(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086055
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】圧電駆動装置およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20240620BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H02N2/04
B25J19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200939
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】梶野 喜一
(72)【発明者】
【氏名】露木 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡前 雄大
【テーマコード(参考)】
3C707
5H681
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707BT12
3C707DS01
3C707HS29
5H681AA12
5H681BB02
5H681BB13
5H681BB14
5H681BC08
5H681CC02
5H681DD23
5H681DD55
5H681DD73
5H681EE10
(57)【要約】
【課題】被駆動部への溝の発現を抑制することができる圧電駆動装置およびロボットシステムを提供する。
【解決手段】圧電駆動装置は、圧電素子を備え前記圧電素子への通電により振動する振動部と、前記振動部に配置され、被駆動部に駆動力を伝達する凸部と、を有する振動体と、前記振動体を間に挟み込んで配置され、前記凸部を前記被駆動体に向けて付勢する第1付勢部および第2付勢部と、を有し、前記第1付勢部、前記振動体および前記第2付勢部が重なる方向を厚さ方向としたとき、前記第1付勢部および前記第2付勢部は、それぞれ、前記厚さ方向に重なる複数の板状バネ部を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を備え前記圧電素子への通電により振動する振動部と、前記振動部に配置され、被駆動部に駆動力を伝達する凸部と、を有する振動体と、
前記振動体を間に挟み込んで配置され、前記凸部を前記被駆動体に向けて付勢する第1付勢部および第2付勢部と、を有し、
前記第1付勢部、前記振動体および前記第2付勢部が重なる方向を厚さ方向としたとき、前記第1付勢部および前記第2付勢部は、それぞれ、前記厚さ方向に重なる複数の板状バネ部を備えていることを特徴とする圧電駆動装置。
【請求項2】
前記厚さ方向に隣り合う前記板状バネ部は、離間して配置されている請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項3】
前記第1付勢部および前記第2付勢部は、それぞれ、前記厚さ方向に重なる2つの前記板状バネ部を備えている請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項4】
前記第1付勢部および前記第2付勢部は、それぞれ、前記厚さ方向に重なる3つの前記板状バネ部を備えている請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項5】
前記第1付勢部および前記第2付勢部は、互いに異なる数の前記板状バネ部を備えている請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項6】
前記第1付勢部および前記第2付勢部は、前記板状バネ部が接続され、前記振動体を支持する支持部を有し、
前記支持部には、溝が形成されている請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項7】
ロボットアームを備えるロボットと、
前記ロボットアームに装着されている移動ステージと、
前記移動ステージに装着されている工具と、を有し、
前記移動ステージは、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の圧電駆動装置を備えていることを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電駆動装置およびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された圧電モーターは、フレームと、フレーム内に並んで配置された第1、第2圧電アクチュエーターと、第1、第2圧電アクチュエーターの間に位置し、これらを離間する方向に付勢する一対のばね荷重支持体と、第1圧電アクチュエーターとフレームとの間に位置するローラーと、第2圧電アクチュエーターとフレームとの間に位置するローラーと、第1、第2圧電アクチュエーターを被駆動体に押し付けるばね荷重戻り支持体と、を有する。このような圧電モーターは、第1、第2圧電アクチュエーターを駆動してその先端部に配置された硬質セラミックチップを楕円運動させることにより、被駆動体を押し出して所定方向にスライド移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧電モーターでは、フレームによって第1、第2圧電アクチュエーターの厚さ方向への変位が規制されているため、硬質セラミックチップは、実質的に被駆動体の駆動方向にのみ振動する。そのため、圧電モーターの駆動を続けると、硬質セラミックチップとの摩擦によって被駆動体の同じ部分が摩耗し続け、被駆動体に駆動方向に沿った溝(轍)が形成される。このような溝が形成されると、溝が抵抗となって駆動力が低下するおそれがある。また、被駆動体の消耗を早め、圧電モーターが短命となるおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧電駆動装置は、圧電素子を備え前記圧電素子への通電により振動する振動部と、前記振動部に配置され、被駆動部に駆動力を伝達する凸部と、を有する振動体と、
