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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086050
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 59/06 20060101AFI20240620BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20240620BHJP
   F16H 61/16 20060101ALI20240620BHJP
   F16H 61/66 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F16H59/06
F16H61/02
F16H61/16
F16H61/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200922
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 智志
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 高広
(72)【発明者】
【氏名】脇野 崇
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA10
3J552MA26
3J552NA07
3J552NB01
3J552PA18
3J552RA12
3J552RB08
3J552SA07
3J552SA31
3J552SB13
3J552TB13
3J552UA04
3J552VA62W
3J552VD17W
(57)【要約】
【課題】定速走行時における主変速レバーの実際の操作位置と変速状況との不一致による運転者の混乱を抑えること。
【解決手段】実施形態に係る作業車両は、主変速装置と、主変速レバーと、レバー位置検出センサと、制御部とを備える。主変速装置は、機体走行速度を変速する。主変速レバーは、中立位置から増速側、減速側へ操作され、中立位置側へ付勢されている。レバー位置検出センサは、主変速レバーの操作位置を検出する。制御部は、レバー位置検出センサによって検出された主変速レバーの操作位置に対応する変速指示値を主変速装置へ出力する。制御部は、主変速レバーの操作位置に応じて主変速装置へ出力する変速指示値を変化させていき、主変速レバーが中立位置にある場合には、中立位置へ戻る前の操作位置に対応する変速指示値を保持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体走行速度を変速する主変速装置と、
前記主変速装置を作動させるために、中立位置から増速側または減速側へ移動するように操作される主変速レバーと、
前記主変速レバーの操作位置を検出するレバー位置検出センサと、
前記レバー位置検出センサによって検出された前記主変速レバーの前記操作位置に対応する変速指示値を前記主変速装置へ出力する制御部と
を備え、
前記主変速レバーは、
当該主変速レバーが操作された後に前記中立位置へと戻るように前記中立位置側へ付勢されており、
前記制御部は、
前記主変速レバーの前記操作位置に応じて前記主変速装置へ出力する変速指示値を変化させていき、前記主変速レバーが前記中立位置にある場合には、前記中立位置へ戻る前の前記操作位置に対応する変速指示値を保持する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御部は、
前記主変速レバーが前記中立位置よりも前方側へ移動するように操作されると、前記主変速レバーの操作量に応じて機体が増速していくように、前記主変速装置へ出力する変速指示値を変化させ、
前記主変速レバーが前記中立位置よりも後方側へ移動するように操作されると、前記主変速レバーの操作量に応じて機体が減速していくように、前記主変速装置へ出力する変速指示値を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記主変速装置によって変速された機体走行速度を記憶するために操作される変速記憶スイッチ
を備え、
前記制御部は、
前記変速記憶スイッチが操作されたときの前記主変速レバーの前記操作位置を記憶し、
前記主変速レバーが前記中立位置にある場合に、前記変速記憶スイッチが所定時間以上の長押しされると、前記主変速レバーの前記操作位置を記憶し、
前記主変速レバーが前記中立位置にあり、かつ、現在の機体走行速度が、記憶した前記操作位置に対応する変速指示値の機体の機体走行速度と異なる場合に、前記変速記憶スイッチが所定時間未満の短押しされると、記憶した前記操作位置に対応する変速指示値の機体走行速度とする
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
機体の前進、中立および後進を切り替える前後進クラッチ
を備え、
前記制御部は、
前記前後進クラッチの制御が可能であり、
前記レバー位置検出センサによって前記主変速レバーが前記中立位置よりも後方側の最大操作位置へ操作されたことが検出されると、前記前後進クラッチを中立とする
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の作業車両。
【請求項5】
前記前後進クラッチを作動させるために操作される前後進レバー
をさらに備え、
前記制御部は、
