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特開2024-85957ポリカーボネート樹脂組成物および成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085957
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240620BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240620BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240620BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240620BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/02
C08K3/013
C08L71/02
C08K3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200757
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢羽田 達也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF062
4J002CG001
4J002CG011
4J002CH023
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EW017
4J002EW047
4J002EW057
4J002EW067
4J002EW087
4J002EW117
4J002EW127
4J002FB273
4J002FB283
4J002FD016
4J002FD023
4J002FD037
4J002GB01
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】熱安定性、成形外観および耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)53~72重量部および(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂マスター(B成分)28~47重量部の合計100重量部に対し、(C)無機充填材(C成分)を12~27重量部および(D)リン系安定剤(D成分)を0.04~0.85重量部含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂マスターが、分子量が1000~1700である下記式(1)で表される可塑剤(B-1成分)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(B-2成分)を重量比(B-1/B-2)で4/95~17/83の割合で混錬した樹脂混合物であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)53~72重量部および(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂マスター(B成分)28~47重量部の合計100重量部に対し、(C)無機充填材(C成分)を12~27重量部および(D)リン系安定剤(D成分)を0.04~0.85重量部含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂マスターが、分子量が1000~1700である下記式(1)で表される可塑剤(B-1成分)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(B-2成分)を重量比(B-1/B-2)で4/96~17/83の割合で混錬した樹脂混合物であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、-A-は、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルキレン基または炭素数6~20のアルキリデン基であり、R、R、R、R、R、R、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5の1価の炭化水素基であり、RおよびR10は炭素数1~5の2価の炭化水素基であり、R11およびR12は水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基である。mおよびnはオキシアルキレン単位の繰り返し単位数を示し、18≦m+n≦30を満たす自然数である。]
【請求項2】
C成分がマイカであることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項4】
自動車外装部品である請求項3記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性、成形外観および耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とをアロイ化したポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレートアロイは、優れた機械特性、耐薬品性の特性を有していることから、自動車分野で広く利用されている。また、近年自動車外装部品では組み立て工数削減のため部品の一体化が進んでおり、大型の部品の開発が活発となっている。そのため、大型の部品でも良好な成形外観を得るために、従来よりも流動性の高い樹脂に対する要求は高くなっている。この流動性を向上させる方法として可塑剤としてポリアルキレングリコール成分を添加する方法が検討されている。(例えば、特許文献1参照)しかしながら、可塑剤の成分により成形外観を向上させる効果が異なり、また可塑剤は一般的に分子量が低いため樹脂組成物の熱安定性および耐熱性が悪化する。その結果、不均一性や凹凸が生じてしまい十分な成形外観が得られず、またシリンダー内で高温に保持される過程で可塑剤が分解し、それにより発生するガスによりシルバーと呼ばれる外観不良が発生する問題が生じる。さらに、塗装時にかかる熱履歴に耐えられず、部品の変形が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6889221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記を鑑み、本発明の目的は熱安定性、成形外観および耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および成形品、殊に自動車外装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記課題は、下記構成により解決される。
