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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086006
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】算出装置及び算出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20240620BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G06F30/23
G01R29/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200849
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】村田 光司
(72)【発明者】
【氏名】町田 文枝
(72)【発明者】
【氏名】キム スンヒョン
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA09
5B146AA22
5B146DJ04
5B146DJ07
(57)【要約】
【課題】計算速度を向上させ、計算時間コストを低減することができる算出装置及び算出方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る算出装置100は、数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13を有する試料10を複数のセルに分割し、各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出する算出部110を備える。算出部110は、数値解適用部分11及び接続部分12の電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出し、算出した接続部分12の電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換し、変換した平面波を初期値とし、平面波が解析解適用部分13を伝搬方向に伝搬する場合における波数空間での電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出し、算出した波数空間での電磁場を逆フーリエ変換することにより、解析解適用部分13の電磁場を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分、接続部分及び解析解適用部分を有する試料を複数のセルに分割し、各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出することにより、前記試料の前記電磁場を算出する算出部を備え、
前記接続部分及び前記解析解適用部分は、前記入射光が前記伝搬方向に一様に伝搬し、
前記算出部は、
前記数値解適用部分及び前記接続部分の前記電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出し、
算出した前記接続部分の前記電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換し、
変換した前記接続部分の前記平面波を初期値とし、前記平面波が前記解析解適用部分を前記伝搬方向に伝搬する場合における前記解析解適用部分の波数空間での前記電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出し、
算出した前記解析解適用部分の前記波数空間での前記電磁場を逆フーリエ変換することにより、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出する、
算出装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記解析解適用部分において、所定の用途に応じて、電場のみ、磁場のみ、並びに、前記電場及び前記磁場の両方、のいずれかを算出する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記解析解適用部分において、前記伝搬方向及び前記伝搬方向に直交する2つの方向を含む3つの方向における前記電磁場の3成分のうち、2成分をフーリエ変換し、残り1成分を電磁波の横波条件から算出する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記解析解適用部分において、前記伝搬方向に直交する所定の平面を含む第1部分、または、前記伝搬方向に直交する所定の2つの平面で挟まれた第2部分に限定して前記電磁場を算出する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記セルの複素屈折率が一定の範囲かどうかを前記伝搬方向の反対方向から判定することで、前記数値解適用部分、前記接続部分及び前記解析解適用部分を決定する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記接続部分における前記電磁場を、対称境界条件及び反対称境界条件を用いて前記解析解適用部分に拡張することで、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出する、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項7】
前記試料は、複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分を含み、
複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分の前記電磁場のデータを記憶する記憶装置をさらに備えた、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項8】
前記解析解適用部分及び前記接続部分は、前記セルの複素屈折率が一定の範囲である、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項9】
前記試料は、基板、及び、前記基板上に形成された素子を含み、
前記解析解適用部分は、前記基板を含み、
前記数値解適用部分は、前記素子を含み、
前記接続部分は、前記基板における前記素子が接続した部分を含む、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項10】
前記数値計算は、FDTD法、FEM法、BEM法、CIP法、FIT法、及び、グリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、少なくともいずれかによる計算である、
請求項1に記載の算出装置。
【請求項11】
試料の電磁場を算出する算出方法であって、
入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分、接続部分及び解析解適用部分を有する試料を複数のセルに分割するステップと、
分割した各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出することにより、前記試料の前記電磁場を算出するステップと、
を備え、
前記接続部分及び前記解析解適用部分は、前記入射光が前記伝搬方向に一様に伝搬し、
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記数値解適用部分及び前記接続部分の前記電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出し、
算出した前記接続部分の前記電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換し、
変換した前記接続部分の前記平面波を初期値とし、前記平面波が前記解析解適用部分を前記伝搬方向に伝搬する場合における前記解析解適用部分の波数空間での前記電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出し、
算出した前記解析解適用部分の前記波数空間での前記電磁場を逆フーリエ変換することにより、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出する、
算出方法。
