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特開2024-85931教師データ生成装置、教師データ生成方法及び農業用収穫装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085931
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】教師データ生成装置、教師データ生成方法及び農業用収穫装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240620BHJP
   A01D 43/00 20060101ALI20240620BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240620BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240620BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
A01D43/00
B25J13/08 A
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200721
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】520470752
【氏名又は名称】AGRIST株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165331
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】増渕 武
【テーマコード(参考)】
2B075
3C707
5L096
【Fターム(参考)】
2B075AA10
2B075AB10
3C707AS22
3C707BS09
3C707CY13
3C707DS01
3C707FS01
3C707KT01
3C707KX05
3C707LS09
3C707LW12
3C707MT04
3C707NS01
3C707NS26
5L096CA25
(57)【要約】
【課題】本発明では、収穫ロボットの運用において、収穫が可能か否かを判断するための学習済みモデルを生成する際に用いられる教師データを効率よく生成することが可能な教師データ生成装置、教師データ生成方法、及び、これらの発明を実装した農業用収穫装置を提供することを目的とする。
【解決手段】収穫対象となる収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信する撮像装置と、収穫物を所定の位置に固定する固定部と、固定部による収穫物の固定状態を検出し、データ処理部に検出データを送信する検出装置とを備え、データ処理部は、検出データに基づいて、収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるとともに、画像データ及び収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫対象となる収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信する撮像装置と、
前記収穫物を所定の位置に固定する固定部と、
前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信する検出装置と、を備え、
前記データ処理部は、
前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるとともに、
当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、
ことを特徴とする教師データ生成装置。
【請求項2】
前記固定部は、負圧により前記収穫物を吸着して所定の位置に固定し、
前記検出データは、前記収穫物を吸着する吸着圧のデータである
ことを特徴とする請求項1に記載の教師データ生成装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、
受信した前記検出データである吸着圧が所定値以下になった場合に、前記収穫物を収穫したと判断して収穫情報を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の教師データ生成装置。
【請求項4】
請求項1から3に記載に教師データ生成装置において、
前記画像データを作業者に提示し、作業者による収穫可否判断結果を取得する作業者判断取得部を備え、
前記データ処理部は、
前記作業者による収穫可否判断結果を、前記画像データに紐づけるとともに、
当該作業者による収穫可否判断結果を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、
ことを特徴とする教師データ生成装置。
【請求項5】
