IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JSVの特許一覧

<>
  • 特開-トレーラー 図1
  • 特開-トレーラー 図2
  • 特開-トレーラー 図3
  • 特開-トレーラー 図4
  • 特開-トレーラー 図5
  • 特開-トレーラー 図6
  • 特開-トレーラー 図7
  • 特開-トレーラー 図8
  • 特開-トレーラー 図9
  • 特開-トレーラー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085865
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】トレーラー
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/40 20060101AFI20240620BHJP
   B62D 53/06 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60P3/40 Z
B62D53/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200653
(22)【出願日】2022-12-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】522490354
【氏名又は名称】株式会社JSV
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】朱 其安
(57)【要約】
【課題】様々な状況で走行可能なトレーラー1を提供する。
【解決手段】風力発電に用いられる風車の羽根であるブレードBなどの長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラー1であって、トレーラー1は、車輪21を有する車両本体2と、車両本体2の上に配置されて被運搬物の一端側が固定される固定部31を有する荷台3とを備え、荷台3は、被運搬物の延在方向に延びる軸線を回転軸線として被運搬物を回転させる回転機構311を有するものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置されて前記被運搬物の一端側が固定される荷台とを備え、
前記荷台は、前記被運搬物の延在方向に延びる軸線を回転軸線として該被運搬物を回転させる回転機構を有するものであることを特徴とするトレーラー。
【請求項2】
前記車両本体に対して前記荷台を少なくとも180度水平方向に旋回させる旋回機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のトレーラー。
【請求項3】
前記荷台は、前記車両本体に対して水平方向に旋回可能に該車両本体に連結されたものであり、該荷台が該車両本体に対して旋回して該荷台の所定部分が該車両本体よりも該車両本体の幅方向外側に張り出した状態において、該所定部分から下方に向かって進出する補助輪を有するものであることを特徴とする請求項1記載のトレーラー。
【請求項4】
前記荷台に固定される前記被運搬物の前記一端側が下方に向くように該荷台を傾斜させる傾斜機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のトレーラー。
【請求項5】
前記荷台は、前記被運搬物が載置される荷台ベースと該荷台ベースに対して揺動可能で該被運搬物の前記一端側が固定される固定部とを有するものであり、
前記固定部を前記荷台ベースに対して揺動させることで該被運搬物を起立させる起立機構を備えていることを特徴とする請求項1記載のトレーラー。
【請求項6】
前記車両本体は、該車両本体の幅方向外側に前記車輪の配置を変更可能なものであることを特徴とする請求項1から5のうち何れか1項記載のトレーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーを得る手段として風力発電が注目されている。この風力発電に用いられる風車は、トラクターヘッドによってけん引されるトレーラーによって設置現場まで運搬される。この風車は、支柱とブレード(羽根)とが分かれた状態でトレーラーに積載されて運搬される。風車の支柱は複数に分割して運搬されることが多いが、風車のブレードは通常は長尺な姿のまま運搬される。また、ブレードは、単なる円柱状ではなく先端側がやや平たく広がった異形形状をしているためトレーラーに積載した際に一部がトレーラーの高さより高くなったり、幅方向外側にはみ出してしまう。