(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086013
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】光学分析装置及び複合分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200859
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】中原 達也
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG09
2G059HH02
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059KK01
(57)【要約】
【課題】試料を収容した光学セルに光を照射し、その透過光を検出することで試料を分析する光学分析装置において、広い波長範囲の測定を可能とし、さらには光源のエネルギーのロスを低減する。
【解決手段】試料を収容した光学セルに光を照射し、当該光学セルを透過した光を検出することで前記試料を分析するものであって、互いに異なるスペクトルの光を発する第1光源部及び第2光源部と、照射された光の一部を反射し一部を透過させるものであり、前記第1光源部からの光が照射される第1面と、前記第2光源部からの光が照射される第2面とを有する光学素子と、前記第1面により反射された前記第1光源部からの光と、前記第2面を透過した前記第2光源部からの光の光路上に設けられた第1光出力口と、前記第1面を透過した前記1光源部からの光の光路上に設けられた第2光出力口と、を備える光学分析装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した光学セルに光を照射し、当該光学セルを透過した光を検出することで前記試料を分析するものであって、
互いに異なるスペクトルの光を発する第1光源部及び第2光源部と、
照射された光の一部を反射し一部を透過させるものであり、前記第1光源部からの光が照射される第1面と、前記第2光源部からの光が照射される第2面とを有する光学素子と、
前記第1面により反射された前記第1光源部からの光と、前記第2面を透過した前記第2光源部からの光の光路上に設けられた第1光出力口と、
前記第1面を透過した前記1光源部からの光の光路上に設けられた第2光出力口と、を備える光学分析装置。
【請求項2】
前記第1光源部と前記第2光源部は、一方から出射される光の強度が他方から出射される光の強度よりも大きいものである請求項1に記載の光学分析装置。
【請求項3】
前記第1光源部と前記第2光源部のうち、一方が光源としてハロゲンランプを備えるものであり、他方が光源として重水素ランプを備えるものである請求項1又は2に記載の光学分析装置。
【請求項4】
前記第1光源部と前記第2光源部のうち、一方が可視光から赤外光の波長域の光を発するものであり、他方が紫外光の波長域の光を発するものである請求項3に記載の光学分析装置。
【請求項5】
前記光学素子は、第1光源部と前記第2光源部は発する光の波長領域において、反射率が透過率よりも大きい、又は透過率が反射率よりも大きいものである請求項1~4のいずれか一項に記載の光学分析装置。
【請求項6】
前記光学素子がノンコートの石英板を用いて構成されたものである請求項1~5のいずれか一項に記載の光学分析装置。
【請求項7】
前記第1光出力口と前記第2光出力口とが略同一方向を向くように設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の光学分析装置。
【請求項8】
前記第1光出力口及び前記第2光出力口のそれぞれから出力された光が照射される第1光学セル及び第2光学セルと、
前記第1光学セル及び前記第2光学セルを透過した光をそれぞれ検出するものであり、互いに異なる感度波長範囲を持つ第1光検出器及び第2光検出器とを更に備える請求項1~7のいずれか一項に記載の光学分析装置。
【請求項9】
試料中の測定対象成分の濃度を測定するものであって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の光学分析装置と、
前記試料の導電率を計測する導電率計、又は前記試料のpHを測定するpH計と、
