(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085930
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/185 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B60R22/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200719
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】安部 英和
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018BA07
3D018CA01
(57)【要約】
【課題】装着容易で、着座者を着座シートに的確に拘束する。
【解決手段】シートバック部130に設けられるとともに、シートベルト部SBのウェビング部20を挿通させるシートアンカー部200と、シートアンカー部200に固定されたアンカー軸部210と、シートバック部130に設けられた円錐状外筒部CCと、アンカー軸部210に固定されて設けられた回転ブレーキ部RBと、アンカー軸部210に固定され、円錐状外筒部CCの内側にアンカー軸部210を中心とした円錐状内筒部220と、一方端がアンカー軸部210に設けられた回転平板400に固定され、他方端が、シートバック部130に設けられた固定平板410に固定された柱状の弾性体420が、アンカー軸部210の回転軸方向に延在して複数設けられているダンパー部DPと、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座シートのシートバック部に設けられるとともに、中央部に設けられた開口部にシートベルトのウェビング部を挿通させるシートアンカー部と、
前記シートアンカー部に固定され、車両下方側に延在するアンカー軸部と、
前記シートバック部に円錐形状に形成され、前記アンカー軸部を貫通させる円錐状外筒部と、
前記円錐状外筒部の内部に前記アンカー軸部に固定され、前記アンカー軸部の回転によって、前記アンカー軸部の回転軸方向外側に移動する回転ブレーキ部と、
前記アンカー軸部に固定され、前記円錐状外筒部の内側に前記アンカー軸部を中心とした円錐状に形成された円錐状内筒部と、
一方端が前記アンカー軸部に設けられた平板に固定され、他方端が、前記シートバック部に設けられた平板に固定された柱状の弾性体が、前記アンカー軸部の回転軸方向に延在して複数設けられているダンパー部と、
を備えることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
車両のピラー部に設けられウェビング部を挿通させるスルーリング部と、前記着座シートに設けられ前記シートベルトを嵌合させるバックル部と、を結ぶ直線と車幅方向における水平線と、がなす第1の傾斜角度と、前記アンカー軸部の回転軸と車幅方向における水平線と、がなす第2の傾斜角度とが、同一の傾斜角度であることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、運転者の運転操作の負担を軽減するとともに、安全性の向上を実現することを目的として、運転者の運転操作を必要とせずに車両を自動的に走行させる自動運転制御技術の開発が進められている。
【0003】
この種の自動運転制御技術が搭載された車両においては、助手席側に限らず運転席側においても、運転者が、着座シートを車両後方側にスライドさせ、シートバック部を車両後方側に後傾させる安楽姿勢を取ることを想定する必要がある。
【0004】
一方、センターピラー部にシートベルトアンカー部(スルーリング部)が設けられている場合には、着座シートのシートバック部が車両後方側に倒された状態においては、シートベルト装置のショルダーベルト部は、乗員の肩部から離れてしまう。この状態において、車両前方側から衝突が発生した場合には、乗員の上半身の固定が遅れる虞がある。
【0005】
上記のような課題に対して、例えば、特許文献1においては、シートに着座した乗員の肩部から腰部を拘束するショルダーベルト部を有するウェビング(ショルダーベルト帯)と、ウェビングに張力を付与するプリテンショナ機構を有するリトラクタと、を有する車両のシートベルト装置であって、シートのシートバックに車幅方向に移動可能に支持されて、ウェビングを支持するガイド(シートアンカー)と、リトラクタのプリテンショナ機構によってウェビングに所定値以上の張力が付与された際に、ガイドの車幅方向の移動を規制するブレーキパッド部と、を備える技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ウェビングを支持するガイドの車幅方向への移動を規制するブレーキ力が、ウェビングの車両前後方向の移動に際して、不十分になる虞がある。