前記主変速レバーの操作によって前記前後進クラッチを中立とした後は、前記前後進レバーが一度中立位置へと操作されない限り機体の再発進を禁止する
ことを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両において、無段変速装置を備え、無段階に機体変速する主変速レバーが操作された場合に、主変速レバーの操作速度および操作速度に応じて機体変速時の加速度または減速度を制御する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-298050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラクタなどの農業用の作業車両には、作業しながら走行する場合は一定の速度(定速)で走行することが多いため、予め設定された速度で定速走行が可能なものがある。
【0005】
このような(定速走行が可能な)作業車両の変速制御に上記したような従来技術を適用する場合、定速走行時において、主変速レバーの実際の操作位置(変速位置)と変速状況(制御上の変速位置)とが一致しないことから、運転者が混乱することがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、定速走行時における主変速レバーの実際の操作位置と変速状況との不一致による運転者の混乱を抑えることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る作業車両(1)は、機体走行速度を変速する主変速装置(30)と、主変速装置(30)を作動させるために、中立位置(P)から増速側または減速側へ移動するように操作される主変速レバー(15)と、主変速レバー(15)の操作位置(P)を検出するレバー位置検出センサ(61)と、レバー位置検出センサ(61)によって検出された主変速レバー(15)の操作位置(P)に対応する変速指示値を主変速装置(30)へ出力する制御部(100)とを備え、主変速レバー(15)は、主変速レバー(15)が操作された後に中立位置(P)へと戻るように中立位置(P)側へ付勢されており、制御部(100)は、主変速レバー(15)の操作位置(P)に応じて主変速装置(30)へ出力する変速指示値を変化させていき、主変速レバー(15)が中立位置(P)にある場合には、中立位置(P)へ戻る前の操作位置(P)に対応する変速指示値を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態に係る作業車両によれば、定速走行時における主変速レバーの実際の操作位置と変速状況との不一致による運転者の混乱を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る作業車両を示す概略側面図である。
図2図2は、トランスミッションの構成を示す図(その1)である。
図3図3は、トランスミッションの構成を示す図(その2)である。
図4図4は、定速走行制御の概略説明図である。
図5図5は、主変速レバーの操作位置を示す図である。
図6図6は、主変速レバーの操作量を示す図である。
図7図7は、主変速レバーの操作量および操作時間と増減速の度合いの関係を示す図である。
図8図8は、主変速レバーの操作量と増減速の度合いとの関係の一例を示す図である。
図9図9は、主変速レバーの操作量と増減速の度合いとの関係の他の例(その1)を示す図である。
図10図10は、主変速レバーの操作量と増減速の度合いとの関係の他の例(その2)を示す図である。
図11図11は、主変速レバーの最大減速位置検出の一例を示す図である。
図12図12は、主変速レバーの最大減速位置検出の他の例(その1)を示す図である。
図13図13は、主変速レバーの最大減速位置検出の他の例(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<作業車両の概要>
まず、図1を参照して実施形態に係る作業車両1の概要について説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1を示す概略側面図である。
【0012】
なお、各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0013】
また、作業車両の一例であるトラクタ1は、駆動源であるエンジンEなどの原動機の動力によって路上や圃場を走行可能であり、それぞれ対地作業を行う複数種類の作業機(図示せず)を着脱自在に取り付けて、圃場において所定の作業を行うことができる。
【0014】
また、以下では、作業車両(トラクタ)1を指して「機体」という場合がある。
【0015】
図1に示すように、トラクタ1は、機体前部のボンネット2内にエンジンEを搭載している。エンジンEからの回転動力は、後述する主変速装置30を含む変速装置であるトランスミッション3へ伝達され、トランスミッション3で減速されて走行車輪、すなわち、トラクタ1の前輪4や後輪5へ伝達される。
【0016】
機体後部のキャビン6内には運転席7が設けられる。運転席7の前方には前輪4を操舵するステアリングハンドル8が設けられる。ステアリングハンドル8の前方にはメータパネル9などが設けられる。
【0017】
トラクタ1は、その機体の後方にロータリ作業機などの作業機が連結される。作業機は、トランスミッション3のケーシング(ミッションケース)から後方へ突出しているPTO(Power Take-Off)軸150によって駆動される。
【0018】