前記光学分析装置が計測した前記試料の光吸収スペクトルと、前記導電率計又は前記pH計が計測した前記試料の導電率又はpHとを説明変数とした多変量解析により、前記測定対象成分の濃度を算出する濃度算出部とを備える複合分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造プロセス等において薬液等の成分濃度を測定する光学分析装置、及びこれを備える複合分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の分析装置としては、例えば特許文献1に示すように、半導体製造装置に設けられた配管に接続されて、フッ酸(HF)等の薬液(液体試料)の濃度等を測定する光学分析装置がある。この光学分析装置は、光学セルと、光学セルに対して光を照射する光照射部と、光学セルを透過した光を検出する光検出部とを有しており、光検出器からの光強度信号を受信した演算部により、光学セルに収容した液体試料に含まれる所定成分の濃度を算出するよう構成されている。このようにして得られる濃度を用いて、配管を流れる薬液の濃度等が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した光学分析装置では、一台の装置により、広い波長範囲の光を光学セルに照射できるようにするのが望ましい。そのため例えば、光を照射する光源ユニットにおいて、紫外光域の光を発する重水素ランプと、可視光から赤外光の波長域の光を発するハロゲンランプの両方を光源として備えるようにし、照射された光の一部を反射させ一部を透過させるビームスプリッタ等の光学素子を用いてこれらの光源からの光を合成して射出させる構成が考えられる。このようにすることで、光学素子において、例えばハロゲンランプから射出された光を反射させるとともに、重水素ランプから射出された光を透過させ、これらの光を合成することで、紫外光域~赤外光域の光を取り出すことが可能となる。またどちらか一方のランプのみを点灯すれば、可視光域~赤外光域の光、又は紫外光域の光を選択的に取り出すこともできる。
【0005】
しかしながら、光源ユニットから異なる波長範囲の光を選択的に取り出すようにしても、光検出器には適した感度波長範囲があるので、一台の光検出器を用いて紫外光域から赤外光域までの波長範囲の全ての測定を行うのは難しいという問題がある。また別の問題として、このように構成する場合には、光学素子において反射されずに透過したハロゲンランプからの光が捨てられることになり、光源のエネルギーを有効に活用できないだけでなく、この活用されない光が輻射熱源となり熱影響を及ぼす懸念がある。
【0006】
本発明は上述した問題を解決すべくなされたものであり、試料を収容した光学セルに光を照射し、その透過光を検出することで試料を分析する光学分析装置において、広い波長範囲の測定を可能とし、さらには光源のエネルギーのロスを低減し有効利用することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る光学分析装置は、試料を収容した光学セルに光を照射し、当該光学セルを透過した光を検出することで前記試料を分析するものであって、互いに異なるスペクトルの光を発する第1光源部及び第2光源部と、照射された光の一部を反射し一部を透過させるものであり、前記第1光源部からの光が照射される第1面と、前記第2光源部からの光が照射される第2面とを有する光学素子と、前記第1面により反射された前記第1光源部からの光と、前記第2面を透過した前記第2光源部からの光の光路上に設けられた第1光出力口と、前記第1面を透過した前記1光源部からの光の光路上に設けられた第2光出力口と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、光学素子の第1面により反射された第1光源部からの光と、光学素子の第2面を透過した第2光源部からの光が合成され第1光出力口に導かれるようにしているので、当該第1光出力口から、第1光源部からの反射光、第2光源部からの透過光、又はこれらの合成光を選択的に出力し、光学セルに照射できるようになる。さらに、光学素子の第1面を透過した第1光源部からの光が第2光出力口に導かれるようにしているので、この第1光源部からの透過光も捨てることなく有効利用し、光学セルに照射できるようになる。そして、第1光出力口から出力された光と第2光出力口から出力された光を、それぞれに適した感度波長範囲の光検出器で検出するようにすれば、例えば紫外光域から赤外光域までの広い波長範囲での測定が可能となる。