そのため、着座シートのシートバック部が車両後方側に倒された状態においては、ガイドの位置固定が不十分になることによって、乗員の上半身の固定が不安定になる虞があるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、装着容易で、着座者を着座シートに的確に拘束する乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、着座シートのシートバック部に設けられ、中央部に設けられた開口部にシートベルトのウェビング部を挿通させるシートアンカー部と、前記シートアンカー部に固定され、車両下方側に延在するアンカー軸部と、前記シートバック部に円錐形状に形成されて設けられ、前記アンカー軸部を貫通させる円錐状外筒部と、前記円錐状外筒部の内部に前記アンカー軸部に固定されて設けられ、前記アンカー軸部が回転することによって、前記アンカー軸部の回転軸方向外側に移動する回転ブレーキ部と、前記アンカー軸部に固定され、前記円錐状外筒部の内側に前記アンカー軸部を中心とした円錐状に形成された円錐状内筒部と、一方端が前記アンカー軸部に固定された平板に固定され、他方端が、前記シートバック部に固定された平板に固定された柱状の弾性体が、前記アンカー軸部の回転軸方向に延在して複数設けられているダンパー部と、を備える乗員保護装置を提案している。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両のピラー部に設けられウェビング部を挿通させるスルーリング部と、前記着座シートに設けられ前記シートベルトを嵌合させるバックル部と、を結ぶ直線と、車幅方向における水平線と、がなす傾斜角度と、前記アンカー軸部の回転軸がなす傾斜角度と、車幅方向における水平線と、がなす傾斜角度とが、同一の傾斜角度である乗員保護装置を提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、装着容易で、着座者を着座シートに的確に拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る乗員保護装置の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る乗員保護装置の着座シートを上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示されるAS部を拡大し上方から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示されるAS部を矢印A方向から見たA-A線に沿った断面図である。
【
図5】
図1に示される乗員保護装置の着座シートに乗員が着座し、安楽姿勢をとった状態を側方から見た側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る乗員保護装置におけるアンカー構造部の動作を示す斜視図であり、(a)はタングプレート部がバックル部に嵌合されていない状態を示し、(b)はタングプレート部がバックル部に嵌合されている状態を示す。
【
図7】発明の実施形態に係る乗員保護装置の回転ブレーキ部RBを矢印A方向から見たA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1から
図7を用いて、本実施形態に係る乗員保護装置Sが適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、車両前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0014】
<実施形態>
図1から
図4を用いて、車両Vに備えられた、本実施形態に係る乗員保護装置Sの構成について説明する。
なお、以下では、車両Vにおいて運転席に装着される乗員保護装置Sを例示して説明する。
【0015】
<乗員保護装置Sの構成>
乗員Pが着座する乗員保護装置Sは、
図1に示すように、シートベルト部SB(
図1のクロスハッチング部)と、着座シート部SS(
図1のドットハッチング部)と、を含んで構成されている。
【0016】
<シートベルト部SBの構成>
シートベルト部SBは、リトラクタ部10と、ウェビング部20と、スルーリング部30と、タングプレート部40と、を含んで構成されている。また、スルーリング部30と、バックル部150と、を結ぶ直線と、車幅方向における水平線HLとは、第1の傾斜角度としての傾斜角度T1をなしている。
【0017】
リトラクタ部10は、センターピラー部CPの車両下方側に固定され、ウェビング部20の一方端と接続されている。ウェビング部20は、リトラクタ部10の車両上方側から、車両上下方向に向かって接続されている。
【0018】