前記振動体を間に挟み込んで配置され、前記凸部を前記被駆動体に向けて付勢する第1付勢部および第2付勢部と、を有し、
前記第1付勢部、前記振動体および前記第2付勢部が重なる方向を厚さ方向としたとき、
前記第1付勢部および前記第2付勢部は、それぞれ、前記厚さ方向に重なる複数の板状バネ部を備えている。
【0006】
本発明のロボットシステムは、ロボットアームを備えるロボットと、
前記ロボットアームに装着されている移動ステージと、
前記移動ステージに装着されている工具と、を有し、
前記移動ステージは、上記の圧電駆動装置を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る圧電モーターを示す平面図である。
【
図5】圧電アクチュエーターに印加する駆動信号を示す図である。
【
図6】圧電アクチュエーターの駆動状態を示す平面図である。
【
図7】圧電アクチュエーターの駆動状態を示す平面図である。
【
図8】比較対象としての圧電駆動装置の分解斜視図である。
【
図9】
図8に示す圧電駆動装置の問題点を説明するための断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る圧電駆動装置の断面図である。
【
図11】第3実施形態に係る圧電駆動装置の断面図である。
【
図12】第4実施形態に係る圧電駆動装置の分解斜視図である。
【
図13】第5実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の圧電駆動装置およびロボットシステムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る圧電モーターを示す平面図である。
図2は、圧電駆動装置の分解斜視図である。
図3は、圧電アクチュエーターの平面図である。
図4は、圧電駆動装置の断面図である。
図5は、圧電アクチュエーターに印加する駆動信号を示す図である。
図6および
図7は、それぞれ、圧電アクチュエーターの駆動状態を示す平面図である。
図8は、比較対象としての圧電駆動装置の分解斜視図である。
図9は、
図8に示す圧電駆動装置の問題点を説明するための断面図である。
【0010】
なお、各図に互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を示し、以下では、X軸に沿う方向をX軸方向、Y軸に沿う方向をY軸方向、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」、マイナス側を「下」とも言い、X軸方向プラス側を「先端」、マイナス側を「基端」とも言う。
【0011】
図1に示すように、圧電モーター1は、Y軸方向に直線移動する被駆動部としてのスライダー2と、スライダー2の側面21に当接する圧電駆動装置3と、圧電駆動装置3の駆動を制御する制御装置9と、を有する。このような圧電モーター1では、圧電駆動装置3の駆動力がスライダー2に伝わり、スライダー2がY軸方向に直線移動する。
【0012】
ただし、圧電モーター1の構成は、特に限定されない。例えば、スライダー2に対して複数の圧電駆動装置3を配置し、複数の圧電駆動装置3の駆動によってスライダー2を直線移動させてもよい。また、圧電駆動装置3は、スライダー2の側面21ではなく、表面や裏面に当接していてもよい。また、被駆動部は、スライダー2のような直線移動するものではなく、ローターのように回転するものであってもよい。
【0013】
また、
図2に示すように、圧電駆動装置3は、振動体である圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4を間に挟み込んで配置された第1付勢部6および第2付勢部7と、を有する。
【0014】
また、
図3に示すように、圧電アクチュエーター4は、振動部41と、振動部41を支持する支持部42と、振動部41と支持部42とを接続する接続部43と、振動部41の先端部に固定され、振動部41の振動をスライダー2に伝達する凸部44と、を有する。
【0015】
振動部41は、Z軸方向を厚さ方向とし、X軸およびY軸を含むX-Y平面に広がる板状である。また、振動部41は、平面視で、伸縮方向であるX軸方向を長手とする矩形である。また、振動部41は、X軸方向に伸縮しながらY軸方向に屈曲することによりS字状に屈曲振動する。ただし、振動部41の形状は、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。
【0016】