収穫対象となる収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信する撮像装置と、
前記収穫物を所定の位置に固定する固定部と、
前記固定部で固定した収穫物の果柄を切断する切断部と、
前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信する検出装置と、を備え、
前記撮像装置は、
前記切断部で果柄を切断するとき以前の前記収穫物を撮像し、
前記データ処理部は、
少なくとも前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるとともに、
当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、
ことを特徴とする農業用収穫装置。
【請求項6】
前記固定部は、負圧により前記収穫物を吸着して所定の位置に固定し、
前記検出データは、前記収穫物を吸着する吸着圧のデータである
ことを特徴とする請求項5に記載の農業用収穫装置。
【請求項7】
前記データ処理部は、
受信した前記検出データである吸着圧が所定値以下になった場合に、前記収穫物を収穫したと判断して収穫情報を生成する
ことを特徴とする請求項6に記載の農業用収穫装置。
【請求項8】
請求項5から7に記載に農業用収穫装置において、
前記画像データを遠隔作業者に提示し、遠隔作業者による収穫可否判断結果を取得する作業者判断取得部を備え、
前記データ処理部は、
前記作業者による収穫可否判断結果を、前記画像データに紐づけるとともに、
当該作業者による収穫可否判断結果を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、
ことを特徴とする農業用収穫装置。
【請求項9】
収穫対象となる収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信するステップと、
固定部により前記収穫物を所定の位置に固定するステップと、
前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信するステップと、を備え、
前記データ処理部は、
前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるステップと、
当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶するステップとを有する、
ことを特徴とする教師データ生成方法。
【請求項10】
請求項1から3に記載の教師データ生成装置により生成した教師データを用いて取得した学習済みモデルによって、収穫対象となる収穫物の収穫が可能か否かを判断し、
収穫が可能と判断した場合に前記収穫物を収穫する農業用収穫装置であって、
前記収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信する撮像装置と、
前記収穫物を所定の位置に固定する固定部と、
前記固定部で固定した収穫物の果柄を切断する切断部と、
前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信する検出装置と、を備え、
前記撮像装置は、
前記切断部で果柄を切断するとき以前の前記収穫物を撮像し、
前記データ処理部は、
前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるとともに、
当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、
ことを特徴とする農業用収穫装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習に用いる教師データを生成する教師データ生成装置、教師データ生成方法、及び、これらの発明を実装した農業用収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば農業の分野においては、深刻な人材不足や従事者の高齢化を背景に、効率的な事業運営の必要性が高まっている。効率化の一つの手段として、ロボットによる作業の補助が有効であり、このロボットを稼働させるために機械学習が多く用いられている。
【0003】
