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特開2024-86016モーションキャプチャターゲットを備えた建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086016
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】モーションキャプチャターゲットを備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240620BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240620BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E21D11/10 D
G01C15/00 104C
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200863
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508182589
【氏名又は名称】エフティーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 康夫
(72)【発明者】
【氏名】荒井 匠
(72)【発明者】
【氏名】関根 一郎
(72)【発明者】
【氏名】早津 隆広
(72)【発明者】
【氏名】石川 巧
(72)【発明者】
【氏名】若竹 亮
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟
(72)【発明者】
【氏名】日比 康貴
(72)【発明者】
【氏名】坂下 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅井 秀明
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】五味 春香
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】四塚 勝久
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155DB02
2D155DB06
2D155KA07
(57)【要約】
【課題】建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを適確に捉えて、所要の動作を実行させることができる。
【解決手段】建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを捕捉するために、前記アーム部の先端部に取り付けられるモーションキャプチャターゲット100を含み、前記ターゲット100は、自発光する少なくとも3個のLEDであり、その少なくとも3個のLEDの配置が、その3個のLEDの配置基準面の中心位置を定める関係にある。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを捕捉するために、前記アーム部の先端部に取り付けられるモーションキャプチャターゲットを含み、
前記ターゲットは、自発光する少なくとも3個のLEDであり、
その少なくとも3個のLEDの配置が、その3個のLEDの配置基準面の中心位置を定める関係にある、
ことを特徴とするモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項2】
前記中心位置と前記3個のLEDとの距離が等しい請求項1記載のモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項3】
前記3個のLEDについて、前記中心位置を中心とする隣接するLEDの間の角度が異なるように配置されている請求項1記載のモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項4】
建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを捕捉するために、前記アーム部の先端部に取り付けられるモーションキャプチャターゲットを含み、
前記ターゲットは、自発光する少なくとも4個のLEDであり、そのうちの少なくとも3個のLEDの配置が、その3個のLEDの配置基準面の中心位置を定める関係にある、
ことを特徴とするモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項5】
前記中心位置と前記3個のLEDとの距離が等しい請求項4記載のモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項6】