このブレードのような長尺で異形形状をした被運搬物を運搬するためのトレーラーとして特許文献1及び特許文献2に記載されたトレーラーが提案されている。この特許文献1及び特許文献2には、被運搬物が固定された部分を揺動することで被運搬物を起立させる起立機構と、被運搬物が積載された荷台を水平方向に旋回させる旋回機構とを備えたトレーラーが開示されている。特許文献1及び特許文献2のトレーラーによれば、被運搬物の運搬中に、被運搬物が建築物、架空線、山および丘などに接触してしまう虞があるときには起立機構と旋回機構を駆使して接触を回避することで、被運搬物を積載したトレーラーが走行できる状況を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-189501号公報
【特許文献2】特開2004-243805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年ではさらに多種多様な形状をした、ブレードなどの長尺な被運搬物を積載可能で、より多くの状況で走行可能なトレーラーが望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、様々な状況で走行可能なトレーラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明のトレーラーは、
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置されて前記被運搬物の一端側が固定される荷台とを備え、
前記荷台は、前記被運搬物の延在方向に延びる軸線を回転軸線として該被運搬物を回転させる回転機構を有するものであることを特徴とする。
【0007】
このトレーラーによれば、前記被運搬物が上方や側方に向かって突出した形状をしている場合に、前記回転機構によって該被運搬物を回転させることでその突出方向を変更できるので走行可能な状況を増やすことができる。
【0008】
ここで前記荷台は、前記被運搬物が固定される固定面を有するものであり、前記回転機構は、該固定面の中心部分から前記延在方向に延びる軸線を前記回転軸線として該固定面を回転させるものであってもよい。また、前記固定面は、前記回転軸線に対して概して直交する方向に広がった面であってもよい。
【0009】
このトレーラーにおいて、
前記車両本体に対して前記荷台を少なくとも180度水平方向に旋回させる旋回機構を備えいていてもよい。
【0010】
前記荷台を180度水平方向に旋回させることで、長尺状の前記被運搬物を該荷台からトラクターヘッド側に向かって延在させることができる。これにより、前記トラクターヘッドと前記被運搬物とが長さ方向において重複するので、該トラクターヘッドとこのトレーラと該被運搬物の先端から後端までの全長が短くなる。そして、全長を短くすることで、走行可能なカーブや交差点を増やすことができる。
【0011】
また、このトレーラーにおいて、
前記荷台は、前記車両本体に対して水平方向に旋回可能に該車両本体に連結されたものであり、該荷台が該車両本体に対して旋回して該荷台の所定部分が該車両本体よりも該車両本体の幅方向外側に張り出した状態において、該所定部分から下方に向かって進出する補助輪を有するものであってもよい。
【0012】
前記被運搬物の重心が前記車両本体よりも幅方向外側に位置しても前記補助輪によってトレーラの幅方向の傾きが抑制されるので、該被運搬物が大きく傾いてしまうことを防止できる。これにより、前記荷台が旋回可能な角度が広がるので、このトレーラがより多様な該被運搬物を該荷台に積載して旋回させながら走行できる状況を増やすことができる。
【0013】
さらに、このトレーラーにおいて、
前記荷台に固定される前記被運搬物の前記一端側が下方に向くように該荷台を傾斜させる傾斜機構を備えていてもよい。
【0014】
例えば前記被運搬物がくの字型をした形状である場合に、前記回転機構による回転と前記傾斜機構による傾斜を組み合わせて使用することで、該被運搬物が路面に接してしまうことを防止しつつこのトレーラーに積載された該被運搬物の最大高さを低くすることができる。これにより、このトレーラが、前記被運搬物を積載した状態で、例えば高さの低いトンネルなどの高さ制限のある道路を走行することができる。
【0015】
またさらに、このトレーラーにおいて、
前記荷台は、前記被運搬物が載置される荷台ベースと該荷台ベースに対して揺動可能で該被運搬物の前記一端側が固定される固定部とを有するものであり、
前記固定部を前記荷台ベースに対して揺動させることで該被運搬物を起立させる起立機構を備えていてもよい。
【0016】
