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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086019
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ダイキャスト装置用のガス抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20240620BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20240620BHJP
   B22D 17/14 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B22D17/22 G
B22C9/06 T
B22D17/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200866
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】306031825
【氏名又は名称】株式会社JAPAN MOLD TRADE
(74)【代理人】
【識別番号】100079083
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 實三
(72)【発明者】
【氏名】成 玉順
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲オゥン▼材
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093KB05
4E093NA01
4E093NB01
(57)【要約】
【課題】溶湯の先走り現象の発生、固定ブロックと可動ブロックとのPL面の隙間の発生でも、閉鎖ピストン中に溶湯が入りにくいダイキャスト装置用のガス抜き装置を提供する。
【解決手段】固定ブロック21と可動ブロック22との間に配置されたガス抜き経路23と、固定ブロック21に軸方向摺動可能に設けられた受圧ピストン30及び閉鎖ピストン42と、受圧ピストン30の作動を閉鎖ピストン42に伝える開閉レバー50とを備え、受圧ピストン30と固定ブロック21との間に受圧スリーブ60を摺動可能に設け、固定ブロック21と受圧スリーブ60との摺動面に給水路63、排水路64及び水溜り部65Aを配置し、受圧スリーブ60のガス抜き経路23側への突出状態では、給水路63と排水路64とを連通させ、受圧スリーブ60の没入状態では、給水路63と排水路64とを遮断するとともに、給水路63と水溜り部65Aとを連通可能にする給排水機構70が備えられたダイキャスト装置用のガス抜き装置20である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ブロックと、前記固定ブロックに対し接離可能に設けられた可動ブロックと、前記固定ブロックと前記可動ブロックとの間に配置されてダイキャスト装置の金型のキャビティに連通するガス抜き経路とを備えたダイキャスト装置用のガス抜き装置において、前記固定ブロックに、前記ガス抜き経路の入口側に一端を面して配置され軸方向に摺動可能な受圧ピストンと、前記ガス抜き経路の出口側に一端を面して配置され軸方向に摺動可能な閉鎖ピストンを有する閉鎖バルブと、前記受圧ピストンの作動を前記閉鎖ピストンに伝える開閉レバーと、前記閉鎖バルブを開方向に作動する開放手段と、を備え、前記開閉レバーは、前記ガス抜き経路内に浸入した溶湯により前記受圧ピストンが前記固定ブロックの内方に移動させられた際、前記閉鎖ピストンを閉方向に駆動するように構成されたダイキャスト装置用のガス抜き装置であって、
前記受圧ピストンと前記固定ブロックとの間に受圧スリーブを摺動可能に設け、前記受圧スリーブを前記固定ブロックから前記可動ブロック側に向けて突出可能に配置し、前記受圧スリーブを前記可動ブロック側に向けて突出する方向に付勢する付勢手段を備え、かつ、前記固定ブロックと前記受圧スリーブとの摺動面に水を供給可能な給水路を配置し、前記固定ブロックと前記受圧スリーブとの摺動面から水を排出可能な排水路を配置し、前記受圧スリーブの外周及び前記固定ブロックの内周の少なくとも一方に水溜り部を設け、前記受圧スリーブが突出している状態では、前記給水路と前記排水路とを連通させ、前記受圧スリーブが没入している状態では、前記給水路と前記排水路とを遮断するとともに、前記給水路と前記水溜り部とを連通可能にする給排水機構が備えられたことを特徴とするダイキャスト装置用のガス抜き装置。
