IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヨコオの特許一覧

<>
  • 特開-変換回路 図1
  • 特開-変換回路 図2
  • 特開-変換回路 図3
  • 特開-変換回路 図4
  • 特開-変換回路 図5
  • 特開-変換回路 図6
  • 特開-変換回路 図7
  • 特開-変換回路 図8
  • 特開-変換回路 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086048
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】変換回路
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/08 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H01P5/08 A
H01P5/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200918
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】野口 正樹
(57)【要約】
【課題】同軸コネクタ及びコプレーナ線路の間の電気的整合を向上させる。
【解決手段】芯線を有する同軸コネクタと、前記芯線の少なくとも一部分を囲み前記芯線に電気的に接続された囲繞導体と、前記囲繞導体に電気的に接続された信号導体と、前記信号導体の両側の少なくとも一方に位置する接地導体と、を有する基板と、を備え、前記囲繞導体の少なくとも一部分と、前記接地導体の少なくとも一部分と、が互いに対向している、変換回路。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を有する同軸コネクタと、
前記芯線の少なくとも一部分を囲み前記芯線に電気的に接続された囲繞導体と、前記囲繞導体に電気的に接続された信号導体と、前記信号導体の両側の少なくとも一方に位置する接地導体と、を有する基板と、
を備え、
前記囲繞導体の少なくとも一部分と、前記接地導体の少なくとも一部分と、が互いに対向している、変換回路。
【請求項2】
前記芯線とともに同軸構造を形成する貫通孔を画定する構造体をさらに備える、請求項1に記載の変換回路。
【請求項3】
前記信号導体と前記接地導体との間の隙間の幅と、前記囲繞導体と前記接地導体との間の隙間の幅と、が略等しくなっている、請求項1又は2に記載の変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、同軸コネクタ及びコプレーナ線路の間で伝送信号を変換するための様々な変換回路が開発されている。変換回路は、同軸コネクタと、コプレーナ線路を有する基板と、を備えている。コプレーナ線路は、信号導体と、接地導体と、を同一平面内に有している。
【0003】
特許文献1には、変換回路の一例について記載されている。この変換回路では、各接地導体の端部が同軸コネクタの芯線の両側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-77914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1に記載されているように、各接地導体の端部が同軸コネクタの芯線の両側に配置されることがある。しかしながら、これらの場合、同軸コネクタ及びコプレーナ線路の間の電気的整合を向上させることが難しいことがある。
【0006】
本発明の目的の一例は、同軸コネクタ及びコプレーナ線路の間の電気的整合を向上させることにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
芯線を有する同軸コネクタと、
前記芯線の少なくとも一部分を囲み前記芯線に電気的に接続された囲繞導体と、前記囲繞導体に電気的に接続された信号導体と、前記信号導体の両側の少なくとも一方に位置する接地導体と、を有する基板と、
を備え、
前記囲繞導体の少なくとも一部分と、前記接地導体の少なくとも一部分と、が互いに対向している、変換回路である。
【0008】
本発明の上記態様によれば、同軸コネクタ及びコプレーナ線路の間の電気的整合を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る変換回路の分解斜視図である。
図2】実施形態に係る基板の分解斜視図である。
