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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086001
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】工具ホルダ、刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/06 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B23C5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200838
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000233066
【氏名又は名称】株式会社MOLDINO
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 史彦
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022HH01
(57)【要約】
【課題】不良品を誤って良品と判断されるおそれを低減でき、かつ作業者の操作性を考慮した形状を備える工具ホルダを提供する。
【解決手段】先端部に取付座を備えたポケット部を有し、ポケット部よりも後端側に円柱状部を備える工具ホルダ。円柱状部において、円柱状部の側面を構成する円筒面を含む仮想円筒面を規定するとき、仮想円筒面上には、ポケット部に最も近い第1円筒面と、第1円筒面から最も離れた第2円筒面と、が配置される。第1円筒面と第2円筒面との間には、仮想円筒面よりも径方向内側へ凹む凹部が配置される。凹部は、工具回転中心軸方向の最大幅tmaxが1.0mm以上であり、第1円筒面および第2円筒面は、工具回転中心軸と同軸に形成された円筒研削面である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具回転中心軸を有する略円筒状の工具ホルダであって、
前記工具ホルダの先端部には切削インサートを取り付けるための取付座を備えたポケット部を有し、
前記ポケット部よりも後端側に円柱状部を備えており、
前記円柱状部において、前記円柱状部の側面を構成する円筒面を含み、工具回転中心軸を中心とする仮想円筒面を規定するとき、
前記仮想円筒面上には、
前記工具回転中心軸方向において、前記ポケット部に最も近い第1円筒面と、
前記工具回転中心軸方向において、前記第1円筒面と直径が略等しく、かつ、前記第1円筒面から最も離れた第2円筒面と、
が配置され、
前記第1円筒面と前記第2円筒面との間には、前記仮想円筒面よりも径方向内側へ凹む凹部が配置され、
前記凹部は、前記工具回転中心軸方向の最大幅tmaxが1.0mm以上であり、
前記第1円筒面および前記第2円筒面は、前記工具回転中心軸と同軸に形成された円筒研削面である、工具ホルダ。
【請求項2】
前記第1円筒面および第2円筒面の最大高さ粗さRzは、
0.4μm≦Rz≦6.3μm
を満たす、
請求項1に記載の工具ホルダ。
【請求項3】
前記凹部は、前記仮想円筒面の円周の少なくとも50%以上の範囲に形成されている、
請求項1または2に記載の工具ホルダ。
【請求項4】
前記工具回転中心軸方向において、
前記ポケット部の最大距離をL、前記第1円筒面の先端側の端部と前記第2円筒面の後端側の端部間の最大距離をHとするとき、
0.5≦H/L≦2.0である、
請求項1または2に記載の工具ホルダ。
【請求項5】
前記工具回転中心軸方向における、前記第1円筒面の最小幅をh1、前記第2円筒面の最小幅をh2とするとき、
h1、h2はともに0.5mm以上であり、かつ、0.5≦h1/h2≦2.0の関係を満たす、
請求項1または2に記載の工具ホルダ。
【請求項6】
前記工具ホルダは、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちいずれか1つ以上の表面処理が施された部位を有する、
請求項1または2に記載の工具ホルダ。
【請求項7】
前記工具ホルダは、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちのいずれの表面処理も施されていない、
請求項1または2に記載の工具ホルダ。
【請求項8】
請求項1に記載の工具ホルダと、前記取付座に装着される切削インサートとを備える、刃先交換式切削工具。
【請求項9】
正面振れ量および半径方向振れ量が50μm以下、かつ、刃径精度が90μm以下、を満たす請求項8に記載の刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダおよび刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