機械学習を用いてロボットを稼働させるためには、良質な教師データが欠かせない。非特許文献1には、機械学習に用いる教師データを生成ための試みが開示されており、深層学習を用いたデータクレンジングを利用することで、品質の高い教師データの構築を可能としている。非特許文献1においては、収穫対象を正確に認識することに主眼が置かれており、そのための教師データの構築を実現しているが、ロボットが行う作業内容が収穫作業であれば、「認識した収穫対象をロボットが収穫できるのか否か」という情報を紐づけて学習させることが必要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】源野広和,他1名,“深層学習を用いたデータクレンジングとリンゴ果実画像への応用”,農業情報研究,農業情報学会,29(3),2020,p.47-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、認識した収穫対象をロボットが収穫できるのか否かという情報は、容易に入手することが難しい。ロボットが認識した収穫対象の画像を見て、人が収穫可能か否かを判断し、当該画像と紐づけて教師データとする手法が考えられるが、人の判断が常に正しいとは限らず、実際にロボットが収穫できたのか否かという視点に欠けるため、この手法では良質の教師データを生成することは難しい。また、このような人手を介する教師データの生成は、多大な労力と時間が必要であり、スピーディな開発に支障をきたす結果となる。
【0006】
そこで、本発明では、収穫対象となる収穫物の収穫が可能か否かを判断するための学習済みモデルを生成する際に用いられる教師データを効率よく生成することが可能な教師データ生成装置、教師データ生成方法、及び、これらの発明を実装した農業用収穫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
(1) 収穫対象となる収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信する撮像装置と、前記収穫物を所定の位置に固定する固定部と、前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信する検出装置と、を備え、前記データ処理部は、前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるとともに、当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、ことを特徴とする教師データ生成装置。
【0009】
上記構成によれば、教師データ生成装置は、固定部による固定状態に基づいて、収穫対象となる収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成し、当該収穫物の画像データに紐付けることによって、機械学習用の教師データを生成する。
【0010】
これにより、教師データ生成装置は、実際に収穫できたか否かの正確な収穫情報を、人手を介することなく取得することが可能となり、この収穫情報を用いて効率的に教師データを生成することが可能となる。
【0011】
(2) 前記固定部は、負圧により前記収穫物を吸着して所定の位置に固定し、前記検出データは、前記収穫物を吸着する吸着圧のデータであることを特徴とする(1)に記載の教師データ生成装置。
【0012】
上記構成によれば、教師データ生成装置が備える固定部は、負圧を用いて収穫物を吸着して固定する構成を備える。また、固定部による固定状態を検出するデータとして、収穫物を吸着する吸着圧のデータを採用することができる。
【0013】
これにより、教師データ生成装置は、収穫物を確実に固定することが可能であり、固定状態の検出に吸着圧のデータを利用するため、簡易な構成で固定状態を確実に反映した収穫情報を取得することが可能となる。
【0014】
(3) 前記データ処理部は、受信した前記検出データである吸着圧が所定値以下になった場合に、前記収穫物を収穫したと判断して収穫情報を生成することを特徴とする(2)に記載の教師データ生成装置。
【0015】
上記構成によれば、吸着圧が所定値以下になった場合に、収穫物を収穫したと判断して収穫情報を生成する。
【0016】
これにより、確実に吸着した場合にのみ収穫したと判断することになるため、収穫したか否かの判断に誤認識がなくなり、より精度高い高品質な教師データを生成することが可能となる。
【0017】
(4) (1)から(3)に記載に教師データ生成装置において、前記画像データを作業者に提示し、作業者による収穫可否判断結果を取得する作業者判断取得部を備え、前記データ処理部は、前記作業者による収穫可否判断結果を、前記画像データに紐づけるとともに、当該作業者による収穫可否判断結果を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、ことを特徴とする教師データ生成装置。
【0018】
上記構成によれば、(1)から(3)に記載の構成に加えて、作業者が画像データを見て、収穫可否判断をし、その結果を当該画像データと紐づけて、機械学習用の教師データを生成する。
【0019】
これにより、(1)から(3)に記載した収穫情報のみでなく、同じ画像を見て作業者が収穫可否をどのように判断したかという収穫可否判断結果を加味した教師データとすることが可能となり、AIに頼りすぎない人の細やかな判断を考慮に入れることができるようになる。また、この教師データを用いた機械学習において収束するまでのスピードを上げることが可能となるのみでなく、収穫可否判断の情報を加味することで、教師データに過剰に最適化してしまい応用が効かなくなる、いわゆる過学習を防止することが可能となる。