図3】実施形態に係る第1導体パターンの平面図である。
図4】実施形態に係る変換回路の断面斜視図である。
図5】比較例に係る変換回路の分解斜視図である。
図6】実施形態に係る変換回路及び比較例に係る変換回路のTDR(TIME Domain Reflectometry)特性を示すグラフである。
図7】実施形態に係る変換回路及び比較例に係る変換回路の反射損失の周波数特性を示すグラフである。
図8】実施形態に係る変換回路及び比較例に係る変換回路の挿入損失の周波数特性を示すグラフである。
図9】変形例に係る第1導体パターンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る変換回路10の分解斜視図である。図2は、実施形態に係る基板200の分解斜視図である。図3は、実施形態に係る第1導体パターン220の平面図である。図4は、実施形態に係る変換回路10の断面斜視図である。図4に示す断面は、後述する芯線130の中心を後述するX方向に垂直な方向に通過する断面である。図4に示す断面では、後述する本体110、フランジ120、芯線130及び絶縁スペーサ140が1つのソリッドとして図示されている。
【0012】
各図には、説明のため、X方向、Y方向及びZ方向をそれぞれ示すX軸、Y軸及びZ軸が図示されている。Z方向は、後述する同軸コネクタ100、基板200及び保持基板300の配列方向に平行な方向である。X方向は、Z方向に垂直な方向の一つである。Y方向は、Z方向及びX方向に垂直な方向の一つである。以下、必要に応じて、X軸の矢印が指し示す側を+X側といい、X軸の矢印が指し示す側の反対側を-X側という。以下、必要に応じて、Y軸の矢印が指し示す側を+Y側といい、Y軸の矢印が指し示す側の反対側を-Y側という。以下、必要に応じて、Z軸の矢印が指し示す側を+Z側といい、Z軸の矢印が指し示す側の反対側を-Z側という。図3及び図9において、Z軸を示す黒点付き白丸は、Z軸の矢印が紙面の奥から手前に向けて指し示されていることを示している。
【0013】
以下、必要に応じて、X方向に垂直な平面をYZ平面といい、Y方向に垂直な平面をZX平面といい、Z方向に垂直な平面をXY平面といい、Z方向に垂直な方向をXY平面方向という。
【0014】
図1に示すように、実施形態に係る変換回路10は、同軸コネクタ100、基板200及び保持基板300を備えている。
【0015】
図1を参照して、同軸コネクタ100について説明する。
【0016】
実施形態に係る同軸コネクタ100は、SMA(Sub Miniature type A)コネクタである。一般に、SMAコネクタは、、市場において広く流通している。よって、同軸コネクタ100がSMAコネクタである場合、同軸コネクタ100がSMAコネクタと異なる種類のコネクタである場合よりも、同軸コネクタ100のコストを低減しやすくすることができる。ただし、同軸コネクタ100は、SMAコネクタと異なる種類のコネクタであってもよい。実施形態に係る同軸コネクタ100は、本体110、フランジ120、芯線130、絶縁スペーサ140及び4つの接地用脚150を有している。
【0017】
本体110の少なくとも表面は、金属等の導体からなっている。本体110は、全体が導体からなっていてもよいし、表面を除いて樹脂製であってもよい。本体110が樹脂製である場合、樹脂の表面に導体が設けられている。本体110は、略円筒形状となっている。本体110のZ方向の周りの外周面は、不図示の同軸ケーブルと接合するためのねじ山を画定している。ただし、このねじ山は、本体110のZ方向の周りの外周面に設けられていなくてもよい。
【0018】
フランジ120は、金属等の導体からなっている。フランジ120の-Z側の面及び本体110の+Z側の端部は、電気的に互いに接続されている。実施形態では、本体110及びフランジ120は、互いに一体となっている。+Z側から見て、フランジ120は、X方向に略平行な一対の辺及びY方向に略平行な他の一対の辺を有する略正方形形状となっている。+Z側から見て、フランジ120のX方向又はY方向に略平行な辺の長さは、本体110のXY平面方向の直径より長くなっている。ただし、フランジ120の形状は、この例に限定されない。例えば、+Z側から見たフランジ120は、略長方形形状や略円形状であってもよい。
【0019】
