(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086056
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置及び携帯型情報端末
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240620BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240620BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200940
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 龍功
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AE06
2H044BE02
2H044BE07
2H044BE09
2H044BE17
2H044BE20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率良く組み立てることが可能なレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】一実施形態のレンズ駆動装置1は、レンズユニット20と、レンズユニット20を保持する保持枠40と、保持枠40の底面の少なくとも一部を覆う底壁部71と、底壁部71に設けられた貫通孔73を通って保持枠40の内外に延びるフレキシブルプリント基板90と、貫通孔73の内側に設けられた突起部と、を有する。フレキシブルプリント基板90は、帯状の本体部と、本体部の一端側に設けられた本体部よりも幅の広い接続端部と、を含む。突起部は、貫通孔73を第1領域と第2領域とに区画する。第1領域は、フレキシブルプリント基板90の本体部および接続端部が光軸方向に通過可能な寸法を備える。第2領域は、フレキシブルプリント基板90の本体部は光軸方向に通過可能である一方、フレキシブルプリント基板90の接続端部は光軸方向に通過不能な寸法を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、前記レンズを光軸方向に移動させるレンズ駆動部と、を含むレンズユニットと、
前記レンズユニットを保持し、前記光軸方向に移動可能な保持枠と、
前記保持枠の周囲に回転可能に設けられ、前記保持枠を前記光軸方向に移動させる回転枠と、
前記保持枠の底面の少なくとも一部を覆う底壁部と、
前記底壁部に設けられた貫通孔を通って前記保持枠の内外に延びるフレキシブルプリント基板と、
前記貫通孔の内側に設けられ、前記底壁部の周方向に延びる突起部と、を有し、
前記フレキシブルプリント基板は、帯状の本体部と、前記本体部の一端側に設けられた前記本体部よりも幅の広い接続端部と、を含み、
前記突起部は、前記底壁部の径方向で内側に位置する第1領域と、前記底壁部の径方向で外側に位置する第2領域と、に前記貫通孔を区画し、
前記第1領域は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部および前記接続端部が前記光軸方向に通過可能な寸法を備え、
前記第2領域は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は前記光軸方向に通過可能である一方、前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部は前記光軸方向に通過不能な寸法を備え、
前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は、前記貫通孔の前記第2領域を通って前記保持枠の内外に延びており、
前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部は、少なくとも前記レンズユニット,前記保持枠および前記回転枠を収容しているケースの外に位置している、レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記第1領域の前記底壁部の周方向に沿う最大寸法は、前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部の幅よりも広く、
前記第2領域の前記底壁部の周方向に沿う最大寸法は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部の幅よりも広く、かつ、前記接続端部の幅よりも狭い、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記回転枠の周囲に設けられ、前記回転枠と係合する駆動枠と、
