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特開2024-86024投影装置、投影装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086024
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】投影装置、投影装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/16 20060101AFI20240620BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240620BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G03B21/16
G03B21/00 D
H04N5/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200874
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴彦
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA02
2K203LA12
2K203LA22
2K203LA27
2K203LA46
2K203LA47
2K203LA53
2K203LA57
2K203MA12
5C058BA26
5C058EA52
(57)【要約】
【課題】投影装置の設置環境や設置方向によらない安定した動作状態を実現することが可能な投影装置、投影装置の制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】投影装置は、筐体と、筐体の内部に設けられ、回転して送風することで筐体の内部を冷却するファンと、筐体の内部温度を検出する温度検出部と、制御部と、を備えた投影装置であって、制御部は、投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間において温度検出部により検出された内部温度の上昇速度に基づいて、ファンの回転数を制御する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、回転して送風することで前記筐体の内部を冷却するファンと、
前記筐体の内部温度を検出する温度検出部と、
制御部と、
を備えた投影装置であって、
前記制御部は、前記投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間において前記温度検出部により検出された前記内部温度の上昇速度に基づいて、前記ファンの回転数を制御する、
投影装置。
【請求項2】
前記ファンは、回転して送風することで、前記筐体の内部の空気を当該筐体に設けられた排気口から外部に排出し、
前記筐体は、前記ファンの回転による前記排気口からの空気の排気方向の鉛直方向成分が変化する態様で設置方向を変更可能に設けられており、
前記所定の立ち上がり期間における前記内部温度の上昇速度は、前記筐体の前記設置方向に応じて変化する、
請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記立ち上がり期間における前記内部温度の前記上昇速度が閾値未満である場合には、前記立ち上がり期間の終了後に前記ファンの回転数を低減させる、
請求項1に記載の投影装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記立ち上がり期間における前記内部温度の前記上昇速度が閾値よりも大きい場合には、前記立ち上がり期間の終了後に前記ファンの回転数を増大させる、
請求項1に記載の投影装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記立ち上がり期間における前記内部温度の前記上昇速度に基づいて、前記立ち上がり期間の終了から所定時間後の基準時点における前記筐体の内部温度が基準温度に近付くように、前記立ち上がり期間の終了後における前記ファンの回転数を調整する、
請求項1に記載の投影装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記立ち上がり期間の終了後、前記ファンを一定の回転数で駆動させる、
請求項5に記載の投影装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記立ち上がり期間において、前記筐体の前記設置方向に応じた回転数で前記ファンを回転させ、
前記立ち上がり期間における前記内部温度の前記上昇速度に基づいて、前記立ち上がり期間の終了から所定時間後の基準時点における前記筐体の内部温度が基準温度に近付くように、前記立ち上がり期間の終了後における前記ファンの回転数を調整する、
請求項2に記載の投影装置。
【請求項8】
前記筐体の内部に設けられた光源をさらに備え、
前記制御部は、
前記温度検出部により検出される前記筐体の前記内部温度が前記基準温度以下である場合には、前記光源に所定の大きさの駆動電流を供給して前記光源を発光させ、
前記内部温度が前記基準温度を超えた場合には、前記筐体の前記内部温度が前記基準温度以下に維持されるように前記光源に供給する前記駆動電流を低減させる制御を開始する、
請求項5~7のいずれか一項に記載の投影装置。
【請求項9】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、回転して送風することで前記筐体の内部を冷却するファンと、
前記筐体の内部温度を検出する温度検出部と、
制御部と、
を備えた投影装置であって、
前記制御部は、前記投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間において前記温度検出部により検出された前記内部温度の上昇速度が基準値より大きい場合に異常を検出し、前記異常に対する対応動作を動作部に行わせる、
投影装置。
【請求項10】
筐体と、前記筐体の内部に設けられ、回転して送風することで前記筐体の内部を冷却するファンと、前記筐体の内部温度を検出する温度検出部と、を備えた投影装置の制御方法であって、
前記投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間において前記温度検出部により検出された前記内部温度の上昇速度に基づいて、前記ファンの回転数を制御する、
投影装置の制御方法。
【請求項11】
筐体と、前記筐体の内部に設けられ、回転して送風することで前記筐体の内部を冷却するファンと、前記筐体の内部温度を検出する温度検出部と、を備えた投影装置に設けられたコンピュータを、