芯線130は、金属等の導体からなっている。芯線130は、Z方向に略平行に延在している。+Z側から見て、芯線130は、XY平面方向において本体110及びフランジ120の略中央に位置している。芯線130の+Z側の端部は、フランジ120の+Z側の面から基板200に向けて突出している。芯線130の-Z側の端部のZ方向の周りの外周面は、本体110及びフランジ120に埋め込まれた絶縁スペーサ140によって覆われている。よって、芯線130と、本体110及びフランジ120の組と、は絶縁スペーサ140によって電気的に互いに絶縁されている。
【0020】
各接地用脚150は、金属等の導体からなっている。+Z側から見て、4つの接地用脚150の各々は、フランジ120の4つの角部の各々に位置している。各接地用脚150の-Z側の端部及びフランジ120の+Z側の面は、電気的に互いに接続されている。実施形態では、各接地用脚150及びフランジ120は、互いに一体となっている。
【0021】
図2図4を参照して、基板200について説明する。
【0022】
実施形態に係る基板200は、FPC(Flexible Printed Circuits)等のフレキシブル基板である。ただし、基板200は、PCB(Printed Circuit Board)等のリジッド基板であってもよい。図2に示すように、実施形態に係る基板200は、誘電体210、第1導体パターン220及び第2導体パターン230を有している。第1導体パターン220及び第2導体パターン230は、例えば銅箔である。第1導体パターン220は、囲繞導体222、信号導体224、第1接地導体225、第2接地導体226及び接地導体パターン228を含んでいる。囲繞導体222は、テーパ導体223を含んでいる。囲繞導体222及び信号導体224は、一体となっている。第1接地導体225、第2接地導体226及び接地導体パターン228は、一体となっている。
【0023】
図2に示すように、誘電体210は、XY平面方向に略平行に延在する略シート形状となっている。誘電体210は、例えばポリイミド樹脂からなっている。誘電体210は、中央挿通孔210a及び4つの周辺挿通孔210bを画定している。+Z側から見て、4つの周辺挿通孔210bは、中央挿通孔210aの周りに略90°の間隔で配置されている。
【0024】
図2に示すように、+Z側から見て、囲繞導体222は、テーパ導体223を除いて、略円環形状となっている。+Z側から見て、囲繞導体222は、略円形状の第1中央開口パターン222aを画定している。第1中央開口パターン222aは、中央挿通孔210aの+Z側の端部に連通している。第2導体パターン230は、第2中央開口パターン230aを画定している。第2中央開口パターン230aは、中央挿通孔210aの-Z側の端部に連通している。よって、芯線130の+Z側の端部は、第2中央開口パターン230a、中央挿通孔210a及び第1中央開口パターン222aを通じて、基板200に挿通可能になっている。
【0025】
図2に示すように、接地導体パターン228は、4つの第1周辺開口パターン228aを画定している。4つの第1周辺開口パターン228aの各々は、4つの周辺挿通孔210bの各々の+Z側の端部に連通している。第2導体パターン230は、4つの第2周辺開口パターン230bを画定している。4つの第2周辺開口パターン230bの各々は、4つの周辺挿通孔210bの各々の-Z側の端部に連通している。よって、4つの接地用脚150の各々は、4つの第2周辺開口パターン230bの各々、4つの周辺挿通孔210bの各々及び4つの第1周辺開口パターン228aの各々を通じて、基板200に挿通可能になっている。
【0026】
図3及び図4に示すように、+Z側から見て、囲繞導体222は、芯線130の+Z側の端部の少なくとも一部分を囲んでいる。囲繞導体222は、はんだパッドとなっている。具体的には、芯線130のZ方向の周りの外周面及び囲繞導体222のZ方向の周りの内周面は、第1はんだ410を介して電気的に互いに接続されている。+Z側から見て、第1はんだ410の少なくとも一部分は、芯線130のZ方向の周りの外周面及び囲繞導体222のZ方向の周りの内周面の間の隙間に位置している。
【0027】
図3に示すように、+Z側から見て、信号導体224は、X方向に略平行に延在している。テーパ導体223は、信号導体224の-X側の端部に位置している。信号導体224の-X側の端部及びテーパ導体223は、電気的に互いに接続されている。テーパ導体223のY方向の幅は、囲繞導体222から離れるにつれて減少している。つまり、囲繞導体222から信号導体224にかけて導体のY方向の幅が略連続的に減少している。これにより、信号導体224の-X側の端部及び囲繞導体222の+X側の端部がテーパ導体223を介さずに直接互いに接続されている場合と比較して、囲繞導体222及び信号導体224の一方から他方にかけての導体のY方向の幅の変化を緩やかにすることができる。よって、上述した場合と比較して、囲繞導体222の+X側の端部及び信号導体224の-X側の端部の間の断線を抑制することができる。ただし、テーパ導体223は設けられていなくてもよい。すなわち、信号導体224の-X側の端部及び囲繞導体222の+X側の端部は、テーパ導体223を介さずに直接互いに接続されていてもよい。
