(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086076
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】クライオポンプシステム、半導体製造装置、クライオポンプの再生方法
(51)【国際特許分類】
F04B 37/08 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
F04B37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200969
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩平
(72)【発明者】
【氏名】海勢頭 聖
(72)【発明者】
【氏名】川村 昌充
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA26
3H076BB11
3H076BB28
3H076BB33
3H076BB43
3H076CC42
3H076CC54
(57)【要約】
【課題】爆発性ガスの安全かつ容易な排出を実現するクライオポンプシステムを提供する。
【解決手段】クライオポンプシステムCS1は、クライオポンプCP1と、クライオポンプCP1の冷却運転停止後に、第1パージガスをクライオポンプCP1へ供給する第1パージガス供給ラインL1と、クライオポンプCP1内に溜め込まれたガスを、クライオポンプCP1外に排気する排気ラインL3と、排気ラインL3に、第2パージガスを供給する第2パージガス供給ラインL4と、第1パージガスと第2パージガスの供給量を制御する制御装置Cとを備え、クライオポンプCP1から排気されるガスが爆発性ガスであるとき、制御装置Cは、第1パージガスの供給量を、第2パージガスの供給量に比べて少なくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオポンプと、
前記クライオポンプの冷却運転停止後に、第1パージガスを前記クライオポンプへ供給する第1パージガス供給ラインと、
前記クライオポンプ内に溜め込まれたガスを、前記クライオポンプ外に排気する排気ラインと、
前記排気ラインに、第2パージガスを供給する第2パージガス供給ラインと、
前記第1パージガスと前記第2パージガスの供給量を制御する制御装置とを備え、
前記クライオポンプから排気される前記ガスが爆発性ガスであるとき、前記制御装置は、前記第1パージガスの供給量を、前記第2パージガスの供給量に比べて少なくする、クライオポンプシステム。
【請求項2】
前記排気ラインは、前記クライオポンプの内部圧力に応じて開閉するリリーフバルブを有する、請求項1記載のクライオポンプシステム。
【請求項3】
前記クライオポンプから排気される前記ガスが非爆発性ガスであるとき、前記制御装置は、前記第2パージガスの供給を停止する、請求項1記載のクライオポンプシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記クライオポンプから排気される前記ガスが爆発性ガスであるとき、前記ガスの排気開始から排気完了までの間に、前記第1パージガスの供給量を変更する、請求項1記載のクライオポンプシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクライオポンプシステムを有する、半導体製造装置。
【請求項6】
クライオポンプの冷却運転停止後に、第1パージガスを前記クライオポンプへ供給することと、
前記クライオポンプ内に溜め込まれたガスを、前記クライオポンプ外の排気ラインに排気することと、
第2パージガスを前記排気ラインに供給することと、
前記ガスが爆発性ガスであるとき、前記第1パージガスの供給量を、前記第2パージガスの供給量に比べて少なくすることと、を備えるクライオポンプの再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆発性ガスを貯蔵するクライオポンプの再生に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置では、処理内容に応じて、メタン、エタン、プロパン、水素、一酸化炭素等のガスが使用されている。これらのガスは、所定濃度範囲にあるとき、剥き出しの電気導通線といった発火源に触れることで爆発を引き起こすことから、爆発性ガスとして知られている。
