(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000860
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】表皮材
(51)【国際特許分類】
D06N 3/00 20060101AFI20231226BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
D06N3/00
B32B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099810
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】390023009
【氏名又は名称】共和レザー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522445273
【氏名又は名称】株式会社SORENA
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 賢治
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩斗
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA11
4F055AA21
4F055BA12
4F055BA13
4F055EA04
4F055EA23
4F055FA20
4F055GA11
4F055GA32
4F100AA37D
4F100AJ02C
4F100AK41A
4F100AK45B
4F100AK45C
4F100AK45D
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02B
4F100CA13D
4F100CB02B
4F100DE01C
4F100DG13A
4F100GB08
4F100GB33
4F100GB74
4F100GB81
4F100JB13B
4F100JC00C
4F100JK06
4F100JL11B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】バイオマス粉を用い、耐久性及び意匠性に優れる表皮材を提供する。
【解決手段】基布、接着層、中間層、及び表皮層をこの順に備え、中間層は、バイオマス粉を含む、表皮材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布、接着層、中間層、及び表皮層をこの順に備え、
前記中間層は、バイオマス粉を含む、表皮材。
【請求項2】
前記バイオマス粉の平均粒径は、100μm以下である、請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
前記バイオマス粉の含有量は、前記中間層の全量に対して、50質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項4】
前記バイオマス粉は、果実の粉末である、請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項5】
前記果実は、リンゴである、請求項4に記載の表皮材。
【請求項6】
前記基布は、天然繊維を含む、請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項7】
バイオマス度は、前記表皮材の全量に対して、4質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項8】
バイオマス度は、前記表皮材の全量に対して、70質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項9】
前記バイオマス粉の平均粒径は、100μm以下であり、
前記バイオマス粉の含有量は、前記中間層の全量に対して、50質量%以下であり、 前記バイオマス粉は、リンゴの粉末であり、
前記基布は、天然繊維を含み、
バイオマス度は、前記表皮材の全量に対して、70質量%以上である、請求項1に記載の表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車内装外装部品(インストルメントパネル、ドアトリム、座席、天井など)、鉄道車輌及び航空機の内装部品(トリム、座席、天井など)、家具、靴、履物、鞄、建装用内外装部材、衣類表装材及び裏地、並びに、壁装材には、天然皮革、繊維性シート等に代えて、耐久性に優れる表皮材が多用されている。
【0003】
脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現に対する意識の高まりに起因して、バイオマス由来の原料の使用が望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、木粉と塩基性物質とを混合させる混合工程と、木粉と塩基性物質との混合物と、樹脂とを混練機に投入し、樹脂が熱溶融した状態で混練を行なう混練工程と、混練工程により得られた植物繊維強化樹脂を使用して内装品を成形する成形工程と、を有する内装品の製造方法が記載されている。
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、バイオマス粉として木粉が用いられているが、木粉を用いることによる、内装品の性能及び意匠への影響に関して検討されていない。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、バイオマス粉を用い、耐久性及び意匠性に優れる表皮材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>基布、接着層、中間層、及び表皮層をこの順に備え、中間層は、バイオマス粉を含む、表皮材。
<2>バイオマス粉の平均粒径は、100μm以下である、<1>に記載の表皮材。
<3>バイオマス粉の含有量は、中間層の全量に対して、50質量%以下である、<1>又は<2>に記載の表皮材。
<4>バイオマス粉は、果実の粉末である、<1>又は<2>に記載の表皮材。
<5>バイオマス粉は、果実の粉末である、<3>に記載の表皮材。
<6>果実は、リンゴである、<4>に記載の表皮材。