【0028】
図3に示すように、第1接地導体225及び第2接地導体226は、Y方向において信号導体224の両側に位置している。第1接地導体225は、信号導体224に対して+Y側に位置している。第2接地導体226は、信号導体224に対して-Y側に位置している。よって、信号導体224、第1接地導体225及び第2接地導体226は、XY平面に対して略平行な略同一平面に位置している。第1接地導体225及び第2接地導体226は、X方向に略平行に延在している。信号導体224、第1接地導体225及び第2接地導体226は、コプレーナ線路を構成している。
【0029】
実施形態において、+Z側から見て、第1接地導体225及び第2接地導体226は、信号導体224に関して略対称な一対の接地導体である。ただし、第1接地導体225及び第2接地導体226は、信号導体224に関して非対称であってもよい。以下、特に断りがない限り、第1接地導体225について説明する事項は、第1接地導体225及び第2接地導体226が信号導体224に関して略対称である点を除いて、第2接地導体226にも同様に適用可能である。
【0030】
図3に示すように、第1接地導体225の-Y側の外縁及び信号導体224の+Y側の外縁の間には、第1隙間g1が存在している。実施形態において、第1隙間g1の幅は、第1隙間g1のX方向内の位置によらず略一定となっている。よって、第1隙間g1の幅が第1隙間g1のX方向内の位置に応じて異なる場合と比較して、第1導体パターン220の設計を容易にすることができる。
【0031】
図3に示すように、+Z側から見て、接地導体パターン228の外縁は、信号導体224、第1接地導体225及び第2接地導体226が通過する領域を除いて、X方向に略平行な一対の辺及びY方向に略平行な他の一対の辺を有して丸みを帯びた角を有する略正方形形状となっている。+Z側から見て、接地導体パターン228の4つの角部の各々及び4つの接地用脚150の各々の+Z側の端部は、第2はんだ420を介して電気的に互いに接続されている。
【0032】
図3に示すように、接地導体パターン228は、囲繞開口パターン228bを画定している。+Z側から見て、囲繞開口パターン228bは、囲繞導体222の少なくとも一部分を囲んでいる。+Z側から見て、囲繞開口パターン228bは、接地導体パターン228のXY平面方向の略中央に位置している。+Z側から見て、囲繞開口パターン228bは、略円形状となっている。
【0033】
図2に示すように、第2導体パターン230は、スリットパターン230cを画定している。スリットパターン230cは、X方向に略平行に延在している。スリットパターン230cの-X側の端部及び第2中央開口パターン230aの+X側の端部は、互いに連通している。スリットパターン230cの少なくとも一部分及び信号導体224の少なくとも一部分は、Z方向に互いに重なっている。
【0034】
図2に示すように、誘電体210は、複数のビア212を有している。一部のビア212は、第1接地導体225及び第2接地導体226とZ方向に重なっている。よって、当該一部のビア212を介して、第1接地導体225及び第2接地導体226の組と、第2導体パターン230と、を電気的に互いに接続することができる。他の一部のビア212は、接地導体パターン228とZ方向に重なっている。よって、当該他の一部のビア212を介して、接地導体パターン228及び第2導体パターン230を電気的に互いに接続することができる。
【0035】
図1図3及び図4を参照して、保持基板300について説明する。
【0036】
保持基板300は、例えば、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂基板である。ただし、保持基板300は、PPE樹脂基板と異なる種類の基板であってもよい。例えば、保持基板300は、金属板等の導体板であってもよい。
【0037】