【0003】
半導体製造装置の内部を真空排気する際、爆発性ガスの排気にあたり、クライオポンプが使用されている。
クライオポンプは、溜め込み型の真空ポンプであり、一定量のガスを溜め込むと、溜め込んだガスをクライオポンプ外に排出する再生作業を必要としている。
【0004】
安全上、爆発性ガスをクライオポンプ外に排出する際には、爆発性ガスの濃度が爆発限界以下となるように、窒素に代表される不活性ガスを用いて爆発性ガスの希釈が行われており、これまでに様々な手法が提案されてきた。
【0005】
特許文献1では、窒素ガスの高いパージ圧により、クライオポンプとポンプが取り付けられる半導体製造装置の真空容器との間に設けられたゲートバルブが押し開けられて、爆発性ガスである水素ガスが真空容器内部に流入する問題に対し、爆発性ガスをパージするための特別な部屋として、クライオポンプの容器外にガス分離容器を設けることが提案されている。
【0006】
具体的には、クライオポンプの容器と真空状態にあるガス分離容器とを連結することで、クライオポンプ内の爆発性ガスの一部をガス分離容器へ移した後、ガス分離容器をクライオポンプの容器から切り離す。その後、ガス分離容器へ窒素ガスを供給し、ガス分離容器内の水素ガスを希釈して除外装置へ排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1回の希釈操作で、より多くの水素ガスを排出する場合、ガス分離容器の容積を増大することが必要となるが、ガス分離容器の大型化は、場所の制約上、装置構成によっては採用することが困難であり、汎用性を欠くものであった。
【0009】
そこで、爆発性ガスの安全かつ容易な排出を実現するクライオポンプシステムの提供を主たる目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
クライオポンプシステムは、
クライオポンプと、
前記クライオポンプの冷却運転停止後に、第1パージガスを前記クライオポンプへ供給する第1パージガス供給ラインと、
前記クライオポンプ内に溜め込まれたガスを、前記クライオポンプ外に排気する排気ラインと、
前記排気ラインに、第2パージガスを供給する第2パージガス供給ラインと、
前記第1パージガスと前記第2パージガスの供給量を制御する制御装置とを備え、
前記クライオポンプから排気される前記ガスが爆発性ガスであるとき、前記制御装置は、前記第1パージガスの供給量を、前記第2パージガスの供給量に比べて少なくする。
【0011】
クライオポンプの再生方法は、
クライオポンプの冷却運転停止後に、第1パージガスを前記クライオポンプへ供給することと、
前記クライオポンプ内に溜め込まれたガスを、前記クライオポンプ外の排気ラインに排気することと、
第2パージガスを前記排気ラインに供給することと、
前記ガスが爆発性ガスであるとき、前記第1パージガスの供給量を、前記第2パージガスの供給量に比べて少なくすることと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
第2パージガスの供給量に比べて第1パージガスの供給量を少なくすることで、クライオポンプから排気ラインに押し出される少量の爆発性ガスを大量の第2パージガスで希釈して、爆発限界以下の濃度で爆発性ガスを安全かつ容易に排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】クライオポンプシステムの概略を示す模式的平面図
【
図2】クライオポンプシステムの再生方法に係るフローチャート
【
図3】別のクライオポンプシステムの概略を示す模式的平面図
【
図4】別のクライオポンプシステムの再生方法に係るフローチャート
【
図5】他のクライオポンプシステムの概略を示す模式的平面図
【
図6】他のクライオポンプシステムの再生方法に係るフローチャート
【
図7】他のクライオポンプシステムの別の再生方法に係るフローチャート
【
図8】他のクライオポンプシステムの概略を示す模式的平面図
【
図9】他のクライオポンプシステムの概略を示す模式的平面図
【
図10】流量調整バルブの使用例に係るフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、クライオポンプシステムCS1の概略を示す模式的平面図である。図に示す白抜き矢印は、後述するパージガスやクライオポンプから排出されるガスの流れを表す。