<7>果実は、リンゴである、<5>に記載の表皮材。
<8>基布は、天然繊維を含む、<1>又は<2>に記載の表皮材。
<9>基布は、天然繊維を含む、<3>に記載の表皮材。
<10>基布は、天然繊維を含む、<4>に記載の表皮材。
<11>基布は、天然繊維を含む、<5>に記載の表皮材。
<12>基布は、天然繊維を含む、<6>に記載の表皮材。
<13>基布は、天然繊維を含む、<7>に記載の表皮材。
<14>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<1>又は<2>に記載の表皮材。
<15>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<3>に記載の表皮材。
<16>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<4>に記載の表皮材。
<17>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<5>に記載の表皮材。
<18>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<6>に記載の表皮材。
<19>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<7>に記載の表皮材。
<20>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<8>に記載の表皮材。
<21>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<9>に記載の表皮材。
<22>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<10>に記載の表皮材。
<23>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<11>に記載の表皮材。
<24>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<12>に記載の表皮材。
<25>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、4質量%以上である、<13>に記載の表皮材。
<26>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<1>又は<2>に記載の表皮材。
<27>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<3>に記載の表皮材。
<28>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<4>に記載の表皮材。
<29>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<5>に記載の表皮材。
<30>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<6>に記載の表皮材。
<31>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<7>に記載の表皮材。
<32>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<8>に記載の表皮材。
<33>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<9>に記載の表皮材。
<34>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<10>に記載の表皮材。
<35>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<11>に記載の表皮材。
<36>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<12>に記載の表皮材。
<37>バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<13>に記載の表皮材。
<38>バイオマス粉の平均粒径は、100μm以下であり、バイオマス粉の含有量は、中間層の全量に対して、50質量%以下であり、バイオマス粉は、リンゴの粉末であり、
基布は、天然繊維を含み、バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である、<1>に記載の表皮材。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、バイオマス粉を用い、耐久性及び意匠性に優れる表皮材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の表皮材の一態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の表皮材について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において、段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
本開示における「固形分」とは、例えば、組成物に含まれる全成分のうち、溶媒を除いた成分の量を指す。
【0013】
<表皮材>
本開示の表皮材は、基布、接着層、中間層、及び表皮層をこの順に備える。中間層は、バイオマス粉を含む。
【0014】
本開示の表皮材について、
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の表皮材10の層構成の一態様を示す概略断面図である。
図1に示す表皮材10は、基布12、基布12の一方の面上に設けられた接着層14、接着層14の一方の面上に設けられた中間層16、中間層16の一方の面上に設けられた表皮層18と、を備える。
【0015】
(基布)
基布としては、必要な強度と柔軟性とを有し、得られる表皮材が所定の伸縮特性を有すれば、特に制限なく用いることができる。
【0016】
基布を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維;綿、麻等の天然繊維;レーヨン等の再生繊維が挙げられる。