図1に示すように、保持基板300は、中央貫通孔300a及び4つの周辺貫通孔300bを画定している。中央貫通孔300aの少なくとも一部分及び中央挿通孔210aの少なくとも一部分は、Z方向に互いに重なっている。よって、芯線130は、中央貫通孔300aを通じて、中央挿通孔210aに挿通可能になっている。4つの周辺貫通孔300bの各々の少なくとも一部分及び4つの周辺挿通孔210bの各々の少なくとも一部分は、Z方向に互いに重なっている。よって、4つの接地用脚150の各々は、4つの周辺貫通孔300bの各々を通じて、4つの周辺挿通孔210bの各々に挿通可能になっている。
【0038】
保持基板300の+Z側の面側には、導体層302が設けられている。導体層302は、例えば銅箔である。導体層302の少なくとも一部分及び接地導体パターン228の少なくとも一部分は、Z方向に互いに重なっている。+Z側から見て、導体層302は、信号導体224とZ方向に重なる領域を除いて、X方向に略平行な一対の辺及びY方向に略平行な一対の辺を有する略四角形形状となっている。+Z側から見て、導体層302の+X側の辺には、少なくとも部分的に信号導体224とZ方向に重なる切欠き302aが設けられている。この切り欠き302aにより、信号導体224、第1接地導体225及び第2接地導体226で形成されるコプレーナ線路に導体層302が近づかなくすることができる。よって、コプレーナ線路のインピーダンスが低下することが抑制される。
【0039】
導体層302は、各周辺貫通孔300bのZ方向の周りの内周面の少なくとも一部分にも設けられている。各周辺貫通孔300bの+Z側の端部では、導体層302及び接地用脚150が第2はんだ420を介して電気的に互いに接続されている。よって、各接地用脚150、導体層302、第1接地導体225、第2接地導体226、接地導体パターン228及び第2導体パターン230は、略同電位となっている。また、導体層302及び接地用脚150が第2はんだ420を介して電気的に互いに接続された状態において、各接地用脚150は各周辺貫通孔300bによって保持されている。
【0040】
導体層302は、中央貫通孔300aのZ方向の周りの内周面の少なくとも一部分にも設けられている。中央貫通孔300aのXY平面方向の直径は、芯線130のXY平面方向の直径より大きくなっている。よって、中央貫通孔300aのZ方向の周りの内周面及び芯線130のZ方向の周りの外周面の間には隙間が存在している。したがって、芯線130及び中央貫通孔300aは、同軸構造を形成している。よって、中央貫通孔300aのXY平面方向の直径に応じて、芯線130及び中央貫通孔300aの同軸構造の特性インピーダンスを50Ω等の所望の値に設定することができる。実施形態では、図3に示すように、+Z側から見て、中央貫通孔300aのXY平面方向の直径は、囲繞開口パターン228bのXY平面方向の直径未満となっている。ただし、+Z側から見て、中央貫通孔300aのXY平面方向の直径は、囲繞開口パターン228bのXY平面方向の直径以上であってもよい。
【0041】
図4に示す例において、導体層302は、保持基板300の+Z側の面側及び-Z側の面側の双方に設けられている。しかしながら、導体層302は、保持基板300の+Z側の面側及び-Z側の面側の一方のみに設けられていてもよい。
【0042】
次に、図3を参照して、実施形態に係る第1導体パターン220の詳細について説明する。
【0043】
第1接地導体225は、第1延在端部225aを含んでいる。第1延在端部225aは、第1接地導体225の-X側の端部に位置している。第1延在端部225aは、囲繞開口パターン228bの+X側の外縁からテーパ導体223の+Y側の外縁に向けて延在している。第2接地導体226は、第2延在端部226aを含んでいる。第2延在端部226aは、第2接地導体226の-X側の端部に位置している。第2延在端部226aは、囲繞開口パターン228bの+X側の外縁からテーパ導体223の-Y側の外縁に向けて延在している。
【0044】
実施形態において、+Z側から見て、第1延在端部225a及び第2延在端部226aは、信号導体224に関して略対称な一対の延在端部である。ただし、第1延在端部225a及び第2延在端部226aは、信号導体224に関して非対称であってもよい。例えば、第1延在端部225a及び第2延在端部226aの一方は設けられていなくてもよい。以下、特に断りがない限り、第1延在端部225aについて説明する事項は、第1延在端部225a及び第2延在端部226aが信号導体224に関して略対称である点を除いて、第2延在端部226aにも同様に適用可能である。
【0045】