また、キャビン6内における運転席7の周りには、ステアリングハンドル8やメータパネル9の他、アクセルペダル10、クラッチペダル11、ブレーキペダル12などの各種操作ペダルや、前後進レバー14、主変速レバー15、副変速レバー(図示せず)などの各種操作レバー、各種操作機器(図示せず)が設けられる。
【0019】
前後進レバー14は、機体の「前進」、「中立」および「後進」を切り替える前後進クラッチを動作させるために操作される操作具である。主変速レバー15は、機体走行速度を変速する主変速装置30を作動させるために操作される操作具である。主変速レバー15は、中立位置P図5参照)から増速側または減速側へ移動するように操作される。
【0020】
なお、トラクタ1は、エンジンEの回転数に応じてトランスミッション3を制御して自動変速を行うことができる。また、トラクタ1は、後述するように、アクセルペダル10や主変速レバー15の操作のみでも主変速の切り替えが可能である。
【0021】
<トランスミッションの構成>
次に、図2および3を参照して実施形態に係る作業車両1の伝動構成について説明する。図2および3は、トランスミッション3の構成を示す図(伝動線図)である。
【0022】
トラクタ1は、油圧ポンプ311および油圧モータ312を備える静油圧式の無段変速装置(以下、HST(Hydro Static Transmission)という)31と、遊星ギヤ(遊星ギヤ機構33)とを組み合わせた油圧機械式の無段変速装置(以下、HMT(Hydro Mechanical Transmission)という)30を備える。
【0023】
主変速装置であるHMT30は、HST31および遊星ギヤ機構33を組み合わせたことで、レバー操作のみやペダル操作のみで機体の発進や機体の加速(増速)、減速を可能とし、また、HST31のみの伝動構成と比べて伝動効率の高い機体走行を可能とする。また、HMT30は、電子制御と組み合わせることで、一定の速度(定速)で機体を走行させる定速走行(クルーズコントロール)などを可能とする。
【0024】
図2および3に示すように、トランスミッション3において、HST31は、可変容量型の油圧ポンプ311と、固定容量型の油圧モータ312とを備える。油圧ポンプ311および油圧モータ312は、HST31のハウジング(図示せず)内に収容される。油圧ポンプ311には、油圧ポンプ311の回転軸心に沿ってポンプ出力軸32が挿通される。ポンプ出力軸32は、エンジンEからの動力を、油圧ポンプ311へ伝達するとともに遊星ギヤ機構33へ伝達し、また、PTO軸150へ伝達する。
【0025】
トランスミッション3は、ミッションケース(図示せず)に収容される。トランスミッション3には、ポンプ出力軸32の他、モータ出力軸34、出力軸35、副変速軸37a、PTO軸150などが、回動自在となって設けられる。また、トランスミッション3には、遊星ギヤ機構33が設けられる。遊星ギヤ機構33は、HST31の後方側(伝動方向の下流側)に配置される。遊星ギヤ機構33は、太陽ギヤ331と、遊星ギヤ332と、リングギヤ333と、キャリア334とを備える。
【0026】
遊星ギヤ機構33の後方側(伝動方向の下流側)には、油圧クラッチ36が設けられる。油圧クラッチ36は、前側クラッチ361と、後側クラッチ362とを備える。油圧クラッチ36は、HSTモードおよびHMTモードを切り替える。油圧クラッチ36は、2つのモード(HSTモードおよびHMTモード)に応じて出力軸35へ動力を伝達し、副変速機構37を介して、副変速軸37aへ動力を伝達する。
【0027】
ポンプ出力軸32には、ポンプ側入力ギヤ38が設けられる。ポンプ側入力ギヤ38と、太陽ギヤ331に対して同心的に遊嵌しているキャリア334のギヤ334aとが噛合して、キャリア334が回転駆動する。キャリア334には、太陽ギヤ331およびリングギヤ333と噛合する複数の遊星ギヤ332が設けられる。このように、遊星ギヤ機構33は、太陽ギヤ331、複数の遊星ギヤ332、リングギヤ333およびキャリア334などによって構成される。
【0028】
遊星ギヤ機構33において、太陽ギヤ331は、出力軸35に遊嵌され、遊星ギヤ332は、太陽ギヤ331およびリングギヤ333と噛合する。遊星ギヤ332は、出力軸35に遊嵌されたキャリア334に回転自在となって支持され、自転しながら太陽ギヤ331に対して公転するように構成される。
【0029】
モータ出力軸34には、モータ側入力ギヤ39が設けられる。モータ側入力ギヤ39は、太陽ギヤ331を回転駆動する。
【0030】
副変速機構37は、副変速クラッチが接続されることで、副変速軸37aへ動力を伝達する。副変速軸37aは、副変速軸37aに設けられたピニオンを介して、後輪デフ40へ動力を伝達可能に構成される。また、副変速軸37aは、前輪増速切替機構41、前輪デフ42を介して、前輪4を駆動可能に構成される。
【0031】
ここで、HSTモードおよびHMTモードにおける各伝動構成について説明する。図3に示すように、HMTモードにおいては、油圧クラッチ36において、前側クラッチ361が接続され、後側クラッチ362が接続解除される。
【0032】
このとき、ポンプ出力軸32の回転動力によって、遊星ギヤ機構33の太陽ギヤ331が回転駆動される。太陽ギヤ331の回転によって、遊星ギヤ332には、キャリア334および太陽ギヤ331の回転が合成されて伝達される。太陽ギヤ331へ伝達された動力は、リングギヤ333へ伝達される。
【0033】
HMTモードにおいては、油圧クラッチ36の前側クラッチ361が接続するように制御されることで、リングギヤ333の回転動力が出力軸35へ伝達される。出力軸35の動力は、副変速機構37を介して、後輪5や前輪4へ伝達される。
