(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086077
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】育苗培土用固結剤およびこれを用いた育苗培土
(51)【国際特許分類】
A01G 24/20 20180101AFI20240620BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A01G24/20
A01G7/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200970
(22)【出願日】2022-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匠平
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA05
2B022BA02
2B022BA11
2B022BA12
2B022BA16
(57)【要約】
【課題】培土構成素材の種類や潅水時の水温等に左右されることなく固結性能が良好である育苗培土用固結剤およびこれを用いた育苗培土を提供する。
【解決手段】本発明の育苗培土用固結剤は、キサンタンガムおよびグァーガムを含むことを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガムおよびグァーガムを含む育苗培土用固結剤。
【請求項2】
キサンタンガムおよびグァーガムと、培土構成素材とを含む育苗培土。
【請求項3】
前記キサンタンガムの含有量が、キサンタンガムおよびグァーガムの全量に対して5~50質量%である請求項2に記載の育苗培土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗培土用固結剤およびこれを用いた育苗培土に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農園芸作業の合理化や農作物の増収の目的で、苗の集中育成および生育苗の機械による移植が盛んに行われている。具体的には、移植機を用いて、育苗培土により育苗したセル苗やポット苗などを分離し、畑に植え付けるという方法であり、この機械移植によれば、比較的均一で強健な苗が得やすいという利点があるものの、機械移植の際、苗の根部の培土(根鉢部)が崩壊し、あるいは根部と培土とが分離するという欠点がある。そのため、機械移植に使用する培土は、移植作業中に崩壊を起こさないことが求められており高分子樹脂などによる固結を行い、根鉢部の崩壊を防止する技術が開示されている。
【0003】
例えば、天然高分子であるアルギン酸ナトリウムやキトサンを用いて培土を固結する方法や、ポリメタアクリル酸やポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールを主成分とする石油由来の合成高分子などが使用されている。石油由来の合成高分子は生分解性せずに土壌中に長く残存する恐れがあることや、天然高分子は水への溶解性が悪く、水溶解時には粘度が高くなり培土中へ均一に分散しない問題などがあった。
【0004】
また従来の固結剤は山土を主体とした育苗培土に使用されることが多いが、近年では省力化などにより露地野菜などを機械移植することが求められている。ところが野菜用培土はピートモスを多く配合した組成である。このピートモスを多く配合した培土では、従来の固結剤では十分に固結性能を発揮できない。このような背景において、ピートモスを多く配合した組成でも十分な固化性能を示す固結剤が求められている。
また、寒冷地では、潅水時の水温が低くなることがあるため、そのような環境下においても十分な固化性能を示す固結剤が求められている。
【0005】
植物栽培における培土などに固結性や保水性を与えるために、多糖類を用いる技術が提案されている。例えば、植物栽培用ゲル培地としてイオタ型のカラギナン(特許文献1)が提案されているが、ゲル培地での効果であり、培土での効果は記載されていない。特許文献2では固結しにくい繊維状物質を用いた培土での固結効果を提案しているが、タマリンド由来の水溶性高分子以外にバイオマス粉末を併用する必要があり、用途が限られてしまう。
【0006】
その他、特許文献3では保水性粒状培土としてカルボキシメチルセルロース、特許文献4では高吸水性ポリマーとして組成物としてカラギナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、特許文献5では含水時に高い固化性を示す素材としてネイティブ型ジェランガムなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-111024号公報
【特許文献2】特開2016-15903号公報
【特許文献3】特開昭60-58443号公報
【特許文献4】特開2016-154449号公報
【特許文献5】特許第7049516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のこれらの多糖類などの高分子固結剤は培土構成素材の種類により固結性能にバラつきが見られ、特にピートモスのような繊維状物質が多く配合されたものは固結性能が十分でない。上記に挙げたような多糖類においても同様である。また、所望の効果を得るためには高分子以外の第三成分が必須であるという制約がある場合もあり、そのため用途が限定されたり、潅水時の水温によっては多糖類が十分に溶解しないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、培土構成素材の種類や潅水時の水温等に左右されることなく固結性能が良好である育苗培土用固結剤およびこれを用いた育苗培土を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を行った結果、キサンタンガムおよびグァーガムを含む育苗培土用固結剤は、固結性能が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の育苗培土用固結剤は、キサンタンガムおよびグァーガムを含むことを特徴としている。
