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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086054
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】印刷装置、及び、印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200938
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇
(72)【発明者】
【氏名】五藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB58
2C056EC28
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】テストパターンを読み取る際に効率よくモアレの影響を低減させる。
【解決手段】印刷装置は、印刷ヘッド、制御部、及び、読取部を備え、印刷特性を補正するためのテストパターンを媒体に形成し、前記読取部による前記テストパターンの読取結果に基づいて前記印刷特性を補正する。前記制御部は、前記テストパターンに含まれる複数のドットの配置と前記読取部における読取解像度との干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報を取得し、前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示していない場合に、前記テストパターンが前記媒体にN1回(N1は1以上の整数)形成されるように液滴の吐出を制御し、前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示している場合に、前記テストパターンが前記媒体にN2回(N2はN1よりも大きい整数)形成されるように前記液滴の吐出を制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を媒体に吐出可能な複数のノズルが並べられたノズル列を有する印刷ヘッドと、
前記複数のノズルの並び方向と交差する走査方向における前記媒体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方の移動、及び、前記印刷ヘッドからの前記液滴の吐出を制御する制御部と、
前記媒体における印刷面の濃度を読取解像度の単位で読み取る読取部と、を備え、
印刷特性を補正するためのテストパターンを前記媒体に形成し、前記読取部による前記テストパターンの読取結果に基づいて前記印刷特性を補正する印刷装置であって、
前記制御部は、
前記テストパターンに含まれる複数のドットの配置と前記読取部における前記読取解像度との干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報を取得し、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示していない場合に、前記テストパターンが前記媒体にN1回(N1は1以上の整数)形成されるように前記液滴の吐出を制御し、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示している場合に、前記テストパターンが前記媒体にN2回(N2はN1よりも大きい整数)形成されるように前記液滴の吐出を制御する、印刷装置。
【請求項2】
前記テストパターンは、前記走査方向へ並べられた複数段階の濃度のパッチを含み、
前記制御部は、前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示している場合、前記媒体に対してN2箇所に前記複数段階の濃度のパッチを含む前記テストパターンが形成されるように前記液滴の吐出を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記複数段階の濃度のパッチは、10段階以上の濃度のパッチである、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記媒体を前記印刷ヘッドに対向する位置から前記読取部に対向する位置へ変えるように前記媒体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方を移動させる搬送部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記媒体を前記印刷ヘッドに対向する位置から前記読取部に対向する位置へ変えるように前記走査方向に沿って前記媒体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方を移動させる搬送部をさらに備え
前記制御部は、前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示している場合、前記走査方向において異なるN2箇所に前記複数段階の濃度のパッチを含む前記テストパターンが前記媒体に形成されるように前記液滴の吐出を制御し、
前記読取部は、前記走査方向と交差する素子並び方向に沿って前記読取解像度となるように並べられた複数の読取素子を含み、前記印刷面の濃度を前記複数の読取素子で読み取る、請求項2又は請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記読取結果に基づいてN2回の各前記テストパターンの読取濃度を取得し、N2回得られる前記読取濃度を平均する演算を含む算出処理を行うことにより、前記印刷特性を補正するための補正値を算出する、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
媒体と、液滴を前記媒体に吐出可能な複数のノズルが並べられたノズル列を有する印刷ヘッドと、の少なくとも一方を前記複数のノズルの並び方向と交差する走査方向に沿って移動させ、前記印刷ヘッドから前記液滴を吐出させ、印刷特性を補正するためのテストパターンを前記媒体に形成し、前記媒体における印刷面の濃度を読取解像度の単位で読み取る読取部による前記テストパターンの読取結果に基づいて前記印刷特性を補正する印刷方法であって、
前記テストパターンに含まれる複数のドットの配置と前記読取部における前記読取解像度との干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報を取得する取得工程と、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示していない場合に、前記テストパターンを前記媒体にN1回(N1は1以上の整数)形成する第一形成工程と、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示している場合に、前記テストパターンを前記媒体にN2回(N2はN1よりも大きい整数)形成する第二形成工程と、を含む、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷面の濃度を読み取る読取部を備える印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、液滴を媒体に吐出可能なノズル列を有する印刷ヘッド、及び、印刷画像を読取解像度の単位で読み取る読取部を備えるインクジェット式の印刷装置が知られている。この種の印刷装置において、印刷画像の濃度を補正するためのテストパターンを媒体に印刷し、読取部によるテストパターンの読取結果に基づいて印刷画像の濃度を補正することが行われている。
【0003】
特許文献1に開示されたインクジェット記録装置は、テストチャートの濃度を読み取って得た濃度情報から濃度ムラ補正値を算出し、当該濃度ムラ補正値を基に画像データに対して補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-81344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
読取部によるテストパターンの読取結果にモアレと呼ばれる周期的な濃度変化が発生することがある。ここで、「周期的な濃度変化」は、テストパターンの読取結果に誤差を生じさせることを意味し、ノズルから吐出されるインク量のばらつきによる印刷画像の「濃度ムラ」とは異なる。モアレが発生すると、テストパターンの読取結果に誤差が生じ、その結果、「濃度ムラ補正値」にモアレ由来の誤差が生じる。そこで、テストパターンを読み取る際にモアレの影響を低減させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、
液滴を媒体に吐出可能な複数のノズルが並べられたノズル列を有する印刷ヘッドと、