刃先交換式切削工具は、切削インサート、工具ホルダ、工具ホルダに切削インサートを取り付けるための、ねじ等の締結部材から成る。各部材の形状精度は加工面品位や寸法精度に影響を与えることがわかっており、近年は切削インサートの形状精度だけでなく工具ホルダの形状精度を向上させる傾向にある。例えば、非特許文献1のP.2には高精度なチップと工具ホルダによって高精度工具を提供することが開示されており、さらに、非特許文献2には工具ホルダの高精度化によるバランスが向上効果が謳われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】プロダクトニュースNo.417エアロチッパーMAL/ALX形,2~3ページ
【非特許文献2】Tooling by DIJET GENERAL CATALOG Vol.10.1 2019~2020,B098~B099ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、工具ホルダは、旋盤や円筒研削工程にて所望の輪郭形状や基準面を削り出した後、マシニングセンタにてインサートを締結するポケット部を削り出すことで製造される。工具ホルダの刃径などの形状測定は、マシニングセンタ加工後に工具ホルダを取り外し、測定機に応じた治具へ付け替えて測定する。治具の寸法精度は高い嵌め合い精度にて製造管理されているが、製造時の治具と測定時の治具間には僅かながら寸法差がある。これにより製造時と測定時で基準面や基準軸が異なってしまい、芯ずれを生じさせていた。この芯ずれが工具刃径や振れ量測定結果に影響を及ぼし、測定寸法と実際の形状に誤差を生じさせてしまう。この誤差は小さいため、通常の精度の工具ホルダでは問題とならないが、高精度な工具ホルダの製造に関しては非常に大きな外乱要因となる。
【0005】
近年は工具ホルダの形状測定評価に用いる形状測定機(ツールプリセッター)に、軸補正機能と呼ばれる機能が備えられている。この軸補正機能は、離れた位置にある同軸かつ精度良く加工された2つの円筒面の円弧中心同士を結ぶ直線を中心軸として検出できるものである。この軸補正機能を利用することで、測定機や治具の付け替えによって生じる外乱を除外し、工具ホルダ単体の工具中心軸を検出することが可能になることが知られている。その結果、製造時の治具と測定時の治具に寸法差があったとしても、測定結果に影響は無く、工具ホルダ単体の寸法精度を評価できる。
【0006】
本発明者の検討によると、この軸補正機能によって工具中心軸を検出する場合、2つの精度良く加工された円筒面の位置関係が工具中心軸検出精度に影響を及ぼすという課題があることがわかった。たとえば、工具ホルダを製造する作業者によって2つの円筒面の取り方にばらつきが出てしまうと、工具中心軸の検出精度が低下してしまう。もしも検出精度の低い工具中心軸を基準に工具ホルダの形状測定をしてしまった場合、工具ホルダ単体の測定を行ったにもかかわらず、良好な精度で完成した工具ホルダが不良と判定されたり、公差から外れた工具ホルダが良品とされたりなど、品質管理上重大な問題となり得る。
【0007】
さらに、工具ホルダに2つの精度良く加工された円筒面を備えることで新たに生じる課題がある。工具ホルダの持ち運びには円筒状外周部を持つことになるが、たとえば円筒面の精度を出すため研削加工した場合、その研削面は旋盤加工面よりも高精度に加工されているため、手に持った際に滑りやすい表面性状となっている。そのため、工作機主軸へ切削工具を取り付けまたは取り外す際などに、より慎重な操作が必要となる。
【0008】
そこで本発明は上述の課題を鑑み、形状測定機(ツールプリセッター)による軸補正機能の中心軸の検出精度を安定的に高めることが可能な形状としたことで、不良品を誤って良品と判断されるおそれを低減し、高精度な工具ホルダを安定して製造できることと、かつ作業者の操作性を考慮した形状を備えることを両立させた工具ホルダを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)工具回転中心軸を有する略円筒状の工具ホルダであって、前記工具ホルダの先端部には切削インサートを取り付けるための取付座を備えたポケット部を有し、前記ポケット部よりも後端側に円柱状部を備える。前記円柱状部において、前記円柱状部の側面を構成する円筒面を含み、工具回転中心軸を中心とする仮想円筒面を規定するとき、前記仮想円筒面上には、前記工具回転中心軸方向において、前記ポケット部に最も近い第1円筒面と、前記工具回転中心軸方向において、前記第1円筒面と直径が略等しく、かつ、前記第1円筒面から最も離れた第2円筒面と、が配置される。前記第1円筒面と前記第2円筒面との間には、前記仮想円筒面よりも径方向内側へ凹む凹部が配置される。前記凹部は、前記工具回転中心軸方向の最大幅tmaxが1.0mm以上である。前記第1円筒面および前記第2円筒面は、前記工具回転中心軸と同軸に形成された円筒研削面である。
