(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086051
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ロータリダンパの製造方法およびロータリダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/14 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
F16F9/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200927
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一正
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA42
3J069AA44
3J069DD47
3J069EE01
(57)【要約】
【課題】ハウジングに対して蓋体を精度良く組み付けることができるロータリダンパの製造方法およびロータリダンパを提供する。
【解決手段】ロータリダンパの製造方法において、作業者は、円筒状のハウジング本体102、円形板状の蓋体110および軸状のロータ120をそれぞれ用意する。ハウジング本体102は、内周部に蓋体110の外周部に形成された蓋体側嵌合部111に嵌合するハウジング側嵌合部103が形成されているとともに、蓋体110よりも塑性変形し易い材料で構成されている。蓋体110の蓋体側嵌合部111には、溝状の凹状部112a,112bが形成されている。作業者は、蓋体側嵌合部111とハウジング側嵌合部103とを嵌合させた状態で、ハウジング側嵌合部103に圧力を加えることでハウジング側嵌合部103の一部を凹状部112a,112b内に入り込こませて入込部104a,104bを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に壁状に形成されて前記流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジング本体と、
軸体の外周部に前記内室内を仕切りつつ前記流動体を前記固定ベーン側に押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、
前記ハウジング本体に設けられて前記内室を液密的に閉塞する蓋体とを備え、
前記蓋体は、
前記ハウジング本体の内周部または外周部に嵌合する環状の蓋体側嵌合部を有しており、
前記ハウジング本体は、
前記蓋体側嵌合部に嵌合する環状のハウジング側嵌合部を有しており、
前記蓋体側嵌合部および前記ハウジング側嵌合部のうちの一方の嵌合部は、他方の嵌合部に比べて塑性変形し難い材料で構成されるとともに同他方の嵌合部に対して離隔する側に凹む凹状部が周方向に沿って連続的または断続的に形成されているロータリダンパの製造方法であって、
前記蓋体側嵌合部と前記ハウジング側嵌合部とを互いに嵌合させた状態で、前記一方の嵌合部に比べて塑性変形し易い前記他方の嵌合部の全周に亘って圧力を加えることで同他方の嵌合部の一部を径方向に塑性変形させて前記凹状部内に入り込ませた入込部を形成する入込部形成工程を含むことを特徴とするロータリダンパの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載したロータリダンパの製造方法において、
前記入込部形成工程は、
前記蓋体側嵌合部を前記ハウジング側嵌合部の内周部に嵌合させた状態で前記ハウジング側嵌合部に周方向に沿って圧力を加えて前記入込部を形成することを特徴とするロータリダンパの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載したロータリダンパの製造方法において、
前記入込部形成工程は、
前記ハウジング側嵌合部に対して前記ハウジング本体の軸線方向から圧力を加えて前記入込部を形成することを特徴とするロータリダンパの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載したロータリダンパの製造方法において、
前記入込部は、前記ハウジング側嵌合部に形成されており、
前記ハウジング側嵌合部は、
前記ハウジング本体の側面から径方向外側にフランジ状に張り出して形成されており、
前記入込部形成工程は、
前記ハウジング側嵌合部を前記ハウジング本体の軸線方向から挟んだ状態で圧力を加えて前記入込部を形成することを特徴とするロータリダンパの製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載したロータリダンパの製造方法において、
前記凹状部は、
前記ハウジング本体の軸線方向に2つ以上形成されており、
前記入込部は、
前記2つ以上の各凹状部にそれぞれ形成されていることを特徴とするロータリダンパの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載したロータリダンパの製造方法において、
前記2つ以上の凹状部は、
互いに異なる少なくとも2つの深さで形成されていることを特徴とするロータリダンパの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載したロータリダンパの製造方法において、
前記凹状部は、
開口部側よりも奥側の断面積が小さく形成されていることを特徴とするロータリダンパの製造方法。
【請求項8】
流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に壁状に形成されて前記流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジング本体と、
軸体の外周部に前記内室内を仕切りつつ前記流動体を前記固定ベーン側に押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、
前記ハウジング本体に設けられて前記内室を液密的に閉塞する蓋体とを備えたロータリダンパにおいて、
前記蓋体は、
前記ハウジング本体の内周部または外周部に嵌合する環状の蓋体側嵌合部を有しており、