【請求項2】
前記給排水機構が、前記受圧スリーブの中間に設けられた小径部と、前記小径部の両端外方にそれぞれ設けられて前記固定ブロックの内周と前記受圧スリーブの外周との間をシールする第1、第2のシール部材と、を備え、第1のシール部材は前記小径部の前記ガス抜き経路側に設けられ、第2のシール部材は前記小径部の前記ガス抜き経路の反対側に設けられ、前記受圧スリーブの前記給水路と前記排水路との設定位置は、前記受圧スリーブの突出時においては、前記給水路と前記排水路とが前記小径部を介して連通され、前記受圧スリーブの没入時においては、前記給水路と前記排水路とが前記第1のシール部材により連通を遮断され、一方、前記給水路と前記水溜り部とは連通可能にされる位置である請求項1記載のダイキャスト装置用のガス抜き装置。
【請求項3】
前記水溜り部は、前記受圧スリーブ側に設けられるとともに、前記受圧スリーブの没入時には前記水溜り部と前記給水路とが直接連通する位置に設けられた請求項1又は2記載のダイキャスト装置用のガス抜き装置。
【請求項4】
前記受圧スリーブの前記付勢手段がコイルスプリングである請求項1から請求項3記載のダイキャスト装置用のガス抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイキャスト装置の金型から排出されるガスを外部へ排出するダイキャスト装置用のガス抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般のダイキャスト装置用のガス抜き装置は、およそ、以下の構成となっている。
ガス抜き装置は、ダイキャスト装置に取り付けられる固定ブロックと可動ブロックとを備え、これらの固定ブロックと可動ブロックとの間には、ダイキャスト装置の金型のキャビティに連通するガス抜き経路が設けられている。
固定ブロックには、ガス抜き経路の入口側に配置された受圧ピストンと、ガス抜き経路の出口側に配置されてガス抜き経路を開閉する閉鎖ピストンを備えた閉鎖バルブと、受圧ピストンの作動を閉鎖ピストンに伝える開閉レバーと、閉鎖バルブの閉鎖ピストンを開方向に作動する開放手段と、を備え、更に、可動ブロックの型開き時にガス抜き経路内で凝固したアルミニウムなどの余剰材料を、外部に押出すための押出ピンなどが備えられたものである。なお、前記開放手段は、長方板状のピンプレートと、このピンプレートの両端部に設けられた一対のピンと、ピンプレートを開閉レバー側に付勢するとともに開閉レバーを可動ブロック側に付勢するコイルスプリングと、を備え、一対のピンは固定ブロックに摺動可能に設けられるとともに、先端が固定ブロックから突出するように設けられている。このような構成により、固定ブロックと可動ブロックが合わされると、ピンがピンプレートを固定ブロックの内側に移動させ、ピンプレートはコイルスプリングの付勢力に抗して固定ブロックの内側に移動させられて開閉レバーから離れるので、開閉レバーをフリーにする手段も前記開放手段には具備されている。
【0003】
前記ダイキャスト装置用のガス抜き装置の作動としては、およそ、以下のとおりである。
ダイキャスト装置で鋳造が開始されると、金型のキャビティに溶湯が入り、キャビティが充填される。次いで、溶湯がガス抜き装置の入口側に入り、溶湯の圧力が受圧ピストンに加わると、受圧ピストンが固定ブロックの内方に移動させられ、開閉レバーも可動ブロックから離れる方向に回動させられる。これにより、閉鎖バルブの閉鎖ピストンが固定ブロックの内方に移動させられ、ガス抜き経路が閉鎖ピストンにより閉鎖される。この時、閉鎖ピストンの動きが悪かったり、溶湯の流れが速かったり、溶湯の先走り現象が発生したりすると、閉鎖ピストンが閉鎖する前に、溶湯が閉鎖バルブの中に入ってしまう虞があった。
【0004】
溶湯が閉鎖バルブの中に入ってしまうと、鋳造作業を中断して、入り込んで凝固したアルミニウムなどの鋳造材料を除去しなければならなかった。
【0005】
このため、鋳造作業を開始する前には、閉鎖ピストンの動きが悪くならないように、ガス抜き装置を毎回分解し、閉鎖ピストンと受圧ピストンの外周面と、それらが摺動する固定ブロックの穴の内部や摺動する他の部品などを洗浄する必要があり、手間が掛かっていた。
【0006】
