(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085997
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20240620BHJP
F24D 11/00 20220101ALI20240620BHJP
【FI】
F24F5/00 102C
F24F5/00 101A
F24F5/00 101B
F24D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200834
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】川村 聡宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 清
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恒佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 ミゲイル
【テーマコード(参考)】
3L054
3L071
【Fターム(参考)】
3L054BF01
3L054BF10
3L054BG09
3L054BG10
3L054BH04
3L071CC01
3L071CC04
3L071CC05
3L071CD04
3L071CE05
3L071CF05
3L071CF12
3L071CF14
3L071CJ02
(57)【要約】
【課題】消費エネルギーの低減、自然エネルギーや未利用エネルギーの利用効率の向上、及び安定した空調能力を実現する空調システム空調システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る空調システムは、居室の内部に対向するように配置された、居室内の空気と熱の授受が可能な熱交換パネルと、躯体と対向する前記熱交換パネルの板面に接するように配置された、蓄熱可能な潜熱蓄熱材と、少なくとも一部が前記潜熱蓄熱材に接して配置された、熱媒が流れる配管と、前記配管を流れる前記熱媒を循環させる循環装置と、を備える。前記循環装置は、前記熱媒を循環させ、前記潜熱蓄熱材に蓄熱し、前記潜熱蓄熱材から前記熱交換パネルに熱を供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室の内部に対向するように配置された、居室内の空気と熱の授受が可能な熱交換パネルと、
躯体と対向する前記熱交換パネルの板面に接するように配置された、蓄熱可能な潜熱蓄熱材と、
少なくとも一部が前記潜熱蓄熱材に接して配置された、熱媒が流れる配管と、
前記配管を流れる前記熱媒を循環させる循環装置と、
を備え、
前記循環装置は、前記熱媒を循環させ、前記潜熱蓄熱材に蓄熱し、前記潜熱蓄熱材から前記熱交換パネルに熱を供給する、
空調システム。
【請求項2】
前記配管は、前記熱交換パネルと前記潜熱蓄熱材の間に挟まれるように配置されている、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記循環装置は、地中熱又はカスケード制御を行って得た熱を輸送する、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記循環装置は、
外気と前記熱媒との熱交換を行う外気熱交換器と、
地中熱と前記熱媒との熱交換を行う地中熱交換器と、
カスケード制御を行って得た熱との熱交換を行うカスケード熱交換機と、
を備え、
前記熱媒を循環させる前記循環装置を、前記潜熱蓄熱材と、前記外気熱交換器、前記地中熱交換器、前記カスケード熱交換機のうちの何れかに切り替え可能とした、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項5】
前記潜熱蓄熱材は16℃以上22℃以下で固体及び液体の一方から他方へ相変化する、
請求項1から4の何れか一項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記潜熱蓄熱材は、前記熱交換パネル及び前記配管に着脱可能である、
請求項1から4の何れか一項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記配管は金属製であり、前記熱交換パネルに接する、
請求項1から4の何れか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと室内の快適性とを両立する技術として、放射式空調が注目されている。放射式空調を採用した空調システムでは、例えば熱交換パネル等のように高い熱伝導率を有するパネル素材を天井に設置し、当該パネル素材を冷却し、パネル素材の室内側の板面の温度を低く保つことによって、放射によるパネル素材と室内との熱交換を促す空調システムである。放射式空調では、対流式空調に比べて、搬送する熱媒(冷媒)の温度を室温に近い温度帯で運用できることに加えて、熱媒として搬送動力の小さい水を用いるため、熱源及び熱搬送時の消費エネルギーを低減できる。そのことによって、設備機器の高効率化及び省エネルギー化を図ることができる。しかしながら、さらなる省エネルギー化による性能向上を設備機器の高効率化だけで達成するには限度があり、自然エネルギー又は未利用エネルギーを有効に活用する必要がある。