1.(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)53~72重量部および(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂マスター(B成分)28~47重量部の合計100重量部に対し、(C)無機充填材(C成分)を12~27重量部および(D)リン系安定剤(D成分)を0.04~0.85重量部含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、ポリエチレンテレフタレート樹脂マスターが、分子量が1000~1700である下記式(1)で表される可塑剤(B-1成分)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(B-2成分)を重量比(B-1/B-2)で4/96~17/83の割合で混錬した樹脂混合物であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【0006】
【化1】
[式(1)中、-A-は、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルキレン基または炭素数6~20のアルキリデン基であり、R、R、R、R、R、R、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5の1価の炭化水素基であり、RおよびR10は炭素数1~5の2価の炭化水素基であり、R11およびR12は水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基である。mおよびnはオキシアルキレン単位の繰り返し単位数を示し、18≦m+n≦30を満たす自然数である。]
【0007】
2.C成分がマイカであることを特徴とする前項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.前項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
4.自動車外装部品である前項3記載の成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性、成形外観および耐熱性に優れることから、電気・電子用途、機械用途、OA用途、自動車外装部品、医療用途およびその他の各種用途において幅広く有用である。中でも自動車用外装部品として極めて有用な成形品を提供するものであり、本発明の奏する産業上の効果は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の詳細について更に説明する。
【0010】
<A成分:ポリカーボネート樹脂>
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては例えば界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0011】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(3-イソプロピル-4-ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-フェニル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}フルオレン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’-ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0012】
中でもビスフェノールA、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0013】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0014】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するにあたっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0015】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は特定されないが、粘度平均分子量が1×10未満であると高温特性等が低下し、4×10を超えると成形加工性が低下するようになるので、1×10~4×10のものが好ましく、1.4×10~3×10のものがより好ましく、さらに好ましくは1.6×10~2.5×10のものである。
【0016】
ポリカーボネート樹脂を2種以上混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合することも当然に可能である。
【0017】
本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(ただし[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0018】
A成分の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部中、53~72重量部であり、好ましくは55~68重量部、より好ましく57~66重量部、さらに好ましくは58~65重量部である。A成分の含有量が53重量部未満では耐熱性が悪化し、72重量部を超えると成形外観が悪化する。
【0019】
<B成分:ポリエチレンテレフタレート樹脂マスター>
本発明に使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂マスターはB-1成分である下記式(1)で表される可塑剤とB-2成分であるポリエチレンテレフタレート樹脂を混錬した樹脂混合物である。なお、混錬方法は特に限定されないが、押出機による混錬が好ましい。
【0020】
【化2】
[式(1)中、-A-は、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルキレン基または炭素数6~20のアルキリデン基であり、R、R、R、R、R、R、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5の1価の炭化水素基であり、RおよびR10は炭素数1~5の2価の炭化水素基であり、R11およびR12は水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基である。mおよびnはオキシアルキレン単位の繰り返し単位数を示し、18≦m+n≦30を満たす自然数である。]