前記ハウジング本体は、
前記蓋体側嵌合部に嵌合する環状のハウジング側嵌合部を有しており、
前記蓋体側嵌合部および前記ハウジング側嵌合部のうちの一方の嵌合部は、
他方の嵌合部に比べて塑性変形し難い材料で構成されるとともに同他方の嵌合部に対して離隔する側に凹む凹状部が周方向に沿って連続的または断続的に形成されており、
前記他方の嵌合部は、
同他方の嵌合部の一部が変形した状態で前記凹状部内に入り込む入込部が形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項9】
請求項8に記載したロータリダンパにおいて、
前記凹状部は、
開口部側よりも奥側の断面積が小さく形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項10】
請求項8に記載したロータリダンパにおいて、
前記凹状部は、
前記ハウジング本体の軸線方向に2つ以上形成されており、
前記入込部は、
前記2つ以上の各凹状部にそれぞれ形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項11】
請求項10に記載したロータリダンパにおいて、
前記2つ以上の凹状部は、
互いに異なる少なくとも2つの深さで形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項12】
請求項8に記載したロータリダンパにおいて、
前記入込部は、前記ハウジング側嵌合部に形成されており、
前記ハウジング側嵌合部は、
前記ハウジング本体の側面から径方向外側にフランジ状に張り出して形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪の自走式車両における回動機構において運動エネルギの減衰装置として用いられるロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、四輪の自走式車両においては、回動機構において運動エネルギの減衰装置としてロータリダンパが用いられている。例えば、下記特許文献1には、往復回動するロータをオイルとともに収容する円筒状のハウジングにおける一方の開口部が平板リング状のプラグ(以下、「蓋体」という)によって液密的に閉塞されたロータリダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたロータリダンパにおいては、ハウジングの一方の開口部の周縁部が内側に折り曲げることで蓋体がハウジングに組み付けられているため、液密性の確保およびロータに対する同芯度を確保するために蓋体の位置ズレを防ぎつつ周縁部を精度良く均等に折り曲げるカシメ加工が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、ハウジングに対して蓋体を精度良く組み付けることができるロータリダンパの製造方法およびロータリダンパを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に壁状に形成されて流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジング本体と、軸体の外周部に内室内を仕切りつつ流動体を固定ベーン側に押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、ハウジング本体に設けられて内室を液密的に閉塞する蓋体とを備え、蓋体は、ハウジング本体の内周部または外周部に嵌合する環状の蓋体側嵌合部を有しており、ハウジング本体は、蓋体側嵌合部に嵌合する環状のハウジング側嵌合部を有しており、蓋体側嵌合部およびハウジング側嵌合部のうちの一方の嵌合部は、他方の嵌合部に比べて塑性変形し難い材料で構成されるとともに同他方の嵌合部に対して離隔する側に凹む凹状部が周方向に沿って連続的または断続的に形成されているロータリダンパの製造方法であって、蓋体側嵌合部とハウジング側嵌合部とを互いに嵌合させた状態で、前記一方の嵌合部に比べて塑性変形し易い前記他方の嵌合部の全周に亘って圧力を加えることで同他方の嵌合部の一部を径方向に塑性変形させて凹状部内に入り込ませた入込部を形成する入込部形成工程を含むことにある。
【0007】
これによれば、ロータリダンパの製造方法は、蓋体における蓋体側嵌合部とハウジング本体におけるハウジング側嵌合部とを互いに嵌合させた状態で、一方の嵌合部に比べて塑性変形し易い他方の嵌合部の全周に亘って径方向に圧力を加えることで同他方の嵌合部の一部を凹状部内に入り込ませた入込部を形成しているため、ハウジング本体に対して蓋体の位置ズレを抑制して蓋体を精度良く組み付けることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパの製造方法において、入込部形成工程は、蓋体側嵌合部をハウジング側嵌合部の内周部に嵌合させた状態でハウジング側嵌合部に周方向に沿って圧力を加えて入込部を形成することにある。
【0009】
これによれば、ロータリダンパの製造方法は、蓋体側嵌合部をハウジング側嵌合部の内周部に嵌合させた状態でハウジング側嵌合部に周方向に沿って圧力を加えて入込部を形成するため、蓋体の大型化を防止してロータリダンパをコンパクトに構成することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパの製造方法において、入込部形成工程は、ハウジング側嵌合部に対してハウジング本体の軸線方向から圧力を加えて入込部を形成することにある。
【0011】
これによれば、ロータリダンパの製造方法は、ハウジング側嵌合部に対してハウジングの軸線方向から圧力を加えて入込部を形成するため、ハウジング側嵌合部の肉厚が薄くなることを防止しながら蓋体を取り付けることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパの製造方法において、入込部は、ハウジング側嵌合部に形成されており、ハウジング側嵌合部は、ハウジング本体の側面から径方向外側にフランジ状に張り出して形成されており、入込部形成工程は、ハウジング側嵌合部をハウジング本体の軸線方向から挟んだ状態で圧力を加えて入込部を形成することにある。
【0013】