【請求項12】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記解析解適用部分において、所定の用途に応じて、電場のみ、磁場のみ、並びに、前記電場及び前記磁場の両方、のいずれかを算出する、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項13】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記解析解適用部分において、前記伝搬方向及び前記伝搬方向に直交する2つの方向を含む3つの方向における前記電磁場の3成分のうち、2成分をフーリエ変換し、残り1成分を電磁波の横波条件から算出する、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項14】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記解析解適用部分において、前記伝搬方向に直交する所定の平面を含む第1部分、または、前記伝搬方向に直交する所定の2つの平面で挟まれた第2部分に限定して前記電磁場を算出する、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項15】
前記複数のセルに分割するステップでは、
前記セルの複素屈折率が一定の範囲かどうかを前記伝搬方向の反対方向から判定することで、前記数値解適用部分、前記接続部分及び前記解析解適用部分を決定する、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項16】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記接続部分における前記電磁場を、対称境界条件及び反対称境界条件を用いて前記解析解適用部分に拡張することで、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出する、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項17】
前記試料は、複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分を含み、
複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分の前記電磁場のデータを記憶するステップをさらに備えた、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項18】
前記解析解適用部分及び前記接続部分は、前記セルの複素屈折率が一定の範囲である、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項19】
前記試料は、基板、及び、前記基板上に形成された素子を含み、
前記解析解適用部分は、前記基板を含み、
前記数値解適用部分は、前記素子を含み、
前記接続部分は、前記基板における前記素子が接続した部分を含む、
請求項11に記載の算出方法。
【請求項20】
前記数値計算は、FDTD法、FEM法、BEM法、CIP法、FIT法、及び、グリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、少なくともいずれかによる計算である、
請求項11に記載の算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、算出装置及び算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導波路解析手法を、ビーム伝搬法(Beam Propagation Method、以下、BPMと呼ぶ。)から、時間領域差分法(Finite Difference Time Domain、以下、FDTD法と呼ぶ。)に置き換え、より正確な導波路間光結合効率を計算することが記載されている。具体的には、特許文献1は、BPMでは正確に計算できない高屈折率差を持つ導波路に対する解法をFDTD法に置き換えることで精度改善を行っている。また、特許文献1は、導波路の固有モードを求めるために、ヘルムホルツ方程式を有限要素法で数値的に解き、導波路間の結合効率を求める際に、FDTD法の結果を時間領域から周波数領域へフーリエ変換する。
【0003】
特許文献2には、BPMをベースとした計算過程で、BPMが苦手とする金属等の特別な材質を検出した際に、その材質を含む部分にFDTD法を適用して解くことで、速度をできるだけ落とさずに精度を改善することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、結像光学系が波長と同程度の大きさの物体を含んでいた場合に、回折・干渉・偏光といった波動光学的効果を正確に計算する目的で、FDTD法を部分的に適用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-134386号公報
【特許文献2】特開2004-239784号公報
【特許文献3】特開2002-196230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3に示したように、光学シミュレーションに用いられる数値計算手法の一つに、FDTD法がある。FDTD法は、シミュレーション対象構造を細かい直方体セルに分割し、分割した各セルに屈折率及び電磁場を配置し、離散化されたマクスウェル方程式を解く。FDTD法は、非常に汎用性が高い反面、計算速度が遅い。FDTD法の計算時間は、上述の直方体セル数に比例する。直方体セルは、入射光の波長よりも十分小さい必要がある。FDTD法は、シミュレーション対象構造が大きいほど、多くの直方体セル数を必要とする。近年、光学シミュレーション対象の微細化・大規模化が進んでいる。計算速度の向上及び計算時間コストの低減は、FDTD法の大きな課題の一つである。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、計算速度を向上させ、計算時間コストを低減させることができる算出装置及び算出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る算出装置は、
入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分、接続部分及び解析解適用部分を有する試料を複数のセルに分割し、各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出することにより、前記試料の前記電磁場を算出する算出部を備え、
前記接続部分及び前記解析解適用部分は、前記入射光が前記伝搬方向に一様に伝搬し、
前記算出部は、
前記数値解適用部分及び前記接続部分の前記電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出し、
算出した前記接続部分の前記電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換し、
変換した前記接続部分の前記平面波を初期値とし、前記平面波が前記解析解適用部分を前記伝搬方向に伝搬する場合における前記解析解適用部分の波数空間での前記電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出し、
算出した前記解析解適用部分の前記波数空間での前記電磁場を逆フーリエ変換することにより、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出する。
【0009】
上記算出装置では、前記算出部は、前記解析解適用部分において、所定の用途に応じて、電場のみ、磁場のみ、並びに、前記電場及び前記磁場の両方、のいずれかを算出してもよい。
【0010】
上記算出装置では、前記算出部は、前記解析解適用部分において、前記伝搬方向及び前記伝搬方向に直交する2つの方向を含む3つの方向における前記電磁場の3成分のうち、2成分をフーリエ変換し、残り1成分を電磁波の横波条件から算出してもよい。
【0011】
上記算出装置では、前記算出部は、前記解析解適用部分において、前記伝搬方向に直交する所定の平面を含む第1部分、または、前記伝搬方向に直交する所定の2つの平面で挟まれた第2部分に限定して前記電磁場を算出してもよい。
【0012】
上記算出装置では、前記算出部は、前記セルの複素屈折率が一定の範囲かどうかを前記伝搬方向の反対方向から判定することで、前記数値解適用部分、前記接続部分及び前記解析解適用部分を決定してもよい。
【0013】
上記算出装置では、前記算出部は、前記接続部分における前記電磁場を、対称境界条件及び反対称境界条件を用いて前記解析解適用部分に拡張することで、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出してもよい。
【0014】
上記算出装置では、前記試料は、複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分を含み、
複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分の前記電磁場のデータを記憶する記憶装置をさらに備えてもよい。
【0015】
上記算出装置では、前記解析解適用部分及び前記接続部分は、前記セルの複素屈折率が一定の範囲でもよい。
【0016】
上記算出装置では、前記試料は、基板、及び、前記基板上に形成された素子を含み、