クライオポンプシステムCS1は、クライオポンプCP1、クライオポンプCP1に接続された第1パージガス供給ラインL1、粗引きラインL2、排気ラインL3、および、排気ラインL3に接続された第2パージガス供給ラインL4を有している。
【0015】
第1パージガス供給ラインL1のXで示す端部には、パージガス供給源が接続されている。パージガス供給源は、クライオポンプ再生時に、ポンプ内のガスを排気ラインL3に押し出すパージガスを供給する。供給されるガスは、窒素ガスに代表される不活性ガスであり、窒素ガスの他、ヘリウムガスやネオンガス、アルゴンガス等が使用される。
第1パージガス供給ラインL1は、第1パージガスの流量を測定する流量計Fと第1パージバルブ3を備えている。クライオポンプCP1の再生時、第1パージバルブ3は開状態となり、第1パージガスをクライオポンプCP1に供給する。クライオポンプCP1の冷却運転時、第1パージバルブ3は閉状態となり、第1パージガスのクライオポンプCP1への供給が停止される。
【0016】
粗引きラインL2は、ラフバルブ4を備えている。クライオポンプCP1の再生後、クライオポンプCP1の冷却運転を開始する前に、ポンプ内の真空度を所定のものにするために、ラフバルブ4を開状態とし、粗引きラインL2に接続されているドライポンプでクライオポンプCP1を真空排気する。
クライオポンプCP1の再生時、ラフバルブ4は閉状態となり、第1パージガスやクライオポンプに蓄えられているガスのドライポンプ側への流出が停止される。
【0017】
排気ラインL3は、クライオポンプCP1内の圧力を計測する圧力計Pとベントバルブ5を備えている。排気ラインL3のYで示す先は、不図示の除害装置に接続されている。
クライオポンプCP1の再生時、クライオポンプCP1に蓄えられた爆発性ガスと第1パージガスを除害装置へ送気するために、ベントバルブ5は開状態となる。一方、クライオポンプCP1の冷却運転時には、ベントバルブ5は閉状態となる。
【0018】
ベントバルブ5は、圧力計Pでの計測結果に基づいて、開状態にしてもよい。また、第1パージガスを流してからの経過時間に応じて、開状態にしてもよい。さらに、安全面を考慮する場合、ベントバルブ5をリリーフバルブとして構成し、クライオポンプCP1の内部圧力が所定圧力以上となった際に、自動的に開状態となり、排気ラインL3へ第1パージガス等を流すように構成してもよい。
【0019】
本発明では、排気ラインL3に追加のパージガスを供給する第2パージガス供給ラインL4が接続されている。第2パージガス供給ラインL4のXで示す端部には、パージガス供給源が接続されており、パージガス供給源から第2パージガスが供給される。
パージガス供給源は、第1パージガス供給ラインL1に接続されたパージガス供給源と共用としてもよいが、各ラインに個別のパージガス供給源を接続してもよい。また、各パージガス供給ラインから供給される第1パージガスと第2パージガスは、同一のガスとしてもよいが、異なるガスとしてもよい。さらに、複数ガスからなる混合ガスをパージガスとして使用してもよく、供給するガスの温度も低温、高温等、様々な温度のガスも使用できうる。
【0020】
第2パージガス供給ラインL4は、第2パージガスの流量を測定する流量計Fと第2パージバルブ6を備えている。クライオポンプCP1の再生時、第2パージバルブ6が開状態となり、排気ラインL3に第2パージガスが供給される。
第2パージバルブ6は、ベントバルブ5や第1パージバルブ3が開状態になるのに連動して、開状態にしてもよい。一方で、各バルブの開閉制御は独立されていてもよい。
【0021】
これらのバルブの開閉操作は、装置のオペレータが手動で行ってもよいが、クライオポンプシステムCS1に備えられた制御装置Cによって自動制御されてもよい。制御装置Cは、圧力計Pや流量計Fでの測定結果や装置のオペレータによる設定等を入力信号SIとし、各バルブの開閉制御を行う出力信号SOを送信する。また、入力信号SIとは別に、予め設定された情報を制御装置Cの内部に記録しておき、適宜、情報を読み出し、読み出した情報に基づいて出力信号SOを生成してもよい。さらに、制御装置Cは、各バルブの開閉操作以外を制御する機能を有していてもよい。