本発明の育苗培土は、キサンタンガムおよびグァーガムと、培土構成素材とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の育苗培土用固結剤および育苗培土は、培土構成素材の種類や潅水時の水温等に左右されることなく固結性能が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。
(育苗培土用固結剤)
本発明の育苗培土用固結剤は、キサンタンガムおよびグァーガムを含む。
本発明におけるキサンタンガムとは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthmonas campestris)が菌体外に生産する酸性多糖類である。その構造は、β-(1,4)-D-グルカンを主鎖骨格とし、主鎖中のグルコース1分子おきにα-D-マンノース、β-D-グルクロン酸、β-D-マンノースからなる側鎖が結合したものであり、主鎖に結合したマンノースはC6位がアセチル化され、末端のマンノースはピルビン酸とアセタール結合している。キサンタンガムは、上記構造を有する酸性多糖類であれば、限定はされず、商業的に入手することもできる。かかる製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンサポート P-180」等が挙げられる。
【0013】
本発明におけるグァーガムとは、1年生のマメ科の植物クラスタマメ(Cyamopsis tetragonolobus)の種子の胚乳から抽出される多糖類である。グァーガムの構造は主としてβ-D-マンノースとα-D-ガラクトースからなるガラクトマンナンである。主鎖は1,4結合のβ-D-マンノースであり、側鎖に1,6結合のα-D-ガラクトースが結合し、D-マンノースに対するD-ガラクトースの割合は、およそD-マンノース:D-ガラクトース=2:1である。グァーガムの製造方法としては、クラスタマメ(グア)の実から外皮を取り除き、粉砕したものを高温の水で抽出し、ろ過、イソプロピルアルコールなどのアルコール類による沈殿を経て、そのアルコールを取り除き、乾燥、粉砕する方法などが知られている。上記構造を有する中性多糖類であれば、限定はされず、商業的に入手することもできる。かかる製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ D-20」等が挙げられる。
【0014】
本発明の育苗培土用固結剤は、その剤型は特に限定されず、溶液状、固体状、ゲル状などが挙げられる。その中でも、溶媒にキサンタンガムおよびグァーガムを溶解または分散した溶液状であることが好ましい。溶媒としては、キサンタンガムおよびグァーガムを溶解または分散できるものであれば特に限定されず、水、有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。溶液とした場合におけるキサンタンガムおよびグァーガムの濃度は、固結性能の点から0.01~10.0質量%が好ましく、粘度、培土構成素材への浸透性の点から0.01~1.0質量%がより好ましい。
【0015】
(育苗培土)
本発明の育苗培土は、キサンタンガムおよびグァーガムと、培土構成素材とを含む。
本発明の育苗培土におけるキサンタンガムおよびグァーガムは、例えば、本発明の育苗培土用固結剤を培土構成素材に混合したものである。
【0016】
本発明の育苗培土における培土構成素材としては、特に限定されないが、通常農業用や園芸用の培土として用いられるものが挙げられ、例えば、植物性の繊維状物質、多孔性構造の無機物質、非多孔性構造の無機物質、肥料、土などが挙げられる。これらの培土構成素材は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
植物性の繊維状物質としては、例えば、ピートモス、ヤシガラ、モミガラ、オガクズ、竹粉、バガス、泥炭、草炭などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
多孔性構造の無機物質としては、例えば、バーミキュライト、アタパルジャイト、ケイソウ土、セピオライト、ゼオライト、パーライトなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
非多孔性構造の無機物質としては、例えば、珪砂、海砂、アルミナサンド、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
肥料としては、例えば、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物、酸化亜鉛などの亜鉛化合物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
土としては、例えば、黒ボク土、赤玉土、鹿沼土、日向土、田土、黒土、まさ土、ケト土、山土、山砂、川砂、火山灰土、ボラ土、赤土などの天然土壌が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
培土構成素材における植物性の繊維状物質の含有量は、40体積%以上であってもよい。このような範囲であっても、本発明の育苗培土は固結性能が良好である。
【0023】
育苗培土の基材である培土構成素材は、育苗対象の植物種などに応じて、以上のような培土として使用可能な素材を適宜組み合わせて使用することができる。このような育苗培土を用いることにより、根回りが少ない苗にも対応でき、定植性も良好で根鉢部分の崩壊が生じ難い根鉢を形成させることが可能となる。