前記解析解適用部分は、前記基板を含み、
前記数値解適用部分は、前記素子を含み、
前記接続部分は、前記基板における前記素子が接続した部分を含んでもよい。
【0017】
上記算出装置では、前記数値計算は、FDTD法、FEM法、BEM法、CIP法、FIT法、及び、グリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、少なくともいずれかによる計算でもよい。
【0018】
本開示に係る算出方法は、
試料の電磁場を算出する算出方法であって、
入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分、接続部分及び解析解適用部分を有する試料を複数のセルに分割するステップと、
分割した各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出することにより、前記試料の前記電磁場を算出するステップと、
を備え、
前記接続部分及び前記解析解適用部分は、前記入射光が前記伝搬方向に一様に伝搬し、
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記数値解適用部分及び前記接続部分の前記電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出し、
算出した前記接続部分の前記電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換し、
変換した前記接続部分の前記平面波を初期値とし、前記平面波が前記解析解適用部分を前記伝搬方向に伝搬する場合における前記解析解適用部分の波数空間での前記電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出し、
算出した前記解析解適用部分の前記波数空間での前記電磁場を逆フーリエ変換することにより、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出する。
【0019】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記解析解適用部分において、所定の用途に応じて、電場のみ、磁場のみ、並びに、前記電場及び前記磁場の両方、のいずれかを算出してもよい。
【0020】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記解析解適用部分において、前記伝搬方向及び前記伝搬方向に直交する2つの方向を含む3つの方向における前記電磁場の3成分のうち、2成分をフーリエ変換し、残り1成分を電磁波の横波条件から算出してもよい。
【0021】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記解析解適用部分において、前記伝搬方向に直交する所定の平面を含む第1部分、または、前記伝搬方向に直交する所定の2つの平面で挟まれた第2部分に限定して前記電磁場を算出してもよい。
【0022】
前記複数のセルに分割するステップでは、
前記セルの複素屈折率が一定の範囲かどうかを前記伝搬方向の反対方向から判定することで、前記数値解適用部分、前記接続部分及び前記解析解適用部分を決定してもよい。
【0023】
前記試料の前記電磁場を算出するステップでは、
前記接続部分における前記電磁場を、対称境界条件及び反対称境界条件を用いて前記解析解適用部分に拡張することで、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出してもよい。
【0024】
上記算出方法では、前記試料は、複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分を含み、
複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分の前記電磁場のデータを記憶するステップをさらに備えてもよい。
【0025】
上記算出方法では、前記解析解適用部分及び前記接続部分は、前記セルの複素屈折率が一定の範囲でもよい。
【0026】
上記算出方法では、前記試料は、基板、及び、前記基板上に形成された素子を含み、
前記解析解適用部分は、前記基板を含み、
前記数値解適用部分は、前記素子を含み、
前記接続部分は、前記基板における前記素子が接続した部分を含んでもよい。
【0027】
上記算出方法では、前記数値計算は、FDTD法、FEM法、BEM法、CIP法、FIT法、及び、グリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、少なくともいずれかによる計算でもよい。
【発明の効果】
【0028】
本開示により、計算速度を向上させ、計算時間コストを低減させることができる算出装置及び算出方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態1に係る試料を例示した斜視図である。
図2】実施形態1に係る試料を分割した複数のセルを例示した斜視図である。
図3】実施形態1に係るセルを例示した拡大斜視図であり、図2のIII部分の拡大斜視図である。
図4】実施形態1に係る算出装置を例示したブロック図である。
図5】実施形態1に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。
図6】実施形態1に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。
図7】実施形態1に係る電磁場の算出方法において、数値解適用部分の算出方法を例示したフローチャート図である。
図8】実施形態1に係る試料の数値解適用部分、接続部分及び解析解適用部分の決定方法を例示したグラフであり、横軸は、試料のZ軸方向における位置を示し、縦軸は、複素屈折率を示す。
図9】実施形態1に係る試料10において、入射光の伝搬方向に直交するXY面を例示した図である。
図10】実施形態1に係る試料において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の第1象限における電磁場を例示した図であり、電場Exを示す。
図11】実施形態1に係る試料において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の第1象限における電磁場を例示した図であり、電場Eyを示す。
図12】実施形態1に係る試料において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の第1象限における電磁場を例示した図であり、電場Ezを示す。
図13】実施形態1に係る試料において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の電磁場を例示した図であり、電場Exを示す。
図14】実施形態1に係る試料において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の電磁場を例示した図であり、電場Eyを示す。
図15】実施形態1に係る試料において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の電磁場を例示した図であり、電場Ezを示す。
図16】実施形態1に係る試料を例示した斜視図である。
図17】実施形態1に係る算出方法を適用した試料を例示した斜視図である。
図18】比較例に係る算出方法を適用した試料を例示した斜視図である。
図19】実施形態1に係る算出方法により算出された電場の積分値と、比較例に係る算出方法により算出された電場の積分値と、を比較した図である。
図20】実施形態1に係る解析解適用部分の伝播方向の長さが異なる複数の試料を並べた斜視図である。
図21】実施形態1に係る算出方法の計算時間と、比較例に係る算出方法の計算時間と、を比較した図である。
図22】実施形態1に係る算出方法の計算時間と、比較例に係る算出方法の計算時間と、を比較したグラフであり、横軸は、各試料を示し、縦軸は、計算時間を示す。
図23】実施形態2に係る試料を例示した斜視図である。
図24】実施形態2に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。
図25】実施形態2に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。
図26】実施形態2に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。
図27】実施形態2に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0031】
(実施形態の概要)