ウェビング部20は、細長い長尺の帯状に織られた合成繊維を部材とするベルトであり、一方端は、リトラクタ部10に伸縮可能に固定され、他方端は、センターピラー部CPの車両下方側に設けられた固定部FXに固定されている。
ウェビング部20は、リトラクタ部10から車両上方側に向かい、スルーリング部30および後述するアンカー構造部ASに設けられたシートアンカー部200を挿通している。
【0019】
スルーリング部30は、金属あるいは硬質樹脂等の部材で形成され、センターピラー部CPの車両上方側において車幅方向に回転軸を有し、車両前後方向に回転可能に固定されている。また、スルーリング部30は、ウェビング部20を挿通させる貫通孔を有し、ウェビング部20がリトラクタ部10から車両上方側に向かう方向を、シートアンカー部200に向く方向に変えている。
【0020】
タングプレート部40は、ウェビング部20に挿通され、ウェビング部20の長手方向に相対移動可能に構成されている。タングプレート部40は、金属あるいは硬質樹脂等の部材によって平板状に形成され、バックル部150と嵌合する。タングプレート部40は、シートアンカー部200と、固定部FXとの間のウェビング部20に挿通されている。
【0021】
<着座シート部SSの構成>
着座シート部SSは、
図2に示すように、スライドレール部110と、シートクッション部120と、シートバック部130と、ヘッドレスト部140と、バックル部150と、アンカー構造部ASと、を含んで構成されている。
【0022】
スライドレール部110は、車両Vのフロアパネルに車両前後方向に延在して固定されている。スライドレール部110は、金属等の部材によって、車両上方側が開口されたU字状に形成されている。スライドレール部110には、着座シート部SSの脚部が車両前後方向に移動可能に配設されている。
【0023】
シートクッション部120は、乗員Pの着座面であり、着座シート部SSの車両下方部に配設され、乗員Pの臀部から大腿部を支える。シートクッション部120の外側は、布あるいは革等の部材により形成されたシートカバーによって表面が覆われている。
【0024】
シートバック部130は、乗員Pの腰部から背部を支える。シートバック部130は、シートクッション部120の車両後方側の車両上下方向に向けて、起立した状態で配設されている。シートバック部130の内部には、シートバック部130の骨格となるシートバックフレームBFが設けられている。シートバックフレームBFには、車両下方側において車幅方向に延在するシート回転軸ARが設けられ、シートバック部130は、シート回転軸ARを回転軸とし、車両前後方向に傾倒可能にシートクッション部120に固定されている。また、シートバックフレームBFには、後述する回転ブレーキ部RBを構成する円錐状外筒部CCが形成されている。また、シートバック部130の外側には、布あるいは革等の部材により形成されたシートカバーによって表面が覆われている。
【0025】
ヘッドレスト部140は、シートバック部130の車両上方端部の車幅方向中央部に設けられており、シートバック部130部から車両上方側へ突出している。ヘッドレスト部140には、図示しない略長尺棒状のステーが設けられ、ステーは、シートバック部130に車両上方側から挿入され、ヘッドレスト部140は、シートバック部130に支持されている。ヘッドレスト部140の外側は、布あるいは革等の部材により形成されたシートカバーによって表面が覆われている。
【0026】
<アンカー構造部ASの構成>
図3に示すように、アンカー構造部ASは、着座シート部SSのヘッドレスト部140の車幅方向外側に設けられている。アンカー構造部ASは、アンカー軸部210のアンカー回転軸ALを中心として回転可能に構成されている。
具体的には、アンカー構造部ASは、スルーリング部30と、バックル部150と、を結ぶ直線と、車幅方向における水平線HLとがなす傾斜角度T1と、アンカー回転軸ALと、車幅方向における水平線HLとがなす第2の傾斜角度としての傾斜角度T2とが、同一の傾斜角度TAとなって、着座シート部SSにおける車幅方向外側の肩部に設けられている。
【0027】
アンカー構造部ASは、シートアンカー部200と、アンカー軸部210と、回転ブレーキ部RBと、ダンパー部DPと、を含んで構成されている。
【0028】
シートアンカー部200は、着座シート部SSの肩口部であるシートバック部130の車両上方部外側に設けられ、中央部に設けられた開口部OAにシートベルト部SBのウェビング部20を挿通させている。
シートアンカー部200は、金属あるいは硬質樹脂等の部材によって、略直方体状に形成されている。シートアンカー部200の車両下方側面中央部には、車両上下方向に延在した棒状のアンカー軸部210が固定されている。シートアンカー部200は、アンカー軸部210を回転軸として回転可能に設けられている。
【0029】