【0010】
(2)(1)において、前記第1円筒面および第2円筒面の最大高さ粗さRzは、0.4μm≦Rz≦6.3μmを満たす構成としてもよい。
【0011】
(3)(1)または(2)において、前記凹部は、前記仮想円筒面の円周の少なくとも50%以上の範囲に形成されている構成としてもよい。
【0012】
(4)(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記工具回転中心軸方向において、前記ポケット部の最大距離をL、前記第1円筒面の先端側の端部と前記第2円筒面の後端側の端部間の最大距離をHとするとき、0.5≦H/L≦2.0である構成としてもよい。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記工具回転中心軸方向における、前記第1円筒面の最小幅をh1、前記第2円筒面の最小幅をh2とするとき、h1、h2はともに0.5mm以上であり、かつ、0.5≦h1/h2≦2.0の関係を満たす構成としてもよい。
【0014】
(6)(1)から(5)のいずれか1つにおいて、前記工具ホルダは、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちいずれか1つ以上の表面処理が施された部位を有する構成としてもよい。
【0015】
(7)(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記工具ホルダは、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちのいずれの表面処理も施されていない構成としてもよい。
【0016】
(8)本発明の刃先交換式切削工具は、(1)から(7)のいずれか1つに記載の工具ホルダと、前記取付座に装着される切削インサートとを備える。
【0017】
(9)(8)において、正面振れ量および半径方向振れ量が50μm以下、かつ、刃径精度が90μm以下、を満たす構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、形状測定機(ツールプリセッター)による軸補正機能の中心軸の検出精度を安定的に高めることが可能な形状としたことで、不良品を誤って良品と判断されるおそれを低減し、高精度な工具ホルダを安定して製造できることと、かつ作業者の操作性を考慮した形状を備えることを両立させた工具ホルダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態の工具ホルダの斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の工具ホルダの側面図である。
図3図3は、第1実施形態の工具ホルダの正面図である。
図4図4は、第1実施形態の工具ホルダに切削インサートを装着した刃先交換式切削工具の斜視図である。
図5図5は、第2実施形態の工具ホルダの斜視図である。
図6図6は、第2実施形態の工具ホルダの側面図である。
図7図7は、第2実施形態の工具ホルダの正面図である。
図8図8は、第2実施形態の工具ホルダに切削インサートを装着した刃先交換式切削工具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の工具ホルダの斜視図である。図2は、第1実施形態の工具ホルダの側面図である。図3は、第1実施形態の工具ホルダの正面図である。図4は、第1実施形態の工具ホルダに切削インサートを装着した刃先交換式切削工具の斜視図である。
本実施形態の工具ホルダは、高精度に加工された工具ホルダであり、この工具ホルダを用いた本実施形態の刃先交換式切削工具も高精度の切削工具となる。本実施形態の刃先交換式切削工具は、例えば、正面振れ量および半径方向振れ量が50μm以下、かつ、刃径精度が90μm以下、を満たす。
【0021】
図1から図3に示すように、本実施形態の工具ホルダ10は、工具回転中心軸J0を有する略円筒状の工具ホルダである。工具ホルダ10は、工具回転中心軸J0に沿って並ぶ先端部30と、円柱状部20と、シャンク接続部40とを有する。
【0022】
以下の説明においては、工具ホルダ10の工具回転中心軸J0の軸線方向に沿って、シャンク接続部40から先端部30に向かう方向を先端側、先端部30からシャンク接続部40に向かう方向を後端側と言う。工具回転中心軸J0に平行な方向を単に軸方向と言う場合がある。工具ホルダ10の工具回転中心軸J0に垂直な方向を径方向と言い、工具回転中心軸J0を中心に周回する方向を周方向と言う。
【0023】
工具ホルダ10は、工具ホルダ10の先端部30に、切削インサート1(図4参照)を取り付けるための取付座33を備えたポケット部35を有する。円柱状部20は、先端部30の後端部から後端に向かって延びる。シャンク接続部40は、円柱状部20の後端部から後端側へ延びる。
