(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086012
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/82 20060101AFI20240620BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240620BHJP
G01R 33/032 20060101ALI20240620BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N27/82
G01N21/88 H
G01R33/032
G01R33/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200858
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
(72)【発明者】
【氏名】上山 真司
(72)【発明者】
【氏名】沼田 光徳
(72)【発明者】
【氏名】大西 芳紀
(72)【発明者】
【氏名】キム インギ
【テーマコード(参考)】
2G017
2G051
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA08
2G017AD13
2G017AD15
2G017BA02
2G017CA14
2G017CB24
2G051AA51
2G051AB02
2G051AC21
2G051BA11
2G053AA11
2G053AB13
2G053BA02
2G053BA16
2G053BB05
2G053BB11
2G053BC14
2G053CA09
(57)【要約】
【課題】MRAM素子の特性の検出精度を向上させることができる検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置1は、ステージ面13上に磁気抵抗メモリ素子を固定させたステージ10と、ステージ面13に垂直な垂直方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって第1向きから第2向きに変化する第1磁場、及び、ステージ面13に平行な面内方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって第3向きから第4向きに変化する第2磁場を発生させる複数の電磁石20と、偏光を含む照明光で磁気抵抗メモリ素子を照明するとともに、照明光が磁気抵抗メモリ素子で反射した反射光を集光する光学系30と、第1磁場内における磁気抵抗メモリ素子の位置を変化させた場合の反射光、及び、第2磁場内における磁気抵抗メモリ素子の位置を変化させた場合の反射光を検出する検出器40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ面を有するステージであって、ステージ面上に磁気抵抗メモリ素子を固定させたステージと、
前記ステージ面に垂直な垂直方向の磁場成分の向きが前記ステージ面上の位置によって第1向きから前記第1向きの反対向きの第2向きに変化する第1磁場、及び、前記ステージ面に平行な面内方向の前記磁場成分の前記向きが前記ステージ面上の前記位置によって第3向きから前記第3向きの反対向きの第4向きに変化する第2磁場を発生させる複数の電磁石と、
偏光を含む照明光で前記磁気抵抗メモリ素子を照明するとともに、前記照明光が前記磁気抵抗メモリ素子で反射した反射光を集光する光学系と、
前記第1磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の前記反射光、及び、前記第2磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の前記反射光を検出する検出器と、
を備えた検査装置。
【請求項2】
前記第1磁場内において前記第1向きから前記第2向きに変化するように前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の第1スキャン方向と前記垂直方向とに垂直な前記磁場成分は、0である、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第2磁場内において前記第3向きから前記第4向きに変化するように前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の第2スキャン方向の前記磁場成分及び前記垂直方向の前記磁場成分は、0である、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記複数の前記電磁石は、第1電磁石、第2電磁石、第3電磁石及び第4電磁石を含む少なくとも4つの前記電磁石を含み、
前記第1電磁石は、前記垂直方向に延びた第1垂直部分及び前記面内方向に延びた第1面内部分を有するL字状の第1ヨークの前記第1垂直部分に所定の方向に巻かれた第1コイルを含み、
前記第2電磁石は、前記垂直方向に延びた第2垂直部分及び前記面内方向に延びた第2面内部分を有するL字状の第2ヨークの前記第2垂直部分に前記所定の方向に巻かれた第2コイルを含み、
前記第3電磁石は、前記垂直方向に延びた第3垂直部分及び前記面内方向に延びた第3面内部分を有するL字状の第3ヨークの前記第3垂直部分に前記所定の方向に巻かれた第3コイルを含み、
前記第4電磁石は、前記垂直方向に延びた第4垂直部分及び前記面内方向に延びた第4面内部分を有するL字状の第4ヨークの前記第4垂直部分に前記所定の方向に巻かれた第4コイルを含み、
前記第1面内部分及び前記第2面内部分は、一方向に延び、前記第1面内部分の端部と前記第2面内部分の前記端部とは、前記一方向において、対向し、
前記第3面内部分及び前記第4面内部分は、前記一方向に直交する他方向に延び、前記第3面内部分の前記端部と前記第4面内部分の前記端部とは、前記他方向において、対向し、
前記第1磁場は、前記第1コイルに第5向きの電流を流し、前記第2コイルに前記第5向きの反対向きの第6向きの前記電流を流し、前記第3コイル及び前記第4コイルに流れる前記電流を0とすることにより発生し、
前記第2磁場は、前記第1コイル及び前記第2コイルに前記第5向きの前記電流を流すとともに、前記第3コイル及び前記第4コイルに前記第6向きの前記電流を流すことにより発生する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記検出器は、
前記第1磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を前記一方向にスキャンさせた場合の前記反射光を検出し、
前記第2磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を前記一方向及び前記他方向と45°の方向にスキャンさせた場合の前記反射光を検出する、