また、振動部41は、振動部41を屈曲振動させる圧電素子4A~4Fを有する。振動部41の中央部には圧電素子4A、4BがX軸方向に並んで配置されている。また、圧電素子4A、4BのY軸方向プラス側には圧電素子4C、4DがX軸方向に並んで配置され、Y軸方向マイナス側には圧電素子4E、4FがX軸方向に並んで配置されている。これら圧電素子4A~4Fは、それぞれ、通電によってX軸方向に伸縮する。ただし、駆動用の圧電素子の数や配置は、振動部41を屈曲振動させることができれば、特に限定されない。
【0017】
図2に示すように、振動部41は、圧電素子4A~4Fを備える圧電素子層48を一対の基板49、49で挟み込んだ構成である。各基板49は、例えば、シリコン基板である。また、圧電素子4A~4Fは、圧電体を一対の電極で挟み込んだ構成である。
【0018】
圧電体の構成材料としては、特に限定されず、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックスを用いることができる。また、圧電体としては、上述した圧電セラミックスの他にも、ポリフッ化ビニリデン、水晶等を用いてもよい。
【0019】
また、圧電体の形成方法としては、特に限定されず、バルク材料から形成してもよいし、ゾル-ゲル法やスパッタリング法を用いて形成してもよい。本実施形態では、圧電体をゾル-ゲル法を用いて形成している。これにより、例えば、バルク材料から形成する場合と比べて薄い圧電体が得られ、圧電アクチュエーター4の薄型化を図ることができる。
【0020】
凸部44は、振動部41の先端部に設けられ、振動部41からX軸方向プラス側へ突出している。そして、凸部44の先端部は、第1、第2付勢部6、7によってスライダー2の側面21に押し付けられている。そのため、振動部41の振動は、凸部44を介してスライダー2に伝達される。凸部44の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニア、アルミナ、チタニア等の各種セラミックスが挙げられる。これにより、耐久性に優れた凸部44となる。なお、図面では凸部先端が平面に描かれているが、曲面であってもよい。
【0021】
支持部42は、振動部41を支持する。
図3に示すように、支持部42は、振動部41の三方を囲むU形状である。また、
図2に示すように、支持部42は、圧電素子層48とほぼ同じ厚さのスペーサー47を一対の基板49、49で挟み込んだ構成である。ただし、支持部42の構成は、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。
【0022】
また、
図3に示すように、接続部43は、振動部41の屈曲振動の節となる部分、具体的にはX軸方向の中央部と支持部42とを接続している。接続部43は、振動部41のY軸方向プラス側に位置し、振動部41と支持部42とを接続する第1接続部431と、振動部41のY軸方向マイナス側に位置し、振動部41と支持部42とを接続する第2接続部432と、を有する。ただし、接続部43の構成は、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。
【0023】
以上のような圧電アクチュエーター4は、第1、第2付勢部6、7によってスライダー2に向けて付勢され、これにより、凸部44がスライダー2の側面21に押し当てられている。
図2に示すように、第1付勢部6は、圧電アクチュエーター4の上側に位置し、第2付勢部7は、圧電アクチュエーター4の下側に位置している。
【0024】
第1付勢部6は、互いに同じ構成をなす2枚の板材6A、6Bの積層体で構成されている。具体的には、圧電アクチュエーター4の上側に板材6Aが配置され、板材6Aの上側に板材6Bが配置されている。板材6A、6Bは、それぞれ、圧電アクチュエーター4を支持する支持部61と、圧電駆動装置3をステージSTに固定する基台62と、支持部61と基台62とを接続する複数の板状バネ部63と、を有する。基台62には、圧電駆動装置3をステージSTに固定するためのネジNを挿通するネジ挿通孔621が2つ形成されている。また、複数の板状バネ部63は、X軸方向に等間隔に並んで配置されている。
【0025】
そして、
図4に示すように、板材6A、6Bの支持部61同士および基台62同士が接合部材Bで接合されている。これにより、板材6A、6Bが一体化し、1枚の第1付勢部6となる。なお、板材6A、6Bの板状バネ部63同士は、接合されておらず、これらの間に接合部材Bの厚み程度の隙間Gが形成されている。このように、板材6A、6Bの積層体で第1付勢部6を形成し、さらに板状バネ部63同士を接合しないことにより、X軸方向への付勢力を十分に維持しつつ、Z軸方向の剛性を低めることができる。このことについては、後に詳述する。また、板材6A、6Bの板状バネ部63同士の間に隙間Gを形成することで、これらの接触が抑制され、板状バネ部63をスムーズに弾性変形させることができる。
【0026】
板材6A、6Bは、それぞれ、シリコン基板であり、支持部61、基台62および板状バネ部63が一体形成されている。これにより、十分な機械的強度および弾性を有する板材6A、6Bが得られる。また、シリコンウエハ・プロセスを用いることができ、板材6A、6Bを高い加工精度で製造することもできる。また、圧電アクチュエーター4との熱膨張係数の差が小さくなり、熱応力を低減することができ、圧電アクチュエーター4の撓み、歪み等を抑制することができる。ただし、板材6A、6Bの構成材料は、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料、各種ガラス材料、各種セラミック材料等を用いることもできる。