【0017】
基布を構成する繊維は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
例えば、基布を構成する繊維として、ポリウレタンを併用することで基布の伸縮性がより向上する。また、ポリアミドの高強度繊維であるケブラー繊維を併用することで、基布の強度がより向上する。
【0018】
中でも、表皮材のバイオマス度を向上させる観点から、基布は、天然繊維を含むことが好ましく、綿を含むことがより好ましい。
【0019】
また、基布は、織布、編布、及び不織布のいずれであってもよい。中でも、表皮材の幅方向に一定の伸び特性を持たせ易いという観点から、基布は、編布であることが好ましい。
【0020】
編布としては、経編みであるトリコット編布、ダブルラッセル編布;丸編みである鹿の子編布、インターロック編布、モクロディ編布;及び、横編みであるニット編布が挙げられる。中でも、編布は、両面編みの一種であるインターロック編布がより好ましい。
【0021】
基布の厚さは、目的に応じて適宜選択できる。基布の厚さは、表皮材の強度と耐久性の観点からは、400μm~1600μmが好ましく、500μm~1400μmがより好ましい。
【0022】
基布の目付は、成形加工性、成形後の外観、及び風合いがより良好であるという観点から、30g/m2~800g/m2が好ましく、100g/m2~600g/m2がより好ましい。
【0023】
基布の目付は、例えば、編布の場合、編布の組織、編成に用いる繊維の太さ、組織、繊維の密度等により調整することができる。なお、基布に湿式加工を施し、湿式ベースとしてもよい。
【0024】
(接着層)
接着層は、接着成分を有する層である。
【0025】
接着層は、接着成分として、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリスチレンが挙げられる。中でも、接着性の観点から、接着層は、ポリウレタンを含むことが好ましい。
【0026】
ポリウレタンとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、及びポリエステル系ポリウレタン、並びに、これらの変性物が挙げられる。中でも、長期耐久性の観点から、接着層は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含むことがより好ましい。
【0027】
ポリウレタンは、接着性の観点から、架橋剤によって架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、及びオキサゾリン系架橋剤が挙げられる。中でも、架橋剤は、イソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0028】
接着層の厚さは、隣接する層との接着性、及び、表皮材の風合いの観点から、20μm~300μmの範囲であることが好ましく、30μm~250μmであることがより好ましい。
【0029】
(中間層)
中間層は、バイオマス粉を含む層である。中間層に含まれるバイオマス粉は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
本開示において、「バイオマス粉」とは、生物由来の有機物を粉砕して得られる粉末を意味する。
【0031】
中間層に含まれるバイオマス粉の種類は特に限定されない。バイオマス粉を構成するバイオマスとしては、例えば、木質材料、動物、植物(例えば、果実)、菌類(例えば、キノコ)等の粉末が挙げられる。
【0032】
中でも、繊維質が多く含まれ、耐久性が高められる観点から、バイオマス粉は、果実の粉末であることが好ましい。果実としては、例えば、柑橘類、リンゴ、梨、柿、ビワ、桃、ブドウ、キウイフルーツ、スイカ、イチゴ、及びメロンが挙げられる。中でも、食物繊維が豊富に含まれる観点から、バイオマス粉は、リンゴの粉末であることが好ましい。リンゴの粉末とは、リンゴを乾燥させて粉砕したものが挙げられる。リンゴは、例えば、果肉の部分、表皮の部分、又は樹皮を用いることができ、リンゴの絞りカスを用いてもよい。
【0033】
バイオマス原料からバイオマス粉を得る際の粉砕方法は、特に限定されず、通常の粉砕装置を用いることができる。粉砕装置としては、例えば、スクリーンミル、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、カッターミル、振動ミル、ローラーミル、ラインミル、スタンプミル、ディスクミル、ピンミル、グラインディングミル、ローターミル、サイクロンミル、ロッドミル、パワーミル、ポットミル、ジョークラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、インパクトクラッシャー、ロールクラッシャー、及びエッジランナーが挙げられる。
【0034】
バイオマス粉の平均粒径は、中間層を構成する他の成分との分散性、及び、中間層の加工性の観点から、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。平均粒径の下限値は特に限定されず、例えば、5μmである。
【0035】
バイオマス粉の平均粒径は、数平均粒径であり、以下の方法で測定される。
表皮材を、厚さ方向に向かって切断する。断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。任意の30個のバイオマス粉を選択し、直径を測定する。測定した直径の平均値を平均粒径とする。なお、バイオマス粉が円形ではない場合には、最大径を直径として採用する。
【0036】
バイオマス粉の含有量は、中間層を構成する他の成分との分散性、及び、中間層の加工性の観点から、中間層の全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが好ましい。また、バイオマス粉の含有量は、バイオマス度の観点から、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
また、バイオマス粉の含有量は、中間層の全量に対して、10質量%~50質量%が好ましい。
【0037】