前記駆動枠を回転させる駆動機構と、を有し、
前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は、板状の支持部材を挟んで折り返されている折返し部を含み、
前記支持部材および前記折返し部は、前記回転枠と前記駆動枠との間に配置されている、請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記折返し部は、前記光軸方向の一方側に向かって立ち上がる第1折返し部と、前記光軸方向の他方側に向かって立ち下がる第2折返し部と、を含み、
前記支持部材は、互いに対向する前記第1折返し部と前記第2折返し部との間に配置され、前記第1折返し部と前記第2折返し部とのいずれか一方に接着されている、請求項3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記支持部材の幅は、前記本体部の幅よりも広く、かつ、前記接続端部の幅よりも狭く、
前記第2領域の前記底壁部の周方向に沿う最大寸法は、前記支持部材の幅よりも狭い、請求項3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
環状の前記底壁部と、前記底壁部から前記光軸方向に起立する挿入部と、を備えるガイド部材を有し、
前記挿入部は、前記保持枠の内側に挿入されて、前記保持枠と係合している、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置を備える携帯型情報端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置及び携帯型情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを移動させる機構や、そのような機構を備えた撮影装置などが知られている。特許文献1には、レンズを光軸方向に移動させて撮影倍率を変更可能なレンズ鏡筒が記載されている。特許文献1によれば、当該レンズ鏡筒は、デジタルカメラ等の撮影装置に搭載される。
【0003】
特許文献1に記載されているレンズ鏡筒は、一端が光軸方向に移動するシャッタコイル等に接続され、他端がコネクタに接続されたFPCを有している。FPCは、レンズ鏡筒の内部でU字状に折り曲げられてレンズ鏡筒の外に引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鏡筒,ケース,ハウジング等の内外に亘って延びるフレキシブルプリント基板(FPC/Flexible Print Circuits)を備えるレンズ駆動装置の組立作業の効率を高めることが求められる。
【0006】
本発明の目的は、効率良く組み立てることが可能なレンズ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るレンズ駆動装置は、レンズと、前記レンズを光軸方向に移動させるレンズ駆動部と、を含むレンズユニットと、前記レンズユニットを保持し、前記光軸方向に移動可能な保持枠と、前記保持枠の周囲に回転可能に設けられ、前記保持枠を前記光軸方向に移動させる回転枠と、前記保持枠の底面の少なくとも一部を覆う底壁部と、前記底壁部に設けられた貫通孔を通って前記保持枠の内外に延びるフレキシブルプリント基板と、前記貫通孔の内側に設けられ、前記底壁部の周方向に延びる突起部と、を有する。前記フレキシブルプリント基板は、帯状の本体部と、前記本体部の一端側に設けられた前記本体部よりも幅の広い接続端部と、を含む。前記突起部は、前記底壁部の径方向で内側に位置する第1領域と、前記底壁部の径方向で外側に位置する第2領域と、に前記貫通孔を区画する。前記第1領域は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部および前記接続端部が前記光軸方向に通過可能な寸法を備える。前記第2領域は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は前記光軸方向に通過可能である一方、前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部は前記光軸方向に通過不能な寸法を備える。前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は、前記貫通孔の前記第2領域を通って前記保持枠の内外に延びている。前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部は、少なくとも前記レンズユニット,前記保持枠および前記回転枠を収容しているケースの外に位置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率良く組み立てることが可能なレンズ駆動装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、レンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されているX-X線に沿うレンズ駆動装置の断面図である。