前記複数のノズルの並び方向と交差する走査方向における前記媒体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方の移動、及び、前記印刷ヘッドからの前記液滴の吐出を制御する制御部と、
前記媒体における印刷面の濃度を読取解像度の単位で読み取る読取部と、を備え、
印刷特性を補正するためのテストパターンを前記媒体に形成し、前記読取部による前記テストパターンの読取結果に基づいて前記印刷特性を補正する印刷装置であって、
前記制御部は、
前記テストパターンに含まれる複数のドットの配置と前記読取部における前記読取解像度との干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報を取得し、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示していない場合に、前記テストパターンが前記媒体にN1回(N1は1以上の整数)形成されるように前記液滴の吐出を制御し、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示している場合に、前記テストパターンが前記媒体にN2回(N2はN1よりも大きい整数)形成されるように前記液滴の吐出を制御する、態様を有する。
【0007】
また、本発明の印刷方法は、媒体と、液滴を前記媒体に吐出可能な複数のノズルが並べられたノズル列を有する印刷ヘッドと、の少なくとも一方を前記複数のノズルの並び方向と交差する走査方向に沿って移動させ、前記印刷ヘッドから前記液滴を吐出させ、印刷特性を補正するためのテストパターンを前記媒体に形成し、前記媒体における印刷面の濃度を読取解像度の単位で読み取る読取部による前記テストパターンの読取結果に基づいて前記印刷特性を補正する印刷方法であって、
前記テストパターンに含まれる複数のドットの配置と前記読取部における前記読取解像度との干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報を取得する取得工程と、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示していない場合に、前記テストパターンを前記媒体にN1回(N1は1以上の整数)形成する第一形成工程と、
前記モアレ特性情報が前記モアレの発生を示している場合に、前記テストパターンを前記媒体にN2回(N2はN1よりも大きい整数)形成する第二形成工程と、を含む、態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】印刷装置の例を模式的に示す図。
図2】印刷装置とテストパターンの例を模式的に示す平面図。
図3】印刷ヘッドのノズル面と媒体上のドットパターンの例を模式的に示す図。
図4】テストパターンの読取濃度値Rp(X,Y)の例を模式的に示す図。
図5】制御部がモアレ特性情報に応じた回数のテストパターンを形成するように制御する例を模式的に示す図。
図6】ノズル単位の濃度補正の例を模式的に示す図。
図7】モアレ特性情報取得処理の例を模式的に示すフローチャート。
図8】モアレ特性情報の例を模式的に示す図。
図9】読取濃度を予測するモアレ特性情報取得処理の例を模式的に示すフローチャート。
図10】濃度補正処理の例を模式的に示すフローチャート。
図11】濃度補正処理の例を模式的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~11に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。「本発明に含まれる技術の概要」において、括弧内は直前の語の補足説明を意味する。
【0011】
[態様1]
本技術の一態様に係る印刷装置1は、印刷ヘッド30、制御部U1、及び、読取部60を備え(例えば図1参照)、印刷特性を補正するためのテストパターンTP0(例えば図2参照)を前記媒体ME0に形成し、前記読取部60による前記テストパターンTP0の読取結果に基づいて前記印刷特性を補正する。前記印刷ヘッド30は、液滴37を媒体ME0に吐出可能な複数のノズル34が並べられたノズル列33を有する。前記制御部U1は、前記複数のノズル34の並び方向D4と交差する走査方向(例えば送り方向D3)における前記媒体ME0と前記印刷ヘッド30の少なくとも一方の移動、及び、前記印刷ヘッド30からの前記液滴37の吐出を制御する。前記読取部60は、前記媒体ME0における印刷面ME0pの濃度を読取解像度(例えばXr×Yr dpi)の単位で読み取る。前記制御部U1は、図7~10等に例示するように、前記テストパターンTP0に含まれる複数のドット38の配置と前記読取部60における前記読取解像度との干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報IN0を取得する。当該制御部U1は、図5,10等に例示するように、N1を1以上の整数として、前記モアレ特性情報IN0が前記モアレの発生を示していない場合に前記テストパターンTP0が前記媒体ME0にN1回形成されるように前記液滴37の吐出を制御する。当該制御部U1は、N2をN1よりも大きい整数として、前記モアレ特性情報IN0が前記モアレの発生を示している場合に前記テストパターンTP0が前記媒体ME0にN2回形成されるように前記液滴37の吐出を制御する。
【0012】
モアレが発生する場合、印刷特性を補正するためのテストパターンTP0は、モアレが発生しない場合におけるN1回よりも多いN2回、媒体ME0に形成される。N2回分のテストパターンTP0が読取部60により読み取られることにより、モアレの影響が少ない読取結果を得ることが可能となる。一方、モアレが発生しない場合、テストパターンTP0は、モアレが発生する場合におけるN2回よりも少ないN1回しか媒体ME0に形成されない。これにより、形成されるテストパターンTP0を少なくさせることができる。従って、上記態様は、テストパターンを読み取る際に効率よくモアレの影響を低減させることが可能な印刷装置を提供することができる。
【0013】
ここで、走査方向には、ライン式印刷装置における媒体の相対移動方向に沿った方向、シリアル式印刷装置における主走査方向、等が含まれる。
制御部は、印刷ヘッドを移動させないで媒体を走査方向に沿って移動させる制御を行ってもよいし、媒体を移動させないで印刷ヘッドを走査方向に沿って移動させる制御を行ってもよいし、媒体と印刷ヘッドの両方を走査方向に沿って移動させる制御を行ってもよい。
【0014】
モアレは、一般に、周期的な構造を複数重ね合わせたときに発生する干渉縞を意味する。上記態様において、周期的な構造の一つは、テストパターンに含まれる複数のドットの配置を意味する。もう一つの周期的な構造は、読取解像度となる複数の読取素子の配置等といった、読取部における読取解像度を意味する。
印刷特性には、印刷画像の濃度、媒体の搬送量、シリアル式印刷装置における往路と復路の吐出タイミング、等が含まれる。従って、テストパターンには、モアレの影響を受ける様々なテストパターンが含まれる。
モアレ特性情報は、実際にテストパターンを読取部で読み取ることにより取得されてもよいし、テストパターンを表すテストパターンデータから求められる複数のドットの配置と読取部における読取解像度とに基づいた解析結果から取得されてもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
[態様2]
図2に例示するように、前記テストパターンTP0は、前記走査方向(D3)へ並べられた複数段階(Np段階)の濃度のパッチPA0を含んでいてもよい。前記制御部U1は、前記モアレ特性情報IN0が前記モアレの発生を示している場合、前記媒体ME0に対してN2箇所に前記複数段階(Np段階)の濃度のパッチPA0を含む前記テストパターンTP0が形成されるように前記液滴37の吐出を制御してもよい。
以上の場合、N2箇所のテストパターンTP0を形成するために一つのテストパターンTP0を記憶しておけばよいので、記憶容量の節約を図ることができる。
【0016】
[態様3]
図2に例示するように、前記複数段階(Np段階)の濃度のパッチPA0は、10段階以上の濃度のパッチPA0でもよい。
階調値に応じた液体吐出量の補正は、10段階以上あるとある程度信頼度が高くなる。従って、上記態様は、印刷画像の濃度を補正するためのテストパターンを読み取る際にモアレの影響を低減させる好適な印刷装置を提供することができる。
【0017】
[態様4]
図1に例示するように、本印刷装置1は、前記媒体ME0を前記印刷ヘッド30に対向する位置から前記読取部60に対向する位置へ変えるように前記媒体ME0と前記印刷ヘッド30の少なくとも一方を移動させる搬送部50をさらに備えていてもよい。
以上の場合、テストパターンTP0の形成から読み取りまでに人手が介在しないので、読取濃度のモアレに人手の影響が生じ難い。従って、上記態様は、テストパターンを読み取る際にモアレの影響を低減させる好適な印刷装置を提供することができる。