【0034】
一方、HSTモードにおいては、油圧クラッチ36において、後側クラッチ362が接続され、前側クラッチ361が接続解除される。HSTモードにおいては、モータ出力軸34の回転動力が出力軸35へ伝達される。出力軸35の動力は、副変速機構37を介して、後輪5や前輪4へ伝達される。
【0035】
なお、HSTモードにおいては、エンジンEの回転動力が後輪5や前輪4へ伝達されるまでの間に遊星ギヤ機構33を経由しない伝動構成となっている。すなわち、エンジンEの動力は、ポンプ出力軸32を介してキャリア334を回転させるが、キャリア334は空転するのみであるため、HST31によって変速されて、モータ出力軸34から出力軸35へ伝達され、副変速機構37を介して、後輪5や前輪4へ伝達される。
【0036】
図3に示すように、トラクタ1(図1参照)は、制御部100を備える。制御部100は、主変速レバー15が操作されると、主変速レバー15の操作位置P(図5参照)に対応する変速指示値を主変速装置であるHMT30へ出力する。このように、HMT30の制御は、制御部100によって行う。
【0037】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)などの処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、さらには、入出力装置が設けられたコンピュータなどである。
【0038】
なお、制御部100は、走行系を制御する走行系ECU(Electronic Control Unit)、エンジンEを制御するエンジン制御部としてのエンジンECU、たとえば、ロータリ耕耘機などの作業機を昇降制御する作業機昇降系ECUとを備える。
【0039】
制御部100には、エンジンEの回転数を制御する電子ガバナ(アクチュエータ)51、エンジンE(エンジンEの出力軸)の回転数を検出する検出センサ52、主変速レバー15の操作位置(変速位置)P(図5参照)を検出するレバー位置検出センサ61が接続される。なお、レバー位置検出センサ61には、たとえば、主変速レバー15の回動角度を検出するポテンショメータなどを用いることができる。
【0040】
また、制御部100には、前後進レバー14の操作位置を検出する前後進レバー位置検出センサ(図示せず)、モータ出力軸34の回転速度を検出する検出センサ53、油圧ポンプ311の斜板制御を行う変速アクチュエータ54、油圧クラッチ36の接続/接続解除を行う電磁弁55,56などが接続される。
【0041】
このように、制御部100は、検出センサ52,53などが電気的に接続されることで、主変速レバー15の操作位置Pや検出センサ52,53の検出値に基づいて、トラクタ1の走行速度(車速)が主変速レバー15の操作位置Pに対応する変速指示値となるよう、変速アクチュエータ54を介して、油圧ポンプ311の可動斜板の傾斜角度をフィードバック制御する。
【0042】
このような制御部100の変速制御では、たとえば、中速~高速域でHMTモードを実行し、低速域でHSTモードを実行するように、変速指示値に応じて2つの走行モードを自動的に切り替える。
【0043】
前後進レバー14は、前後進クラッチを作動させるために操作される。前後進クラッチは、機体の「前進」、「後進」および「中立」を切り替える。制御部100は、前後進クラッチの制御が可能である。
【0044】
制御部100は、前後進レバー位置検出センサによって前後進レバー14の操作位置が「前進」であることを検出した場合には、油圧ポンプ311の可動斜板が前進位置の範囲内となるように、変速アクチュエータを制御する。また、制御部100は、前後進レバー14の操作位置が「後進」であることを検出した場合には、油圧ポンプ311の可動斜板が後進位置の範囲内となるように、変速アクチュエータを制御する。
【0045】
また、制御部100は、前後進レバー14の操作位置が「中立」であることを検出した場合には、油圧ポンプ311の可動斜板を中立位置に保持するように変速アクチュエータを制御して、出力軸35の回転しないように制御する。なお、前後進レバー位置検出センサには、たとえば、前後進レバー14の回動角度を検出するポテンショメータや、「前進」、「後進」、「中立」のそれぞれの位置に対応する接点を有するスイッチなどを用いることができる。
【0046】
また、図3に示すように、制御部100には、主変速レバー15の操作位置Pを記憶するために操作されるレバー位置記憶スイッチ(変速記憶スイッチ)62が接続される。レバー位置記憶スイッチ62は、レバー位置検出センサ61によって検出された主変速レバー15の操作位置Pを記憶する場合に、トラクタ1の運転者などによって操作される。
【0047】
制御部100は、上記したように、主変速レバー15の操作位置Pに対応する変速指示値をHMT30へ出力する。制御部100は、主変速レバー15が操作されると、主変速レバー15の操作位置Pに応じてHMT30へ出力する変速指示値を変化させる。
【0048】
ここで、トラクタ1(図1参照)は、運転者に指定された車速での定速走行(クルーズコントロール)が可能なものである。トラクタ1が定速走行を行う場合には、トラクタ1は、主変速レバー15で指定され、制御部100によって記憶された車速(主変速レバー15の操作位置Pの車速)で走行する。トラクタ1の定速走行は、制御部100によって実行される。
【0049】
<定速走行制御(その1)>
次に、図4を参照して制御部100による定速走行制御について説明する。図4は、定速走行制御の概略説明図である。