前記投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間において前記温度検出部により検出された前記内部温度の上昇速度に基づいて、前記ファンの回転数を制御する制御手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置、投影装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源からの光を変調して投影面に画像を投影する投影装置の用途が多様化している。例えば、投影装置は、屋内の所定のスクリーンに画像を投影する通常の用途の他に、施設の天井等に取り付けられて、施設の壁面や床面への情報表示、及びフロアの装飾といった用途で用いられたり(例えば、特許文献1)、屋内外に設置された物体の表面に合わせてマッピングされた画像を投影するプロジェクションマッピングに用いられたりしている。このような投影装置の用途の多様化に伴って、投影装置の設置環境や設置方向(設置姿勢)も多様化する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-196423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、設置環境や設置方向が多様化すると、光源等の動作熱による投影装置の内部温度の上昇態様がばらつきやすくなる。このため、投影装置の温度安定化制御等の各種の動作状態が互いに異なりやすく、投影画像の品位のばらつきに繋がるという課題がある。
【0005】
本発明は、投影装置の設置環境や設置方向によらない安定した動作状態を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る投影装置は、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、回転して送風することで前記筐体の内部を冷却するファンと、
前記筐体の内部温度を検出する温度検出部と、
制御部と、
を備えた投影装置であって、
前記制御部は、前記投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間において前記温度検出部により検出された前記内部温度の上昇速度に基づいて、前記ファンの回転数を制御する。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る投影装置は、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、回転して送風することで前記筐体の内部を冷却するファンと、
前記筐体の内部温度を検出する温度検出部と、
制御部と、
を備えた投影装置であって、
前記制御部は、前記投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間において前記温度検出部により検出された前記内部温度の上昇速度が基準値より大きい場合に異常を検出し、前記異常に対する対応動作を動作部に行わせる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、投影装置の設置環境や設置方向によらない安定した動作状態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】投影装置の構成を示す斜視図である。
図2】投影装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】排気方向が水平である場合の排気動作を示す図である。
図4】排気方向が鉛直方向下方の成分を有する場合の排気動作を示す図である。
図5】排気方向が鉛直方向上方の成分を有する場合の排気動作を示す図である。
図6】設置角度と、投影装置の起動後の所定の立ち上がり期間における内部温度の上昇速度との関係を示す図である。
図7】比較例における起動後の内部温度の推移を、水平状態、上向き状態及び下向き状態の各々について示す図である。
図8図7に示す内部温度の推移に応じて行われる比較例の温度安定化制御の内容を示す図である。
図9】ファンの回転数を調整した場合の内部温度の推移を示す図である。
図10図9に対応する期間におけるファンの回転数の制御信号を示す図である。
図11】閾値テーブルの内容を示す図である。
図12】内部温度の上昇速度に基づく異常の検出方法を説明する図である。
図13】投影処理の制御手順を示すフローチャートである。
図14】変形例1における内部温度の推移を示す図である。
図15図14に対応するファンの回転数の制御信号を示す図である。
図16】変形例2に係る投影装置の機能構成を示すブロック図である。
図17】変形例2に係るファンの回転数の制御信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(プロジェクタの構成)
図1は、本実施形態の投影装置1の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、投影装置1(プロジェクタ)は、略直方体形状の筐体100を備える。投影装置1は、筐体100の前面100aに設けられている出射レンズ142aから、画像データに応じて変調された光を照射して画像を投影する。
【0012】
筐体100の表面を構成する複数の面のうち1つの面(本実施形態では、前面100a)には、排気口101が設けられている。排気口101は、放熱のために筐体100の内部から外部に放出される高温の空気が通る開口である。排気口101から排出される空気の進行方向を代表する方向を、排気口101からの空気の排気方向Dと記す。本実施形態では、排気方向Dは、前面100aに垂直な方向である。
また、筐体100が有する複数の面のうち、排気口101が設けられている面を除いた少なくとも1つの面(本実施形態では、前面100aに隣接する1つの側面100b)には、吸気口102が設けられている。吸気口102は、排気口101からの排気に応じて筐体100の内部に導入される空気が通る開口である。なお、吸気口102の位置は、側面100bに限られず、前面100a以外の任意の面に設けることができる。また、吸気口102は、複数の面に設けられていてもよい。排気口101及び吸気口102は、例えば筐体100を貫通する複数の格子窓からなる。
【0013】
筐体100は、排気方向Dの鉛直方向成分が変化する態様で設置方向を変更可能に設けられている。設置方向を変更するための構成は、特には限られない。例えば、投影装置1が、取付部材を介して天井や壁面に取り付けられる態様において、取付部材が、筐体100の方向を変更させるような可動部を有していてもよい。また、投影装置1が設置面上に載置される態様において、筐体100の前方側の底面と接地面との距離を変更可能に支持する支持部材(例えば支持脚やチルトアーム)が筐体100に設けられていてもよい。
【0014】
図1は、排気方向Dが水平面に平行となる向きに設置されている状態を示す。以下では、鉛直方向上向きの方向を+Z方向とし、水平面をXY平面とする。また、筐体100の左側の側面100bから右側の側面100cに向かう方向を+X方向とする。本実施形態では、前面100aの法線ベクトルの向きを、筐体100(投影装置1)の設置方向dと呼ぶものとする。よって、本実施形態における筐体100の設置方向dは、排気方向Dと同一である。