近年においては、前記溶湯の先走り現象が発生しても、溶湯が閉鎖バルブに到達する経路を長くして溶湯が閉鎖バルブに入らないようにした提案や、溶湯の流れが減速される工夫をして溶湯が閉鎖バルブの中に入らないようにした提案がなされている。このような提案として、特許文献1や特許文献2など多くのものがある。特許文献1は、ガス抜き経路を、接続路から上下に分岐し再び合流する迂回路を備えたものである。特許文献2は、ガス抜き経路にバイパス経路(分岐経路)を追加して形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-96151号公報
【特許文献2】特許第6408845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1と特許文献2の構造に限らず、一般的に、溶湯が注入されて高温となった金型とこの金型に接続されたガス抜き装置との間に温度差が必ず生じるため、固定ブロックと可動ブロックの合せ面(以降、PL面という)に隙間が生じ易く、溶湯の閉鎖バルブ内への流入を十分には防止できなかった。すなわち、PL面に隙間が生じると、先走りの溶湯がガス抜き経路の溝に流れ込むとともに、前記隙間から溢れた溶湯が、閉鎖バルブに向かって一直線に流れ、いわゆる、溶湯の先走り現象が発生し、受圧ピストンにより閉鎖バルブが閉鎖される前に、溶湯が閉鎖バルブの中に入り易くなる問題があった。
【0009】
本発明は溶湯の先走り現象が発生した場合に限らず、キャビティからの溶湯が閉鎖バルブの中に入りにくくなるとともに、固定ブロックと可動ブロックのPL面に隙間が生じた際、その隙間から溢れた溶湯が、閉鎖バルブに一直線に流れ込むことを防止することが可能となるダイキャスト装置用のガス抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固定ブロックと、前記固定ブロックに対し接離可能に設けられた可動ブロックと、前記固定ブロックと前記可動ブロックとの間に配置されてダイキャスト装置の金型のキャビティに連通するガス抜き経路とを備えたダイキャスト装置用のガス抜き装置において、前記固定ブロックに、前記ガス抜き経路の入口側に一端を面して配置され軸方向に摺動可能な受圧ピストンと、前記ガス抜き経路の出口側に一端を面して配置され軸方向に摺動可能な閉鎖ピストンを有する閉鎖バルブと、前記受圧ピストンの作動を前記閉鎖ピストンに伝える開閉レバーと、前記閉鎖バルブを開方向に作動する開放手段と、を備え、前記開閉レバーは、前記ガス抜き経路内に浸入した溶湯により前記受圧ピストンが前記固定ブロックの内方に移動させられた際、前記閉鎖ピストンを閉方向に駆動するように構成されたダイキャスト装置用のガス抜き装置であって、前記受圧ピストンと前記固定ブロックとの間に受圧スリーブを摺動可能に設け、前記受圧スリーブを前記固定ブロックから前記可動ブロック側に向けて突出可能に配置し、前記受圧スリーブを前記可動ブロック側に向けて突出する方向に付勢する付勢手段を備え、かつ、前記固定ブロックと前記受圧スリーブとの摺動面に水を供給可能な給水路を配置し、前記固定ブロックと前記受圧スリーブとの摺動面から水を排出可能な排水路を配置し、前記受圧スリーブの外周及び前記固定ブロックの内周の少なくとも一方に水溜り部を設け、前記受圧スリーブが突出している状態では、前記給水路と前記排水路とを連通させ、前記受圧スリーブが没入している状態では、前記給水路と前記排水路とを遮断するとともに、前記給水路と前記水溜り部とを連通可能にする給排水機構が備えられたことを特徴とするダイキャスト装置用のガス抜き装置である。
【0011】
本発明において、前記給排水機構が、前記受圧スリーブの中間に設けられた小径部と、前記小径部の両端外方にそれぞれ設けられて前記固定ブロックの内周と前記受圧スリーブの外周との間をシールする第1、第2のシール部材と、を備え、第1のシール部材は前記小径部の前記ガス抜き経路側に設けられ、第2のシール部材は前記小径部の前記ガス抜き経路の反対側に設けられ、前記受圧スリーブの前記給水路と前記排水路との設定位置は、前記受圧スリーブの突出時においては、前記給水路と前記排水路とが前記小径部を介して連通され、前記受圧スリーブの没入時においては、前記給水路と前記排水路とが前記第1のシール部材により連通を遮断され、一方、前記給水路と前記水溜り部とは連通可能にされる位置であることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記水溜り部は、前記受圧スリーブ側に設けられるとともに、前記受圧スリーブの没入時には前記水溜り部と前記給水路とが直接連通する位置に設けられることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記受圧スリーブの前記付勢手段がコイルスプリングであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、固定ブロックと、可動ブロックと、ガス抜き経路とを備えたダイキャスト装置用のガス抜き装置において、前記固定ブロックに、受圧ピストンと、閉鎖ピストンを有する閉鎖バルブと、前記受圧ピストンの作動を前記閉鎖ピストンに伝える開閉レバーと、前記閉鎖ピストンを開方向に作動させる開放手段と、を備え、前記開閉レバーは、前記ガス抜き経路内に浸入した溶湯により前記受圧ピストンが固定ブロックの内方に移動させられた際、前記閉鎖ピストンを閉方向に駆動するように構成されたダイキャスト装置用のガス抜き装置であって、前記受圧ピストンと前記固定ブロックとの間に受圧スリーブを摺動可能に設け、前記受圧スリーブを前記固定ブロックから前記可動ブロック側に向けて突出可能に配置し、前記受圧スリーブを前記可動ブロック側に向けて突出する方向に付勢する付勢手段を備え、かつ、前記固定ブロックと前記受圧スリーブとの摺動面に水を供給可能な給水路を配置し、前記固定ブロックと前記受圧スリーブとの摺動面から水を排出可能な排水路を配置し、前記受圧スリーブの外周及び前記固定ブロックの内周の少なくとも一方に水溜り部を設け、前記受圧スリーブが突出している状態では、前記給水路と前記排水路とを連通させ、前記受圧スリーブが没入している状態では、前記給水路と前記排水路とを遮断するとともに、前記給水路と前記水溜り部とを連通可能にする給排水機構が備えられているので、前記固定ブロックと前記可動ブロックとが合わされて前記受圧スリーブが前記固定ブロック内に没入する方向で右側に移動させられた状態で、かつ、前記ガス抜き経路に溶湯が入り、前記給排水機構の前記水溜まり部から出た水が溶湯に接触し、急激に蒸発すると、排圧が発生し、更に前記溶湯を冷却して前記溶湯の前記閉鎖ピストン側への流入を防止することが出来る。
【0015】
また金型の合わされる方向の移動に伴い、前記可動ブロックと前記固定ブロックとが閉鎖状態に移行する際、前記受圧スリーブの突出部が予め前記可動ブロックに当接されるため、前記可動ブロックと前記固定ブロックの不完全な密着時に、ダイキャスト装置の金型から排出されるガスや溶湯が先行して前記ガス抜き経路内に流入しても、前記受圧スリーブの前記固定ブロックからの突出部により、前記溶湯の前記閉鎖バルブ側への一気の流入を防止できる。
【0016】
本発明において、前記給排水機構が、前記受圧スリーブの中間に設けられた小径部と、前記小径部の両端外方にそれぞれ設けられて前記固定ブロックの内周と前記受圧スリーブの外周との間をシールする第1、第2のシール部材と、を備え、前記第1のシール部材は前記小径部の前記ガス抜き経路側に設けられ、前記第2のシール部材は前記小径部の前記ガス抜き経路の反対側に設けられ、前記受圧スリーブの前記給水路と前記排水路との設定位置は、前記受圧スリーブの突出時においては、前記給水路と前記排水路とが前記小径部を介して連通され、前記受圧スリーブの没入時においては、前記給水路と前記排水路とが前記第1のシール部材により連通を遮断され、一方、前記給水路と前記水溜り部とは連通可能にされる位置であるように構成すれば、前記給排水機構を簡単な構成で、安価に作製できる。
【0017】
本発明において、前記水溜り部を前記受圧スリーブ側に設けるとともに、前記受圧スリーブの没入時には前記水溜り部と前記給水路とが直接連通する位置に設ければ、前記給排水機構の前記水溜まり部の水は、前記固定ブロックと前記受圧スリーブとの間から前記ガス抜き経路内に継続して滲み出ることができる。
【0018】
本発明において、前記受圧スリーブの前記付勢手段をコイルスプリングで構成すれば、前記受圧スリーブの作動を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示す説明図である。
図2】本実施形態のガス抜き経路、及び、給水路と排水路とを示す説明図であり、(a)は可動ブロックの固定ブロック側の端面図、(b)は固定ブロックの可動ブロック側の端面図である。
図3】本実施形態の受圧スリーブと付勢手段とを示す斜視図である。
図4】(a)から(c)は本実施形態の主要部品の作動を示す説明図である。
図5】(a)から(c)本実施形態の作用を示す説明図である。