【0050】
定速走行制御においては、まず、制御部100(図3参照)は、主変速レバー15(図3参照)が操作されたときの操作位置P(図5参照)を記憶する(ステップS101)。この場合、制御部100は、レバー位置検出センサ61(図3参照)の検出値から主変速レバー15の操作位置Pを取得する。
【0051】
次いで、制御部100は、主変速レバー15の操作位置Pを記憶すると、主変速レバー15の操作位置Pに対応する変速指示値をHMT30(図2参照)へ出力することで、主変速レバー15の操作位置Pの車速で定速走行を開始する(ステップS102)。
【0052】
定速走行を解除する場合には、制御部100は、定速走行を解除するよう操作されると(ステップS103)、定速走行を終了する(ステップS104)、これにより、制御部100は、定速走行制御を終了する。なお、定速走行の解除操作は、たとえば、別途設けられた解除スイッチの操作であってもよいし、主変速レバー15の再度の操作であってもよい。
【0053】
<主変速レバー>
次に、図5~7を参照して主変速レバー15について説明する。図5は、主変速レバー15の操作位置Pを示す図である。図6は、主変速レバー15の操作量を示す図である。図7は、主変速レバー15の操作量および操作時間と増減速の度合いの関係を示す図である。
【0054】
主変速レバー15は、運転者に操作される操作具(操作レバー)であり、たとえば、運転席7(図1参照)の右側方に配置され、前後方向へスライド移動可能に設けられる。なお、主変速レバー15は、たとえば、運転席7の周りのアームレストに設けられる。また、主変速レバー15は、たとえば、レバーガイドに設けられる。
【0055】
図5に示すように、主変速レバー15では、中立位置Pから機体前方へ移動(操作)されると機体が増速し、中立位置Pから機体後方へ移動(操作)されると機体が減速する。このように、主変速レバー15が中立位置Pから機体前方へ移動(操作)されると機体が増速し、中立位置Pから機体後方へ移動(操作)されると機体が減速することで、運転者の感覚にあった操作を行うことができる。なお、主変速レバー15では、中立位置Pから機体前方または後方へ向けて離れるほど、増速または減速の度合いが高くなる。
【0056】
主変速レバー15は、中立位置Pから機体前方となる最増速の操作位置P(最増速位置P)までの間と、中立位置Pから機体後方となる最減速の操作位置P(最減速位置P)までの間とを移動可能である。
【0057】
主変速レバー15は、主変速レバー15が操作された後に、運転者が主変速レバー15から手を放したり力を緩めたりすると、中立位置Pへと戻るように、中立位置P側へ付勢されている。この場合、主変速レバー15は、ばね(たとえば、引張コイルばね)などの付勢部材によって、所定の付勢力Fで中立位置P側へと付勢される。
【0058】
また、主変速レバー15には、中立位置Pから前方側(すなわち、増速側)および後方側(すなわち、減速側)に所定の不感帯領域Aが設定されている。このように、主変速レバー15に不感帯領域Aが設定されることで、運転者の感覚にあった操作を行うことができる。
【0059】
トラクタ1(図1参照)では、主変速レバー15が前方側(増速側)または後方側(減速側)へ操作されると、トラクタ1の増速度または減速度が一定の比率で変化する。たとえば、トラクタ1の増速度または減速度は、比例的(線形的)に変化する。主変速レバー15が中立位置Pから増速側へ操作(傾倒操作)されると、操作量(傾倒量、すなわち、傾きの度合い)に応じて機体が増速し、主変速レバー15が中立位置Pから減速側へ操作(傾倒操作)されると、操作量(傾きの度合い)に応じて機体が減速する。
【0060】
すなわち、トラクタ1では、主変速レバー15を前方側(増速側)へ所定時間以上保持することで、機体を最高速度まで増速させることができる。また、トラクタ1では、主変速レバー15を後方側(減速側)へ所定時間以上保持することで、機体を最低速度まで増速することができる。なお、機体の最低速度とは、クリープ速度である。また、機体の最低速度とは、停車(ゼロ速度)である。
【0061】
図6および7に示すように、たとえば、主変速レバー15が中立位置Pから前方側(増速側)へ傾き50%の傾倒操作された場合、たとえば、5秒で最増速値(主変速段「1」~「10」の場合の「10」)の車速へ増速される。主変速レバー15が中立位置Pから前方側(増速側)へ傾き100%の傾倒操作(最大操作)された場合には、たとえば、1秒で最増速値(主変速段「1」~「10」の場合の「10」)の車速へ増速される。
【0062】
また、減速の場合も増速の場合と同様、主変速レバー15が中立位置Pから後方側(減速側)へ傾き50%の傾倒操作された場合、たとえば、5秒で最増速値(主変速段「-1」~「-10」の場合の「-10」)の車速へ減速される。主変速レバー15が中立位置Pから後方側(減速側)へ傾き100%の傾倒操作(最大操作)された場合には、たとえば、1秒で最増速値(主変速段「-1」~「-10」の場合の「-10」)の車速へ減速される。なお、このような増減速制御は、制御部100によって実行される。
【0063】
<定速走行制御(その2)>
ここで、制御部100による定速走行制御についてさらに説明する。制御部100は、上記した主変速レバー15の操作に基づいて、定速走行制御を行う。
【0064】