実施形態に係る算出装置及び算出方法の概要を説明する。本実施形態の算出装置は、例えば、電磁場の算出を行う装置である。算出装置は、本実施形態の算出方法を用いて電磁場の算出を行う。算出方法は、FDTD法等の数値解法において、部分的に解析解を適用して算出を行う。まず、本実施形態の概要を、<数値解法の適用形態・効果>、<フーリエ変換の適用形態・対象>及び<ヘルムホルツ方程式の解法・対象>に分けて説明する。その際に、特許文献1との差異も説明する。
【0032】
<数値解法の適用形態・効果>
本実施形態における数値解法について、FDTD法を一例として説明する。
1.FDTD法は、電磁場の解析のシミュレーション対象となる試料を細かいセルに分割して数値計算を行う。FDTD法の計算量は、使用されるセル数に比例し増加する。そこで、本実施形態の解析方法は、試料において、電磁場を解析的に算出可能な部分を検出する。そして、解析的に算出可能な部分に解析解を適用することによって、FDTD法を適用する部分を限定する。つまり、FDTD法を適用するセル数を削減することによって、FDTD法による数値計算にかかる時間を短縮する。
【0033】
これに対して、特許文献1では、導波路のコアとクラッドの屈折率差が大きい場合に、BPMの計算精度の低下を抑制するために、BPMの代わりにFDTD法を適用する。これにより、計算精度の改善を図っている。したがって、特許文献1のFDTD法による数値計算は、対象となる物理量・用途・それによって得られる効果の点で、本実施形態の数値解法と異なっている。
【0034】
<フーリエ変換の適用形態・対象>
本実施形態におけるフーリエ変換を説明する。
1.FDTD法による数値計算の結果を、実空間に対するフーリエ変換により、波数空間での電磁場に変換する。
2.上記変換結果に解析解を適用する。算出された解析解を逆フーリエ変換で実空間に戻すことによって、FDTD法による数値計算を適用した場合と同じ結果を高速に得ることができる。
【0035】
これに対して、特許文献1では、FDTD法による計算結果を時間に対するフーリエ変換で周波数領域に変換する。そして、変換結果を用いて導波路間光結合効率を計算する。 したがって、特許文献1のフーリエ変換は、対象となる物理量・用途・それによって得られる効果の点で、本実施形態のフーリエ変換と異なっている。例えば、特許文献1のフーリエ変換は、時間と周波数に対するものである。一般に、FDTD法による数値計算時の時間及び周波数のフーリエ変換は、各時間のステップで、電磁場に位相因子を掛けたものを加算する形態で行われる。
【0036】
一方、本実施形態のフーリエ変換は、実空間上の電磁場を波数空間上のものに変換するものである。よって、FDTD法による数値計算の終了時に一度だけ、試料における所定の部分(接続部分)でフーリエ変換が行われる。このように、本実施形態のフーリエ変換は、変換される対象となる物理量が特許文献1と異なるだけでなく、それを実現する構成そのものも特許文献1と異なっている。
【0037】
<ヘルムホルツ方程式の解法・対象>
本実施形態におけるヘルムホルツ方程式を説明する。
1.解析的に算出可能な部分にヘルムホルツ方程式を適用し、電磁場の解析解を得る。
2.ヘルムホルツ方程式は、フーリエ変換された電磁場に対するものである。
3.得られた解は、逆フーリエ変換されることにより、実空間での電磁場の計算結果となる。
【0038】
これに対して、特許文献1では、ヘルムホルツ方程式を有限要素法で数値的に解く。特許文献1におけるヘルムホルツ方程式は、電磁ポテンシャルに対するものである。得られた解は、FDTD法の数値計算の入力として使用される。特許文献1でも、ヘルムホルツ方程式を用いている。しかしながら、特許文献1のヘルムホルツ方程式は、対象となる物理量・用途・それによって得られる効果の点で、本実施形態の算出方法と異なっている。このように、本実施形態のポイントであるフーリエ変換を利用した数値解適用部分と解析解適用部分の接続手法は、特許文献1と全く異なるといえる。
【0039】
本実施形態の算出方法は、電磁場(光学を含む)の算出のシミュレーション対象となる試料の特徴を利用することで、計算時間を短縮することができる。試料における特徴ある構造としては、例えば、入射波長程度の大きさの複雑な微細構造をもつ素子が厚いシリコン基板上に形成されているような構造があげられる。シリコン基板上の複雑構造における電磁場は、FDTD法のような数値計算で解くことが望ましい。しかしながら、厚いシリコン基板は、一様媒質である。したがって、厚いシリコン基板における電磁場は、平面波展開とヘルムホルツ方程式の解析解を用いることによって算出することができる。
【0040】
このように、本実施形態は、計算速度の遅いFDTD法を、試料における複雑形状部分に限定し、試料における一様媒質部分に、平面波展開及びヘルムホルツ方程式の解析解を適用する。これにより、試料の電磁場を高速計算する。よって、試料全域にFDTD法による数値計算を適用する場合に対して、計算速度を向上させることができる。
【0041】
具体的には、平面波展開及びヘルムホルツ方程式の解析解を用いた解析的解法は、FDTD法による数値計算に比べて十分に速い。このため、FDTD法を試料における解析解適用部分にも適用した場合の試料全体のセル数をMとし、複雑形状部分の数値解適用部分のみに限定した場合のセル数をNとした場合に、FDTD法による計算時間は、N/Mに短縮される。
【0042】
さらに、複雑形状部分に適用したFDTD法の収束が、一様媒質部分に適用した場合のFDTD法の収束よりも速い場合には、計算時間は、N/M以下に短縮される。よって、本実施形態の解析方法は、上記セル数をM及びNとした場合に、計算時間を少なくともN/Mに短縮するものと言える。
【0043】
(実施形態1)
次に、本実施形態に係る算出装置及び算出方法の詳細を説明する。まず、電磁場の算出の対象となる<試料>を説明する。そして、試料の電磁場を算出する<算出装置>を説明し、その後、試料の電磁場を算出する<算出方法>を説明する。
【0044】
<試料>
図1は、実施形態1に係る試料を例示した斜視図である。図1に示すように、本実施形態の試料10は、数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13を有している。ここで、試料10の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。試料10に入射する入射光の光軸をZ軸方向とし、入射光に直交する面をXY平面とする。入射光は、-Z軸方向に伝搬する。入射光が伝搬する-Z軸方向を伝搬方向と呼ぶ。説明の便宜上、+Z軸方向を上方と呼び、-Z軸方向を下方と呼ぶ。なお、上方及び下方は、説明の便宜のためであり、実際の試料10の配置方向を示すものではない。
【0045】
試料10は、入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13を有している。すなわち、-Z軸方向に、数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13は、並んでいる。試料10は、例えば、基板、及び、基板上に形成された素子を含む。解析解適用部分13は、基板を含む。数値解適用部分11は、素子を含む。接続部分12は、基板における素子が接続した部分を含む。本実施形態は、試料10の電磁場を解析するために、試料10を複数のセルに分割する。
【0046】
図2は、実施形態1に係る試料を分割した複数のセルを例示した斜視図である。図3は、実施形態1に係るセルを例示した拡大斜視図であり、図2のIII部分の拡大斜視図である。図2及び図3に示すように、シミュレーション対象構造となる試料10は、複数の細かい直方体状のセルの集合体として表現される。各セルは、誘電率等の物性値を与えられる。各セルの辺及び面は、電場E及び磁場Hを配置される。本実施形態は、各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電場E及び磁場Hを算出することにより、試料10の電磁場を算出する。接続部分12及び解析解適用部分13は、入射光が伝搬方向に一様に伝搬する。解析解適用部分13及び接続部分12は、セルの複素屈折率が一定の範囲でもよい。
【0047】
<算出装置>
次に、算出装置を説明する。図4は、実施形態1に係る算出装置を例示したブロック図である。図1に示すように、算出装置100は、算出部110を備えている。算出部110は、算出手段としての機能を有している。算出部110は、入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13を有する試料10を複数のセルに分割する。算出部110は、各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出する。これにより、算出部110は、試料10の電磁場を算出する。
【0048】