【0018】
[態様5]
図1に例示するように、本印刷装置1は、前記媒体ME0を前記印刷ヘッド30に対向する位置から前記読取部60に対向する位置へ変えるように前記走査方向(D3)に沿って前記媒体ME0と前記印刷ヘッド30の少なくとも一方を移動させる搬送部50をさらに備えていてもよい。前記制御部U1は、前記モアレ特性情報IN0が前記モアレの発生を示している場合、前記走査方向(D3)において異なるN2箇所に前記複数段階(Np段階)の濃度のパッチPA0を含む前記テストパターンTP0が前記媒体ME0に形成されるように前記液滴37の吐出を制御してもよい。前記読取部60は、図2に例示するように、前記走査方向(D3)と交差する素子並び方向D5に沿って前記読取解像度となるように並べられた複数の読取素子61を含んでいてもよく、前記印刷面ME0pの濃度を前記複数の読取素子61で読み取ってもよい。
上記態様は、テストパターンを読み取る際に効率よくモアレの影響を低減させることが可能なライン式印刷装置を提供することができる。
【0019】
[態様6]
図5,10等に例示するように、前記制御部U1は、前記読取結果に基づいてN2回の各前記テストパターンTP0の読取濃度(例えば読取濃度値Rp,i(Y))を取得してもよい。当該制御部U1は、N2回得られる前記読取濃度(Rp,i(Y))を平均する演算を含む算出処理を行うことにより、前記印刷特性を補正するための補正値(例えば図6に示す濃度補正値G3(Y))を算出してもよい。
上記態様は、モアレの影響が少ない補正値を得ることが可能となる。
ここで、読取濃度の平均は、中央値、加重平均、等でもよく、サンプルの和を母数で割るという計算方法に限られない。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0020】
[態様7]
また、本技術の一態様に係る印刷方法は、媒体ME0と、液滴37を前記媒体ME0に吐出可能な複数のノズル34が並べられたノズル列33を有する印刷ヘッド30と、の少なくとも一方を前記複数のノズル34の並び方向D4と交差する走査方向(D3)に沿って移動させ、前記印刷ヘッド30から前記液滴37を吐出させ、印刷特性を補正するためのテストパターンTP0を前記媒体ME0に形成し、前記媒体ME0における印刷面ME0pの濃度を読取解像度の単位で読み取る読取部60による前記テストパターンTP0の読取結果に基づいて前記印刷特性を補正する印刷方法であって、以下の工程を含む。
(A1)前記テストパターンTP0に含まれる複数のドット38の配置と前記読取部60における前記読取解像度との干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報IN0を取得する取得工程ST1。
(A2)N1を1以上の整数として、前記モアレ特性情報IN0が前記モアレの発生を示していない場合に前記テストパターンTP0を前記媒体ME0にN1回形成する第一形成工程ST2。
(A2)N2をN1よりも大きい整数として、前記モアレ特性情報IN0が前記モアレの発生を示している場合に前記テストパターンTP0を前記媒体ME0にN2回形成する第二形成工程ST3。
【0021】
上記態様は、テストパターンを読み取る際に効率よくモアレの影響を低減させることが可能な印刷方法を提供することができる。
ここで、本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。
【0022】
さらに、本技術は、上述した印刷装置を含む印刷システム、上述した印刷装置の制御方法、前述の印刷システムの制御方法、上述した印刷装置の制御プログラム、前述の印刷システムの制御プログラム、前述のいずれかの制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等に適用可能である。また、上述した印刷装置は、分散した複数の部分で構成されてもよい。
【0023】
(2)印刷装置を含む印刷装置の具体例:
図1は、印刷装置1を模式的に例示している。本具体例の印刷装置1はプリンター2自体であるものとするが、印刷装置1はプリンター2とホスト装置HO1との組合せでもよい。図1に示すプリンター2は、液滴37としてインク滴を吐出するインクジェットプリンターの一種であるシリアルプリンターである。尚、プリンター2は、図1に示されていない追加要素を含んでいてもよい。図2は、印刷装置1とテストパターンTP0を模式的に例示している。図2に示す媒体ME0の印刷面ME0pには、2回分のテストパターンTP0が形成されていることが示されている。図3は、印刷ヘッド30のノズル面30aと媒体ME0上のドットパターンを模式的に例示している。図4は、テストパターンTP0の読取濃度値Rp(X,Y)を模式的に例示している。便宜上、X方向が送り方向D3に沿った方向とされ、Y方向が幅方向D1に沿った方向とされている。図4の左下部には、或るY位置においてX方向に沿った読取濃度値Rp(X)のモアレの例が示されている。図4の右下部には、或るX位置においてY方向に沿った読取濃度値Rp(Y)のモアレの例が示されている。
【0024】
図1に示すプリンター2は、コントローラー10、半導体メモリーであるRAM21、通信I/F22、記憶部23、操作パネル24、印刷ヘッド30、搬送部50、読取部60、等を備える。ここで、RAMはRandom Access Memoryの略称であり、I/Fはインターフェイスの略称である。コントローラー10は制御部U1の例である。コントローラー10、RAM21、通信I/F22、記憶部23、及び、操作パネル24は、バスに接続され、互いに情報を入出力可能とされている。
【0025】
コントローラー10は、プロセッサーであるCPU11、色変換部12、ハーフトーン処理部13、駆動信号送信部15、等を備えている。ここで、CPUは、Central Processing Unitの略称である。コントローラー10は、ホスト装置HO1、不図示のメモリーカード、等のいずれかから取得した元画像データDA1に基づいて印刷画像IM0が媒体ME0の印刷面ME0pに形成されるように、搬送部50と印刷ヘッド30を制御する。元画像データDA1には、例えば、各画素にR、G、及び、Bの28階調や216階調の整数値を有するRGBデータを適用することができる。ここで、Rは赤を意味し、Gは緑を意味し、Bは青を意味する。
コントローラー10は、SoC等により構成することができる。ここで、SoCは、System on a Chipの略称である。
【0026】
CPU11は、プリンター2における情報処理や制御を中心的に行う装置である。
色変換部12は、例えば、R、G、及び、Bの階調値とC、M、Y、及び、Kの階調値との対応関係が規定された色変換LUTを参照し、RGBデータを各画素にC、M、Y、及び、Kの28階調や216階調の整数値を有するインク量データDA2に変換する。ここで、Cはシアンを意味し、Mはマゼンタを意味し、Yはイエローを意味し、Kはブラックを意味し、LUTはルックアップテーブルの略称である。インク量データDA2は、図3に示す画素PX0の単位でC、M、Y、及び、Kの液体36の使用量を表している。また、RGBデータの解像度が印刷解像度Xp×Yp dpiとは異なる場合、色変換部12は、先にRGBデータの解像度を印刷解像度Xp×Yp dpiに変換するか、又は、インク量データDA2の解像度を印刷解像度Xp×Yp dpiに変換する。図3には、印刷解像度がXp×Yp dpi、すなわち、送り方向D3に沿ったX方向における印刷解像度がXp dpiであって、幅方向D1に沿ったY方向における印刷解像度がYp dpiであることが示されている。
【0027】
ハーフトーン処理部13は、インク量データDA2を構成する各画素PX0の階調値に対してディザ法、誤差拡散法、等のいずれかによるハーフトーン処理を行うことにより前記階調値の階調数を減らし、ドットデータDA3を生成する。ドットデータDA3は、画素PX0の単位で液滴37のドット38の形成状態を表している。ドットデータDA3は、ドットの形成有無を表す2値データでもよいし、小中大の各ドットといった異なるサイズのドットに対応可能な3階調以上の多値データでもよい。
【0028】
駆動信号送信部15は、ドットデータDA3から駆動信号SG1を生成して印刷ヘッド30の駆動回路31に出力する。駆動信号SG1は、印刷ヘッド30の駆動素子32に印加する電圧信号に対応している。例えば、ドットデータDA3が「ドット形成」であれば、駆動信号送信部15はドット形成用の液滴を吐出させる駆動信号SG1を出力する。また、ドットデータDA3が4値データである場合、駆動信号送信部15は、ドットデータDA3が「大ドット形成」であれば大ドット用の液滴を吐出させる駆動信号SG1を出力し、ドットデータDA3が「中ドット形成」であれば中ドット用の液滴を吐出させる駆動信号SG1を出力し、ドットデータDA3が「小ドット形成」であれば小ドット用の液滴を吐出させる駆動信号SG1を出力する。