このように、本発明の構成によれば、第1光源部からの反射光と第2光源部からの透過光を光学素子で合成し、さらに光学素子を透過した第1光源の光を有効利用することで、第1光源部からの反射光、第2光源部からの透過光、これらの合成光、そして第1光源からの透過光を選択的に出力することができ、光源のエネルギーのロスを低減するとともに、広い波長範囲の測定が可能となる。
【0009】
前記光学分析装置では、前記第1光源部と前記第2光源部は、一方から出射される光の強度が他方から出射される光の強度よりも大きいものであるのが好ましい。
このようにすれば、第1光源部と第2光源部の光の強度に違いを付けることで、光学素子の反射率と透過率との差も加味して、波長特性の異なる光を各光出力口からバランスよく出力することができる。例えば、光学素子の光透過率が光反射率よりも高い場合に、第1光源部を第2光源部よりも光強度が大きいものとしておけばよい。
【0010】
本発明の具体的態様として、前記第1光源部と第2光源部のうち、一方が光源としてハロゲンランプを備えるものであり、他方が光源として重水素ランプを備えるものが挙げられる。
【0011】
本発明の具体的態様として、前記第1光源部と前記第2光源部のうち、一方が可視光から赤外光の波長域の光を発するものであり、他方が紫外光の波長域の光を発するものが挙げられる。
このような態様であれば、紫外光域から赤外光域までの広い波長範囲の測定が可能となる。
【0012】
また前記光学素子は、第1光源部と前記第2光源部は発する光の波長領域において、反射率が透過率よりも大きい、又は透過率が反射率よりも大きいものが好ましい。
【0013】
また前記光学分析装置は、前記光学素子がノンコートの石英板を用いて構成されたものであるのが好ましい。
光学素子として、例えば平面ガラスに誘電体多層膜をコーティングしたハーフミラー等を用いる場合、誘電体多層膜を構成する材料が紫外光域の光を吸収しやすいため、劣化が早期に進行する恐れがある。光学素子としてノンコートの石英板(すなわち、コーティング処理が施されていない石英板)を用いることで、紫外光域の光の吸収を抑え、劣化を抑制できる。またノンコートの石英板は、反射率に比べて透過率が高いという光学特性を持つため、この光学素子によって、光量が相対的に小さい重水素ランプの透過光と、光量が相対的に大きいハロゲンランプの反射光とを、適度な光量比でバランスよく合成することができる。
【0014】
前記光学分析装置は、前記第1光出力口と前記第2光出力口とが略同一方向を向くように設けられているのが好ましい。
このようにすれば、第1光出力口と第2光出力口が同一方向を向いているので、光を取り出す光ファイバ等を接続しやすい。
【0015】
また前記した光学分析装置は、前記第1光出力口及び前記第2光出力口のそれぞれから出力された光が照射される第1光学セル及び第2光学セルと、前記第1光学セル及び前記第2光学セルを透過した光をそれぞれ検出するものであり、互いに異なる感度波長範囲を持つ第1光検出器及び第2光検出器とを更に備えるのが好ましい。
このような構成であれば、第1光出力口から出力される光と第2光出力口から出力される光を、それぞれ適した感度波長範囲の光検出器で検出できるようになるので、広い波長範囲での測定をすることが可能となる。
なお「互いに異なる感度波長範囲を持つ」とは、互いの感度波長範囲が同一でないことを意味しており、言い換えれば互いの感度波長範囲の少なくとも一部が重複していないことを意味する。
また第1光源部と第2光源部のうち、一方が可視光から赤外光の波長域の光を発し、他方が紫外光の波長域の光を発するものである場合には、第1光検出器と第2光検出器のうち、一方は紫外光域~可視光域の感度波長範囲を持つものであり、他方が赤外光域の感度波長範囲を持つものであるのが好ましい。
【0016】
さらに本発明の複合分析装置は、前記した光学分析装置と、前記試料の導電率を計測する導電率計、又は前記試料のpHを測定するpH計とを備えることを特徴とする。