アンカー軸部210は、金属あるいは硬質樹脂等の部材によって円柱棒状に形成され、車両上下方向に延在している。アンカー軸部210の車両上方側端部には、シートアンカー部200が固定され、アンカー軸部210の車両下方側端部には、固定平板410が固定されている。また、アンカー軸部210の中央部には、回転ブレーキ部RBが設けられ、アンカー軸部210の車両下方側には、ダンパー部DPが設けられている。
【0030】
(回転ブレーキ部RBについて)
回転ブレーキ部RBは、円錐状内筒部220と、円錐状外筒部CCと、遠心ブレーキ部300と、を含んで構成されている。
【0031】
円錐状内筒部220は、金属あるいは硬質樹脂等の部材によって、内部に空間を有し、車両上方側の径よりも車両下方側の径が大きくなる円錐状に形成されている。円錐状内筒部220には、遠心ブレーキ部300の軸方向外側に貫通孔THが設けられている。
円錐状内筒部220の車両上方側は、アンカー軸部210に固定されている。円錐状内筒部220の中心軸は、アンカー回転軸ALと略同一軸上にある。
【0032】
回転ブレーキ部RBは、シートアンカー部200の車両下方側に設けられている。
回転ブレーキ部RBは、アンカー軸部210に固定され、アンカー軸部210が回転することによって、アンカー軸部210の軸方向外側に移動する。また、回転ブレーキ部RBは、タングプレート部40がバックル部150には嵌合されず、ウェビング部20が、リトラクタ部10に収納されている状態においては、円錐状外筒部CCの軸方向内側と、円錐状内筒部220の軸方向外側とが密接した状態となっている。
【0033】
円錐状外筒部CCは、シートバックフレームBFに形成された円錐状の貫通孔であり、車両上下方向に円錐状に貫通している。円錐状外筒部CCは、車両上方側の径よりも車両下方側の径が大きくなる円錐状に形成されている。円錐状外筒部CCの中心軸は、アンカー回転軸ALと略同一軸上にある。
【0034】
図4に示すように、遠心ブレーキ部300は、ブレーキシュー部310と、バネ部320と、凸部330と、を含んで構成されている。
ブレーキシュー部310は、タングプレート部40がバックル部150に嵌合されず、ウェビング部20が、リトラクタ部10に収納されている状態においては、円錐状外筒部CCの軸方向内側とは離れたおよび円錐状内筒部220の軸方向外側とが密接した状態となっている。
バネ部320は、一方端が凸部330の軸方向外側に固定され、他方端がブレーキシュー部310の軸方向内側に固定されている。また、ブレーキシュー部310は、バネ部320によって、軸方向内側に付勢されている。
凸部330は、アンカー軸部210から軸方向外側に突出して形成され、アンカー軸部210に固定されている。なお、凸部330は、アンカー軸部210と一体に成型されていてもよい。
【0035】
(ダンパー部DPについて)
図3に示すように、ダンパー部DPは、アンカー軸部210に固定された平板としての回転平板400と、シートバック部130におけるシートバックフレームBFに固定された平板としての固定平板410と、複数の弾性体420と、を含んで構成されている。
ダンパー部DPは、回転ブレーキ部RBの車両下方側に設けられている。ダンパー部DPは、複数の弾性体420と、回転平板400と、固定平板410とを含んで構成されており、ダンパー部DPの中心軸は、アンカー回転軸ALと略同一軸上にある。
【0036】
回転平板400は、金属あるいは硬質樹脂等の部材で形成された略円形の平板であり、アンカー軸部210の車両下方側に固定されている。回転平板400の中心軸は、アンカー回転軸ALと略同一軸上にある。
また、固定平板410は、金属あるいは硬質樹脂等の部材で形成された略円形の平板であり、シートバックフレームBFに固定されている。
【0037】
弾性体420は、一方端が回転平板400に固定され、他方端が、固定平板410に固定され、アンカー回転軸AL方向に延在して複数設けられている。弾性体420は、合成ゴム等の弾性材を部材とした柱状の棒材であり、回転平板を介してアンカー軸部210の回転力が印加されていない状態においては、直線状の形態が保たれている。そして、シートアンカー部200の開口部OAは、車幅方向外側に向いた状態が保たれている。
【0038】
<作用・効果>
乗員Pが着座シート部SSに着座した場合の本実施形態係る乗員保護装置Sの作用及び効果について、以下、
図2および
図5~
図7を用いて説明する。
なお、以下においては、
図5に示すように、乗員Pが、着座シート部SSに着座してシートベルト部SBを装着し、着座シート部SSを車両後方側にスライドあるいはシートバック部130を車両後方側に後傾させた際に、シートバック部130の肩部に設けられたシートアンカー部200が、センターピラー部CPにおけるスルーリング部30よりも、車両後方側に位置するようにとった着座姿勢を、安楽姿勢EPとして説明する。
【0039】
(シートベルト部SBが装着されていない場合)