【0003】
自然エネルギー又は未利用エネルギーを有効に活用するには、主に2つの課題が挙げられる。第1の課題は、空調に必要なエネルギーを確保し難いことである。つまり、冷房においては通常の対流式空調で7℃~10℃程度の温度帯の冷水が必要となるが、自然エネルギーや未利用エネルギーだけ(低エクセルギー)で当該温度帯の冷水を作ることが難しく、地中熱ヒートポンプ等の機械的な熱源を用いなければならない。第2の課題は、自然エネルギーや未利用エネルギーに対して需要のある時間帯では、必要なエネルギー量を確保しづらく、自然エネルギーや未利用エネルギーが不安定であるということである。例えば、昼間に居室内や執務室内を冷房したい場合、夜間の気温の低い外気を利用することは難しい。また、下水等の排熱量も周囲の建物運用によって変動するため、安定したエネルギーを確保できない。
【0004】
上述の2つの課題を解決するために、放射式空調と蓄熱式空調とを併用する空調システムが注目されている。冷房時の放射空調では、16℃~20℃程度の温度帯の冷温水(水、熱媒)で運用できるため、機械的な熱源を用いずに済み、自然エネルギー又は未利用エネルギーを直接、空調に利用し、第1の課題の解決につながる。一方で、蓄熱技術では、需要がない時間帯の自然エネルギー又は未利用エネルギーを蓄熱槽等に蓄えることによって、これらのエネルギーを安定的に空調に活用できる形に変えることができるため、第2の課題の解決につながる。そのため、放射式空調と蓄熱技術とを併用した空調システムによれば、自然エネルギーを効率的且つ安定的に活用でき、さらなる省エネルギー化を実現できる。
【0005】
放射式空調と蓄熱技術とを組み合わせた例として、例えば、Thermo-Active Building System(TABS)と呼ばれ、床スラブ等の躯体に配管を埋込み、配管の蓄熱及び躯体面を放射式空調に活用する技術が挙げられる。しかしながら、TABSでは、貯めた熱が躯体内で拡散してしまい、所望の場所で使うことが難しい。また、躯体内で温度分布が生じるため、躯体の深部の温度が表面の温度に反映されるまでに時間がかかり、応答性が低く、制御が難しい。そのため、蓄熱媒体を室内に設置することができ、且つ媒体内での熱伝導で熱が拡散し難い潜熱蓄熱材を用いることが適当であった。
【0006】
例えば、特許文献1には、潜熱蓄熱材と顕熱蓄熱材とを組み合わせた蓄熱媒体を用いた放射式空調を行う空調システムが開示されている。特許文献1の空調システムでは、吸熱特性に優れた顕熱蓄熱材と放熱特性に優れた潜熱蓄熱材とを併用することによって、不安定な自然エネルギー等を有効活用できる。また、特許文献2には、潜熱蓄熱材と床暖房システムとを併用したヒーターパネル及び暖房システムが開示されている。特許文献2のヒーターパネルでは、床下に逃げる未利用エネルギーを蓄熱することによって、室温を安定させ、ヒートショックを防ぐ。さらに、特許文献3には、床面に所定の温度(例えば、27℃)で相変化する潜熱蓄熱材を敷設した畜冷熱床、及び天井面に前述の所定の温度とは異なる温度(20℃)程度で相変化する潜熱蓄熱材を敷設した居室が開示されている。特許文献3の居室では、天井表面温度と床表面温度とを相変化する温度帯に維持することで快適な空間を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-133713号公報
【特許文献2】特開2019-070514号公報
【特許文献3】特開2019-196632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された空調システムでは、蓄熱媒体に蓄熱するためのエネルギーが空気によって搬送されるため、搬送時の消費エネルギーが増大する虞があった。特許文献2に開示されたヒーターパネルでは、断熱材を用いることによって床下に逃げる熱を最小限に抑えられるが、空調システムの立ち上がりの際には潜熱蓄熱材の吸熱量が熱負荷となる虞があった。また、同ヒーターパネルは、通電することで発熱するヒータを用いて自然エネルギーなどの低エクセルギーなエネルギーを有効活用しづらいことも課題であった。特許文献3に開示された畜冷熱床を備えた居室では、蓄熱されるエネルギーが室内で生じるエネルギーによって蓄えられるため、室内で使用するエネルギー量は増大する虞があった。すなわち、潜熱蓄熱材を用いた従来の空調システムでは、消費エネルギーの抑制、自然エネルギーや未利用エネルギーの利用効率の向上、及び安定した空調能力の実現が難しかった。
【0009】
本発明は、消費エネルギーの抑制、自然エネルギーや未利用エネルギーの利用効率の向上、及び安定した空調能力を実現する空調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る空調システムは、居室の内部に対向するように配置された、居室内の空気と熱の授受が可能な熱交換パネルと、躯体と対向する前記熱交換パネルの板面に接するように配置された、蓄熱可能な潜熱蓄熱材と、少なくとも一部が前記潜熱蓄熱材に接して配置された、熱媒が流れる配管と、前記配管を流れる前記熱媒を循環させる循環装置と、を備える。前記循環装置は、前記熱媒を循環させ、前記潜熱蓄熱材に蓄熱し、前記潜熱蓄熱材から前記熱交換パネルに熱を供給する。