このような複合分析装置であれば、前記した光学分析装置と同様の効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、被検液試料を収容した光学セルに光を照射し、その透過光を検出することで試料を分析する光学分析装置において、広い波長範囲の測定を可能とし、さらには光源のエネルギーのロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学分析装置の全体構成を示す図。
【
図2】同実施形態に係る光源ユニットの内部構成を模式的に示す図。
【
図3】紫外光域及び可視光域における、重水素ランプ及びハロゲンランプの光出力スペクトルの一例を示すグラフ。
【
図4】赤外光域におけるハロゲンランプの光出力スペクトルの一例を示すグラフ。
【
図5】他の実施形態に係る光源ユニットの内部構成を模式的に示す図。
【
図6】本実施形態の光源分析装置を含む複合分析装置の全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る光学分析装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態の光学分析装置100は、例えば半導体製造ラインに組み込まれて使用されるものであり、例えば半導体製造における洗浄工程に用いられる薬液(液体試料)の濃度等を測定するものであり、より具体的には、液体試料に光を照射して液体試料の吸光度を計測することで濃度を計測する分光吸光光度計である。薬液としては、SC-1(アンモニア過酸化水素水溶液)、SC-2(塩酸過酸化水素水溶液)、SPM(硫酸過酸化水素水溶液)、FPM(フッ酸過酸化水素水溶液)、BHF(バッファードフッ酸溶液)等が挙げられる。
【0021】
具体的にこの光学分析装置100は、
図1に示すように、光源ユニット1と、光ファイバ4等を有する導光機構を介して光源ユニット1に接続された光学セル2と、光ファイバ4等を有する導光機構を介して光学セル2に接続された光検出器3と、演算部5とを有する。この光学分析装置100では、光学セル2には薬液等の液体試料が収容されており、光源ユニット1から出射された光が光学セル2に照射され、当該光学セル2を透過した光が光検出器3で検出され、そして光検出器3からの光強度信号を受信した演算部5により、液体試料に含まれる所定成分の濃度が算出される。このようにして得られる濃度を用いて、薬液の濃度等が制御される。光学セル2は、例えば半導体洗浄装置の薬液槽に接続された薬液配管により形成される循環経路に設けられたフローセルである。なお、光学セル2は、半導体洗浄装置内配管に直接組み込みインラインフローセルであってもよい。光学セル2の材質は、フッ酸等に対する薬液耐性が必要な場合はサファイアが好ましく、薬液耐性が不要な場合はより光透過性がよい石英を用いるのが好ましい。またセル長を変えることにより、測定したい波長域と吸光度を薬液毎に選択できるように構成してもよい。
【0022】
しかして本実施形態の光学分析装置100は、1つの光源ユニット1に対して、2つの光学セル(第1光学セル21、第2光学セル22)と、感度波長範囲が互いに異なる2つの光検出器(第1光検出器31、第2光検出器32)とを有している。具体的に光源ユニット1は、互いに異なるスペクトルの光を出射する2つの光出力口(第1光出力口1P1、第2光出力口1P2)を有しており、各光出力口から出射された光が、導光機構を介して第1光学セル21と第2光学セル22にそれぞれ照射される。そして、第1光学セル21と第2光学セル22を透過した光はそれぞれ、導光機構を介して第1光検出器31と第2光検出器32により検出される。
【0023】
光源ユニット1は、
図2に示すように、ケーシング1Cと、ケーシング1C内に収容された、互いに異なるスペクトルの光を出射する第1光源部11及び第2光源部12と、第1光源部11及び第2光源部12から出射される光を透過及び/又は反射させる複数の光学素子(第1の光学素子13、第2の光学素子14)とを備えている。“互いに異なるスペクトルの光を出射する”とは、少なくとも一部の波長域におけるスペクトルが互いに異なる光を出射することを意味しており、全波長域におけるスペクトルが互いに異なる光を出射することも含む意味である。第1光源部11と第2光源部12から出射された光は、これらの複数の光学素子によって、透過及び反射され、ケーシング1Cの一側壁に略同一方向を向いて設けられた第1光出力口1P1と第2光出力口1P2に導かれる。