前記4個のLEDと前記中心位置との距離が等しく、前記中心位置を中心とする隣接するLEDの間の角度が異なるように配置されている請求項4記載のモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項7】
前記配置基準面上において、前記4個のLEDの配置点が前記中心位置を中心として点対称でない関係にある請求項6記載のモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項8】
建設機械がコンクリート吹付機であり、前記機素が吹付ノズルであり、前記コンクリート吹付機のアーム部の先端部に取り付けた前記吹付ノズルを動かしながら前記ノズルからトンネル内壁面にコンクリート吹付する、請求項1又は4に記載のモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【請求項9】
請求項8の建設機械を運転するに際し、前記アーム部の先端部又は前記吹付ノズルの位置、並びにロール、ピッチ及びヨー角を含む動きを把握しながら建設機械の運転を行う、モーションキャプチャターゲットを備えた建設機械の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーションキャプチャターゲットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、その建設作業のための各種のアーム(伸縮するブームであることもある。)を備え、そのアームの先端部に取り付けたアームなどの動作部を介して、作業するものが代表的である。
【0003】
(山岳)トンネル内に搬入する建設機械としては、切羽面の削孔などを行ういわゆるトンネルジャンボ、吹付機、鋼製支保工の建込み装置などがある。
【0004】
吹付機による吹付コンクリートは、リアルタイムに出来形を測定する方法がなく、作業員が目分量で吹き付けているのが実情である。リアルタイムに出来形を測定しながら、吹付を自動で行う技術が求められている。
【0005】
関連ある技術を調査した。
特許文献1は、支保工の建て込み方法及び建て込みシステムに関し、支保工の位置をリアルタイムに把握することのできる技術に関し、複数のモーションキャプチャ用カメラによって鋼製支保工の予め定められた複数の定点に設置されたモーションキャプチャ用マーカを撮影し、各モーションキャプチャ用カメラによって取得した撮影画像及び各モーションキャプチャ用カメラの3次元座標に基づいて各モーションキャプチャ用マーカの3次元座標を取得し、取得した各モーションキャプチャ用マーカの3次元座標に基づいて鋼製支保工を設計位置に建て込むものである。
ここに、光照射装置からマーカに対して赤外線を照射し、マーカは照射された赤外線を反射する素材を表面に有する、例えば球体形状を有するものである。
【0006】
この特許文献1のように、モーションキャプチャ技術を用いることによりリアルタイムに位置の算出ができる。モーションキャプチャ技術とは、動く対象物に取り付けた反射体を、並べて配置した複数のモーションキャプチャカメラで連続撮影し、得られた連続画像情報を画像分析することにより、対象物の位置及び動きをリアルタイムに算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-173393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなモーションキャプチャ用カメラを含むモーションキャプチャ技術の有用性については、本発明者らは十分認識している。
かかる背景技術に基づき、本発明者らは、吹付工において、リアルタイムに出来形を測定しながら、吹付を自動で行う技術を求めて、種々の開発を試みた。
すなわち、吹付コンクリートのノズルやブームの近傍に反射体を取り付け、それをモーションキャプチャカメラで連続撮影し、画像分析することにより、吹付ノズルの位置及び動きをリアルタイムに算出できるのではないかと考え、実証実験を試みてきた。
【0009】
しかし、例えば、暗く、粉塵の舞うトンネル内の切羽近傍での吹付作業において、モーションキャプチャカメラでマーカを適確に捉えることは難しいことが判明した。
【0010】
また、建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを適確に捉えることが困難である。
例えば、機素として吹付ノズルを考えると、吹付ノズルの先端位置を把握することは、マーカからの既知位置関係を考慮することで、ある程度の精度をもって可能と考えられる。
【0011】
しかし、施工のある時点において、吹付ノズルの先端位置が吹付ノズル本体軸とどのような関係にあるのか不明である場合、吹付ノズル本体軸に沿う吹付材料の吐出方向が不明となり、目的位置に対する吹付材料の吹付が困難となる、又は精度の悪いものとなる。
かかる観点からすると、施工のある時点における、アーム部の軸のロール(角)などの捕捉が重要であると考えられる。
【0012】
