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  • 特開-ルーバー構造体及びルーバー部材 図1
  • 特開-ルーバー構造体及びルーバー部材 図2
  • 特開-ルーバー構造体及びルーバー部材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086060
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ルーバー構造体及びルーバー部材
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/14 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
E04H17/14 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200945
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】染川 大輔
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142LL06
(57)【要約】
【課題】風によるルーバーの揺れを抑制するためのルーバー構造体及びルーバー部材を提供する。
【解決手段】ルーバー構造体15は、建物10の外装を構成し、曲滑面を有する柱状のルーバー部材20を並べて構成される。ルーバー部材20の外表面には、建物10の外側から側方までの範囲に、複数の突起部30からなる振動抑制部が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外装を構成し、曲滑面を有する柱状のルーバー部材を並べたルーバー構造体であって、
前記ルーバー部材の外表面には、前記建物の外側から側方までの範囲に、複数の凸状部からなる振動抑制部を設けたことを特徴とするルーバー構造体。
【請求項2】
前記ルーバー部材の側方よりも建物側の領域は、前記凸状部が形成されていない曲滑面で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のルーバー構造体。
【請求項3】
建物の外装を構成するために用いられ、曲滑面を有する柱状のルーバー部材であって、
前記建物の外側から側方までの範囲の外表面に、複数の凸状部からなる振動抑制部を設けたことを特徴とするルーバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、建物の外装となるルーバー構造体及びそれに用いられるルーバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外装として、同じ形状の複数のルーバーを並べた構造で構成されるルーバー構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この文献に記載のルーバー構造体は、化粧面部の後部に係合溝部が形成されたルーバー材を、取付具を用いて、フランジ部を有する胴縁材に止着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-219879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようにルーバー構造体においては、建物の周囲に生じる風によって各ルーバー部材が揺れる。この揺れによって、ルーバー部材の取り付け部分に引張や圧縮の力が生じるため、ルーバー部材が破損し易くなっていた。そこで、従来は、ルーバー部材の全体形状を揺れ難い形状に変更する等の対策を行なっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するルーバー構造体は、建物の外装を構成し、曲滑面を有する柱状のルーバー部材を並べたルーバー構造体であって、前記ルーバー部材の外表面には、前記建物の外側から側方までの範囲に、複数の凸状部からなる振動抑制部を設ける。
【0006】
更に、上記課題を解決するルーバー部材は、建物の外装を構成するために用いられ、曲滑面を有する柱状のルーバー部材であって、前記建物の外側から側方までの範囲の外表面に、複数の凸状部からなる振動抑制部を設ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、風によるルーバー部材の揺れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のルーバー構造体の全体を示す斜視図である。
図2】実施形態のルーバー構造体に用いられるルーバー部材の上面図である。
図3】実施形態のルーバー構造体に用いられるルーバー部材の要部を拡大した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図3を用いて、ルーバー構造体及びルーバー部材を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、建物の外装として、縦に延在する柱状の長尺物であるルーバー部材を複数、横に並べた構成のルーバー構造体として説明する。
図1に示すように、ルーバー構造体15は、建物10の本体部11に設けられた上取付部12と下取付部13との間に設けられている。
【0010】
(ルーバー構造体の構成)
ルーバー構造体15は、複数のルーバー部材20を備える。複数のルーバー部材20は、同じ形状を有し、アルミ等で構成される。各ルーバー部材20は、水平断面が楕円形状の柱状を有し、上下方向に延在する長尺物である。各ルーバー部材20は、上取付部12及び下取付部13との間に、取付部材(図示せず)を介して取り付けられる。
【0011】
本実施形態では、複数のルーバー部材20は、楕円形状の長手方向と直交するように並んで設けられる。そして、各ルーバー部材20は、その前方端部21が、上取付部12及び下取付部13から飛び出るように配置される。
【0012】
図2及び図3は、それぞれルーバー部材20の上面図及びルーバー部材20の上部の拡大図である。図2においては、後述する突起部30を大きく示している。
図2に示すように、各ルーバー部材20は、長手方向を前後方向として配置される。各ルーバー部材20は、長手方向に延在する短手方向の中心線C1に対して線対称の構成を有する。本実施形態のルーバー部材20の前方から側方に渡る領域A1には、凸状部としての突起部30が形成された振動抑制部である。この領域A1は、ルーバー部材20において、建物10の外側から側方までの範囲、すなわち建物10の本体部11の外側(前方)から、短手方向に延在する長手方向の中心線C2までの範囲を含む領域である。本実施形態では、中心線C2を超えた範囲までを振動抑制部の領域A1としている。