制御部100は、主変速レバー15の操作位置Pに応じてHMT30(図3参照)へ出力する変速指示値を変化させていき、トラクタ1の運転者が所望の車速へ到達したと判断して主変速レバー15から手を放すなどして主変速レバー15が中立位置Pへ戻ると、主変速レバー15が中立位置Pへ戻る前の操作位置Pに対応する変速指示値を保持する。すなわち、制御部100は、定速走行制御を行う場合には、主変速レバー15が中立位置Pへ戻る前(直前)の車速でトラクタ1の定速走行を開始する。
【0065】
また、制御部100は、たとえば、主変速レバー15に、HMT30によって変速された車速を記憶するために操作される変速記憶スイッチ(レバー位置記憶スイッチ)62(図3参照)が設けられている場合には、定速走行制御において、主変速レバー15が操作され、レバー位置記憶スイッチ62が操作されたときの主変速レバー15の操作位置Pを記憶する。そして、制御部100は、記憶した操作位置(記憶位置という)Pの車速で定速走行制御を行う。
【0066】
この場合、制御部100は、運転者が主変速レバー15から手を放すなどして主変速レバー15が中立位置Pへ戻ることで主変速レバー15が中立位置Pにある場合に、レバー位置記憶スイッチ62が所定時間(たとえば、2秒程度)以上の長押しされると、主変速レバー15の操作位置Pを記憶する。
【0067】
なお、変速記憶スイッチ62は、主変速レバー15の操作位置Pを記憶するスイッチ(レバー位置記憶スイッチ)であってもよいし、可変容量型の油圧ポンプ311(図3参照)の可動斜板の位置(傾斜角度)を記憶するスイッチであってもよい。なお、油圧モータ312(図3参照)が可変容量型である場合には、油圧モータ312の可動斜板の位置(傾斜角度)を記憶するスイッチであってもよい。
【0068】
また、制御部100は、主変速レバー15中立位置Pにあり、かつ、車速センサなどの検知結果から現在の車速が記憶位置Pの車速と異なると判断している場合にレバー位置記憶スイッチ62が所定時間(たとえば、2秒程度)未満の短押しされると、主変速レバー15の現在の操作位置Pを記憶し、この記憶位置Pの車速へと更新し、更新した車速で定速走行制御を行う。
【0069】
また、制御部100は、上記したように、主変速レバー15が中立位置Pよりも前方側(増速側)へ移動(傾倒)するように操作されると、主変速レバー15の操作量(傾きの度合い)に応じて機体が増速していくようにHMT30へ出力する変速指示値を変化させる。また、制御部100は、主変速レバー15が中立位置Pよりも後方側(減速側)へ移動(傾倒)するように操作されると、主変速レバー15の操作量(傾きの度合い)に応じて機体が減速していくようにHMT30へ出力する変速指示値を変化させる。
【0070】
図8~10は、主変速レバー15の操作量(傾きの度合い)と増減速の度合いとの関係の一例を示す図である。図8に示すように、制御部100は、主変速レバー15が前方側(増速側)または後方側(減速側)へ操作されると、トラクタ1(図1参照)の増速度または減速度を比例的(線形的)に変化させる。これにより、トラクタ1の運転者による快適操作が可能となる。
【0071】
なお、図9に示すように、制御部100は、主変速レバー15の中立位置P図5参照)を基準として、所定の領域内においては、主変速レバー15の操作量(傾きの度合い)に応じてトラクタ1の増速度または減速度を一定の比率で変化させ、所定の領域を超えた領域においては、固定の増速度または減速度としてもよい。これにより、大きな増速度または減速度を求める場合に、所望の車速に素早く設定することができる。
【0072】
また、図10に示すように、制御部100が、主変速レバー15の中立位置Pを基準として、所定の領域内において主変速レバー15の操作量(傾きの度合い)に応じてトラクタ1の増速度または減速度を一定の比率で変化させ、所定の領域を超えた領域において固定の増速度または減速度とする場合、固定の増速度または減速度の領域を複数に分割してもよい。これにより、大きな増速度または減速度を求める場合に、所望の車速に素早く設定することができる。
【0073】
また、制御部100は、定速走行制御において、主変速レバー15が中立位置Pから前方側(増速側)へ操作(傾倒)されることで、保持されている車速から増速を開始する。また、制御部100は、定速走行制御において、主変速レバー15が中立位置Pから後方側(増速側)へ操作(傾倒)されることで、保持されている車速から減速を開始する。
【0074】
ところで、制御部100は、前後進クラッチの制御を可能とする。制御部100は、たとえば、レバー位置検出センサ61(図3参照)によって主変速レバー15が中立位置Pよりも後方側(減速側)の最大操作位置(最減速位置)Pへ操作されたことが検出されると、前後進クラッチを中立とする。これにより、エンジンE(図3参照)などの原動機からの動力の遮断がHMT30(図3参照)だけではむずかしい場合でも、前後進クラッチで動力を遮断することで、機体を確実に停止させることができる。
【0075】
この場合、制御部100は、主変速レバー15の操作によって前後進クラッチを中立とした後、すなわち、主変速レバー15が最減速位置Pへと操作され、主変速レバー15の最減速位置Pの検出に基づいて前後進クラッチを中立とした後は、前後進クラッチを作動させるために操作される前後進レバー14(図3参照)が一度中立位置へと操作されない限りトラクタ1の再発進を禁止する。これにより、前後進クラッチによって動力が遮断された後は、前後進レバー14を一度中立操作させることを機体の再発進の条件とすることで、機体を安全に再発進させることができる。
【0076】
なお、トラクタ1の停車(ゼロ速度)がHMT30だけではむずかしいことから前後進クラッチの接続解除で停車させる場合、主変速レバー15が最減速位置Pにあることを、たとえば、角度センサによって検出する。制御部100は、主変速レバー15の最減速位置Pを予め記憶している。