排気ラインL3に第2パージガスが供給されることで、クライオポンプCP1から排気ラインL3に放出された爆発性ガスを希釈する。この希釈によって、対象となる爆発性ガスの濃度を爆発限界以下にして、爆発性ガスを安全な状態で除害装置へ流している。
【0022】
第1パージガスの流量に応じて、クライオポンプCP1内の爆発性ガスが排気ラインL3側に押し出されることになるが、第1パージガスの流量に比べて第2パージガスの流量が少ない場合には、排気ラインL3に大量の爆発性ガスが流れ出るため、これを少量のパージガスで爆発限界以下の濃度に希釈することは困難となる。
【0023】
そこで、本発明では、第1パージガスと第2パージガスの流量を比較した際、第1パージガスに比べて第2パージガスの流量が多くしている。
第2パージガスの供給量に比べて第1パージガスの供給量を少なくすることで、クライオポンプCP1から排気ラインL3に押し出される爆発性ガスが少量となる。排気ラインL3では、クライオポンプCP1から押し出された少量の爆発性ガスを大量の第2パージガスで希釈しているため、爆発性ガスを爆発限界以下の濃度に希釈することが容易となる。
この構成であれば、特許文献1に挙げられるガス分離容器が不要であり、爆発性ガスの安全かつ容易な排出が可能となる。
なお、第2パージガスでの希釈にあたり、必ずしも爆発限界値そのものを目標値に設定する必要はない。爆発限界値を下回る数値を目標値として定め、設定された目標値以下となるように爆発性ガスの濃度を希釈してもよい。
【0024】
図2は、
図1のクライオポンプシステムCS1を用いたクライオポンプCP1の再生例を示すフローチャートである。ここでは、第1パージガスと第2パージガスを窒素ガスとし、爆発性ガスを水素ガスとしている。
最初に、排気ラインL3に第2パージガスを導入する(処理S1)。これは排気ラインL3に残留している酸素を取り除くために実施される。処理S1を実施する際のパージガスは、第2パージガスと同じガスでもいいが、異なる不活性を使用してもよい。
第2パージバルブ6を開状態にし、ベントバルブ5を閉状態にした状態で、第2パージガス供給ラインL4から排気ラインL3へ窒素ガスが供給される。第2パージバルブ6は、処理S1の完了後、閉状態に戻してもいいが、開状態を維持しておき、第2パージガス供給ラインL4への窒素ガスの供給を継続してもよい。
【0025】
処理S1で、排気ラインL3の酸素除去が行われた後、クライオポンプCP1の冷却運転を停止する(処理S2)。具体的には、クライオパネルの低温維持機能を停止する。その後、クライオポンプCP1に溜め込まれた爆発性ガスの種類に応じ、場合によってはクライオパネルを昇温する等して、爆発性ガスを気体に戻す。
【0026】
次に、クライオポンプCP1に窒素ガスを流し、クライオポンプCP1内の水素ガスをパージする(処理S3)。
この際、第1パージバルブ3は開状態であり、ラフバルブ4はクライオポンプCP1の冷却運転時に引き続き閉状態にある。ベントバルブ5は、第1パージバルブ3が開状態になるのと同時に開状態となる。あるいは、クライオポンプCP1の内圧が所定圧力となった時点で、ベントバルブ5が開状態となる。
処理S1での酸素除去の後、第2パージバルブ6を閉状態に戻している場合、第1パージバルブ3やベントバルブ5が開状態となるのに連動して、第2パージバルブ6を開状態にする。
【0027】
処理S3で窒素ガスによるパージが開始されてから水素ガスの排気が完了するまで、窒素ガスによるパージを継続する(処理S4)。
処理S4での窒素ガスによるパージの完了は、排気ラインL3に水素ガス濃度を測定する濃度計を取り付けておき、測定濃度をもとに判断してもよい。一方、予め実験により水素ガスの排気完了までに要する追い出し時間を求めておき、パージ開始からの経過時間に基づいて、パージの完了を判断してもよい。
処理S3、処理S4では、第1パージガスの流量を、第2パージガスの流量に比べて少なくしている。具体的には、第1パージガスの供給量は、第2パージガスの供給量の1/200~1/10程度に設定する。
なお、各パージガスの供給量は、装置構成に応じて変更されるものであり、ここに示す数値は一例に過ぎない。
【0028】
図3は、別のクライオポンプシステムCS2の概略を示す模式的平面図である。
図1のクライオポンプシステムCS1との違いは、第1パージガス供給ラインL1を部分的に複数化している点にある。
図3や後述する他の図面で、
図1と共通した符号が付けられている部材は、