【0024】
シャンク接続部40は、工具ホルダ10を図示略のシャンクに接続する部位である。シャンク接続部40は、円柱状部20の後端面から後端側へ延びる。シャンク接続部40は、工具回転中心軸J0を中心とする略円柱状である。シャンク接続部40は、円柱状部20よりも小径である。シャンク接続部40は、円柱状部20側から順に並ぶ円筒面42と嵌合部41と、を有する。
【0025】
嵌合部41は、工具回転中心軸J0を中心とする円柱に雄ねじ部を備えた面を有する。嵌合部41は、図示しないシャンクの嵌合部(雌ねじ部)に嵌合する。円筒面42は、嵌合部41と円柱状部20との間に位置する。円筒面42は、工具回転中心軸J0と同軸の円筒面である。円筒面42は、図示しない製造時や測定時に使用する治具に嵌合することで、各治具と工具ホルダ10を互いに位置決めする。
【0026】
先端部30の取付座33およびポケット部35は、本実施形態では6つ設けられる。取付座33およびポケット部35の数は、図4に示す刃先交換式回転切削工具11の工具径、要求性能等に応じて増減できる。例えば、工具径が小さい場合は、取付座33およびポケット部35を5つ以下としてもよく、工具径が大きい場合は、取付座33およびポケット部を7つ以上としてもよい。
【0027】
ポケット部35は、図3に示すように、先端部30の外周面31から径方向内側に向かって凹む凹部である。各々のポケット部35の内壁面のうち、工具回転方向TDの前方側を向く壁面に、取付座33が形成される。6つの取付座33は、本実施形態の場合、工具ホルダ10の周方向に60°おきの等間隔に配置される。6つの取付座33が不等な間隔で配置された不等分割の構成であってもよい。
【0028】
取付座33は、取付座底面33aと、一対の取付座壁面33bと、を有する。取付座底面33aは、切削インサート1の着座面3と略等しい面積の長方形状である。取付座底面33aは、工具ホルダ10の工具回転方向TDを向く。一対の取付座壁面33bは、取付座底面33aの2辺から工具回転方向TD側にそれぞれ延びる面である。
【0029】
取付座底面33aは、切削インサート1の底面を支持する面である。一対の取付座壁面33bのうち軸方向に沿って延びる取付座壁面33bは、切削インサート1の長辺に沿う側面を支持する面である。一対の取付座壁面33bのうち径方向に沿って延びる取付座壁面33bは、切削インサート1の短辺に沿う側面を支持する面である。一対の取付座壁面33bは、切削インサート1の逃げ面を支持する。
【0030】
取付座底面33aのほぼ中央には、ねじ孔33cが形成されている。ねじ孔33cは、切削インサート1の中央に形成された取付孔7に連通可能な孔である。ねじ孔33cには、切削インサート1を取り付ける際の取付ねじ(図示略)が挿入される。切削インサート1は、その中央に形成された取付孔7内に挿入された取付ねじが、工具ホルダ10の取付座底面33aの中央に形成されたねじ孔33cに締め付けられることによって工具ホルダ10に取り付けられる。
【0031】
工具ホルダ10は、複数のポケット部35よりも後端側に、円柱状部20を備える。円柱状部20の側面は、工具回転中心軸J0を中心とする円筒研削面を含む。
ここで、図2に示すように、円柱状部20の側面の円筒面を含む仮想円筒面20vを規定する。仮想円筒面20v上には、少なくとも、工具回転中心軸方向において、ポケット部35に最も近い第1円筒面21と、工具回転中心軸方向において、第1円筒面21と直径が略等しく、かつ第1円筒面21から最も離れた第2円筒面22と、が配置される。第1円筒面21と第2円筒面22との間には、第1円筒面21および第2円筒面22よりも径方向内側に凹む凹部23が配置される。
【0032】
すなわち、円柱状部20は、その側面に工具回転中心軸J0を中心とする円筒研削面からなる領域を有しており、その円筒研削面は、工具回転中心軸方向において、凹部23によって第1円筒面21と第2円筒面22とに区画されている。
【0033】
凹部23は、本実施形態の場合、周方向に延びる溝部23aと、側面視矩形状のDカット部23bとを含む。溝部23aは、工具回転中心軸J0に直交する面内で周方向に延びる。溝部23aの両端は、Dカット部23bの周方向両端の辺にそれぞれ接続される。凹部23は、円柱状部20の全周にわたって延びている。溝部23aの数は工具ホルダの大きさ等に応じて増やすことができる。例えば工具径が大きい場合は、溝部23aを2個以上としても良い。
【0034】
凹部23は、工具回転中心軸方向の最大幅tmaxが1.0mm以上である。本実施形態の場合、最大幅tmaxは、図2に示すように、Dカット部23bの工具中心軸方向の最大幅である。凹部23は、溝部23aのみからなる構成であってもよく、この場合には、最大幅tmaxは、溝部23aの幅となる。最大幅tmaxが1.0mm以上であることにより、第1円筒面21と第2円筒面22とを、容易に視認可能な状態で区画でき、かつ、工具ホルダ10のハンドリング時の滑り止めとしても十分に機能する凹部となる。より好ましくは、凹部23の径方向の深さDが0.3mm以上であり、工具回転中心軸方向とは異なる方向においても一定以上の深さの凹みを備えることで、視認性とハンドリング時の滑り止め効果が向上する。