図3に示すように、+Z側から見て、第1延在端部225a及びテーパ導体223の+Y側の部分は、互いに対向している。具体的には、第1延在端部225aの-X側の外縁は、テーパ導体223の+Y側の外縁に沿ってX方向に対して斜めに傾いている。よって、第1延在端部225aの-X側の外縁及びテーパ導体223の+Y側の外縁は、互いに略平行となっている。第1延在端部225aの-X側の外縁及びテーパ導体223の+Y側の外縁の間には、第2隙間g2が存在している。
【0046】
図3に示すように、実施形態では、第1隙間g1だけでなく、第2隙間g2にも、信号を伝送することができる。すなわち、実施形態では、第1延在端部225aが設けられていない場合と比較して、テーパ導体223の+Y側の外縁の周辺まで接地導体が延在することにより、テーパ導体223の+Y側の外縁の近傍の第2隙間g2まで電磁界を延伸して誘導することが可能となる。これにより、実施形態では、第1延在端部225aが設けられていない場合と比較して、囲繞導体222及び信号導体224の間の電気的連続性を保ちやすくすることができる。したがって、実施形態では、第1延在端部225aが設けられていない場合と比較して、同軸コネクタ100と、信号導体224、第1接地導体225及び第2接地導体226を含むコプレーナ線路と、の間の電気的整合を向上させることができる。
【0047】
図3に示すように、実施形態では、第1隙間g1の幅と、第2隙間g2の幅と、が略等しくなっている。電気的整合を向上させるために、第1隙間g1及び第2隙間g2の寸法は、最適化されていてもよい。実施形態では、第1隙間g1の幅及び第2隙間g2の幅が互いに異なる場合と比較して、第1導体パターン220の設計を容易にすることができる。ただし、第2隙間g2の幅は、第1隙間g1の幅より広くてもよいし、又は狭くてもよい。
【0048】
実施形態において、+Z側から見て、第1延在端部225aは、囲繞導体222の+Y側の端部を囲まずに、テーパ導体223の+Y側の外縁と対向している。仮に、+Z側から見て第1延在端部225aが囲繞導体222の+Y側の外縁を囲む場合、テーパ導体223における特性インピーダンスが所望のインピーダンスより低くなりすぎることがある。これに対して、実施形態では、+Z側から見て第1延在端部225aが囲繞導体222の+Y側の外縁を囲む場合と比較して、テーパ導体223における特性インピーダンスを所望のインピーダンスに近づけやすくすることができる。
【0049】
図5は、比較例に係る変換回路10Kの分解斜視図である。比較例に係る変換回路10Kは、以下の点を除いて、実施形態に係る変換回路10と同様である。
【0050】
比較例に係る基板200Kの第1導体パターン220Kは、囲繞導体222K、信号導体224K、第1接地導体225K、第2接地導体226K及び接地導体パターン228Kを含んでいる。比較例に係る囲繞導体222Kは、テーパ導体223Kを含んでいる。比較例に係る第1接地導体225Kは、実施形態に係る第1延在端部225aに相当する端部を有していない。比較例に係る第1接地導体225Kの-X側の端部は、接地導体パターン228Kの+X側の辺に接続されている。比較例に係る第2接地導体226Kは、実施形態に係る第2延在端部226aに相当する端部を有していない。比較例に係る第2接地導体226Kの-X側の端部は、接地導体パターン228Kの+X側の辺に接続されている。
【0051】
比較例に係る保持基板300Kは、PPE樹脂基板である。比較例に係る保持基板300Kには、実施形態に係る導体層302に相当する導体層が設けられていない。よって、比較例に係る中央貫通孔300aKの内周面にも導体層が設けられていない。したがって、比較例では、芯線130及び中央貫通孔300aKは、同軸構造を形成していない。
【0052】
図6は、実施形態に係る変換回路10及び比較例に係る変換回路10KのTDR(TIME Domain Reflectometry)特性を示すグラフである。図6に示すグラフの横軸は、時間(単位:ps)を示している。図6に示すグラフの縦軸は、特性インピーダンス(単位:Ω)を示している。図6に示すグラフにおいて、同軸コネクタ100に電気的に接続される同軸ケーブルのインピーダンスは50Ωとなっている。
【0053】
図6に示すグラフの約5ps~約240psの時間領域は、以下の時間領域に区分される。すなわち、約5ps~約50psは、実施形態に係る本体110又は比較例に係る本体110に相当する時間領域である。約50ps~約85psは、実施形態に係る保持基板300又は比較例に係る保持基板300Kに相当する時間領域である。約85ps~約130psは、実施形態に係るテーパ導体223又は比較例に係るテーパ導体223Kに相当する時間領域である。約130ps~約240psは、実施形態に係る信号導体224又は比較例に係る信号導体224Kに相当する時間領域である。