図1と同じ部材であることから、詳細な説明は省略する。
【0029】
第1パージガス供給ラインL1は、切替バルブ1を有している。切替バルブ1は、複数あるパージガスの供給経路を切替えるためのバルブである。
図3では、上下に配置された2つのバルブのうちいずれか一方のバルブを開状態にし、他方を閉状態にする。また、切替バルブ1のうち、図中下側にあるバルブの下流側には、流量調整バルブ2が設けられている。
【0030】
流量調整バルブ2は、全開よりも狭く、全閉よりも広い、所定開度が設定されたバルブである。流量調整バルブ2により、第1パージガスの流量が制限されて、切替バルブ1の下側のバルブを通過する第1パージガスの流量は、切替バルブ1の上側のバルブを通過する第1パージガスの流量に比べて少なくなる。
なお、流量調整バルブ2の開度は、特定のものに固定されていてもいいが、手動あるいは自動で適宜変更できるようにしてもよい。
【0031】
クライオポンプCP1に溜め込まれるガスが、複数のガスであり、爆発性ガスと非爆発性ガスを含む場合には、クライオポンプCP1の温度を調整し、各ガスを個別に気化した上で、排気ラインL3から個別に排気する。
排気の順序は、クライオポンプCP1に溜め込まれたガスの気化温度が低い順である。爆発性ガスの気化温度が、非爆発性ガスの気化温度よりも低い場合には、爆発性ガスが気化される間に、非爆発性ガスが気化されないように、クライオポンプCP1でガスの溜め込みを行うクライオパネルやクライオパネルに取り付けられている吸着材などの温度調整が行われる。
【0032】
爆発性ガスの排気に続いて、非爆発性ガスの排気が実施されるクライオポンプCP1の再生処理において、第1パージガスの流量が、常に爆発性ガスを押し出す程度に少量であれば、クライオポンプCP1の再生時間が長期化することが懸念される。
非爆発性ガスの排気にあたっては、爆発限界以下に希釈する等の制約はない。クライオポンプCP1の再生時間を短縮するには、非爆発性ガスの排気時に使用する第1パージガスの流量を、爆発性ガスの排気時に使用する第1パージガスの流量に比べて、増加させておくことが望ましい。
【0033】
図3のクライオポンプシステムCS2では、第1パージガスの流量を可変にすべく、切替バルブ1と流量調整バルブ2を採用している。
この構成において、爆発性ガスを排気する場合には、切替バルブ1で図示される下側のバルブを開状態にし、上側のバルブを閉状態にする。これより、クライオポンプCP1に流入する第1パージガスの流量は少量となる。一方、非爆発性ガスを排気する場合には、切替バルブ1で図示される上側のバルブを開状態とし、下側のバルブを閉状態にする。これより、大量の第1パージガスをクライオポンプCP1に供給することが可能となる。
また、非爆発性ガスを排気する場合、爆発限界以下への希釈は不要となることから、第2パージバルブ6は閉状態となり、排気ラインL3への第2パージガスの供給は停止されていてもよい。
切替バルブ1と流量調整バルブ2の開閉操作は、装置のオペレータによる手動操作でもよいが、
図1の構成例と同じく、制御装置Cで自動制御してもよい。
【0034】
図3の構成では、切替バルブ1と流量調整バルブ2を用いて、排気対象とするガスに応じて、第1パージガスの流量を変更する構成について説明したが、別の構成を採用してもよい。
例えば、流量調整バルブ2の開度を、全開から爆発性ガスの排気に適した開度にまで調整できる場合、第1パージガス供給ラインL1を1本のガス供給ラインで構成してもよい。
具体的には、第1パージガス供給ラインL1から切替バルブ1を取り去り、第1パージガス供給ラインL1の構成を、流量調整バルブ2を備えた1本のガス供給ラインとし、排気対象とするガスに応じて、流量調整バルブ2の開度を適宜変更して第1パージガスの流量を変更する。
【0035】
図4は、
図3のクライオポンプシステムCS2を用いたクライオポンプCP1の再生例を示すフローチャートである。
図4や後述する他のフローチャートで、
図2のフローチャートと同一の符号が使用されている処理は、
図2で説明した処理と同一の処理が実施されるため、詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0036】
処理S2でクライオポンプCP1の冷却運転を停止した後、切替バルブ1で第1パージガスを流す経路の選択を行う(処理S11)。