また、算出部110は、数値解適用部分11及び接続部分12の電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出する。数値計算は、例えば、FDTD法、FEM法(Finite Element Method、有限要素法とも呼ぶ。)、BEM法(Boundary Element Method、境界要素法とも呼ぶ。)、CIP(Cubic Interpolation ProfileまたはConstrained Interpolation Profile)法、FIT(Finite Integral Technique)法、及び、一般的なグリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、少なくともいずれかによる計算である。算出部110は、算出した接続部分12の電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換する。算出部110は、変換した接続部分12の平面波を初期値とし、平面波が解析解適用部分13を伝搬方向に伝搬する場合における解析解適用部分13の波数空間での電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出する。算出部110は、算出した解析解適用部分13の波数空間での電磁場を逆フーリエ変換することにより、解析解適用部分13の実空間での電磁場を算出する。
【0049】
算出装置100は、例えば、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ、サーバ等の情報処理装置でもよい。算出装置100は、プロセッサPRC、メモリMMR、記憶装置STR及びインターフェースINTを備えてもよい。記憶装置STRは、算出装置100における算出部110等の各構成が行う処理をプログラムにして記憶してもよい。また、プロセッサPRCは、記憶装置STRからプログラムをメモリMMRへ読み込ませ、当該プログラムを実行してもよい。これにより、プロセッサPRCは、算出装置100における各構成の機能を実現する。算出装置100は、算出部110に対応するプログラムを、メモリMMRおよび記憶装置STRを参照しながらプロセッサPRCが実行することによって、図4に示す算出装置100を実現してもよい。
【0050】
算出装置100が有する算出部110等の各構成は、それぞれが、専用のハードウェアで実現されてもよい。また、各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(Circuitry)、プロセッサPRC等やこれらの組合せによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。また、プロセッサPRCとして、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-programmable Gate Array)、量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)等を用いることができる。
【0051】
また、算出装置100の各構成要素の一部または全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等により、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。また、算出装置100の機能がSaaS(Software as a Service)形式で提供されてもよい。
【0052】
<算出方法>
次に、算出部110が実施する試料10の電磁場の算出方法を説明する。図5及び図6は、実施形態1に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。図5のステップS10に示すように、入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分11、接続部分12、及び、解析解適用部分13を有する試料10を複数のセルに分割する。次に、ステップS20に示すように、各セルの電磁場を算出することにより、試料の電磁場を算出する。具体的には、算出部110は、分割した各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出することにより、試料10の電磁場を算出する。
【0053】
ステップS20の試料10の電磁場を算出する際には、まず、図6のステップS21に示すように、数値解適用部分11及び接続部分12の電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出する。数値計算は、例えば、FDTD法、FEM法、BEM法、CIP法、FIT法、及び、一般的なグリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、少なくともいずれかによる計算である。例えば、算出部110は、数値解適用部分11及び接続部分12における各セルの電磁場を、マクスウェル方程式を用いて数値計算で解くことにより、数値解適用部分11及び接続部分12の電磁場を算出する。
【0054】
次に、ステップS22に示すように、算出した接続部分12の電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換する。具体的には、算出部110は、接続部分12の各セルの電磁場をフーリエ変換することにより、波数空間上の平面波に変換する。
【0055】
次に、ステップS23に示すように、変換した接続部分12の平面波を初期値とし、平面波が解析解適用部分13を伝搬方向に伝搬する場合における解析解適用部分13の波数空間での電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出する。具体的には、算出部110は、変換した平面波を初期値としたヘルムホルツ方程式を用いて波数空間上の解析解を算出する。
【0056】
次に、ステップS24に示すように、算出した波数空間上の電磁場を逆フーリエ変換することにより解析解適用部分13の電磁場を算出する。以下で、試料10の<数値解適用部分>、<接続部分>及び<解析解適用部分>の各部分の電磁場の算出方法を説明する。
【0057】
<数値解適用部分>
数値解適用部分11は、試料10の複雑な構造を含む部分である。例えば、数値解適用部分11は、基板上に形成された入射波長程度の大きさの微細構造を有する素子を含む部分である。数値解適用部分11は、数値計算によって電磁場を解析される。数値計算は、例えば、FDTD法による計算を含む。なお、数値計算は、FDTD法による計算に限らず、FDTD法、FEM法、BEM法、CIP法、FIT法、及び、一般的なグリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、いずれかによる計算でもよい。
【0058】
本実施形態の解析方法は、数値解適用部分11における各セルの電場及び磁場を、マクスウェル方程式を用いて数値計算で解くことにより、数値解適用部分11の電磁場を解析する。つまり、本実施形態の解析方法は、数値解適用部分11に対するマクスウェル方程式を時間領域で数値的に解くことにより電磁場を解析する。具体的には、下記の(1)式及び(2)式のマクスウェル方程式をFDTD法で解き、定常解を得る。ここで、Eは電場の強度を示し、Hは磁場の強度を示し、Dは、電束密度を示し、Bは、磁束密度を示し、Jは、電流密度を示す。光源からの入射光は、電流密度Jで与えられる。
【0059】
【数1】
【数2】
【0060】
例えば、試料10が基板と、基板上に形成された入射波長程度の大きさの微細構造を有する素子(例えば、半導体デバイス)と、を含む場合に、算出部110は、半導体デバイスを含む部分を、数値解適用部分11として選択する。そして、算出部110は、選択された数値解適用部分11における各セルの電場E及び磁場Hを算出するために必要な物性値のパラメータを読み込む。そして、算出部110は、選択された数値解適用部分11における電磁場が定常状態になるまで、マクスウェル方程式を用いたFDTD法による数値計算によって電磁場の更新を続ける。
【0061】
図7は、実施形態1に係る電磁場の算出方法において、数値解適用部分11の算出方法を例示したフローチャート図である。図7のステップS30に示すように、本実施形態の算出方法において、数値解適用部分11の算出方法は、電磁場の更新を含んでいる。具体的には、マクスウェル方程式で電磁場を時間とともに更新する。
【0062】
例えば、ステップS31に示すように、電場Eを更新する。次に、ステップS32に示すように、電場Eに対する境界条件を適用する。次に、ステップS33に示すように、磁場Hを更新する。次に、ステップS34に示すように、磁場Hに対する境界条件を適用する。そして、ステップS35に示すように、収束を判定する。ステップS35において、収束しないNOの場合には、ステップS31に戻り、ステップS31~ステップS35を繰り返す。ステップS35において、収束する場合には、算出結果を出力する。電場E及び磁場Hの更新式の例は、以下の(3)式及び(4)式である。
【0063】
【数3】
【数4】
【0064】