したがって、本発明の主たる課題は、建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを適確に捉えて、所要の動作を実行できるようにした建設機械を提供することにある。
特にトンネル内などの暗い雰囲気下でも、アーム及びその先端部に取り付けた機素の動きを適確に捉えることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段の第1の態様は次のとおりである。
建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを捕捉するために、前記アーム部の先端部に取り付けられるモーションキャプチャターゲットを含み、
前記ターゲットは、自発光する少なくとも3個のLEDであり、
その少なくとも3個のLEDの配置が、その3個のLEDの配置基準面の中心位置を定める関係にある、
ことを特徴とするモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【0014】
第2の態様は次のとおりである。
建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを捕捉するために、前記アーム部の先端部に取り付けられるモーションキャプチャターゲットを含み、
前記ターゲットは、自発光する少なくとも4個のLEDであり、そのうちの少なくとも3個のLEDの配置が、その3個のLEDの配置基準面の中心位置を定める関係にある、
ことを特徴とするモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、本発明によれば、建設機械のアーム部及び前記アーム部の先端部に取り付けた機素を動かしながら建設作業する際に、前記機素の位置及び動きを適確に捉えて、所要の動作を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】トンネル内に設置された建設機械の運転の説明用概要図である。
図2】吹付装置例の側面図である。
図3】平面図である。
図4】吹付ノズルの前後進運動の説明図である。
図5】吹付ノズルの上下運動の説明図である。
図6】吹付ノズル及びその支持体の及びブーム運動の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図7図6(b)の左正面図である。
図8】マーカが取付られた吹付ノズル及びブームの側面図である。
図9】吹付ノズル及びブームの旋回の説明図である。
図10】カメラの説明図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図11】カメラの設置状態及び視野各度例の説明図である。
図12】概要説明図である。
図13】モーションキャプチャターゲットの向きと回転との関係を示す説明図である。
図14】モーションキャプチャターゲットを備えたブーム部の(a)は平面図、(b)は側面図である。
図15】モーションキャプチャターゲットの一例を示す正視図である。
図16】設置状態写真である。
図17】ブーム全体写真である。
図18】視点を異にするブーム写真である。
図19】モーションキャプチャターゲットの対比例の正視図である。
図20】カメラのキャリブレーションの説明図である。
図21】キャリブレーション全体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
実施の形態の概要が図1に示されている。
すなわち、トンネルT内に位置する機械本体10と、この機械本体10に設けられ、施工のために機素が対偶をなして運動する可動部を有する運動部20と、を有する建設機械に関するものである。
運動部20に、参考例としての、複数のマーカ21,21…が固定され、少なくとも一つのマーカは可動部に固定され(図2図3図6図8参照)、機械本体10に少なくとも2台、好適には3台以上のカメラ11(図10参照)が光軸角度を異ならせて固定される。ここで、光軸角度を異ならせるのは少なくともマーカ21の捕捉時であり、他の時点において光軸角度を異ならせることを要求されるものではない。
【0019】
さらに、図12が参照されるように、建設機械の機械本体10のトンネルT内における現位置情報を得る手段30と、複数のカメラ11により得られた撮影情報より、マーカ21の動きを三角測量の原理で計測し、3次元のデータを生成して得た3次元データ取得手段40と、を備えている。
3次元データ取得手段40により得られた3次元のデータに基づき、可動部の位置データを得て、施工対象位置と可動部の位置との関係に基づき、運動部10を動作させる制御部50を備える。
【0020】
これらについて、詳しい例示をすると次のとおりである。
トンネルT内に位置する機械本体10は、例えばNATM工法に用いるトンネル内空面に対してコンクリートを吹き付ける吹付装置である。