【
図4】
図4は、レンズユニット,保持枠,保持板,回転枠及びガイド部材の斜視図である。
【
図6】
図6は、保持枠,保持板,回転枠及びガイド部材の組付け状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、ケースに組み込まれた後のフレキシブルプリント基板の斜視図である。
【
図8】
図8は、ケースに組み込まれる前のフレキシブルプリント基板の斜視図である。
【
図10】
図10は、フレキシブルプリント基板の組込工程の1つを示す説明図である。
【
図11】
図11は、フレキシブルプリント基板の組込工程の他の1つを示す説明図である。
【
図12】
図12は、フレキシブルプリント基板の組込工程のさらに他の1つを示す説明図である。
【
図13】
図13は、レンズ駆動装置が搭載されたスマートフォンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用いる。また、一度説明した構成や要素については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
<レンズ駆動装置の概要>
図1は、本実施形態に係るレンズ駆動装置1の斜視図である。
図2は、本実施形態に係るレンズ駆動装置1の分解斜視図である。
図3は、
図1に示されているX-X線に沿うレンズ駆動装置1の断面図である。
【0012】
レンズ駆動装置1は、その外郭を形成するケース10を有する。ケース10は、ベース部材11とカバー部材12とにより構成されている。ベース部材11とカバー部材12とは、複数本のネジ13によって互いに固定されている。
【0013】
レンズ駆動装置1は、ケース10に収容され、或いはケース10に搭載されている複数の要素により構成されている。例えば、レンズ駆動装置1は、カバー部材12によって覆われ、或いは囲われているレンズユニット20,駆動枠30,保持枠40,保持板50,回転枠60,ガイド部材70及びギヤ群81を有する。また、レンズ駆動装置1は、ケース10の内外に亘って延びているフレキシブルプリント基板90を有する。さらに、レンズ駆動装置1は、ベース部材11に搭載されているモータ82を有する。
【0014】
レンズ駆動装置1は、レンズユニット20を保持している保持枠40を後述する光軸方向に移動させることにより、レンズユニット20を光軸方向の異なる2以上の位置に移動させる。
【0015】
別の見方をすると、レンズ駆動装置1では、レンズユニット20が光軸方向に沿ってケース10から繰り出されたり、レンズユニット20が光軸方向に沿ってケース10に引き入れられたりする。以下の説明では、ケース10に対してレンズユニット20が繰り出される方向を“上方”とし、ケース10に対してレンズユニット20が引き入れられる方向を“下方”とする。
【0016】
<ケース(ベース部材/カバー部材)>
図2に示されるように、ケース10のベース部材11は、プレート部14と、プレート部14の一側に設けられた内側円筒部15と、を備えている。内側円筒部15の周壁には、当該内側円筒部15の内外に連通する複数のスリット15aが設けられている。なお、ギヤ群81及びモータ82は、プレート部14の他側に配置されており、駆動機構80を構成している。
【0017】
カバー部材12は、内側円筒部15の周囲に配置され、内側円筒部15の周壁を取り囲む外側円筒部16と、ギヤ群81を覆うギヤカバー部17と、を備えている。
【0018】
<レンズユニット>
レンズユニット20は、ハウジング21を備えている。ハウジング21の外周面は非円形である。別の見方をすると、ハウジング21の外周面は、複数の面によって構成されている。
【0019】
図2では省略されているが、ハウジング21内には、レンズ22及びレンズ駆動部23が収容されている(
図3)。より特定的には、第1レンズ群を構成するレンズ22がハウジング21の中央に配置されている。また、レンズ駆動部23がレンズ22の周囲に設けられている。
【0020】
レンズ駆動部23は、駆動源(例えば、ボイスコイルモータ(VCM/Voice Coil Motor)を備えており、レンズ22を少なくとも光軸Lの方向に移動させる。レンズ22がレンズ駆動部23によって光軸方向やその他の方向に移動されることにより、オートフォーカス(AF/Autofocus)や手振れ補正(OIS/Optical Image Stabilization)などが実現される。