【0077】
図11~13は、主変速レバー15の最減速位置P検出の一例を示す図である。図11に示すように、制御部100は、たとえば、主変速レバー15が最減速位置Pに所定時間以上ある場合に、主変速レバー15が最減速位置Pにあると判断する。制御部100は、主変速レバー15が最減速位置Pにあることを検出すると、前後進クラッチを接続解除する。
【0078】
また、図12に示すように、たとえば、主変速レバー15に前後進クラッチを接続/接続解除するクラッチスイッチ65がに設けられている場合、制御部100は、主変速レバー15が最減速位置Pでクラッチスイッチが操作(押下)されることで、主変速レバー15が最減速位置Pにあると判断して、前後進クラッチを接続解除してもよい。なお、この場合、制御部100は、主変速レバー15が最減速位置Pにない状態でクラッチスイッチ65が操作されても、前後進クラッチの接続解除を行わない。
【0079】
また、図13に示すように、たとえば、主変速レバー15の根元(回動支点)付近にリミットスイッチ70が設けられている場合、制御部100は、主変速レバー15が最減速位置Pへの到達がリミットスイッチ70によって検出されることで、主変速レバー15が最減速位置Pにあると判断して、前後進クラッチを接続解除してもよい。
【0080】
なお、制御部100は、前後進クラッチの接続を解除した後、前後進セーフティモードを実行する。また、制御部100は、前後進セーフティモードを実行すると同時に、たとえば、メータパネル9(図1参照)などの情報表示装置へ「再度走行する場合は、前後進レバーを一度N(ニュートラル)位置へ戻す」などの指示を表示させる。また、制御部100は、前後進レバー14が中立位置へ戻されると、メータパネル9などの情報表示装置に表示させている指示表示を消す。制御部100は、前後進レバー14が、中立位置へ戻された後、前進位置または後進位置へ再度操作されることで、機体を再発進させる。
【0081】
上記したような実施形態によれば、主変速レバー15が中立位置P側へ付勢されているため、運転者が主変速レバー15から手を放すと、主変速レバー15は中立位置Pへと戻り、変速指示値は保持される。このとき、主変速レバー15が中立位置Pへと戻っても変速指示値が保持されるため、定速走行を開始する場合でも、運転者は機体の増減速を操作する感覚となる。これにより、定速走行時において、主変速レバー15の実際の操作位置(変速位置)Pと変速状況(制御上の変速位置)との不一致による運転者の混乱を抑えることができる。
【0082】
また、主変速レバー15の操作によって機体の増速を操作する感覚で定速走行の開始が可能となるため、主変速レバー15の実際の操作位置(変速位置)Pと変速状況(制御上の変速位置)との不一致による運転者の混乱を抑えることができる。
【0083】
また、レバー位置記憶スイッチ62が長押しされることで所望の車速を記憶し、レバー位置記憶スイッチ62が短押しされることで、記憶した車速を呼び出すことができる。このため、機体の任意の増減速による作業走行と定速走行による作業走行とを容易な操作で切り替えることができ、機体の任意の増減速による作業走行と定速走行による作業走行とを両立することができる。
【0084】
また、エンジンEなどの原動機からの動力の遮断がHMT30だけではむずかしい場合でも、前後進クラッチで動力を遮断することで、機体を確実に停止させることができる。
【0085】
また、前後進クラッチによって動力が遮断された後は、前後進レバー14を一度中立操作させることを機体の再発進の条件とすることで、機体を安全に再発進させることができる。
【0086】
なお、上記した実施形態において、主変速レバー15にパワーモードおよびエコモードを切り替えるために操作されるパワー/エコ切替スイッチを備えてもよい。パワー/エコ切替スイッチは、たとえば、主変速レバー15のグリップ部に設けらえてもよい。パワーモードは、トラクタ1の作業負荷が大きい場合に、車速を一定としたままエンジンE(図2参照)の回転数を上昇させるモードである。エコモードは、トラクタ1の作業負荷が小さい場合に、車速を一定としたままエンジンEの回転数を下降させるモードである。パワーモードおよびエコモードは、制御部100によって実行される。
【0087】
また、上記した実施形態において、図9および10に示すような固定の加減速度とする領域へ入る手前でモニタ表示、ランプ表示、音、振動などによってトラクタ1の運転者へ報知する構成を備えてもよい。
【0088】
また、制御部100が記憶する主変速レバー15の操作位置(記憶位置)Pや油圧ポンプ311の可動斜板の傾斜角度の表示や設定を、メータパネル9(図1参照)で行ってもよいし、メータパネル9以外のモニタ(たとえば、運転席7(図1参照)に着座した運転者の前方における斜め上方に設けられるサブモニタ)で行ってもよい。
【0089】
また、上記した実施形態において、制御部100が、定速走行の車速(クルーズ速度)を予め記憶する構成をさらに備えてもよい。この場合、制御部100が予め記憶している定速走行の車速(クルーズ速度)の表示や設定を、メータパネル9やメータパネル9以外のモニタ(サブモニタ)で行えるように構成されてもよい。制御部100は、定速走行の車速(クルーズ速度)を予め複数(たとえば、2つ)記憶してもよい。この場合、それぞれの車速(クルーズ速度)に対応するスイッチが操作(押下)されることで、予め設定している車速(クルーズ速度)で自動的に増減速される。