【0013】
また、ルーバー部材20の建物10の本体部11側(後方)の領域A2には、突起部30は形成されておらず、領域A1は曲滑面で構成されている。この領域A2は、ルーバー部材20の側方よりも建物10側の領域、例えば、中心線C1に対して角度θ1=45°を成す接線T1の位置より後方(建物10の本体部11側)の領域を含む。本実施形態では、領域A1と領域A2は、ルーバー部材20の外周の長さが同じとなる位置を境界としている。
【0014】
図2及び図3に示すように、領域A1における前方から側方の片側の外表面には、軸方向(縦方向)に延びる2つのパターン領域P1,P2が設けられている。各パターン領域P1,P2において、突起部30は、同じパターンで配置されている。突起部30は、ルーバー部材20の上端部から下端部に渡って設けられている。突起部30は、約1.5mm突出したリング形状を有し、例えば数mm程度の間隔で、鉛直方向に対して斜めに並んでいる。従って、隣接する突起部30は、ルーバー部材20の軸方向(図2の紙面に直交する方向であって、図3の上下方向)に一列に並ばないように配置されている。
【0015】
上述したルーバー部材20は、アルミニウムの押出加工を行なうことにより、図2に示すように水平断面が楕円形状であって柱状のルーバー部材を形成した後、領域A1の各パターン領域P1,P2に、同じパターンのインデント加工を行なうことにより形成される。
【0016】
(作用)
ルーバー構造体15のルーバー部材20の、建物10の外側となる前方及び側方の領域A1には、複数の突起部30が形成されている。建物10の外側から吹いてきた風によって発生する渦を、突起部30が壊すので、渦によるルーバー部材20の揺れが少なくなる。
【0017】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のルーバー構造体15は、複数のルーバー部材20を有する。各ルーバー部材20の前方及び側方の領域A1には、複数の突起部30が形成されている。水平断面が楕円形状や円形状のルーバー部材20には、建物の外側から吹いてくる風によって、ルーバー部材20の側方の前側付近に渦が発生する。この発生した渦は、ルーバー部材20の突起部30により壊されるので、渦によるルーバー部材20の揺れを抑制することができる。
【0018】
(2)本実施形態のルーバー部材20の後方の領域A2は、突起部30を形成していない曲滑面で構成される。通常、曲滑面を有する柱状のルーバー部材20の建物10の本体部11側(後方)には、渦が発生し難い。従って、渦が発生し難い領域A2に突起部30の形成を省略することにより、ルーバー部材20を効率的に形成することができる。
【0019】
(3)本実施形態のルーバー部材20には、隣接する突起部30が水平方向に位置するように配置される。これにより、突起部30が軸方向に整列した場合に突起部30の間に発生が予測される風の渦の発生を抑制することができる。
【0020】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、ルーバー構造体15のルーバー部材20には、約1.5mm突出したリング形状の突起部30を形成した。ルーバー部材20に形成される凸状部は、リング形状の突起部30に限られず、複数の短い線形状の突起部であってもよいし、窪みにより形成した物であってもよい。更に、これらの形状や大きさに限定されず、ルーバー部材20の側方に発生する風の渦を壊すことにより、風による揺れを抑制できる形状や高さ(突出方向の長さ)を有する凹状部であればよい。例えば、実験により、インデント加工された直径0.15mの断面が円形のルーバー部材で、表面相対粗度が1.0×10-2であった場合には、風による揺れを抑制できた。このため、1.5mm以上で、ルーバー部材の直径の1%以上の大きさの突起部や窪みであれば、風による揺れを抑制できると考えられる。
【0021】
・上記実施形態のルーバー部材20は、水平断面が楕円形状であって柱状を有する長尺物である。ルーバー部材20は、外側に突出する曲線を有した断面形状を有する柱状であればよく、楕円形状の断面形状を有する物に限定されない。ここで、外側に突出する曲線を有した断面形状とは、角がない断面形状であって、例えば、水平断面が円形状や長手方向の両端が円弧である長丸形状であってもよい。水平断面が長方形状等の角がある形状を有するルーバー部材の場合には、風による渦は、角の近傍に発生するため、上述した突起部を形成することによる揺れ抑制の効果は小さくなる。更に、上記実施形態のルーバー部材20は、突起部30を設けた領域A1と、突起部30を設けていない曲滑面の領域A2とは、ルーバー部材20の外周の長さが同じとなる位置を境界としたが、これらは、形状や凸状部の大きさに応じて、適宜変更してもよい。
【0022】
・上記実施形態のルーバー部材20は、前方と側方に突起部30を設けた。前方の端部には渦が発生しないと考えられるため、渦が発生しないと考えられる建物10の外側(前方)の端部には凸状部を設けない曲滑面形状のルーバー部材としてもよい。ここで、例えば、凸状部を設けない曲滑面形状の端部として、建物10から突出する前方端部21や、前方から見て中心線C1からルーバー部材20の外形の半分までの範囲となる端部であってもよい。
【0023】
・上記実施形態のルーバー構造体15は、縦に延在するルーバー部材20を複数、配置する。ルーバー構造体におけるルーバー部材の配置の向きは縦に延在する場合に限られない。例えば、横に延在するルーバー部材を複数、上下に並ぶように配置した構成のルーバー構造体であってもよい。また、ルーバー構造体は、複数のルーバー部材20の並び方向に対して傾斜するように配置してもよい。
【0024】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記凸状部の突出長さは、前記ルーバー部材の断面の大きさに応じて決定することを特徴とする請求項1又は2に記載のルーバー構造体。
(b)前記凸状部を、インデント加工により形成したことを特徴とする請求項1,2又は前記(a)に記載のルーバー構造体。
(c)前記ルーバー部材の軸方向に相互に隣接する凸状部は、前記軸方向において異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1,2、前記(a)又は(b)に記載のルーバー構造体。
【符号の説明】
【0025】
A1,A2…領域、C1,C2…中心線、P1,P2…パターン領域、T1…接線、10…建物、11…本体部、12…上取付部、13…下取付部、15…ルーバー構造体、20…ルーバー部材、21…前方端部、30…凸状部としての突起部。
図1
図2
図3