これによれば、ロータリダンパの製造方法は、ハウジングの側面から径方向外側にフランジ状に張り出したハウジング側嵌合部をハウジングの軸線方向から挟んだ状態で圧力を加えて入込部を形成するため、ハウジング側嵌合部を効率的に凹状部に進入させて入込部を形成することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパの製造方法において、凹状部は、ハウジング本体の軸線方向に2つ以上形成されており、入込部は、前記2つ以上の各凹状部にそれぞれ形成されていることにある。
【0015】
これによれば、ロータリダンパの製造方法は、入込部が2つ以上の各凹状部にそれぞれ形成されているため、ハウジングと蓋体とをより強固に連結することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパの製造方法において、前記2つ以上の凹状部は、互いに異なる少なくとも2つの深さで形成されていることにある。
【0017】
これによれば、ロータリダンパの製造方法は、2つ以上の凹状部が互いに異なる少なくとも2つの深さで形成されているため、ハウジングと蓋体との結合力を向上させつつ入込部の形成に必要な圧力を抑えて加工負担を軽減することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパの製造方法において、凹状部は、開口部側よりも奥側の断面積が小さく形成されていることにある。
【0019】
これによれば、ロータリダンパの製造方法は、凹状部は、開口部側よりも奥側の断面積が小さく形成されているため、入込部の形成に必要な圧力を抑えて加工負担を軽減することができる。
【0020】
また、本発明は、ロータリダンパの製造方法の発明として実施できるばかりでなく、ロータリダンパの発明としても実施できるものである。
【0021】
具体的には、ロータリダンパは、流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に壁状に形成されて流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジング本体と、軸体の外周部に内室内を仕切りつつ流動体を固定ベーン側に押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、ハウジング本体に設けられて内室を液密的に閉塞する蓋体とを備えたロータリダンパにおいて、蓋体は、ハウジング本体の内周部または外周部に嵌合する環状の蓋体側嵌合部を有しており、ハウジング本体は、蓋体側嵌合部に嵌合する環状のハウジング側嵌合部を有しており、蓋体側嵌合部およびハウジング側嵌合部のうちの一方の嵌合部は、他方の嵌合部に比べて塑性変形し難い材料で構成されるとともに同他方の嵌合部に対して離隔する側に凹む凹状部が周方向に沿って連続的または断続的に形成されており、他方の嵌合部は、同他方の嵌合部の一部が変形した状態で凹状部内に入り込む入込部が形成されていることにある。これによれば、ロータリダンパは、上記ロータリダンパの製造方法の発明と同様の作用効果を発揮することができる。
【0022】
この場合、前記ロータリダンパにおいて、凹状部は、開口部側よりも奥側の断面積が小さく形成されているとよい。
【0023】
また、これらの場合、前記ロータリダンパにおいて、凹状部は、ハウジング本体の軸線方向に2つ以上形成されており、入込部は、前記2つ以上の各凹状部にそれぞれ形成されているとよい。
【0024】
また、これらの場合、前記ロータリダンパにおいて、前記2つ以上の凹状部は、互いに異なる少なくとも2つの深さで形成されているとよい。
【0025】
また、これらの場合、前記ロータリダンパにおいて、入込部は、ハウジング側嵌合部に形成されており、ハウジング側嵌合部は、ハウジング本体の側面から径方向外側にフランジ状に張り出して形成されているとよい。これらによっても、ロータリダンパは、上記ロータリダンパの製造方法の発明と同様の作用効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るロータリダンパの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すロータリダンパを構成する部品を示す部品展開図である。
【
図3】
図1に示すロータリダンパの内部構造の概略を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す破線円3内の構成を拡大して示す部分拡大図である。
【
図5】
図1に示すロータリダンパの内部に形成された内室の構造を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図1に示すロータリダンパを構成する蓋体の外観構成を示す側面図である。
【
図7】本発明に係るロータリダンパの製造方法に用いる蓋体取付具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図7に示す蓋体取付具にハウジング本体、蓋体およびロータを配置して蓋体押えおよびハウジングパンチで押圧する作動状態を示した断面図である。
【
図9】
図7に示す蓋体取付具における蓋体押えおよびハウジングパンチがそれぞれ上昇した状態を
図8に示す破線円8内で示す部分拡大図である。
【
図10】
図7に示す蓋体取付具における蓋体押えが下降して蓋体を押さえるとともにハウジングパンチが上昇した状態を
図8に示す破線円8内で示す部分拡大図である。
【
図11】
図7に示す蓋体取付具における蓋体押えが蓋体を押さえた状態でハウジングパンチが下降してハウジング側嵌合部を殴打した瞬間の状態を
図8に示す破線円8内で示す部分拡大図である。
【
図12】
図7に示す蓋体取付具における蓋体押えが蓋体を押さえた状態でハウジングパンチがハウジング側嵌合部内に食い込んだ状態を
図8に示す破線円8内で示す部分拡大図である。
【
図13】本発明に係るロータリダンパの製造方法に用いる他の蓋体取付具の構成を模式的に示す平面図である。
【
図14】本発明の変形例に係るロータリダンパの内部構造の概略を示す断面図である。
【
図15】本発明の他の変形例に係るロータリダンパの内部構造の概略を
図3に示す破線円3内で示す断面の部分拡大図である。