請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検出器が検出した前記反射光の画像を処理する情報処理部をさらに備え、
前記情報処理部は、
前記第1向きの前記磁場成分における前記画像と前記第2向きの前記磁場成分における前記画像との差分画像から、前記垂直方向の前記磁場成分による前記磁気抵抗メモリ素子の欠陥の検査を行う、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検出器が検出した前記反射光の画像を処理する情報処理部をさらに備え、
前記情報処理部は、
前記第3向きの前記磁場成分における前記画像と前記第4向きの前記磁場成分における前記画像との差分画像から、前記面内方向の前記磁場成分による前記磁気抵抗メモリ素子の欠陥の検査を行う、
請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置に関し、例えば、磁気抵抗メモリ素子の磁気特性を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗メモリ(Magnetoresistive Randam Access Memory)素子(以下、MRAM素子と呼ぶ。)と呼ばれる半導体メモリ素子は、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction、MTJ)を構成要素とする不揮発性メモリである。半導体生産ラインにおいては、磁気抵抗メモリデバイス(MRAM Device、以下、MRAMデバイスと呼ぶ。)の完成前に、ウエーハ上に形成されたMRAM素子の異常を早期に検査することは、MRAMデバイスの生産の歩留まり向上にとって重要である。MRAMデバイスの完成前の検査のためには、光学的顕微鏡や電子ビームなどによる非破壊の外観検査だけでなく磁場特性を把握しておく必要がある。磁場測定の高速測定手段として、磁気光学カー効果(Magneto-Optical Kerr Effect、MOKE)と呼ばれる磁気光学効果を利用した光学測定が知られている。本手法によれば、MRAMデバイスにおける各MRAM素子に外部磁場を印加し、その磁場強度を変化させながら、反射光における偏光の変化量により、測定点の磁気ヒステリシスループ(Loop)を得ることができる。
【0003】
特許文献1には、2個のコイルを有する電磁石のヨーク間に発生する傾斜磁場を利用して、MRAMデバイスをステージ上でスキャンし、TDI(TDI Delay Integration)カメラでMRAM素子の欠陥を検出する検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の検査装置において、垂直磁場(容易軸方向)の磁場反転前後では、水平方向の磁場は、ほぼ一定のため、垂直磁場の特性を検出することが可能である。しかしながら、特許文献1の検査装置は、水平方向の磁場の変化によるMRAM素子の特性変化を検出することが困難であり、MRAM素子の磁気特性の検出精度を向上させることができない。
【0006】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、MRAM素子の磁気特性の検出精度を向上させることができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の検査装置は、
ステージ面を有するステージであって、ステージ面上に磁気抵抗メモリ素子を固定させたステージと、
前記ステージ面に垂直な垂直方向の磁場成分の向きが前記ステージ面上の位置によって第1向きから前記第1向きの反対向きの第2向きに変化する第1磁場、及び、前記ステージ面に平行な面内方向の前記磁場成分の前記向きが前記ステージ面上の前記位置によって第3向きから前記第3向きの反対向きの第4向きに変化する第2磁場を発生させる複数の電磁石と、
偏光を含む照明光で前記磁気抵抗メモリ素子を照明するとともに、前記照明光が前記磁気抵抗メモリ素子で反射した反射光を集光する光学系と、
前記第1磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の前記反射光、及び、前記第2磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の前記反射光を検出する検出器と、
を備える。
【0008】
上記検査装置において、
前記第1磁場内において前記第1向きから前記第2向きに変化するように前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の第1スキャン方向と前記垂直方向とに垂直な前記磁場成分は、0でもよい。
【0009】
上記検査装置において、
前記第2磁場内において前記第3向きから前記第4向きに変化するように前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を変化させた場合の第2スキャン方向の前記磁場成分及び前記垂直方向の前記磁場成分は、0でもよい。
【0010】
上記検査装置において、
前記複数の前記電磁石は、第1電磁石、第2電磁石、第3電磁石及び第4電磁石を含む少なくとも4つの前記電磁石を含み、
前記第1電磁石は、前記垂直方向に延びた第1垂直部分及び前記面内方向に延びた第1面内部分を有するL字状の第1ヨークの前記第1垂直部分に所定の方向に巻かれた第1コイルを含み、
前記第2電磁石は、前記垂直方向に延びた第2垂直部分及び前記面内方向に延びた第2面内部分を有するL字状の第2ヨークの前記第2垂直部分に前記所定の方向に巻かれた第2コイルを含み、
前記第3電磁石は、前記垂直方向に延びた第3垂直部分及び前記面内方向に延びた第3面内部分を有するL字状の第3ヨークの前記第3垂直部分に前記所定の方向に巻かれた第3コイルを含み、
前記第4電磁石は、前記垂直方向に延びた第4垂直部分及び前記面内方向に延びた第4面内部分を有するL字状の第4ヨークの前記第4垂直部分に前記所定の方向に巻かれた第4コイルを含み、
前記第1面内部分及び前記第2面内部分は、一方向に延び、前記第1面内部分の端部と前記第2面内部分の前記端部とは、前記一方向において、対向し、
前記第3面内部分及び前記第4面内部分は、前記一方向に直交する他方向に延び、前記第3面内部分の前記端部と前記第4面内部分の前記端部とは、前記他方向において、対向し、
前記第1磁場は、前記第1コイルに第5向きの電流を流し、前記第2コイルに前記第5向きの反対向きの第6向きの前記電流を流し、前記第3コイル及び前記第4コイルに流れる前記電流を0とすることにより発生し、
前記第2磁場は、前記第1コイル及び前記第2コイルに前記第5向きの前記電流を流すとともに、前記第3コイル及び前記第4コイルに前記第6向きの前記電流を流すことにより発生してもよい。
【0011】
上記検査装置において、前記検出器は、
前記第1磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を前記一方向にスキャンさせた場合の前記反射光を検出し、