図6図5のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図1に基づき説明する。
ダイキャスト装置10に取り付けられる本実施形態のガス抜き装置20は、ダイキャスト装置10の金型11の固定金型11Aに取り付けられる固定ブロック21と、金型11の可動金型11Bに取り付けられる可動ブロック22とを備えている。固定ブロック21と可動ブロック22との間には、ガス抜き経路23が形成されている。本実施形態のガス抜き経路23は、図2(a)に示されているように、可動ブロック22側に彫り込まれた溝から構成されている。ガス抜き経路23は、より具体的には、ガスが導入される直線状の導入経路23Aと、図中、左右に分岐する分岐経路23B,23Cと、導入経路23Aの反対側に形成された円環経路23Dとを備えている。ガス抜き経路23は、金型11の固定金型11Aと可動金型11Bとの間に設けられたキャビティ12に連通されている。
これにより、金型11のキャビティ12から排出されるガスなどは、導入経路23Aから浸入し、導入経路23Aが分岐経路23B,23Cに分かれる分岐部壁面23Eに衝突して図2(a)中の左右に分岐し、円環経路23Dに流入するようになっている。
【0021】
図1に示されるように、固定ブロック21内において、ガス抜き経路23の入口側、すなわち、導入経路23A側に一端を面して受圧ピストン30が軸方向に摺動可能に配置され、ガス抜き経路23の出口側、すなわち、円環経路23D側に一端を面して閉鎖バルブ40が配置されている。閉鎖バルブ40は、固定ブロック21に設けられた閉鎖スリーブ41と、閉鎖スリーブ41に軸方向に摺動可能に設けられた閉鎖ピストン42とを備えている。
【0022】
固定ブロック21内において、受圧ピストン30の右方位置には、開閉レバー50が設けられている。開閉レバー50の一端部、図中下端部は、軸51により固定ブロック21に揺動自在に支持されるとともに、他端部、図中上端部は、閉鎖スリーブ41の切欠41Aを貫通して閉鎖ピストン42の右端部まで延長され、閉鎖ピストン42の右端部の切欠42Aに係止されている。開閉レバー50の中間部の図中左端面は、受圧ピストン30の右端部に当接する当接部50Aとされている。この当接部50Aと開閉レバー50の上端部との中間部の図中右端面に設けられた当接部50Bには、開閉レバー50を図中反時計方向に付勢する開放手段52の左端が当接されている。
【0023】
開放手段52は、開閉レバー50の当接部50Bに当接する長方板状のピンプレート52Aと、このピンプレート52Aの両端部に設けられた一対のピン52Bと、ピンプレート52Aを開閉レバー50側に付勢するとともに開閉レバー50を図中反時計方向、すなわち、受圧ピストン30と閉鎖ピストン42を開放方向に付勢するコイルスプリング52Cと、を備えて構成されている。コイルスプリング52Cの右端部は、固定ブロック21の右端面に固定された蓋部材24の凹部24A内に収納されている。一対のピン52Bは固定ブロック21に摺動可能に設けられるとともに、一対のピン52Bの左端が固定ブロック21から突出可能に設けられている。なお、一対のピン52Bは、図1図4では紙面奥側の片方のピン52Bのみ示されている。
このような構成により、固定ブロック21と可動ブロック22が合わされると、可動ブロック22の右端面によりピン52Bを介してピンプレート52Aが右側に移動させられる。これに伴ってピンプレート52Aはコイルスプリング52Cの付勢力に抗して右側に移動させられて開閉レバー50から離れるので、開閉レバー50がフリーになる。この時の受圧ピストン30は、開閉レバー50の当接部50Aに当接されている。
【0024】
また開閉レバー50は、開放手段52のコイルスプリング52Cの付勢力によって、常時、受圧ピストン30の右端部に当接されるとともに、閉鎖ピストン42の切欠42Aに係合されており、受圧ピストン30及び閉鎖ピストン42を開放方向に移動させ、一方、受圧ピストン30が右側に移動させられた場合は、開閉レバー50を時計方向に移動させる。これにより、閉鎖ピストン42が閉鎖方向に移動させられるように構成されている。すなわち、開閉レバー50は、受圧ピストン30の作動を閉鎖ピストン42に伝えるようになっている。
開放手段52のコイルスプリング52Cは、コイルスプリングに限らず、板ばねなど他の形式のばねやエアシリンダなどでもよく、要するに、開閉レバー50を介して閉鎖ピストン42を図中左方である開放方向に付勢し、閉鎖バルブ40を開放できる手段であれば良い。