【0029】
上記各部11,12,13,15は、ASICで構成されてもよく、RAM21から処理対象のデータを直接読み込んだりRAM21に処理後のデータを直接書き込んだりしてもよい。ここで、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
【0030】
印刷ヘッド30は、読取部60の上流側に配置されている。図1~3に示すように、印刷ヘッド30は、液滴37を媒体ME0に吐出可能な複数のノズル34が並び方向D4へ所定のノズルピッチの間隔で並べられたノズル列33をノズル面30aに有している。ここで、ノズルは液滴が噴射する小孔を意味し、ノズル列は複数のノズルの並びを意味する。ノズル面30aは、液滴37の吐出面である。図2に示すように、印刷ヘッド30は、媒体ME0の送り方向D3に直交する幅方向D1の全体にわたって複数のノズル34が連続するように並べられた複数のチップCH0を含んでいる。図3に示すように、各チップCH0は、複数のノズル列33を有している。複数のノズル列33は、Cの液滴37を吐出するシアンノズル列33C、Mの液滴37を吐出するマゼンタノズル列33M、Yの液滴37を吐出するイエローノズル列33Y、及び、Kの液滴37を吐出するブラックノズル列33Kを含んでいる。各液滴37は、媒体ME0の画素PX0を目標にしてノズル34から吐出される。むろん、Cの液滴37から媒体ME0にCのドット38が形成され、Mの液滴37から媒体ME0にMのドット38が形成され、Yの液滴37から媒体ME0にYのドット38が形成され、Kの液滴37から媒体ME0にKのドット38が形成される。各ノズル列33は、液滴37を媒体ME0に向けて吐出する。各ノズル列33に含まれる複数のノズル34は、一列に並べられてもよいし、千鳥状すなわち2列に並べられてもよい。ノズル列33に含まれる複数のノズル34の並び方向D4は、幅方向D1でもよいし、送り方向D3とは異なる限り幅方向D1からずれていてもよい。
【0031】
コントローラー10に制御される搬送部50は、ローラー駆動部55の駆動により媒体ME0を搬送経路59に沿って送り方向D3へ送る。図1において、送り方向D3は右方向であり、左側を上流側と呼び、右側を下流側と呼ぶことにする。送り方向D3は、複数のノズル34の並び方向D4と交差する走査方向の例であり、例えば、並び方向D4に直交する方向である。ローラー駆動部55は、搬送ローラー対56と排出ローラー対57を含んでいる。ローラー駆動部55は、サーボモーターで構成され、コントローラー10の制御に従って、搬送ローラー対56の駆動搬送ローラーと排出ローラー対57の駆動排出ローラーを定速で回転させることにより媒体ME0を定速で送り方向D3へ送る。従って、搬送部50は送り方向D3に沿って媒体ME0と印刷ヘッド30の少なくとも一方を移動させるといえ、制御部U1は送り方向D3における媒体ME0と印刷ヘッド30の少なくとも一方の移動を制御するといえる。また、印刷ヘッド30の下流側に読取部60が配置されているので、搬送部50は媒体ME0を印刷ヘッド30に対向する位置から読取部60に対向する位置へ変えるように媒体ME0と印刷ヘッド30の少なくとも一方を移動させるといえる。
媒体ME0は、印刷画像を保持する素材のことであり、紙、樹脂、金属、等で形成される。媒体ME0の材質は、特に限定されず、樹脂、金属、紙、等、様々な材質が考えられる。媒体ME0の形状も、特に限定されず、長方形、ロール状、等、様々な形状が考えられ、立体形状でもよい。
【0032】
プラテン58は、搬送経路59の下側にあり、搬送経路59にある媒体ME0に接することにより媒体ME0を支持する。コントローラー10に制御される印刷ヘッド30は、駆動回路31や駆動素子32等を備え、プラテン58に支持されている媒体ME0に向けて液滴37を吐出することにより媒体ME0に液体36を付着させる。従って、制御部U1は、印刷ヘッド30からの液滴37の吐出を制御するといえる。
駆動回路31は、駆動信号送信部15から入力される駆動信号SG1に従って駆動素子32に電圧信号を印加する。駆動素子32は、ノズル34に連通する圧力室内の液体36に圧力を加える圧電素子でもよいし、熱により圧力室内に気泡を発生させてノズル34から液滴37を吐出させる駆動素子等でもよい。印刷ヘッド30の圧力室には、液体カートリッジ35から液体36が供給される。圧力室内の液体36は、駆動素子32によってノズル34から媒体ME0に向かって液滴37として吐出される。これにより、媒体ME0の印刷面ME0pに液滴37のドット38が形成され、ドット38のパターンで表現される印刷画像IM0が媒体ME0の印刷面ME0pに形成される。
【0033】
RAM21は、ホスト装置HO1や不図示のメモリー等から受け入れた元画像データDA1等を格納する。通信I/F22は、ホスト装置HO1に有線又は無線で接続され、ホスト装置HO1に対して情報を入出力する。ホスト装置HO1には、パーソナルコンピューターやタブレット端末といったコンピューター、スマートフォンといった携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、等が含まれる。記憶部23は、フラッシュメモリーといった不揮発性半導体メモリーでもよいし、ハードディスクといった磁気記憶装置等でもよい。操作パネル24は、情報を表示する液晶パネルといった出力部25、表示画面への操作を受け付けるタッチパネルといった入力部26、等を備えている。
【0034】
コントローラー10は、印刷画像IM0の濃度を補正するためのテストパターンTP0を媒体ME0に形成するように液滴37の吐出を制御し、読取部60によるテストパターンTP0の読取結果に基づいて印刷画像IM0の濃度を補正する。印刷画像IM0の濃度は、印刷特性の例である。図2に示すように、テストパターンTP0は、送り方向D3へ並べられたNp段階の濃度のパッチPA0を含んでいる。各パッチPA0は、印刷に使用される全ノズル34からの液体36の吐出量、例えば、インク吐出量を補正することができるように、長手方向が幅方向D1に向いている細長い長方形状とされている。階調値に応じた液体吐出量の補正は、10段階以上あるとある程度信頼度が高くなる。そこで、濃度の段階数Npは、10以上が好ましく、図2に示す例では16である。テストパターンTP0は、無彩色といった1色でもよいし、C、M、Y、及び、Kの色別に設けられてもよい。読取部60は、媒体ME0における印刷面ME0pの濃度を読取解像度の単位で読み取る。図4には、読取解像度がXr×Yr dpi、すなわち、送り方向D3に沿ったX方向における読取解像度がXr dpiであって、幅方向D1に沿ったY方向における読取解像度がYr dpiであることが示されている。
【0035】
読取部60は、送り方向D3と交差する素子並び方向D5に沿って読取解像度Yrとなるように並べられた複数の読取素子61を含み、印刷面ME0pの濃度を複数の読取素子61で読み取る。図2,4に示す素子並び方向D5は、送り方向D3に直交している。素子並び方向D5は、幅方向D1でもよいし、送り方向D3とは異なる限り幅方向D1からずれていてもよいし、ノズル34の並び方向D4でもよいし、送り方向D3とは異なる限り並び方向D4からずれていてもよい。読取部60は、印刷ヘッド30の下流側に配置されている。読取部60は、CIS方式と略されるContact Image Sensor方式やCCD方式と略されるCharge Coupled Devices方式のイメージセンサー等でもよいし、CMOSイメージセンサー、CCDで構成されるラインセンサーやエリアセンサーといった固体撮像素子、等でもよい。ここで、CMOSは、Complementary Metal-Oxide Semiconductorの略称である。近年広く使用されているCIS方式イメージセンサーは、安価で小型化可能である一方、CCDセンサーと比べて読取濃度にモアレが生じ易い。本具体例は、読取部60がCIS方式イメージセンサーである場合に好適である。
【0036】
読取部60は、CIS方式イメージセンサーである場合、発光ダイオード、レンズ、複数の読取素子61、等を備えている。発光ダイオードは、赤色の光を発する赤色発光ダイオード、緑色の光を発する緑色発光ダイオード、及び、青色の光を発する青色発光ダイオードの3種類を含んでいてもよい。発光ダイオードは、送り方向D3へ搬送される媒体ME0の印刷面ME0pに光を照射する。発光ダイオードから印刷面ME0pに照射された光は、印刷面ME0pで反射し、レンズを介して複数の読取素子61に到達し、各読取素子61で測光される。読取素子61の配置密度は、Y方向の読取解像度Yrに合わせられ、特に限定されず、例えば、300~600 dpi相当でもよい。X方向の読取解像度Xrは、各読取素子61の読み取りタイミングに応じて定まり、特に限定されず、例えば、300~600 dpi相当でもよい。本具体例の読取部60は、各読取素子61の検出電圧のアナログ量をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換回路を備え、各読取素子61の検出電圧に対応するアナログ濃度量をアナログ/デジタル変換回路でデジタル濃度値に変換してコントローラー10に出力するものとする。