【0020】
(5) 収穫対象となる収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信する撮像装置と、前記収穫物を所定の位置に固定する固定部と、前記固定部で固定した収穫物の果柄を切断する切断部と、前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信する検出装置と、を備え、前記撮像装置は、前記切断部で果柄を切断するとき以前の前記収穫物を撮像し、前記データ処理部は、少なくとも前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるとともに、当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、ことを特徴とする農業用収穫装置。
【0021】
上記構成によれば、農業用収穫装置は、固定部による固定状態に基づいて、収穫対象となる収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成し、当該収穫物の果柄を切断するとき以前の画像データに紐付けることによって、機械学習用の教師データを生成する。
【0022】
これにより、農業用収穫装置は、実際に収穫できたか否かの正確な収穫情報を、人手を介することなく取得することが可能となり、この収穫情報を用いて効率的に教師データを生成することが可能な農業用収穫装置を実現することができる。
【0023】
(6) 前記固定部は、負圧により前記収穫物を吸着して所定の位置に固定し、前記検出データは、前記収穫物を吸着する吸着圧のデータであることを特徴とする(5)に記載の農業用収穫装置。
【0024】
上記構成によれば、農業用収穫装置が備える固定部は、負圧を用いて収穫物を吸着して固定する構成を備える。また、固定部による固定状態を検出するデータとして、収穫物を吸着する吸着圧のデータを採用することができる。
【0025】
これにより、農業用収穫装置は、収穫物を確実に固定することが可能であり、固定状態の検出に吸着圧のデータを利用するため、簡易な構成で固定状態を確実に反映した収穫情報を取得することが可能な農業用収穫装置を実現することができる。
【0026】
(7) 前記データ処理部は、受信した前記検出データである吸着圧が所定値以下になった場合に、前記収穫物を収穫したと判断して収穫情報を生成することを特徴とする(6)に記載の農業用収穫装置。
【0027】
上記構成によれば、吸着圧が所定値以下になった場合に、収穫物を収穫したと判断して収穫情報を生成する。
【0028】
これにより、確実に吸着した場合にのみ収穫したと判断することになるため、収穫したか否かの判断に誤認識がなくなり、より精度高い高品質な教師データを生成することが可能な農業用収穫装置を実現することができる。
【0029】
(8) (5)から(7)に記載に農業用収穫装置において、前記画像データを遠隔作業者に提示し、遠隔作業者による収穫可否判断結果を取得する作業者判断取得部を備え、前記データ処理部は、前記作業者による収穫可否判断結果を、前記画像データに紐づけるとともに、当該作業者による収穫可否判断結果を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、ことを特徴とする農業用収穫装置。
【0030】
上記構成によれば、(5)から(7)に記載の構成に加えて、作業者が画像データを見て、収穫可否判断をし、その結果を当該画像データと紐づけて、機械学習用の教師データを生成する。
【0031】
これにより、(5)から(7)に記載した収穫情報のみでなく、同じ画像を見て作業者が収穫可否をどのように判断したかという収穫可否判断結果を加味した教師データとすることが可能となり、AIに頼りすぎない人の細やかな判断を考慮に入れることができるようになる。また、この教師データを用いた機械学習において収束するまでのスピードを上げることが可能となるのみでなく、収穫可否判断の情報を加味することで、教師データに過剰に最適化してしまい応用が効かなくなる、いわゆる過学習を防止することが可能な農業用収穫装置を実現することができる。
【0032】
(9) 収穫対象となる収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信するステップと、固定部により前記収穫物を所定の位置に固定するステップと、前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信するステップと、を備え、前記データ処理部は、前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるステップと、当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶するステップとを有する、ことを特徴とする教師データ生成方法。
【0033】