【0011】
本発明に係る空調システムによれば、床や天井等の躯体への熱伝導による居室の外部への熱損失が低減され、空調対象の空間で熱を効率良く活用できる。また、本発明に係る空調システムによれば、搬送動力の小さい冷温水から効率的に蓄熱を行うことができる。また、本発明に係る空調システムによれば、冷房時の放射空調に必要な温度帯に合わせて、自然エネルギーや未利用エネルギー等の低エクセルギーのエネルギーをそのまま利用可能な仕様とすることができる。また、本発明に係る空調システムによれば、不安定な自然エネルギーを活用しても安定した空調能力を確保できる。また、本発明に係る空調システムによれば、活動時間外や業務時間外に生じている利用価値の高い自然エネルギーを有効に活用できる。したがって、本発明に係る空調システムによれば、消費エネルギーの低減、自然エネルギーや未利用エネルギーの利用効率の向上、及び安定した空調能力を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、省エネルギー化、及びエネルギーの利用効率の向上を図ることができる空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態の空調システムが設けられた建築物の断面図である。
【
図2】
図1に示す空調システムの熱交換部の断面図である。
【
図3】
図1に示す空調システムの熱交換パネル及び熱交換部の斜視図である。
【
図4】
図3に示す熱交換部の潜熱蓄熱材の斜視図である。
【
図5】本発明に係る一実施形態の空調システムを配置した建築物の構成及び空調運転時の様子を示す概略図である。
【
図6】
図1に示す空調システムを用いた1日における空調スケジュールの一例を示す図である。
【
図7】
図5に示す空調システムの空調運転時の様子を示す別の概略図である。
【
図8】
図5に示す空調システムの空調運転時の様子を示すさらに別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した一実施形態の空調システムについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る実施形態の空調システム101が設けられた建築物Mの1つの階層を側方から見た断面図である。建築物Mは、例えば大型店舗やマンション等であり、1層以上の階層を有する。建築物Mの階層数は、特に限定されない。空調システム101は、熱交換パネル140と、熱交換部200と、を備える。
【0016】
図1に示すように、熱交換パネル140は、建築物Mの所定の階層の天井側の躯体(上部躯体)150よりも下方に配置され、高さ方向における躯体150と床側の躯体110との間の居室130の上部の空間に配置されている。具体的には、熱交換パネル140は、天井側の躯体150よりも下方の天井に配置され、天井材の一部又は全部を構成している。躯体150と熱交換パネル140との間に空間が存在するが、当該空間には不図示の装置や機器が設けられていてもよい。また、熱交換パネル140は、少なくとも躯体150の底面150bに接触せず、さらに建築物Mの不図示の外壁や側壁の壁面に接触しないように配置されることが好ましい。このことによって、熱交換パネル140の放熱時に底面150bや前述の各壁面から熱を拡散させることなく、居室130の所望の空間に対して放射式空調を行うことができる。
【0017】
熱交換パネル140の板面140a,140bは、躯体150の居室130側の底面150b、及び躯体110の居室130側の表面110aと略平行である。熱交換パネル140は、鋼板等のように高い熱伝導性を有する金属によって形成されており、例えば鉄を主成分とするスチール製である。
【0018】
熱交換部200は、熱交換パネル140の躯体150側の板面140aに配置されている。本実施形態では、熱交換パネル140の板面140aに、複数の熱交換部200が配置されている。
【0019】
躯体110の居室130側の表面110aに、床仕上材120が敷かれている。居室130の滞在者Wは、床仕上材120と熱交換パネル140との間の居室130に滞在し、活動できる。すなわち、熱交換パネル140は、床仕上材120及び滞在者Wの上方に配置されている。
【0020】
空調システム101では、熱交換部200と熱伝導性の高い熱交換パネル140との間で熱交換が行われ、熱交換パネル140が冷却される。例えば、図中に破線で囲まれた領域の空気及び熱交換パネル140の温度は下がり、熱交換パネル140の居室130側の板面140bの温度も低下する。その結果、熱交換パネル140によって冷却された空気が熱交換パネル140の下方に放射され、放射式空調が行われる。また、熱交換パネル140は、下方の居室130にいる滞在者Wや不図示の機器をはじめ、居室130に面する壁、及び床等の熱を吸収する。
【0021】
図2は、熱交換部200の拡大断面図である。
図2に示すように、熱交換部200は、
熱交換パネル140の板面140aに接する潜熱蓄熱材210と、不図示の冷温水を流通させるための冷温水配管(配管)205によって構成されている。なお、空調システム101における熱媒は、冷温水である。少なくとも熱交換パネル140に接する冷温水配管205(後述する冷温水配管350)は、樹脂で構成されていてもよいが、例えば銅やステンレス(SUS)等のように熱伝導性を有する金属から構成されていることが好ましい。