このトレーラーによれば、前記起立機構によって前記被運搬物の前記延在方向を上向きに変えることができるので走行可能な状況を増やすことができる。また、前記回転機構によって前記被運搬物を回転させる際に、前記起立機構によって該被運搬物を少し起立させて該被運搬物を前記荷台ベースから離間させることで、該被運搬物を傷つけることなく容易に回転させることができる。
【0017】
ここで、前記起立機構は、前記被運搬物を前記荷台ベースから持ち上げて該荷台ベースから離間させるものであってもよい。
【0018】
加えて、このトレーラーにおいて、
前記車両本体は、該車両本体の幅方向外側に前記車輪の配置を変更可能なものであってもよい。
【0019】
こうすることで、前記被運搬物の重心が前記車両本体の幅方向の中心からズレている場合や該被運搬物の重心が該車両本体の幅方向の中心からズレることがある場合、前記車輪を該車両本体の幅方向外側に位置させることでこのトレーラの幅方向の傾きが抑制される。これにより、前記被運搬物が大きく傾いてしまうことを防止できる。一方、前記車輪を通常の配置にすることでこのトレーラの最大幅が広くなってしまうことを防止できるので、幅が狭い道路を走行することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、様々な状況で走行可能なトレーラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に相当するトレーラをトレーラの右側から見た図である。
図2図1に示したトレーラーの分解斜視図である。
図3図1に示したトレーラーを前方斜め上方から見た斜視図である。
図4図1に示したトレーラーの荷台が旋回している様子を上方からみた図である。
図5図1に示したトレーラーの荷台が90度旋回した様子をトレーラーの後方から見た図である。
図6図1に示したトレーラーの荷台を180度旋回させて荷台の一端側を上げた様子をトレーラーの後方斜め上方からみた斜視図である。
図7図1に示したトレーラーの荷台の一端側を上げた様子をトレーラの右側から見た図である。
図8図1に示したトレーラーの荷台の一端側を下げた様子をトレーラの右側から見た図である。
図9図1に示したトレーラーの荷台に設けられた固定部を傾斜させた様子をトレーラの右側上方から見た図である。
図10】(a)は、図1に示したトレーラーの車輪が車両本体の幅方向内側に配置された様子を上方から見た図であり、(b)は、図1に示したトレーラーの車輪の一部が車両本体の幅方向外側に配置された様子を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態であるトレーラーは、トラクターヘッドに連結されて長尺な被運搬物を運搬するためのものである。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に相当するトレーラをトレーラの右側から見た図である。この図1にはトラクターヘッド90と被運搬物の一例である風車のブレードBも示されている。
【0024】
図1に示すように、トレーラー1は、車両本体2と、荷台3と、旋回機構4と、第1シリンダー5(図7参照)とを備えている。図1には、トラクターヘッド90に連結されたトレーラー1が示されている。なお、トラクターヘッド90とトレーラー1は連結を解除して再度連結することができる。従って、このトレーラー1は、多種類のトラクターヘッド90と連結させることができる。トレーラー1は、トラクターヘッド90に対して水平方向に回転自在にトラクターヘッド90に連結されている。図1に示すブレードBは、風力発電に用いられる長尺な羽根であり、一例として延在方向の長さが45mで重さが11tのものである。なお、ブレードBの長さや重さは様々であり、その形状も様々である。本実施形態のトレーラー1の全長は約18mであるので、ブレードBはトレーラー1よりも長尺な被運搬物である。
【0025】
車両本体2は、概して前後方向に延在している。また、車両本体2は、トラクターヘッド90に連結される前側部分が他の部分よりも少し上に位置し、上面が概して水平方向に広がった面になっている。車両本体2は、その後側部分に複数の車輪21を有している。図1には車両本体2の最も右側に配置された3つの車輪21のみ表れているが、車両本体2には複数の車輪21が幅方向に並んで配置されている。車両本体2の右側は図1においては紙面手前側であり、車両本体2の幅方向は図1においては紙面に直交する方向である。以下、車両本体の幅方向に並んでいる車輪21の列を車輪列と称することがある。また、トレーラー1は、車輪列を後端部分に追加して4列以上にすることが可能である。図2図3図4図7及び図8では、車輪列を1列追加して4列にしたトレーラー1が示されている。