【0015】
図2は、投影装置1の機能構成を示すブロック図である。
投影装置1は、CPU11(Central Processing Unit)(制御部、制御手段)と、RAM12(Random Access Memory)と、記憶部13と、画像投影部14と、操作部15と、表示部16と、ファン駆動部171と、ファン172と、内部温度検出部18(温度検出部)と、環境温度検出部19と、通信部20と、バス22などを備える。投影装置1の各部は、バス22を介して接続されている。また、筐体100の内部に、図2に示す各構成が格納されている。
【0016】
CPU11は、記憶部13に記憶されているプログラム131を読み出して実行し、各種演算処理を行うことで、投影装置1の動作を制御するプロセッサである。なお、投影装置1は、複数のプロセッサ(例えば、複数のCPU)を有していてもよく、本実施形態のCPU11が実行する複数の処理を、当該複数のプロセッサが実行してもよい。この場合には、複数のプロセッサにより制御部が構成される。この場合において、複数のプロセッサが共通の処理に関与してもよいし、あるいは、複数のプロセッサが独立に異なる処理を並列に実行してもよい。
【0017】
RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。
【0018】
記憶部13は、コンピュータとしてのCPU11により読み取り可能な非一時的な記録媒体であり、プログラム131及び各種データを記憶する。記憶部13は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む。また、記憶部13には、後述するファン172の回転数の制御において参照される閾値テーブル132が記憶されている。
【0019】
画像投影部14は、光源141、光学系142及び光源駆動部143などを備える。光学系142は、光源141から出射された光を収束して導くためのレンズやミラーなどと、収束した光の出力有無を画素単位で切り替える切替素子(例えばデジタルマイクロミラー素子(DMD))等を有する。画像投影部14は、光源141から出射された光の強度分布を、画像データに応じてDMDにより変調し、光学系142の出射レンズ142aを通して投影装置1の外部に照射することで画像を投影する。光源141は、例えば、LEDやLD(レーザダイオード)等である。光源141(特にLD)は、投影装置1の他の構成要素と比較して動作時(発光時)の発熱量が多くなりやすい。また、DMDの動作とともに、出力されない光は光学系142内で散乱、吸収されるので、これらの光が熱に変わって光学系142が加熱される。したがって、光源141及び光学系142は、後述するファン172による主たる冷却対象とされる。光源駆動部143は、CPU11から供給される制御信号に従った大きさの駆動電流を光源141に供給して、光源141を発光させる。光源141は、供給される駆動電流の大きさに応じた明るさで発光する。駆動電流が大きく発光輝度が高いほど、光源141の発熱量が多くなる。
【0020】
操作部15は、各種の操作ボタンや操作スイッチなどを有し、ユーザの入力操作を受け付けて、入力操作に応じた操作情報をCPU11に出力する。
【0021】
表示部16は、液晶ディスプレイなどの表示装置を備え、CPU11からの表示制御信号に従って表示装置において各種表示を行う。例えば、表示部16は、投影装置1の動作ステータスを表すステータス表示や、投影装置1に異常が発生した場合における警告表示等を行う。警告表示を行う動作は、異常に対する対応動作に相当し、表示部16は、対応動作を行う動作部に相当する。
【0022】
ファン172は、回転して送風することで筐体100の内部の空気を排気口101から外部に排出し、筐体100の内部を冷却する。ファン172は、筐体100の内部において、光源141及び光学系142を含む冷却対象付近の空気が排気口101から筐体100の外部に排出されるような空気の流れを発生させる。ファン172の位置は、このような空気の流れを発生させるような位置であればよく、特には限定されない。また、ファン172は、複数設けられていてもよい。例えば、少なくとも1つのファン172が、冷却対象と排気口101との間に配置され、このファン172が、冷却対象付近の空気を吸引して排気口101から外部に排出するようになっていてもよい。また、少なくとも1つのファン172が、吸気口102と冷却対象との間に配置され、このファン172が、筐体100の外部から吸気口102を介して空気を吸引し、冷却対象に向けて空気を送出するようになっていてもよい。
【0023】
ファン駆動部171は、ファン172に接続された回転モータ等を有し、CPU11から供給される制御信号に応じた回転数(所定時間当たりの回転の回数)でファン172を回転させる。
【0024】
内部温度検出部18は、筐体100の内部温度を検出し、検出結果をCPU11に出力する。本実施形態の内部温度検出部18は、発熱量の大きい光源141、又は光源141の近傍の位置における内部温度を検出する。ただし、内部温度検出部18による温度の検出位置はこれに限られない。環境温度検出部19は、筐体100の外部温度を検出し、検出結果をCPU11に出力する。内部温度検出部18及び環境温度検出部19としては、例えばサーミスタを用いることができる。
【0025】
通信部20は、ネットワークカード又は通信モジュール等により構成され、外部装置との間で所定の通信規格に従ってデータの送受信を行う。
【0026】
(投影装置の動作)
次に、投影装置1の動作について、ファン172による筐体100の内部の冷却動作を中心に説明する。
投影装置1は、用途に応じて種々の向きで設置される。ファン172による筐体100の内部の冷却効率は、排気口101からの空気の排気方向Dの鉛直方向成分(Z方向成分)の大きさに応じて変化する。以下、この点について図3図5を参照して説明する。
【0027】
図3は、排気方向Dが水平方向である場合の排気動作を示す図である。
排気口101から水平な排気方向Dに排出された高温の空気は、周囲の空気よりも比重が小さいため浮力が働き鉛直方向上方に上昇する。以下では、排気方向D(設置方向d)が水平方向であるときの投影装置1の状態を「水平状態」と記す。
【0028】
図4は、排気方向Dが鉛直方向下方の成分を有する場合の排気動作を示す図である。
図4に示す状態においては、排気口101から下方に排出された高温の空気が上昇に転じ、その一部が排気口101に向かう。この上昇気流が、排気口101から排気される空気と衝突するため、排気口101からの排気が阻害される。このため、水平状態と比較して、筐体100の内部温度が下がりにくくなり、冷却効率が低くなる。詳しくは、図4のYZ平面において+Y方向と排気方向Dとがなす反時計回りの角度を設置角度θとした場合に、設置角度θが270°に近いほど冷却効率が低くなる。以下では、設置角度θが270°であるときの(排気方向Dが鉛直方向下方を向いているとき)の投影装置1の状態を「下向き状態」と記す。