上記構成によれば、教師データ生成方法は、固定部による固定状態に基づいて、収穫対象となる収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成し、当該収穫物の画像データに紐付けるステップを有することによって、機械学習用の教師データを生成する。
【0034】
これにより、教師データ生成方法は、実際に収穫できたか否かの正確な収穫情報を、人手を介することなく取得することが可能となり、この収穫情報を用いて効率的に教師データを生成することが可能となる。
【0035】
(10) (1)から(3)に記載の教師データ生成装置により生成した教師データを用いて取得した学習済みモデルによって、収穫対象となる収穫物の収穫が可能か否かを判断し、収穫が可能と判断した場合に前記収穫物を収穫する農業用収穫装置であって、
前記収穫物を撮像し、データ処理部に画像データを送信する撮像装置と、前記収穫物を所定の位置に固定する固定部と、前記固定部で固定した収穫物の果柄を切断する切断部と、前記固定部による前記収穫物の固定状態を検出し、前記データ処理部に検出データを送信する検出装置と、を備え、前記撮像装置は、前記切断部で果柄を切断するとき以前の前記収穫物を撮像し、前記データ処理部は、前記検出データに基づいて、前記収穫物を収穫したか否かを示す収穫情報を生成して前記画像データに紐付けるとともに、当該画像データ及び当該収穫情報を、機械学習用の教師データとして教師データ記憶部に記憶する、ことを特徴とする農業用収穫装置。
【0036】
上記構成によれば、農業用収穫装置は、(1)から(3)に記載の教師データ生成装置により生成した教師データを用いて取得した学習済みモデルによって、収穫対象となる収穫物の収穫が可能か否かを判断し、収穫が可能と判断した場合に前記収穫物を収穫する。
【0037】
これにより、農業用収穫装置が収穫物の収穫作業を進める中で、機械学習用の教師データを生成し、これを用いて当該収穫作業をより精度の高い効率的なものに更新し続けることが可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、収穫対象となる収穫物の収穫が可能か否かを判断するための学習済みモデルを生成する際に用いられる教師データを、効率よく生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の好適な実施形態に係る教師データ生成装置の概要を説明する図である。
図2図2は、負圧によって収穫物を吸着するシステムの構成図である。
図3図3は、収穫物を吸着する工程における吸着圧の変化を示す図である。
図4図4は、作業者による収穫可否判断の情報を加味した教師データ生成装置の概要を説明する図である。
図5図5は、本発明の好適な実施形態に係る農業用収穫装置の概要を説明する図である。
図6図6は、作業者による収穫可否判断の情報を加味した農業用収穫装置の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態の一例を説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
以下の実施形態の説明では、収穫対象となる収穫物として、キュウリを一例として説明するが、本発明はキュウリに限らず、様々な野菜や果物等の収穫に適用することができる。例えば、ピーマン、トマト、みかん、イチゴ、ナス、りんご等の野菜や果物の収穫において用いることが可能である。
【0041】
1.第1の実施形態
図1は、本発明の好適な実施形態に係る教師データ生成装置10の概要を説明する図である。収穫物であるキュウリ11の画像データを取得する撮像装置12は、キュウリ11を含む画像を撮影し、画像処理装置13によりキュウリを認識して、収穫対象として特定する。ここで撮影した画像の中のキュウリを認識する画像処理技術は既存の機械学習を用いた手法を適用することが可能である。
【0042】
収穫対象として特定されたキュウリ11は、固定部14によって固定される。ここで、固定とは、キュウリ11が揺れ動かないように固定する意味であり、キュウリ11の収穫を容易にするだけでなく、後述するように果柄を切断する際の位置決め精度を高める目的を有している。
【0043】
固定部14はさまざまな固定方法を採用し得るが、本実施形態では、負圧を利用した吸盤による吸着を用いる。負圧を利用した吸着以外の固定方法としては、グリッパにより把持する方法、ベルトにより巻き込む方法、帯状や紐状の樹脂製の輪を通した後で輪を締めて固定する方法などの手法を採用することも可能である。いずれの手法もメリットとデメリットがあるため、利用するシーンや収穫物の特性に応じた選択をすることが求められる。
【0044】