【0027】
第2付勢部7は、前述した第1付勢部6と同様の構成であり、圧電アクチュエーター4に対して第1付勢部6と対称的に配置されている。また、
図2に示すように、第2付勢部7は、互いに同じ構成をなす2枚の板材7A、7Bの積層体で構成されている。具体的には、圧電アクチュエーター4の下側に板材7Aが配置され、板材7Aの下側に板材7Bが配置されている。板材7A、7Bは、それぞれ、圧電アクチュエーター4を支持する支持部71と、圧電駆動装置3をステージSTに固定する基台72と、支持部71と基台72とを接続する複数の板状バネ部73と、を有する。基台72には、圧電駆動装置3をステージSTに固定するためのネジNを挿通するネジ挿通孔721が2つ形成されている。また、複数の板状バネ部73は、X軸方向に等間隔に並んで配置されている。
【0028】
そして、
図4に示すように、板材7A、7Bの支持部71同士および基台72同士が接合部材Bで接合されている。これにより、板材7A、7Bが一体化し、1枚の第2付勢部7となる。なお、板材7A、7Bの板状バネ部73同士は、接合されておらず、これらの間に接合部材Bの厚み程度の隙間Gが形成されている。このように、板材7A、7Bの積層体で第2付勢部7を形成し、さらに板状バネ部73同士を接合しないことにより、X軸方向への付勢力を十分に維持しつつ、Z軸方向の剛性を低めることができる。このことについては、後に詳述する。また、板材7A、7Bの板状バネ部73同士の間に隙間Gを形成することで、これらの接触が抑制され、板状バネ部73をスムーズに弾性変形させることができる。
【0029】
板材7A、7Bは、それぞれ、シリコン基板であり、支持部71、基台72および板状バネ部73が一体形成されている。これにより、十分な機械的強度および弾性を有する板材7A、7Bが得られる。また、シリコンウエハ・プロセスを用いることができ、板材7A、7Bを高い加工精度で製造することもできる。また、圧電アクチュエーター4との熱膨張係数の差が小さくなり、熱応力を低減することができ、圧電アクチュエーター4の撓み、歪み等を抑制することができる。ただし、板材7A、7Bの構成材料は、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料、各種ガラス材料、各種セラミック材料等を用いることもできる。
【0030】
以上、第1、第2付勢部6、7の構成について説明した。上述したように、本実施形態では、板材6A、6B、7A、7Bが互いに同じ構成であるため、これらを区別なくまとめて製造することができ、製造コストを削減することができる。ただし、これに限定されず、例えば、板材6A、6Bで厚さが異なっていてもよいし、板材7A、7Bで厚さが異なっていてもよい。
【0031】
第1付勢部6は、板材6Aの支持部61の下面において接合部材Bを介して圧電アクチュエーター4の支持部42の上面に接合されている。また、第2付勢部7は、板材7Aの支持部71の上面において接合部材Bを介して圧電アクチュエーター4の支持部42の下面に接合されている。また、基台62、72の間には、圧電アクチュエーター4とほぼ同じ厚さのスペーサー8が配置されている。
【0032】
図1に示すように、第1、第2付勢部6、7の板状バネ部63、73をX軸方向に弾性変形させた状態で圧電駆動装置3をステージSTに固定することにより、板状バネ部63、73の復元力を利用して凸部44をスライダー2の側面21に押し付けることができる。
【0033】
制御装置9は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能なプログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラムを読み込んで実行する。このような制御装置9は、図示しないホストコンピューターからの指令を受け、この指令に基づいて圧電アクチュエーター4を駆動する。
【0034】
例えば、
図5に示す駆動信号V1を圧電素子4C、4Fに印加し、駆動信号V2を圧電素子4A、4Bに印加し、駆動信号V3を圧電素子4D、4Eに印加すると、
図6に示すように、振動部41がX軸方向に伸縮振動しつつY軸方向に逆S字状に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、凸部44の先端が矢印で示すように反時計回りに楕円軌道を描くように楕円運動する。これにより、スライダー2が送り出されてY軸方向プラス側に直線移動する。
【0035】
また、駆動信号V1、V3の波形を切り換えると、
図7に示すように、振動部41がX軸方向に伸縮振動しつつY軸方向にS字状に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、凸部44が矢印で示すように時計回りに楕円運動する。これにより、スライダー2が送り出されてY軸方向マイナス側に直線移動する。
【0036】
以上、圧電モーター1の構成について説明した。以下、第1付勢部6を2枚の板材6A、6Bの積層体とし、第2付勢部7を2枚の板材7A、7Bの積層体とした効果について詳細に説明する。まず、比較対象として、