【0029】
図5は、排気方向Dが鉛直方向上方の成分を有する場合の排気動作を示す図である。
図5に示す状態においては、排気口101から上方に排出された高温の空気は浮力により加速されてそのまま上昇する。このため、水平状態と比較して、高温の空気の上昇気流が排気口101からの空気の排出を阻害する程度が低くなり、筐体100の内外の空気交換が効率よく促進される。このため、水平状態と比較して、筐体100の内部温度が下がりやすくなり、冷却効率が高くなる。詳しくは、設置角度θが90°に近いほど冷却効率が高くなる。以下では、設置角度θが90°であるときの(排気方向Dが鉛直方向上方を向いているとき)の投影装置1の状態を「上向き状態」と記す。
【0030】
図6は、投影装置1の設置角度θ以外の設置環境(設置位置や外部温度等)が同一である場合における、設置角度θと、投影装置1の起動後の所定の立ち上がり期間における内部温度の上昇速度VTとの関係を示す図である。図6のグラフは、設置角度θが互いに異なる複数の設置状態の各々における起動後の上昇速度VTを計測してプロットを繋げたものである。設置角度θは、投影装置1に外付けの角度センサを設けて検出してもよいし、分度器等により直接計測してもよい。ここでは、投影装置1の起動後ただちに光源141の発光が開始され、併せてファン172が所定の一定の回転数で回転を開始するものとする。上述した理由で設置角度θによって冷却効率が変わるため、図6に示すように、上昇速度VTは、設置角度θに応じてサインカーブを描くように変化する。言い換えると、立ち上がり期間における内部温度の上昇速度VTは、筐体100の設置角度θ(設置方向d)に応じて変化する。詳しくは、上昇速度VTは、水平状態における内部温度の上昇速度VTをVTbaseとした場合に、定数a(aは、図6のVTmax-VTbase、及びVTbase-VTminに等しい)を用いて概ね以下の関係式(1)を満たす。
VT=VTbase-asinθ …(1)
図6では、上昇速度VTを縦軸としたが、或る時点における内部温度をプロットした場合も、図6と同様のサインカーブとなる。
【0031】
ところで、投影装置1では、CPU11は、筐体100の内部温度が基準温度Ton以下である場合には、光源駆動部143により、光源141に対して所定の大きさの駆動電流を供給させて光源141を発光させる。一方、CPU11は、内部温度が基準温度Tonを超えた場合には、内部温度が基準温度Ton以下に維持されるように光源141に供給される駆動電流を低減させる温度安定化制御を行う。
【0032】
以下では、ファン172の回転数を調整しない比較例における温度安定化制御について、図7及び図8を参照して説明する。
図7は、比較例における起動後の内部温度の推移を、水平状態、上向き状態及び下向き状態の各々について示す図である。
図8は、図7に示す内部温度の推移に応じて行われる比較例の温度安定化制御の内容を示す図である。
内部温度の上昇速度VTが図6に示すように設置角度θに応じて異なり、かつ、ファン172の回転数が一定(ここでは、第1の回転数とする)である場合には、図7に示すように、内部温度が基準温度Tonに達するタイミング、すなわち温度安定化制御が開始されるタイミングが、設置角度θに応じて異なってくる。
例えば、図7において実線で示す水平状態では、時点t2において内部温度が基準温度Tonに達する。
これに対し、破線で示す下向き状態では、水平状態よりも冷却効率が低くなるため内部温度の上昇速度VTが大きくなり、時点t2より前の時点t1において内部温度が基準温度Tonに達する。水平状態と下向き状態との中間状態の場合は、設置角度θが270°に近いほど、基準温度Tonに達する時点は時点t1に近くなる。
また、一点鎖線で示す上向き状態では、水平状態よりも冷却効率が高くなるため内部温度の上昇速度VTが小さくなり、時点t2より後の時点t3において内部温度が基準温度Tonに達する。水平状態と上向き状態との中間状態の場合は、設置角度θが90°に近いほど、基準温度Tonに達する時点は時点t3に近くなる。
【0033】
図8に示すように、内部温度が基準温度Tonに達した時点で温度安定化制御が開始され、駆動電流が減少し始める。図8では、温度安定化制御の開始前における駆動電流に対する、温度安定化制御の実施中における駆動電流の比率が、縦軸に表されている。温度安定化制御は、水平状態では時点t2において開始され、下向き状態では時点t1において開始され、上向き状態では時点t3において開始される。また、温度安定化制御では、基準温度Tonを維持するために、駆動電流比率が時間の経過とともに低減していき、所定の下限の駆動電流比率X(<1)に達すると、温度安定化制御が終了し、以降はその駆動電流が維持される。温度安定化制御は、水平状態では時点t5において終了し、下向き状態では時点t5より前の時点t4において終了し、上向き状態では時点t5よりも後の時点t6において終了する。温度安定化制御の終了後は、内部温度が上昇する。
【0034】
温度安定化制御の開始後、駆動電流が低下する期間では、内部温度がTonに維持される反面、駆動電流の低下に伴って投影画像の輝度が低下する。よって、比較例では、設置環境が同一であっても、投影画像の輝度が低下し始めるタイミングが設置角度θによって異なる。すなわち、設置角度θに応じて、動作状態にばらつきが生じ、また投影画像の品位にもばらつきが生じてしまう。
【0035】
そこで、本実施形態の投影装置1では、CPU11は、投影装置1の起動後の所定の立ち上がり期間P1(図9参照)において内部温度検出部18により検出された内部温度の上昇速度VTに基づいて、設置角度θによる温度安定化制御の開始タイミングのずれが縮小するように、ファン172の回転数を制御する。
【0036】
図9は、ファン172の回転数を調整した場合の内部温度の推移を示す図である。
立ち上がり期間P1の開始時点は、投影装置1の起動時点(電源投入時点)としてもよいし、光源141の発光が開始された時点としてもよい。立ち上がり期間P1の終了時点は、時点t2よりも前の時点taに定められている。立ち上がり期間P1では、ファン172は上述の第1の回転数で回転しており、時点taまでの内部温度の上昇速度VTは、図7と同一である。上昇速度VTの測定方法は、特には限られないが、例えば10秒程度の単位期間における上昇速度を繰り返し測定して平均する方法を用いてもよいし、立ち上がり期間P1の開始時点及び終了時点の各内部温度の差分を立ち上がり期間P1の長さで除して算出してもよい。立ち上がり期間P1の長さは、例えば数十秒~数分程度とすることができる。
【0037】
図10は、図9に対応する期間におけるファン172の回転数の制御信号を示す図である。