【
図16】本発明の他の変形例に係るロータリダンパの内部構造の概略を
図3に示す破線円3内で示す断面の部分拡大図である。
【
図17】本発明の他の変形例に係るロータリダンパの内部構造の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るロータリダンパの製造方法およびロータリダンパの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、ロータリダンパ100の全体構成の概略的に示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示すロータリダンパ100を構成する部品を示す部品展開図である。また、
図3は、
図1に示すロータリダンパ100の内部構造の概略を示す断面図である。また、
図4は、
図3に示す破線円3内の構成を拡大して示す部分拡大図である。
【0028】
なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している部分がある。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0029】
このロータリダンパ100は、四輪の自走式車両(自動車またはカートなど)のリクライニングシート、アームレスト、オットマン、グローブボックス、テールゲートまたはバックドアなど2つの部品が相対的に傾倒する機構における一方の部品に取り付けられて他方の部品の傾倒時に運動エネルギを減衰させる減衰装置である。
【0030】
(ロータリダンパ100の構成)
ロータリダンパ100は、ハウジング101を備えている。ハウジング101は、ロータ120を回転自在に保持しつつロータリダンパ100の筐体を構成する部品であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材によって構成されている。具体的には、ハウジング101は、主として、ハウジング本体102と蓋体110とで構成されている。
【0031】
ハウジング本体102は、後述するロータ120の可動ベーン124a,124bおよび流動体130をそれぞれ収容するとともにロータ120の軸体121の一方の端部を回転自在に支持する部品であり、筒体における一方端が大きく開口するとともに他方端が小さく開口する有底円筒状に形成されている。より具体的には、ハウジング本体102は、前記筒体における一方端で大きく開口する開口部102a側から順番にハウジング側嵌合部103、内室105およびロータ支持部107がそれぞれ繋がった状態で形成されている。
【0032】
ハウジング側嵌合部103は、蓋体110が取り付けられてこの蓋体110を保持する部分であり、平面視で円環状に形成されている。より具体的には、ハウジング側嵌合部103は、ハウジング本体102における内室105が形成されている部分の外周部に対してハウジング本体102の径方向外側にフランジ状に張り出して形成されている。
【0033】
この場合、ハウジング側嵌合部103は、蓋体110が取り付けられる部分に対応する部分がフランジ状に張り出して形成されるが、本実施形態においては、蓋体110の厚さよりも厚い厚さで形成されている。なお、ハウジング側嵌合部103は、蓋体110の厚さと同じ厚さまたは蓋体110の厚さよりも薄い厚さで形成することもできる。このハウジング側嵌合部103は、ハウジング側嵌合部第1端部103a、ハウジング側嵌合部第2端部103c、ハウジング側嵌合部外周部103dおよびハウジング側嵌合部内周部103eをそれぞれ備えて構成されている。
【0034】
ハウジング側嵌合部第1端部103aは、ハウジング側嵌合部103の軸線方向における両端部のうちの一方の端部を構成するとともにハウジング本体102における前記一方の端部を構成する部分であり、平面視で円環状に形成されている。このハウジング側嵌合部第1端部103aには、押し込み部103bが形成されている。
【0035】
押し込み部103bは、後述するハウジングパンチ220の押圧部221が押し込まれることで凹状に塑性変形した部分であり、押圧部221の凸形状を反転させた凹状で円環状に形成されている。この押し込み部103bは、開口部102aに隣接した位置に加工硬化して形成されることで蓋体110をより強固に保持している。
【0036】
ハウジング側嵌合部第2端部103cは、ハウジング側嵌合部103の軸線方向における両端部のうちの他方の端部を構成する部分であり、底面視で円環状に形成されている。このハウジング側嵌合部第2端部103cは、後述する蓋体取付具200におけるハウジング側嵌合部受け202によって受けられてハウジング側嵌合部103の一部が後述する凹状部112a,112b内に流動し易くしている。したがって、ハウジング側嵌合部第2端部103cは、凹状部112a,112bに対してハウジング側嵌合部第1端部103a側とは反対側に形成されるが、凹状部112a,112bの近辺に形成されているとよい。
【0037】
ハウジング側嵌合部外周部103dは、ハウジング側嵌合部103の外周部を構成するとともにハウジング本体102における外周部の一部を構成する部分であり、平面視で円形に形成されている。このハウジング側嵌合部外周部103dは、ハウジング側嵌合部第1端部103a側からハウジング側嵌合部第2端部103c側に向かって外径が連続的に縮小するテーパ状に形成されている。これにより、ハウジング側嵌合部103は、ハウジング側嵌合部第1端部103a側からハウジング側嵌合部第2端部103c側に向かって径方向の厚さが薄くなるように形成されている。
【0038】
ハウジング側嵌合部内周部103eは、ハウジング側嵌合部103の内周部を構成するとともに蓋体110を保持する部分であり、平面視で円形に形成されている。このハウジング側嵌合部内周部103eは、蓋体110の外周部が嵌合する内径に形成されている。この場合、ハウジング側嵌合部内周部103eは、ハウジング側嵌合部第1端部103a側からハウジング側嵌合部第2端部103c側に向かって内径が一定のストレート孔で形成されている。このハウジング側嵌合部内周部103eには、入込部104a,104bがそれぞれ形成されている。
【0039】