前記第2磁場内における前記磁気抵抗メモリ素子の前記位置を前記一方向及び前記他方向と45°の方向にスキャンさせた場合の前記反射光を検出してもよい。
【0012】
上記検査装置において、
前記検出器が検出した前記反射光の画像を処理する情報処理部をさらに備え、
前記情報処理部は、
前記第1向きの前記磁場成分における前記画像と前記第2向きの前記磁場成分における前記画像との差分画像から、前記垂直方向の前記磁場成分による前記磁気抵抗メモリ素子の欠陥の検査を行ってもよい。
【0013】
上記検査装置において、
前記検出器が検出した前記反射光の画像を処理する情報処理部をさらに備え、
前記情報処理部は、
前記第3向きの前記磁場成分における前記画像と前記第4向きの前記磁場成分における前記画像との差分画像から、前記面内方向の前記磁場成分による前記磁気抵抗メモリ素子の欠陥の検査を行ってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の検査装置によれば、MRAMの磁気特性の検出精度を向上させることができる検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る検査装置を例示した断面図である。
【
図2】実施形態1に係る検査装置の電磁石を例示した斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るVSMによるMRAM素子の容易軸方向の磁気特性を例示したグラフであり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、磁化を示す。
【
図4】実施形態1に係るVSMによるMRAM素子の困難軸方向の磁気特性を例示したグラフであり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、磁化を示す。
【
図5】実施形態1に係るステージ面に垂直な方向の磁場成分を有する磁場をMRAM素子に印加する場合のコイルの通電を例示した図である。
【
図6】実施形態1に係る第1スキャン軸に沿ったα軸方向、第1スキャン軸に垂直なβ軸方向及びγ軸方向の磁束密度を例示したグラフであり、横軸は、α軸に沿った位置を示し、縦軸は、磁束密度を示す。
【
図7】実施形態1に係るαγ平面内の磁束密度ベクトルを例示した図である。
【
図8】実施形態1に係るステージ面に平行な方向の磁場成分を有する磁場をMRAM素子に印加する場合のコイルの通電を例示した図である。
【
図9】実施形態1に係る第2スキャン軸に沿ったα軸方向、第2スキャン軸に垂直なβ軸方向及びγ軸方向の磁束密度を例示したグラフであり、横軸は、α軸に沿った位置を示し、縦軸は、磁束密度を示す。
【
図10】実施形態1に係るαβ平面内の磁束密度ベクトルを例示した図である。
【
図11】MRAM素子の磁気特性を例示した図であり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、カー回転角を示す。
【
図12】MRAM素子の磁気特性を例示した図であり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、カー回転角を示す。
【
図13】実施形態1に係るウエーハを例示した平面図である。
【
図14】実施形態1に係る検査装置の詳細を例示した構成図である。
【
図15】実施形態1に係るMRAM素子を含むウエーハの検査方法を例示したフローチャート図である。
【
図16】実施形態1に係るMRAM素子における垂直方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
【
図17】実施形態1に係るMRAM素子における面内方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
【
図18】実施形態2に係るMRAM素子における垂直方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
【
図19】実施形態2に係るMRAM素子における面内方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び、簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1に係る検査装置を説明する。
図1は、実施形態1に係る検査装置を例示した断面図である。
図2は、実施形態1に係る検査装置の電磁石を例示した斜視図である。
図1では、図が煩雑にならないように、いくつかの部材のハッチングを省略するとともに、いくつかの符号を省略している。以下の図でも同様である。
図1及び
図2に示すように、検査装置1は、ステージ10、複数の電磁石20、光学系30、検出器40及び情報処理部50を備えている。以下で、<1.ステージ>、<2.複数の電磁石>、<3.光学系>、<4.検出器>及び<5.情報処理部>を説明する。その後、<6.検査装置の詳細>及び<7.検査方法>を説明する。なお、<2.複数の電磁石>において、<2-1.MRAM素子の磁気特性>、<2-2.ステージ面に垂直な方向の磁場印加>及び<2-3.ステージ面と平行な方向の磁場印加>を説明する。
【0018】
<1.ステージ>
ステージ10は、移動部11及び本体部12を含んでいる。移動部11の上面をステージ面13と呼ぶ。よって、ステージ10は、ステージ面13を有している。ステージ10は、ステージ面13上に磁気抵抗メモリ素子(以下、MRAM素子と呼ぶ。)を固定させる。例えば、ステージ10は、ステージ面13上に、MRAM素子を含むウエーハWF等の試料を載置する。以下では、試料をウエーハWFとして説明する。なお、試料は、MRAM素子を含めば、ウエーハWFに限らず、半導体装置等でもよい。
【0019】
ステージ10における移動部11は、ウエーハWFを固定するためのウエーハチャックを有してもよい。ウエーハWFは、ウエーハチャックによってバキュームあるいは静電気により、ステージ面13上に固定される。ステージ10は、ウエーハWFを移動させるために、リニアモータ、ボールねじ、VCM、ピエゾ等によるアクチュエータを有するXYZθ駆動軸を有してもよい。移動部11は、XYZθ駆動軸に基づいて、本体部12に対して移動する。ステージ面13に平行な面として検査面W0を導入する。
【0020】
ここで、検査装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。例えば、検査面W0に垂直な方向をZ軸方向とし、検査面W0に平行な面をXY面とする。便宜上、Z軸方向を鉛直方向または垂直方向と呼び、+Z軸方向を上方、-Z軸方向を下方と呼ぶ。XY面を水平面と呼び、XY面に平行な方向を水平方向または面内方向と呼ぶ。なお、鉛直方向、垂直方向、上方、下方、水平面、水平方向及び面内方向は、便宜上のものであり、実際の検査装置1が配置される方向を示すものではない。ステージ10は、XY面内における所定の方向にスキャンすることにより、ウエーハWFに含まれたMRAM素子を検査する。