図示の建設機械としての吹付装置(10)は、アームとしての、中央に吹付用ブーム22(図1図3図6図8において、ブーム22の符合はカバーを指示している)を有し、両側に支保工の建込み用アーム12及び作業用バケットアーム13を備えており、下部にクローラ14(又はタイヤ)を有し、トンネルT内をトンネル掘削の進行に伴って移動可能となっている。
【0021】
図示する実施の形態の吹付装置(10)は、その吹付用ブーム22が、機械本体10の前端部に縦軸15を中心として水平方向に旋回する支持体16に取付られ、起伏シリンダ17により上下方向に揺動するようになっている。
また、縦軸15を中心として吹付用ブーム22を水平方向に旋回するために、図4及び図5に示されている旋回シリンダ18が設けられている。
【0022】
さらに、吹付用ブーム22は、伸縮シリンダ23により、前後方向に伸縮するように、適宜の段数をもってテレスコピックになっている。
吹付用ブーム22の先端の先端軸部22Aには、支持ブラケット24Aが、先端軸部22Aの軸芯O1回りに旋回可能に連結されている(図7参照)。
支持ブラケット24Aには、アーム24が、(吹付用ブーム22の軸線と直交する)軸芯O2回りに垂直面に沿って回動可能に設けられ、そのアーム24先端部に、アーム24の軸芯O3回りに回転可能に支持体25が連結されている。
【0023】
支持体25には、吹付ノズル26が保持されている。また、支持体25には、必要により(好ましくは配置される)レーダ距離計27が固定されている。
図6が参照されるように、吹付ノズル26はアーム24とともにトンネルTの周方向及び起伏可能となっている。
【0024】
上記例において、吹付ノズル26及び吹付用ブーム22、並びに説明した各運動要素は、機構学的にみれば、機械本体10に設けられ、施工のための機素を構成し、連結部は対偶をなして運動する可動部に属し、運動部20の構成要素となっている。
【0025】
そして、運動部20に複数のマーカ21が固定され、少なくとも一つのマーカ21は可動部に固定されている。マーカ21の設置部位の例は図3図6図8に示されている。吹付ノズル26の支持体25(この実施の形態における支持体25は、図6に示されているように保持枠のほか、レーダ距離計27の支持座板を含み、吹付ノズル26に連通する吹付材料の通路を保持している。なお、実施工施時に吹付材料の通路に連結されるホースは図示されていない。)についてもマーカ21が設置されている。
【0026】
マーカ21を睨んでカメラ11が機械本体10に少なくとも2台、実施の形態では図11が参照されるように例えば6台のカメラ11が光軸角度を異ならせて固定され、カメラ群体11Gが構成されている。
カメラ群体11Gは、図2が参照されるように、機械本体10の前方部位に固定され、前方のマーカ21を睨むように設置されている。
【0027】
マーカ21はその移動がカメラ11によって捉えることができるものであれば限定されないが、運動位置変動に影響されることなく良好に視野Vi内で捉えることができるように、例えば半円球体の表面部にLED自発光が分散して設けられたものを好適に使用できる。
【0028】
カメラ11の例は図10に示され、カメラ11は広角レンズを備えるものが好ましく、トンネルT内における粉塵環境であることに鑑み、マーカ21を明確に捉えることができるように、カメラ11周囲部にLED発光体11Aを複数設け、これらを粉塵対策フード11Bで覆ったものを好適に使用できる。
【0029】
上記の構成の建設機械は、例えば主に図1及び図12を参照される運転例に基づき次のように運転できる。
トンネルTの掘削計画に基づくトンネル計画情報部60からの情報が、建設機械本体10の制御部50に与えられる。
トンネル計画情報部60からの情報としては、トンネル線形に基づく各位置におけるトンネル断面情報、計画厚さ、吹付厚さ、トンネル幅値、これに対応した吹付厚に関する計画情報などである。
【0030】
建設機械の機械本体10のトンネル内における現位置情報も、制御部50に与えられる。
このための現位置情報取得手段30としては、図12のほか図1にも示されている、トンネル抗外からの測量により位置が既知である、例えばトンネルT内に設置されるトータルステーションTSを用いることができる。
位置が既知であるトータルステーションTSにより、機械本体10の適宜の位置に設けた、例えば汎用のプリズムターゲット19をそれぞれ捉えることにより、ターゲット19の位置を測量に基づき得て、同時にターゲット19の位置と関係づけることができる機械本体10のトンネル内の位置を設定できる。
図1及び図3には、北Nを示す磁針Mnを例示してある。
また、図1には3つのターゲット19の全てを機械本体10の後部に設けた例を示してあるが、例えば一つのターゲット19を機械本体10の後部に、他の二つを、機械本体10前部における、カメラ群体11Gを支持するフレームの上部両側に設けることなどでもよい(この形態は図21に略図で示してある。)。
【0031】