図4のフローチャートでは、爆発性ガスである水素ガスを排気し、その後に、非爆発性ガスを排気する。また、第1パージガス、第2パージガスは、窒素ガスである。処理S11では、切替バルブ1で
図3記載のクライオポンプシステムCS2の下側の経路が選択される。
【0037】
処理S11での経路選択の後、第1パージガス供給ラインL1のXで示す端部からパージガス供給源より窒素ガスを供給する。窒素ガスの供給と同時かそれよりも前のタイミングで、第1パージバルブ3を開状態にする(処理S12)。
処理S4で水素ガスの排気が完了すると、パージガス供給源からの窒素ガスの供給を停止し、第1パージバルブ3を閉状態にした上で、切替バルブ1にて経路の再選択を実施する(処理S13)。
処理S13では、切替バルブ1で
図3記載のクライオポンプシステムCS2の上側の経路が選択される。これにより、第1パージガスの流量が増加し、非爆発性ガスを短時間で排気することが可能となる。
【0038】
半導体製造装置によっては、複数台のクライオポンプを有している。
図5は、3台のクライオポンプCP1~CP3に対応したクライオポンプシステムCS3の構成例である。同図において、圧力計P、流量計F等の計器類の記載は省略している。
図示される第1パージガス供給ユニットA1と第2パージガス供給ユニットB1は、
図3に破線で描かれる部位に相当する。
【0039】
複数台のクライオポンプの再生処理は、1台ずつ順番に行ってもいいが、再生処理の時間短縮を考慮し、クライオポンプと除外装置が1対1で対応しているならば、全てのクライオポンプの再生処理を並行実施してもいい。
一方、除外装置につながる配管を各クライオポンプで共通化している場合には、同配管を流れる爆発性ガスの濃度を爆発限界以下の濃度にすることが必要となることから、爆発性ガスの排気は1台ずつ行われることが望ましい。
除外装置につながる配管を共通化した構成で、複数台のクライオポンプの再生処理時間を短縮する構成例について、
図6および
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
図6は、3台のクライオポンプCP1~CP3の再生方法に関する一例である。後述する
図7と同じく、図の上下方向は時間軸を表し、横方向に並記される処理は、同時刻に実施される。図示される処理S10で示す水素希釈処理は、
図4のフローチャートに示す処理S11、処理S12、処理S4、処理S13からなる一連の処理に相当する。また、クライオポンプCP2、CP3に対する処理の一部である、処理S1と処理S2は、図の簡略化のため、その記載を省略している。
【0041】
図6のフローチャートにおいて、クライオポンプCP1に対し、処理S14で非爆発性ガスの排気処理である標準再生処理を開始する。このタイミングで、クライオポンプCP2に対する水素希釈処理を開始する。同様に、クライオポンプCP2に対する標準再生処理とクライオポンプCP3に対する水素希釈処理を並行して実施する。
【0042】
図7は、3台のクライオポンプCP1~CP3を再生方法に関する別の例である。
クライオポンプCP1、クライオポンプCP2、クライオポンプCP3に対して、処理S10の水素希釈処理を順番に実施し、クライオポンプCP3の水素希釈処理が終了した後で、3台のクライオポンプに対して一斉に標準再生処理を実施する。
図6、
図7のように、一部処理を並行して実施すれば、各クライオポンプを順番に再生処理する場合に比べ、再生処理に要する時間が短縮できる。
【0043】
図8は、クライオポンプシステムCS4の概略を示す模式的平面図である。
図3に示すクライオポンプシステムCS2との違いは、第1パージガス供給ユニットA2にある。
図8では、切替バルブ1で3つの供給経路を切換える。3つの供給経路のうち、図示される下側2つの経路には、流量調整バルブ2x、2yが設けられている。各バルブは、制限される流量が異なっていて、流量調整バルブ2xの流量制限は、流量調整バルブ2yの流量制限よりも小さい。つまり、流量調整バルブ2xを流れるガス流量は、流量調整バルブ2yを流れるガス流量に比べて多くなる。流量調整バルブ2x、2yを設け、段階的に第1パージガスの流量制限を行い、爆発性ガスのパージを実施してもよい。
切替バルブ1で切り替える供給経路の数は、3本に限らず、4本以上であってもよく、供給経路の本数に応じて流量調整バルブの数を増やしてもよい。