【0021】
例えば、ステージ10は、検査面W0に平行な面内において、X軸方向及びY軸方向を含む所定の方向にウエーハWFを移動可能である。また、ステージ10は、検査面W0に垂直な方向に延びた回転軸を中心にしてステージ面13上のウエーハWFを回転可能である。さらに、ステージ10は、検査面W0に垂直な方向にステージ面13上のウエーハWFを移動可能である。
【0022】
<2.複数の電磁石>
複数の電磁石20は、電磁石20a~20dを含む少なくとも4個の電磁石20a~20dを含んでもよい。少なくとも4個の電磁石20a~20dを総称して、電磁石20と呼ぶ。電磁石20aと電磁石20bとは、X軸方向に対向して配置されている。電磁石20cと電磁石20dとは、Y軸方向に対向して配置されている。なお、電磁石20は、少なくとも4個の電磁石20a~20dを含んでいれば、5個以上でもよい。その場合には、各電磁石20は、X軸方向及びY軸方向に対向する配置に限らない。
【0023】
電磁石20a~20dは、それぞれ、コイル21a~21dを含んでもよい。コイル21a~21dを総称して、コイル21と呼ぶ。コイル21に流す電流の向きを制御することにより、電磁石20が発生させる磁場の向きを制御することができる。
【0024】
電磁石20a~20dは、それぞれ、ヨーク22a~22dに固定されてもよい。ヨーク22a~22dを総称して、ヨーク22と呼ぶ。ヨーク22は、例えば、L字状の形状を有している。ヨーク22は、ステージ面13に垂直な方向に延びた垂直部分23及びステージ面13に平行な方向に延びた面内部分24を有するL字状である。コイル21は、垂直部分23に所定の方向に巻かれている。
【0025】
具体的には、電磁石20aは、ステージ面13に垂直な方向に延びた垂直部分23a及びステージ面13に平行な方向に延びた面内部分24aを有するL字状のヨーク22aの垂直部分23aに所定の方向に巻かれたコイル21aを含む。電磁石20bは、ステージ面13に垂直な方向に延びた垂直部分23b及びステージ面13に平行な方向に延びた面内部分24bを有するL字状のヨーク22bの垂直部分23bに所定の方向に巻かれたコイル21bを含む。電磁石20cは、ステージ面13に垂直な方向に延びた垂直部分23c及びステージ面13に平行な方向に延びた面内部分24cを有するL字状のヨーク22cの垂直部分23cに所定の方向に巻かれたコイル21cを含む。電磁石20dは、ステージ面13に垂直な方向に延びた垂直部分23d及びステージ面13に平行な方向に延びた面内部分24dを有するL字状のヨーク22dの垂直部分23dに所定の方向に巻かれたコイル21dを含む。
【0026】
垂直部分23a~23dを総称して、垂直部分23と呼び、面内部分24a~24dを総称して、面内部分24と呼ぶ。コイル21a~21dは、それぞれ、垂直部分23a~23dに所定の同じ方向に巻かれている。垂直部分23a~23dは、Z軸方向に延びている。垂直部分23a~23dは、それぞれ、電磁石20a~20dの中心軸を通る。各ヨーク22a~22dの上端、すなわち、垂直部分23a~23dの上端は、接続板25に接続されている。垂直部分23a~23dの下端は、それぞれ、面内部分24a~24dの一端に接続されている。
【0027】
ヨーク22aの面内部分24a及びヨーク22bの面内部分24bは、X軸方向に延びている。面内部分24aの一端は、電磁石20aの中心を通る垂直部分23aの下端に接続されている。よって、面内部分24aは、垂直部分23aの下端から+X軸方向に延びている。面内部分24bの一端は、電磁石20bの中心を通る垂直部分23bの下端に接続されている。よって、面内部分24bは、垂直部分23bの下端から-X軸方向に延びている。面内部分24aの端部と、面内部分24bの端部とは、X軸方向において、対向する。
【0028】
ヨーク22cの面内部分24c及びヨーク22dの面内部分24dは、Y軸方向に延びている。面内部分24cの一端は、電磁石20cの中心を通る垂直部分23cの下端に接続されている。よって、面内部分24cは、垂直部分23cの下端から+Y軸方向に延びている。面内部分24dの一端は、電磁石20dの中心を通る垂直部分23dの下端に接続されている。よって、面内部分24dは、垂直部分23dの下端から-Y軸方向に延びている。面内部分24cの端部と、面内部分24dの端部とは、Y軸方向において対向する。
【0029】
<2-1.MRAM素子の磁気特性>
次に、MRAMの振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer、以下、VSMと呼ぶ。)による磁気特性を説明する。
図3は、実施形態1に係るVSMによるMRAM素子の容易軸方向の磁気特性を例示したグラフであり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、磁化を示す。
図4は、実施形態1に係るVSMによるMRAM素子の困難軸方向の磁気特性を例示したグラフであり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、磁化を示す。
【0030】
図3に示すように、ウエーハWFの上面に垂直な方向のMRAM素子の磁化は、外部磁界を変化させることにより容易に磁化反転する。ウエーハWFの上面に垂直な方向、すなわち、ステージ面13に垂直な方向を容易軸方向と呼ぶ。一方、
図4に示すように、ウエーハWFの上面に平行な方向のMRAM素子の磁化は、外部磁界を変化させることにより磁化反転しにくい。ウエーハWFの上面に平行な方向、すなわち、ステージ面13に平行な方向を困難軸方向と呼ぶ。このように、ウエーハWFの上面に垂直な容易軸方向と、ウエーハWFの上面に平行な困難軸方向とでは、磁気特性が異なる。このため、MRAM素子の欠陥の検査には、容易軸方向及び困難軸方向の2方向の磁気特性を検査することが必要となる。
【0031】
<2-2.ステージ面に垂直な垂直方向の磁場印加>
図5は、実施形態1に係るステージ面13に垂直な方向の磁場成分を有する磁場をMRAM素子に印加する場合のコイル21の通電を例示した図である。
図5に示すように、ステージ面13に垂直な方向の磁場成分を有する磁場をMRAM素子に印加する場合には、X軸方向に対向する電磁石20a及び20bのコイル21a及び21bに、相互に反対向きの電流を印加する。一方、Y軸方向に対向する電磁石20c及び20dのコイル21c及び21dには、電流を印加しない。
【0032】