入込部104a,104bは、蓋体110における凹状部112a,112b内にそれぞれ塑性変形した状態で入り込んだ部分である。したがって、入込部104a,104bは、蓋体110における蓋体側嵌合部111よりも塑性変形し易い材料で構成されている。本実施形態においては、入込部104a,104bは、ハウジング本体102全体がアルミニウム材で構成されている。この入込部104a,104bは、ハウジング側嵌合部内周部103eの表面からハウジング側嵌合部103の径方向内側に凸状に張り出した円環状に形成されている。
【0040】
内室105は、ロータ120の可動ベーン124a,124bとともに流動体130を液密的に収容する空間であり、ハウジング本体102内に中央部に配置されたロータ120を介して互いに対向する2つの半円筒の空間で構成されている。これらの内室105内には、固定ベーン106a,106bがハウジング本体102と一体的にそれぞれ形成されている。
【0041】
固定ベーン106a,106bは、
図5に示すように、ロータ120とともに内室105内を仕切って個室R1~個室R4を形成する壁状の部分であり、ハウジング本体102の軸線方向に沿って内室内周面105aから内側に向かって凸状に張り出して形成されている。この場合、固定ベーン106a,106bは、径方向の先端部とロータ120の軸体121の外周面との間、および固定ベーン106a,106bの軸方向の両端部のうちの一方(
図3において上側)の端面と蓋体110との間にそれぞれ僅かな隙間を介して摺動するように形成されている。これらの各隙間によって、固定ベーン106a,106bは、軸体121の回動時に流動体130が前記各隙間を介して僅かに流通するように構成されている。また、これら2つの固定ベーン106a,106bは、内室内周面105aにおける周方向上での互いに対向する位置に設けられている。
【0042】
ロータ支持部107は、ロータ120の軸体121における一方の端部を回転自在な状態で支持する円筒状の部分である。このロータ支持部107は、Oリングからなるシール材を介してロータ120の軸体121を液密的に支持している。また、ハウジング本体102の外周部には、ロータリダンパ100の取り付け対象となる2つの部品(図示せず)のうちの一方の部品に取り付けるための取付片108が径方向外側に張り出した状態で形成されている。
【0043】
蓋体110は、
図6に示すように、ハウジング本体102に形成されている内室105を液密的に塞ぐとともにロータ120を回転自在な状態で支持するための部品であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材を平板リング状に形成して構成されている。この蓋体110は、外周部に蓋体側嵌合部111が形成されているとともに内周部にロータ支持部113がそれぞれ形成されている。
【0044】
蓋体側嵌合部111は、前記したハウジング側嵌合部103が嵌合する部分であり、ハウジング側嵌合部103に嵌合する円環状に形成されている。この蓋体側嵌合部111は、ハウジング側嵌合部103よりも塑性変形し難い材料で構成されている。本実施形態においては、蓋体側嵌合部111は、蓋体110全体が鉄材(炭素鋼)で構成されている。この蓋体側嵌合部111の表面には、凹状部112a,112bが形成されている。
【0045】
凹状部112a,112bは、ハウジング側嵌合部内周部103eの一部を進入させて入込部104a,104bを形成することで蓋体110とハウジング本体102とを連結する部分であり、蓋体側嵌合部111の表面に周方向に沿って連続的に凹状に凹む溝状に形成されている。すなわち、凹状部112a,112bは、蓋体110の外周部に円環状に形成されている。
【0046】
この場合、凹状部112aと凹状部112bとは蓋体110の軸線方向に互いに隣接する位置に形成されている。また、凹状部112a,112bは、断面形状が開口部から奥側に向かって断面積が小さくなる三角形状に形成されている。本実施形態においては、凹状部112a,112bは、溝幅が約1mm、深さが約0.5mmの断面形状が三角形状にそれぞれ形成されている。
【0047】
ロータ支持部113は、ロータ120の軸体121を回転自在に支持する部分であり、蓋体110の中心部を貫通する貫通孔で構成されている。この蓋体110は、ハウジング本体102の内室105の図示上端面に設けられたOリングからなるシール材114を介して内室105を液密的に塞いでいる。
【0048】
ロータ120は、ハウジング101の内室105内に配置されて内室105内を4つの空間である個室R1、個室R2、個室R3および個室R4にそれぞれ仕切るとともに、この内室105内で回動することによりこれらの個室R1、個室R2、個室R3および個室R4の各個室の容積をそれぞれ増減させるための部品であり、主として、軸体121と可動ベーン124a,124bとで構成されている。
【0049】
軸体121は、可動ベーン124a,124bを支持する有底円筒状の部分であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材によって構成されている。この場合、軸体121の外周部分における両端部は、ハウジング本体102のロータ支持部107および蓋体110のロータ支持部113にそれぞれ軸受け122a,122bをそれぞれ介して摺動自在に嵌合して支持されている。また、軸体121の外周部分における両端部は、軸受け122a,122bの各内側にOリングからなるシール材123a,123bがそれぞれ設けられており、内室105を液密的に塞いでいる。
【0050】
また、軸体121における蓋体110側の端面には有底の連結部121aが形成されている。連結部121aは、ロータリダンパ100が取り付けられる2つの部品間のうちの他方の部品に接続するための部分である。本実施形態においては、連結部121aは、断面形状が六角形状に形成されている。
【0051】
可動ベーン124a,124bは、内室105内を複数の空間に仕切りつつこれらの各空間の容積を液密的にそれぞれ増減させるための部品であり、軸体121の径方向外側に延びる板状体によってそれぞれ構成されている。この場合、可動ベーン124a,124bは、先端部と内室内周面105aとの間、軸体121の軸方向の両端部のうちの一方(