中間層は、バイオマス粉を層中に保持するために、バインダー樹脂を含むことが好ましい。中間層に含まれるバインダー樹脂は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0038】
バインダー樹脂の種類は特に限定されないが、表皮材にクッション感及びボリュームを持たせる観点から、発泡樹脂であることが好ましい。
【0039】
発泡樹脂を形成する樹脂の種類としては、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンプロピレンジエンゴムが挙げられる。中でも、接着層との接着性の観点から、中間層は、発泡ポリウレタンを含むことが好ましい。
【0040】
中間層は、バイオマス粉及びバインダー樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、着色剤、加工助剤、可塑剤、及び充填剤が挙げられる。中間層が、その他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、耐久性を低下させない範囲で調整することが好ましい。
【0041】
中間層は、他の成分として、着色剤を含むことが好ましい。中間層が着色剤を含む場合、着色剤は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0042】
着色剤の種類は特に限定されず、染料であってもよく、顔料であってもよい。
【0043】
着色剤としては、例えば、チタン白(二酸化チタン)、亜鉛華、群青、コバルトブルー、弁柄、朱、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドン、パーマネントレッド4R、イソインドリノン、ハンザイエローA、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料又は染料;アルミニウム及び真鍮等金属の箔粉からなる群より選択される金属顔料;並びに、二酸化チタン被覆雲母及び塩基性炭酸鉛の箔粉からなる群より選択される真珠光沢(パール)顔料が挙げられる。
【0044】
中でも、耐候性及び耐久性に優れるため、着色剤は、顔料であることが好ましい。
【0045】
着色剤の種類及び含有量は、表皮材において目的とする色相等に応じて、適宜選択すればよい。
【0046】
中間層が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、隠蔽性の観点から、中間層の全量に対して、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることが好ましい。
【0047】
中間層の厚さは、耐久性の観点から、10μm~400μmであることが好ましく、40μm~100μmであることがより好ましい。
【0048】
また、中間層の厚さは、基布見え防止の観点から、接着層の厚さより厚いことが好ましい。接着層の厚さに対する中間層の厚さの比率は、1.1~3であることが好ましく、1.2~2であることがより好ましい。
【0049】
さらに、中間層の厚さは、基布見え防止の観点から、表皮層の厚さより厚いことが好ましい。表皮層の厚さに対する中間層の厚さの比率は、1.5~5であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
【0050】
また、中間層の厚さは、表皮材の厚さに対して、3%~15%であることが好ましく、5%~10%であることがより好ましい。
【0051】
なお、中間層の存在は、表皮材を厚さ方向に向かって切断し、断面を観察することにより、確認することができる。
【0052】
(表皮層)
表皮層は、表皮材の意匠性の観点から、樹脂を含むことが好ましい。
【0053】
樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリスチレン系エラストマー樹脂が挙げられる。
中でも、表皮材に求められる各種性能を得やすいという観点から、表皮層は、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0054】
ポリウレタンとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、及びポリエステル系ポリウレタン、並びに、これらの変性物が挙げられる。中でも、長期耐久性の観点から、表皮層は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含むことがより好ましい。
【0055】
また、ポリウレタンは、20℃の条件下で測定した100%モジュラス値が2MPa(2×106N/m2)~40MPaであることが好ましい。ポリウレタンの100%モジュラス値が上記範囲内にあると、表皮材の伸縮特性に優れる。
【0056】
100%モジュラス値とは、JIS K 6251(2017年)に準じて、20℃にて測定した硬さを示す値である。
【0057】
なお、ポリウレタンの硬さ(100%モジュラス)を調整する方法としては、例えば、ポリウレタンを合成する際の原料の種類を変更する方法が挙げられる。ポリウレタンを柔らかくする場合には、ソフトセグメントとなるポリオールの含有量を増加させるか、又はポリオールの分子量を大きくする方法が挙げられる。一方、ポリウレタンを硬くする場合には、ハードセグメントとなるウレタン結合又はウレア結合を増加させるか、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等の架橋剤を添加して、架橋構造を形成する方法が挙げられる。
【0058】
ポリ塩化ビニルとしては、例えば、平均重合度650~1800の塩化ビニルホモポリマー、及びエチレン/塩化ビニルコポリマーが挙げられる。
【0059】
表皮層は、樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、着色剤、加工助剤、可塑剤、及び充填剤が挙げられる。表皮層が、その他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、耐久性を低下させない範囲で調整することが好ましい。
【0060】
表皮層は、他の成分として、着色剤を含むことが好ましい。表皮層が着色剤を含む場合、着色剤は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0061】