つまり、ステージ面13に垂直な方向の磁場成分を有する磁場は、コイル21aに所定の向きの電流を流し、コイル21bに所定の向きの反対向きの電流を流す一方、コイル21c及びコイル21dに流れる電流を0とすることにより発生する。ステージ面13に垂直な方向の磁場成分を有する磁場を第1磁場と呼ぶ。また、ステージ面13に垂直な方向を垂直方向と呼ぶ。第1磁場の場合には、X軸方向に平行なα軸方向をスキャン軸とする。第1磁場の場合のスキャン軸を第1スキャン軸と呼ぶ。XY面内におけるα軸方向に直交する方向をβ軸方向とする。β軸は、Y軸と同じ方向である。α軸方向及びβ軸方向に直交する方向をγ軸とする。γ軸は、Z軸と同じ方向である。β軸及びγ軸は、第1スキャン軸に垂直である。
【0033】
図6は、実施形態1に係る第1スキャン軸に沿った位α軸方向、第1スキャン軸に垂直なβ軸方向及びγ軸方向の磁束密度を例示したグラフであり、横軸は、α軸に沿った位置を示し、縦軸は、磁束密度を示す。
図7は、実施形態1に係るαγ平面内の磁束密度ベクトルを例示した図である。
【0034】
図6及び
図7に示すように、第1磁場は、垂直方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって一方の向きから反対向きに変化する。ステージ面13に平行な方向の磁場成分は、一定である。つまり、ヨーク22aの面内部分24aの端部とヨーク22bの面内部分24bの端部との間において、γ軸方向の磁場成分は反転し、α軸方向の磁場成分は、所定の値で一定であり、β軸方向の磁場成分は0である。このように、第1磁場内においてγ軸方向の磁場成分の向きを一方の向きから反対の向きに変化するようにMRAM素子の位置を変化させた場合のα軸方向及びγ軸方向に垂直な磁場成分は、0である。ここで、磁場成分が0とは、厳密な0だけでなく、不可避な測定誤差を含む範囲で0であることを意味する。
【0035】
第1スキャン軸に沿ってウエーハWFを移動させることにより、ウエーハWFに含まれたMRAM素子に対して印加される垂直方向の磁場成分の符号を変えることができるとともに、β軸方向の磁場成分を0に保つことができる。
【0036】
このように、複数の電磁石20は、容易軸方向の磁場成分を含む磁場を発生させる。容易軸方向は、例えば、ステージ面13に垂直なZ軸方向である。複数の電磁石20は、垂直方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって第1向きから第1向きの反対向きの第2向きに変化する第1磁場を発生させる。
【0037】
<2-3.ステージ面に平行な面内方向の磁場印加>
図8は、実施形態1に係るステージ面13に平行な方向の磁場成分を有する磁場をMRAM素子に印加する場合のコイル21の通電を例示した図である。
図8に示すように、ステージ面13に平行な方向の磁場成分を有する磁場をMRAM素子に印加する場合には、X軸方向に対向する電磁石20a及び20bのコイル21a及び21bに、同じ所定の向きの電流を印加する。一方、Y軸方向に対向する電磁石20c及び20dのコイル21c及び21dには、コイル21a及び21bと反対向きの電流を印加する。
【0038】
つまり、ステージ面13に平行な方向の磁場成分を有する磁場は、コイル21a及びコイル21bに所定の向きの電流を流すとともに、コイル21c及びコイル21dに所定の向きと反対向きの電流を流すことにより発生する。ステージ面13に平行な方向の磁場成分を有する磁場を第2磁場と呼ぶ。また、ステージ面13に平行な方向を面内方向と呼ぶ。XYZ直交座標軸系を複数の電磁石20に固定すると、第2磁場の場合には、X軸及びY軸に45°の角度を有するα軸方向をスキャン軸とする。第2磁場の場合のスキャン軸を第2スキャン軸と呼ぶ。XY面内におけるα軸方向に直交する方向をβ軸方向とする。α軸方向及びβ軸方向に直交する方向をγ軸とする。γ軸は、Z軸と同じ方向である。
【0039】
図9は、実施形態1に係る第2スキャン軸に沿ったα軸方向、第2スキャン軸に垂直なβ軸方向及びγ軸方向の磁束密度を例示したグラフであり、横軸は、α軸に沿った位置を示し、縦軸は、磁束密度を示す。
図10は、実施形態1に係るαβ平面内の磁束密度ベクトルを例示した図である。
【0040】
図9及び
図10に示すように、第2磁場は、面内方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって一方の向きから反対向きに変化する。ステージ面13に垂直な垂直方向の磁場成分は0である。つまり、ヨーク22aの面内部分24aの端部、ヨーク22bの面内部分24bの端部、ヨーク22cの面内部分24cの端部及びヨーク22dの面内部分24dの端部に囲まれた空間において、β軸方向の磁場成分は反転し、α軸方向及びγ軸方向の磁場成分は、0である。このように、第2磁場内においてβ軸方向の磁場成分の向きを一方の向きから反対の向きに変化するようにMRAM素子の位置を変化させた場合のα軸方向の磁場成分及びγ軸方向の磁場成分は、0である。ここで、磁場成分が0とは、厳密な0だけでなく、不可避な測定誤差を含む範囲で0であることを意味する。
【0041】
第2スキャン軸に沿ってウエーハWFを移動させることにより、ウエーハWFに含まれたMRAM素子に対して印加されるβ軸方向の磁場成分の符号を変えることができるとともに、α軸方向の磁場成分及びγ軸方向の磁場成分を0に保つことができる。
【0042】
このように、複数の電磁石20は、困難軸方向の磁場成分を含む磁場を発生させる。困難軸方向は、例えば、容易軸方向と垂直な方向である。複数の電磁石20は、ステージ面13に平行な面内方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって第3向きから第3向きの反対向きの第4向きに変化する第2磁場を発生させる。
【0043】
<3.光学系>
光学系30は、光学顕微鏡を含んでもよい。光学顕微鏡は、ウエーハWFの表面を結像する。光学系30は、偏光を含む照明光でMRAM素子を照明するとともに、照明光がMRAM素子で反射した反射光を集光する。光学系30は、光源31、レンズL1~L3、偏光子32、ミラーM1、対物レンズ33、検光子34を含む。光学系30は、これ以外の光学素子を含んでもよい。
【0044】
光源31は照明光を出射する。照明光は、例えば、レーザ光である。光源31から出射した照明光は、偏光子32によって直線偏光を含むように変換される。直線偏光を含む照明光は、ミラーM1によって反射し、対物レンズ33によってウエーハWFに集光される。なお、ミラーM1は、例えば、無偏光ビームスプリッタである。
【0045】
対物レンズ33は、ウエーハWF上のパターンを結像するためのもので、一般的に非磁性のものが選ばれる。ウエーハWFがMRAM素子を含む場合には、磁気光学カー効果によって、直線偏光の偏光角が変化する。
【0046】
図11は、MRAM素子の磁気特性を例示した図であり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、カー(Kerr)回転角を示す。