【0025】
受圧ピストン30と固定ブロック21との間には受圧スリーブ60が摺動可能に設けられ、受圧スリーブ60は固定ブロック21から可動ブロック22側に向けて突出可能に配置されている。この際、受圧スリーブ60の固定ブロック21からの突出量は、2~4mmが好ましいが、この突出量は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0026】
受圧スリーブ60の右端部と、固定ブロック21に固定された蓋部材24に設けられた凹部24Bとの間には付勢手段61が介装されている。付勢手段61は図3に詳細に示されるように、例えば、4本のコイルスプリングから構成され、受圧スリーブ60を、常時、ガス抜き経路23側に突出するように付勢している。
【0027】
受圧スリーブ60の右端には、図3に示されるように、切欠部60Aが形成され、この切欠部60Aを通って開閉レバー50の上端部が延長され、閉鎖ピストン42の切欠42Aに係止できるようになっている。
【0028】
図3において、受圧スリーブ60の中間部のやや左方には、小径部60Bが形成され、受圧スリーブ60の小径部60Bの両端外方である左右部には、固定ブロック21の内周と受圧スリーブ60の外周との間をシールする第1、第2のシール部材62A,62Bがそれぞれ設けられている。第1、第2のシール部材62A,62Bは、Oリング等の一般的なシール部材で構成されている。
受圧スリーブ60の第1のシール部材62Aの左方には、浅い全周溝からなる水溜り部65Aが形成されている。
【0029】
固定ブロック21には、図2(b)にも示されるように、固定ブロック21と受圧スリーブ60との摺動面に水を供給可能な給水路63が形成されるとともに、固定ブロック21と受圧スリーブ60との摺動面から水を排出可能な排水路64が形成されている。給水路63からの水は、受圧ピストン30の外周面に向かって固定ブロック21に開口された給水口63Aから固定ブロック21と受圧スリーブ60との間に供給され、この供給された水は、受圧ピストン30の外周面に向かって固定ブロック21に開口された排水口64Aから排水路64に入って、外部に排出される。なお、図1図4において、給水口63Aは受圧ピストン30の紙面手前側に配置され、排水口64Aは受圧ピストン30の紙面後側に配置されている。
【0030】
これらの給水路63及び排水路64と、水溜り部65A及び第1、第2のシール部材62A,62Bとの位置関係は、次のようになっている。
受圧スリーブ60が固定ブロック21から突出している状態では、図5(a)に示されるように、給水路63と排水路64とが小径部60Bを介して連通されている。
一方、受圧スリーブ60が没入している状態では、図5(b)に示されるように、給水路63と排水路64とは第1のシール部材62Aにより連通が遮断されるとともに、給水路63と水溜り部65Aとが連通可能にされ、給水口63Aからの水は水溜り部65Aに供給されるようになっている。
【0031】
これらの固定ブロック21と受圧スリーブ60とに設けられた給水路63、排水路64、水溜り部65A、小径部60B、第1、第2のシール部材62A,62Bとを含んで給排水機構70が構成されている。
【0032】
次に、本実施形態の動作について、図4及び図5を参照して説明する。
図4は本実施形態の主要部品の動作を示す図であり、図5は本実施形態の図4の各動作状態における水の作用(流れ)を詳細に記載した図である。
【0033】
図4(a)は、固定ブロック21に対して可動ブロック22が合わされていない状態を示している。
図4(a)において、受圧ピストン30と受圧スリーブ60とは、固定ブロック21の左端面であるPL面よりも突出している。この時の給排水機構70は、図5(a)に示されるように、第1,第2のシール部材62A,62Bが、それぞれ給水路63の左側縁と排水路64の右側縁とに接しており、固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間を塞いでいる。このため、給水路63の水は、給水口63Aから小径部60Bの外周に流入し、小径部60Bを通過して排水口64Aから排水路64に入って排水される。この時、水溜り部65Aには水が入ることはない。
【0034】
