格を形成しているトンネルサイドフレーム200と、トンネルクロスメンバ220と、クロスメンバフロアフロント230と、トランスミッションクロスメンバ240と、の隙間を覆うように配設され、それぞれの部材に溶接等により結合されている。
【0030】
(トンネルクロスメンバ220について)
トンネルクロスメンバ220は、フロアトンネル部FTを車幅方向に略U字形状を形成しながら延在し、その車幅方向両端部が車幅方向両側のトンネルサイドフレーム200に溶接等により結合されている。トンネルクロスメンバ220は、フロアトンネル部FTの車幅方向延在された骨格であり、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。
【0031】
(クロスメンバフロアフロント230について)
クロスメンバフロアフロント230は、トランスミッション部30の取付け部において剛性を保つ部材であり、車幅方向に略U字形状を形成しながら延在し、その車幅方向両端部が車幅方向両側のトンネルサイドフレーム200に溶接等により結合されている。
クロスメンバフロアフロント230は、図4に示すように、フロアトンネル部FTの車両前方端側に配設され、車両底部から車幅方向内側上方に向かう第1の傾斜部としての傾斜部SL1を成し、傾斜部SL1の車両上方部から車幅方向外側上方に向かう第2の傾斜部としての傾斜部SL2を成し、さらに傾斜部SL2の上方部から車幅方向内側上方に向かう第3の傾斜部としての傾斜部SL3を成す車幅方向断面形状を有している。
傾斜部SL1は、クロスメンバフロアフロント230aとトンネルサイドフレーム200との結合部から車両上方側に向けて車幅方向内側に傾く傾斜を成している。傾斜部SL1の車両上方側には、トランスミッションクロスメンバ240を締結部材としてのボルトBTにより固定する固定点BT2が設けられている。
傾斜部SL2は、傾斜部SL1の車両上方側から傾斜部SL3の車両下方側に向けて車幅方向外側に傾く傾斜を成している。
傾斜部SL3は、車両下方側から車両上方側に向けて車幅方向内側に傾く傾斜を成している。
そして、傾斜部SL1と傾斜部SL2と傾斜部SL3とは、車幅方向内側への傾斜と車幅方向外側への傾斜とが連続して成るインバース形状を成している。したがって、傾斜部SL1と傾斜部SL2とフロアパネル部50と、の間には空間VSが形成されている。
また、クロスメンバフロアフロント230は、傾斜部SL2の車両上方側において車両上下方向に分割された部材を結合して形成されている。具体的には、クロスメンバフロアフロント230は、車幅方向両側に配設され、傾斜部SL1および傾斜部SL2を有するクロスメンバフロアフロント230aと、クロスメンバフロアフロント230aの車両上方側に配設され、傾斜部SL3を有するクロスメンバフロアフロント230bと、が溶接等により結合されて形成されている。クロスメンバフロアフロント230bは、傾斜部SL3の傾斜によって、車幅方向両側において車両上方側の車幅方向の幅よりも車両下方側の車幅方向の幅が広い八の字状となっている。
【0032】
(トランスミッションクロスメンバ240について)
トランスミッションクロスメンバ240には、トランスミッション部30の車両後方部が載置固定され、クロスメンバフロアフロント230の傾斜部SL1において、クロスメンバフロアフロント230に固定されている。具体的には、トランスミッションクロスメンバ240は、車幅方向両側のトンネルサイドフレーム200に架け渡され、トンネルクロスメンバ220の開放された車両下方側を橋渡しするように取り付けられている。そして、トランスミッションクロスメンバ240の車両上方側中央部に、トランスミッション部30の車両後方部が載置され、トランスミッション部30は、トランスミッションクロスメンバ240に設けられた固定点BT1にボルトBTにより固定されている。
トランスミッションクロスメンバ240は、平面視で車幅方向に延在された略長方形の鋼鉄等をプレス加工等により形成されている。トランスミッションクロスメンバ240には、曲げ加工および絞り加工等が施されることにより強度が確保されている。
トランスミッションクロスメンバ240の車幅方向両端部の車両上方面側には、トンネルサイドフレーム200の車両下方面側に面する平面部BS1が形成されている。また、トランスミッションクロスメンバ240は、平面部BS1の車幅方向内側から車両内側上方に向かう、傾斜部SL1に当接する傾斜部SL4を有している。そして、トンネルサイドフレーム200の中央部には、トランスミッション部30の後部を載置させる凸部の車両上方側に平面部BS2が形成されている。