【0026】
荷台3は、車両本体2の上に配置されている。この荷台3は、荷台ベース30と、固定部31と、第2シリンダー32とを有している。荷台3は、旋回機構4を介して車両本体2に連結されている。荷台ベース30は、ブレードBの一端から所定長さ範囲の部分が載置される部分である。固定部31は、荷台ベース30の一端側部分から上方に向かって起立した固定フレーム310を有している。この固定部31にはブレードBの一端側部分が固定される。固定フレーム310は、固定フレーム310の下端部分に配置された不図示の揺動軸によって荷台ベース30に揺動自在に連結されている。第2シリンダー32は、その揺動軸周りに固定部31を揺動させるものである。なお、第2シリンダー32は、荷台ベース30の幅方向両側に1つづつ合計で2つ設けられている。図1には2つの第2シリンダー32のうちの1つが表れている。これら2つの第2シリンダー32は不図示のリモコンの操作に応じて同一の動作を行う。これらの第2シリンダー32は、起立機構の一例に相当する。図1には、第2シリンダー32が有する第2ピストンロッド321が最も縮んだ位置にある状態が示されている。この状態では、固定部31は垂直方向に起立してブレードBは水平方向に延在している。そして、ブレードBの一端から所定長さ範囲の部分が荷台ベース30に載置されている。第2シリンダー32については後述する。
【0027】
旋回機構4は、荷台3と車両本体2の間に介在している。この旋回機構4によって、荷台3は水平方向に旋回可能に車両本体2に連結されている。
【0028】
図2は、図1に示したトレーラーの分解斜視図である。この図2にはトラクターヘッドも示されている。
【0029】
図2に示すように、旋回機構4は、歯車固定板40と、旋回歯車41と、旋回ベース42と、4つの旋回モータ43とを有している。歯車固定板40は、複数のボルトによって車両本体2の上面に固定されている。旋回歯車41は、歯車固定板40に固定されている。従って、旋回歯車41は、歯車固定板40を介して車両本体2に固定されている。旋回ベース42は、歯車固定板40と旋回歯車41を介して旋回可能に車両本体2に取り付けられている。4つの旋回モータ43はそれぞれ旋回ベース42に固定されている。旋回モータ43それぞれの出力軸には不図示の旋回ピニオンが固定されている。これらの旋回ピニオンは、旋回歯車41にかみ合っている。従って、旋回モータ43を駆動することで、旋回ベース42は、車両本体2、歯車固定板40および旋回歯車41に対して水平方向に旋回する。これら4つの旋回モータ43それぞれの出力軸は、不図示のリモコンの操作に応じて同一方向に回転する。旋回モータ43の出力軸は、時計回りと反時計回りの両方向に回転可能である。荷台3は、旋回ベース42に固定されている。このため、荷台3は、旋回ベース42が旋回すると旋回ベース42とともに車両本体2に対して水平方向に旋回する。なお、旋回モータ43は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。旋回モータ43を駆動し続けると、荷台3は、車両本体2に対して旋回し続けて水平方向に360度以上旋回する。ただし、荷台3は、車両本体2に対して少なくとも180度以上旋回すれば旋回可能角度は360度未満であってもよい。なお、図1に示したトレーラー1は、荷台3が旋回していない状態である。この状態では、荷台3は、その一端側が車両本体2の前側に配置され車両本体2と同様に前後方向に延在している。
【0030】
荷台3の固定部31は、ブレードB(図1参照)の一端面が固定される環状の固定面3114aを有している。この固定面3114aは、後述する回転盤3114(図3参照)によって形成されている。ブレードBは、その一端面が固定面3114aに固定されることで、ブレードBの延在方向が固定面3114aの面方向と概して直交するように回転盤3114に固定される。固定部31は、回転モータ3111を有している。回転モータ3111は、固定面3114aを囲う様に固定フレーム310に4つ取り付けられている。図2には、4つの回転モータ3111のうちの2つが表れている。なお、回転モータ3111は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0031】
図3は、図1に示したトレーラーを前方斜め上方から見た斜視図である。この図3にはトラクターヘッドも示されている。
【0032】