次に、ダイキャスト装置10で射出が開始されるにあたり、可動金型11Bが固定金型11A側に移動すると、可動ブロック22が固定ブロック21側に移動させられ、固定ブロック21と合わされる。この時、受圧スリーブ60と受圧ピストン30は、可動ブロック22によって図中右側に移動させられ、固定ブロック21の左端面と受圧スリーブ60の左端面は面一になる。すると、給排水機構70は、図5(b)に示されるように、第1のシール部材62Aが給水口63Aよりも右側に移動させられ、給水路63と排水路64との連通が遮断されるとともに、給水路63と水溜まり部65Aとが連通する。これにより、水が固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間を通って水溜り部65Aに入り、水溜り部65Aに水が溜まり、PL面に流れ出る。一方、第1のシール部材62Aにより固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間がシールされるため、給水路63の水が排水口64A側へ流れることはない。また固定ブロック21と可動ブロック22が合わされると、可動ブロック22の右端面によりピン52Bを介してピンプレート52Aが右側に移動させられ、これに伴ってピンプレート52Aはコイルスプリング52Cの付勢力に抗して右側に移動させられて開閉レバー50から離れるので、開閉レバー50はフリーになっている。
【0035】
一方、キャビティ12に溶湯14が入り、キャビティ12が充填されると、溶湯14が排ガスとともに、ガス抜き装置20のガス抜き経路23の入口側に流入し、溶湯14の圧力が受圧ピストン30の左端面に加わる。これにより、受圧ピストン30が右側に移動させられ、開閉レバー50は時計方向に回動される。開閉レバー50の回動に伴い、開閉レバー50の先端、上端が右側に移動させられることにより、図4(b)に示されるように閉鎖バルブ40の閉鎖ピストン42が右側に移動させられ、閉鎖バルブ40が閉鎖される。
【0036】
この時、ガス抜き経路23に流入して来た溶湯14は、PL面に流れ出た水と接して急激に冷やされて凝固を速めるとともに、水が蒸発して水蒸気になる。これにより水が体積膨張するので、その排圧によっても閉鎖ピストン42を右側に移動させられ、その閉鎖ピストン42の閉鎖を速めることとなる。このように先走りの溶湯14の凝固が速まり、その溶湯14が閉鎖バルブ40に到達する時間が従来と比べて遅くなって、閉鎖バルブ40の中に溶湯14が殆んど入らなくなる。
【0037】
その後、金型11が開かれると同時に、可動ブロック22は固定ブロック21から離れる。この時、溶湯14の凝固物は、付勢手段に61により左方に付勢されている受圧スリーブ60によって固定ブロック21から押し出される。従って、受圧スリーブ60が押出ピンの役目を果たす。
この時、固定ブロック21と受圧スリーブ60との位置関係は、図5(a)の状態に戻り、固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間は、第1のシール部材62Aにより給水路63と水溜り部65Aとがシールされるので、給水路63からの水は、水溜り部65A側には流入せず、小径部60B及び排水路64を経て固定ブロック21の外部へ排水される。
【0038】
図4(c)は、固定ブロック21と可動ブロック22のPL面に隙間を生じた場合を示している。
すなわち、金型11が加熱されて熱膨張するとともに固定ブロック21と可動ブロック22も熱膨張するが、固定ブロック21と可動ブロック22はキャビティ12から離れているので、固定ブロック21と可動ブロック22とは金型11と同一温度にならない。この温度差により、固定ブロック21と可動ブロック22のPL面に隙間が生じる場合がある。一方、受圧スリーブ60は、固定ブロック21から2~4mm突出するように設定されているため、受圧スリーブ60の左端面は、付勢手段61に付勢された状態で可動ブロック22の右端面に密着することとなる。
【0039】
ガス抜き経路23の導入経路23Aからガス抜き経路23の内に浸入した溶湯14は、可動ブロック22の中央でガス抜き経路23の分岐部壁面23Eにぶつかり、従来の溶湯の流れと同様に図2(a)中、左右に分かれてガス抜き経路23の分岐経路23B,23Cに流れ込む。この時、固定ブロック21と可動ブロック22との間に隙間が生じている場合がある。しかしながら、図5(c)に示されるように、受圧スリーブ60が付勢手段61によって常時左側に移動させられているため、受圧スリーブ60の左端面が可動ブロック22の右端面に密着されており、溶湯14が隙間から閉鎖ピストン42に向かって一直線に流れようとしても、受圧スリーブ60の外周で止められることとなる。