【0090】
また、上記した実施形態においては、パワーモードおよびエコモードの表示や設定を、メータパネル9で行ってもよいし、メータパネル9以外のモニタ(サブモニタ)で行ってもよい。
【0091】
また、この場合には、パワーモード時のエンジンEの最高回転数、エコモード時のエンジンEの最低回転数の表示や設定を、メータパネル9またはメータパネル9以外のモニタ(サブモニタ)で行ってもよい。
【0092】
上述してきた実施形態により、以下の作業車両1が実現される。
【0093】
(1)機体走行速度を変速する主変速装置30と、主変速装置30を作動させるために、中立位置Pから増速側または減速側へ移動するように操作される主変速レバー15と、主変速レバー15の操作位置Pを検出するレバー位置検出センサ61と、レバー位置検出センサ61によって検出された主変速レバー15の操作位置Pに対応する変速指示値を主変速装置30へ出力する制御部100とを備え、主変速レバー15は、主変速レバー15が操作された後に中立位置Pへと戻るように中立位置P側へ付勢されており、制御部100は、主変速レバー15の操作位置Pに応じて主変速装置30へ出力する変速指示値を変化させていき、主変速レバー15が中立位置Pにある場合には、中立位置Pへ戻る前の操作位置Pに対応する変速指示値を保持する、作業車両1。
【0094】
このような作業車両1によれば、主変速レバー15が中立位置P側へ付勢されているため、運転者が主変速レバー15から手を放すと、主変速レバー15は中立位置Pへと戻り、変速指示値は保持される。このとき、主変速レバー15が中立位置Pへと戻っても変速指示値が保持されるため、定速走行を開始する場合でも、運転者は機体の増減速を操作する感覚となる。これにより、定速走行時において、主変速レバー15の実際の操作位置(変速位置)Pと変速状況(制御上の変速位置)との不一致による運転者の混乱を抑えることができる。
【0095】
(2)上記(1)において、制御部100は、主変速レバー15が中立位置Pよりも前方側へ移動するように操作されると、主変速レバー15の操作量に応じて機体が増速していくように、主変速装置30へ出力する変速指示値を変化させ、主変速レバー15が中立位置Pよりも後方側へ移動するように操作されると、主変速レバー15の操作量に応じて機体が減速していくように、主変速装置30へ出力する変速指示値を変化させる、作業車両1。
【0096】
このような作業車両1によれば、主変速レバー15の操作によって機体の増速を操作する感覚で定速走行の開始が可能となるため、主変速レバー15の実際の操作位置(変速位置)Pと変速状況(制御上の変速位置)との不一致による運転者の混乱を抑えることができる。
【0097】
(3)上記(2)において、主変速装置30によって変速された機体走行速度を記憶するために操作される変速記憶スイッチ62を備え、制御部100は、変速記憶スイッチ62が操作されたときの主変速レバー15の操作位置Pを記憶し、主変速レバー15が中立位置Pにある場合に、変速記憶スイッチ62が所定時間以上の長押しされると、主変速レバー15の操作位置Pを記憶し、主変速レバー15が中立位置Pにあり、かつ、現在の機体走行速度が、記憶した操作位置Pに対応する変速指示値の機体の機体走行速度と異なる場合に、変速記憶スイッチ62が所定時間未満の短押しされると、記憶した操作位置Pに対応する変速指示値の機体走行速度とする、作業車両1。
【0098】
このような作業車両1によれば、変速記憶スイッチ62が長押しされることで所望の機体走行速度を記憶し、変速記憶スイッチ62が短押しされることで、記憶した機体走行速度を呼び出すことができる。このため、機体の任意の増減速による作業走行と定速走行による作業走行とを容易な操作で切り替えることができ、機体の任意の増減速による作業走行と定速走行による作業走行とを両立することができる。
【0099】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、機体の前進、中立および後進を切り替える前後進クラッチを備え、制御部100は、前後進クラッチの制御が可能であり、レバー位置検出センサ61によって主変速レバー15が中立位置Pよりも後方側の最大操作位置へ操作されたことが検出されると、前後進クラッチを中立とする、作業車両1。
【0100】
このような作業車両1によれば、エンジンEなどの原動機からの動力の遮断が主変速装置30だけではむずかしい場合でも、前後進クラッチで動力を遮断することで、機体を確実に停止させることができる。
【0101】
(5)上記(4)において、前後進クラッチを作動させるために操作される前後進レバー14をさらに備え、制御部100は、主変速レバー15の操作によって前後進クラッチを中立とした後は、前後進レバー14が一度中立位置へと操作されない限り機体の再発進を禁止する、作業車両1。
【0102】
このような作業車両1によれば、前後進クラッチによって動力が遮断された後は、前後進レバー14を一度中立操作させることを機体の再発進の条件とすることで、機体を安全に再発進させることができる。
【0103】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 作業車両(トラクタ)
14 前後進レバー
15 主変速レバー
30 主変速装置(HMT)
61 レバー位置検出センサ
62 変速記憶スイッチ(レバー位置記憶スイッチ)
100 制御部
P 操作位置
中立位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13