着色剤の種類及び含有量は、表皮材において目的とする色相等に応じて、適宜選択すればよい。
【0062】
表皮層が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、隠蔽性の観点から、表皮層の全量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることが好ましい。
【0063】
表皮層の厚さは、耐久性の観点から、10μm~400μmであることが好ましく、20μm~250μmであることがより好ましい。
【0064】
表皮層がポリウレタンを含む場合には、表皮層の厚さは、耐久性の観点から、10μm~100μmであることが好ましく、20μm~60μmであることがより好ましい。
【0065】
表皮層がポリ塩化ビニルを含む場合には、表皮層の厚さは、耐久性の観点から、100μm~400μmであることが好ましく、150μm~250μmであることがより好ましい。
【0066】
(その他の層)
図1に示す表皮材10は、基布12、接着層14、中間層16、及び表皮層18からなるが、本開示の表皮材は、上記以外のその他の層を含んでいてもよい。その他の層としては、例えば、表面処理層が挙げられる。
【0067】
(物性)
本開示の表皮材は、バイオマス度が表皮材の全量に対して4質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0068】
バイオマス度は下記式に基づいて算出される。
バイオマス度=(表皮材中のバイオマス成分の合計質量/表皮材の質量)×100
【0069】
本開示の表皮材において、バイオマス度を向上させるためには、バイオマス成分の含有量を高めればよい。
【0070】
例えば、本開示の表皮材では、中間層にバイオマス粉が含まれているが、中間層以外の層に、バイオマス粉を含有させることにより、バイオマス度を高めることができる。しかし、意匠性の観点から、本開示の表皮材では、表皮層はバイオマス粉を実質的に含まないことが好ましい。また、耐久性の観点から、本開示の表皮材では、接着層はバイオマス粉を実質的に含まないことが好ましい。「バイオマス粉を実質的に含まない」とは、バイオマス粉の含有量が、層の全量に対して1質量%以下であるか、又は、バイオマス粉を含まないことを意味する。
【0071】
すなわち、本開示の表皮材では、意匠性及び耐久性の観点から、中間層のみが、バイオマス粉を含むことが特に好ましい。
【0072】
また、本開示の表皮材では、バイオマス度を高めるために、基布として、天然繊維を含む基布を用いることが好ましい。
【0073】
特に、基布が合成繊維からなる場合に、バイオマス度は4質量%~20質量%であることが好ましい。また、基布が天然繊維からなる場合に、バイオマス度は70質量%~90質量であることが好ましい。
【0074】
本開示の表皮材の好ましい態様は以下のとおりである。
バイオマス粉の平均粒径は、100μm以下であり、バイオマス粉の含有量は、中間層の全量に対して、50質量%以下であり、バイオマス粉は、リンゴの粉末であり、基布は、天然繊維を含み、バイオマス度は、表皮材の全量に対して、70質量%以上である。
【0075】
上記態様によれば、特に、耐久性及び意匠性に優れる。
【0076】
(表皮材の製造方法)
本開示の表皮材の製造方法は特に限定されず、通常公知の方法を用いることができる。
本開示の表皮材の製造方法は、例えば、表皮層形成用組成物を用いて、表皮層を形成する工程(工程A)と、表皮層の一方の面上に、中間層形成用組成物を用いて、中間層を形成する工程(工程B)と、中間層の、表皮層が配置されている側とは反対側の面上に、接着層形成用組成物を用いて、接着層を形成する工程(工程C)と、接着層に対して基布を貼り付ける工程(工程D)と、を含む。
【0077】
以下、本開示の表皮材の製造方法の一例について説明する。
【0078】
(工程A)
工程Aでは、表皮層形成用組成物を用いて、表皮層を形成する。表皮層を形成する方法としては、例えば、表皮層形成用組成物を、仮支持体上に塗布し、乾燥させる方法、及び、表皮層形成用組成物を、公知の製膜方法を適用してシート状に成形する方法が挙げられる。
【0079】
表皮層形成用組成物は、表皮層を構成する成分、及び、溶媒を含むことが好ましい。表皮層を構成する成分の好ましい態様は、上記表皮層の欄で説明したとおりである。
【0080】
表皮層形成用組成物に含まれていてもよい溶媒としては、例えば、炭化水素、ケトン、エーテル、エステル、グリコール、及びアルコールが挙げられる。表皮層形成用組成物に含まれる溶媒は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0081】
炭化水素の具体例としては、ヘキサン、へプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンが挙げられる。
ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
エーテルの具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。
エステルの具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
グリコールの具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルペンタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ジアセトンアルコールが挙げられる。
【0082】
また、溶媒は、ハロゲン化合物、含窒素化合物、又は含硫黄化合物であってもよい。
ハロゲン化合物の具体例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、及びジクロロエタンが挙げられる。
含窒素化合物の具体例としては、ニトロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
含硫黄化合物の具体例としては、二硫化炭素及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0083】