【0022】
潜熱蓄熱材210は、側方(
図2の正面視)から見た断面で例えばドーム状に形成されている。空調システム101を冷房に用いる場合、潜熱蓄熱材210として、16℃~22℃程度で相変化が生じる潜熱蓄熱材が用いられる。このような潜熱蓄熱材としては、例えば硫酸ナトリウム10水塩等が挙げられる。
【0023】
冷温水配管205の一部は、潜熱蓄熱材210に埋設されている。また、潜熱蓄熱材210に覆われている冷温水配管205は、熱交換パネル140の板面140aに接している。すなわち、冷温水配管205は、潜熱蓄熱材210に覆われ、熱交換パネル140に接している。なお、潜熱蓄熱材210に覆われている冷温水配管205は、必ずしも熱交換パネル140に接していなくてもよく、潜熱蓄熱材210のみに覆われ、潜熱蓄熱材210を介して熱交換パネル140と間接的且つ熱的に接続されていてもよい。
【0024】
図3は、熱交換パネル140及び熱交換部200の斜視図である。
図3に示すように、冷温水配管205の一部は、熱交換パネル140の上方において冷温水の流入側の端部から流出側の端部までの熱交換パネル140の板面140aで蛇行するように配置されている。冷温水配管205が蛇行しているため、板面140aに接する冷温水配管205の長さはできる限り長く確保されている。板面140aに接する冷温水配管205は、複数の直線部206と、複数の湾曲部207と、を有する。直線部206は、矩形状の熱交換パネル140の一辺に平行な第1の方向P1に延在している。湾曲部207は、方向P1に直交して板面140aに平行な第2の方向P2において互いに間隔をあけて隣り合う直線部206の方向P1で互いに同じ側の端同士を連結している。また、湾曲部207は、方向P2で互いに隣り合う直線部206の組同士では方向P1で互いに反対側の端同士を連結している。
【0025】
方向P2で一方の側(例えば、
図3では紙面の左側)の端に配置された直線部206の湾曲部207に接続されている端とは反対側の端に、冷温水の流入側の冷温水配管205が連結している。方向P2で他方の側(例えば、
図3では紙面の右側)の端に配置された直線部206の湾曲部207に接続されている端とは反対側の端に、冷温水の流出側の冷温水配管205が連結している。流入側及び流出側の冷温水配管205は、図示されていない循環装置(例えば、後述するチラー(循環装置)391,392)に接続されている。つまり、複数の潜熱蓄熱材210と循環装置とは、循環路をなす冷温水配管205によって接続されている。
【0026】
熱媒である冷温水は、循環装置と複数の潜熱蓄熱材210の各々の内部を通る冷温水配管205で循環する。循環装置は、例えば低温水系統のカスケードを用いた熱源や地中熱等の自然エネルギーを活用した熱源であるが、冷温水配管205で冷温水を循環させることができ、冷温水と熱交換できれば、特に限定されない。
【0027】
図4は、潜熱蓄熱材210の斜視図である。
図4に示すように、潜熱蓄熱材210は、略直方体である。潜熱蓄熱材210の長辺は、方向P1に平行である。潜熱蓄熱材210の底面210bは、熱交換パネル140の板面140aに接している。潜熱蓄熱材210には、底面210bに開口する凹み504が形成されている。凹み504は、方向P1に亘って形成され、潜熱蓄熱材210の方向P1の両端の側面210c,210dにも開口している。すなわち、凹み504は、凡そ円柱形状で形成されている。方向P1に沿って見たときに、凹み504の方向P2での直径Daは、冷温水配管205の直径と略同等である。潜熱蓄熱材210の底面210bにおける凹み504の方向P2での開口幅Dbは、少なくとも直径Daよりも小さい。開口幅Dbは、底面210b側から凹み504に冷温水配管205を押し入れて嵌めることができ、さらに凹み504に嵌まった冷温水配管205が容易に抜けない程度に、潜熱蓄熱材210の弾性等を勘案して適宜設定されている。
【0028】
潜熱蓄熱材210の蓄熱及び放熱の時定数、すなわち蓄熱・放熱能力は、(潜熱蓄熱材210の容積):(潜熱蓄熱材210と熱交換パネル140との接触面積)等の要素に応じて、変化する。そのため、潜熱蓄熱材210の形状は、居室130の熱需要に応じた形状とすることが好ましい。
【0029】
図5、
図7及び
図8は、空調システム101を配置した建築物Mの構成を示す概略図である。これらの図では、床仕上材120が省略されている。また、これらの図には、躯体110の下方すなわち躯体110と地表面Gに設けられた躯体310との間の床下空間132と、躯体150の上方すなわち躯体150と建築物Mの最上に配置された躯体315との間の天井空間134が示されている。
【0030】
空調システム101は、チラー(循環装置)391,392と、クーリングタワー(循環装置)394と、熱源(循環装置)393と、ファンコイルユニット(Fan Coil Unit;FCU)321,322を備える。チラー391、クーリングタワー394及び熱源393(循環装置)は、建築物Mの屋上に設置されている。熱源393は、同じく屋上に設置されている外調機340と接続されている。チラー392は、地中に埋設されている。FCU321は、居室130に設置されている。FCU322は、天井空間134に設置されている。なお、別系統として中温冷水系統のチラーを単独で設けてもよい。