【0021】
もっとも、レンズ駆動装置1は、第2レンズ群を構成するレンズ24を備えている(
図3)。レンズユニット20(レンズ22)を通過した光は、レンズ24を経由して不図示の撮像素子の撮像面(受光面)に入射する。
【0022】
なお、レンズ22はカバーガラス25によって覆われている。また、カバーガラス25の周囲には、環状の化粧プレート26が配置されている。
【0023】
本明細書では、特に断らない限り、“光軸方向”とは、レンズユニット20が備えるレンズ22の光軸Lの方向を意味する。
【0024】
<駆動枠>
再び
図2を参照する。駆動枠30は、内径がベース部材11の内側円筒部15の外径よりも大きく、外径がカバー部材12の外側円筒部16の内径よりも小さい円筒形状を有する。駆動枠30は、内側円筒部15と外側円筒部16との間に配置され、回転可能に支持されている。
【0025】
駆動枠30の内周面には、光軸方向に延びる3つの縦溝31が等間隔(120度間隔)で形成されている。一方、駆動枠30の外周面には、ギヤ群81の最終ギヤと噛み合うギヤ列32が形成されている。ギヤ列32は、駆動枠30の外周の約1/4に亘って形成されている。
【0026】
<保持枠>
図4は、レンズユニット20,保持枠40,保持板50,回転枠60及びガイド部材70の斜視図である。
図4に示されているレンズユニット20等は、全て内側円筒部15(
図2)の内側に配置される。
【0027】
ここで、保持枠40,回転枠60及び内側円筒部15に着目すると、保持枠40の周囲に回転枠60が配置され、回転枠60の周囲に内側円筒部15が配置されている(
図3参照)。なお、内側円筒部15の周囲に駆動枠30が配置されていることは既述のとおりである。
【0028】
図4に示されるように、保持枠40は円筒形状を有する。保持枠40は、レンズユニット20を収容しており、光軸方向に移動可能である。保持枠40の内周面は、レンズユニット20のハウジング21の外周面に倣っている。より特定的には、保持枠40の内周面は、ハウジング21の外周面を構成している複数の面と対向する複数の面を含んでいる。この結果、保持枠40と当該保持枠40に収容されているレンズユニット20とは、相対回転不能に一体化している。
【0029】
また、保持枠40の内周面には、光軸方向に延びる2つの係合溝41が設けられている。それぞれの係合溝41は、180度異なる位置に配置され、互いに対向している。
【0030】
一方、保持枠40の外周面には、3つのカム突起42が等間隔(120度間隔)で設けられている。それぞれのカム突起42は、保持枠40の外周面から径方向に突出している。
【0031】
<保持板>
保持板50は、保持枠40の内径と略同一の外径を有する環状部材である。保持板50は、保持枠40の下端内側に配置されており、保持枠40に収容されているレンズユニット20の下方に位置している。この結果、保持枠40の底面は、保持板50によって概ね塞がれている。
【0032】
別の見方をすると、保持板50の上面は、保持枠40の内部において、レンズユニット20(ハウジング21)の下面と対向している。そして、互いに対向している保持板50の上面とハウジング21の下面との間に、スプリング51が配置されている。スプリング51の一端側は、保持板50の上面に形成されている溝によって保持されており、スプリング51の他端側は、ハウジング21の下面に当接している。
【0033】
保持板50の外周面には、3つのカム突起52が等間隔(120度間隔)で設けられている。それぞれのカム突起52は、保持板50の外周面から径方向に突出している。
【0034】
さらに、保持板50には、保持枠40に設けられている係合溝41と連通する切欠き53が設けられている。別の見方をすると、保持枠40と保持板50とは、係合溝41と切欠き53とが連通するように、位置合わせされる。保持枠40と保持板50とが上記のように位置合わせされると、カム突起42とカム突起52とが周方向で隣接する。この結果、対を成すカム突起42,52が3組形成される。
【0035】
なお、第2レンズ群を構成しているレンズ24は、保持板50によって保持されている。
【0036】
<回転枠>
回転枠60は、円筒形状を有し、保持枠40の周囲に回転可能に配置されている。つまり、レンズユニット20を保持している保持枠40が回転枠60に収容されている。
【0037】