シートベルト部SBが装着されていない場合には、シートベルト部SBのウェビング部20は、リトラクタ部10に収納されている。このときは、アンカー構造部ASにおけるダンパー部DPの弾性体420は、直線状に保たれている。そのため、
図2に示すように、シートアンカー部200の開口部OAは、車幅方向外側を向いた状態になっている。そして、タングプレート部40は、着座シート部SSの肩口部であるシートアンカー部200の直下に位置している。
【0040】
また、
図6(a)に示すように、ウェビング部20が、リトラクタ部10に収納されている状態においては、円錐状外筒部CCの軸方向内側と、円錐状内筒部220の軸方向外側とが密接した状態となっている。そのため、シートアンカー部200の開口部OAは、車幅方向外側を向いた状態で固定されている。
【0041】
(乗員Pがシートベルト部SBを装着する場合)
乗員Pが着座シート部SSに着座し、シートベルト部SBを装着する場合には、乗員Pは、シートバック部130の肩口に位置しているタングプレート部40を引くことによってリトラクタ部10に収納されているウェビング部20を引き出し、タングプレート部40をバックル部150に嵌合させる。
【0042】
図6(b)に示すように、ウェビング部20が車両前方側に引き出されることによって、シートアンカー部200は、矢印AR1に示すウェビング部20が引き出される方向に回転する。アンカー軸部210が矢印AR1に示す方向に回転することによって、アンカー軸部210に固定されている回転平板400が回転する。
このとき、弾性体420の一端部は回転平板400に固定されているため、ダンパー部DPにおける弾性体420の一端部が矢印AR1に示す方向に回転平板400とともに回転することによって、弾性体420は捩れ、アンカー軸部210を矢印AR2に示す方向に移動させる。そして、円錐状外筒部CCの軸方向内側と、円錐状内筒部220の軸方向外側とが離れることにより、アンカー軸部210は、抵抗なく回転する。
そして、シートアンカー部200の開口部OAが、ウェビング部20が引き出されている方向に向くことによって、ウェビング部20は、乗員Pの肩口に接触した状態となる。また、リトラクタ部10がウェビング部20を引込む力と、矢印AR3に示すように、弾性体420が捩じりを戻す力により発生するシートアンカー部200が車幅方向外側を向く力とが発生し、シートベルト部SBは、乗員Pを緩やかに拘束する。
また、スルーリング部30とバックル部150とを結ぶ直線と車幅方向における水平線とがなす傾斜角度T1と、アンカー回転軸ALと車幅方向における水平線とがなす傾斜角度T2とが、同一の傾斜角度TAとなっている。そのため、シートベルト部SBが装着された際に、ウェビング部20は略直線状に装着され、ウェビング部20に捩じりあるいは大きな曲がりは発生しない。
【0043】
(乗員Pが安楽姿勢EPの場合)
乗員Pが、安楽姿勢EPをとっている場合には、シートアンカー部200は、センターピラー部CPに設けられたスルーリング部30よりも車両後方側に位置している。
上記の場合においても、シートアンカー部200の開口部OAが、ウェビング部20が引き出されている方向に向くことによって、ウェビング部20は、乗員Pの肩口に追従した状態となる。スルーリング部30とバックル部150とを結ぶ直線と車幅方向における水平線とがなす傾斜角度T1と、アンカー回転軸ALと車幅方向における水平線とがなす傾斜角度T2とが、同一の傾斜角度TAとなっている。そのため、シートベルト部SBが装着された際に、ウェビング部20は略直線状に装着され、ウェビング部20に捩じりあるいは大きな曲がりは発生しない。
【0044】
(シートベルト部SBが急激に引き出された場合)
車両Vに前方衝突等が発生し、乗員Pが車両前方側に急激に移動した場合には、ウェビング部20は、車両前方側に急激に引き出される。シートアンカー部200は、ウェビング部20の動きによって、急激な回転が発生する。
図7の矢印AR1に示すように、アンカー軸部210に急激な回転が発生することによって回転ブレーキ部RBのブレーキシュー部310に遠心力が発生し、ブレーキシュー部310は、矢印AR4に示すように、アンカー回転軸ALの軸方向外側に移動する。ブレーキシュー部310は、貫通孔THから突出して円錐状外筒部CCの軸方向内側と接触し、アンカー軸部210の回転を停止させる。そして、シートアンカー部200の開口部OAは、ウェビング部20が引き出された方向を向いて停止する。
また、リトラクタ部10は、ウェビング部20をリトラクタ部10の内部に引き込むとともに、前方衝突等によってウェビング部20がリトラクタ部10から急激に引き出された場合には、リトラクタ部10は、ウェビング部20の引き出しをロックする。
【0045】