【0024】
第1光源部11は、例えば
図3及び
図4に示すような光出力スペクトルをもつ、可視光域~赤外光域の光を出射するものである。具体的にこの第1光源部11は、光源としてのハロゲンランプ11aと、ハロゲンランプ11aから出た光の広がりを調整するレンズ11bとを有する。
【0025】
第2光源部12は、例えば
図3に示すような光出力スペクトルをもつ、紫外光域の光を出射するものである。具体的にこの第2光源部12は、光源としての重水素ランプ12aと、重水素ランプ12aから出た光の広がりを調整するするレンズ12bとを有する。
【0026】
本実施形態では第1光源部11と第2光源部12は、ケーシング1C内において互いの光路が交差(例えば直交が好ましいが、これに限らない)するように配置されている。ここでは、互いのレンズ11bとレンズ12bの光軸が交差するように配置されている。そしてこの2つの光路が交差する交差部CP近傍に第1の光学素子13が配置されている。この第1の光学素子13は、第1光源部11からの光と第2光源部12からの光とを合成して射出するものである。より具体的にこの第1の光学素子13は、照射された光の一部を透過させ且つ一部を反射させるものであり、具体的にはノンコートの石英板を用いて構成したものである。
【0027】
本実施形態の第1の光学素子13は、ノンコートの石英板を用いることで、光透過率(例えば約85%~約95%)が光反射率(例えば約5%~約15%)よりも高い光学特性を有している。
【0028】
ここで第1の光学素子13は、第1光源部11からの光が照射される第1面13aと、第2光源部12からの光が照射される第2面13bとを有している。この第1面13aと第2面13bは、互いに反対方向を向き、かつ互いに平行な平坦状をなしている。第1の光学素子13は、第1面13aで反射された第1光源部11からの光(反射光)と、第2面13bを透過した第2光源部12からの光(透過光)の互いの光路が略一致するように、その角度及び位置が設定されている。すなわちこの第1の光学素子13において、第1光源部11からの光の反射光と第2光源部12からの光の透過光とが合成される。ここで、ハロゲンランプの光量は重水素ランプの光量はよりも大きいという特性を持ち、また前述したように第1の光学素子13は光透過率よりも光反射率が小さい光学特性を持つため、第1の光学素子13の第1面13aで反射された第1光源部11からの光と、第1の光学素子13の第2面13bを透過した第2光源部12からの光は、適度な光量バランスで合成される。そして、この合成した光(合成光)の光路上に第1光出力口1P1が設けられており、当該第1光出力口1P1から、
図3に示す光出力スペクトルを持つ、第1光源部からの反射光と第2光源部からの透過光とが合成した合成光(紫外光域~赤外光域の光)が射出される。
【0029】
一方で、第1の光学素子13の第1面13aを透過した第1光源部11からの光の光路上には、第2の光学素子14が配置されている。この第2の光学素子14は照射された光を反射させる反射面を有する平面鏡等の反射ミラー14である。そしてこの反射ミラー14で反射された第1光源部11からの光の光路上に第2光出力口1P2が設けられており、当該第2光出力口1P2から、例えば
図4に示す光出力スペクトルをもつ、第1光源部11からの透過光(可視光域~赤外光域の光)が射出される。なおこの第2光出力口1P2には、第1の光学素子13の第2面13bで反射される第2光源部12からの光も到達するが、前述のように重水素ランプの光量はハロゲンランプの光量よりも小さく、また第1の光学素子13は光透過率よりも光反射率が小さい光学特性を持つため、第2光出力口1P2に到達する光の大部分が第1光源部11からの透過光となっている。
【0030】
そしてこの第1光出力口1P1と第2光出力口1P2には、出力された光を第1光学セル21と第2光学セル22にそれぞれ導くための光ファイバ4の端部が接続されている。これにより、第1光学セル21には、光ファイバ4を介して第1光源部11からの反射光と第2光源部12からの透過光の合成光(紫外光域~赤外光域の光)が照射され、第2光学セル22には、光ファイバ4を介して第1光源部11からの透過光(可視光域~赤外光域の光)が主として照射される。
【0031】