【0037】
図3に示すように、印刷ヘッド30は、送り方向D3へ移動している媒体ME0の印刷面ME0pにテストパターンTP0が形成されるように印刷解像度Xp×Ypの単位で複数のノズル34から液滴37を吐出する。テストパターンTP0に含まれるパッチPA0は、全体にわたって一定の濃度であるため、周期的な構造のドットパターンを含んでいる。図4に示すように、読取部60は、印刷面ME0pの濃度を読取解像度Xr×Yrの単位で読み取る。従って、読取部60は、読取解像度Xr×Yrに対応する周期的な構造を含んでいる。
以上より、読取部60がテストパターンTP0を読み取ると、テストパターンTP0に含まれる複数のドット38の配置と読取部60における読取解像度Xr×Yrとの干渉による読取濃度値Rp(X,Y)のモアレが生じる可能性がある。例えば、印刷解像度Xpが読取解像度Xrに近かったり印刷解像度Ypが読取解像度Yrに近かったりすると、読取濃度値Rp(X,Y)にモアレが生じ易い。ノズル34の並び方向D4が基準からずれていたり素子並び方向D5が基準からずれていたりすると、読取解像度Xr×Yrの単位よりも遥かに大きい周期のモアレが読取濃度値Rp(X,Y)に生じる可能性がある。
【0038】
一定の濃度のパッチPA0が読み取られると、モアレが生じなければ、図4の左下部及び右下部の二点鎖線に示すように、X方向に沿った読取濃度値Rp(X)、及び、Y方向に沿った読取濃度値Rp(Y)は略一定となるはずである。「略一定」と表現したのは、各読取素子61の読取値に微小のノイズが入ることがあるためである。読取濃度(Rp(X),Rp(Y))にモアレが生じると、微小のノイズよりも大きい周期的な変化が読取濃度(Rp(X),Rp(Y))に生じる。言い換えると、読取濃度(Rp(X,Y))にモアレが生じると、微小のノイズよりも大きい周期的な変化が読取濃度(Rp(X,Y))に生じる。読取濃度(Rp(X,Y))にモアレが発生すると、テストパターンTP0の読取結果に誤差が生じ、その結果、インク吐出量等といった液体吐出量の補正値にモアレ由来の誤差が生じる。そこで、テストパターンTP0を読み取る際にモアレの影響を低減させることが望まれる。
本具体例では、テストパターンTP0におけるドットパターンと読取解像度Xr×Yrとの干渉による読取濃度(Rp(X,Y))のモアレが生じるか否かを判別可能なモアレ特性情報IN0を用いることにより、効率よくモアレの影響を低減させることにしている。
【0039】
図5は、制御部U1がモアレ特性情報IN0に応じた回数のテストパターンTP0を形成するように制御する例を模式的に示している。モアレ特性情報IN0の詳細は、後述する。
制御部U1は、モアレ特性情報IN0を取得すると、モアレ特性情報IN0がモアレの発生を示しているか否かを判断する。モアレ特性情報IN0がモアレの発生を示していない場合、制御部U1は、Np段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0が媒体ME0の印刷面ME0pにN1回形成されるように液滴37の吐出を制御する。ただし、N1は、1以上の整数である。図5には、N1=1である場合に1回分のテストパターンTP0が印刷されることが示されている。一方、モアレ特性情報IN0がモアレの発生を示していない場合、制御部U1は、Np段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0が媒体ME0の印刷面ME0pにN2回形成されるように液滴37の吐出を制御する。ただし、N2は、N1よりも大きい整数である。図5には、N2=2である場合に送り方向D3において異なるN2箇所にテストパターンTP0が印刷されることが示されている。
【0040】
読取濃度値Rp(X,Y)にモアレが発生する場合、Np段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0は、モアレが発生しない場合におけるN1回よりも多いN2回、媒体ME0の印刷面ME0pに形成される。パッチPA0の濃度毎に読取濃度の平均値が求められると、モアレの影響が少ない濃度値が得られる。ここで、各テストパターンTP0を識別するための変数をiとする。変数iは、1からN2までの整数を示す。各ノズル34の液体吐出量を補正する場合、制御部U1は、まず、各パッチPA0について、Y位置毎に読取濃度値Rp,i(X,Y)を平均した読取濃度値Rp,i(Y)を求める。次に、制御部U1は、パッチPA0の濃度毎に読取濃度値Rp,i(Y)を平均した読取濃度平均値Rp(Y)を求める。読取濃度平均値Rp(Y)が読取濃度値Rp,i(Y)の相加平均である場合、以下の式により読取濃度平均値Rp(Y)が算出される。
【数1】

読取濃度値の平均は、相加平均に限定されず、中央値、加重平均、相乗平均、調和平均、等でもよい。
【0041】
以上より、制御部U1は、読取結果に基づいてN2回の各テストパターンTP0の読取濃度(Rp,i(Y))を取得し、N2回分の読取濃度(Rp,i(Y))を平均する演算を含む算出処理を行うことにより、印刷画像IM0の濃度を補正するための補正値を算出することになる。
同じ濃度の複数のパッチPA0に生じる読取濃度のモアレは、互いに異なることが多い。そこで、読取濃度値Rp,i(Y)を平均することにより、モアレの影響が少ない読取濃度平均値Rp(Y)が得られ、モアレの影響が少ない補正値が算出される。
【0042】
図2に示すように、各テストパターンTP0を構成するNp段階の濃度のパッチPA0の送り方向D3における並び順は、同じでもよい。送り方向D3において互いに同じ濃度のパッチPA0が近い位置にあると、これらのパッチPA0の間隔がモアレの周期よりも短くなることがある。この場合、読取濃度平均値Rp(Y)にモアレの影響が大きく現れる可能性があり、補正値にモアレの影響が大きく現れる可能性がある。テストパターンTP0間でNp段階の濃度のパッチPA0の並び順が変わらないことにより、送り方向D3において互いに同じ濃度のパッチPA0が遠い位置となり、これらのパッチPA0の間隔をモアレの周期よりも長くすることができる。従って、モアレの影響が少ない読取濃度平均値Rp(Y)が得られ、モアレの影響が少ない補正値が得られる。
【0043】
図6は、読取解像度Yr単位の読取濃度平均値Rp(Y)又は読取濃度値を用いてノズル単位の濃度補正を行う例を模式的に示している。図6において、横軸はテストパターンTP0を形成するためのテストパターンデータに対応する入力濃度値G1(Y)であり、縦軸はノズル34に対応する読取濃度値G2(Y)であり、曲線は入力濃度値G1(Y)と読取濃度値G2(Y)との対応関係を示している。入力濃度値G1(Y)は、例えば、パッチPA0の濃度に対応する階調値であり、例えば、0~255の階調値のうち16,32,…等といった離散的な値である。読取濃度値G2(Y)は、各ノズル34について読取解像度Yr単位の読取濃度平均値Rp(Y)等から求められる濃度値であり、例えば、0~255の階調値で表される。
【0044】
Np段階の入力濃度値G1(Y)のパッチPA0を含むテストパターンTP0が印刷され、各濃度のパッチPA0の読取濃度平均値Rp(Y)等からノズル単位の読取濃度値G2(Y)が求められると、図6に示す曲線のような対応関係が得られる。印刷画像IM0の濃度補正は、例えば、インク量データDA2に対して読取濃度値G2(Y)が入力濃度値G1(Y)となるように行われる。印刷画像IM0の濃度の補正値は、読取濃度値G2(Y)を入力濃度値G1(Y)に補正するための値であり、入力濃度値G1(Y)と読取濃度値G2(Y)との差を表す値でもよいし、読取濃度値G2(Y)そのものでもよい。図6に示すように、読取濃度値G2(Y)に対応する入力濃度値G1(Y)が濃度補正値G3(Y)として0~255の全階調値について求められてもよい。この場合、印刷画像IM0の濃度の補正値は、濃度補正値G3(Y)でもよい。
【0045】
(3)モアレ特性情報の具体例:
次に、図7以降を参照して、モアレ特性情報IN0の詳細を説明する。
図7は、制御部U1、例えば、図1に示すコントローラー10により行われるモアレ特性情報取得処理の例を模式的に示している。図7に示す例では、実際にテストパターンTP0を読取部60で読み取ることによりモアレ特性情報IN0が取得される。図8は、モアレ特性情報IN0の例を模式的に示している。
【0046】
まず、制御部U1は、印刷解像度Xp×Yp dpiを設定する(ステップS102)。以下、「ステップ」の記載を省略する。例えば、X方向の印刷解像度Xpが300 dpi、600 dpi、900 dpi、…のように複数段階に変更可能であり、Y方向の印刷解像度Ypが300 dpi、600 dpi、900 dpi、…のように複数段階に変更可能であるとする。この場合、制御部U1は、S302~S320の処理を繰り返すことを前提として、可能な組合せの印刷解像度Xp×Ypの中からいずれか一つの印刷解像度を設定すればよい。