図8に示す圧電駆動装置30について説明する。圧電駆動装置30では、第1付勢部60が1枚の板材からなり、厚さが板材6A、6Bの厚さの和(総厚)と等しい。同様に、第2付勢部70が1枚の板材からなり、厚さが板材7A、7Bの厚さの和(総厚)と等しい。言い換えると、第1付勢部60は、板材6Aの厚さを2倍にしたもので構成され、第2付勢部70は、板材7Aの厚さを2倍にしたもので構成されている。
【0037】
このような圧電駆動装置30では、第1付勢部60および第2付勢部70によって圧電アクチュエーター4を上下からバランスよくかつ大きな力で付勢することができる。また、厚さが厚い分、第1付勢部60および第2付勢部70のZ軸方向の剛性も高く、圧電アクチュエーター4の面外方向つまりZ軸方向への変位(ランダムなぶれ振動)が抑えられ、圧電アクチュエーター4で発生する駆動力をより効率的にスライダー2に伝えることができる。そのため、高い駆動力を発揮することができる。
【0038】
しかしながら、圧電アクチュエーター4のZ軸方向への変位を過度に抑えると、
図9に示すように、凸部44との摩擦によって側面21の同じ部分が摩耗し続け、スライダー2の移動方向に沿った轍状の溝210が形成されてしまう。溝210が形成されると溝210が抵抗となって圧電モーター1の駆動力が低下するおそれがある。また、スライダー2の摩耗を早め、圧電モーター1が短命となるおそれもある。
【0039】
この問題を解消するために、例えば、第1、第2付勢部60、70の厚さを薄くすることが容易に考えられる。これにより、第1、第2付勢部60、70のZ軸方向の剛性が下がり、圧電アクチュエーター4がZ軸方向に変位し易くなる。そのため、凸部44が側面21の広い範囲と満遍なく接触して側面21の摩耗ムラが低減し、溝210の発現が抑制される。しかしながら、第1、第2付勢部60、70の厚さを薄くする分、板状バネ部63、73が柔らかくなりX軸方向への付勢力が低下する。そのため、凸部44をスライダー2の側面21に押し付ける力が小さくなり、圧電モーター1の駆動力が低下するという別の問題が生じる。
【0040】
このように、第1、第2付勢部60、70をそれぞれ1枚の板材から構成した場合、第1、第2付勢部60、70のX軸方向への付勢力を十分に高く保ちつつ、Z軸方向の剛性を下げることが困難である。そこで、本実施形態では、第1付勢部60を厚さ方向に2分割した形状の板材6A、6Bを準備し、これらの板材6A、6Bを接合部材Bで接合することにより第1付勢部6としている。同様に、第2付勢部70を厚さ方向に2分割した形状の板材7A、7Bを準備し、これらの板材7A、7Bを接合部材Bで接合することにより第2付勢部7としている。これにより、第1、第2付勢部6、7のX軸方向への付勢力をそのままに、Z軸方向の剛性だけを下げることができる。
【0041】
具体的には、板状バネ部63のZ軸方向の剛性をAとしたとき、板状バネ部63の厚さをn倍にすると、Z軸方向の剛性がA×n3となる。また、板状バネ部63をZ軸方向にn枚積層すると、Z軸方向の剛性がA×nとなる。そのため、第1付勢部60をn枚の板材に分割して第1付勢部6とすると、第1付勢部6のZ軸方向の剛性は、第1付勢部60のZ軸方向の剛性の1/n2となる。つまり、第1付勢部6のZ軸方向の変位量は、第1付勢部60のZ軸方向の変位量の約n2倍となる。当然、この関係は、第2付勢部7と第2付勢部70とでも同様である。
【0042】
本実施形態に当てはめれば、第1付勢部6と第1付勢部60とでは、板状バネ部63の総厚が同じである。したがって、X軸方向の付勢力については、両者でほぼ等しい。これに対して、第1付勢部6では、第1付勢部60を2枚の板材6A、6Bに分割しているため、Z軸方向の剛性が第1付勢部60の1/4となる。そのため、第1付勢部6は、第1付勢部60に対して4倍程度Z軸方向に変位し易くなる。このことは、第2付勢部7についても同様である。
【0043】
以上から、第1付勢部6を2枚の板材6A、6Bの積層体で構成し、第2付勢部7を2枚の板材7A、7Bの積層体で構成することにより、X軸方向の付勢力を維持したまま、Z軸方向の剛性だけを下げることができる。X軸方向の付勢力を維持することにより、凸部44を十分に大きな力でスライダー2の側面21に押し付けることができ、圧電モーター1の駆動力の低下を抑制することができる。さらに、Z軸方向の剛性を低下させることにより、圧電アクチュエーター4がZ軸方向に変位し易くなり、凸部44が側面21の広い範囲と満遍なく接触して側面21の摩耗ムラが低減するため、溝210の発現が抑制される。このように、圧電モーター1では、高い駆動力を発揮しつつ、溝210の発現を抑制することができる。
【0044】
また、第1、第2付勢部6、7によれば、板材6A、6B、7A、7Bの厚さを薄くできるため、シリコンウエハ・プロセスによって板材6A、6Bをより高い加工精度で製造することもできる。
【0045】
なお、第1付勢部6を構成する板材の数としては、2枚に限定されず、3枚以上であってもよい。ただし、板材の数が増えるほど、接合工程が増えて製造コストが上昇するため、3枚以下であることが好ましい。第2付勢部7についても同様である。これにより、圧電駆動装置3の製造コストを抑えつつ、第1、第2付勢部6、7のZ軸方向の剛性を十分に下げることができる。
【0046】