また、1つの経路に流れるガス流量を段階的に変更すべく、開度が複数段階に切替可能な流量調整バルブを使用してもよい。
【0044】
図8のクライオポンプシステムCS4を変形し、
図9のクライオポンプシステムCS5を採用してもよい。
図9のクライオポンプシステムCS5では、
図8のクライオポンプシステムCS4の切替バルブ1で切り替える供給経路のうち、流量調整バルブがない経路が独立している。
具体的には、第1パージガス供給ラインL1を2本に分け、それぞれ、第1パージ供給ラインL1a、第1パージ供給ラインL1bとする。第1パージ供給ラインL1aには、切替バルブ1で切替可能な2本の供給経路を設け、一方の経路に流量調整バルブ2xを配置し、他方の経路に流量調整バルブ2yを配置する。また、第1パージ供給ラインL1aのクライオポンプCP1につながる端部には、第1パージバルブ3aを配置する。第1パージ供給ラインL1bには、第1パージバルブ3bのみを配置する。
【0045】
図10は、
図8、
図9で紹介した2つの流量調整バルブの使用例に係るフローチャートである。
処理S2でクライオポンプの冷却運転を停止した後、切替バルブ1で流量調整バルブ2xが設けられる経路を選択し、相対的に多い流量で第1パージガスを流し、爆発性ガスの排気を開始する(処理S15)。その後、ベントバルブ5がクライオポンプの内圧により開状態になる前に、切替バルブ1で流量調整バルブ2yが設けられる経路に切り替え、相対的に少ない流量で第1パージガスを流し、爆発性ガスの排気を実施する(処理S16)。
なお、切替バルブ1による供給経路の切替にあたり、第1パージバルブ3aを一旦閉状態とし、供給経路の切替後に、開状態に戻す。
【0046】
切替バルブ1による供給経路の切替は、圧力計Pの実測値にもとづいて実施してもいいが、実験データから予想時間を求めておき、パージ開始後の経過時間にもとづいて実施してもよい。
上述したように、爆発性ガスをパージする時の第1パージガスの流量を、パージの途中で変更し、パージ時間の短縮を図るようにしてもよい。
一方、クライオポンプの内圧を測定する圧力計がない場合、安全面を考慮すれば、爆発性ガスをパージする時の第1パージガスの流量は少量であることが望ましい。このことから、爆発性ガスをパージする際、切替バルブ1による供給経路の切り替えを行わず、流量調整バルブ2yが設けられる経路が常に選択されてもよい。
【0047】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0048】
除害装置へつながる排気ラインL3は、クライオポンプ以外のポンプ(例えば、ドライポンプ)とも共通化されている場合が多い。
クライオポンプの排気とドライポンプの排気とが同じタイミングで実施された場合、ドライポンプからの排気流がクライオポンプ側に流れ込むことが懸念される。
この対策として、爆発性ガスを希釈するときのクライオポンプの最小排気圧力を実験データから求めておき、この圧力未満となるようにドライポンプの排気を実施する。
【0049】
図5の構成例において、第1パージガス供給ユニットA1を
図8の第1パージガス供給ユニットA2や
図9の第1パージガス供給ユニットA3で置き換えることも可能である。
【0050】
上記実施形態で紹介した計測器の配置場所は、一例であり、クライオポンプ内の内圧測定、各流路での流量測定といった目的が達成できるならば、その配置場所に制限はない。また、上記実施形態では、圧力計の測定値やパージガスを流してからの経過時間に応じて、バルブを開状態にする構成例を説明したが、クライオポンプに温度計を取り付け、温度計での測定値にもとづいて任意のバルブを開状態にすることや切替バルブによる流路切替を実施してもよい。
もちろん、圧力、経過時間、温度などのパラメーターに応じて、任意のバルブを閉状態にしてもよい。
【0051】
上記実施形態に挙げるクライオポンプシステムCS1~CS5は、イオン注入装置やスパッタリング装置等の半導体製造装置に搭載することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 切替バルブ
2、2x、2y 流量調整バルブ
3、3a、3b 第1パージバルブ
4 ラフバルブ
5 ベントバルブ
6 第2パージバルブ
CS1-5 クライオポンプシステム
CP1-3 クライオポンプ
L1 第1パージガス供給ライン
L3 排気ライン
L4 第2パージガス供給ライン
C 制御装置