次いで、制御部U1は、読取解像度Xr×Yr dpiを設定する(S104)。ここでも、制御部U1は、S302~S320の処理を繰り返すことを前提として、可能な組合せの読取解像度がXr×Yrの中からいずれか一つの印刷解像度を設定すればよい。読取解像度がXr×Yrが固定されている場合には、S104の処理は省略されてもよい。
【0047】
次いで、制御部U1は、送り方向D3へ移動している媒体ME0の印刷面ME0pに1回分のテストパターンTP0を印刷解像度Xp×Ypで形成するように液滴37の吐出を制御する(S106)。これにより、図2に示すようなNp段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0が1回分、印刷される。
次いで、制御部U1は、読取部60にテストパターンTP0を読取解像度Xr×Yrで読み取らせ、読取部60からテストパターンTP0の読取濃度値Rp(X,Y)を取得する(S108)。
【0048】
次いで、制御部U1は、読取濃度値Rp(X,Y)に対して周波数解析を行い、読取濃度値Rp(X,Y)において閾値を超える周波数成分を抽出する(S110)。周波数解析は、離散フーリエ変換(二次元離散フーリエ変換を含む。)でもよいし、高速フーリエ変換(二次元高速フーリエ変換を含む。)でもよいし、離散コサイン変換(二次元離散コサイン変換を含む。)等でもよい。尚、読取濃度値Rp(X,Y)に対して二次元高速フーリエ変換等の二次元変換を行うことにより生成されるパワースペクトル画像は、中心位置を周波数0として、中心から離れるにつれて周波数が高くなるように各方向の周波数成分が分布したデータである。
例えば、モアレとノイズを識別するための周波数の閾値をTmとする。モアレはノイズよりも低周波であるので、閾値Tm未満の周波数はモアレと判別され、閾値Tm未満でない周波数はノイズと判別される。そこで、制御部U1は、抽出された周波数成分に閾値Tm未満の周波数が存在する場合に読取濃度にモアレが生じると判別することができ、抽出された周波数成分に閾値Tm未満の周波数が存在しない場合に読取濃度にモアレが生じないと判別することができる。
【0049】
また、S110の周波数解析処理は、制御部U1が読取濃度値Rp(X,Y)のパワースペクトル画像を媒体ME0に形成させたり表示装置に表示させたりしてパワースペクトル画像にモアレが生じているか否かの選択を受けるような処理でもよい。この場合、パワースペクトル画像を見た作業者は、パワースペクトル画像の印刷物や表示を見たうえでパワースペクトル画像にモアレが生じているか否かを選択する操作を印刷装置1に行えばよい。
【0050】
次いで、制御部U1は、抽出された周波数成分等といった解析データに基づいて、例えば図8に示すようなモアレ特性情報IN0を取得し、図1に示す記憶部23にモアレ特性情報IN0を記憶する(S112)。図8に示すモアレ特性情報IN0は、印刷解像度Xp×Yp、読取解像度Xr×Yr、等の条件にモアレが生じるか否かを示す情報が紐付けられている。印刷解像度Xp×Ypと読取解像度Xr×Yr以外の条件を除いて例示すると、印刷解像度X1p×Y1p dpi且つ読取解像度X1r×Y1r dpiである条件には、モアレが生じないことを示すモアレ発生「無し」という情報が紐付けられている。印刷解像度X2p×Y2p dpi且つ読取解像度X1r×Y1r dpiである条件には、モアレが生じることを示すモアレ発生「有り」という情報が紐付けられている。従って、モアレ特性情報IN0は、テストパターンTP0に含まれる複数のドット38の配置と読取部60における読取解像度Xr×Yrとの干渉による読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能な情報である。
制御部U1は、可能な組合せの印刷解像度Xp×Yp、及び、可能な組合せの読取解像度Xr×Yrについて、S102~S112に従ってモアレ特性情報IN0を取得する。全てのモアレ特性情報IN0が取得されると、制御部U1は、モアレ特性情報取得処理を終了させる。
【0051】
また、制御部U1は、図9に例示するモアレ特性情報取得処理に従ってモアレ特性情報IN0を取得してもよい。図9は、読取濃度値Rp(X,Y)を予測するモアレ特性情報取得処理の例を模式的に示している。図9に示す例では、テストパターンTP0を表すテストパターンデータから求められる複数のドット38の配置と読取部60における読取解像度Xr×Yrとに基づいた解析結果からモアレ特性情報IN0が取得される。
【0052】
まず、制御部U1は、読取濃度のモアレ発生に影響を与えるパラメーターを取得する(S202)。モアレ発生に影響を与えるパラメーターには、印刷解像度Xp×Yp、読取解像度Xr×Yr、読取部60を基準とした印刷ヘッド30の傾きθ、及び、必要に応じて他のパラメーターが含まれる。傾きθは、素子並び方向D5を基準としたノズル34の並び方向D4のずれともいえる。傾きθが送り方向D3及び幅方向D1に沿った平面における傾きである場合、ノズル列33に含まれる複数のノズル34から液滴37を媒体ME0に吐出し、印刷面ME0pに形成された線状パターンを読取部60で読み取り、得られる読取濃度値から線状パターンの向きを検出することにより、傾きθを取得することができる。また、傾きθは、送り方向D3に直交する平面における傾きでもよい。
【0053】
次いで、制御部U1は、テストパターンTP0を表すテストパターンデータからドットデータDA3を生成する(S204)。テストパターンデータは、例えば、テストパターンTP0に含まれるNp段階の濃度のパッチPA0のそれぞれに合わせた階調値を有するインク量データDA2とすることができる。テストパターンデータは、無彩色といった1色のテストパターンTP0を形成するためのインク量データDA2でもよいし、C、M、Y、及び、Kの色別にテストパターンTP0を形成するためのインク量データDA2でもよい。制御部U1は、ハーフトーン処理部13において、インク量データDA2に対してハーフトーン処理を行うことによりドットデータDA3を生成することができる。
【0054】
次いで、制御部U1は、ドットデータDA3で表される複数のドット38の配置、読取解像度Xr×Yr、傾きθ、及び、必要に応じて他のパラメーターを用いて、読取解像度Xr×Yrの読取濃度予測データを生成する(S206)。複数のドット38は、大ドット、中ドット、及び、小ドット等といった、サイズの異なるドットを含んでいてもよい。例えば、制御部U1は、得られた複数のドット38の配置、傾きθ、及び、必要に応じて他のパラメーターに基づいて読取解像度Xr×Yrの単位で読取濃度値Rp(X,Y)をシミュレーションにより予測することができる。
【0055】
次いで、制御部U1は、読取濃度予測データ、例えば、読取濃度値Rp(X,Y)に対して周波数解析を行い、読取濃度値Rp(X,Y)において閾値を超える周波数成分を抽出する(S208)。ここでも、周波数解析は、離散フーリエ変換(二次元離散フーリエ変換を含む。)でもよいし、高速フーリエ変換(二次元高速フーリエ変換を含む。)でもよいし、離散コサイン変換(二次元離散コサイン変換を含む。)等でもよい。例えば、モアレとノイズを識別するための周波数の閾値Tm未満の周波数はモアレと判別され、閾値Tm未満でない周波数はノイズと判別される。そこで、制御部U1は、抽出された周波数成分に閾値Tm未満の周波数が存在する場合に読取濃度にモアレが生じると判別することができ、抽出された周波数成分に閾値Tm未満の周波数が存在しない場合に読取濃度にモアレが生じないと判別することができる。
【0056】
また、S208の周波数解析処理は、制御部U1が読取濃度値Rp(X,Y)のパワースペクトル画像を媒体ME0に形成させたり表示装置に表示させたりしてパワースペクトル画像にモアレが生じているか否かの選択を受けるような処理でもよい。この場合、パワースペクトル画像を見た作業者は、パワースペクトル画像の印刷物や表示を見たうえでパワースペクトル画像にモアレが生じているか否かを選択する操作を印刷装置1に行えばよい。
【0057】
次いで、制御部U1は、抽出された周波数成分等といった解析データに基づいて、例えば図8で示したようなモアレ特性情報IN0を取得し、図1に示す記憶部23にモアレ特性情報IN0を記憶する(S210)。
制御部U1は、モアレ特性情報IN0を取得した後、モアレ特性情報取得処理を終了させる。
【0058】
尚、図7に示されるS102~S110の処理や図9に示されるS202~S208の処理は、印刷装置1でない外部コンピューターで行われてもよい。この場合、制御部U1は、図7に示されるS112や図9に示されるS210において、前述の外部コンピューターからモアレ特性情報IN0を取得してもよい。