【0035】
第1円筒面21は、凹部23よりも先端側に位置する円筒研削面である。本実施形態では、第1円筒面21の一部領域は、Dカット部23bの先端側に位置している。第1円筒面21は、Dカット部23bと軸方向に隣接する位置で幅が狭くなっているが、円柱状部20の全周にわたって延びている。凹部23の溝部23aが複数個ある場合においても、最も先端側の凹部23よりも先端側に位置する円筒研削面を第1円筒面21とする。したがって、溝部23aが複数個ある場合に各溝部23aに挟まれた円筒面は第1円筒面21ではない。
【0036】
第2円筒面22は、凹部23よりも後端側に位置する円筒研削面である。本実施形態では、第2円筒面22の一部領域は、Dカット部23bの後端側に位置している。第2円筒面22は、Dカット部23bと軸方向に隣接する位置で幅が狭くなっているが、円柱状部20の全周にわたって延びている。凹部23の溝部23aが複数個ある場合においても、最も後端側の凹部23よりも後端側に位置する円筒研削面を第2円筒面22とする。したがって、溝部23aが複数個ある場合に各溝部23aに挟まれた円筒面は第2円筒面22ではない。
【0037】
第1円筒面21と第2円筒面22は、工具ホルダの軸方向に長い1つの円筒面を形成後、この円筒面に凹部23を設けて製造されることが好ましい。第1円筒面21と第2円筒面22は直径が略等しいため、第1円筒面21と第2円筒面22の直径が異なる場合に比べて同軸度が安定し、軸補正機能による工具中心軸検出精度を安定的に高めることができる。
【0038】
上記構成を備える本実施形態の工具ホルダ10によれば、円柱状部20が、凹部23によって軸方向に区画された第1円筒面21と第2円筒面22とを有していることで、第1円筒面21と第2円筒面22のそれぞれを使用して、形状測定機(ツールプリセッター)の軸補正機能による中心軸検出を実施できる。これにより、測定機や治具の付け替えによって生じる外乱を除外し、工具ホルダ10単体の寸法精度を評価することが可能になる。高精度の測定が可能になる結果、高精度の工具ホルダ10を製造可能となる。
【0039】
本実施形態の工具ホルダ10では、第1円筒面21と第2円筒面22との間に凹部23が配置されているため、形状測定機(ツールプリセッター)の測定者は、測定すべき円筒研削面を容易に認識できる。形状測定機(ツールプリセッター)の測定者が、誤って第1円筒面21を二度測定しまうと、軸方向に近接した位置の測定結果に基づいて中心軸検出を行うことになり、工具中心軸の検出精度が低くなってしまう。検出精度の低い工具中心軸を基準に形状測定をすると、良好な精度で完成した工具ホルダが不良と判定されたり、公差から外れた工具ホルダが良品とされたりするおそれがある。
これに対して本実施形態では、測定者に対して、測定すべき第1円筒面21と第2円筒面22を、凹部によって確実に認識させることができる。工具回転中心軸J0方向において互いに離れて配置された第1円筒面21と第2円筒面22とを測定することで、中心軸検出の精度が高くなる。これにより、工具ホルダ10の精度判定を安定させることができる。
【0040】
また、工具ホルダ10の取り付けおよび取り外し時には、使用者は、主に円柱状部20を把持して作業を行う。円筒研削面である第1円筒面21および第2円筒面22は、平滑な曲面であるため、手に持った際に滑りやすい。円柱状部20に切削油が付着している場合には特に滑りやすくなる。これに対して、本実施形態の工具ホルダ10では、凹部23が設けられていることにより、使用者は、工具ホルダ10を手に持ったときに凹部23に指を引っ掛けることができる。これにより、使用者は、工具ホルダ10の操作を安全かつ円滑に行うことができる。
【0041】
以上により、本実施形態によれば、形状測定機(ツールプリセッター)による軸補正機能の中心軸の検出精度を安定的に高めることが可能な形状としたことで、不良品を誤って良品と判断されるおそれを低減し、高精度な工具ホルダを安定して製造できることと、かつ作業者の操作性を考慮した形状を備えることを両立させた工具ホルダ10を提供することができる。
【0042】
本実施形態において、第1円筒面21および第2円筒面22の最大高さ粗さRzは、0.4μm≦Rz≦6.3μmを満たすことが好ましい。最大高さ粗さRzを上記範囲とすることで、形状測定機(ツールプリセッター)による中心軸検出を高精度に行うことができる。最大高さ粗さRzが0.4μmよりも小さいと、円柱状部20の研削加工時間が長くなって製造効率が低下し、製造費も高くなる。最大高さ粗さRzが6.3μmを超えると、形状測定機(ツールプリセッター)の軸補正機能使用時に表面粗さにより円周が誤認識されやすくなる。その結果、中心軸検出精度が低下するおそれがある。