【0021】
B-1成分とB-2成分とをマスターとせずに、別々にポリカーボネート樹脂に添加した場合、耐熱性が悪化する。
【0022】
<B-1成分:可塑剤>
本発明のB-1成分として使用される可塑剤は下記式(1)で表される化合物である。
【0023】
【化3】
[式(1)中、-A-は、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルキレン基または炭素数6~20のアルキリデン基であり、R、R、R、R、R、R、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5の1価の炭化水素基であり、RおよびR10は炭素数1~5の2価の炭化水素基であり、R11およびR12は水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基である。mおよびnはオキシアルキレン単位の繰り返し単位数を示し、18≦m+n≦30を満たす自然数である。]
【0024】
該可塑剤としては、ビスオール18EN(ビスフェノールA-EO付加物、平均付加モル数18)、ビスオール30EN(ビスフェノールA-EO付加物、平均付加モル数30)などが挙げられる。これらの化合物は、単独、又は2種以上組み合わせて使用することができる。可塑剤として上記式(1)で表される化合物以外の化合物を使用した場合、耐熱性が悪化する。
【0025】
B-1成分の分子量は1000~1700であり、1001~1650であることが好ましく、1003~1640であることがより好ましい。B成分の分子量が1700以上であると成形外観の改善効果が小さく、分子量が1000未満であると熱安定性が悪化する。
【0026】
<B-2ポリエチレンテレフタレート樹脂>
本発明のB-2成分として使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体と、ジオールまたはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
【0027】
ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸が使用できる。なお少量であれば、該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
【0028】
また本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂の成分であるジオールは、エチレングリコールである。更に少量であれば、分子量400~6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
【0029】
また得られたポリエチレンテレフタレート樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0030】
芳香族ジカルボン酸のアルキレングリコールエステルおよびその低重合体の製造方法について制限はないが、通常、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、アルキレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを、加熱反応させることによって製造される。例えばポリエチレンテレフタレート樹脂の原料として用いられるテレフタル酸のエチレングリコールおよびその低重合体は、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、或はテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、或はテレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させる方法により製造される。なお、上記の芳香族ジカルボン酸のアルキレングリコールエステルおよびその低重合体には、それと共重合可能な他のジカルボン酸エステルが、追加成分として、本発明方法の効果が実質的に損なわれない範囲内の量の、具体的には酸成分合計モル量を基準として10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲内の、添加量で含まれていてもよい。
【0031】
前記共重合可能な追加成分は、好ましくは、酸成分として、例えば、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族及び脂環式のジカルボン酸、並びにヒドロキシカルボン酸、例えば、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、p-オキシ安息香酸などの1種以上と、グリコール成分として、例えば、構成炭素数が2個以上のアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのような脂肪族、脂環式、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール、の1種以上とのエステル又はその無水物から選ばれる。上記追記成分エステルは、単独で用いられてもよく、或はその二種以上を併用してもよい。但しその共重合量は上記の範囲内であることが好ましい。
【0032】
本発明に使用するポリエチレンテレフタレート樹脂において、触媒を重合出発原料に添加する時期は、芳香族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルおよびその低重合体の重縮合反応の開始時期の前の任意の段階であればよく、さらに、その添加方法にも制限はない。例えば、芳香族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルを調製し、この反応系内に触媒の溶液またはスラリーを添加して重縮合反応を開始してもよいし、或は、前記芳香族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルを調製する際に出発原料とともに、又はその仕込み後に、触媒の溶液又はスラリーを反応系に添加してもよい。
【0033】
本発明に使用するポリエチレンテレフタレート樹脂の製造反応条件にも格別の制限はない。一般に重縮合反応は、230~320℃の温度において、常圧下、又は減圧下(0.1Pa~0.1MPa)において、或はこれらの条件を組み合わせて、15~300 分間重縮合することが好ましい。