【0031】
クーリングタワー394の流出口と熱交換パネル140に接する冷温水配管350の流入口は、冷温水配管353によって接続されている。冷温水配管350の流出口とクーリングタワー394の流入口は、冷温水配管356によって接続されている。冷温水配管353には、内部を流れる冷温水の量を調節可能な弁401が設けられている。冷温水配管356には、内部を流れる水(熱媒)の量を調節可能な弁402が設けられている。
【0032】
チラー392の流出口と冷温水配管350の流入口は、冷温水配管351によって接続されている。冷温水配管350の流出口とチラー392の流出口は、冷温水配管352によって接続されている。チラー392には、冷温水配管351,352とは別の冷温水配管357が接続されている。冷温水配管357は、チラー392が設置されている地中の領域よりもさらに深い地中に埋設されている。
【0033】
熱源393とFCU321は、冷温水配管367,368によって接続されている。熱源393とFCU322は、冷温水配管367,368の各々の一部を介して冷温水配管365,366によって接続されている。熱源393の流出口と冷温水配管350の流入口は、冷温水配管353及び冷温水配管368の各々の一部を介して、冷温水配管354によって接続されている。冷温水配管354の一方の端は、弁401と冷温水配管350の流入口との間の冷温水配管353に接続されている。冷温水配管354の他方の端は、熱源393に連結されている位置と冷温水配管366に連結されている位置との間の冷温水配管368に接続されている。冷温水配管354には、内部を流れる水の量を調節可能な弁406が設けられている。
【0034】
冷温水配管356,368には、冷温水配管364が接続されている。冷温水配管364の一方の端は、弁402と冷温水配管350の流出口との間の冷温水配管356に接続されている。冷温水配管364の他方の端は、熱源393に連結されている位置と冷温水配管354に連結されている位置との間の冷温水配管368に接続されている。冷温水配管364には、内部を流れる水の量を調節可能な弁407が設けられている。冷温水配管364に連結されている位置と冷温水配管354に連結されている位置との間の冷温水配管368には、内部を流れる水の量を調節可能な弁408が設けられている。
【0035】
熱源393と外調機340は、冷温水配管371,372によって接続されている。チラー391と熱源393とは、冷温水配管361,362によって接続されている。チラー391とクーリングタワー394は、冷温水配管353,356の各々の一部を介して冷温水配管358,359によって接続されている。冷温水配管358は、クーリングタワー394の流出口と弁401との間の冷温水配管353に接続されている。冷温水配管359は、クーリングタワー394の流入口と弁402との間の冷温水配管356に接続されている。
【0036】
図6は、空調システム1日(0時~24時)における空調スケジュールの一例を示す図である。
図6に示すスケジュールでは、以下のように空調が行われる。
<1>フリークーリング;6時~8時、18時半~19時
*業務時間;8時~10時、12時~14時、16時~18時半、19時~21時
<2>地中熱利用;10時~12時
<3>カスケード利用;14時~16時
【0037】
〔<1>フリークーリング〕
この時間帯は、外気温度が低い早朝や日没後を含む。この時間帯では、弁401,402が開かれ、その他の弁404,405,406,407,408が閉じている。
図5に示すように、空調システム101における熱媒は、冷温水配管353,356を通ってクーリングタワー394と冷温水配管350及び熱交換部200との間を循環する。
【0038】
クーリングタワー394から供給された冷温水は、弁401を通り、冷温水配管350の流入口から冷温水配管350を通り、冷温水配管350の流出口に向かう。冷温水配管350を通る冷温水によって冷温水配管350が冷却され、少なくとも冷温水配管350に接する潜熱蓄熱材210が冷却される。さらに、冷温水配管350及び潜熱蓄熱材210に接する熱交換パネル140が冷却される。潜熱蓄熱材210は、液体から固体に相変化し、蓄熱する。冷温水との熱交換によって冷却された熱交換パネル140は、居室130に対して放射式空調を行う。
【0039】
冷温水配管350から冷温水配管356を介して供給された冷温水は、前述のように潜熱蓄熱材210及び熱交換パネル140との熱交換によって熱量を得る。冷温水配管350の流出口から冷温水配管356に排出される冷温水の温度は、クーリングタワー394から冷温水配管353に供給される冷温水の温度よりも高い。冷温水配管350の流出口から冷温水配管356の及び弁402を通ってクーリングタワー394に到達した冷温水は、ファン等を用いて気化熱で冷却される。クーリングタワー394で冷却された冷温水は、冷温水配管350の流出口に向けて再び冷温水配管353に供給される。
【0040】
〔<2>地中熱利用〕