以上、圧電モーター1について説明した。このような圧電モーター1が備える圧電駆動装置3は、圧電素子4A~4Fを備え圧電素子4A~4Fへの通電により振動する振動部41と、振動部41に配置され、被駆動部であるスライダー2に駆動力を伝達する凸部44と、を有する振動体としての圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4を間に挟み込んで配置され、凸部44をスライダー2に向けて付勢する第1付勢部6および第2付勢部7と、を有する。また、第1付勢部6、圧電アクチュエーター4および第2付勢部7が重なる方向であるZ軸方向を厚さ方向としたとき、第1付勢部6は、厚さ方向に重なる複数の板状バネ部63を備え、第2付勢部7は、厚さ方向に重なる複数の板状バネ部73を備えている。このような構成によれば、凸部44をスライダー2に押し付ける力を維持したまま、第1、第2付勢部6、7のZ軸方向の剛性だけを下げることができる。そのため、凸部44を十分に大きな力でスライダー2の側面21に押し付けることができ、圧電モーター1の駆動力の低下を抑制することができる。さらに、圧電アクチュエーター4がZ軸方向に変位し易くなり、凸部44がスライダー2の広い範囲と満遍なく接触してスライダー2の摩耗ムラが低減するため、溝210の発現が抑制される。このように、圧電駆動装置3では、高い駆動力を発揮しつつ、溝210の発現を抑制することができる。
【0047】
また、前述したように、厚さ方向に隣り合う板状バネ部63は、離間して配置されている。また、厚さ方向に隣り合う板状バネ部73は、離間して配置されている。これにより、これらの接触が抑制され、板状バネ部63、73をスムーズに弾性変形させることができる。
【0048】
また、前述したように、第1付勢部6は、厚さ方向に重なる2つの板状バネ部63を備え、第2付勢部7は、厚さ方向に重なる2つの板状バネ部73を備えている。これにより、板状バネ部63、73の数が適度なものとなり、圧電駆動装置3の製造コストを抑えつつ、第1、第2付勢部6、7のZ軸方向の剛性を十分に下げることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る圧電駆動装置の断面図である。
【0050】
本実施形態は、第1、第2付勢部6、7の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については同一符号を付している。
【0051】
図10に示すように、第1付勢部6は、3枚の板材6A、6B、6Cの積層体で構成されている。板材6A、6B、6Cの厚さの和(総厚)は、前述した第1実施形態の板材6A、6Bの厚さの和(総厚)と等しい。同様に、第2付勢部7は、3枚の板材7A、7B、7Cの積層体で構成されている。板材7A、7B、7Cの厚さの和(総厚)は、前述した第1実施形態の板材7A、7Bの厚さの和(総厚)と等しい。
【0052】
このような構成によれば、前述した第1実施形態に対して、X軸方向の付勢力をそのままに、第1、第2付勢部6、7のZ軸方向の剛性をさらに下げることができる。そのため、圧電アクチュエーター4がZ軸方向にさらに変位し易くなり、溝210の発現が効果的に抑制される。
【0053】
また、第1付勢部6を3枚の板材6A、6B、6Cで構成することにより、圧電駆動装置3の製造コストを抑えつつ、第1付勢部6のZ軸方向の剛性を十分に下げることができる。第2付勢部7についても、同様である。
【0054】
以上のように、本実施形態の圧電駆動装置3では、第1付勢部6は、厚さ方向に重なる3つの板状バネ部63を備え、第2付勢部7は、厚さ方向に重なる3つの板状バネ部73を備えている。これにより、板状バネ部63、73の数が適度なものとなり、圧電駆動装置3の製造コストを抑えつつ、第1、第2付勢部6、7のZ軸方向の剛性を十分に下げることができる。
【0055】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0056】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態に係る圧電駆動装置の断面図である。
【0057】
本実施形態は、第2付勢部7の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については同一符号を付している。
【0058】
図11に示すように、第1付勢部6は、前述した第1実施形態と同様に2枚の板材6A、6Bの積層体で構成されている。これに対して、第2付勢部7は、前述した第2実施形態と同様に3枚の板材7A、7B、7Cの積層体で構成されている。つまり、本実施形態の圧電駆動装置3では、第1付勢部6と第2付勢部7とで、これらを構成する板材の数が異なる。このような構成では、第2付勢部7のZ軸方向の剛性が第1付勢部6のZ軸方向の剛性よりも低く、圧電アクチュエーター4がZ軸方向に不安定となる。そのため、圧電アクチュエーター4がZ軸方向に変位し易くなり、溝210の発現がより効果的に抑制される。
【0059】
以上のように、本実施形態の圧電駆動装置3では、第1付勢部6および第2付勢部7は、互いに異なる数の板状バネ部63、73を備えている。このような構成では、第1付勢部6と第2付勢部7とでZ軸方向の剛性が異なり、圧電アクチュエーター4がZ軸方向に不安定となる。そのため、圧電アクチュエーター4がZ軸方向に変位し易くなり、溝210の発現がより効果的に抑制される。
【0060】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0061】