【0059】
(4)印刷特性を補正する処理の具体例:
以下、図10等を参照して、印刷特性を補正する処理の例を説明する。
図10は、印刷画像IM0の濃度を補正する濃度補正処理を模式的に例示している。図10に示す濃度補正処理は、制御部U1、例えば、図1に示すコントローラー10により行われる。コントローラー10は、例えば、テストパターンTP0を用いた濃度補正の指示をホスト装置HO1又は操作パネル24から受け付けると、濃度補正処理を開始させる。上述したように、図8に示すようなモアレ特性情報IN0が記憶部23に記憶されているものとする。図10において、S306はモアレ特性情報IN0の取得工程ST1に対応し、S310はテストパターンTP0をN1回形成する第一形成工程ST2に対応し、S312はテストパターンTP0をN2回形成する第二形成工程ST3に対応している。
【0060】
濃度補正処理が開始すると、コントローラー10は、テストパターンTP0の印刷解像度Xp×Yp dpiを設定する(S302)。コントローラー10は、ホスト装置HO1又は操作パネル24から印刷解像度Xp×Ypの設定を受け付けてもよい。
次いで、コントローラー10は、テストパターンTP0の読取解像度Xr×Yr dpiを設定する(S304)。コントローラー10は、ホスト装置HO1又は操作パネル24から読取解像度Xr×Yrの設定を受け付けてもよい。読取解像度がXr×Yrが固定されている場合には、S304の処理は省略されてもよい。
【0061】
次いで、コントローラー10は、設定された印刷解像度Xp×Yp及び読取解像度Xr×Yrに応じたモアレ特性情報IN0を取得する(S306)。
次いで、コントローラー10は、取得されたモアレ特性情報IN0が読取濃度のモアレの発生を示しているか否かを判断する(S308)。図8に示すモアレ特性情報IN0において、印刷解像度と読取解像度以外の条件を除いて例示すると、印刷解像度がX1p×Y1p dpiであって読取解像度がX1r×Y1r dpiである場合、モアレ特性情報IN0のモアレ発生は「無し」であり、モアレ特性情報IN0はモアレの発生を示していない。この場合、制御部U1は、処理をS310に進める。印刷解像度がX2p×Y2p dpiであって読取解像度がX1r×Y1r dpiである場合、モアレ特性情報IN0のモアレ発生は「有り」であり、モアレ特性情報IN0はモアレの発生を示している。この場合、制御部U1は、処理をS312に進める。
【0062】
モアレ特性情報IN0が読取濃度のモアレの発生を示していない場合、コントローラー10は、図5に示すように、Np段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0が媒体ME0にN1回形成されるように液滴37の吐出を制御する(S310)。上述したように、モアレ発生「無し」におけるテストパターンTP0の形成回数N1は、1以上の整数であって、モアレ発生「有り」におけるテストパターンTP0の形成回数N2よりも少ない。
モアレ特性情報IN0が読取濃度のモアレの発生を示している場合、コントローラー10は、図2,5に示すように、Np段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0が媒体ME0にN2回形成されるように液滴37の吐出を制御する(S312)。上述したように、モアレ発生「有り」におけるテストパターンTP0の形成回数N2は、モアレ発生「無し」におけるテストパターンTP0の形成回数N1よりも多い。
【0063】
S310又はS312の処理に次いで、コントローラー10は、N1回分又はN2回分のテストパターンTP0を読取部60に読取解像度Xr×Yrで読み取らせ、各パッチPA0の読取濃度値Rp,i(X,Y)を読取部60から取得する(S314)。読取濃度値Rp,i(X,Y)は、N1回分又はN2回分のテストパターンTP0に含まれる各パッチPA0の読取解像度Xr×Yrの読取濃度値である。
次いで、コントローラー10は、N1回分又はN2回分のテストパターンTP0に含まれる各パッチPA0の読取濃度値Rp,i(X,Y)をY位置毎に平均することにより、各パッチPA0の読取解像度Yr単位の読取濃度値Rp,i(Y)を算出する(S316)。
【0064】
次いで、コントローラー10は、テストパターンTP0の形成回数が2回以上である場合、パッチPA0の濃度毎に読取濃度値Rp,i(Y)を平均することにより読取解像度Yr単位の読取濃度平均値Rp(Y)を算出する(S318)。N1=1、すなわち、テストパターンTP0の形成回数が1回である場合、コントローラー10は、読取濃度値Rp,i(Y)をそのまま読取濃度平均値Rp(Y)として扱う。
次いで、コントローラー10は、読取解像度Yr単位の読取濃度平均値Rp(Y)を用いて各ノズル34の読取濃度値G2(Y)を算出し、各ノズル34の補正値を決定する(S320)。印刷画像IM0の濃度補正は、例えば、図6に示すように、インク量データDA2に対して読取濃度値G2(Y)が入力濃度値G1(Y)となるように行われる。コントローラー10は、読取濃度値G2(Y)に対応する入力濃度値G1(Y)を濃度補正値G3(Y)として0~255の全階調値について求めてもよい。上述したように、補正値は、入力濃度値G1(Y)と読取濃度値G2(Y)との差を表す値でもよいし、読取濃度値G2(Y)そのものでもよいし、濃度補正値G3(Y)でもよい。
【0065】
S320の処理後、コントローラー10は、濃度補正処理を終了させる。その後、コントローラー10は、元画像データDA1に基づいた印刷画像IM0の形成時、読取濃度値G2(Y)が入力濃度値G1(Y)となるようにインク量データDA2を補正することにより、濃度が補正された印刷画像IM0を媒体ME0に形成させる。
【0066】
以上より、読取濃度にモアレが発生する場合、テストパターンTP0は、読取濃度にモアレが発生しない場合におけるN1回よりも多いN2回、媒体ME0に形成される。同じ濃度の複数のパッチPA0に生じる読取濃度のモアレは、互いに異なることが多い。そこで、N2回分のテストパターンTP0が読取部60により読み取られることにより、モアレの影響が少ない読取結果を得ることが可能となる。例えば、N2回分の読取濃度値Rp,i(Y)からは、モアレの影響が少ない読取濃度平均値Rp(Y)が得られ、モアレの影響が少ない補正値が算出される。一方、読取濃度にモアレが発生しない場合、テストパターンTP0は、読取濃度にモアレが発生する場合におけるN2回よりも少ないN1回しか媒体ME0に形成されない。これにより、形成されるテストパターンTP0を少なくさせることができる。従って、本具体例は、テストパターンTP0を読み取る際に効率よくモアレの影響を低減させることが可能となる。
【0067】
その結果、MFP(複合機)等で主流となっているCIS方式イメージセンサーに生じ易い読取濃度のモアレの影響を低減させることができ、自己スキャナーを使ってノズル単位の濃度補正を行うことが可能となる。これにより、サービスの負荷を低減させたり、ユーザー自身で印刷ヘッドの交換が可能になったりする等のメリットが得られる。
【0068】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、プリンター2は、幅方向D1の全体にわたって複数のノズルが連続するように並べられたライン式プリンターに限定されず、送り方向D3と交差する主走査方向に沿って印刷ヘッド30が移動するシリアル式プリンター等でもよい。すなわち、媒体ME0と印刷ヘッド30の少なくとも一方が移動する走査方向は、送り方向D3に沿った方向に限定されず、送り方向D3と交差するでもよい。
搬送部50は、走査方向において、媒体ME0を移動させる代わりに印刷ヘッド30を移動させてもよく、媒体ME0と印刷ヘッド30の両方を移動させてもよい。
読取部60は、読取解像度の単位で印刷面ME0pの濃度を読み取ることができればよく、Y方向の読取解像度Yrとなるように並べられた複数の読取素子61を含む読取部に限定されない。例えば、複数の読取素子61は、X方向の読取解像度Xrとなるように並べられてもよいし、X方向及びY方向の二次元状に並べられてもよい。
【0069】
媒体ME0に印刷画像IM0を形成する色材の種類は、C、M、Y、及び、Kに限定されず、C、M、Y、及び、Kに加えて、オレンジ、グリーン、Cよりも低濃度のライトシアン、Mよりも低濃度のライトマゼンタ、Yよりも高濃度のダークイエロー、Kよりも低濃度のライトブラック、画質向上用の無着色の色材、等を含んでもよい。また、C、M、Y、及び、Kの一部の色材を使用しない場合にも、本技術を適用可能である。
【0070】
テストパターンTP0が媒体ME0に複数回形成される場合、走査方向において各テストパターンTP0に含まれる複数のパッチPA0の順番は、同じであることに限定されず、異なっていてもよい。