保持枠40の外周面と対向する回転枠60の内周面には、対を成すカム溝61,62が3組設けられている。それぞれのカム溝61,62は、回転枠60の周方向に沿って斜めに延びている。より特定的には、カム溝61,62の内側面(カム面)は、回転枠60の周方向に沿って斜めに延びている。別の見方をすると、カム溝61,62のカム面は、回転枠60の回転方向に沿って高さが漸増または漸減するように傾斜している。
【0038】
そして、保持枠40に設けられているカム突起42が各組のカム溝61に挿入され、保持板50に設けられているカム突起52が各組のカム溝62に挿入されている。
【0039】
回転枠60の外周面には、3つの連結突起63が等間隔(120度間隔)で設けられている。それぞれの連結突起63は、回転枠60の外周面から径方向に突出している。
【0040】
それぞれの連結突起63の先端は、
図2に示されているスリット15aを通って内側円筒部15の外に突出している。さらに、内側円筒部15から突出している連結突起63の先端は、駆動枠30に設けられている縦溝31に嵌っている。この結果、内側円筒部15の外側で駆動枠30が回転すると、内側円筒部15の内側で回転枠60が回転する。
【0041】
なお、駆動枠30及び回転枠60は、光軸Lを回転軸として回転する。また、駆動枠30は、モータ82から出力され、ギヤ群81を介してギヤ列32に入力される駆動力によって回転される。
【0042】
<ガイド部材>
図5は、ガイド部材70の斜視図である。
図6は、保持枠40,保持板50,回転枠60及びガイド部材70の組付け状態を示す断面図である。
【0043】
ガイド部材70は、回転枠60の内径と略同一の外径を有する環状の底壁部71と、一対の挿入部72と、を備えている。底壁部71は、回転枠60の下端内側に配置され、保持枠40及び保持板50の下方に位置している(
図3参照)。この結果、保持枠40の底面は、底壁部71によって部分的に塞がれている。
【0044】
もっとも、保持枠40の底面の大部分は、保持板50及びレンズ24によって塞がれており、底壁部71によって塞がれている部分は僅かである。
【0045】
それぞれの挿入部72は、底壁部71から光軸方向に起立しており、保持枠40と係合している。より特定的には、それぞれの挿入部72は、保持板50に設けられている切欠き53を通して保持枠40の内側に差し入れられ、係合溝41に挿入されている。
【0046】
この結果、回転枠60が回転すると、保持枠40及び保持板50が光軸方向に移動し(上下動し)、保持枠40に保持されているレンズユニット20も同方向に移動する(上下動する)。
【0047】
より特定的には、保持枠40及び保持板50を貫いている挿入部72は、これらの回転を規制する一方、光軸方向の移動は規制しない。その上で、保持枠40のカム突起42及び保持板50のカム突起52は、回転枠60のカム溝61,62に挿入されている。したがって、回転枠60が回転すると、保持枠40及び保持板50は、光軸方向の推力を受けて同方向に移動する。このとき、挿入部72は、保持枠40及び保持板50の光軸方向の移動を案内するガイドとしても機能する。
【0048】
<フレキシブルプリント基板>
主に
図3に示されるように、ケース10の内外に亘って延びているフレキシブルプリント基板90の一端側はレンズユニット20に接続されており、他端側はケース10の外に位置している。
【0049】
また、フレキシブルプリント基板90は、ケース10の内部において、保持枠40の内外に亘って延びている。さらに、フレキシブルプリント基板90は、その複数個所が折り曲げられている。
【0050】
図7は、ケース10に組み込まれた後のフレキシブルプリント基板90の斜視図である。
図8は、ケース10に組み込まれる前のフレキシブルプリント基板90の斜視図である。
【0051】
フレキシブルプリント基板90は、帯状の本体部91と、本体部91の一端に連接している接続端部92と、を含んでいる。以下の説明では、接続端部92を“外部接続端部92”と呼ぶ場合がある。また、接続端部92と反対側のフレキシブルプリント基板90の端部を“ユニット接続端部93”と呼ぶ場合がある。もっとも、かかる呼称や区別は説明の便宜上の呼称や区別に過ぎない。
【0052】
言い換えると、ケース10の外に位置している端部が外部接続端部92であり、ケース10内でレンズユニット20に接続されている端部がユニット接続端部93である。
【0053】
外部接続端部92は、レンズ駆動装置1が搭載される機器(例えば、スマートフォン等の携帯型情報端末)が備える電源回路や制御回路などと電気的に接続される。つまり、フレキシブルプリント基板90は、レンズユニット20に電力を供給するための給電路や、レンズユニット20に信号を送受信するための信号伝送路などを形成する。
【0054】
ここで、
図3,