この時間帯では、外気温度が上昇するが、地中温度は適度に低い。この時間帯では、弁401,402,404,405,406,407,408が閉じている。
図7に示すように、空調システム101における熱媒は、冷温水配管351,352を通ってチラー392と冷温水配管350及び熱交換部200との間を循環する。チラー392は、地中熱交換器として機能する。
【0041】
チラー392から冷温水配管351に供給された冷温水は、冷温水配管350の流入口から冷温水配管350を通り、冷温水配管350の流出口に向かう。<1>フリークーリングの時間帯と同様に、冷温水配管350を通る冷温水によって冷温水配管350が冷却され、少なくとも冷温水配管350に接する潜熱蓄熱材210、潜熱蓄熱材210に接する熱交換パネル140が冷却される。潜熱蓄熱材210は、液体から固体に相変化し、蓄熱する。冷温水との熱交換によって冷却された熱交換パネル140は、居室130に対して放射式空調を行う。
【0042】
冷温水配管350の流出口から冷温水配管356に排出された冷温水は、潜熱蓄熱材210及び熱交換パネル140との熱交換によって熱量を得る。冷温水配管350の流出口から冷温水配管352に排出される冷温水の温度は、チラー392から冷温水配管351に供給される冷温水の温度よりも高い。一方、チラー392には、冷温水配管350(すなわち、冷温水配管205)及び潜熱蓄熱材210からなる熱交換部200との間を循環する第1系統とは別系統の冷温水として、深い地中の地中熱によって冷却された冷温水が冷温水配管357を介して循環している。すなわち、別系統の冷温水の温度は、冷温水配管350の流出口からチラー392に排出される冷温水の温度よりも低い。
【0043】
冷温水配管350の流出口から冷温水配管356を通ってチラー392に到達した冷温水は、別系統の冷温水によって、すなわち地中熱に基づく熱交換によって冷却される。チラー392で冷却された冷温水は、冷温水配管350の流出口に向けて再び冷温水配管351に供給される。
【0044】
〔<3>カスケード利用〕
この時間帯では、外気温度及び地中温度が1日の中で比較的高い。この時間帯では、弁401,402が閉じており、弁404~408が開かれている。
図8に示すように、空調システム101における熱媒は、基本的には冷温水配管354,364及び冷温水配管368の一部を通って熱源393と冷温水配管350及び熱交換部200との間を循環する。
【0045】
熱源393から冷温水配管368に供給された冷温水は、弁408、冷温水配管354及び弁406を介して、冷温水配管350の流入口から冷温水配管350を通り、冷温水配管350の流出口に向かう。<1>フリークーリングの時間帯と同様に、冷温水配管350を通る冷温水によって冷温水配管350が冷却され、少なくとも冷温水配管350に接する潜熱蓄熱材210、及び潜熱蓄熱材210に接する熱交換パネル140が冷却される。潜熱蓄熱材210は、液体から固体に相変化し、蓄熱する。冷温水との熱交換によって冷却された熱交換パネル140は、居室130に対して放射式空調を行う。
【0046】
冷温水配管350の流出口から冷温水配管356に排出された冷温水は、潜熱蓄熱材210及び熱交換パネル140との熱交換によって熱量を得る。冷温水配管350の流出口から冷温水配管364に排出される冷温水の温度は、熱源393から冷温水配管368に供給される冷温水の温度よりも高い。
【0047】
熱源393には、熱交換部200との間を循環する第1系統とは別系統の冷温水として、複数の系統の冷温水が循環している。第2系統では、
図8に第1系統と同じく太線で示されているが、冷温水が冷温水配管367,368を介して熱源393とFCU321との間を循環する。第2系統では、熱源393の流出口から冷温水配管368に供給された冷温水は、弁408及びFCU321の流入口を通り、FCU321に供給される。FCU321に供給された冷温水と居室130の空気(還気)との熱交換によって、FCU321に供給された冷温水の温度は上昇し、居室130は空調(冷房)される。温められた冷温水は、FCU321の流出口から冷温水配管367及び熱源393の流入口を介して、熱源393に戻る。
【0048】
第3系統では、
図8に第1及び第2系統と同じく太線で示されているが、冷温水が冷温水配管365~368を介して熱源393とFCU322との間を循環する。第3系統では、熱源393の流出口から冷温水配管368の一部、弁408及び冷温水配管366に順次供給された冷温水は、FCU322の流入口を通り、FCU322に供給される。FCU322に供給された冷温水と天井空間134の空気との熱交換によって、FCU322に供給された冷温水の温度は上昇し、天井空間134は冷却される。温められた冷温水はFCU322の流出口から冷温水配管365、冷温水配管367の一部及び熱源393の流入口を介して、熱源393に戻る。
【0049】
第4系統では、冷温水が冷温水配管371,372を介して熱源393と外調機340との間を循環する。熱源393から冷温水配管371を介して外調機340に供給された冷温水は、外調機340に取り込まれている外気と熱交換し、冷却される。外調機340で冷却された冷温水は、冷温水配管372を介して熱源393に供給され、第1系統から第3系統の各系統で冷温水配管365から熱源393に戻ってきた冷温水と熱交換し、温められる。熱源393で熱交換によって温められた冷温水は、再度、外調機340に供給される。