テストパターンTP0は、印刷画像IM0の濃度を補正するためのテストパターンに限定されない。テストパターンTP0は、媒体ME0の搬送量を取得するための罫線パターン、キャリッジを備えるプリンターにおいて往路と復路とで液滴37の着弾位置を合わせるためのテストパターン、等でもよい。読取濃度のモアレがテストパターンの読み取りに影響するものには、本技術を適用可能である。
【0071】
モアレ特性情報IN0がモアレの発生を示している場合のテストパターンTP0の形成回数N2は、モアレの生じ易さに応じて異なっていてもよい。例えば、周波数の閾値Tmよりも低い周波数の閾値をTnとする。制御部U1は、周波数解析により抽出された周波数成分に閾値Tn未満の周波数が存在する場合にモアレの生じ易さが大と判別し、前述の抽出された周波数成分に閾値Tn未満の周波数が存在しないが閾値Tm未満の周波数が存在する場合にモアレの生じ易さが中と判別してもよい。
モアレ特性情報IN0は、読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能な情報であればよく、テストパターンTP0を読取解像度の単位で読み取った結果そのものでもよいし、読取濃度予測データそのもの等でもよい。
つまり本明細書における「判別可能」とは、予測の意味合いを含意した文言であり、時系列的に現在よりも後に形成されるテストパターンにおけるモアレの発生を予測する、という意味合いを含んでいる。
【0072】
上述の具体例においてモアレ特性情報IN0は印刷解像度および読取解像度以外の条件を除いて記載をしたが、別の条件に基づいてモアレ発生の有無を判断してもよい。
その際にテストパターンTP0の一部分のみモアレ発生が「有り」と判断された場合には、モアレ発生が「有り」と判断された部分のみN2回形成し、モアレ発生が「無し」と判断された部分はN1回形成してもよい。
具体的には、モアレ特性情報IN0が印刷解像度、読取解像度および階調値に基づいて決定され、図2におけるパッチPA0のうち、階調値の高い3つのパッチPA0のみ、モアレ発生が「有り」、それ以外のパッチPA0のモアレ発生が「無し」だと判断された場合には、階調値の高い3つのパッチPA0のみN2回形成し、それ以外のパッチPA0はN1回形成する、という制御をしても良い。
もちろん、テストパターンをN2回形成するという文言は上述の制御を含意した記載である。
【0073】
上述した処理を行う主体は、CPUに限定されず、ASIC等といったCPU以外の電子部品でもよい。むろん、複数のCPUが協働して上述した処理を行ってもよいし、CPUと他の電子部品(例えばASIC)とが協働して上述した処理を行ってもよい。
上述した処理は、順番を入れ替える等、適宜、変更可能である。例えば、図7に示すモアレ特性情報取得処理において、S104の読取解像度設定処理は、S102の印刷解像度設定処理の前に行うことが可能である。
上述した処理の一部は、ホスト装置HO1が行ってもよい。この場合、コントローラー10とホスト装置HO1の組合せが印刷装置1の例となる。
【0074】
図11に示すように、制御部U1は濃度補正処理を開始させてからテストパターンTP0の読み取りに基づいてモアレ特性情報IN0を取得してもよい。図11は、印刷画像IM0の濃度を補正する濃度補正処理の別の例を模式的に例示している。図11において、S410はモアレ特性情報IN0の取得工程ST1に対応し、S406,S414はテストパターンTP0をN1回形成する第一形成工程ST2に対応し、S406,S416はテストパターンTP0をN2回形成する第二形成工程ST3に対応している。
【0075】
濃度補正処理が開始すると、コントローラー10は、テストパターンTP0の印刷解像度Xp×Yp dpiを設定し(S402)、必要に応じてテストパターンTP0の読取解像度Xr×Yr dpiを設定する(S404)。
次いで、コントローラー10は、送り方向D3へ移動している媒体ME0の印刷面ME0pに1回分のテストパターンTP0を印刷解像度Xp×Ypで形成するように液滴37の吐出を制御する(S406)。
【0076】
次いで、コントローラー10は、取部60にテストパターンTP0を読取解像度Xr×Yrで読み取らせ、読取部60からテストパターンTP0の読取濃度値Rp(X,Y)を取得する(S408)。
次いで、コントローラー10は、読取濃度値Rp(X,Y)に対して周波数解析を行い、読取濃度値Rp(X,Y)において閾値を超える周波数成分を抽出し、得られる解析データに基づいてモアレ特性情報IN0を取得する(S410)。取得されるモアレ特性情報IN0は、今回の濃度補正処理において読取濃度のモアレが生じるか否かを判別可能な情報であればよいため、図8に示すような「モアレ発生」が「有り」であるか「無し」であるかを示す情報だけでもよい。例えば、コントローラー10は、抽出された周波数成分に閾値Tm未満の周波数が存在する場合にモアレ発生「有り」を示すモアレ特性情報IN0を取得し、且つ、抽出された周波数成分に閾値Tm未満の周波数が存在しない場合にモアレ発生「無し」を示すモアレ特性情報IN0を取得してもよい。
【0077】
次いで、コントローラー10は、取得されたモアレ特性情報IN0が読取濃度のモアレの発生を示しているか否かを判断する(S412)。
【0078】
モアレ特性情報IN0が読取濃度のモアレの発生を示しておらず、モアレ発生「無し」におけるテストパターンTP0の形成回数N1が2以上である場合、コントローラー10は、図5に示すように、Np段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0がさらにN1-1回、媒体ME0に形成されるように液滴37の吐出を制御する(S414)。N1=1である場合、コントローラー10は、テストパターンTP0を形成する処理を行わず、S408で取得した読取濃度値Rp(X,Y)を読取濃度値Rp,i(X,Y)として扱うことにして、処理をS420に進める。
モアレ特性情報IN0が読取濃度のモアレの発生を示している場合、コントローラー10は、図2,5に示すように、Np段階の濃度のパッチPA0を含むテストパターンTP0がさらにN2-1回、媒体ME0に形成されるように液滴37の吐出を制御する(S416)。
【0079】
S414又はS416の処理に次いで、コントローラー10は、N1-1回分又はN2-1回分のテストパターンTP0を読取部60に読取解像度Xr×Yrで読み取らせ、各パッチPA0の読取濃度値Rp,i(X,Y)を読取部60から取得する(S418)。ここで、コントローラー10は、S408で取得した読取濃度値Rp(X,Y)も読取濃度値Rp,i(X,Y)として扱う。従って、読取濃度値Rp,i(X,Y)は、N1回分又はN2回分のテストパターンTP0に含まれる各パッチPA0の読取解像度Xr×Yrの読取濃度値となる。
次いで、コントローラー10は、N1回分又はN2回分のテストパターンTP0に含まれる各パッチPA0の読取濃度値Rp,i(X,Y)をY位置毎に平均することにより、各パッチPA0の読取解像度Yr単位の読取濃度値Rp,i(Y)を算出する(S420)。
【0080】
次いで、コントローラー10は、テストパターンTP0の形成回数が2回以上である場合、パッチPA0の濃度毎に読取濃度値Rp,i(Y)を平均することにより読取解像度Yr単位の読取濃度平均値Rp(Y)を算出する(S422)。N1=1である場合、コントローラー10は、読取濃度値Rp,i(Y)をそのまま読取濃度平均値Rp(Y)として扱う。
次いで、コントローラー10は、読取解像度Yr単位の読取濃度平均値Rp(Y)を用いて各ノズル34の読取濃度値G2(Y)を算出し、各ノズル34の補正値を決定する(S424)。S424の処理後、コントローラー10は、濃度補正処理を終了させる。
【0081】
以上より、図11に示す例は、テストパターンTP0を読み取る際に動的に効率よくモアレの影響を低減させることが可能となる。
【0082】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、テストパターンを読み取る際に効率よくモアレの影響を低減させることが可能な技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…印刷装置、2…プリンター、10…コントローラー、30…印刷ヘッド、33…ノズル列、34…ノズル、36…液体、37…液滴、38…ドット、50…搬送部、60…読取部、61…読取素子、CH0…チップ、D1…幅方向、D3…送り方向(走査方向の例)、D4…並び方向、D5…素子並び方向、DA1…元画像データ、DA2…インク量データ、DA3…ドットデータ、HO1…ホスト装置、IN0…モアレ特性情報、IM0…印刷画像、ME0…媒体、ME0p…印刷面、TP0…テストパターン、PA0…パッチ、PX0…画素、ST1…取得工程、ST2…第一形成工程、ST3…第二形成工程、U1…制御部。
図1
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