【0054】
比較例における約50ps~約85psの特性インピーダンスの最小値は、約41Ωとなっている。これに対して、実施形態における約50ps~約85psの特性インピーダンスの最小値は、約46Ωとなっている。すなわち、実施形態における約50ps~約85psの特性インピーダンスの50Ωからの変動は、比較例における約50ps~約85psの特性インピーダンスの50Ωからの変動より小さくなっている。この結果は、芯線130及び中央貫通孔300aの同軸構造によって、特性インピーダンスの50Ωからの変動を抑制することが可能なことを示唆している。
【0055】
比較例における約85ps~約130psの特性インピーダンスの最大値は、約61Ωとなっている。これに対して、実施形態における約85ps~約130psの特性インピーダンスの最大値は、約53Ωとなっている。すなわち、実施形態における約85ps~約130psの特性インピーダンスの50Ωからの変動は、比較例における約85ps~約130psの特性インピーダンスの50Ωからの変動より小さくなっている。この結果は、第1延在端部225a及び第2延在端部226aによって、特性インピーダンスの50Ωからの変動を抑制することが可能なことを示唆している。
【0056】
図7は、実施形態に係る変換回路10及び比較例に係る変換回路10Kの反射損失の周波数特性を示すグラフである。図7に示すグラフの横軸は、周波数(単位:GHz)を示している。図7に示すグラフの縦軸は、反射損失(単位:dB)を示している。
【0057】
比較例では、約6GHz以下の帯域において反射損失が-20dB以下となっている。これに対して、実施形態では、約19GHz以下の帯域において反射損失が-20dB以下となっている。すなわち、実施形態において反射損失が-20dB以下となる帯域は、比較例において反射損失が-20dB以下となる帯域より高帯域側に向けて広くなっている。この結果は、第1延在端部225a及び第2延在端部226aと、芯線130及び中央貫通孔300aの同軸構造と、によって、反射を広帯域に亘って抑制することが可能なことを示唆している。
【0058】
図8は、実施形態に係る変換回路10及び比較例に係る変換回路10Kの挿入損失の周波数特性を示すグラフである。図8に示すグラフの横軸は、周波数(単位:GHz)を示している。図8に示すグラフの縦軸は、挿入損失(単位:dB)を示している。
【0059】
比較例では、約10GHz以下の帯域において挿入損失が-1dB以上となっている。これに対して、実施形態では、約18GHz以下の帯域において挿入損失が-1dB以上となっている。すなわち、実施形態において挿入損失が-1dB以上となる帯域は、比較例において挿入損失が-1dB以上となる帯域より高帯域側に向けて広くなっている。この結果は、第1延在端部225a及び第2延在端部226aと、芯線130及び中央貫通孔300aの同軸構造と、によって、挿入損失を広帯域に亘って抑制することが可能なことを示唆している。
【0060】
図9は、変形例に係る第1導体パターン220Aの平面図である。変形例に係る第1導体パターン220Aは、以下の点を除いて、実施形態に係る第1導体パターン220と同様である。
【0061】
変形例に係る第1導体パターン220Aは、囲繞導体222A、信号導体224A、第1接地導体225A及び第2接地導体226Aを有している。変形例に係る囲繞導体222Aは、テーパ導体223Aを含んでいる。変形例に係る第1導体パターン220Aは、実施形態に係る接地導体パターン228に相当する導体パターンを有していない。
【0062】
変形例に係る第1接地導体225A及び第2接地導体226Aは、それぞれ、第1延在端部225aA及び第2延在端部226aAを含んでいる。変形例においても、第1延在端部225aAの-X側の外縁及びテーパ導体223Aの+Y側の外縁は、互いに対向している。+Z側から見て、第1延在端部225aAの少なくとも一部分及び中央貫通孔300aの少なくとも一部分は、Z方向に互いに重なっている。第2延在端部226aAの-X側の外縁及びテーパ導体223Aの-Y側の外縁は、互いに対向している。+Z側から見て、第2延在端部226aAの少なくとも一部分及び中央貫通孔300aの少なくとも一部分は、Z方向に互いに重なっている。よって、実施形態と同様にして、第1延在端部225aA及び第2延在端部226aAが設けられていない場合と比較して、同軸コネクタ100と、信号導体224A、第1接地導体225A及び第2接地導体226Aを含むコプレーナ線路と、の電気的整合を向上させることができる。