図7に示されているフレキシブルプリント基板90の本体部91は、板状の支持部材94を挟んで光軸方向に折り返されている折返し部95を含んでいる。一方、
図8に示されているフレキシブルプリント基板90の本体部91は、折返し部95を含んでいない。つまり、折返し部95は、レンズ駆動装置1の組立過程で形成されたものである。より特定的には、折返し部95は、フレキシブルプリント基板90をケース10に組み込む過程で形成されたものである。フレキシブルプリント基板90をケース10に組み込む過程については後に改めて説明する。
【0055】
図7に示されるように、折返し部95は、光軸方向の一方側(上側/上方)に向かって立ち上がる第1折返し部95aと、光軸方向の他方側(下側/下方)に向かって立ち下がる第2折返し部95bと、を含んでいる。折返し部95は、レンズユニット20を円滑に上下動させるための冗長部である。
【0056】
支持部材94は、互いに対向する第1折返し部95aと第2折返し部95bとの間に配置され、第2折返し部95bに接着されている。なお、支持部材94は、フレキシブルプリント基板90がケース10に組み込まれる前に、フレキシブルプリント基板90に取り付けられる。より特定的には、支持部材94は、本体部91の所定箇所(後に第2折返し部95bとなる箇所)に予め接着される。
【0057】
もっとも、支持部材94は、第1折返し部95aと第2折返し部95bとのいずれか一方に取り付けられていればよく、固定方法も接着に限られない。
【0058】
図3に示されるように、支持部材94を含む折返し部95は、径方向において回転枠60と駆動枠30との間に配置されている。より特定的には、支持部材94及び折返し部95は、回転枠60と駆動枠30との間に介在している内側円筒部15に設けられている収容空間15b内に配置されている。収容空間15bは、ケース10(ベース部材11)の底面において外部と連通している。
【0059】
図8に示されるように、外部接続端部92の幅W1は、本体部91及びユニット接続端部93の幅W2よりも広い(W1>W2)。また、支持部材94の幅W3は、本体部91の幅W2よりも広く、かつ、外部接続端部92の幅W1よりも狭い(W2<W3<W1)。
【0060】
<貫通孔>
上記のように、本体部91の一部(折返し部95)は、回転枠60と駆動枠30との間(保持枠40の外)に配置されている。同時に、本体部91の他の一部は、貫通孔73を通って保持枠40の内外に延びている。より特定的には、ユニット接続端部93と折返し部95との間に延びている本体部91の一部は、貫通孔73に挿通されている。
【0061】
図5に示されるように、本体部91が挿通されている貫通孔73は、ガイド部材70の底壁部71に設けられている。
図9は、貫通孔73の拡大図である。貫通孔73は、ガイド部材70の一方の挿入部72の内側に形成された略台形の開口部である。
【0062】
貫通孔73の内側には、当該貫通孔73の一側から他側に向かって底壁部71の周方向に延びる突起部74が設けられている。この結果、貫通孔73は、突起部74によって、底壁部71の径方向で内側に位置する第1領域75と、底壁部71の径方向で外側に位置する第2領域76と、に区画されている。
【0063】
言い換えると、貫通孔73は、底壁部71の径方向で突起部74の内側に位置する第1領域75と、底壁部71の径方向で突起部74の外側に位置する第2領域76と、に区画されている。
【0064】
もっとも、突起部74は、貫通孔73を完全に分断してはいない。突起部74の先端と貫通孔73の内面との間には隙間77が設けられており、第1領域75と第2領域76とは、隙間77を介して繋がっている。
【0065】
貫通孔73の第1領域75は、フレキシブルプリント基板90の本体部91,支持部材94及び外部接続端部92が光軸方向に通過可能な寸法を備えている。一方、貫通孔73の第2領域76は、フレキシブルプリント基板90の本体部91は光軸方向に通過可能であるが、フレキシブルプリント基板90の外部接続端部92及び支持部材94は光軸方向に通過不能な寸法を備えている。
【0066】
より特定的には、第1領域75の底壁部71の周方向に沿う最大寸法S1は、フレキシブルプリント基板90の外部接続端部92の幅W1よりも広い(W1<S1)。一方、第2領域76の底壁部71の周方向に沿う最大寸法S2は、フレキシブルプリント基板90の本体部91の幅W2よりも広く、かつ、外部接続端部92の幅W1よりも狭い支持部材94の幅W3よりも更に狭い(W2<S2<W3<W1)。
【0067】
<フレキシブルプリント基板の組込工程>
既述のとおり、フレキシブルプリント基板90の本体部91は、貫通孔73を通って保持枠40の内外に延びている。より特定的には、本体部91は、貫通孔73の第2領域76を通って保持枠40の内外に延びている。