機械本体10のトンネル内の位置に基づき、吹付ノズル26の位置は、運動部20に設けられた伸縮距離検知器、回転各度検出器など(当業者は当然に理解するであろうから図示を省略してある。)からの現位置及び角度などの運動データにより把握できる。
また、支持体25に固定された図5が参照されるレーダ距離計27からの信号より、トンネルTの内空面までの現離間距離(コンクリート吹付がなされているのであればコンクリート表面までの現離間距離)データを得ることができる。
【0032】
適切な吹付厚の制御は、上記の情報のみではでき難い。すなわち、吹付ノズル26の位置及びトンネルTの内空面に対する対向角度について複雑な動きを伴う。これは既述のように、ブーム22が起伏、旋回、伸縮し、アーム24が起伏し、支持体25が旋回することに主に原因がある。
【0033】
そこで、複数の(角度の異なる)カメラ11により得られた撮影情報より各マーカ21、21…の動きを三角測量の原理で計測し、3次元のデータを生成して得た3次元データ取得手段40が設けられる。
特開2014-211404号公報などに記載された、いわゆる「モーションキャプチャ(法)」により、運動部20の可動部の対象位置データを得る。
この3次元位置データは、制御部50に取り込まれ、レーダ距離計27からの現離間距離データに基づき、コンクリートの吹付厚(吹付時間)の制御を行う運転を行う。
【0034】
ここで補足説明を行うと、カメラ11により得られた撮影情報より各マーカ21、21…の動きを、3次元(X軸、Y軸、Z軸)で捉え(三角測量の原理で計測し)、他方で、トータルステーションTSにより捉えた機械本体10の位置及び絶対方位に対する偏位角度を基礎として、各マーカ21、21…の現位置・方位及び吹付ノズル26の現位置・方位を把握できる。
このようにして、光学的に、機械本体10の3次元前方視野Vi(例えば図1のトンネル左右方向範囲、図2のトンネル上下方向範囲の視野Vi)の運動部(例えば吹付ノズル26)のモーションを捉えながら、当該運動部に目標の運動を行わせることができる。
【0035】
前記例は、建設機械10がコンクリート吹付機であり、吹付ノズル26及びこれを支持体25が施工のための機素を構成しており、前記支持体25にレーダ距離検出器(レーダ距離計)27が設けられ、その距離検出器からの信号に基づき、コンクリート吹付厚の制御を行うトンネル内建設機械の運転方法である。
【0036】
レーダ距離計27からの現離間距離データは次のようにして得る。すなわち、ミリ波レーダ及びシンセサイザからの変調波(送信波)を生成し、これをTxアンテナを介して送信し、変調波が物体(物標)にあたり反射するのを、Rxアンテナにて物標からの反射波を受信し、ミキサにて送信波と受信波を混合し、IF(中間周波数)信号を生成し、IF信号をADCにかけて得られたデータを基に、各種信号処理を実施して位置・速度情報等を取得する。
【0037】
吹付ノズル26の3次元位置及び指向方向は、種々の要素及び対偶を介して変化するように構成され、これをカメラ11により捕捉するものである。その要点について補足的に説明する。図2図3の状態では、ブーム22が起き上がり、吹付ノズル26をその吐出口に向かって斜め後方に指向している。
図8の状態は、吹付ノズル26はトンネル天面に向かって上向きである。
図9には、縦軸15を中心として吹付用ブーム22が水平方向に旋回する結果、ブーム22と共に吹付ノズル26がトンネル左右に振れる状態が示されている。このとき、吹付ノズル26は吹付用ブーム22と軸線を同じくしている。
前述する構造によって、すなわち、アーム24に軸芯O3回りに回転可能に支持体25が連結されている結果、吹付ノズル26は、吹付用ブーム22の軸線に対して横振れも可能である。
【0038】
かくして、吹付ノズル26は、吹付用ブーム22の起伏、横旋回のほか、回転軸芯O1、回転軸芯O2及び回転軸芯O3を介して取付けられているために、吹付ノズル26の3次元位置及び指向方向は、3次元で移動可能である。そしてその吹付ノズル26の位置及びブーム22を含めた運動部20の動きを適確に捉えて、吹付ノズル26の3次元位置及び指向方向を制御できる。
【0039】
(モーションキャプチャターゲットについて)
さて、上記例においては、機械本体10が常時水平であり、この機械本体10に対して、吹付ノズル26の位置及びブーム22を含めた運動部20が確実に3次元座標に沿って運動することを理想とするものである。
【0040】
しかし、機械本体10が常時水平でない場合があること、また、特にブーム22が長いこと、伸縮シリンダ23により、前後方向に伸縮するように、適宜の段数をもってテレスコピックになっていることなどが影響していると考えられる要因によって、ブーム22の先端位置において、その軸周りに捩れる(回転する)現象を招くことに本発明者らは直面した。
【0041】
かかるブーム22の捩れに伴うブーム22軸のロールのほか、ヨーやピッチが生じる可能性がある。