トランスミッションクロスメンバ240は、平面部BS1に設けられた固定点BT3において、トンネルサイドフレーム200とボルトBTにより固定されている。また、トランスミッションクロスメンバ240は、傾斜部SL4の車両上方側に設けられた固定点BT2において、クロスメンバフロアフロント230と締結部材としてのボルトBTにより固定されている。
【0033】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車体フレーム構造Fは、乗員等が収容されるキャビンへの室内空間を確保するとともに、車両Vの走行時には路面やエンジンから伝導される振動や、トランスミッション支持部であるフロアトンネル部FTに発生するねじり、曲げ、歪等を吸収する必要がある。
以下、図4を用いて、フロアトンネル部FTとキャビンの室内空間について説明する。
【0034】
フロアトンネル部FTの車幅方向外側および車両上方側には、図示しないキャビンが配設されている。フロアトンネル部FTとキャビンの間には、車体フレーム構造Fとキャビンを隔てるフロアパネル部50が設けられている。フロアパネル部50は、車体フレーム構造Fの直上を覆うように設けられているため、車体フレーム構造Fを構成している構成部材と干渉しないように、キャビン側に突出した構成部材を避けた形状をしている。
【0035】
フロアトンネル部FTを構成するクロスメンバフロアフロント230およびトランスミッションクロスメンバ240は、剛性を確保するために固定点BT2において強固に固定されている。具体的には、固定点BT2におけるボルトBTは、クロスメンバフロアフロント230を貫通し、車両上方側に配設されているキャビン側に突出して配設されている。
一方、クロスメンバフロアフロント230は、傾斜部SL1と傾斜部SL2と傾斜部SL3とを成す車幅方向断面形状を成しており、傾斜部SL2の車両上方側において車両上下方向に分割された部材を結合することによって、突出物のない形状を成している。また、傾斜部SL1と傾斜部SL2と傾斜部SL3とは、車幅方向の傾斜方向が異なるために、傾斜部SL1と傾斜部SL2とフロアパネル部50との間に空間VSが形成されている。固定点BT2は、傾斜部SL1の車両上方側に設けられていることにより、キャビン側に突出しているボルトBTは、空間VSに収納されている。換言すると、ボルトBTは、傾斜部SL3がクロスメンバフロアフロント230の車幅方向外側に形成する面を車両下方側に延長した平面FSから突出しないで空間VSに収納されている。したがって、締結部材としてのボルトBTがフロアパネル部50の形状に影響を与えないことによって、キャビンの室内空間は確保される。
【0036】
次に、図5を用いて、フロアトンネル部FTに振動が伝達された場合について説明する。
【0037】
車両Vが走行している場合には、車両上下方向の振動(図5の矢印A1)、車幅方向の振動(図5の矢印A2、A3)および、車両前後方向の振動(図示しない矢印A4)がランダムに発生する。一方で、トランスミッション部30の車両後方部を固定しているトランスミッションクロスメンバ240には、トンネルサイドフレーム200から伝達される振動と、トランスミッション部30から伝達される振動と、が伝達される。換言すると、トランスミッションクロスメンバ240には、固定点BT3に固定されているトンネルサイドフレーム200からの振動と、固定点BT1において固定されているトランスミッション部30からの振動と、が伝達される。
【0038】
トンネルサイドフレーム200から伝達される振動は、トランスミッションクロスメンバ240が固定されている固定点BT3が配設されている平面部BS1から伝導される。
トンネルサイドフレーム200は、車両前方端部が、フロントサイドフレーム110およびトルクボックス130と溶接等により結合され、その車両後方端部は、図示しないリアクロスメンバと結合されており、車体フレーム構造Fの中心となる骨格に直接結合されている。一方で、フロアトンネル部FTは、トンネルサイドフレーム200に、車幅方向に延在するトンネルクロスメンバ220と、クロスメンバフロアフロント230と、トランスミッションクロスメンバ240と、が結合され強固な骨格を形成している。また、トンネルフロア210が、骨格の隙間を覆うように配設され、それぞれの部材に溶接等により結合されている。そのため、トンネルサイドフレーム200との接触面である平面部BS1からトランスミッションクロスメンバ240に伝導される振動は、車体フレーム構造Fにおいて分散された振動であって、フロアトンネル部FTには大きな影響は与えない。また、平面部BS1からトランスミッションクロスメンバ240に伝導される振動は、フロアトンネル部FTを構成する強固な骨格によって分散され吸収される。