図11に示すように、外部磁場が0の場合から外部磁場を大きくすると、カー回転角は大きくなる。しかしながら、カー回転角は、ある一定値に達すると飽和し、外部磁場を大きくしても変化しなくなる。次に、飽和した状態から外部磁場を小さくすると、カー回転角は小さくなる。そして、外部磁場を0にしても、カー回転角が残留する。外部磁場をさらに小さくすると、カー回転角は、ある一定値に達し、飽和する。よって、外部磁場を小さくしても変化しなくなる。飽和した状態から外部磁場を大きくすると、カー回転角は大きくなる。外部磁場を大きくする場合と、外部磁場を小さくする場合とでは、カー回転角の値の経路に違いが生じる。このように、カー回転角は、外部磁場を大きくする場合と、外部磁場を小さくする場合とでは、別のルートをたどるヒステリシス曲線を形成する。
【0047】
図12は、MRAM素子の磁気特性を例示した図であり、横軸は、外部磁場を示し、縦軸は、カー回転角を示す。
図12には、外部磁場Hが、H1、H2及びH3の場合のMRAM素子の偏光状態を含む画像も模式的に示している。
図12に示すように、外部磁場を徐々に増加したときに撮像した画像は、外部磁場H=H1、H2、H3で異なるカー回転角による輝度を示す。カー回転角と、検出器40で検出される輝度とは相関関係にある。よって、検出器40で得られた画像から各MRAM素子の保磁力(上の例ではH2の画像の磁場)及びそのばらつきを取得することができる。MRAM素子の大きさがカメラ解像度あるいは光学分解能より小の場合は、観察領域の平均的な磁気特性を取得することとなる。
【0048】
ウエーハWFで反射した反射光は、対物レンズ33及びミラーM1を透過し、検光子34に入射する。検光子34は、反射光に含まれる直線偏光の偏光角の変化を検出する。検光子34を透過した反射光は、検出器40に入射する。
【0049】
<4.検出器>
検出器40は、反射光を検出することにより、ウエーハWFのパターンを取得する。検出器40は、ラインセンサ41を含んでもよい。ラインセンサ41は、例えば、TDI(Time Delay Integration)を含んでもよい。検出器40は、第1磁場内におけるMRAM素子の位置を変化させた場合の反射光、及び、第2磁場内におけるMRAM素子の位置を変化させた場合の反射光を検出する。例えば、検出器40は、第1磁場内におけるMRAM素子の位置を第1スキャン軸方向にスキャンさせた場合の反射光を検出する。また、検出器40は、第2磁場内におけるMRAM素子の位置を第2スキャン軸方向にスキャンさせた場合の反射光を検出する。
【0050】
検査装置1は、偏光子32により直線偏光となった照明光をウエーハWFに照射し、その反射光を、検光子34を通して検出器40に入射させている。検光子34により検出器40に入射する光量が偏光角にしたがって変化するため、磁化分布が画像化される。MRAM素子に印加される磁場を変化させることにより、磁場に応じた偏光角の分布から、ウエーハWF内のMRAM素子の磁気特性を測定することができる。
【0051】
図13は、実施形態1に係るウエーハWFを例示した平面図である。
図13に示すように、ウエーハWFは、複数のダイDIEを含んでいる。ダイDIE形成前の垂直磁化膜のベタ膜のみを検査対象としてもよい。ダイDIEは、例えば、X軸方向及びY軸方向に短辺及び長辺を有する長方形である。複数のダイDIEは、ウエーハWFにおいて、X軸方向及びY軸方向に空間的に繰り返し周期性を有するように配置されている。ダイDIEは、複数のMRAM素子を含んでいる。MRAM素子は、アレイ状に並んだ繰り返し周期性を持つ記憶領域を有している。ラインセンサ41は、複数のダイDIEを横切るように、例えば、X軸方向に移動しながら画像を順方向に取得する。X軸方向に沿った1列の画像の取得が終わると、Y軸方向に移動し、再びX軸方向に沿った1列の画像を逆方向から取得する。ウエーハWFのダイDIEを全て検査する場合には、逆方向と順方向を、フィルタ処理やスキャン補正用の数画素を含めて隙間なく画像取得すればよい。
【0052】
<5.情報処理部>
情報処理部50は、検出器40が検出した反射光の画像を処理する。例えば、情報処理部50は、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置でもよい。情報処理部50は、第1磁場内における垂直方向の一方の向きの磁場成分における画像と反対向きの磁場成分における画像との差分画像から、垂直方向の磁場成分によるMRAM素子の欠陥の検査を行う。また、情報処理部50は、第2磁場内における面内方向の一方の向きの磁場成分における画像と反対向きの磁場成分における画像との差分画像から、面内方向の磁場成分によるMRAM素子の欠陥の検査を行う。
【0053】
<6.検査装置の詳細>
次に、実施形態1の検査装置の詳細を説明する。
図14は、実施形態1に係る検査装置の詳細を例示した構成図である。
図14に示すように、検査装置1は、ウエーハWFの搬送に関する装置W1~3、検査装置1の基台に関する部材B1~B4、電源及び制御部60をさらに備えてもよい。
【0054】
ウエーハWFの搬送に関する装置W1~W3は、ウエーハ搬送ロボットW1、事前ウエーハアライメント装置W2及びウエーハ供給カセットW3を含んでいる。ウエーハ搬送ロボットW1は、検査するウエーハWFをウエーハ供給カセットW3から検査装置1の内部に搬送する。事前ウエーハアライメント装置W2は、ウエーハWFの回転角度やシフトを補正する。ウエーハWFは、事前ウエーハライメント装置PWAで調整後、検査装置1のステージ10に搬送される。
【0055】
検査装置1の基台に関する部材B1~B4は、石定盤(Base)B1、アクティブ除振台(Isolator)B2、くさびB3、分散板B4を含んでいる。石定盤B1は、ステージ10、光学系30等の部材が配置される土台となる。アクティブ除振台B2は、石定盤B1上の部材の振動を抑制する。くさびB3は、石定盤B1及びアクティブ除振台B2の水平調整を行う。分散板B4は、床に対する装置荷重を分散させる。電源及び制御部60は、検査装置1に電力を供給するとともに、検査装置1の各部を制御する。
【0056】
光学系30は、さらに、レンズL4~L9、ミラーM2~M4、及び、フィルタ35~36を含んでもよい。光源31から出射した照明光は、レンズL4を介して、フィルタ35を透過することによって、所定の波長帯域を含むようになる。フィルタ35を透過した照明光は、レンズL5を介してミラーM2で反射する。ミラーM2で反射した照明光は、レンズL1及びL2を介して偏光子32を透過する。偏光子32は、照明光が直線偏光を含むように変換する。直線偏光を含む照明光は、ミラーM1によって反射し、レンズL6を介して対物レンズ33によってウエーハWFに集光される。なお、ミラーM2は、例えば、無偏光ビームスプリッタである。
【0057】