図3において上側)の端部側における可動ベーン124a,124bの端面と蓋体110との間、および軸体121の軸方向の両端部のうちの他方(
図3において下側)の端部側における可動ベーン124a,124bの端面とハウジング本体102の底部との間にそれぞれ僅かな隙間を介して摺動するように形成されている。これらの各隙間によって、可動ベーン124a,124bは、軸体121の回動時に流動体130が前記各隙間を介して僅かに流通するように構成されている。また、これら2つの可動ベーン124a,124bは、軸体121を介して互いに反対方向(換言すれば仮想の同一平面上)に延びて形成されている。
【0052】
流動体130は、内室105を回動する可動ベーン124a,124bに対して抵抗を付与することによりロータリダンパ100にダンパー機能を作用させるための物質であり、内室105内に満たされている。この流動体130は、ロータリダンパ100の仕様に応じた粘性を有する流動性を有する液状、ジェル状または半固体状の物質で構成されている。この場合、流動体130の粘度は、ロータリダンパ100の仕様に応じて適宜選定される。本実施形態においては、流動体130は、油、例えば、鉱物油またはシリコーンオイルなどによって構成されている。なお、
図5においては、流動体130を破線円で囲んだハッチング領域でのみ示している。
【0053】
(ロータリダンパ100の製造方法)
次に、このように構成されたロータリダンパ100の製造方法について説明する。このロータリダンパ100の製造には、蓋体取付具200を用いる。蓋体取付具200は、
図7および
図8にそれぞれ示すように、入込部104a,104bを成形して蓋体110をハウジング本体102に固定的に取り付けるための金型であり、プレス加工機(図示せず)にセットされて使用される。この蓋体取付具200は、主として、ハウジング台座201、蓋体押え210およびハウジングパンチ220をそれぞれ備えて構成されている。
【0054】
ハウジング台座201は、ハウジング本体102の径方向外側への変形を規制しつつハウジング本体102を保持するための金型である。このハウジング台座201は、ハウジング本体102の外周形状を反転させた凹状の形状に形成されている。具体的には、ハウジング台座201は、ハウジング本体102の開口部102a側およびロータ支持部107側がそれぞれ開口する筒状に形成されており、内周部にハウジング側嵌合部受け202が形成されている。
【0055】
ハウジング側嵌合部受け202は、ハウジング本体102におけるハウジング側嵌合部103のハウジング側嵌合部第2端部103cを受ける部分である。具体的には、ハウジング側嵌合部受け202は、ハウジング台座201の内周部から径方向内側に水平方向に円環状に張り出して形成されている。このハウジング台座201は、プレス加工機におけるボルスタ(テーブル)上に配置される。
【0056】
蓋体押え210は、ハウジング台座201内にセットされたハウジング本体102上で蓋体110をハウジング本体102側に押圧して蓋体110の位置ズレを防止するための部品である。具体的には、蓋体押え210は、底面視で円板状に形成されるとともにこの円板体の外縁部が図示下方に円環状に突出しており、この円環状に突出した部分が蓋体110の外縁部を押圧する。この蓋体押え210は、図示上下方向に延びる作動ロッド211を介してプレス加工機における昇降機構(図示せず)に支持されており、この昇降機構の作動によって図示上下方向に変位する。これにより、蓋体押え210は、蓋体110をロック(押圧)またはアンロック(押圧解除)する。
【0057】
ハウジングパンチ220は、ハウジング台座201内にセットされたハウジング本体102のハウジング側嵌合部103を押圧して入込部104a,104bを形成するための部品である。具体的には、ハウジングパンチ220は、底面視で円環状に形成されるとともにこの円環体の外縁部が図示下方に円環状に突出しており、この円環状に突出した部分がハウジング側嵌合部103のハウジング側嵌合部第1端部103aを押圧する。この場合、ハウジングパンチ220は、円環状に突出した部分の先端面に押圧部221が形成されている。
【0058】
押圧部221は、ハウジング側嵌合部103のハウジング側嵌合部第1端部103aにおける内縁部を集中的に押圧するための部分であり、ハウジング側嵌合部第1端部103aの図示下端面から周方向に沿って連続的に凸状に張り出して形成されている。このハウジングパンチ220は、図示上下方向に延びる作動ロッド222を介して図示しないプレス加工機におけるスライドに支持されており、このプレス加工機の作動によって図示上下方向に駆動する。これにより、ハウジングパンチ220は、ハウジング側嵌合部103のハウジング側嵌合部第1端部103aを殴打する。
【0059】
作業者は、まず、ハウジング本体102、蓋体110およびロータ120をそれぞれ用意する。これらのハウジング本体102、蓋体110およびロータ120は、鍛造加工、プレス加工および切削加工などの公知の機械加工によって製作される。ここで、蓋体110における凹状部112a,112bは、プレス加工または切削加工で成形される。
【0060】
次に、作業者は、
図9に示すように、ハウジング台座201内にハウジング本体102、蓋体110およびロータ120をそれぞれセッティング(配置)する。この場合、作業者は、ハウジング台座201内で、ハウジング本体102、ロータ120および蓋体110を順番に配置してもよいし、ハウジング本体102内にロータ120および蓋体110が配置されたハウジング本体102をハウジング台座201内に配置してもよい。
【0061】
いずれにしもて、蓋体110は、蓋体側嵌合部111がハウジング本体102のハウジング側嵌合部103内に嵌合した状態でハウジング台座201内に配置される。なお、ロータ120は、シール材または軸受けを介してハウジング本体102および蓋体110に対して配置される。また、ハウジング本体102の内室105内には所定量の流動体130が充填されている。
【0062】
次に、作業者は、プレス加工機を操作して蓋体110をハウジング本体102に取り付ける。具体的には、プレス加工機は、
図10に示すように、蓋体押え210を下降させて蓋体110の図示上面を押圧して蓋体110を固定する。次に、プレス加工機は、