<第4実施形態>
図12は、第4実施形態に係る圧電駆動装置の分解斜視図である。
【0062】
本実施形態は、第1、第2付勢部6、7の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については同一符号を付している。
【0063】
図12に示すように、本実施形態の圧電駆動装置3では、第1付勢部6を構成する各板材6A、6Bの支持部61に複数の溝65が形成されている。具体的には、支持部61は、圧電駆動装置3の先端側に位置しY軸方向に延在する先端部611と、圧電駆動装置3の基端側に位置しY軸方向に延在する基端部612と、先端部611と基端部612とを接続し板状バネ部63の一端が接続された接続部613と、を有する。そして、先端部611の上面に複数の溝65が形成されている。また、複数の溝65は、それぞれ、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置されている。このように、複数の溝65を形成することにより、支持部61の先端側の剛性を下げることができ、凸部44がZ軸方向に変位し易くなる。
【0064】
なお、各溝65のサイズとしては、特に限定されず、板材6A、6Bのサイズによっても異なるが、例えば、板材6A、6Bの厚さが400μm程度の場合、各溝65の幅を300μm程度、深さを200μm程度とすることができる。また、溝65の数は、特に限定されず、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、溝65の配置は、特に限定されず、例えば、支持部61の下面に形成されていてもよいし、基端部612や接続部613に形成されていてもよい。また、板材6A、6Bの一方にだけ溝65が形成されていてもよい。また、複数の溝65がX軸方向沿って形成され、Y軸方向に並んで配置されていてもよい。このことは、後述する溝75についても同様である。
【0065】
同様に、第2付勢部7を構成する各板材7A、7Bの支持部71に複数の溝75が形成されている。具体的には、支持部71は、圧電駆動装置3の先端側に位置しY軸方向に延在する先端部711と、圧電駆動装置3の基端側に位置しY軸方向に延在する基端部712と、先端部711と基端部712とを接続し板状バネ部73の一端が接続された接続部713と、を有する。そして、先端部711の下面に複数の溝75が形成されている。また、複数の溝75は、それぞれ、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置されている。このように、複数の溝75を形成することにより、支持部71の先端側の剛性を下げることができ、特に、圧電アクチュエーター4の先端部に位置する凸部44がZ軸方向に変位し易くなる。
【0066】
このような構成によれば、凸部44がZ軸方向に変位し易くなるため、溝210の発現がさらに効果的に抑制される。
【0067】
以上のように、本実施形態の圧電駆動装置3では、第1付勢部6および第2付勢部7は、板状バネ部63、73が接続され、圧電アクチュエーター4を支持する支持部61、71を有し、支持部61、71には、溝65、75が形成されている。これにより、支持部61、71の剛性が低下し、凸部44がZ軸方向に変位し易くなる。そのため、溝210の発現がさらに効果的に抑制される。
【0068】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
<第5実施形態>
図13は、第5実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
【0070】
図13に示すロボットシステム1000は、ロボット1100と、ロボット1100に装着された移動ステージ1200と、移動ステージ1200に装着された工具1300と、これらの駆動を制御する制御部1400と、を有し、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うことができる。
【0071】
ロボット1100は、6軸ロボットであり、床や天井に固定されるベース1110と、ベース1110に連結されたロボットアーム1120と、を有する。また、ロボットアーム1120は、ベース1110に回動自在に連結された第1アーム1121と、第1アーム1121に回動自在に連結された第2アーム1122と、第2アーム1122に回動自在に連結された第3アーム1123と、第3アーム1123に回動自在に連結された第4アーム1124と、第4アーム1124に回動自在に連結された第5アーム1125と、第5アーム1125に回動自在に連結された第6アーム1126と、を有する。また、第6アーム1126にはハンド接続部が設けられ、ハンド接続部には移動ステージ1200が装着される。
【0072】
また、ロボット1100は、ベース1110と第1アーム1121との関節部に配置され、ベース1110に対して第1アーム1121を回動させる第1アーム回動機構1131と、第1アーム1121と第2アーム1122との関節部に配置され、第1アーム1121に対して第2アーム1122を回動させる第2アーム回動機構1132と、第2アーム1122と第3アーム1123との関節部に配置され、第2アーム1122に対して第3アーム1123を回動させる第3アーム回動機構1133と、第3アーム1123と第4アーム1124との関節部に配置され、第3アーム1123に対して第4アーム1124を回動させる第4アーム回動機構1134と、第4アーム1124と第5アーム1125との関節部に配置され、第4アーム1124に対して第5アーム1125を回動させる第5アーム回動機構1135と、第5アーム1125と第6アーム1126との関節部に配置され、第5アーム1125に対して第6アーム1126を回動させる第6アーム回動機構1136と、を有する。