【0034】
本発明に使用するポリエチレンテレフタレート樹脂において、必要に応じて反応安定剤、例えばトリメチルホスフェートを製造における任意の段階で加えてもよく、さらに必要により、反応系に酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、整色剤、消泡剤、その他の添加剤の1種以上を配合してもよい。特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂中には、少なくとも1種のヒンダードフェノール化合物を含む酸化防止剤が含まれることが好ましいが、その含有量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の重量に対して、1重量%以下であることが好ましい。その含有量が1重量%をこえると、酸化防止剤自身の熱劣化により、得られた生成物の品質を悪化させるという不都合を生ずることがある。
【0035】
本発明に使用するポリエチレンテレフタレート樹脂に用いられる酸化防止剤用ヒンダードフェノール化合物は、ペンタエリスリトール-テトラエキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンなどから選ばれ、これらヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系二次酸化防止剤とを併用して用いることも好ましく実施される。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤のテレフタレート樹脂への添加方法には特に制限はないが、好ましくはエステル交換反応、またはエステル化反応の終了後、重合反応が完了するまでの間の任意の段階で添加される。
【0036】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.40~0.90であることが好ましい。前記固有粘度のより好ましい範囲は、0.45~0.80であり、さらに好ましくは0.50~0.70である。ポリエステル樹脂の固有粘度が0.40未満の場合、十分な衝撃特性と耐薬品性が得られない場合があり、0.90より大きい場合、射出成形時の流動性が低下し、フローマークや着色不良といった成形外観不良が発生する場合がある。ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、オルソクロロフェノールに溶解し、35℃の温度において測定される。
【0037】
B-1成分とB-2成分を混錬したB成分であるポリエチレンテレフタレート樹脂マスターにおけるB-1成分およびB-2成分の重量比(B-1/B-2)は4/96~17/83の割合であり、好ましくは、6/94~16/84であり、より好ましくは、7/93~15/85であり、さらに好ましくは、8/92~14/86である。該重量比が4/96未満の場合、成形外観が悪化し、17/83を超えた場合、熱安定性が悪化する。
【0038】
B成分の含有量は、A成分およびB成分の合計100重量部中、28~47重量部であり、好ましくは32~45重量部、より好ましくは34~43重量部、さらに好ましくは、35~42重量部である。B成分の含有量が28重量部未満では成形外観が悪化し、47重量部を超えると耐熱性が悪化する。
【0039】
<C成分:無機充填材>
本発明に使用される無機充填材としては、マイカ、ワラストナイト、タルク等が挙げられるが、マイカであることが好ましい。マイカの平均径は10~28μmであることが好ましく、より好ましくは13~25μm、さらに好ましくは15μm~20μmである。平均径が10μm未満では線膨張係数、剛性の改善効果が少ない場合があり、28μmを超えると成形外観が悪化したり、耐衝撃性の低下が大きくなる場合がある。
【0040】
マイカの例としては、例えばマスコバイト、フロゴパイト、バイオタイトなどが挙げられる。また、マイカはシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤で表面処理したものであってもよい。シラン系カップリング剤としては、たとえばエポキシシラン、アミノシラン、ビニルシランなどが挙げられる。また、チタネート系カップリング剤としては、たとえばモノアルコキシタイプ、キレートタイプ、コーディネートタイプなどのものが挙げられる。マイカをカップリング剤で表面処理する方法には特に限定はなく、通常の方法で実施することができる。たとえばマイカに対してカップリング剤を0.1~10重量%添加し、加熱しながら高速で混合することにより実施することができる。
【0041】
C成分の含有量は、A成分およびB成分の合計100重量部に対し、12~27重量部であり、好ましくは13~25重量部であり、14~23重量部であることがより好ましい。さらに好ましくは、15~21重量部である。C成分の含有量が12重量部未満の場合は耐熱性の改善効果が少なく、27重量部を超えると成形外観が悪化する。
【0042】
<D成分:リン系安定剤>
本発明に使用するリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィン等が例示される。これらの中でも特に、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、トリオルガノホスフェート化合物、アシッドホスフェート化合物が好ましい。尚、アシッドホスフェート化合物における有機基は、一置換、二置換、これらの混合物のいずれも含む。該化合物に対応する下記の例示化合物においても同様にいずれをも含むものとする。
【0043】
トリオルガノホスフェート化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等が例示される。これらの中でもトリアルキルホスフェートが好ましい。かかるトリアルキルホスフェートの炭素数は、好ましくは1~22、より好ましくは2~20である。特に好ましいトリアルキルホスフェートはトリメチルホスフェートである。
【0044】
アシッドホスフェート化合物としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、およびビスフェノールAアシッドホスフェート等が例示される。これらの中でも炭素数10以上の長鎖ジアルキルアシッドホスフェートが熱安定性の向上に有効であり、該アシッドホスフェート自体の安定性が高いことから好ましい。
【0045】
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0046】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が例示される。