図3に示すように、固定部31は、上述した固定フレーム310と回転機構311とを有している。回転機構311は、図2に示した回転モータ3111と、回転歯車3113と、回転盤3114と、回転ピニオン3115とを有している。回転歯車3113は、中空の円盤状をしている。回転歯車3113は、固定フレーム310の起立方向と直交する方向に延びる中心線周りに回転可能に固定フレーム310に取り付けられている。回転盤3114は、回転歯車3113に固定されている。回転盤3114は、回転歯車3113を挟んで前側と後側に配置された環状板と、回転歯車3113の中空部分の内側でそれらの環状板を連結する筒体で構成されている。これらの環状板は、連結している筒体の中心線と直交する方向に面方向を有する平板で構成されている。従って、固定面3114a(図2参照)は、回転盤3114の筒体の中心線と直交する方向に広がった面である。その筒体の中心線は回転歯車3113の中心線と一致しており、それらの中心線は、固定面3114aの中心を通っている。回転ピニオン3115は、各回転モータ3111それぞれの出力軸に固定されている。これらの回転ピニオン3115は、回転歯車3113にかみ合っている。従って、回転モータ3111を駆動することで、回転盤3114は、回転歯車3113の中心線を回転軸線として回転する。そして、回転盤3114が回転することで回転盤3114に固定されたブレードB(図1参照)は、その延在方向に延びる軸線を回転軸線として回転する。回転モータ3111の出力軸は、時計回りと反時計回りの両方向に回転可能であり、不図示のリモコンの操作によって指定された方向に回転する。回転盤3114は、回転角度の制限無く回転可能であるが、少なくとも時計回りと反時計回りそれぞれに180度以上回転可能であることが好ましい。
【0033】
図4は、図1に示したトレーラーの荷台が旋回している様子を上方からみた図である。また、図5は、図1に示したトレーラーの荷台が90度旋回した様子をトレーラーの後方から見た図である。これらの図4及び図5にはトラクターヘッド90も示されている。
【0034】
上述したように、旋回モータ43を駆動することで、荷台3は旋回ベース42とともに車両本体2に対して水平方向に旋回する。図5に示すように、荷台3の所定部分には、2つの補助輪34と補助輪駆動機構341とが設けられている。図4に示すように、補助輪34は、荷台3が車両本体2に対して旋回して荷台3の所定部分が車両本体2よりも車両本体2の幅方向外側に張り出した状態において、車両本体2よりも車両本体2の幅方向外側に張りした所定部分から下方に向かって進出する。補助輪駆動機構341は、補助輪34を下方に向かって進出させるためものであり、補助輪34ごとに設けられている。この補助輪駆動機構341は、シリンダーとリンク機構とから構成されている。補助輪駆動機構341は不図示のリモコンの操作によって動作する。補助輪駆動機構341の進出動作により、補助輪34は車両本体2下方に向かって進出する。また、補助輪駆動機構341の収納動作により、補助輪34は後退して車両本体2に収納される。補助輪駆動機構341によって補助輪34を動作させることで、補助輪34は路面に接する位置まで進出することが可能である。補助輪34を進出させた状態では、ブレードB(図1参照)の重心が車両本体2よりも幅方向外側に位置しても、補助輪34によってトレーラー1の幅方向の傾きが抑制される。従って、トレーラー1とともにブレードBがトレーラー1の幅方向に大きく傾いてしまうことを防止できる。これにより、荷台3の旋回によって車両本体2よりも幅方向外側に重心が大きく外れてしまうブレードBを積載した場合であっても、ブレードBを積載した荷台3を安定して旋回させることが可能になる。また、そのようなブレードBを積載した荷台3を旋回できる角度が広くなる。これらにより、トレーラー1にブレードBなどの多様な被運搬物を積載して荷台3を大きく旋回させながら走行できる状況を増やすことができる。
【0035】
図6は、図1に示したトレーラーの荷台を180度旋回させて荷台の一端側を上げた様子をトレーラーの後方斜め上方からみた斜視図である。この図6にはトラクターヘッド90とブレードBも示されている。
【0036】
図6に示すように、荷台3が車両本体2に対して旋回した状態においても、後述する第1シリンダー5(図7参照)を駆動することができる。また、第1シリンダー5を駆動して荷台3を車両本体2に対して傾斜させた状態で、旋回モータ43(図2参照)を駆動して荷台3を旋回させることができる。同様に、第2シリンダー32及び回転モータ3111(図3参照)も、荷台3が車両本体2に対して旋回した状態においても駆動することができる。また、第2シリンダー32を駆動して固定部31を揺動させてブレードBの他端側を持ち上げた起立状態で、旋回モータ43を駆動して荷台3を旋回させることができる。さらに、回転モータ3111を駆動してブレードBの延在方向に延びる軸線周りに回転盤3114及びブレードBを回転させた状態で、旋回モータ43を駆動して荷台3を旋回させることができる。