例えば、概念的に、図13に示すように、ブーム22の軸を、XM軸とすると、捩れによってXM軸回りのロールRoが、YM軸回りのピッチPiが、ZM軸回りのヨーYaが生じる可能性がある。
【0042】
これらの回転が生じると、機械本体10に対して、運動部20が3次元に運動することを前提とした理想運動系からはずれ、例えば吹付ノズル26先端の位置が仮に同一であるとしても、吹付ノズル26先端の開口が向いている方向が目的の方向に対してずれてしまい、目的の壁面位置に対する目的の吹付厚での吹付が困難となる。
【0043】
そこで、先に示した図6のマーカ21に換えて、すなわち、当該位置において1点のマーカ21に換えて、図14図18に示す一例としての、少なくとも3点の自発光部を有するモーションキャプチャターゲット100を設け、ブーム22のロール(Roll)Ro、ピッチ(Pitch)Pi及びヨー(Yaw)Yaを分かるようにした。
1点のマーカ21のXYZ座標を求めるだけではロールRo、ピッチPi及びヨーYaは不明である。
【0044】
実施の形態のトンネル用モーションキャプチャターゲット100は、コンクリート吹付機の機械本体10と、例えば前述のように連結され、伸長した吹付用ブーム22の先端部に設けられている。
このモーションキャプチャターゲット100は、ブーム22に対して連結された吹付ノズル26を動かしながら吹付ノズル26からトンネル内壁面Tにコンクリート吹付する際に、吹付ノズル26の位置及び動きを捕捉するために設けられるものである。
【0045】
実施の形態のモーションキャプチャターゲット100は、ブーム22に対する取付部111と、取付部111に接合された板状の基板部110と、基板部110の一面に取り付けられた少なくとも4個のLED部121、122、123、124とを有する。取付部111に対して基板部110は直交する又はやや上方が先端方向に傾いた、例えば90度を超え80度以下の角度範囲で傾けて一体化させてもよい。
【0046】
前記LED部121~124は、自発光するLEDと、LEDの発光を等方的に放射する球状のカバー体とを有する。LEDは近赤外光(例えばピーク波長850nm)を用いることが好ましい。
【0047】
LED部の直径が5~20mmであることが好ましい。この範囲とすることにより、捕捉が確実となり、もって中心点Oの位置の精度を高めることができる。直径が5mmより小さいと、粉塵により消失する確率が高くなり、3つのLED部をとらえられない場合が生じる。直径が20mmより大きい場合には、LED部の中心の位置の精度が悪くなり、中心点Oの位置の精度も悪化する。
【0048】
4個のLED部121~124はいずれも基板部110面の中心点Oから等距離R(図12参照)に配置されているのが望ましい。距離Rは60~80mmであることが好ましい。この範囲とすることにより、中心点Oの位置の精度を高めることができる。距離が60mmより小さい場合、及び、距離が80mmより大きい場合には、算出する中心点Oの位置の精度が悪化する。
LED部の直径が5~20mm、かつ、距離Rは60~80mmとすることにより、ノズルの位置を、10mm以下の精度で算出することができる。
【0049】
隣接するLED部121~124の間の角度α、β、γ、δが異なるように配置されるのが望ましい。
例えば、基板部110上の面における、隣接するLED部の間の角度α、β、γ、δが90度、50度、72度、148度とされている。
これらの角度とすることにより、中心点Oをリアルタイムに高精度で算出する確率を向上させることができることを確認している。
【0050】
LED部の数は、3個以上であれば中心点Oの画定が可能である。しかし、トンネル内での粉塵の影響に一部のLED部を検知できない、あるいは一部のLED部が発光しなくなったなどの場合にも中心点Oの画定を可能とするために4個以上であるのが望ましい。
【0051】
LED部の配置位置も重要である。例えば、対比例として図19に示すように、4個のLED部のうちのいずれかのLED部が、中心点Oに対し他のLED部の点対称である位置に配置された場合において、点対称に位置する1個のLED部を検知できないときを想定してみると、他方の点対称に位置するLED部と、残るLED部とで中心点Oの画定を行う必要があるが、検知できなくなったLED部がどちらであるか不明となるために、中心点Oの画定を行うことができない又は画定ミスを生じる。
したがって、中心点Oに対し他のLED部の点対称配置、あるいは点対称配置に近似する配置は避けるべきである。
【0052】
単純に反射体をLEDに置き換えただけでは、LEDの発光に指向性があるので、アームの動きに従い、カメラでとらえる発光の強さが変化し、カメラで撮影した連続画像においてLEDの輪郭がぶれ、LEDの中心位置の精細度に欠ける場合が生じる。
粉塵の舞う作業環境下なので、粉塵に遮られ、LEDの発光を撮影できない瞬間が生じる場合があったが、4個のLED部を上記配置にすることにより、1個のLED部がある瞬間、粉塵で捕らえられなくとも、残りの3つのLED部で中心点Oをリアルタイムに高精度で算出することができる。この意味で、LED部の数は4個を超える数であってもよい。