【0073】
そして、第1~第6アーム回動機構1131~1136の一部または全部には、その動力源として圧電モーター1が搭載されており、圧電モーター1の駆動によって対象のアーム1121~1126が回動する。なお、圧電モーター1には、圧電駆動装置3が組み込まれている。そのため、ロボット1100は、上述した圧電駆動装置3の効果を享受することができ、高い信頼性を発揮することができる。
【0074】
移動ステージ1200は、第6アーム1126のハンド接続部に接続された基部1210と、基部1210に対して第1方向Uに移動する第1ステージ1220と、第1ステージ1220に対して第1方向Uと直交する第2方向Vに移動する第2ステージ1230と、基部1210に対して第1ステージ1220を第1方向Uに移動させる第1ステージ移動機構1240と、第1ステージ1220に対して第2ステージ1230を第2方向Vに移動させる第2ステージ移動機構1250と、を有する。
【0075】
そして、第1、第2ステージ移動機構1240、1250の一方または両方には、その動力源として圧電モーター1が搭載されており、圧電モーター1の駆動によって対象のステージ1220、1230が移動する。圧電モーター1には、圧電駆動装置3が組み込まれているため、移動ステージ1200は、上述した圧電駆動装置3の効果を享受することができ、高い信頼性を発揮することができる。
【0076】
また、第2ステージ1230には、工具1300が装着されている。工具1300としては、特に限定されず、目的の作業の内容によって異なるが、本実施形態ではインクジェットヘッド1310である。ロボットシステム1000では、インクジェットヘッド1310からインクを吐出することにより、対象物Qに対して印刷作業を行う。前述したように、ロボット1100とインクジェットヘッド1310との間に移動ステージ1200が介在している。そのため、例えば、ロボット1100を停止した状態で、移動ステージ1200によってインクジェットヘッド1310を移動させることができる。これにより、安定した印刷作業を行うことができる。
【0077】
以上のように、本実施形態のロボットシステム1000は、ロボットアーム1120を備えるロボット1100と、ロボットアーム1120に装着されている移動ステージ1200と、移動ステージ1200に装着されている工具1300と、を有し、移動ステージ1200は、圧電駆動装置3を備えている。このような構成によれば、上述した圧電駆動装置3の効果を享受することができ、高い信頼性を発揮することができるロボットシステム1000となる。
【0078】
このような第5実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0079】
以上、本発明の圧電駆動装置およびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、前述した実施形態では、圧電駆動装置をロボットに適用した構成について説明したが、圧電駆動装置は、ロボット以外の、駆動力を必要とする各種電子デバイス、例えば、プリンター、プロジェクター等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1…圧電モーター、2…スライダー、21…側面、210…溝、3…圧電駆動装置、30…圧電駆動装置、4…圧電アクチュエーター、4A…圧電素子、4B…圧電素子、4C…圧電素子、4D…圧電素子、4E…圧電素子、4F…圧電素子、41…振動部、42…支持部、43…接続部、431…第1接続部、432…第2接続部、44…凸部、47…スペーサー、48…圧電素子層、49…基板、6…第1付勢部、6A…板材、6B…板材、6C…板材、60…第1付勢部、61…支持部、611…先端部、612…基端部、613…接続部、62…基台、621…ネジ挿通孔、63…板状バネ部、65…溝、7…第2付勢部、7A…板材、7B…板材、7C…板材、70…第2付勢部、71…支持部、711…先端部、712…基端部、713…接続部、72…基台、721…ネジ挿通孔、73…板状バネ部、75…溝、8…スペーサー、9…制御装置、1000…ロボットシステム、1100…ロボット、1110…ベース、1120…ロボットアーム、1121…第1アーム、1122…第2アーム、1123…第3アーム、1124…第4アーム、1125…第5アーム、1126…第6アーム、1131…第1アーム回動機構、1132…第2アーム回動機構、1133…第3アーム回動機構、1134…第4アーム回動機構、1135…第5アーム回動機構、1136…第6アーム回動機構、1200…移動ステージ、1210…基部、1220…第1ステージ、1230…第2ステージ、1240…第1ステージ移動機構、1250…第2ステージ移動機構、1300…工具、1310…インクジェットヘッド、1400…制御部、B…接合部材、G…隙間、N…ネジ、Q…対象物、ST…ステージ、U…第1方向、V…第2方向、V1…駆動信号、V2…駆動信号、V3…駆動信号