図2に負圧によって収穫物を吸着するシステムの構成図を示す。本実施形態では、固定部は吸盤114によって構成され、検出装置は圧力計115によって構成される。吸盤114には真空ポンプ118によって負圧が供給され、当該真空ポンプ118はコントローラ119によって制御される。吸盤114と真空ポンプ118との間には、ゴミなどの異物が吸引されて真空ポンプ118が故障するリスクを避けるためのフィルタ116が設けられている。また、吸盤114は1つで構成しても良いが、複数用いてより確実にキュウリ11を固定することも可能である。なお、複数の吸盤を用いる際には、うち1つの吸盤がうまく吸着できなかった場合に、全体の吸引力が低下することになるため、サクションアシストバルブを用いて、全ての吸盤において適切な負圧を発生させることが望ましい。
【0045】
吸盤114で吸着したキュウリ11の固定を解除し、キュウリ11をリリースする際には、コントローラ119が真空ポンプ118を停止させる。しかしながら、真空ポンプ118を停止しただけでは、吸着圧は即座に大気圧には戻らず、暫くの間吸着状態が維持されてしまうため、タイミング良くキュウリをリリースすることが難しい。タイミング良く収穫物であるキュウリ11をリリースするためには、コントローラ119が外気導入バルブ117を動作させて、吸盤114に通じる経路の負圧状態を強制的に大気圧に戻す必要がある。これにより、タイミング良くキュウリ11を吸盤114からリリースすることが可能となる。
【0046】
図3に収穫物を吸着する工程における吸着圧の変化を示す。真空ポンプ118を作動させてキュウリ11の固定を開始し(t0)、吸着を試みる期間(t0~t1)は、吸着圧は安定しないが、t1でキュウリ11を確実に吸着すると、吸着圧は所定値P1以下に低下して安定する。また、キュウリ11をリリースしたいタイミング(t2)でコントローラ119が真空ポンプ118を停止させ、外気導入バルブ117から外気を導入すると、吸着圧は大気圧P0に戻り、その結果キュウリ11は吸盤からリリースされる。
【0047】
図1の検出装置15(図2の圧力計115)は図3に示した吸着圧の信号を検出し、検出データとしてデータ処理部16に送信する。なお、固定部14に吸盤を用いない場合は、グリッパによる把持の方式であれば、グリッパの位置を検出するスイッチの信号やグリッパ自体に設けられた圧力センサの信号を用いることができ、その他として、照射した光の反射信号、静電容量式センサなどの検出信号などを用いることも可能である。
【0048】
撮像装置12で撮影したキュウリ11を含む画像データと検出装置15から出力される検出データである吸着圧の情報は、データ処理部16に集約される。データ処理部16では、取得した吸着圧の情報に基づいて、キュウリ11を収穫したか否かを示す収穫情報が生成される。収穫情報の生成は、図3に示したように検出データである吸着圧が所定値P1以下になったt1のタイミングで、収穫物を収穫したと判断する手法が好適であり、この手法によると収穫したか否かの判断を人手を介することなく正確に行うことができる。
【0049】
撮像装置12で撮影したキュウリ11を含む画像データは、画像処理部13で処理された後、データ処理部16に入力される構成とすることが好ましい。画像処理部13は、別途準備された学習済みモデルを用いて、収穫物とその周辺の画像から、収穫物であるキュウリ11の存在を認識し、さらにはキュウリ11の3次元位置や凹凸、形状、状態、大きさ、湿り気などの表面状態などを認識して、画像データに付随する情報として、データ処理部16に送信することができる。
【0050】
データ処理部16では、画像処理部13から取得した画像データに、検出データから生成した収穫情報を紐づけて教師データとし、教師データ記憶部17に記憶する。このとき、画像処理部13で生成された画像データに付随する情報も併せて教師データとすることで、より高度な機械学習を行うことが可能な教師データを生成することが可能となる。
【0051】
図4に示すように、本発明に係る教師データ生成装置20は、作業者判断取得部28を備えていてもよい。作業者判断取得部28は、画像処理部から画像データを取得して作業者に画像を提示する。画像を見た作業者は、当該画像に表示されている収穫物21が収穫可能か否かを判断し、作業者判断取得部28に入力する。作業者判断取得部28は作業者によって入力された情報を収穫可否判断結果としてデータ処理部26に送信する。
【0052】
データ処理部26は、画像データと収穫情報に加えて、作業者判断取得部28で取得された収穫可否判断結果も教師データとして画像データに紐づけて教師データ記憶部27に記憶することができる。作業者による収穫可否判断の情報を加味することで、AIに頼りすぎない人の細やかな判断を考慮に入れることができるようになり、また、この教師データを用いた機械学習において収束するまでのスピードを上げることが可能となる。さらに、収穫可否判断の情報を加味することで、教師データに過剰に最適化してしまい応用が効かなくなる、いわゆる過学習を防止することが可能となる。
【0053】
作業者判断取得部28に入力される画像データには、画像処理部23で生成される画像データに付随するさまざまな情報を含めることも可能である。例えば、作業者に提示する画像では、画像処理部23で生成された付随情報に基づいて、収穫対象となる収穫物21を強調表示することも可能である。
【0054】