時間をtだけ進めると、現在のtが次のステップのt-Δtになる。これを繰り返すことで電磁場が時間とともに試料10内を伝搬していく。上記の(3)式及び(4)式は、損失のない誘電体媒質内での電磁場更新式である。損失性媒質や分散性媒質の場合は、より複雑な式となる。上記更新式の(3)式及び(4)式は、全直方体セルに適用されるため、セル数に比例して計算時間が増大する。
【0065】
<接続部分>
接続部分12は、数値解適用部分11と解析解適用部分13との間の部分である。例えば、接続部分12は、数値解適用部分11における解析解適用部分13側の底面の部分を含む。接続部分12及び解析解適用部分13は、入射光が伝搬方向に一様に伝搬する部分である。具体的には、接続部分12及び解析解適用部分13における各セルの複素屈折率は、一定の範囲の部分を含む。なお、一定とは、厳密に一定だけでなく、不可避な測定誤差を含む範囲で一定であることを含む。試料10が基板と基板上に形成された入射波長程度の大きさの微細構造を有する素子とを含む場合には、接続部分12は、素子が接続された基板の上面を含む部分である。算出部110は、接続部分12の電磁場を、数値計算によって算出する。
【0066】
本実施形態の電磁場の算出方法は、接続部分12における各セルの電場E及び磁場Hを、マクスウェル方程式を用いて数値計算で解くことにより、接続部分12の電磁場を解析する。つまり、本実施形態の算出方法は、接続部分12に対するマクスウェル方程式を時間領域で数値的に解くことにより電磁場を算出する。
【0067】
また、本実施形態の算出方法は、算出した接続部分12の各セルの電場E及び磁場Hをフーリエ変換により、波数空間上の平面波に変換する。そして、変換した平面波を初期値としたヘルムホルツ方程式を用いて波数空間上の解析解を算出する。算出された解析解は、解析解適用部分13の電磁場の算出に用いられる。
【0068】
例えば、算出部110は、接続部分12の電磁場を以下のように算出してもよい。すなわち、算出部110は、接続部分12において、例えば、FDTD法による数値計算で算出した電磁場を、XY平面から、波数空間であるkxky平面へフーリエ変換する。算出部110は、接続部分12における任意の電磁場分布を平面波に展開することで、ヘルムホルツ方程式の解析解を適用させることができる。
【0069】
具体的には、算出部110は、FDTD法によって算出された接続部分12の電磁場分布をXY平面上でフーリエ変換し、解析解を、適用可能な平面波に展開する。これを、ヘルムホルツ方程式を解く際の初期値とする。次に、算出部110は、ヘルムホルツ方程式の解析解に含まれる波数空間セルを生成する。フーリエ変換として高速フーリエ変換を用いる場合は、XY平面のセルが均等に分布される必要があるため、均等セルの生成及びそのセル上の電磁場を補間等で用意する。
【0070】
<解析解適用部分>
解析解適用部分13は、接続部分12よりも下方の部分である。試料10が、基板と、基板上に形成された入射光の波長程度の大きさの微細構造を有する素子と、を含む場合には、解析解適用部分13は、基板の部分を含む。
【0071】
解析解適用部分13の電磁場の算出方法は、以下のとおりである、すなわち、算出部110は、接続部分12の各セルの電場E及び磁場Hをフーリエ変換により、波数空間上の平面波に変換する。そして、変換した平面波を初期値としたヘルムホルツ方程式を用いて解析解適用部分13の波数空間での電磁場を算出する。具体的には、算出部110は、平面波が解析解適用部分13を伝搬方向に伝搬するとしてヘルムホルツ方程式の解析解を算出する。解析解は、解析的に算出される。算出された解析解は、波数空間での解析解適用部分13の電磁場を含む。そして、算出部110は、算出した解析解、すなわち、波数空間上の電磁場を逆フーリエ変換することにより、解析解適用部分13の実空間での電磁場を算出する。
【0072】
算出部110は、接続部分12における波数空間での平面波を初期値とするヘルムホルツ方程式の解析解として、シリコン等の基板の電磁場を高速に算出することができる。一様媒質を伝搬する平面波は、下記の(5)式のヘルムホルツ方程式の解析解として与えられる。
【0073】
【数5】
【0074】
電磁場が定常状態の時には、以下の(6)式及び(7)式のように、ヘルムホルツ方程式の解を求める。
【0075】
【数6】
【数7】
【0076】
入射光の光軸がZ軸方向であるので、XY平面で電磁場をフーリエ変換すると、波数ベクトル(kx、ky)で表現される平面波となる。これらは、exp[-i(kxX+kyY+kzZ)]で表現されるため、上式は、次の(8)式~(11)式のように書くことができる。
【0077】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0078】
FDTD法等で得られた接続部分12での電磁場を初期値として、(11)式をZ軸方向に解いていき、それらの結果を逆フーリエ変換で実空間に戻す。これにより、算出部110は、解析解適用部分13の電磁場の結果を、FDTD法で計算した際の結果と同じ結果として高速に得ることができる。
【0079】
ここでは、計算の流れを電場Eで示したが、磁場Hに対しても同様であり、各々独立した計算が可能である。したがって、本実施形態の算出部110は、解析解適用部分13において、所定の用途に応じて、電場Eのみ、磁場Hのみ、並びに、電場E及び磁場Hの両方、のいずれかを算出することができる。これにより、解析解適用部分13での計算量及びメモリ使用量を抑制することができる。
【0080】
また、フーリエ変換された電磁波が平面波であることから、その各成分は進行方向に直交する。つまり、以下の(12)式及び(13)式の横波条件が成り立つ。
【0081】
【数12】
【数13】
【0082】
算出部110は、解析解適用部分13において、入射光の伝搬方向及び伝搬方向に直交する2つの方向を含む3つの方向における電場Eの3成分のうち、電場Eの2成分をフーリエ変換し、残り1成分を電磁波の横波条件から算出してもよい。例えば、ExとEyのみをフーリエ変換して解析解を適用し、その結果をもとに、以下の(14)式のEzをフーリエ変換することなしに算出することができる。
【0083】
【数14】
【0084】
磁場Hでも同様である 。よって、算出部110は、解析解適用部分13において、電磁場の3成分のうち、2成分のみをフーリエ変換し、残り1成分を電磁波の横波条件から求めることができる。この特徴を用いることにより、試料10の構造が横方向、つまり、X軸方向やY軸方向に大きい場合に、フーリエ変換の計算時間及びメモリ使用量を抑制することができる。
【0085】
また、上記(11)式において、ΔZの値の大きさに特に制限はない。複雑な構造を含む数値解適用部分11と、一様媒体の解析解適用部分13との接続部である接続部分12の電磁場を算出することができれば、解析解適用部分13内の任意のXY平面に対して電磁場を求めることができる。これにより、算出部110は、解析解適用部分13において、伝搬方向に直交する所定の平面を含む部分、または、伝搬方向に直交する所定の2つの平面で挟まれた部分に限定して電磁場を解析することができる。例えば、試料10における基板の深い部分での電磁場のみを必要とする場合などに、不要な部分の計算をしなくても済むので、計算時間及びメモリ使用量を抑制することができる。
【0086】
図8は、実施形態1に係る試料10の数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13の決定方法を例示したグラフであり、横軸は、試料10のZ軸方向における位置を示し、縦軸は、複素屈折率を示す。図8に示すように、算出部110は、セルの複素屈折率が一定の範囲かどうかを伝搬方向の反対方向から判定することで、数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13を決定してもよい。
【0087】
算出部110は、一様媒体とみなせる条件を予め設定する。例えば、算出部110は、複素屈折率が一定の範囲内の場合に、一様媒体であると判定する。算出部110は、入射光の伝搬方向の反対方向から複素屈折率を判定する。算出部110は、試料10の複素屈折率が一定の範囲内で滑らかに変化する場合には、その部分を解析解適用部分13として決定する。算出部110は、複素屈折率が、一定の範囲から外れた場合に、その部分を接続部分12として決定する。算出部110は、接続部分12よりも反対方向の部分を数値解適用部分11として決定する。このように、算出部110は、入射光の伝搬方向の反対方向から走査・判定することで、数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13を自動決定することができる。例えば、i、j及びkを、それぞれ、X、Y及びZ軸方向のセル番号とし、i、j及びk番目のセルが占める材質の複素屈折率を以下の(15)式とする。
【0088】
【数15】
【0089】
構造最下部セルに対する反射率が設定した閾値より小さい場合に、一様媒質とみなす。すなわち、下記の(16)式及び(17)式である。
【数16】
【数17】