表皮層形成用組成物を、仮支持体上に塗布する場合、表皮層形成用組成物の固形分濃度は、10質量%~30質量%であることが好ましい。
【0084】
仮支持体は、後の工程で剥離可能な材料であればよく、特に限定されない。仮支持体としては、例えば、離型紙を用いることができる。
【0085】
表皮層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター法、ブレードコーター法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコーター法、及びグラビアコーター法が挙げられる。
【0086】
表皮層形成用組成物への塗布量は、表皮層の厚さに応じて適宜調整されるが、例えば、100g/m2~300g/g/m2である。
【0087】
表皮層形成用組成物を塗布した後、乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥装置として、例えば、熱風乾燥機、及び、温風乾燥機を用いることができる。乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、80℃~120℃で、1分~3分としてもよい。
【0088】
また、表皮層形成用組成物をシート状に成形する方法としては、例えば、カレンダー法、溶融押出法、及びキャスティング法が挙げられる。
【0089】
(工程B)
工程Bでは、表皮層の一方の面上に、中間層形成用組成物を用いて、中間層を形成する。
【0090】
中間層を形成する方法としては、例えば、中間層形成用組成物を、表皮層の一方の面上に塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0091】
中間層形成用組成物は、中間層を構成する成分、及び、溶媒を含むことが好ましい。中間層を構成する成分の好ましい態様は、上記中間層の欄で説明したとおりである。
【0092】
中間層形成用組成物に含まれていてもよい溶媒としては、表皮層形成用組成物に含まれていてもよい溶媒と同様のものが挙げられる。中間層形成用組成物に含まれる溶媒は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0093】
中間層形成用組成物の固形分濃度は、20質量%~40質量%であることが好ましい。
【0094】
中間層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター法、ブレードコーター法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコーター法、及びグラビアコーター法が挙げられる。
【0095】
中間層形成用組成物への塗布量は、中間層の厚さに応じて適宜調整されるが、例えば、100g/m2~300g/g/m2である。
【0096】
中間層形成用組成物を塗布した後、乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥装置として、例えば、熱風乾燥機、及び、温風乾燥機を用いることができる。乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、80℃~120℃で、1分~3分としてもよい。
【0097】
(工程C)
工程Cでは、中間層の、表皮層が配置されている側とは反対側の面上に、接着層形成用組成物を用いて、接着層を形成する。
【0098】
接着層を形成する方法としては、例えば、接着層形成用組成物を、中間層上に塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0099】
接着層形成用組成物は、接着層を構成する成分、及び、溶媒を含むことが好ましい。接着層を構成する成分の好ましい態様は、上記接着層の欄で説明したとおりである。
【0100】
接着層形成用組成物に含まれていてもよい溶媒としては、表皮層形成用組成物に含まれていてもよい溶媒と同様のものが挙げられる。接着層形成用組成物に含まれる溶媒は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0101】
接着層形成用組成物の固形分濃度は、30質量%~50質量%であることが好ましい。
【0102】
接着層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター法、ブレードコーター法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコーター法、及びグラビアコーター法が挙げられる。
【0103】
接着層形成用組成物への塗布量は、接着層の厚さに応じて適宜調整されるが、例えば、50g/m2~200g/g/m2である。
【0104】
接着層形成用組成物を塗布した後、乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥装置として、例えば、熱風乾燥機、及び、温風乾燥機を用いることができる。乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、80℃~120℃で、1分~3分である。
【0105】
(工程D)
工程Dでは、接着層に対して基布を貼り付ける。
【0106】
基布を貼り付ける方法は特に限定されず、例えば、ローラーを備えたラミネーターを用いることができる。
【0107】
ラミネート温度は、例えば、100℃~150℃である。
ラミネート時の搬送速度は、例えば、0.5m/分~5m/分である。
【0108】
本開示の表皮材の製造方法は、上記工程A~工程D以外の他の構成を含んでいてもよい。
例えば、工程Aにおいて、表皮層形成用組成物を仮支持体上に塗布する場合には、仮支持体を剥離する工程(工程E)を設けることが好ましい。
【0109】
(工程E)
工程Eでは、仮支持体を剥離する。剥離しやすいように、あらかじめ、剥離前の積層体を熟成させておくことが好ましい。
【0110】
熟成温度は、例えば、40℃~70℃である。
熟成時間は、例えば、12時間~60時間である。
【0111】
工程Eは、工程A~工程Dのいずれの後に行ってもよいが、工程Dの後に行うことが好ましい。
【0112】
本開示の表皮材は、簡易な方法で製造することができ、意匠性及び耐久性に優れる。本開示の表皮材は、自動車用内装外装材、鉄道車輌及び航空機の内装部品、家具、靴、履物、鞄、建装用内外装部材、衣類表装材及び裏地、など種々の分野に好適に使用しうる。