【0043】
本実施形態において、工具回転中心軸J0方向において、図2に示すように、ポケット部35の軸方向長さである最大距離をL、第1円筒面21の先端側の端部と第2円筒面22の後端側の端部との間の最大距離をHとするとき、0.5≦H/L≦2.0の関係を満たすことが好ましい。この構成によれば、工具ホルダ10全体に対する円柱状部20の軸方向長さを確保できる。これにより、第1円筒面21と第2円筒面22の工具回転中心軸J0方向における距離を大きく確保しやすくなる。形状測定機(ツールプリセッター)の軸補正機能による中心軸検出の精度が向上する。
【0044】
本実施形態において、工具回転中心軸J0方向における、第1円筒面21の最小幅をh1、第2円筒面22の最小幅をh2とするとき、h1、h2はともに0.5mm以上であり、かつ、0.5≦h1/h2≦2.0の関係を満たすことが好ましい。
本実施形態の場合、第1円筒面21および第2円筒面22は、Dカット部23bと軸方向に隣接する位置で幅が最小である。これらの位置における最小幅h1、h2が、0.5mm以上であり、かつ最小幅h1、h2の比率が0.5以上2.0以下の範囲内にあることが好ましい。このような構成とすることで、第1円筒面21および第2円筒面22の両方において、形状測定機(ツールプリセッター)における測定領域を十分に確保でき、効率よく安定して中心軸検出を行うことができる。
【0045】
第1円筒面21および第2円筒面22は、形状測定機(ツールプリセッター)による中心軸検出の精度を確保できるならば、円柱状部20の全周にわたって延びていなくてもよい。例えば、第1円筒面21または第2円筒面22が、Dカット部23bによって途切れていてもよい。一例を挙げると、円筒研削面が円柱状部20の円周長さの70%以上あれば、形状測定機(ツールプリセッター)による中心軸検出が可能である。必要とされる円筒研削面の周方向長さは、形状測定機(ツールプリセッター)の機種によって異なる場合がある。
【0046】
本実施形態では、凹部23は、円柱状部20の全周にわたって延びているが、凹部23は、円柱状部20の周方向において途切れていてもよい。また、凹部23は、周方向において、2つまたは3つ以上の部分に分割されていてもよい。凹部23が円柱状部20の周方向の一部にのみ形成される場合には、凹部23の周方向長さは、合計で、仮想円筒面20vの円周長さの50%以上であることが好ましい。これにより、工具ホルダ10の使用者がどの方向から見ても凹部23の少なくとも一部を視認でき、使用者が工具ホルダ10を持つときも凹部23に触れやすくなる。第1円筒面21と第2円筒面22とを軸方向に区画する機能と、工具ホルダ10のハンドリング時の滑り止め機能の両方を得ることができる。
【0047】
本実施形態の工具ホルダ10は、表面処理が施された工具ホルダであってもよい。すなわち、工具ホルダ10は、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちいずれか1つ以上の表面処理が施された部位を有する構成であってもよい。
また本実施形態の工具ホルダ10は、表面処理が施されていない工具ホルダであってもよい。すなわち、工具ホルダ10は、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちのいずれの表面処理も施されていない構成であってもよい。
【0048】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の工具ホルダの斜視図である。図6は、第2実施形態の工具ホルダの側面図である。図7は、第2実施形態の工具ホルダの正面図である。図8は、第2実施形態の工具ホルダに切削インサートを装着した刃先交換式切削工具の斜視図である。
本実施形態の工具ホルダは、高精度に加工された工具ホルダであり、この工具ホルダを用いた本実施形態の刃先交換式切削工具も高精度の切削工具となる。本実施形態の刃先交換式切削工具は、例えば、正面振れ量および半径方向振れ量が50μm以下、かつ、刃径精度が90μm以下、を満たす。
【0049】
図5から図7に示すように、本実施形態の工具ホルダ10Aは、工具回転中心軸J0を有する略円筒状の工具ホルダである。工具ホルダ10Aは、工具回転中心軸J0に沿って並ぶ先端部30と、円柱状部20と、を有する。
【0050】
第2実施形態では、第1実施形態と同等の部位には、第1実施形態と共通の符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。第2実施形態では、工具ホルダ10Aの工具回転中心軸J0の軸線方向に沿って、円柱状部20から先端部30に向かう方向を先端側、先端部30から円柱状部20に向かう方向を後端側と言う。
【0051】