【0040】
この時の給排水機構70の作動は、図5(c)に示されるように、第1のシール部材62Aが給水口63Aよりも右側に移動させられ、水が固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間を通って水溜り部65Aに水が流入する。この水溜り部65Aに溜まった水が固定ブロック21と受圧ピストン30との狭い隙間からPL面に滲み出る。この滲み出た水が溶湯14に接触して蒸発するため、前述のように溶湯14の流れが遅くなる。一方、給水路63の水は、第1のシール部材62Aによりシールされるため、排水口64A側には流れない。
【0041】
本実施形態においては、次のような効果がある。
すなわち、固定ブロック21と受圧ピストン30との間に受圧スリーブ60を摺動可能に設けるとともに、固定ブロック21と受圧スリーブ60との間に給排水機構70を設け、給水路63からの水が水溜り部65Aに溜まる。この溜まった水は、固定ブロック21と受圧スリーブ60との間からガス抜き経路23内に連続して滲み出る。滲み出た水が溶湯14に接触して急激に冷却され凝固する。また水が蒸発して水蒸気になると、体積膨張するので、その排圧によっても閉鎖ピストン42が右側に移動させられ、その閉鎖ピストン42の閉鎖を速めることとなる。
【0042】
また、キャビティ12からの溶湯14がガス抜き装置20に流入した段階では、金型11とガス抜き装置20との温度差により、固定ブロック21と可動ブロック22との間に隙間が生じたとしても、受圧スリーブ60がブロック21から突出可能に設けられており、受圧スリーブ60の左端面は可動ブロック22の右端面に密接しているので、溶湯14の先走り現象をより有効に防ぐことができる。
【0043】
受圧スリーブ60を図1中左方に付勢する付勢手段61は、4本のコイルスプリングから構成されているので、簡単な構成で受圧スリーブ60を安定して付勢することができる。
【0044】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0045】
たとえば、前記実施形態においては、水溜り部65Aは、受圧スリーブ60の周面に設けたがこれに限られるものではなく、図6に2点鎖線で示したように、固定ブロック21側に水溜り部65Bを設けてもよく、このような構成でも、前記実施形態と同様な作用効果を奏することができる。すなわち、給水路63の給水口63Aからの水は、固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間を通って水溜り部65Bに向かって流れる。固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間を通った水は水溜り部65Bに達し、水溜り部65Aに水を溜める場合と略同様に、固定ブロック21と受圧スリーブ60との隙間から水がPL面側に放出される。この水によって、ガス抜き経路23に流れ込んで来た溶湯14が冷やされて凝固を速めるとともに、溶湯14に接触した水は水蒸気となって体積が急速に膨張することにより、排圧が生じ、この排圧によって閉鎖ピストン42が右側に移動させられてその閉鎖を速める。従って、溶湯14が閉鎖ピストン42の手前で凝固される。
この際、固定ブロック21側だけに水溜り部65Bを形成させてもよいが、固定ブロック21側の水溜り部65Bと受圧スリーブ60側の水溜り部65Aとを両方に形成したものとしてもよい。
なお、図5(c)、図6に示す2点鎖線のように、水溜り部65Bが形成された場合は、水溜り部65Bに直接連通可能な位置に給水口63Aが配置されていないが、受圧スリーブ60と固定ブロック21の間の隙間を介して、水溜り部65Bに連通可能となるので、何ら問題はない。
給水路63に供給される液体は、水以外の冷却液を使用しても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 ダイキャスト装置
11 金型
12 キャビティ
14 溶湯
20 ガス抜き装置
21 固定ブロック
22 可動ブロック
23 ガス抜き経路
30 受圧ピストン
40 閉鎖バルブ
42 閉鎖ピストン
50 開閉レバー
52 開放手段
60 受圧スリーブ
60B 小径部
61 付勢手段
62A,62B 第1,第2のシール部材
63 給水路
64 排水路
65A,65B 水溜り部
70 給排水機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6