【0050】
第5系統では、冷温水が冷温水配管361,362を介して熱源393とチラー391との間を循環する。熱源393から冷温水配管362を介してチラー391に供給された冷温水は、後述するようにクーリングタワー394からチラー391に供給される冷温水と熱交換し、冷却される。チラー391で冷却された冷温水は、冷温水配管361を介して熱源393に供給され、第1系統から第3系統の各系統で冷温水配管365から熱源393に戻ってきた冷温水と熱交換し、加熱される。熱源393で熱交換によって加熱された冷温水は、再度、チラー391に供給される。
【0051】
第5系統では、熱源393とチラー391との間を循環する冷温水とは別の冷温水がチラー391とクーリングタワー394との間を循環する。クーリングタワー394から冷温水配管356の一部と弁402と冷温水配管359とを介してチラー391に供給された冷温水は、熱源393からチラー391に供給される冷温水と熱交換し、加熱される。チラー391で熱交換によって加熱された冷温水は、冷温水配管358と弁405と冷温水配管353の一部とを介して、クーリングタワー394に供給される。クーリングタワー394に供給された冷温水は、ファン等を用いて気化熱で冷却される。クーリングタワー394で冷却された冷温水は、チラー391に向けて再び供給される。
【0052】
空調システム101における<1>~<3>の各時間帯についての上述の空調運転の説明では、居室130を冷房する。しかしながら、例えば季節や時間帯によって、外気温度や地中温度と居室130の温度との高低関係が逆になった場合等では、空調システム101を用いて居室130を暖房できる。
【0053】
空調システム101における<1>~<3>の各時間帯での空調運転時には、潜熱蓄熱材210の温度は、固体と液体との相変化に起因して所定の温度帯に維持される。所定の温度帯は、潜熱蓄熱材210の素材や大きさによって適宜設定される。そのため、クーリングタワー394、チラー392、熱源393の各々における冷温水の吸熱量が安定しない場合であっても、潜熱蓄熱材210が吸熱量の変動を所定の温度帯の範囲で吸収し、熱交換パネル140を冷却又は加熱できる。
【0054】
以上説明した第1実施形態の空調システム101は、熱交換パネル140と、潜熱蓄熱材210と、冷温水配管(配管)205と、循環装置と、を備える。熱交換パネル140は、居室130の内部に対向するように配置された、居室130内の空気と熱の授受が可能である。潜熱蓄熱材210は、躯体150と対向する熱交換パネル140の板面140aに接するように配置されて、蓄熱可能である。冷温水配管205の少なくとも一部は潜熱蓄熱材210に接して配置され、冷温水配管205には熱媒が流れる。循環装置は、冷温水配管205を流れる熱媒を循環させる。循環装置は、例えばチラー(循環装置)391,392、クーリングタワー(循環装置)394、及び熱源(循環装置)393によって構成されている。循環装置は、熱媒を循環させ、潜熱蓄熱材210に蓄熱し、潜熱蓄熱材210から熱交換パネル140に熱を供給する。
【0055】
本実施形態の空調システム101では、躯体150の下方の所謂天井(居室130の上部)に設置することで、床、壁や天井等の躯体110,150への熱伝導による居室130の外部への熱損失が低減され、空調対象の空間(すなわち、居室130内の所望のエリア)で熱を効率良く活用できる。また、本実施形態の空調システム101では、冷温水配管205に接触するように潜熱蓄熱材210が配置されていることによって、搬送動力の小さい冷温水から効率的に蓄熱を行うことができる。また、本実施形態の空調システム101では、冷房時の放射空調に必要な温度帯に合わせて、潜熱蓄熱材210の相変化温度を例えば20℃前後に設定し、自然エネルギーや未利用エネルギー等の低密度のエネルギーを何らかの形態で変換等せずに利用し易い。また、本実施形態の空調システム101では、潜熱蓄熱材210を含む熱交換部200の放熱中には潜熱蓄熱材210の相変化が生じ、所定の温度帯を維持できるため、不安定な自然エネルギーを活用しても安定した空調能力を確保できる。また、本実施形態の空調システム101では、潜熱蓄熱材210によって蓄熱できるため、活動時間外や業務時間外に生じている利用価値の高い自然エネルギーを有効に活用できる。したがって、本実施形態の空調システム101によれば、消費エネルギーの低減、自然エネルギーや未利用エネルギーの利用効率の向上、及び安定した空調能力を実現できる。
【0056】
本実施形態の空調システム101では、冷温水配管205は、熱交換パネル140と潜熱蓄熱材210との間に挟まれるように配置されている。
【0057】
本実施形態の空調システム101では、チラー(循環装置)391は、地中熱又はカスケード制御を行って得た熱を輸送する。また、本実施形態の空調システム101では、チラー(循環装置)392は、地中熱に基づき、冷温水配管350から排出された冷温水との熱交換を行う。本実施形態の空調システム101によれば、地中熱又はカスケード利用による熱量に基づき、潜熱蓄熱材210を介して熱交換パネル140との熱交換を行い、潜熱蓄熱材210に蓄熱できる。
【0058】