【0068】
しかし、本体部91の一端に連接しており、かつ、ケース10の外に位置している外部接続端部92の幅W1は、第2領域76の最大寸法S2よりも広い(S2<W1)。したがって、外部接続端部92は、第2領域76を通過することができない。そこで、フレキシブルプリント基板90は、次のようにしてケース10に組み込まれている。
【0069】
図10に示されるように、フレキシブルプリント基板90をレンズユニット20に取り付ける。より特定的には、
図8に示されているユニット接続端部93をレンズユニット20に接続する。この段階では、
図7に示されている折返し部95は形成しない。
【0070】
次いで、フレキシブルプリント基板90が取り付けられているレンズユニット20を既に組立てが完了しているケース10内に上方から組み入れる。より特定的には、レンズユニット20を保持枠40の内側に組み入れる。このとき、レンズユニット20から下方に延びているフレキシブルプリント基板90を貫通孔73の第1領域75(
図9)に上方から通す。
【0071】
より特定的には、フレキシブルプリント基板90の外部接続端部92,本体部91をこの順で第1領域75に挿通する。すると、
図11に示されるように、外部接続端部92,本体部91及び支持部材94がケース10の下方に突出する。その後、第1領域75を通過している本体部91を第2領域76に移動させる。具体的には、
図9に示されている隙間77を利用して本体部91を第1領域75から第2領域76に移動させる。例えば、本体部91を僅かに捻って、本体部91の一側を隙間77に差し入れる。その後、捻りを解放しつつ、本体部91を第2領域76に送り込む。
【0072】
ここで、第2領域76の最大寸法S2は、フレキシブルプリント基板90の本体部91の幅W2と略同一である(S2≒W2)。よって、第2領域76に移された本体部91は、その幅方向への移動が規制される。また、第2領域76に移された本体部91は、対向する突起部74の側面と貫通孔73の内面とに挟まれる。よって、第2領域76に移された本体部91は、その厚み方向への移動も規制される。この結果、底壁部71の周方向および径方向へのフレキシブルプリント基板90の位置ずれが防止または抑制される。もっとも、第2領域76に移された本体部91の周囲には、レンズユニット20の上下動に伴うフレキブルプリント基板90の動きを阻害しないためのクリアランスが確保される。
【0073】
フレキシブルプリント基板90の組込過程の説明に戻る。然る後、
図11に示されているフレキシブルプリント基板90の本体部91を折り曲げつつ、支持部材94を収容空間15b(
図3)に下方から差し入れる。この結果、
図12に示されるように、折返し部95が形成され、かつ、形成された折返し部95及び支持部材94が収容空間15b(
図3)に収容される。なお、
図12では、支持部材94を明確にするために、支持部材94にハッチング(ドットパターン)を付してある。
【0074】
以上のように、レンズ駆動装置1の組立工程では、レンズユニット20は、既に組立てが完了しているケース10内に上方から組み入れられる。つまり、レンズ駆動装置1の組立工程は、光学部品であるレンズユニット20の組立工程とその他の部品の組立工程とに区分することができる。したがって、例えば、光学部品の組立工程とその他の部品の組立工程とをそれぞれの工程に適した別々の工場や組立ラインで行うことができる。この結果、レンズ駆動装置1の組立作業の効率が高まることが期待される。
【0075】
レンズ駆動装置1は、携帯型情報端末に搭載することができる。例えば、
図13に示されるように、レンズ駆動装置1は、スマートフォン100に搭載することができる。この場合、撮像素子を備えているレンズ駆動装置1は、カメラモジュールとして機能する。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、貫通孔73が設けられる底壁部は、ガイド部材70の底壁部71に限られない。また、突起部74は1つに限られない。例えば、貫通孔73の内側に互いに逆向きに延びる2つの突起部74が設けられる実施形態もある。この場合、対向するそれぞれの突起部74の先端の間に隙間77が設けられる。
【0077】
また、レンズユニット20を光軸方向に移動させるための機構は、上記機構に限定されない。例えば、レンズユニット20を光軸方向に移動させる他の機構の1つは、レンズユニット20を光軸方向一方側に付勢する付勢手段(例えば、スプリング)と、付勢手段の付勢に抗してレンズユニット20を光軸方向他方側に移動させる移動手段(例えば、カムやギヤ)と、を備える。
【0078】
本技術は以下のような構成をとることが可能である。
【0079】
(1)