光検出器3は、光学セル2を透過した光を分光して検出する分光器等を有するものである。この光検出部器により透過光の光吸収スペクトル(分光スペクトル)が得られる。なお、本実施形態の光吸収スペクトルは、透過光の光吸収スペクトルと入射光の光吸収スペクトルとから求まる吸光度スペクトルを含む概念である。そして本実施形態では、第1光検出器31と第2光検出器32は、測定する光波長に応じた互いに異なる検出素子を用いて構成されたリニアイメージセンサである。具体的には、第1光検出器31は、紫外光域及び可視光域に感度波長範囲をもつシリコン検出素子を用いて構成され、第2光検出器32は、赤外光域に感度波長範囲をもつInGaAs検出素子を用いて構成されている。
【0032】
このように構成した本実施形態の光学分析装置100によれば、第1の光学素子13の第1面13aにより反射された第1光源部11からの光(可視光域~赤外光域の光)と、第1の光学素子13の第2面13bを透過した第2光源部12からの光(紫外光域の光)とが合成され第1光出力口1P1に導かれるようにしているので、当該第1光出力口1P1から、紫外光域~赤外光域の光を出力し、第1光学セル21に照射することができる。さらに、第1の光学素子13の第1面13aを透過した第1光源部11からの光が第2光出力口1P2に導かれるようにしているので、この第1光源部11からの透過光(可視光域~赤外光域)も捨てることなく有効利用し、第2光学セル22に照射できるようになる。
ここで、第1の光学素子13として、光反射率に対して光透過率が十分に高い光学特性を持つノンコートの石英板を用いているので、光量が相対的大きい第1光源部11からの光と光量が相対的に小さい第2光源部からの光とを適度な光量バランスで合成した合成光(紫外光域~赤外光域の光)を、第1光出力口1P1から出力することができ、その一方で、第2光出力口12からは、第1光源部11からの光(可視光域~赤外光域の光)を主として出力することができる。これにより、第1光出力口1P1と第2光出力1P2から、スペクトルが互いに異なる光を適度な光量で出力することができる。
そして、第1光出力口1P1から出力された光を紫外光域~可視光域に感度波長範囲を持つ第1光検出器31で検出し、第2光出力口1P2から出力された光を赤外光域に感度波長範囲を持つ第2光検出器32で検出するようにしているので、紫外光域~可視光域までの波長範囲を測定することができる。第1光検出器31と第2光検出器32のそれぞれにおける、各出力口1P1、1P2からの出力光のスペクトルの測定例を
図3及び
図4に示す。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば第1の光学素子13は、可視光域の光を反射させ、且つ紫外光域及び赤外光域の光を透過させる光学特性を有するものであってもよいし、これとは逆に、可視光域の光を透過させ、且つ紫外光域及び赤外光域の光を反射させる光学特性を有するものであってもよい。また第1の光学素子13は、透過率よりも反射率が高いものであってもよい。この場合には、第1光源部11と第2光源部12の配置、又は第1光検出器31と第2光検出器32の配置を入れ替えるようにすればよい。
【0034】
前記実施形態の第1の光学素子13は石英板であったがこれに限らない。他の実施形態では第1の光学素子13は、例えば、CaF2(フッ化カルシウム)、BK7、サファイア等の任意の材料からなるガラス板であってもよい。また他の実施形態の第1の光学素子13は、例えば、ポルカドットビームスプリッタ、反射型NDフィルタ、誘電体多層膜ビームスプリッタ等であってもよい。
【0035】
また前記実施形態では、第1光源部11は、光源としてハロゲンランプ11aを備えていたがこれに限らない。他の実施形態では、第1光源部11は、赤外光域の光と可視光域の光を射出する1又は複数のLEDを光源として備えていてもよい。同様に第2光源部12は、紫外線光域の光を射出する1又は複数のLEDを光源として備えていてもよい。
【0036】
また他の実施形態の光源ユニット1は、第1光源部11と第2光源部12とが異なるスペクトルの光を発するものであり、かつ第1光源部11からの光と第2光源部12からの光を第1の光学素子13で合成した合成光を第1光出力口1P1から出力するとともに、第1の光学素子13を透過した第1光源部11からの光を第2光出力口1P2から出力するように構成されたものであれば、各光源部11、12から射出される光の波長域や、第1光出力口1P1及び第2光出力口1P2から出力される光の波長域は任意のものであってもよい。