制御信号S1~S3は、CPU11からファン駆動部171に供給される。制御信号S1は、第1の回転数でファン172を回転させるための信号である。制御信号S2は、第1の回転数よりも大きい第2の回転数でファン172を回転させるための信号である。制御信号S3は、第1の回転数よりも小さい第3の回転数でファン172を回転させるための信号である。各制御信号がファン駆動部171に供給されると、ファン172は、制御信号に対応する回転数で回転する。詳しくは、ファン172の回転数は、制御信号の送信開始時点で変動を開始し、一定の速度変動期間が経過した後に、制御信号に対応する回転数で安定する。
【0038】
CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが所定の下側閾値α1(閾値、第1の閾値)以上、かつ所定の上側閾値α2(閾値、第2の閾値)以下である場合には、立ち上がり期間P1の終了後もファン172の回転数を維持する。図9においては、実線で示す水平状態において上昇速度VTが下側閾値α1以上かつ上側閾値α2以下となり、ファン172の回転数が第1の回転数で維持される。すなわち、図10に示すように、立ち上がり期間P1及び調整期間P2にわたって制御信号S1がファン駆動部171に供給される。この結果、図7と同様に、時点t2(基準時点)において内部温度が基準温度Tonに達する。
【0039】
また、CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが上側閾値α2よりも大きい場合には、立ち上がり期間P1の終了後にファン172の回転数を増大させる。図9においては、破線で示す下向き状態においては上昇速度VTが上側閾値α2よりも大きくなり、CPU11は、時点ta以降、ファン駆動部171に供給する制御信号を制御信号S2に切り替えて、ファン172の回転数を第2の回転数に増大させる。この結果、立ち上がり期間P1の終了後の時点taから時点t2までの調整期間P2における内部温度の上昇速度が低減する。これにより、水平状態と同様に、時点t2において内部温度が基準温度Tonに達するように調整される。
【0040】
また、CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが下側閾値α1未満である場合には、立ち上がり期間P1の終了後にファン172の回転数を低減させる。図9においては、一点鎖線で示す上向き状態においては上昇速度VTが下側閾値α1未満となり、CPU11は、時点ta以降、ファン駆動部171に供給する制御信号を制御信号S3に切り替えて、ファン172の回転数を第3の回転数に低減させる。この結果、調整期間P2における内部温度の上昇速度が増大する。これにより、水平状態と同様に、時点t2において内部温度が基準温度Tonに達するように調整される。
このように、いずれの場合においても、CPU11は、立ち上がり期間P1の終了後、ファン172を一定の回転数で駆動(回転)させる。
【0041】
また、設置角度θが0°、90°、180°、270°以外の場合にも、上記と同様のファン172の回転数の制御が行われる。
図9では、上向き状態及び下向き状態における時点t2での内部温度が基準温度Tonに一致しているが、時点t2における内部温度が図7の比較例よりも(すなわち、ファン172の回転数の調整を行わない場合よりも)基準温度Tonに近付くように制御されていればよい。
【0042】
また、上記に代えて、上昇速度VTが上側閾値α2よりも大きい場合に、上昇速度VTと上側閾値α2との差分が大きいほど、調整期間P2におけるファン172の回転数を大きくしてもよい。また、昇速度VTが下側閾値α1未満である場合に、上昇速度VTと下側閾値α1との差分が大きいほど、調整期間P2におけるファン172の回転数を小さくしてもよい。上昇速度VTと、下側閾値α1又は上側閾値α2との差分に対応するファン172の回転数は、時点t2(基準時点)において基準温度Tonに到達するように(又は、基準温度Tonにより近づくように)、予め定められていてもよい。
【0043】
なお、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTは、環境温度Teに応じて変動し得る。このため、図11に示すように、閾値テーブル132において、環境温度Teの温度区分ごとに下側閾値α1及び上側閾値α2を予め対応付けておき、環境温度検出部19により検出された環境温度Teに対応する下側閾値α1(α11~α17)及び上側閾値α2(α21~α27)を用いてもよい。環境温度Teと、下側閾値α1及び上側閾値α2との対応付けの方法は閾値テーブル132を用いる方法に限られない。例えば、所定の数式に従って環境温度Teから下側閾値α1及び上側閾値α2を導出してもよい。
また、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTは、立ち上がり期間P1にけるファン172の回転数に応じて変動し得る。このため、立ち上がり期間P1におけるファン172の回転数と、下側閾値α1及び上側閾値α2とを予め対応付けておき、立ち上がり期間P1におけるファン172の回転数に対応する下側閾値α1及び上側閾値α2を用いてもよい。
また、下側閾値α1と上側閾値α2とを同じ値(閾値α)としてもよい。
【0044】
次に、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTを用いた異常の検出方法について説明する。
図12は、内部温度の上昇速度VTに基づく異常の検出方法を説明する図である。
図12に示すように、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが所定の基準値βより大きい場合には、CPU11は、投影装置1に異常が生じていると判別し、表示部16に所定の警告表示を行わせる。また、この場合に、CPU11は、画像投影部14による画像の投影動作を停止させてもよい。基準値βは、上側閾値α2よりも所定の補助域の分だけ大きい値とされる。これにより、例えば排気口101が塞がれるような設置状態となっていた場合など、冷却効率が大きく低下する状態で投影装置1が使用され続ける不具合の発生を抑制することができる。
【0045】
なお、下側閾値α1よりも小さい基準値γをさらに設け、上昇速度VTが基準値γ未満である場合にも異常であると判別することとしてもよい。
【0046】
また、異常に対する対応動作は上記に限られない。例えば、警告灯(発光部、動作部)を点灯させる動作であってもよい。また、音出力部(動作部)により警告音を発生させる動作であってもよい。また、通信部20(動作部)により、ユーザが管理する端末装置に対して警告メッセージを送信する動作であってもよい。
【0047】
次に、上述した動作を行うためにCPU11が行う投影処理について説明する。
図13は、投影処理の制御手順を示すフローチャートである。
投影処理は、投影装置1が起動した場合に開始される。投影処理が開始されると、CPU11は、光源駆動部143に対して制御信号を送信し、光源141への駆動電流の供給を開始させて光源141を発光させ、画像投影部14による画像の投影を開始させる(ステップS101)。また、CPU11は、ファン駆動部171に制御信号S1を供給してファン172を第1の回転数で回転させる(ステップS102)。