【0037】
図6に示すように、荷台3を車両本体2に対して180度旋回させることで、ブレードBは荷台3からトラクターヘッド90側に向かって延在する。すると、トラクターヘッド90及びトレーラー1が、その全長方向においてブレードBと重複する部分が長くなるので、トラクターヘッド90とトレーラー1とブレードBを含む全長を短くすることができる。全長を短くすることで、ブレードBが建築物などに接触しにくくなるので、曲がることが可能なカーブや交差点が増える。従って、ブレードBを積載したトレーラー1が走行可能な状況を増加させることができる。
【0038】
図7は、図1に示したトレーラーの荷台の一端側を上げた様子をトレーラの右側から見た図である。また、図8は、図1に示したトレーラーの荷台の一端側を下げた様子をトレーラの右側から見た図である。
【0039】
図7に示すように、第1シリンダー5は、第1ピストンロッド51と、第1ピストンロッド51を駆動するためのピストンが格納された不図示の第1シリンダチューブとを有している。この第1シリンダー5は、傾斜機構の一例に相当する。第1ピストンロッド51の先端は旋回ベース42に固定されている。シリンダチューブの後端は荷台3に固定されている。第1シリンダー5は、多段式の油圧シリンダーである。この第1シリンダー5も、不図示のリモコンの操作に応じて動作する。第1シリンダー5は、第1ピストンロッド51を第1シリンダチューブから突出させることで伸び、第1ピストンロッド51を第1シリンダチューブ内に引き込むことで縮む。第1シリンダー5が伸縮することで、荷台3は、旋回ベース42に対する角度が変化する。図7には、第1シリンダー5が伸びることで、荷台3の一端側が上方に向くように荷台3が傾斜した様子が示されている。すなわち、第1シリンダー5が伸びることで、荷台3に積載されたブレードBは、固定部31に固定されたブレードBの一端側が上方に向くように傾斜する。なお、第1ピストンロッド51は、通常は図2に示すように、荷台3が車両本体2と同様に水平方向に延在した水平状態になる長さだけ第1シリンダチューブから突出している。第1ピストンロッド51は、その水平状態から突出と引き込みの両方が可能なものである。
【0040】
図8には、第1シリンダー5(図7参照)が縮むことで、荷台3の一端側が下方に向くように荷台3が傾斜した様子が示されている。すなわち、水平状態に対して第1ピストンロッド51を第1シリンダチューブに引き込むことで第1シリンダー5が縮み、荷台3に積載されたブレードBは、一端側が下方に向くように傾斜する。図8に示すように、第1シリンダー5を縮めるときには、荷台3の一端側部分が車両本体2の前側部分と接触しないように、車両本体2を前後方向に引き伸ばしている。車両本体2は、前側部分が後側部分に対して前後方向に差し込まれて重なった二体構造になっており、前側部分を後側部分から前方に向かって引き出すことができる。引き出すことで、他の部分よりも少し上に位置している部分が荷台3から離間するので、荷台3の一端側部分を下方に位置させることが可能になる。車両本体2の前側部分を車両本体2の後側部分から引き出した後、ピンを挿入することで引き出した位置で固定することができる。車両本体2の前側部分を車両本体2の後側部分に差し込んだ後も同様にピンを挿入することで差し込んだ位置で固定することができる。なお、荷台3が旋回している状態では荷台3の一端側部分が車両本体2の前側部分から離れているので、車両本体2の前側部分を後側部分から引き出すことなく荷台3の一端側を下方に位置させることができる。
【0041】
図9は、図1に示したトレーラーの荷台に設けられた固定部を傾斜させた様子をトレーラの右側上方から見た図である。
【0042】
上述したように、第2シリンダー32を駆動することで、固定部31は、揺動軸周りに揺動する。図9に示すように、第2ピストンロッド321を突出させて第2シリンダー32を伸ばすことで、固定部31に一端側が固定されたブレードBの他端側が上方になるように固定部31を傾斜させることができる。換言すれば、固定部31を揺動させると、ブレードBは起立して揺動前には荷台ベース30の上面に接触していたブレードBの一端から所定長さ範囲の部分は、持ち上げられて荷台ベース30から離間する。
【0043】
図10(a)は、図1に示したトレーラーの車輪が車両本体の幅方向内側に配置された様子を上方から見た図であり、図10(b)は、図1に示したトレーラーの車輪の一部が車両本体の幅方向外側に配置された様子を上方から見た図である。
【0044】