作業者判断取得部28が作業者から取得する情報は、収穫可否判断以外の情報を含んでも良い。例えば、作業者は、収穫物21の収穫の難しさを表す収穫難易度を複数段階で評価して入力してもよいし、収穫物21が収穫に適する程度に熟しているか否かに関する評価を入力してもよい。さらに、どの方向からアプローチすると収穫が容易になるかといった情報を入力することも可能である。これらの情報が増えるほどに、作業者の入力の難易度は高くなるが、それだけ生成される教師データも充実したものとなる。
【0055】
2.第2の実施形態
図5は、本発明の好適な実施形態に係る農業用収穫装置の概要を説明する図である。農業用収穫装置30においては、収穫物31の画像データを取得する撮像装置32が、収穫物31を含む画像を撮像し、当該画像に基づいて画像処理装置33が収穫物を認識して、収穫対象として特定する。収穫対象として特定された収穫物31は、固定部34によって固定される。
【0056】
固定部34によって固定された収穫物31は、切断部39によって当該収穫物31の果柄の部分を切断される。切断部39が切断する箇所は収穫物の種類に依存して適宜最適化することが可能であり、その切断位置は固定部34が収穫物31を固定するプロセスで決定される。
【0057】
切断部39で切断された収穫物31は、固定部34によって固定された状態で、収穫物を収容するケースにまで運ばれて、そこで固定部34が固定を解除することでリリースされ、ケースに収容されることで収穫作業が完了する。収穫物を固定した状態で運搬するためには、固定部や切断部、撮像装置がロボットアームの先端に取り付けられることが望ましく、また別の手段として、ロボット本体が移動して固定部や切断部を適切な場所に移動させることも可能である。
【0058】
本実施形態においても、固定部34による収穫物31の固定には、負圧を利用した吸盤による吸着を用いることができる。この場合、収穫物31の吸着により吸着圧が所定値以下になったのち、切断部39を稼働させて収穫物31の果柄の部分を切断し、吸着圧が所定値以下のまま収容ケースにまで運ばれたことを検出して、収穫物を収穫したと判断して収穫情報を生成する構成とすることができる。これにより収穫したか否かの判断をより正確に行うことが可能となる。
【0059】
農業用収穫装置30の上記収穫プロセスにおいては、事前に機械学習で取得した学習済みモデルを用いて、対象となる収穫物31を収穫できるか否かを自動的に判断して上記収穫作業を行うことが可能である。これにより自動的に収穫作業を進める農業用収穫装置30の収穫効率を向上させることが可能となる。
【0060】
農業用収穫装置30は、収穫作業を行いながら実際に収穫できたか否かを示す収穫情報を生成し、画像データと共に教師データ記憶部に記憶することが可能である。教師データ生成のプロセスは第1の実施例で詳細を述べた通りである。ここで生成した教師データは、対象の収穫物31を収穫できるか否かの判断を行うための学習済みモデルの改良や高度化に利用することが可能となる。
【0061】
図6に示すように、農業用収穫装置40には、作業者判断取得部48を設けることが可能である。作業者判断取得部の機能は第1の実施形態で詳細を説明した通りであるが、本実施形態においては、農業用収穫装置40は収穫現場である圃場で自動的に収穫物を収穫しており、収穫可否判断を行う作業者は圃場とは別の遠隔地で作業を行うことが可能である。こうすることで、作業者が圃場まで移動する手間を省くことが可能となる。
【0062】
また、作業者判断取得部48が作業者から取得する情報は作業者の作業スキルに合わせて適宜設定することも可能である。例えば、作業者の作業スキルが低い場合には、作業者判断取得部48に対して収穫が「可能」又は「不可能」のみを入力する態様とすることで、複雑な操作を要しない簡易な構成にすることが可能である。一方、作業者のスキルが高い場合には、収穫物21の収穫の難しさを表す収穫難易度を複数段階で評価して入力してもよいし、収穫物21が収穫に適する程度に熟しているか否かに関する評価を入力してもよい。これらの情報が増えるほどに、作業者の入力の難易度は高くなるが、それだけ生成される教師データも充実したものとなる。
【0063】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態及び変形例に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態及び変形例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
10,20 教師データ生成装置
11,21,31,41 収穫物
12,22,32,42 撮像装置
13,23,33,43 画像処理部
14,24,34,44 固定部
15,25,35,45 検出装置
16,26,36,46 データ処理部
17,27,37,47 教師データ記憶部
28,48 作業者判断取得部
30,40 農業用収穫装置
39,49 切断部


図1
図2
図3
図4
図5
図6