【0048】
CPU11は、筐体100の内部温度の検出を開始する(ステップS103)。ここでは、CPU11は、内部温度検出部18から所定の頻度で検出結果を取得する。CPU11は、立ち上がり期間P1が終了したか否かを判別し(ステップS104)、立ち上がり期間P1が終了していないと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、再度ステップS104を実行する。立ち上がり期間P1が終了したと判別された場合には(ステップS104で“YES”)、CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTを導出する(ステップS105)。
【0049】
CPU11は、上昇速度VTが基準値βより大きいか否かを判別し(ステップS106)、基準値βより大きいと判別された場合には(ステップS106で“YES”)、異常が生じていると判別して、表示部16に警告表示を行わせる(ステップS115)。
【0050】
上昇速度VTが基準値β未満であると判別された場合には(ステップS106で“NO”)、CPU11は、上昇速度VTが上側閾値α2より大きいか否かを判別する(ステップS107)。上昇速度VTが上側閾値α2より大きいと判別された場合には(ステップS107で“YES”)、CPU11は、上述したいずれかの態様でファン172の回転数を増大させる(ステップS108)。
上昇速度VTが上側閾値α2以下であると判別された場合には(ステップS107で“NO”)、CPU11は、上昇速度VTが下側閾値α1未満であるか否かを判別する(ステップS109)。上昇速度VTが下側閾値α1未満であると判別された場合には(ステップS109で“YES”)、CPU11は、上述したいずれかの態様でファン172の回転数を低減させる(ステップS110)。
上昇速度VTが下側閾値α1以上であると判別された場合には(ステップS109で“NO”)、CPU11は、ファン172の回転数を維持させる(ステップS111)。
【0051】
ステップS108、S110、S111のいずれかが終了すると、CPU11は、内部温度が基準温度Tonに到達したか否かを判別し(ステップS112)、基準温度Tonに到達したと判別された場合には(ステップS112で“YES”)、温度安定化制御を開始し、光源141の駆動電流を低減させる(ステップS113)。ステップS113が終了した場合、又は、ステップS112において内部温度が基準温度Tonに到達していないと判別された場合には(ステップS112で“NO”)、CPU11は、投影終了を指示する操作がなされたか否かを判別する(ステップS114)。投影終了を指示する操作がなされていないと判別された場合には(ステップS114で“NO”)、CPU11は、処理をステップS112に戻す。
【0052】
投影終了を指示する操作がなされたと判別された場合(ステップS114で“YES”)、又は、ステップS115で警告表示を行わせた場合には、CPU11は、光源141を消灯させて画像投影部14による画像の投影を終了させ(ステップS116)、ファン172の回転を停止させる(ステップS117)。ステップS117が終了すると、CPU11は、投影処理を終了させる。
【0053】
(変形例)
続いて上記実施形態の変形例について説明する。以下の各変形例では、上記実施形態との相違点について説明する。各変形例は、他の1以上の変形例と組み合わせてもよい。
【0054】
<変形例1>
本変形例では、図14に示すように、上向き状態(一点鎖線)(上昇速度VTが最も小さくなる状態)における上昇速度VTで基準温度Tonに達する時点tbを基準時点とし、他の状態(水平状態及び下向き状態等)でもこの基準時点において基準温度Tonに到達するように(又は基準温度Tonにより近付くように)、調整期間P2におけるファン172の回転数を調整する。
【0055】
図15は、図14に対応するファン172の回転数の制御信号を示す図である。
図15に示すように、上向き状態の場合(一点鎖線)には、CPU11は、立ち上がり期間P1及び調整期間P2にわたって制御信号S1によりファン172の回転数を第1の回転数に維持させる。
また、水平状態の場合(実線)には、CPU11は、立ち上がり期間P1が終了する時点ta以降に、ファン駆動部171に供給する制御信号を制御信号S4に切り替え、第1の回転数よりも大きい第4の回転数でファン172を回転させる。
また、下向き状態の場合(破線)には、CPU11は、立ち上がり期間P1が終了する時点ta以降に、ファン駆動部171に供給する制御信号を制御信号S5に切り替え、第4の回転数よりも大きい第5の回転数でファン172を回転させる。
このような制御とすることで、上記実施形態よりも、基準温度Tonに到達するタイミングを遅らせることができる。
【0056】
なお、逆に、下向き状態(上昇速度VTが最も大きくなる状態)における上昇速度VTで基準温度Tonに達する時点を基準時点とし、他の状態(水平状態及び上向き状態等)でもこの基準時点において基準温度Tonに到達するように、調整期間P2におけるファン172の回転数を調整してもよい。この場合には、調整期間P2において、下向き状態以外の各状態におけるファン172の回転数を低減する制御となるため、ファン172の回転に係る消費電力を低減することができる。
【0057】
<変形例2>
図16は、変形例2に係る投影装置1の機能構成を示すブロック図である。
本変形例の投影装置1は、筐体100の設置方向d(設置角度θ)を検出して検出結果をCPU11に出力する設置方向検出部21を備える。設置方向検出部21による筐体100の設置方向dの検出方式は、特には限られない。例えば、設置方向検出部21は、加速度センサにより検出された重力加速度の向きに基づいて筐体100の設置方向dを検出してもよい。また、設置方向検出部21は、筐体100の設置方向dを変更するための部材(上述した取付部材、支持脚及びチルトアーム等)の状態を検出することで筐体100の設置方向を検出してもよい。
【0058】
本変形例では、立ち上がり期間P1において、CPU11は、設置方向検出部21により検出された設置角度θ(若しくは、設置方向d又は排気方向D)に応じた回転数でファン172を回転させる。
図17は、変形例2に係るファン172の回転数の制御信号を示す図である。
本変形例では、水平状態(実線)の場合には、CPU11は、立ち上がり期間P1において、制御信号S1をファン駆動部171に供給して、ファン172を第1の回転数(基準回転数)で回転させる。
また、下向き状態(破線)の場合には、CPU11は、立ち上がり期間P1において、ファン172を第1の回転数よりも大きい回転数(例えば第2の回転数)で回転させるための制御信号(例えば制御信号S2)をファン駆動部171に供給する。水平状態と下向き状態との中間状態の場合には、設置角度θが270°に近いほど回転数を大きくしてもよい。