【0037】
また前記実施形態では、第1の光学素子13を透過した第1光源からの光の光路上には第2の光学素子14が配置されていたがこれに限らない。他の実施形態の光源ユニット1は、第2の光学素子14を備えておらず、第1の光学素子13を透過した第1光源からの光が、そのまま第2光出力口1P2に導かれるように構成されていてもよい。
【0038】
さらに前記実施形態では、第1光源部11と第2光源部12は、ケーシング1C内においてそれぞれのレンズ11b、12b自体の光軸が交差するように配置されていたがこれに限らない。他の実施形態では、例えば
図5に示すように、第1光源部11から射出された光が、反射ミラーである第3の光学素子15により反射されて第1の光学素子13に導かれ、この第1の光学素子13において、第1光源部11から射出された光と第2光源部12から射出された光とが交差するように構成されていてもよい。すなわち、本明細書において、「第1光源部11と第2光源部12の互いの光路が交差するように配置される」とは、これらの光を合成させる第1の光学素子13において、第1光源部11から到達する光と第2光源部12から到達する光とが交差することを意味している。
【0039】
また前記実施形態では、第1光源部11と第2光源部12は互いの光路が交差するように配置され、この交差部CP近傍に第1の光学素子13が配置されていたがこれに限らない。これに限らず他の実施形態の光学分析装置100では、第1光源部11からの光と第2光源部12の光の光路上に第1の光学素子13が存在し、第1の光学素子13で反射した第1光源部11からの光と、第1の光学素子13を透過した第2光源部12からの光の光路上(より具体的には合成光の光路上)に第1光出力ポート1P1が設けられており、第1の光学素子13を透過した第1光源部11からの光の光路上に第2光出力ポート1P2が設けられていれば、第1光源部11、第2光源部12及び第1の光学素子13の位置や向きは適宜変更されてよい。
【0040】
また前記実施形態では、第1の光学素子13において第1光源部11の光と第2光源部12の光とが合成するように構成されていたがこれに限らない。他の実施形態では、第1の光学素子13を通過した後で、第1光源部11の光と第2光源部12の光とが合成するように構成されていてもよい。
【0041】
また他の実施形態の光学分析装置100は、薬液等の液体試料を分析するものに限らず、ガス等の気体試料を分析するものであってもよい。また同様の装置構成で、光学セル内の試料から発生する蛍光を測定するようにしてもよい。このようにすれば、一台の装置により、広波長範囲での励起光波長掃引をすることができる。
【0042】
また前記した光学分析装置100は、液体試料の光吸収スペクトルと、電気化学的に計測される液体試料の特性値とを用いて液体試料に含まれる所定成分の濃度を測定する複合分析装置400に適用されてもよい。以下、このような複合分析装置400の一実施形態について、
図6を用いて説明する。
【0043】
<装置構成>
複合分析装置400は、例えば半導体製造装置で使用される薬液等の液体試料に含まれる測定対象成分の濃度を測定するものである。この複合分析装置400は、例えば前記薬液を供給する薬液配管に介在して設けられ、その薬液の測定対象成分の濃度を測定するものである。なお、このようにして得られた濃度を用いて、薬液の濃度等が制御される。なお、薬液としては、2成分以上の混合薬液(混合試料)であり、例えば、溶解時に導電性を生じる成分、導電性を生じない成分、又は、水素イオン(H+)に相関がある成分を含んでいる。
【0044】
具体的に複合分析装置400は、
図6に示すように、液体試料の光吸収スペクトルを計測する光学計測部(具体的には前記光学分析装置)100と、液体試料の特性値を電気化学的に計測する電気化学計測部200と、光学計測部100及び電気化学計測部200から得られる計測情報を処理する情報処理装置300とを備えている。なお、特性値とは、液体試料に含まれる測定対象成分濃度と相関のある物性値のことである。
【0045】