【0047】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0048】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0049】
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン等が例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0050】
好適なリン系安定剤は、下記式(2)で表されるホスファイト化合物である。
【化4】
[式(2)中、RおよびR’は炭素数6~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基またはアルキルアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0051】
該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、SONGNOX6260PW(商標、SONGWON社製)として市販されており利用できる。
【0052】
D成分の含有量は、A成分およびB成分の合計100重量部に対し、0.04~0.85重量部であり、0.05~0.60重量部であることが好ましく、0.06~0.50重量部であることがより好ましい。D成分の含有量が0.04重量部未満の場合、熱安定性が悪化し、0.85重量部を超えると、流動性が悪化し、それに伴い成形外観が悪化する。
【0053】
<その他成分>
<離型剤>
本発明の樹脂組成物には、その成形時の生産性向上や成形品の寸法精度の向上を目的として、更に、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイル等)、パラフィンワックス、蜜蝋等の公知の離型剤を配合することもできる。本発明の樹脂組成物は、良好な流動性を有することから圧力伝播が良好で、歪の均一化された成形品が得られる。一方で離型抵抗が大きくなるような複雑形状の成形品の場合、離型時における成形品の変形を招く恐れがある。上記特定の成分の配合は、かかる問題を樹脂組成物の特性を損なうことなく解決するものである。
【0054】
かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数は、好ましくは3~32、より好ましくは5~30である。一方、脂肪族カルボン酸は好ましくは炭素数3~32、より好ましくは炭素数10~30の脂肪族カルボン酸である。その中でも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪酸エステルは、全エステル(フルエステル)が高温時の熱安定性に優れる点で好ましい。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30の範囲がより好ましい。更に脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0055】
ポリオレフィン系ワックスとしては、エチレン単独重合体、炭素原子数3~60のα-オレフィンの単独重合体もしくは共重合体、またはエチレンと炭素原子数3~60のα-オレフィンとの共重合体等の、分子量が1,000~10,000のものが例示される。かかる分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により標準ポリスチレン換算で測定される数平均分子量である。かかる数平均分子量の上限は、より好ましくは6,000、更に好ましくは3,000である。ポリオレフィン系ワックスにおけるα-オレフィン成分の炭素数は好ましくは60以下、より好ましくは40以下である。より好適な具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテン等が例示される。好適なポリオレフィン系ワックスはエチレン単独重合体、もしくはエチレンと炭素原子数3~60のα-オレフィンとの共重合体である。炭素原子数3~60のα-オレフィンの割合は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。いわゆるポリエチレンワックスとして市販されているものが好適に利用される。
【0056】
離型剤の含有量は、A成分およびB成分の合計100重量部に対し、好ましくは0.005~5重量部、より好ましくは0.01~4重量部、さらに好ましくは0.02~3重量部である。
【0057】
<染顔料>
本発明の樹脂組成物は、更に各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。本発明で使用する染顔料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等を挙げることができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物はメタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、アルミ粉が好適である。また、蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。
【0059】
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料等を挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
【0060】
染顔料の含有量は、A成分およびB成分の合計100重量部に対し、0.00001~1重量部が好ましく、0.00005~0.5重量部がより好ましい。
【0061】
<樹脂組成物の製造方法について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造は任意の方法で行なうことができる。たとえば、単軸または多軸のスクリュー押出機などでの混練により製造される。B成分であるポリエチレンテレフタレート樹脂マスターはポリエチレンテレフタレート樹脂をフィーダーにより押出機に投入し、上記式(1)で表される可塑剤は液注装置を使用することで押出機に投入することで調製できる。このポリエチレンテレフタレート樹脂マスターは、ポリカーボネート樹脂、リン系安定剤および無機充填材と一括混合するか、または成分の一部を先に混合したのち、それを残部と混合、混練してもよい。
【0062】
このようにして得られたポリカーボネート樹脂組成物は、既知の種々の方法、たとえば射出成形法、押出し成形法などにより、自動車部品、電気・電子部品などに成形することができる。