また、上向き状態(一点鎖線)の場合には、CPU11は、立ち上がり期間P1において、ファン172を第1の回転数よりも小さい回転数(例えば第3の回転数)で回転させるための制御信号(例えば制御信号S3)をファン駆動部171に供給する。水平状態と上向き状態との中間状態の場合には、設置角度θが90°に近いほど回転数を小さくしてもよい。
【0059】
立ち上がり期間P1が終了すると、CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTに基づいて、基準時点(図17では、時点t2)における内部温度が基準温度Tonに近付くように、調整期間P2におけるファン172の回転数を調整する。例えば、上昇速度VTが所定の基準上昇速度よりも大きい場合には、基準上昇速度との差分が大きいほど大きな調整幅でファン172の回転数を増大させる。例えば、図17に示す水平状態(実線)のように、時点taにおいて、第1の回転数よりも上記調整幅だけ大きい回転数でファン172を回転させるための制御信号S1aに切り替える。また、上昇速度VTが基準上昇速度よりも小さい場合には、基準上昇速度との差分が大きいほど大きな調整幅でファン172の回転数を低減させる。例えば、図17に示す下向き状態(破線)のように、時点taにおいて、第1の回転数よりも上記調整幅だけ小さい回転数でファン172を回転させるための制御信号S2aに切り替える。
【0060】
なお、本変形例のように設置方向検出部21を備える構成においては、設置角度θ(若しくは、設置方向d又は排気方向D)と、下側閾値α1及び上側閾値α2とを予め対応付けておき、設置方向検出部21により検出された設置角度θに対応する下側閾値α1及び上側閾値α2を用いてもよい。
また、上述した異常の検出に係る基準値β(及びγ)を、設置角度θ(若しくは、設置方向d又は排気方向D)に応じて異ならせてもよい。この場合には、CPU11は、設置方向検出部21により検出された設置角度θに対応する基準値β(及びγ)に基づいて異常の判別を行えばよい。
【0061】
<変形例3>
閾値(下側閾値α1及び上側閾値α2)を用いずに、上昇速度VTに応じて調整期間P2における回転数を決定してもよい。例えば、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTとファン172の回転数とを予め対応付けて記憶部13に記憶させておき、立ち上がり期間P1において計測された上昇速度VTに応じて、調整期間P2におけるファン172の回転数を定めてもよい。あるいは、上昇速度VTと、ファン172の回転数の調整幅とを対応付けておき、上昇速度VTに対応する調整幅でファン172の回転数を調整してもよい。調整期間P2におけるファン172の回転数は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが大きいほど大きくなるように定められる。これによれば、どのような要因で(環境温度Te、設置角度θ、立ち上がり期間P1におけるファン172の回転数、排気口101近傍の障害物の有無等)上昇速度VTが変動しているかに関わらず、基準時点t2で内部温度が基準温度Tonに到達するように(又は、基準温度Tonに近付くように)ファン172の回転数を調整することができる。
【0062】
(効果)
以上のように、本実施形態に係る投影装置1は、筐体100と、筐体100の内部に設けられ、回転して送風することで筐体100の内部を冷却するファン172と、筐体100の内部温度を検出する内部温度検出部18と、CPU11と、を備え、CPU11は、投影装置1の起動後の所定の立ち上がり期間P1において内部温度検出部18により検出された内部温度の上昇速度VTに基づいて、ファン172の回転数を制御する。
これにより、設置環境や設置方向d(設置角度θ)に起因してファン172による冷却効率が所期の効率から変動した場合であっても、ファン172の回転数を制御することで、設置環境や設置方向dによらない安定した冷却作用を実現することができ、設置環境や設置方向dの相違に起因する筐体100の内部温度のばらつきを低減することができる。よって、投影装置1の設置環境や設置方向dによらない安定した動作状態を実現することができる。また、実際の内部温度の上昇速度VTを用いることで、光源141の発熱量や、冷却効率の設置角度依存性等の製品ごとに相違に起因する内部温度のばらつきも低減することができる。
また、従来から投影装置1に設けられている内部温度検出部18を用いて上昇速度VTを検出し、この上昇速度VTに基づいてファン172を制御すればよいので、設置環境や設置方向を検出するための追加の部品(設置方向を検出する角度センサ等)が必要ない。よって、製造コストの上昇を抑えつつ、内部温度のばらつきを低減して、安定した動作状態を実現することができる。
また、ファン172の回転数の制御に必要な情報は、起動後の立ち上がり期間P1における上昇速度VTを一度検出すれば取得できる。よって、投影装置の動作期間中に繰り返し温度を検出してファンを逐次制御する構成と比較して、ファン172の制御を簡素化することができる。
【0063】
また、ファン172は、回転して送風することで、筐体100の内部の空気を当該筐体100に設けられた排気口101から外部に排出し、筐体100は、ファン172の回転による排気口101からの空気の排気方向Dの鉛直方向成分が変化する態様で設置方向dを変更可能に設けられており、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが、筐体100の設置方向に応じて変化する。この構成では、図3図5を用いて説明した理由により、図6及び図7に示すように設置方向d(排気方向D、設置角度θ)に応じて冷却効率が変動し得るが、設置方向dを検出しなくても、内部温度の上昇速度VTに応じてファン172の回転数を制御することで、精度よく安定した冷却作用を実現して内部温度のばらつきを低減することができる。また、この構成においても、上昇速度VTに基づいてファン172の回転数を制御すればよいので、設置方向を検出するための部品を追加する必要がない。よって、製造コストの上昇を抑えつつ、内部温度のばらつきを低減して、安定した動作状態を実現することができる。
【0064】
また、CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが下側閾値α1未満である場合には、立ち上がり期間P1の終了後にファン172の回転数を低減させる。これにより、上昇速度VTが小さい場合(冷却効率が高い場合)に、ファン172による冷却作用を低減させて内部温度のばらつきを低減することができる。
【0065】
また、CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTが上側閾値α2よりも大きい場合には、立ち上がり期間P1の終了後にファン172の回転数を増大させる。これにより、上昇速度VTが大きい場合(冷却効率が低い場合)に、ファン172による冷却作用を増大させて内部温度のばらつきを低減することができる。