ウエーハWFで反射した反射光は、対物レンズ33、レンズL6及びミラーM1を透過し、検光子34に入射する。検光子34は、反射光に含まれる直線偏光の偏光角の変化を検出するアナライザ(Analyzer)として機能する。検光子34及びレンズL7を透過した反射光は、フィルタ36で所定の波長帯域を含むようになる。フィルタ36を透過した反射光は、レンズL8を介して、ミラーM3で反射する。ミラーM3で反射した反射光は、レンズL3を介してラインセンサ41に入射する。AFセンサ37は、ウエーハWF面の焦点を結ぶための部材である。AFセンサ37は、ミラーM4で光をウエーハWFに照射し、反射光を取り込んで焦点調整を行う。AFセンサ37は、光学系30で用いられる照明光及び反射光の波長よりも長いあるいは短いレーザ光を使用する。
【0058】
検出器40は、ウエーハWFのパターンを取得する。検出器40は、複数のラインセンサA1及びA2、並びに、レビューモニタ42を有してもよい。複数のラインセンサA1及びA2は、2個に限らず、3個以上でもよい。検出器40は、例えば、TDI(Time Delay Integration)センサを含んでもよい。レビューモニタ42は、ミラーM3を透過した反射光をレンズL9を介して検出する。レビューモニタ42は、CCD(Charge-Coupled Device)センサを含んでもよい。CCDセンサは、レビューに用いられてもよい。ミラーM3の挿入によって、ラインセンサL1及びL2とレビューモニタ42との光路の切り替えを行う。
【0059】
<7.検査方法>
次に、検査方法を説明する。
図15は、実施形態1に係るMRAM素子を含むウエーハWFの検査方法を例示したフローチャート図である。
図15のステップS11に示すように、まず、ウエーハWFを検査装置1に載置させる。具体的には、ウエーハ搬送ロボットW1は、検査するウエーハWFをウエーハ供給カセットW3から検査装置1の内部に搬送する。
【0060】
次に、ステップS12に示すように、事前ウエーハライメント装置W2は、ウエーハWFの回転角度やシフトを補正する。ウエーハWFは、事前ウエーハライメント装置W2で調整後、検査装置1のステージ10に搬送される。次に、ステップS13に示すように、ウエーハWFは、ステージ10上で位置合わせが行われる。例えば、レーザ干渉計14を用いてウエーハWFの位置合わせを行う。
【0061】
次に、ステップS14に示すように、MRAM素子における垂直方向の磁気特性の検査を行う。また、ステップS15に示すように、MRAM素子における面内方向の磁気特性の検査を行う。なお、ステップS14及びステップS15の順序は、これに限らない。ステップS14において、MRAM素子における面内方向の磁気特性の検査を行った後に、ステップS15において、MRAM素子における垂直方向の磁気特性の検査を行ってもよい。次に、ステップS16に示すように、検査後、ウエーハWFを、ステージ10から除去する。
【0062】
図16は、実施形態1に係るMRAM素子における垂直方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
図16のステップS21に示すように、垂直方向の磁場成分を有する第1磁場を形成する。例えば、X軸方向に対向する電磁石20a及び20bのコイル21a及び21bに、相互に反対向きの電流を印加する。一方、Y軸方向に対向する電磁石20c及び20dの2個のコイル21c及び21dには、電流を印加しない。このようにして、複数の電磁石20を用いて、ステージ面13に垂直な方向の磁場成分を有する第1磁場を発生させる。
【0063】
次に、ステップS22に示すように、ステージ10上のウエーハWFを移動させる。具体的には、ウエーハWFを第1スキャン軸となるα軸に沿ってスキャンさせる。第1磁場内を移動させる際には、第1スキャン軸となるα軸方向は、X軸方向である。このようにして、MRAM素子を第1磁場内においてスキャンさせる。
【0064】
次に、ステップS23に示すように、検出器40によって、ウエーハWFのMRAM素子における磁気光学効果のイメージを取得する。具体的には、MRAM素子の磁気光学効果による偏光角を測定する。そして、スキャン中の磁気極性変化前後の差分画像から、垂直方向の磁場成分を有する第1磁場による欠陥検査を行なう。このようにして、MRAM素子を検査する。
【0065】
次に、ステップS24に示すように、終了するか判断する。検査すべきMRAM素子がまだあるNoの場合には、ステップS21に戻り、ステップS21~S24を繰り返す。一方、検査すべきMRAM素子がないYesの場合には、終了する。
【0066】
図17は、実施形態1に係るMRAM素子における面内方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
図17のステップS31に示すように、面内方向の磁場成分を有する第2磁場を形成する。例えば、複数の電磁石20にXYZ直交座標軸系を固定すると、X軸方向に対向する電磁石20a及び20bのコイル21a及び21bには、同じ所定の向きの電流を印加する。一方、Y軸方向に対向する電磁石20c及び20dのコイル21c及び21dには、コイル21a及び21bと反対向きの電流を印加する。このようにして、ステージ面13に平行な面内方向の磁場成分を有する第2磁場を発生させる。なお、本実施形態では、複数の電磁石20を水平面内で45°回転させ、第2スキャン軸をステージ10に固定させたXYZ直交座標軸系のX軸に合わせる。
【0067】
次に、ステップS32に示すように、ステージ10上のウエーハWFを移動させる。具体的には、ウエーハWFを第2スキャン軸となるα軸に沿って移動させる。このようにして、MRAM素子を第2磁場内において移動させる。
【0068】
次に、ステップS33に示すように、検出器40によって、ウエーハWFのMRAM素子における磁気光学効果のイメージを取得する。具体的には、MRAM素子の磁気光学効果による偏光角を測定する。このようにして、MRAM素子を検査する。
【0069】
次に、ステップS34に示すように、終了するか判断する。検査すべきMRAM素子がまだあるNoの場合には、ステップS31に戻り、ステップS31~S34を繰り返す。一方、検査すべきMRAM素子がないYesの場合には、終了する。
【0070】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の検査装置1は、MRAM素子の欠陥の検査のために、垂直方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって第1向きから第2向きに変化する第1磁場及び面内方向の磁場成分の向きがステージ面13上の位置によって第3向きから第4向きに変化する第2磁場を形成することができる。よって、容易軸方向だけでなく困難軸方向の磁気特性を検出することができ、MRAMの特性の検出精度を向上させることができる。
【0071】
特許文献1の検査装置は、2個のコイルを含む電磁石によって形成された傾斜磁場中において、MRAM素子をスキャンさせることによりMRAM素子の欠陥を検出する。特許文献1の検査装置は、傾斜磁場の垂直方向の磁場成分である容易軸方向の磁場印加による飽和磁化特性を測定する。これにより、特許文献1の検査装置は、ウエーハの欠陥検査を実現している。しかし、MRAM素子の特性把握のためには、磁化しやすい方向の容易軸方向の特性だけでなく、困難軸方向の磁化特性も検査する必要がある。特に、困難軸方向の異方性磁場は、小さな磁場で特性が変化する容易軸方向の磁気特性を変化させずに検査する必要がある。特許文献1の検査装置は、困難軸方向の磁気特性を検出することができないので、MRAMの特性の検出精度を向上させることができない。