図10(a)に示すように、通常は、全ての車輪列はそれらのトレッド幅が一致しており、前後方向に並んで配置されている。この配置では、最も幅方向外側にある車輪21の外側面が車両本体2の側面とほぼ一致している。図10(b)に示すように、車輪21の一部は、図10(a)に示した車両本体2の幅方向内側(通常の配置)から車両本体2の幅方向外側に配置を変更可能である。配置を変更可能な車輪21は、車輪フレーム22に保持されている。この車輪フレーム22は、車両本体2の他の部分にボルトによって取り外し可能に固定されている。車両本体2の幅方向外側に車輪21を配置することで、通常の配置と比較してトレッド幅を拡大する方向に変更できる。具体的には、車両本体2の左側にある4つの車輪21を保持している車輪フレーム22を車両本体2の他の部分から取り外して車両本体の左外側に移動させてボルトで固定する。同様に、車両本体2の右側にある4つの車輪21を保持している車輪フレーム22を車両本体2の他の部分から取り外して車両本体の右外側に移動させてボルトで固定する。なお、車輪21の配置を変更するに際しては車輪フレーム22に保持されている4つの車輪21のサスペンションを縮めてそれらの車輪21を路面から離間させることで変更作業を容易に実施できる。図10(a)に示した車両本体2の幅方向内側の配置に車輪21を戻す場合には、上述した幅方向外側への配置変更とは逆の手順で行う。トレッド幅を拡大させることで、ブレードB(図1参照)の重心が前記車両本体の幅方向の中心から大きくズレている場合でもトレーラー1の幅方向の傾きが抑制され、ブレードBが大きく傾いてしまうことが防止される。同様に、トレッド幅を拡大させることで、荷台3を旋回させてトレーラー1が運搬するブレードBの重心が車両本体2よりも幅方向外側に位置してもトレーラー1の幅方向の傾きが抑制され、ブレードBが大きく傾いてしまうことが防止される。また、ブレードBが軽い場合や重心の偏りがすくない場合は車輪21を車両本体2の幅方向内側に位置させて通常の配置にすることで、トレーラー1の最大幅(トレッド幅)が広くなってしまうことを防止できるので、幅が狭い道路を走行することができる。
【0045】
この実施形態のトレーラー1によれば、回転機構311によってブレードBを、ブレードBの延在方向に延びる軸線周りに回転させることができる。ブレードBは、単純な円柱状や円錐状ではなく、他端側(羽根先端側)が平らな形状であったり、延在方向の途中で屈曲したくの字状になっているなど異形形状をしており、特に他端側に径方向に突出している部分を有していることが多い。例えばトンネルのように幅や高さに制限がある場所を通過する際に、その制限に合わせてブレードBを軸線周りに回転させて突出方向を変えることで幅や高さに制限がある場所であっても通過可能になる場合がある。これにより、トレーラー1が走行可能な状況を増やすことができる。また、回転機構311による回転と、第1シリンダー5による荷台3の傾斜を組み合わせてブレードBの突出方向と荷台3の傾斜角の両方を調整することで、被運搬物の多様な形状に対応して高さや幅を抑制してトレーラー1に積載することができる。この調整により、幅や高さに制限のある場所であってもトレーラー1が走行可能な状況をより増やすことができる。また、第2シリンダー32によってブレードBを少し起立させて荷台3から離間させることで、ブレードBをその延在方向に延びる軸線周りに容易に回転させることができる。また、荷台ベース30に載置される部分である、ブレードBの一端から所定長さ範囲の部分の断面が真円でない場合にはブレードBを荷台3から離間させることで、ブレードBをその延在方向に延びる軸線周りに回転させることができるという顕著な効果がある。さらに、ブレードBの、荷台ベース30に載置される部分の形状に合わせて第2シリンダー32によって固定部31の角度を調整することでその部分を荷台ベース30に載置することができる。
【0046】
以上説明したトレーラー1からは、以下の発明思想を抽出できる。
【0047】
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置されて前記被運搬物の一端側が固定される荷台とを備え、
前記車両本体に対して前記荷台を少なくとも180度水平方向に旋回させる旋回機構を備えたことを特徴とするトレーラー。
【0048】
また、以上説明したトレーラー1からは、以下の発明思想も抽出できる。
【0049】
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置されて前記被運搬物の一端側が固定される荷台とを備え、