工具ホルダ10Aは、工具ホルダ10Aの先端部30に、切削インサート1(図8参照)を取り付けるための取付座33を備えたポケット部35を有する。円柱状部20は、先端部30の後端部から後端に向かって延びる。
【0052】
先端部30の取付座33およびポケット部35は、本実施形態では7つ設けられる。取付座33およびポケット部35の数は、増減可能である。ポケット部35は、先端部30の外周面31から径方向内側に向かって凹む凹部である。各々のポケット部35の内壁面のうち、工具回転方向TDの前方側を向く壁面に、取付座33が形成される。7つの取付座33は、本実施形態の場合、工具ホルダ10Aの周方向に51°~52°の角度間隔で配置される。
【0053】
取付座33は、取付座底面33aと、一対の取付座壁面33bと、を有する。取付座底面33aのほぼ中央には、ねじ孔33cが形成されている。図8に示すように、切削インサート1は、その中央に形成された取付孔7内に挿入された取付ねじ(図示略)が、工具ホルダ10Aの取付座底面33aの中央に形成されたねじ孔33cに締め付けられることによって工具ホルダ10Aに取り付けられる。
【0054】
工具ホルダ10Aは、複数のポケット部35よりも後端側に、円柱状部20を備える。円柱状部20の側面は、工具回転中心軸J0を中心とする円筒研削面を含む。本実施形態では、円柱状部20の後端部に、工具ホルダ10Aの後端面から先端側へ凹むキー溝25が形成されている。キー溝25は、工具ホルダ10Aの後端面において直径方向に延びる。キー溝25には、工具ホルダ10Aを加工機の主軸に取り付ける際に、主軸のキーが嵌め合わされる。
【0055】
ここで、図6に示すように、円柱状部20の側面の円筒面を含む仮想円筒面20vを規定する。仮想円筒面20v上には、少なくとも、工具回転中心軸方向において、ポケット部35に最も近い第1円筒面21と、工具回転中心軸方向において、第1円筒面21と直径が略等しく、かつ第1円筒面21から最も離れた第2円筒面22と、が配置される。第1円筒面21と第2円筒面22との間には、第1円筒面21および第2円筒面22よりも径方向内側に凹む凹部23が配置される。
【0056】
凹部23は、本実施形態の場合、周方向に延びる溝部からなる。溝部からなる凹部23は、工具回転中心軸J0に直交する面内で周方向に延びる。凹部23は、工具回転中心軸方向の最大幅tmaxが1.0mm以上である。本実施形態の場合、最大幅tmaxは、溝部の幅である。最大幅tmaxが1.0mm以上であることにより、第1円筒面21と第2円筒面22とを、容易に視認可能な状態で区画でき、かつ、工具ホルダ10Aのハンドリング時の滑り止めとしても十分に機能する凹部となる。より好ましくは、凹部23の径方向の深さDが0.3mm以上であり、工具回転中心軸方向とは異なる方向においても一定以上の凹みを備えることで、視認性とハンドリング時の滑り止め効果が向上する。
【0057】
第1円筒面21は、凹部23よりも先端側に位置する円筒研削面である。本実施形態では、第1円筒面21は、円柱状部20の全周にわたって一定の幅で延びている。
第2円筒面22は、凹部23よりも後端側に位置する円筒研削面である。本実施形態では、第2円筒面22は、キー溝25と軸方向に隣接する位置で幅が狭くなっているが、円柱状部20の全周にわたって延びている。
【0058】
凹部23の数は工具ホルダの大きさ等に応じて増やすことができる。例えば工具径が大きい場合は、凹部23を2個以上としても良い。
凹部23が複数個ある場合においても、最も先端側の凹部23よりも先端側に位置する円筒研削面を第1円筒面21とする。したがって、凹部23が複数個ある場合に各凹部23に挟まれた円筒面は第1円筒面21ではない。
凹部23が複数個ある場合においても、最も後端側の凹部23よりも後端側に位置する円筒研削面を第2円筒面22とする。したがって、凹部23が複数個ある場合に各凹部23に挟まれた円筒面は第2円筒面22ではない。
【0059】
第1円筒面21と第2円筒面22は、工具ホルダの軸方向に長い1つの円筒面を形成後、この円筒面に凹部23を設けて製造されることが好ましい。第1円筒面21と第2円筒面22は直径が略等しいため、第1円筒面21と第2円筒面22の直径が異なる場合に比べて同軸度が安定し、軸補正機能による工具中心軸検出精度を安定的に高めることができる。
【0060】
上記構成を備える本実施形態の工具ホルダ10Aによれば、円柱状部20が、凹部23によって軸方向に区画された第1円筒面21と第2円筒面22とを有していることで、第1円筒面21と第2円筒面22のそれぞれを使用して、形状測定機(ツールプリセッター)の軸補正機能による中心軸検出を実施できる。これにより、測定機や治具の付け替えによって生じる外乱を除外し、工具ホルダ10A単体の寸法精度を評価することが可能になる。高精度の測定が可能になる結果、高精度の工具ホルダ10Aを製造可能となる。
【0061】