以上、本実施形態に係る乗員保護装置Sは、着座シート部SSのシートバック部130に設けられ、中央部に設けられた開口部OAにシートベルトのウェビング部20を挿通させるシートアンカー部200と、シートアンカー部200に固定され、車両下方側に延在するアンカー軸部210と、シートバック部130に設けられ、円錐形状に形成されアンカー軸部を貫通させる円錐状外筒部CCと、円錐状外筒部CCの内側にアンカー軸部210に固定されて設けられ、アンカー軸部210が回転することによって、アンカー軸部210の軸方向外側に移動する回転ブレーキ部RBと、回転ブレーキ部RBにおいてアンカー軸部210に固定され、円錐状外筒部CCの内側にアンカー軸部210を中心とした円錐状に形成された円錐状内筒部220と、一方端がアンカー軸部210に固定された回転平板400に固定され、他方端が、シートバック部130に固定された固定平板410に固定された柱状の弾性体420が、アンカー軸部210のアンカー回転軸AL方向に延在して複数設けられているダンパー部DPと、を備えている。
つまり、シートベルト部SBが装着されていない場合には、アンカー構造部ASにおけるダンパー部DPの弾性体420は、直線状に保たれているため、シートアンカー部200の開口部OAは、車幅方向外側を向いた状態になる。そして、アンカー構造部ASの弾性体420は、乗員Pがタングプレート部40を、容易に引き出すことが可能な着座シート部SSの肩口部であるシートアンカー部200の直下に位置している。そして、着座シート部SSに着座した乗員Pは、ウェビング部20を引き出し、タングプレート部40をバックル部150に嵌合させる。このとき、円錐状外筒部CCの軸方向内側と、円錐状内筒部220の軸方向外側とが離れ、アンカー軸部210が抵抗なく回転することによって、乗員Pは、容易にシートベルト部SBを装着することができる。そして、シートアンカー部200の開口部OAが、ウェビング部20が引き出されている方向に向くことによって、ウェビング部20は、乗員Pの肩口に接触した状態となる。また、リトラクタ部10がウェビング部20を引込む力と、弾性体420が捩じりを戻す力により発生するシートアンカー部200が車幅方向外側を向く力とが発生し、シートベルト部SBは、乗員Pを緩やかに拘束することができる。
また、乗員Pが安楽姿勢EPをとっている場合においても、シートアンカー部200の開口部OAが、ウェビング部20が引き出されている方向に向くことによって、ウェビング部20は、乗員Pの肩口に追従した状態となる。そして、ウェビング部20は、乗員Pの肩部から離れることなく、乗員Pを緩やかに拘束することができる。
また、車両Vに前方衝突等が発生し、乗員Pが車両前方側に急激に移動した場合には、ウェビング部20は、車両前方側に急激に引き出される。シートアンカー部200には、ウェビング部20の動きによって、急激な回転が発生する。このとき、回転ブレーキ部RBによって、シートアンカー部200の開口部OAは、ウェビング部20が引き出されている方向に向いて停止し、ウェビング部20は、捩れることなく乗員Pの肩口に接触した状態を保つ。そして、ウェビング部20は、乗員Pの肩部から離れることなく、乗員Pを効果的に拘束することができる。
そのため、乗員保護装置Sは、装着しやすくするとともに、乗員を着座シートへ効果的に拘束することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る乗員保護装置Sは、車両Vのセンターピラー部CPに設けられウェビング部20を挿通させるスルーリング部30と着座シート部SSに設けられシートベルト部SBを嵌合させるバックル部150とを結ぶ直線と車幅方向における水平線HLとがなす第1の傾斜角度としての傾斜角度T1と、アンカー回転軸ALと車幅方向における水平線HLとがなす第2の傾斜角度としての傾斜角度T2とが、同一の傾斜角度TAである。
つまり、乗員Pがシートベルト部SBを装着した場合には、乗員Pが安楽姿勢EPをとっている場合においても、シートアンカー部200の開口部OAは、ウェビング部20が引き出されている傾斜角度TAの方向を向き、シートベルト部SBのウェビング部20を略直線状に装着させることによって、乗員Pは、容易にウェビング部20に捩じりあるいは大きな曲がりを発生させないでシートベルト部SBを装着することができる。
そのため、乗員保護装置Sは、装着しやすくするとともに、乗員を着座シートへ効果的に拘束することができる。
【0047】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10;リトラクタ部
20;ウェビング部
30;スルーリング部
40;タングプレート部
130;シートバック部
150;バックル部
200;シートアンカー部
210;アンカー軸部
220;円錐状内筒部
300;遠心ブレーキ部
310;ブレーキシュー部
320;バネ部
400;回転平板
410;固定平板
420;弾性体
AS;アンカー構造部
AL;アンカー回転軸
BF;シートバックフレーム部
HL;水平線
OA;開口部
P;乗員
S;乗員保護装置
SB;シートベルト部
SS;着座シート部
T1;傾斜角度
T2;傾斜角度
TA;傾斜角度