図11に示すように、ハウジングパンチ220を下降させてハウジング本体102のハウジング側嵌合部103のハウジング側嵌合部第1端部103aに強く押圧して押し込む。
【0063】
この場合、ハウジングパンチ220は、
図12に示すように、押圧部221が凸状に張り出して形成されているため、この押圧部221がハウジング側嵌合部第1端部103a内に深く食い込んでハウジング側嵌合部第1端部103aに押し込み部103bを形成する。これにより、ハウジング本体102は、ハウジング側嵌合部103の一部がハウジング側嵌合部内周部103eを介して蓋体110凹状部112a,112b内に塑性変形によりそれぞれ進入して入込部104a,104bが形成されている。このハウジング側嵌合部103の一部が凹状部112a,112b内に塑性変形によりそれぞれ進入して入込部104a,104bが形成される工程が、本発明に係る入込部形成工程に相当する。
【0064】
この結果、蓋体110は、ハウジング本体102のハウジング側嵌合部103に固定される。また、この場合、蓋体110は、外周部の全周に亘って均等な力でハウジング側嵌合部103のハウジング側嵌合部内周部103eから押圧力を受けるため、位置ズレを生じさせることなくハウジング本体102に連結される。プレス加工機は、ハウジングパンチ220をハウジング側嵌合部103に打ち付けた後に直ちに上昇させる。また、プレス加工機は、ハウジングパンチ220を上昇させた後、蓋体押え210を上昇させて蓋体110の押圧状態を解消して蓋体110のハウジング本体102への取り付け作業を終了する。
【0065】
次に、作業者は、ハウジング本体102に対してロータ120および蓋体110が組み付けられたロータリダンパ100をハウジング台座201内から取り出してロータリダンパ100の組み立て作業を終了する。この後、ロータリダンパ100は、検査工程などを経て完成されるが、本発明に直接関らないためそれらの説明は省略する。
【0066】
(ロータリダンパ100の作動)
次に、このように構成されたロータリダンパ100の作動について説明する。このロータリダンパ100は、相対的に回動する2つの部品間に設けられて一方の部品に対して他方の部品が相対的に回動する際に減衰力を発生させる。具体的には、ロータリダンパ100は、相対的に回動する2つの部品のうちの一方の部品に連結部121aを介して取り付けられるとともに、他方の部品に取付片108を介して取り付けられる。そして、ロータリダンパ100は、前記一方の部品と前記他方の部品とが互いに相対的に回動する際にロータ120がハウジング101に対して相対回転(
図5における破線矢印参照)することで減衰力を発生させる。
【0067】
この場合においても、ロータリダンパ100は、ロータ120の軸体121の一方の端部を回転自在に支持する蓋体110がハウジング本体102に対して位置ズレすることなく取り付けられているため、流動体130の液密性および流動性を損なうことなくロータ120を精度良く回動させることができる。
【0068】
なお、ロータリダンパ100が取り付けられる物品としては、自動車以外の装置または器具、具体的には、扉の開閉機構、自走式車両以外の機械装置、電機装置、器具または家具に取り付けて用いることができることは当然である。
【0069】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ロータリダンパ100の製造方法によれば、蓋体110における蓋体側嵌合部111とハウジング本体102におけるハウジング側嵌合部103とを互いに嵌合させた状態で、蓋体側嵌合部111に比べて塑性変形し易いハウジング側嵌合部103の全周に亘って径方向に圧力を加えることで同ハウジング側嵌合部103の一部を凹状部112a,112b内に入り込ませた入込部104a,104bを形成しているため、ハウジング本体102に対して蓋体110の位置ズレを抑制して蓋体110を精度良く組み付けることができる。
【0070】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0071】
例えば、上記実施形態においては、蓋体取付具200におけるハウジングパンチ220は、凸状に突出した押圧部221を有して構成した。しかし、ハウジングパンチ220は、ハウジング側嵌合部第1端部103aを押圧する部分について押圧部221を省略して平坦面で構成してこの平坦面の全体でハウジング側嵌合部第1端部103aを殴打することもできる。また、押圧部221は、周方向に連続的ではなく断続的に設けることもできる。
【0072】
また、上記実施形態においては、蓋体取付具200は、蓋体押え210を備えて構成した。しかし、蓋体取付具200は、蓋体押え210を省略して構成することもできる。この場合、ロータリダンパ100は、ハウジング側嵌合部103と蓋体側嵌合部111とをより強い嵌合状態(例えば、しまり嵌め)で嵌合させるとよい。
【0073】
また、上記実施形態においては、蓋体取付具200は、ハウジングパンチ220がハウジング側嵌合部103におけるハウジング側嵌合部第1端部103aを押圧するように構成した。すなわち、蓋体取付具200は、ハウジング側嵌合部103をハウジング本体102の軸方向から押圧するように構成した。しかし、蓋体取付具200は、ハウジング側嵌合部103をハウジング本体102の径方向から押圧するように構成することもできる。
【0074】
例えば、
図13には、ハウジング側嵌合部103に対してハウジング本体102の径方向外側に配置した4つのハウジングパンチ230を示している。これらのハウジングパンチ230は、先端部に断面形状が三角形状で凸状に張り出した押圧部231がそれぞれ形成されている。そして、これら4つのハウジングパンチ230は、径方向内側に向かって変位してハウジング側嵌合部103のハウジング側嵌合部外周部103dをハウジング本体102の径方向外側から押圧することでハウジング側嵌合部103の一部を凹状部112a,112bに進入させて入込部104a,104bを形成する。
【0075】