【実施例0063】
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を実施例に基づき具体的に説明する。下記測定条件や実施例などにおける「部」は、それぞれ「重量部」を表す。
<使用材料>
<A成分:ポリカーボネート樹脂>
A-1:L-1225WX(商品名)(帝人(株)製、粘度平均分子量19700)
【0064】
<B成分:ポリエチレンテレフタレート樹脂マスター>
B-1:ビスオール18EN(商品名)(東邦化学工業製、分子量1010、ポリアルキレンビスフェノールAエーテル)とTRN-MTJ(帝人(株)製、IV0.53、ポリエチレンテレフタレート樹脂)を重量比5/95の割合で2軸押出機[TEX30α-31日本製鋼所製]を用いて230℃で混錬したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-2:重量比を12/88とした以外はB-1と同様の方法で調製したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-3:重量比を15/85とした以外はB-1と同様の方法で調製したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-4:ビスオール30EN(商品名)(東邦化学工業製、分子量1600、ポリアルキレンビスフェノールエーテル)とTRN-MTJ(帝人(株)製、IV0.53、ポリエチレンテレフタレート樹脂)を重量比12/88の割合で2軸押出機[TEX30α-31日本製鋼所製]を用いて230℃で混錬したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-5(比較例):重量比を3/97とした以外はB-1と同様の方法で調製したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-6(比較例):重量比を18/82とした以外はB-1と同様の方法で調製したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-7(比較例):ニューポールBPE-20T(商品名)(三洋化成工業製、分子量680、ポリアルキレンビスフェノールAエーテル)とTRN-MTJ(帝人(株)製、IV0.53、ポリエチレンテレフタレート樹脂)を重量比12/88の割合で2軸押出機[TEX30α-31日本製鋼所製]を用いて230℃で混錬したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-8(比較例):ビスオール60EN(商品名)(三洋化成工業製、分子量3000、ポリアルキレンビスフェノールAエーテル)とTRN-MTJ(帝人(株)製、IV0.53、ポリエチレンテレフタレート樹脂)を重量比12/88の割合で2軸押出機[TEX30α-31日本製鋼所製]を用いて230℃で混錬したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
B-9(比較例):ビスオール18EN(商品名)(東邦化学工業製、分子量1010、ポリアルキレンビスフェノールAエーテル)とTRN-MTJ(帝人(株)製、IV0.53、ポリエチレンテレフタレート樹脂)を事前に混錬せず、重量比が12/88となるように押出機に投入した配合物。
B-10:クラレポリオールP-1010(商品名)(クラレ製、分子量1000、アジピン酸ポリオール)とTRN-MTJ(帝人(株)製、IV0.53、ポリエチレンテレフタレート樹脂)を重量比12/88の割合で2軸押出機[TEX30α-31日本製鋼所製]を用いて230℃で混錬したポリエチレンテレフタレート樹脂マスター
【0065】
<C成分:無機充填材>
C-1:GM-6(商品名)(GreaMinerals製、平均径17μm、マイカ)
<D成分:リン系安定剤>
D-1;6260PW(商品名)(SNGWON製、ビス(2,4-ジーターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)
【0066】
<その他の添加剤>
(離型剤)
E-1:EW-400(商品名)(理研ビタミン製、特殊脂肪酸エステル)
(カーボンマスターバッチ)
E-2:ROYAL BLACK90003S(商品名)(越谷化成工業製)
【0067】
<樹脂組成物の製造>
(実施例1~11、比較例1~12)
表1に示す成分を表1に示す割合で予備混合し、それぞれ270℃で2軸押出機[TEX30α-31日本製鋼所製]を用いて溶融混練し、ペレットを製造した。
【0068】
<評価方法>
得られたペレットを、120℃で5時間以上熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、下記評価方法で判定した。結果を表1に示す。
1.熱安定性評価
射出成型機[ROBOSHOT α―S100iA ファナック製]を使用して、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で10分滞留させて角板(縦90mm×横50mm×厚み2mm)を成形し、その際の外観を肉眼で観察して、次の基準に従って判定した。
○:シルバーの発生している面積が10cm未満
×:シルバーの発生している面積が10cm以上
【0069】
2.成形外観評価
射出成形機[EC130SX2-4Y 東芝機械エンジニアリング製]を使用して、シリンダー温度280℃、金型温度60℃、射出速度70mm/Secの条件で角板(縦150mm×横150mm×厚み2.5mm)を成形し、その外観を肉眼で観察して、次の基準に従って判定した。
○:表面の不均一性および凹凸がほとんど認められない。
×:表面の不均一性および凹凸が著しい。
【0070】
3.耐熱性評価
射出成型機[ROBOSHOT α―S100iA ファナック製]を使用して、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で成形した曲げ試験片をISO75-1に準拠し、1.80MPaの荷重で測定し、次の基準に従って判定した。
○:荷重たわみ温度が96℃以上
×:荷重たわみ温度が96℃未満
【0071】
【表1-1】
【0072】
【表1-2】
【0073】
表1に示されるとおり、本発明の樹脂組成物によれば、熱安定性、成形外外観および耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の樹脂組成物および成形品は、電気・電子・OA機器の筐体やインテリアパネル、ルーフスポイラー、ウィンドウガーニッシュ、ルーフパネル等に代表される自動車外装部品に利用できる。