【0090】
図9は、実施形態1に係る試料10において、入射光の伝搬方向に直交するXY面を例示した図である。図9に示すように、試料10の構造が入射光の伝搬方向に対して対称性を有し、入射光も伝搬方向に対して対称性有する場合には、電磁場も対称となる。このため、第1象限の電磁場を計算することで、第2~第4象限までの試料10全体の電磁場の分布を算出することができる。
【0091】
数値解適用部分11において、試料10の構造及び入射光の強度がともに伝搬方向に対して対称性を有する場合には、対称境界条件及び反対称境界条件を用いてもよい。本実施形態において、算出部110は、数値解適用部分11と解析解適用部分13との間の接続部分12の電磁場を、フーリエ変換による電磁場の平面波展開を使用して算出する。このように、フーリエ変換による電磁場の平面波展開を使用するためには、電磁場の分布が周期性を有していることが必要である。しかしながら、解析解適用部分13は、一様媒体である。よって、第1象限の電磁場を算出することができれば、対称性により省略されている第2~4象限の電磁場を適切に反転・複写することにより、本来の周期的電磁場を再現することができる。このように、本実施形態の算出部110は、対称境界条件及び反対称境界条件を用いて解析解適用部分13を算出することができる。
【0092】
図10図12は、実施形態1に係る試料10において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の第1象限における電磁場を例示した図であり、図10は、電場Exを示し、図11は、電場Eyを示し、図12は、電場Ezを示す。図10図12に示すように、第1象限について得られる電磁場は、周期性を有していない。
【0093】
図13図15は、実施形態1に係る試料10において、入射光の伝搬方向に直交するXY平面の電磁場を例示した図であり、図13は、電場Exを示し、図14は、電場Eyを示し、図15は、電場Ezを示す。図13図15に示すように、図10図12の領域を拡張し、反転及び複写することで、本来の電磁場を再現させることができる。具体的には、算出部110は、接続部分12における電磁場を、対称境界条件及び反対称境界条件を用いて解析解適用部分13に拡張することで、解析解適用部分13の電磁場を算出してもよい。この例では、入射光の電場Eは、X成分のみ非零である。試料10の内部電場EにおけるX成分は、X軸方向及びY軸方向に対称である。Y成分は、X軸方向及びY軸方向に反対称、Z成分は、X軸方向及びY軸方向に、それぞれ、反対称及び対称となる。算出部110は、再現された電磁場をフーリエ変換し、ヘルムホルツ方程式の解析解を適用する。このようにして得られた第1象限の電磁場は、全域に数値計算による算出手法を適用した場合と同じになる。
【0094】
このように、本実施形態の算出方法は、波数空間上の電磁場に対するヘルムホルツ方程式を解析解により計算する部分を含む。解析解による計算は、FDTD法による数値計算より高速であるため、試料10全体における電磁場の算出を高速化することができる。
【0095】
解析解を基板全体で計算し、逆フーリエ変換で実空間に戻すことで、FDTD法と同じ結果を得ることができる。すなわち、波数空間の電磁場を逆フーリエ変換することによって、シリコン基板等の基板における実空間での電磁場を算出することができる。
【0096】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の算出装置及び算出方法は、試料10を数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13に分けて計算する。よって、計算速度を向上させ、計算時間コストを低減することができる。
【0097】
ここで、試料10全体を数値解適用部分11として数値計算することにより電磁場を算出する場合と、本実施形態のように、試料10を数値解適用部分11、接続部分12及び解析解適用部分13に分けて電磁場を算出する場合を比較する。ここで、試料10全体を数値計算する例を比較例と呼ぶ。
【0098】
図16は、実施形態1に係る試料10を例示した斜視図である。図16に示すように、試料10は、層部分LY、ポスト部分P1~P4、空間部分AR、及び、基板部分SBを有するとする。試料10に対して、試料10の上部から入射光を入射させて得られる電場の各領域における積分値を、本実施形態と、比較例とで比較する。
【0099】
図17は、実施形態1に係る算出方法を適用した試料10を例示した斜視図である。図18は、比較例に係る算出方法を適用した試料10を例示した斜視図である。図17に示すように、本実施形態の算出方法では、基板部分SB以外の層部分LY、ポスト部分P1~P4及び空間部分ARは、数値解適用部分11であり、基板部分SBは、解析解適用部分13である。一方、図18に示すように、比較例の算出方法では、層部分LY、ポスト部分P1~P4、空間部分AR及び基板部分SBは、数値解適用部分11である。
【0100】
図19は、実施形態1に係る算出方法により算出された電場の積分値と、比較例に係る算出方法により算出された電場の積分値と、を比較した図である。図19に示すように、本実施形態の値と、比較例の値との誤差は、各部分において1%以下となる。よって、本実施形態の算出方法は、電磁場の算出精度の低下を抑制することができる。一般に、FDTD法は、差分法であるため、電磁場が伝搬する際に数値誤差を含む。また、吸収境界条件適用時は、解析解適用部分13の端部からの誤差反射をわずかに含む。一方、解析解適用時は、このような数値計算起因の誤差を含まない。このため、本実施形態の算出方法は、比較例の算出方法よりも算出精度を向上させることができる。
【0101】
図20は、実施形態1に係る解析解適用部分13の伝播方向の長さが異なる複数の試料10を並べた斜視図である。図21は、実施形態1に係る算出方法の計算時間と、比較例に係る算出方法の計算時間と、を比較した図である。図22は、実施形態1に係る算出方法の計算時間と、比較例に係る算出方法の計算時間と、を比較したグラフであり、横軸は、各試料を示し、縦軸は、計算時間を示す。
【0102】
図20に示すように、試料10の解析解適用部分13である基板部分SBの厚さを変化させた構造C1~構造C4に対して、本実施形態の算出方法の計算時間と、比較例の算出方法の計算時間とを比較する。図21及び図22に示すように、比較例の算出方法では、基板部分SBの厚さに比例して計算時間が増大する。しかしながら、本実施形態の算出方法では、基板部分SBの厚さに関わらず、計算速度は増大しない。したがって、本実施形態の算出方法は、数値解適用部分11に比べて、解析解適用部分13が大きいほど、計算時間削減効果があるといえる。
【0103】
比較例の算出方法のように、FDTD法を試料10全体に適用した際に、電磁場が飽和状態になるまでの時間、つまり、収束に要する時間を、数値解適用部分11においてT秒とし、解析解適用部分13においてS秒とする。これらの計算時間の関係が、T>Sの場合には、本実施形態及び比較例の数値解適用部分11における収束速度は変わらない。よって、単純に、セルを削減した分の計算時間の削減効果を得ることができる。しかしながら、T<Sの場合には、本実施形態の算出方法は、収束の遅い基板部分の電磁場の算出を、FDTD法からより高速な解析解の手法に置き換えている。このため、本実施形態の算出方法は、単純に、セルを削減した分の計算時間の削減のみならず、電磁場の収束自体も速くなる。よって、本実施形態の解析方法は、少なくともセル削減分だけ計算時間を短縮する効果を有するといえる。
【0104】
(実施形態2)
次に、実施形態2を説明する。本実施形態は、数値解適用部分11及び解析解適用部分13の少なくともいずれかが複数である場合である。図23は、実施形態2に係る試料を例示した斜視図である。図23に示すように、本実施形態の試料30は、例えば、2つの試料10及び20を入射光の伝搬方向に積み重ねた構成を有している。よって、試料30は、2つの数値解適用部分11及び21、2つの接続部分12及び22、並びに、2つの解析解適用部分13及び23を含んでいる。
【0105】
この場合には、数値解適用部分11と数値解適用部分21とに挟まれた解析解適用部分13には、数値解適用部分11からの透過波と、数値解適用部分21からの反射波の両方が存在する。このため、一方向のみの計算では完結しない。そこで、算出部110は、多重反射を計算する。また、算出装置100は、電磁場を記憶する記憶装置STRを備える。記憶装置STRは、複数の数値解適用部分11及び21、並びに、複数の解析解適用部分13及び23の電磁場のデータを記憶する。このような構成により、算出部110は、試料30全域にFDTD法を適用した場合と等価な計算結果を得ることができる。
【0106】
図24図27は、実施形態2に係る電磁場の算出方法を例示したフローチャート図である。図24のステップS101に示すように、数値解適用部分11及び21で算出した電磁場を個別に記憶するための記憶装置STRの所定の部分をゼロで初期化する。次に、ステップS102に示すように、解析解適用部分13及び23で算出した電磁場を個別に記憶するための記憶装置STRの所定の部分をゼロで初期化する。