また、上記実施形態においては、ハウジング側嵌合部103は、ハウジング本体102における蓋体110を嵌合させる部分を径方向外側にフランジ状に張り出して形成した。これにより、蓋体取付具200は、ハウジング台座201でハウジング本体102を受けた状態でハウジングパンチ230で殴打することでハウジング側嵌合部103の一部を凹状部112a,112b側に塑性変形させて入込部104a,104bを成形し易く構成した。しかし、ハウジング本体102は、必ずしもハウジング側嵌合部103をフランジ状に張り出して形成する必要はない。例えば、ハウジング本体102は、
図14に示すように、ハウジング側嵌合部103を軸線方向に張り出させることなく平坦面が連続的に形成された円筒体で構成することもできる。
【0076】
また、上記実施形態においては、凹状部112a,112bは、蓋体110の周方向に沿って連続的に延びる溝状に形成した。しかし、凹状部112a,112bは、蓋体110の周方向に沿って断続的に形成された溝状または有底穴状に形成することもできる。
【0077】
また、上記実施形態においては、凹状部112a,112bは、蓋体110の側面においてハウジング本体102の軸方向に並んで2つ形成した。しかし、凹状部112a,112bは、蓋体110の側面において少なくも1つ、またはハウジング本体102の軸方向に並んで3つ以上形成することもできる。
【0078】
また、上記実施形態においては、凹状部112a,112bは、互いに同じ深さで形成した。しかし、凹状部112a,112bは、互いに異なる深さで形成することもできる。この場合、凹状部112a,112bは、ハウジングパンチ230に対して相対的に離れた側の凹状部(例えば、凹状部112b)の深さをハウジングパンチ230に対して相対的に近い側の凹状部(例えば、凹状部112a)の深さより浅く形成することでハウジングパンチ230の押圧力を抑えて加工負担を軽減することができる。
【0079】
また、上記実施形態においては、凹状部112a,112bは、開口部側よりも奥側の断面積が小さくなる断面形状が三角形状に形成した。これによれば、蓋体110は、入込部104a,104bの形成に必要な圧力を抑えて加工負担を軽減することができる。しかし、凹状部112a,112bは、
図15に示すように、開口部側よりも奥側の断面積が小さくなる断面形状が半円形などの曲面に形成することもできる。このように凹状部112a,112bの最深部を曲面に形成することで入込部104a,104bの充填率を高めることができるとともに凹状部112a,112bに亀裂などの損傷が発生することを抑えることができる。
【0080】
また、凹状部112a,112bは、開口部側から奥側に向かって断面積が一定の断面形状が矩形形成することもできる。また、凹状部112a,112bは、
図16に示すように、開口部側よりも奥側の断面積が小さくなる断面形状が三角形状であって、互いに隣接する2辺115a,115bのうちのハウジング側嵌合部第2端部103c側の辺115bがハウジング本体102の軸線方向に対して直角またはハウジング側嵌合部第2端部103c側に鋭角に形成するとともにハウジング側嵌合部第1端部103a側の辺115aがハウジング本体102の軸線方向に対してハウジング側嵌合部第2端部103c側に鋭角に形成する鋸刃型にすることで蓋体110の抜け難くすることができる。
【0081】
また、上記実施形態においては、蓋体110は、ハウジング本体102の開口部102a内に嵌合するように構成した。すなわち、ロータリダンパ100は、ハウジング側嵌合部103を筒状に形成するとともに蓋体側嵌合部111を円板状に形成して蓋体側嵌合部111の外周部をハウジング側嵌合部103の内周部に嵌合するように構成した。しかし、ロータリダンパ100は、
図17に示すように、ハウジング側嵌合部103を柱状または筒状に形成するとともに蓋体側嵌合部111をハウジング側嵌合部103の外側に嵌合する大きさの筒状に形成して蓋体側嵌合部111の内周部をハウジング側嵌合部103の外周部に嵌合するように構成することもできる。この場合、ロータリダンパ100は、凹状部112a,112bがハウジング側嵌合部外周部103dに形成されるとともに、入込部104a,104bは、蓋体側嵌合部111に形成される。したがって、作業者は、蓋体側嵌合部111を径方向外側から押圧する、または蓋体側嵌合部111の径方向外側を金型(図示せず)で規制して蓋体側嵌合部111を軸方向から押圧することで入込部104a,104bを凹状部112a,112b内に進入させることができる。
【0082】
ロータリダンパ100は、蓋体110をハウジング本体102よりも塑性変形し易い材料(例えば、アルミニウム材)で構成するとともにハウジング本体102を蓋体110よりも塑性変形し難い材料(例えば、炭素鋼)で構成するとよい。この場合、ハウジング本体102におけるハウジング側嵌合部103におけるハウジング側嵌合部外周部103dに凹状部112a,112bを形成しておく。そして、蓋体取付具200は、蓋体110における蓋体側嵌合部111を軸線方向または径方向内側に押圧することで蓋体側嵌合部111の一部を凹状部112a,112bに進入させて入込部104a,104bを形成させることで蓋体110をハウジング本体102に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0083】
R1~R4…個室、
100…ロータリダンパ、101…ハウジング、102…ハウジング本体、102a…開口部、103…ハウジング側嵌合部、103a…ハウジング側嵌合部第1端部、103b…押し込み部、103c…ハウジング側嵌合部第2端部、103d…ハウジング側嵌合部外周部、103e…ハウジング側嵌合部内周部、104a,104b…入込部、105…内室、105a…内室内周面、106a,106b…固定ベーン、107…ロータ支持部、108…取付片、
110…蓋体、111…蓋体側嵌合部、112a,112b…凹状部、113…ロータ支持部、114…シール材、115a,115b…凹状部を構成する2つの辺、
120…ロータ、121…軸体、121a…連結部、122a,122b…軸受け、123a,123b…シール材、124a,124b…可動ベーン、
130…流動体、
200…蓋体取付具、201…ハウジング台座、202…ハウジング側嵌合部受け、
210…蓋体押え、211…作動ロッド、
220…ハウジングパンチ、221…押圧部、222…作動ロッド、
230…ハウジングパンチ、231…押圧部。