【0053】
上記LED部121、122、123、124は、基板部110における位置が既知され、区別のためにナンバリングされた状態でモーションキャプチャソフトに予め記憶される。
【0054】
このうえで、カメラ側から見た、ステレオ連続画像を画像分析して、LED部の中心点OのX座標、Y座標及びZ座標、回転(ヨー、ピッチ、ロール)を算出する。
中心点Oの3次元座標は、3個のLED部の各3次元座標に基づき算出する。
【0055】
建設機械に取り付けた3つのプリズムの位置と、機械座標系の関係を押さえて重機のキャリブレーションを行い、以下のようにして、ロール、ピッチ、ヨーイングが算出できるようにしておく。
【0056】
(ア)まず、6台又は図20図21に示すような7台のカメラ11がカメラ群体11Gのフレームにどのように配置されているかキャリブレーションを行う。
(イ)このキャリブレーションには、例えば図20に示すような、T字状のキャリブレーショ治具50を用いて行うことができる。
この治具50は、両端、並びに中心近傍を避けて左右に離間距離の差が生じる位置に自発光のLEDマーカ51,52、53が設置された(設置位置及び離間距離は既知)ものである。
(ウ)カメラ視野内で、 キャリブレーション治具50を作業員が振り回す(LEDマーカ51,52、53の取り付けた支持棒部を、振り回し面内でメトロノームのように揺動させる、並びにキャリブレーション治具50の支持棒部を、その縦断する面に対して前後に交差する、車輪の転動軌跡のような動きを与える、などする)過程で、各カメラに画像情報として取り込み、各カメラからの画像情報に基づき、個々のカメラの位置の差異を逆算しカメラ群体11Gにおける各カメラ配置を確定させる。
(エ)カメラは、事項以降で説明する設定するカメラ座標系でローカルのX,Y,Z座標を計算することができるようになる。
【0057】
(オ)次に、カメラ座標系を設定するために、図21に示すように、カメラ視野内に三脚にそれぞれ取り付けたLEDマーカを60A、60B、60Cの3台を、平面視でほぼL字型配置で、ほぼ水平に設置する。このとき、L字型配置の長手方向は重機の軸方向に合わせのるのが望ましい。
L字の角(図21ではLEDマーカ60B)がカメラ座標系の原点(0,0,0)となり、長手方向(LEDマーカ60Bと60Cとを結ぶ方向)がX軸、直角方向(LEDマーカ60Bと60Aとを結ぶ方向)がY軸とする(X軸とY軸であってもよい。)。
長手方向を重機の軸に合わせることによって、建設機械のロール、ピッチ、ヨーと、カメラ座標系のロール、ピッチ、ヨーとを一致させることができる。
(カ)建設機械に取り付けた3つのプリズム19と、カメラ座標系の原点であるL字の角のLEDマーカ60Bを、測量係がトンネル内に持ち込んだ、あるいはトンネル内に既設のトータルステーションTSで計測して、機械座標系とカメラ座標系の原点の関係を押さえておく。
【0058】
(キ)カメラ視野内にあるL字型に配置したLEDマーカ60Bの中心座標を各カメラで読み取る。これによりカメラ座標系を設定できる。
(ク)絶対座標系に配置された建設機械の3つのプリズム19を計測すると、機械座標系とカメラ座標系の原点との関係より、カメラ座標系の原点の絶対座標系での座標が算出される。
(ケ)このときの建設機械における運動部(例えばブーム)を動作させたときのロール、ピッチ、ヨーイングが、カメラ座標系の絶対座標系に対するロール、ピッチ、ヨーイングとなる。
(コ)モーションカメラが対象物となるLEDマーカを視認した際に算出するカメラ座標系のローカルのX,Y,Z座標を、(ケ)で得られたロール、ピッチ、ヨーイングを基に座標系の回転を行い、絶対座標系でのX,Y,Z座標に変換する。
(サ)(ク)で求めたカメラ座標系原点の絶対座標系の座標と、(コ)で求めた変換後の座標を合成すると、モーションカメラで対象物を見た際に、絶対座標系で座標が算出できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のモーションキャプチャターゲットを備えた建設機械は、NATM工法、例えばトンネル内に位置して施工する、コンクリート吹付機(装置)のほか、支保工設置用機械、トンネルドリルジャンボなどの、NATM工法における建設機械一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…コンクリート吹付機(NATM工法用建設機械)の機械本体、20…運動部、22…吹付用ブーム(アーム)、26…吹付ノズル(機素)、100…トンネル用モーションキャプチャターゲット、110…基板部、111…取付部、121、122、123、124…LED部。
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