【0066】
また、CPU11は、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTに基づいて、立ち上がり期間P1の終了から所定時間後の基準時点(時点t2又は時点tb)における筐体100の内部温度が基準温度Tonに近付くように、立ち上がり期間P1の終了後におけるファン172の回転数を調整する。これにより、設置環境や設置方向dによらずに、基準時点における内部温度を基準温度Ton付近で一定にすることができる。
【0067】
また、CPU11は、立ち上がり期間P1の終了後、ファン172を一定の回転数で駆動させる。これによれば、立ち上がり期間P1の終了後にファン172の回転数を一度調整する簡易な制御で、内部温度のばらつきを低減して、安定した動作状態を実現することができる。また、安定した冷却作用を実現し、基準時点における内部温度を基準温度Ton付近で一定にすることができる。
【0068】
また、変形例2では、CPU11は、立ち上がり期間P1において、筐体100の設置方向dに応じた回転数でファン172を回転させ、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTに基づいて、立ち上がり期間P1の終了から所定時間後の基準時点における筐体100の内部温度が基準温度Tonに近付くように、立ち上がり期間P1の終了後におけるファン172の回転数を調整する。これによれば、設置方向d及び上昇速度VTの双方に基づくファン172の回転数の制御によって、より精度よく内部温度を基準温度Tonに近付けることができる。すなわち、まず、立ち上がり期間P1において、筐体100の設置方向dに応じた回転数でファン172を回転させることで、設置方向dの相違に起因する冷却作用のばらつきを抑えることができる。さらに、上昇速度VTに基づいてファン172の回転数を調整することで、基準時点における内部温度を精度よく基準温度Tonに近付けることができる。また、立ち上がり期間P1における内部温度の上昇速度VTの、設置方向dによる変動幅を小さくすることができる。よって、立ち上がり期間P1の終了後におけるファン172の回転量の調整幅を小さくできる。
【0069】
また、投影装置1は、筐体100の内部に設けられた光源141をさらに備え、CPU11は、内部温度検出部18により検出される筐体100の内部温度が基準温度Ton以下である場合には、光源141に所定の大きさの駆動電流を供給して光源141を発光させ、内部温度が基準温度Tonを超えた場合には、筐体100の内部温度が基準温度Ton以下に維持されるように光源141に供給する駆動電流を低減させる温度安定化制御を開始する。これにより、設置環境や設置方向dによる温度安定化制御の開始タイミングのずれを低減することができる。よって、設置環境や設置方向dによって温度安定化制御による輝度の低減態様が異なるといった不具合の発生を抑制し、投影画像の品位を安定させることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る投影装置1は、筐体100と、筐体100の内部に設けられ、回転して送風することで筐体100の内部を冷却するファン172と、筐体100の内部温度を検出する内部温度検出部18と、CPU11と、を備え、CPU11は、投影装置1の起動後の所定の立ち上がり期間P1において内部温度検出部18により検出された内部温度の上昇速度VTが基準値βより大きい場合に異常を検出し、異常に対する対応動作としての警告表示を動作部としての表示部16に行わせる。これにより、設置環境や設置方向dに起因してファン172による冷却効率に異常が生じている場合に、異常が生じたまま動作が継続されないようにすることができる。よって、投影装置1の設置環境や設置方向dに起因して動作状態が安定しない問題の発生を抑制する(すなわち、安定した動作状態を実現する)ことができる。
【0071】
また、本実施形態に係る投影装置1の制御方法において、CPU11は、投影装置1の起動後の所定の立ち上がり期間P1において内部温度検出部18により検出された内部温度の上昇速度VTに基づいて、ファン172の回転数を制御する。これにより、投影装置1の設置環境や設置方向dによらない安定した動作状態を実現することができる。
【0072】
また、本実施形態に係るプログラム131は、投影装置1に設けられたコンピュータとしてのCPU11を、投影装置1の起動後の所定の立ち上がり期間P1において内部温度検出部18により検出された内部温度の上昇速度VTに基づいて、ファン172の回転数を制御する制御手段として機能させる。これにより、投影装置1の設置環境や設置方向dによらない安定した動作状態を実現することができる。
【0073】
(その他)
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、ファン172による冷却対象は、光源141及び光学系142に限られず、例えばCPU11や表示部16等の、動作により発熱する任意の構成を含んでいてもよい。
また、投影装置1は、筐体100の設置方向dを変更可能なものに限られない。
また、投影装置1のCPU11は、必ずしも上述した温度安定化制御を実行可能でなくてもよい。
また、CPU11による制御に環境温度Teを用いない場合には、環境温度検出部19を省略してもよい。
【0074】
また、以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体として記憶部13のHDD、SSDを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ、CD-ROM等の情報記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0075】
また、上記実施形態における投影装置1の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【0076】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0077】
1 投影装置
11 CPU(制御部、制御手段)
13 記憶部
14 画像投影部
16 表示部(動作部)
171 ファン駆動部
172 ファン
18 内部温度検出部(温度検出部)
19 環境温度検出部
21 設置方向検出部
100 筐体
101 排気口
102 吸気口
141 光源
d 設置方向
D 排気方向
P1 立ち上がり期間
P2 調整期間
Ton 基準温度
VT 上昇速度
t2、tb 時点(基準時点)
α1 下側閾値(閾値、第1の閾値)
α2 上側閾値(閾値、第2の閾値)
β 基準値
θ 設置角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17