前記荷台は、前記車両本体に対して水平方向に旋回可能に該車両本体に連結されたものであり、該荷台が該車両本体に対して旋回して該荷台の所定部分が該車両本体よりも該車両本体の幅方向外側に張り出した状態において、該所定部分から下方に向かって進出する補助輪を有するものであることを特徴とするトレーラー。
【0050】
加えて、以上説明したトレーラー1からは、以下の発明思想も抽出できる。
【0051】
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置されて前記被運搬物の一端側が固定される荷台とを備え、
前記荷台に固定される前記被運搬物の前記一端側が下方に向くように該荷台を傾斜させる傾斜機構を備えたことを特徴とするトレーラー。
【0052】
またさらに、以上説明したトレーラー1からは、以下の発明思想も抽出できる。
【0053】
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置されて前記被運搬物の一端側が固定される荷台とを備え、
前記車両本体は、該車両本体の幅方向外側と該車両本体の幅方向内側に前記車輪の配置を変更可能なものであることを特徴とするトレーラー。
【0054】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、トレーラー1がブレードBを運搬する例を記載したが、トレーラー1はブレードB以外の被運搬物を運搬するためにも用いることができる。また、第1シリンダー5、第2シリンダー32、旋回モータ43および回転モータ3111をリモコンによって操作していたが、リモコン以外の操作手段から操作してもよい。さらに、第1シリンダー5、第2シリンダー32、旋回モータ43および回転モータ3111は複数の操作手段から操作可能であってもよい。
【0055】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 トレーラー
2 車両本体
3 荷台
4 旋回機構
5 第1シリンダー(傾斜機構)
21 車輪
31 固定部
32 第2シリンダー(起立機構)
34 補助輪
311 回転機構
B ブレード(被運搬物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置され前記被運搬物の延在方向に延びる軸線を回転軸線として該被運搬物を回転させる回転機構と、該被運搬物が載置される荷台ベースと、該荷台ベースに対して揺動可能で該被運搬物の一端側が固定される固定部とを有する荷台と、
前記固定部を前記荷台ベースに対して揺動させることで該被運搬物を起立させる起立機構と、
前記荷台に固定される前記被運搬物の前記一端側が上方を向くように該荷台を傾斜させる傾斜機構とを備えていることを特徴とするトレーラー。
【請求項2】
前記車両本体に対して前記荷台を少なくとも180度水平方向に旋回させる旋回機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のトレーラー。
【請求項3】
前記荷台は、前記車両本体に対して水平方向に旋回可能に該車両本体に連結されたものであり、該荷台が該車両本体に対して旋回して該荷台の所定部分が該車両本体よりも該車両本体の幅方向外側に張り出した状態において、該所定部分から下方に向かって進出する補助輪を有するものであることを特徴とする請求項1記載のトレーラー。
【請求項4】
前記車両本体は、該車両本体の幅方向外側に前記車輪の配置を変更可能なものであることを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項記載のトレーラー。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を解決する本発明のトレーラーは、
長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置され、前記被運搬物の延在方向に延びる軸線を回転軸線として該被運搬物を回転させる回転機構と、該被運搬物が載置される荷台ベースと、該荷台ベースに対して揺動可能で該被運搬物の一端側が固定される固定部とを有する荷台と、
前記固定部を前記荷台ベースに対して揺動させることで該被運搬物を起立させる起立機構と、
前記荷台に固定される前記被運搬物の前記一端側が上方を向くように該荷台を傾斜させる傾斜機構とを備えていることを特徴とする。
また、長尺な被運搬物を運搬するためのトレーラーであって、
車輪を有する車両本体と、
前記車両本体の上に配置されて前記被運搬物の一端側が固定される荷台とを備え、
前記荷台は、前記被運搬物の延在方向に延びる軸線を回転軸線として該被運搬物を回転させる回転機構を有するものであることを特徴とするトレーラーであってもよい