光学計測部100は、前述したように液体試料に光を照射して液体試料の吸光度を計測する吸光度計である。内部に収容された光学セル2は、例えば半導体製造装置の薬液槽Tに接続された薬液配管(不図示)により形成される第1のサンプル流路L1に設けられている。なお、第1のサンプル流路L1は、測定対象成分の種別に応じて、第1光学セル21と第2光学セル22のどちらに接続されてもよい。
【0046】
本実施形態の電気化学計測部200は、液体試料の導電率(電気伝導率)を計測する導電率計210と、液体試料のpHを計測するpH計220とを備えている。
【0047】
具体的に導電率計210は、2つの電極211、212間に交流電圧を印加して、流れる電流に基づいて液体試料の導電率(電気伝導率)を計測するものである。本実施形態の導電率計210は、前記光学計測部100が設けられた第1のサンプル流路L1において、光学計測部100の上流側又は下流側に設けられている。なお、導電率計210は、交流2極方式の他に、交流4極方式のものであっても良いし、電磁誘導方式のものであっても良い。また、導電率計210は、第1のサンプル流路L1とは別のサンプル流路に設けても良い。
【0048】
また、pH計220は、pHガラス電極(作用電極)221及び比較電極222の間に生じる電位差に基づいて液体試料のpHを計測するものである。本実施形態のpH計220は、第1のサンプル流路L1とは別に、薬液槽5に接続された薬液配管(不図示)により形成される第2のサンプル流路L2に設けられている。なお、pH計220は、第1のサンプル流路L1において、例えば光学計測部100の上流側又は下流側に設けても良い。
【0049】
情報処理装置300は、光学計測部100により得られた光吸収スペクトル(又は吸光度スペクトル)と、導電率計210により得られた導電率と、pH計220により得られたpHとを用いて、液体試料の測定対象成分の濃度を算出するものである。なお、情報処理装置300は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器、ディスプレイ等の出力手段、キーボード等の入力手段を有するコンピュータである。そして、メモリに格納された成分濃度算出用プログラムに基づいて、CPU及び周辺機器が協働して濃度算出部310としての機能を発揮する。
【0050】
具体的に濃度算出部310は、光吸収スペクトル及び特性値(導電率及びpH)を説明変数とした多変量解析により、測定対象成分の濃度を算出するものである。なお、多変量解析としては、重回帰分析(MLR又はILS)、主成分回帰分析(PCR)、最小二乗法(CLS)、部分最小二乗法(PLS(PLS1又はPLS2))等が考えられる。
【0051】
ここで、濃度算出部310は、光吸収スペクトルを一次微分又は二次微分の微分処理し、その微分値を説明変数として多変量解析するものである。また、濃度算出部310は、光吸収スペクトルにおける複数の波長それぞれの値を説明変数として多変量解析するものである。
【0052】
具体的に濃度算出部310は、以下の式を用いた多変量解析により、測定対象成分の濃度を算出する。
【0053】
【0054】
ここで、Absi(吸光度)は、光吸収スペクトルを微分処理したものであり、複数の波長(λ1,λ2,・・・λn)それぞれの値である。
また、係数ai、b、cは、それぞれ、波長λiに対する濃度回帰係数、導電率に対する濃度回帰係数、pHに対する濃度回帰係数である。なお、濃度回帰係数が、各説明変数の重みに相当するものである。
さらに、kは、予め求められた検量線であり、Sは、光学計測部100及び電気化学計測部200の液体試料の計測データ(実測データ)である。ここで、検量線は、濃度既知の標準サンプルを測定した際に得られた光学計測部100及び電気化学計測部200の計測データを上記の式を用いて多変量解析することにより求められる。
なお、吸光度及び導電率の2つの説明変数を用いる場合には、上記の数1においてpHの項にゼロを入れれば良いし、吸光度及びpHの2つの説明変数を用いる場合には、上記の数1において導電率の項にゼロを入れれば良い。
【0055】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・光学分析装置
1 ・・・光源ユニット
11 ・・・第1光源部
12 ・・・第2光源部
13 ・・・第1の光学素子
1P1・・・第1光出力口
1P2・・・第2光出力口
2 ・・・光学セル
3 ・・・光検出器
CP ・・・交差部