【0107】
次に、図25のステップS111に示すように、数値解適用部分11に対して、マクスウェル方程式をFDTD法等の数値計算で解くことにより得た電磁場を対応する記憶装置STRに加算する。次に、ステップS112に示すように、数値解適用部分11の底面を含む接続部分12の電磁場をフーリエ変換し、変換された波数ベクトルで表現される平面波を得る。
【0108】
次に、ステップS113に示すように、解析解適用部分13内を伝搬方向に伝播する平面波をヘルムホルツ方程式の解析解として得る。次に、ステップS114に示すように、解析解を解析解適用部分13の全体で計算し、逆フーリエ変換によって実空間に戻すことで得られた電磁場を、対応する記憶装置STRに加算する。
【0109】
次に、図26のステップS121に示すように、解析解適用部分13の底面における電磁場を入力として、数値解適用部分21に対して、マクスウェル方程式をFDTD法で解くことで得た電磁場を、対応する記憶装置STRに加算する。次に、ステップS122に示すように、数値解適用部分21の底面を含む接続部分22の電磁場をフーリエ変換し、変換された波数ベクトルで表現される平面波を得る。
【0110】
次に、ステップS123に示すように、解析解適用部分23内を伝搬方向に伝播する平面波をヘルムホルツ方程式の解析解として得る。次に、ステップS124に示すように、解析解を解析解適用部分23の全体で計算し、逆フーリエ変換によって実空間に戻すことで得られた電磁場を、対応する記憶装置STRに加算する。
【0111】
次に、図27のステップS131に示すように、数値解適用部分21の上面を含む部分の電磁場をフーリエ変換し、変換された波数ベクトルで表現される平面波を得る。次に、ステップS132に示すように、解析解適用部分13内を+Z軸方向に伝播する平面波をヘルムホルツ方程式の解析解として得る。次に、ステップS133に示すように、解析解を解析解適用部分13の全体で計算し、逆フーリエ変換によって実空間に戻すことで得られた電磁場を、対応する記憶装置STRに加算する。
【0112】
次に、ステップS134に示すように、解析解適用部分13の上面における電磁場を入力として、数値解適用部分11に対して、マクスウェル方程式をFDTD法で解くことで得た電磁場を、対応する記憶装置STRに加算する。次に、ステップS135に示すように、ステップS112へ戻る。すなわち、数値解適用部分11の底面の電磁場をフーリエ変換し、変換された波数ベクトルで表現される平面波を得る。そして、逆フーリエ変換によって算出された実空間の解析解適用部分13の電磁場を記憶装置STRに加算する。
【0113】
記憶された電磁場が変化しなくなるまで、あるいは指定した回数だけ繰り返すことで、試料30全体に数値解法を適用した場合と等価な結果を得ることができる。電磁場が飽和するまで更新を続けて定常状態を得る。この電磁場をもとに吸収されたエネルギー等を求めることができる。
【0114】
このように、試料30が複数の数値解適用部分11及び21、複数の接続部分12及び22、並びに、複数の解析解適用部分13及び23を有する場合には、多重反射のため、数値解法による数値計算を複数回必要となる。しかしながら、数値解適用部分11よりも解析解適用部分13が十分に小さい場合等では、試料30全体に数値解法を適用した場合より短い時間で電磁場を算出することができる。なお、試料30は、3つ以上の数値解適用部分及び3つ以上の解析解適用部分を有していても、上述した算出方法で電磁場を算出することができる。
【0115】
本開示は、上記実施形態1及び2に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1及び2の各構成は、相互に組み合わせることができる。また、上述した算出方法をコンピュータに読み込ませて実行させる下記の算出プログラムも実施形態の技術的思想の範囲内である。算出プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。
【0116】
(付記1)
試料の電磁場を算出する算出プログラムであって、
入射光が伝搬する伝搬方向に、順に、数値解適用部分、接続部分及び解析解適用部分を有する試料を複数のセルに分割させ、
分割した各セルに対して与えられた物性値に基づいて、各セルの電磁場を算出することにより、前記試料の前記電磁場を算出させる、
ことをコンピュータに実行させる算出プログラムであって、
前記接続部分及び前記解析解適用部分は、前記入射光が前記伝搬方向に一様に伝搬し、
前記試料の前記電磁場を算出させる際に、
前記数値解適用部分及び前記接続部分の前記電磁場を、マクスウェル方程式を用いた数値計算により算出させ、
算出した前記接続部分の前記電磁場をフーリエ変換することにより、波数ベクトルで表現される平面波に変換させ、
変換した前記接続部分の前記平面波を初期値とし、前記平面波が前記解析解適用部分を前記伝搬方向に伝搬する場合における前記解析解適用部分の波数空間での前記電磁場を、ヘルムホルツ方程式を用いた解析解により算出させ、
算出した前記解析解適用部分の前記波数空間での前記電磁場を逆フーリエ変換することにより、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出させる、
算出プログラム。
(付記2)
前記試料の前記電磁場を算出させる際に、
前記解析解適用部分において、所定の用途に応じて、電場のみ、磁場のみ、並びに、前記電場及び前記磁場の両方、のいずれかを算出させる、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記3)
前記試料の前記電磁場を算出させる際に、
前記解析解適用部分において、前記伝搬方向及び前記伝搬方向に直交する2つの方向を含む3つの方向における前記電磁場の3成分のうち、2成分をフーリエ変換し、残り1成分を電磁波の横波条件から算出させる、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記4)
前記試料の前記電磁場を算出際に、
前記解析解適用部分において、前記伝搬方向に直交する所定の平面を含む第1部分、または、前記伝搬方向に直交する所定の2つの平面で挟まれた第2部分に限定して前記電磁場を算出させる、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記5)
前記複数のセルに分割させる際に、
前記セルの複素屈折率が一定の範囲かどうかを前記伝搬方向の反対方向から判定することで、前記数値解適用部分、前記接続部分及び前記解析解適用部分を決定させる、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記6)
前記試料の前記電磁場を算出させる際に、
前記接続部分における前記電磁場を、対称境界条件及び反対称境界条件を用いて前記解析解適用部分に拡張することで、前記解析解適用部分の前記電磁場を算出させる、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記7)
前記試料は、複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分を含み、
複数の前記数値解適用部分及び複数の前記解析解適用部分の前記電磁場のデータを記憶させることをさらにコンピュータに実行させる、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記8)
前記解析解適用部分及び前記接続部分は、前記セルの複素屈折率が一定の範囲である、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記9)
前記試料は、基板、及び、前記基板上に形成された素子を含み、
前記解析解適用部分は、前記基板を含み、
前記数値解適用部分は、前記素子を含み、
前記接続部分は、前記基板における前記素子が接続した部分を含む、
付記1に記載の算出プログラム。
(付記10)
前記数値計算は、FDTD法、FEM法、BEM法、CIP法、FIT法、及び、グリッドで材質を離散化したモデルに対してマクスウェル方程式を解く手法のうち、少なくともいずれかによる計算である、
付記1に記載の算出プログラム。
【符号の説明】
【0117】
10、20、30 試料
11、21 数値解適用部分
12、22 接続部分
13、23 解析解適用部分
100 算出装置
110 算出部
AR 空間部分
C1、C2、C3、C4 構造
INT インターフェース
LY 層部分
MMR メモリ
PRC プロセッサ
P1、P2、P3、P4 ポスト部分
SB 基板部分
STR 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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