【実施例0113】
以下、実施例を挙げて本開示について具体的に説明するが、本開示は以下の具体例に制限されず、種々の変型例が可能である。
【0114】
〔実施例1〕
以下の処方に従い、下記成分を混合し、表皮層形成用組成物を調製した。
表皮層形成用組成物の固形分濃度は、約14質量%であった。
-表皮層形成用組成物-
・1液型溶剤系ポリカーボネート系ポリウレタンの分散液(固形分濃度20質量%) …150質量部
・溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF) …45質量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル:PGM) …35質量部
・溶剤(イソプロピルアルコール:IPA) …20質量部
・着色剤の分散液(カーボンブラックの分散液、固形分濃度33質量%) …25質量部
【0115】
得られた表皮層形成用組成物を、ナイフコート塗工装置を用いて、準備した離型紙上に、ウェット塗布量が200g/m2となる量で塗布し、塗膜を得た。
塗膜に対して、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間乾燥して、離型紙上に表皮層を形成した。形成した表皮層の乾燥後の膜厚は28μmであった(工程A)。
【0116】
以下の処方に従い、下記成分を混合し、中間層形成用組成物を調製した。
中間層形成用組成物の固形分濃度は、約31質量%であった。なお、バイオマス粉として、リンゴを乾燥させて粉砕した粉末を使用した。
-中間層形成用組成物-
・1液型溶剤系ポリカーボネート系ポリウレタンの分散液(固形分濃度30質量%) …100質量部
・溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF) …20質量部
・溶剤(メチルエチルケトン:MEK) …20質量部
・着色剤の分散液(カーボンブラックの分散液、固形分濃度12質量%) …5質量部
・バイオマス粉(リンゴの粉末、平均粒径70μm) …20質量部
【0117】
得られた中間層形成用組成物を、表皮層の一方の面に、グラビアコーターを用いて、ウェット塗布量200g/m2となる量で塗布し、塗膜を得た。
塗膜に対して、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間加熱して、表皮層上に中間層を形成した。形成した中間層の乾燥後の膜厚は61μmであった(工程B)。バイオマス粉の含有量は、中間層の全量に対して、約40質量%であった。
【0118】
以下の処方に従い、下記成分を混合し、接着層形成用組成物を調製した。
接着層形成用組成物の固形分濃度は、約42質量%であった。
-接着層形成用組成物-
・2液型溶剤系ポリカーボネート系ポリウレタンの分散液(固形分濃度40質量%) …100質量部
・イソシアネート架橋剤の分散液(固形分濃度90質量%) …5質量部
【0119】
得られた接着層形成用組成物を、中間層上に、グラビアコーターを用いて、ウェット塗布量100g/m2となる量で塗布し、塗膜を得た。
塗膜に対して、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間加熱して、中間層上に接着層を形成した。形成した接着層の乾燥後の膜厚は42μmであった(工程C)。
【0120】
接着層に対して、ラミネーターを用いて、基布(ポリエステル編布、厚さ700μm、目付240g/m2)を貼り付けた(工程D)。ラミネート温度を130℃、ラミネート時の搬送速度を2m/分とした。
【0121】
離型紙、表皮層、中間層、接着層、及び基布をこの順に有する積層体を50℃で24時間熟成した後、離型紙を剥離した。これにより、基布、接着層、中間層、及び表皮層をこの順に有する表皮材を得た。
【0122】
〔実施例2、実施例3〕
中間層形成用組成物に含まれるバイオマス粉の粒径を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、表皮材を得た。
実施例2では、バイオマス粉として、リンゴの粉末(平均粒径100μm)を用いた。
実施例3では、バイオマス粉として、リンゴの粉末(平均粒径50μm)を用いた。
【0123】
〔実施例4、実施例5〕
中間層形成用組成物に含まれるバイオマス粉の含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、表皮材を得た。
実施例4では、バイオマス粉の含有量は、中間層の全量に対して、50質量%となるように、中間層形成用組成物を調製した。
実施例5では、バイオマス粉の含有量は、中間層の全量に対して、30質量%となるように、中間層形成用組成物を調製した。
【0124】
〔実施例6〕
基布の種類を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、表皮材を得た。
実施例6では、基布として、コットン編布(厚さ700μm、目付240g/m2)を用いた。
【0125】
〔比較例1〕
以下の処方に従い、下記成分を混合し、表皮層形成用組成物を調製した。
表皮層形成用組成物の固形分濃度は、約21質量%であった。なお、バイオマス粉として、リンゴを乾燥させて粉砕した粉末を使用した。
-表皮層形成用組成物-
・1液型溶剤系ポリカーボネート系ポリウレタンの分散液(固形分濃度20質量%) …150質量部
・溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF) …45質量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル:PGM) …35質量部
・溶剤(イソプロピルアルコール:IPA) …20質量部
・着色剤の分散液(カーボンブラックの分散液、固形分濃度33質量%) …25質量部
・バイオマス粉(リンゴの粉末、平均粒径70μm) …25質量部
【0126】
得られた表皮層形成用組成物を、ナイフコート塗工装置を用いて、準備した離型紙上に、ウェット塗布量が200g/m2となる量で塗布し、塗膜を得た。