【0039】
トランスミッション部30から伝達される振動は、トランスミッションクロスメンバ240の平面部BS2から伝達される。
トランスミッション部30は、車体フレーム構造Fによって支持されている変速機であり高重量の装置である。また、トランスミッション部30の車両前方側には、パワーユニット部20が結合され、その車両後方側には、プロペラシャフト部40が接続されている。そのため、トランスミッション部30の車両後方部が固定されるトランスミッションクロスメンバ240には、固定点BT1を介して、トランスミッションクロスメンバ240の平面部BS1から、ねじり、曲げ、歪等を含む振動が伝達される。
トランスミッションクロスメンバ240の平面部BS1は、トランスミッション部30から伝達された振動によって、固定点BT2および固定点BT3を支点として振動する。
【0040】
また、平面部BS1が固定点BT2を支点として振動した場合には、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とには、矢印B1およびB2に示されるように、相互を開閉するような振動が印加される。
ここで、固定点BT2は、傾斜部SL1の車両上方部に配設されているため、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とは、傾斜部SL1においては相互に密接した状態が保たれる。また、固定点BT1と固定点BT2との間隔L1は、固定点BT2が傾斜部SL1の車両下方部に設けられた場合と比較し、狭くなるように構成されている。そのため、矢印B1およびB2に示されるクロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とを開閉する動きは、固定点BT2が傾斜部SL1の車両上方部に配設されていることによって小さくなる。また、トランスミッションクロスメンバ240に発生する局所的な応力は小さくなることにより、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とに分散される。一方で、フロアトンネル部FTは、車幅方向に延在するトンネルクロスメンバ220と、クロスメンバフロアフロント230と、トランスミッションクロスメンバ240と、がトンネルサイドフレーム200に結合され、強固な骨格を形成している。また、トンネルフロア210が、フロアトンネル部FTの骨格の隙間を覆うように配設され、それぞれの部材に溶接等により結合されている。そのため、平面部BS1からトランスミッションクロスメンバ240に伝導される振動は、フロアトンネル部FTを構成する強固な骨格によって分散され吸収される。
【0041】
また、平面部BS1が固定点BT3を支点に振動した場合には、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とに矢印B3およびB4に示される方向の振動が印加される。
クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とは、傾斜部SL1と傾斜部SL4とが当接し、固定点BT2および固定点BT3にて相互に強固に固定されている。また、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とは、固定点BT3にてトンネルサイドフレーム200に強固に固定されている。そのため、固定点BT3を支点とする振動は、フロアトンネル部FTに分散されるとともに、トンネルサイドフレーム200を介して、フロントサイドフレーム110、トルクボックス130と、サイドシル140等の強固な骨格に分散され吸収される。
【0042】
以上、本実施形態に係る車体フレーム構造Fは、車両底部に、U字形状を成しトランスミッション部30の後部およびプロペラシャフト部40を収容し、車幅方向中央部の前後方向に延設するフロアトンネル部FTの車幅方向両側に沿って車両前後方向に延在されたトンネルサイドフレーム200を含む車体フレーム構造Fにおいて、フロアトンネル部FTの車両前方端部に配設され、車両底部から車幅方向内側上方に向かう第1の傾斜部としての傾斜部SL1を成すとともに、傾斜部SL1の車両上方部から車幅方向外側上方に向かう第2の傾斜部としての傾斜部SL2を成し、さらに傾斜部SL2の車両上方部から車幅方向内側上方に向かう第3の傾斜部としての傾斜部SL3を成す車幅方向断面形状を有するクロスメンバフロアフロント230と、トランスミッション部30の車両後方部が載置固定され、クロスメンバフロアフロント230の傾斜部SL1に固定されるトランスミッションクロスメンバ240と、を備え、クロスメンバフロアフロント230は、傾斜部SL2の車両上方側において車両上下方向に分割された部材を結合して形成され、トランスミッションクロスメンバ240は、傾斜部SL1の車両上方側においてクロスメンバフロアフロント230と固定されている。
クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とが固定される固定点BT2を支点として、トランスミッションクロスメンバ240における平面部BS1が振動した場合には、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とには、相互を開閉するような振動が印加される。そして、固定点BT2が、傾斜部SL1の車両上方部に配設されているため、固定点BT1と固定点BT2との間隔L1は狭く構成されている。そのため、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とを開閉する動きが小さくなり、トランスミッションクロスメンバ240に発生する局所的な応力は小さくなることにより、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とに分散される。
つまり、トランスミッションクロスメンバ240は、傾斜部SL1の車両上方側においてクロスメンバフロアフロント230と固定されているため、トランスミッションクロスメンバ240に発生する局所的な応力は、クロスメンバフロアフロント230とトランスミッションクロスメンバ240とに分散させることができる。また、クロスメンバフロアフロント230は、傾斜部SL1と傾斜部SL2と傾斜部SL3とを成す車幅方向断面形状を成し、傾斜部SL2の車両上方側において車両上下方向に分割された部材を結合し、車室内側への突出物のない形状を成すことによって、車室内空間を確保することができる。
そのため、室内空間を確保しつつ、トランスミッション支持部の剛性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る車体フレーム構造Fは、トランスミッションクロスメンバ240をクロスメンバフロアフロント230に固定する締結部材としてのボルトBTは、第3の傾斜部としての傾斜部SL3がクロスメンバフロアフロント230の車両前後方向外側に形成する平面を車両下方外側に延長した平面の車幅方向内側に収納される。
つまり、クロスメンバフロアフロント230が、傾斜部SL1と傾斜部SL2と傾斜部SL3とを成す車幅方向断面形状を成していることによって、固定点BT2におけるボルトBTは、クロスメンバフロアフロント230とフロアパネル部50との間に形成される空間VSから突出することなく収めることができる。換言すると、ボルトBTは、傾斜部SL1と傾斜部SL2とフロアパネル部50とが形成する空間VSに収納される。そして、トランスミッションクロスメンバ240は、クロスメンバフロアフロント230の傾斜部SL1の車両上方部において固定点BT2に強固に固定されることによって、高い剛性を確保することができる。
そのため、室内空間を確保しつつ、トランスミッション支持部の剛性を向上させることができる。
【0044】
なお、本発明の実施形態として、トランスミッションクロスメンバ240は、鋼板等による板材をプレス加工された例を示したが、アルミダイキャスト等の鋳造部材を用いて構成させてもよい。
【0045】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10;前輪
20;パワーユニット部
30;トランスミッション部
40;プロペラシャフト部
50;フロアパネル部
100;バンパビーム
110;フロントサイドフレーム
120;クロスメンバ
130;トルクボックス
140;サイドシル
200;トンネルサイドフレーム
210;トンネルフロア
220;トンネルクロスメンバ
230;クロスメンバフロアフロント
240;トランスミッションクロスメンバ
BS1;平面部
BS2;平面部
BT;ボルト
BT1;固定点
BT2;固定点
BT3;固定点
F;車体フレーム構造
FT;フロアトンネル部
SL1;傾斜部
SL2;傾斜部
SL3;傾斜部
SL4;傾斜部
V;車両
VS;空間
図1
図2
図3
図4
図5