レンズと、前記レンズを光軸方向に移動させるレンズ駆動部と、を含むレンズユニットと、
前記レンズユニットを保持し、前記光軸方向に移動可能な保持枠と、
前記保持枠の周囲に回転可能に設けられ、前記保持枠を前記光軸方向に移動させる回転枠と、
前記保持枠の底面の少なくとも一部を覆う底壁部と、
前記底壁部に設けられた貫通孔を通って前記保持枠の内外に延びるフレキシブルプリント基板と、
前記貫通孔の内側に設けられ、前記底壁部の周方向に延びる突起部と、を有し、
前記フレキシブルプリント基板は、帯状の本体部と、前記本体部の一端側に設けられた前記本体部よりも幅の広い接続端部と、を含み、
前記突起部は、前記底壁部の径方向で内側に位置する第1領域と、前記底壁部の径方向で外側に位置する第2領域と、に前記貫通孔を区画し、
前記第1領域は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部および前記接続端部が前記光軸方向に通過可能な寸法を備え、
前記第2領域は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は前記光軸方向に通過可能である一方、前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部は前記光軸方向に通過不能な寸法を備え、
前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は、前記貫通孔の前記第2領域を通って前記保持枠の内外に延びており、
前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部は、少なくとも前記レンズユニット,前記保持枠および前記回転枠を収容しているケースの外に位置している、レンズ駆動装置。
【0080】
(2)
前記第1領域の前記底壁部の周方向に沿う最大寸法は、前記フレキシブルプリント基板の前記接続端部の幅よりも広く、
前記第2領域の前記底壁部の周方向に沿う最大寸法は、前記フレキシブルプリント基板の前記本体部の幅よりも広く、かつ、前記接続端部の幅よりも狭い、(1)に記載のレンズ駆動装置。
【0081】
(3)
前記回転枠の周囲に設けられ、前記回転枠と係合する駆動枠と、
前記駆動枠を回転させる駆動機構と、を有し、
前記フレキシブルプリント基板の前記本体部は、板状の支持部材を挟んで折り返されている折返し部を含み、
前記支持部材および前記折返し部は、前記回転枠と前記駆動枠との間に配置されている、(1)又は(2)に記載のレンズ駆動装置。
【0082】
(4)
前記折返し部は、前記光軸方向の一方側に向かって立ち上がる第1折返し部と、前記光軸方向の他方側に向かって立ち下がる第2折返し部と、を含み、
前記支持部材は、互いに対向する前記第1折返し部と前記第2折返し部との間に配置され、前記第1折返し部と前記第2折返し部とのいずれか一方に接着されている、(3)に記載のレンズ駆動装置。
【0083】
(5)
前記支持部材の幅は、前記本体部の幅よりも広く、かつ、前記接続端部の幅よりも狭く、
前記第2領域の前記底壁部の周方向に沿う最大寸法は、前記支持部材の幅よりも狭い、(3)又は(4)に記載のレンズ駆動装置。
【0084】
(6)
環状の前記底壁部と、前記底壁部から前記光軸方向に起立する挿入部と、を備えるガイド部材を有し、
前記挿入部は、前記保持枠の内側に挿入されて、前記保持枠と係合している、(1)~(5)のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【0085】
(7)
(1)~(6)のいずれかに記載のレンズ駆動装置を備える携帯型情報端末。
【符号の説明】
【0086】
1…レンズ駆動装置、10…ケース、11…ベース部材、12…カバー部材、13…ネジ、14…プレート部、15…内側円筒部、15a…スリット、15b…収容空間、16…外側円筒部、17…ギヤカバー部、20…レンズユニット、21…ハウジング、22…レンズ、23…レンズ駆動部、24…レンズ、25…カバーガラス、26…化粧プレート、30…駆動枠、31…縦溝、32…ギヤ列、40…保持枠、41…係合溝、42…カム突起、50…保持板、51…スプリング、52…カム突起、60…回転枠、61,62…カム溝、63…連結突起、70…ガイド部材、71…底壁部、72…挿入部、73…貫通孔、74…突起部、75…第1領域、76…第2領域、77…隙間、80…駆動機構、81…ギヤ群、82…モータ、90…フレキシブルプリント基板、91…本体部、92…接続端部(外部接続端部)、93…ユニット接続端部、94…支持部材、95…折返し部、95a…第1折返し部、95b…第2折返し部、100…スマートフォン、L…光軸、S1,S2…最大寸法、W1,W2,W3…幅