【0063】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0064】
例えば、実施形態では、信号導体224と、信号導体224のY方向の両側に位置する第1接地導体225及び第2接地導体226と、がコプレーナ線路を構成している。しかしながら、コプレーナ線路は、信号導体224と、信号導体224のY方向の両側の一方の接地導体のみと、によっても構成可能である。すなわち、第1接地導体225及び第2接地導体226の一方は設けられていなくてもよい。この場合においても、囲繞導体222の少なくとも一部分と、接地導体の少なくとも一部分と、が互いに対向している。よって、実施形態と同様にして、囲繞導体222及び接地導体が互いに対向していない場合と比較して、同軸コネクタ100と、コプレーナ線路と、の電気的整合を向上させることができる。これは変形例についても同様である。
【0065】
例えば、実施形態では、保持基板300が、中央貫通孔300aを画定する構造体となっている。しかしながら、保持基板300と異なる構造体が、中央貫通孔300aを画定していてもよい。
【0066】
本明細書によれば、以下の態様の変換回路が提供される。
(態様1)
態様1では、変換回路が、芯線を有する同軸コネクタと、前記芯線の少なくとも一部分を囲み前記芯線に電気的に接続された囲繞導体と、前記囲繞導体に電気的に接続された信号導体と、前記信号導体の両側の少なくとも一方に位置する接地導体と、を有する基板と、を備え、前記囲繞導体の少なくとも一部分と、前記接地導体の少なくとも一部分と、が互いに対向している。
【0067】
上述の態様によれば、信号導体及び接地導体の間だけでなく、囲繞導体及び接地導体の間でも、電磁界を誘導して信号を伝送させることができる。よって、上述の態様では、囲繞導体及び接地導体が互いに対向していない場合と比較して、囲繞導体及び信号導体の間の電気的連続性を保ちやすくすることができる。したがって、上述の態様では、囲繞導体及び接地導体が互いに対向していない場合と比較して、同軸コネクタと、信号導体及び接地導体を含むコプレーナ線路と、の間の電気的整合を向上させることができる。
【0068】
(態様2)
態様2では、変換回路が、前記芯線とともに同軸構造を形成する貫通孔を画定する構造体をさらに備えている。
【0069】
「構造体」は、上述の実施形態及び変形例の「保持基板」に相当する。
【0070】
上述の態様によれば、貫通孔の直径に応じて、芯線及び貫通孔の同軸構造の特性インピーダンスを所望の値に設定することができる。
【0071】
(態様3)
態様3では、前記信号導体と前記接地導体との間の隙間の幅と、前記囲繞導体と前記接地導体との間の隙間の幅と、が略等しくなっている。
【0072】
上述の態様によれば、信号導体と接地導体との間の隙間の幅と、囲繞導体と接地導体との間の隙間の幅と、が互いに異なる場合と比較して、囲繞導体、信号導体及び接地導体の設計を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0073】
10,10K 変換回路、100 同軸コネクタ、110 本体、120 フランジ、130 芯線、140 絶縁スペーサ、150 接地用脚、200,200K 基板、210 誘電体、210a 中央挿通孔、210b 周辺挿通孔、212 ビア、220,220A,220K 第1導体パターン、222,222A,222K 囲繞導体、222a 第1中央開口パターン、223,223A,223K テーパ導体、224,224A,224K 信号導体、225,225A,225K 第1接地導体、225a,225aA 第1延在端部、226,226A,226K 第2接地導体、226a,226aA 第2延在端部、228,228K 接地導体パターン、228a 第1周辺開口パターン、228b 囲繞開口パターン、230 第2導体パターン、230a 第2中央開口パターン、230b 第2周辺開口パターン、230c スリットパターン、300,300K 保持基板、300a,300aK 中央貫通孔、300b 周辺貫通孔、302 導体層、302a 切欠き、g1 第1隙間、g2 第2隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9