本実施形態の空調システム101では、循環装置は、外気と熱媒との熱交換を行うクーリングタワー(外気熱交換機、循環装置)394と、地中熱と熱媒との熱交換を行うチラー(地中熱交換器、循環装置)392と、カスケード制御を行って得た熱との熱交換を行う熱源(カスケード熱交換機、循環装置)393と、を備える。本実施形態の空調システム101では、熱媒を循環させる循環装置を、潜熱蓄熱材210と、クーリングタワー394、チラー392、熱源393のうちの何れかに切り替え可能とした。
【0059】
本実施形態の空調システム101によれば、外気、地中熱、及びカスケード利用による未利用エネルギーの各々の活用に適した時間帯で、フリークーリング、或いは、地中熱又はカスケード利用による自然エネルギーや未利用エネルギーに基づく空調を効率良く行うことができる。その結果、本実施形態の空調システム101における消費エネルギーの低減、及び自然エネルギーや未利用エネルギーの利用効率の向上を促進できる。
【0060】
本実施形態の空調システム101は、前述のように潜熱蓄熱材210との間で冷温水(熱媒)を循環させる循環装置を所望の時間帯でクーリングタワー394と、チラー392と、熱源393のうちの何れかに切り替えるための不図示の制御装置を備えてもよい。当該制御装置は、例えば空調システム101における上述の<1>~<3>の各時間帯での空調運転時に弁401,402,404~408を上述の説明のように開閉し、冷温水(熱媒)の流路及び流量をコントロールする。当該制御装置は、空調スケジュール及び、前述のように空調システム101における冷温水(熱媒)の流路及び流量をコントロールするプログラムが内蔵されたコンピュータである。
【0061】
本実施形態の空調システム101では、潜熱蓄熱材210は16℃以上22℃以下で固体及び液体の一方から他方へ相変化する。このことによって、自然エネルギーや未利用エネルギー等の低密度のエネルギーを変質等させずに利用可能な仕様を実現し、自然エネルギーや未利用エネルギー等の利用効率を高めることができる。
【0062】
本実施形態の空調システム101では、潜熱蓄熱材210は、熱交換パネル140、及び熱交換パネル140上の冷温水配管(配管)205(すなわち、冷温水配管350)に装着可能とされている。したがって、既存の放射式空調が導入された居室で当該放射式空調の熱媒を循環させる配管に本発明に係る空調システムの潜熱蓄熱材210を装着し、熱交換パネルと接触させる構成としてもよい。このようにした場合であっても、空調システム101と同様に、空調システムにおける消費エネルギーの低減、自然エネルギーや未利用エネルギーの利用効率の向上、及び安定した空調能力を実現することができる。
【0063】
本実施形態の空調システム101では、熱交換パネル140は鉄を含む合金で形成され、熱交換パネル140の厚みは1mm以上である。このことによって、熱交換パネル140の冷却速度及び冷却効率を高め、消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0064】
本実施形態の空調システム101では、冷温水配管(配管)205は熱交換パネル140に接して配置されているため、冷温水と熱交換パネル140との熱交換が直接行われ、潜熱蓄熱材210を介する場合に比べて熱交換時の効率を向上させ、熱損失及び消費エネルギーを低減できる。
【0065】
本実施形態の空調システム101では、冷温水配管(配管)205は金属製であり、冷温水配管205の少なくとも一部(すなわち、冷温水配管350)が熱交換パネル140に接して配置されていてもよい。本実施形態の空調システム101によれば、冷温水配管205の熱伝導性が高まり、冷温水配管205が潜熱蓄熱材210を介してのみ熱交換パネル140に接する場合に比べて、中温水と熱交換パネル140との熱交換時の効率を向上させ、中温水と熱交換パネル140との間の熱損失を低減し、空調システム101における消費エネルギーを低減できる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0067】
例えば、空調システム101の潜熱断熱材210の形状として
図4の直方体状を例示し、冷温水配管205が潜熱断熱材210に嵌め込まれる形態について説明したが、潜熱断熱材210は、冷温水配管205と接し、冷温水配管205を循環する冷温水との間で熱交換可能であればよい。例えば、潜熱断熱材210の方向P2の両側の側面210f,210gの何れかが冷温水配管205の周面に接していてもよい。
【0068】
また、空調システム101の循環装置は、上述の実施形態で例示した各種装置に限定されない。空調システム101の循環装置の種類や構造は、冷温水配管205を介して潜熱蓄熱材210との間で熱媒を循環させ、潜熱蓄熱材210を介して熱交換パネル140と熱交換された熱媒との熱交換を行い、熱交換後の熱媒を潜熱蓄熱材210に供給できる装置であれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0069】
101…空調システム、140…熱交換パネル、205…冷温水配管(配管)、210…潜熱蓄熱材、392…チラー(地中熱交換器、循環装置)、394…クーリングタワー(空調機、循環装置)、393…熱源(循環装置)