工具ホルダ10Aでは、第1円筒面21と第2円筒面22との間に凹部23が配置されているため、形状測定機(ツールプリセッター)の測定者は、測定すべき円筒研削面を容易に認識できる。工具回転中心軸J0方向において互いに離れて配置された第1円筒面21と第2円筒面22とを測定することで、中心軸検出の精度が高くなる。これにより、工具ホルダ10Aの精度判定を安定させることができる。
【0062】
円筒研削面である第1円筒面21および第2円筒面22は、平滑な曲面であるため、手に持った際に滑りやすい。本実施形態の工具ホルダ10Aでは、円柱状部20に凹部23が設けられていることにより、使用者は、工具ホルダ10Aを手に持ったときに凹部23に指を引っ掛けることができる。これにより、使用者は、工具ホルダ10Aの操作を安全かつ円滑に行うことができる。
【0063】
以上により、本実施形態によれば、形状測定機(ツールプリセッター)による軸補正機能の中心軸の検出精度を安定的に高めることが可能な形状としたことで、不良品を誤って良品と判断されるおそれを低減でき、かつ作業者の操作性を考慮した形状を備える工具ホルダ10Aを提供することができる。
【0064】
本実施形態において、第1円筒面21および第2円筒面22の最大高さ粗さRzは、0.4μm≦Rz≦6.3μmを満たすことが好ましい。最大高さ粗さRzを上記範囲とすることで、形状測定機(ツールプリセッター)による中心軸検出を高精度に行うことができる。
【0065】
本実施形態において、工具回転中心軸J0方向において、図6に示すように、ポケット部35の軸方向長さである最大距離をL、第1円筒面21の先端側の端部と第2円筒面22の後端側の端部との間の最大距離をHとするとき、0.5≦H/L≦2.0の関係を満たすことが好ましい。この構成によれば、工具ホルダ10A全体に対する円柱状部20の軸方向長さを確保できる。これにより、第1円筒面21と第2円筒面22の工具回転中心軸J0方向における距離を大きく確保しやすくなる。形状測定機(ツールプリセッター)の軸補正機能による中心軸検出の精度が向上する。
【0066】
本実施形態において、工具回転中心軸J0方向における、第1円筒面21の最小幅をh1、第2円筒面22の最小幅をh2とするとき、h1、h2はともに0.5mm以上であり、かつ、0.5≦h1/h2≦2.0の関係を満たすことが好ましい。
本実施形態の場合、第1円筒面21は一定の幅であるが、第2円筒面22は、キー溝25と軸方向に隣接する位置で幅が最小となる。これらの位置における最小幅h1、h2が、0.5mm以上であり、かつ最小幅h1、h2の比率が0.5以上2.0以下の範囲内にあることが好ましい。このような構成とすることで、第1円筒面21および第2円筒面22の両方において、形状測定機(ツールプリセッター)における測定領域を十分に確保でき、効率よく安定して中心軸検出を行うことができる。
【0067】
本実施形態においても、第1円筒面21および第2円筒面22は、形状測定機(ツールプリセッター)による中心軸検出の精度を確保できるならば、円柱状部20の全周にわたって延びていなくてもよい。
【0068】
本実施形態においても、凹部23は、円柱状部20の周方向において途切れていてもよい。また、凹部23は、周方向において、2つまたは3つ以上の部分に分割されていてもよい。凹部23が円柱状部20の周方向の一部にのみ形成される場合には、凹部23の周方向長さは、合計で、仮想円筒面20vの円周長さの50%以上であることが好ましい。これにより、工具ホルダ10Aの使用者がどの方向から見ても凹部23の少なくとも一部を視認でき、使用者が工具ホルダ10Aを持つときも凹部23に触れやすくなる。第1円筒面21と第2円筒面22とを軸方向に区画する機能と、工具ホルダ10Aのハンドリング時の滑り止め機能の両方を得ることができる。
【0069】
本実施形態の工具ホルダ10Aは、表面処理が施された工具ホルダであってもよい。すなわち、工具ホルダ10Aは、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちいずれか1つ以上の表面処理が施された部位を有する構成であってもよい。
また本実施形態の工具ホルダ10Aは、表面処理が施されていない工具ホルダであってもよい。すなわち、工具ホルダ10Aは、めっき、黒染め、PVDコーティング、CVDコーティングのうちのいずれの表面処理も施されていない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…切削インサート、10,10A…工具ホルダ、20…円柱状部、20v…仮想円筒面、21…第1円筒面、22…第2円筒面、23…凹部、30…先端部、33…取付座、35…ポケット部、h1,h2…最小幅、J0…工具回転中心軸、Rz…粗さ、tmax…最大幅
図1
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