塗膜に対して、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間乾燥して、離型紙上に表皮層を形成した。形成した表皮層の乾燥後の膜厚は42μmであった。バイオマス粉の含有量は、表皮層の全量に対して、約40質量%であった。
【0127】
実施例1と同様の方法で、接着層形成用組成物を調製した。
【0128】
得られた接着層形成用組成物を、表皮層上に、グラビアコーターを用いて、ウェット塗布量100g/m2となる量で塗布し、塗膜を得た。
塗膜に対して、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間加熱して、表皮層上に接着層を形成した。形成した接着層の乾燥後の膜厚は42μmであった。
【0129】
接着層に対して、ラミネーターを用いて、基布(ポリエステル編布、厚さ700μm、目付240g/m2)を貼り付けた。ラミネート温度を130℃、ラミネート時の搬送速度を2m/分とした。
【0130】
離型紙、表皮層、接着層、及び基布をこの順に有する積層体を50℃で24時間熟成した後、離型紙を剥離した。これにより、基布、接着層、及び表皮層をこの順に有する表皮材を得た。
【0131】
〔比較例2〕
実施例1と同様の方法で、表皮層形成用組成物を調製した。
【0132】
得られた表皮層形成用組成物を、ナイフコート塗工装置を用いて、準備した離型紙上に、ウェット塗布量が200g/m2となる量で塗布し、塗膜を得た。
塗膜に対して、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間乾燥して、離型紙上に表皮層を形成した。形成した表皮層の乾燥後の膜厚は28μmであった。
【0133】
以下の処方に従い、下記成分を混合し、接着層形成用組成物を調製した。
接着層形成用組成物の固形分濃度は、約55質量%であった。なお、バイオマス粉として、リンゴを乾燥させて粉砕した粉末を使用した。
-接着層形成用組成物-
・2液型溶剤系ポリカーボネート系ポリウレタンの分散液(固形分濃度40質量%) …100質量部
・イソシアネート架橋剤の分散液(固形分濃度90質量%) …5質量部
・バイオマス粉(リンゴの粉末、平均粒径70μm) …30質量部
【0134】
得られた接着層形成用組成物を、表皮層上に、グラビアコーターを用いて、ウェット塗布量100g/m2となる量で塗布し、塗膜を得た。
塗膜に対して、熱風乾燥機を用いて120℃で2分間加熱して、中間層上に接着層を形成した。形成した接着層の乾燥後の膜厚は55μmであった。バイオマス粉の含有量は、接着層の全量に対して、約40質量%であった。
【0135】
接着層に対して、ラミネーターを用いて、基布(ポリエステル編布、厚さ700μm、目付240g/m2)を貼り付けた。ラミネート温度を130℃、ラミネート時の搬送速度を2m/分とした。
【0136】
離型紙、表皮層、接着層、及び基布をこの順に有する積層体を50℃で24時間熟成した後、離型紙を剥離した。これにより、基布、接着層、及び表皮層をこの順に有する表皮材を得た。
【0137】
作製した表皮材について、下記式に基づいて、バイオマス度を算出した。
バイオマス度=(表皮材中のバイオマス成分の合計質量/表皮材の質量)×100
実施例及び比較例において、バイオマス粉及びコットン布は、バイオマス成分に該当する。
【0138】
作製した表皮材を用いて、意匠性、耐久性、及び加工性の評価を行った。加工性に関しては、実施例のみ評価を行った。評価方法は、以下のとおりである。
【0139】
<意匠性>
表皮材における表皮層の表面を、10名の作業者が目視及び手触りで観察した。各作業者は、バイオマス粉を目視及び手触りで認識できるか否かを判定した。評価基準は以下のとおりである。
A:10名の作業者が、バイオマス粉を認識できないと判定した。
B:1名以上の作業者が、バイオマス粉を認識できると判定した。
【0140】
<耐久性(初期)>
表皮材を裁断して、150mm×30mmの試験片を作製した。試験片を23℃、相対湿度50%の環境下で6時間静置した。その後、テンシロン万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製)を用いて剥離試験を行い、接着層と基布との剥離強度を測定した。剥離試験は、速度200mm/分、剥離角度180°の条件で行った。剥離強度が高いほど、耐久性(初期)に優れると評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:剥離強度が10N/mm以上である。
B:剥離強度が8N/mm以上、10N/mm未満である。
C:剥離強度が8N/mm未満である。
【0141】
<耐久性(加速劣化試験後)>
表皮材を裁断して、150mm×30mmの試験片を作製した。試験片を70℃、相対湿度95%の環境下で5週間静置した。その後、テンシロン万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製)を用いて剥離試験を行い、接着層と基布との剥離強度を測定した。剥離試験は、速度200mm/分、剥離角度180°の条件で行った。剥離強度が高いほど、耐久性(加速劣化試験後)に優れると評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:剥離強度が10N/mm以上である。
B:剥離強度が8N/mm以上、10N/mm未満である。
C:剥離強度が8N/mm未満である。
【0142】
<加工性>
表皮層上に中間層を形成した工程Bの終了後に、10名の作業者が、中間層の表面を目視で観察した。各作業者は、中間層の表面にスジを認識できるか否かを判定した。評価基準は以下のとおりである。
A:10名の作業者が、中間層の表面にスジを認識できないと判定した。
B:1名以上の作業者が、中間層の表面にスジを認識できると判定した。
【0143】
【0144】
表1に示すとおり、実施例1~実施例6では、表皮材が、基布、接着層、中間層、及び表皮層をこの順に備え、中間層は、バイオマス粉を含むため、意匠性及び耐久性に優れることが分かった。
【0145】
一方、比較例1では、中間層ではなく、表皮層にバイオマス粉が含まれているため、意匠性に劣ることが分かった。
比較例2では、中間層ではなく、接着層にバイオマス粉が含まれているため、耐久性に劣ることが分かった。
【0146】
10 表皮材
12 基布
14 接着層
16 中間層
18 表皮層