【0072】
これに対して、本実施形態の検査装置1は、困難軸方向の磁化特性を変化させずに容易軸方向の磁化特性を検出することができるとともに、容易軸方向の磁化特性を変化させずに困難軸方向の磁化特性を検出することができる。よって、MRAMの特性の検出精度を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の検査装置1は、第1磁場及び第2磁場内において、MRAM素子を移動させることにより検査を行う。これに対して、ステージ10を固定し、電磁石に流す電流を変更させることにより、磁場を変化させる方法は、電流の変更に時間を要する。また、高感度な検出のためには、カメラの露光時間を長くする必要がある。特に、ウエーハWFの全面を検査する際には、ウエーハWFにおける各MRAM素子を検査位置に移動させた上で、電磁石に流す電流を変更するという測定を繰り返す必要がある。よって、検査時間の増大が問題となる。
【0074】
本実施形態では、電磁石20のコイル21に流す電流を検査中に変化させる必要はないので、電流を変更する時間を削減することができる。また、MRAM素子の移動によって磁気特性を検出することができ、検出器40の露光時間を短縮することができる。
【0075】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る検査装置を説明する。前述の実施形態1の検査装置1は、垂直方向の磁気特性の検査後に、複数の電磁石20を45°回転させて、MRAM素子をスキャンさせる。一方、本実施形態の検査装置は、垂直方向の磁気特性の検査後に、ステージ10を45°回転させて、MRAM素子をスキャンさせる。
【0076】
図18は、実施形態2に係るMRAM素子における垂直方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
図18のステップS41に示すように、垂直方向の磁場成分を有する第1磁場を形成する。例えば、X軸方向に対向する電磁石20a及び20bのコイル21a及び21bに、相互に反対向きの電流を印加する。一方、Y軸方向に対向する電磁石20c及び20dの2個のコイル21c及び21dには、電流を印加しない。このようにして、複数の電磁石20を用いて、ステージ面13に垂直な方向の磁場成分を有する第1磁場を発生させる。
【0077】
次に、ステップS42に示すように、ステージ10上のウエーハWFを移動させる。具体的には、ウエーハWFを第1スキャン軸となるα軸に沿ってスキャンさせる。第1磁場内を移動させる際には、第1スキャン軸となるα軸方向は、X軸方向である。このようにして、MRAM素子を第1磁場内においてスキャンさせる。
【0078】
次に、ステップS43に示すように、検出器40によって、ウエーハWFのMRAM素子における磁気光学効果のイメージを取得する。具体的には、MRAM素子の磁気光学効果による偏光角を測定する。そして、スキャン中の磁場極性変化前後の差分画像から、垂直方向の磁場成分を有する第1磁場による欠陥検査を行なう。このようにして、MRAM素子を検査する。
【0079】
次に、ステップS44に示すように、終了するか判断する。検査すべきMRAM素子がまだあるNoの場合には、ステップS41に戻り、ステップS41~S44を繰り返す。一方、検査すべきMRAM素子がないYesの場合には、終了する。
【0080】
図19は、実施形態2に係るMRAM素子における面内方向の磁気特性の検査方法を例示したフローチャート図である。
図19のステップS51に示すように、面内方向の磁場成分を有する第2磁場を形成する。例えば、複数の電磁石20にXYZ直交座標軸系を固定すると、X軸方向に対向する電磁石20a及び20bのコイル21a及び21bに、同じ所定の向きの電流を印加する。一方、Y軸方向に対向する電磁石20c及び20dのコイル21c及び21dには、コイル21a及び21bと反対向きの電流を印加する。このようにして、ステージ面13に平行な面内方向の磁場成分を有する第2磁場を発生させる。なお、本実施形態では、ステージ10を水平面内で45°回転させ、第2スキャン軸をステージ10に固定させたXYZ直交座標軸系のX軸に合わせる。
【0081】
次に、ステップS52に示すように、ステージ10上のウエーハWFを移動させる。具体的には、ウエーハWFを第2スキャン軸となるα軸に沿って移動させる。このようにして、MRAM素子を磁場内において移動させる。
【0082】
次に、ステップS53に示すように、検出器40によって、ウエーハWFのMRAM素子における磁気光学効果のイメージを取得する。具体的には、MRAM素子の磁気光学効果による偏光角を測定する。このようにして、MRAM素子を検査する。
【0083】
次に、ステップS54に示すように、終了するか判断する。検査すべきMRAM素子がまだあるNoの場合には、ステップS51に戻り、ステップS51~S54を繰り返す。一方、検査すべきMRAM素子がないYesの場合には、終了する。
【0084】
本実施形態によれば、複数の電磁石20の代わりに、ステージ10の移動部11を回転させる。これにより、面内方向の磁場を印可した場合のMRAM素子の磁化特性を検出することができる。よって、複数の電磁石20及び光学系30の移動による位置ずれを抑制することができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1~4の各構成を組み合わせたものも本発明の技術思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0086】
1 検査装置
10 ステージ
11 移動部
12 本体部
13 ステージ面
14 レーザ干渉計
20、20a、20b、20c、20d 電磁石
21、21a、21b、21c、21d コイル
22、22a、22b、22c、22d ヨーク
23、23a、23b、23c、23d 垂直部分
24、24a、24b、24c、24d 面内部分
25 接続板
30 光学系
31 光源
32 偏光子
33 対物レンズ
34 検光子
35、36 フィルタ
37 AFセンサ
40 検出器
41 ラインセンサ
42 レビューモニタ
50 情報処理部
60 電源及び制御部
A1、A2 ラインセンサ
B1 石定盤
B2 アクティブ除振台
B3 クサビ
B4 分散板
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9 レンズ
M1、M2、M3、M4 ミラー
W0 検査面
W1 ウエーハ搬送ロボット
W2 事前ウエーハアライメント装置
W3 ウエーハ供給カセット
WF ウエーハ