【0024】
本発明の育苗培土は、キサンタンガムおよびグァーガムを用いると、培土構成素材の種類や潅水時の水温等の影響を受けることがなく、高い固結性能を示すことができる。培土構成素材の種類による影響を受けないため、植物性の繊維状物質のように従来の固結剤では固結性能を発揮しにくい培土構成素材を含む育苗培土など、幅広い用途への応用が可能である。
【0025】
本発明の育苗培土は、育苗対象の植物種などに応じて、本発明の効果を損なわない範囲内においてその他の成分を添加してもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、農業用薬剤などが挙げられる。農業用薬剤としては、例えば、除草剤、動物忌避剤、成長調整剤、土壌改良剤、有用微生物、有用菌、透水剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の育苗培土において、キサンタンガムおよびグァーガムの含有量は、培土構成素材の全量に対して0.01~10.0質量%であることが好ましい。なお、キサンタンガムおよびグァーガムの含有量は固形分換算である。
キサンタンガムおよびグァーガムの含有量は、固結性能が良好で、含水時の根鉢強度の低下を抑制することができる点から培土構成素材の全量に対して0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また生育性と定植性の点から5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
本発明の育苗培土において、キサンタンガムおよびグァーガムに対するキサンタンガムの含有比率は、キサンタンガムおよびグァーガムの全量に対して5~90質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、5~60質量%がさらに好ましく、5~50質量%が特に好ましく、5~30質量%が最も好ましい。
当該含有比率がこのような範囲であると、固結性能に加え、特に保水性がより良好となる。育苗培土の保水性が向上することで植物の生育が良好となり、根張りによる固結性能の向上にも寄与する。すなわち、発芽や発根などの生育性がより向上することで含水時の根鉢強度の低下をさらに抑制することができ、そのため、移植機を用いて育苗培土を用いたセル苗やポット苗などを分離し、畑に植え付ける際に抜取り性が良く、根傷みも抑制できるので定植性がより良好となる。
【0028】
本発明の育苗培土用固結剤を用いた固結前の育苗培土は、育苗培土用固結剤の添加量が少量でも高い固結度を生じさせることができるので、アルギン酸ナトリウムなど、他の固結剤に比して、固結前の育苗培土に添加する育苗培土用固結剤の絶対量が少なくて済み、環境への負荷が非常に少ない。
【0029】
固結前の育苗培土を製造する際には、育苗培土用固結剤を、そのままあるいは水でさらに適宜希釈して用いてもよく、これを育苗培土の基材となる培土構成素材に添加混合することにより固結前の育苗培土が得られ、そのまま使用したり袋詰めして保管することができる。固結前の育苗培土は、典型的には粒状の状態で、水分含量が60%未満である。
【0030】
固結前の育苗培土は、上記のとおり袋詰めされた粒状の状態で流通可能であるので、取り扱いが容易であり、様々な形状、セル数の育苗用容器に充填可能である。このため、農業従事者がすでに保有している育苗用容器を使用することが可能であり、農産物生産の低コスト化が可能である。
固結前の育苗培土は、例えば、育苗用容器に充填し、展圧した後に常温で風乾して、固結することで、植物を育苗する培土となる。
【0031】
固結前の育苗培土を充填するための育苗用容器としては、従来から用いられているものと同様のセル、ポット、トレイ、苗箱などが使用でき、育苗用容器の種類、形状、構造、サイズなどは各々の状況に応じて適宜選択可能であるが、固結前の育苗培土は、容積が1セル当たりの容積が10cm3以下の小容器に充填して用いた場合に、特に顕著な効果を発揮する。
【0032】
固結前の育苗培土は、育苗用容器に充填した後、展圧、すなわち上方からプレスして加圧することにより、固結後に所望の根鉢強度を備えた育苗培土となる。展圧時の圧力としては、特に限定されないが、例えば、0.1~10.0MPaの範囲である。展圧時の圧力が上記の範囲であれば、根鉢強度が高くなり、育苗施設からの運搬時や、移植機による抜き取り時および圃場への植え付け時にも根鉢に割れが生じたり、崩れるのを抑制することができる。
【0033】
このような展圧時の圧力は、育苗する農産物により好適な値が異なる。一般的な野菜については、例えば0.98MPa程度、タマネギについては、例えば4.9MPa程度である。
固結前の育苗培土の展圧には、例えば、市販の播種機などを使用することができる。
【0034】
固結前の育苗培土は、常温で風乾することにより固結することができる。風乾に要する時間としては、特に限定されないが、例えば、常温で1~15日の範囲である。具体的には、ビニルハウスの中で自然乾燥させた場合3日程度、気温25~28℃、湿度0%近傍に制御された発芽室内では1日程度、住宅や納屋などの農業従事者の居住環境に近い屋内では1週間程度風乾させることが好ましい。なお、風乾後の育苗培土の水分含量については、育苗する農産物などの植物の種類に応じて適宜調節することができる。
【0035】
本発明の育苗培土は、このようにして固結前の育苗培土を加熱することなく、育苗用容器に充填して、展圧および常温で風乾するだけでもよく、育苗培土を簡便に製造することができる。そのため、加熱固結のための特殊な設備を必要とせず、しかも育苗用容器の変形や破損が生じ難く、農産物生産の低コスト化が可能である。
【0036】
本発明の育苗培土を用いて植物を育苗する際には、例えば、上記のように、播種機を用いて市販のセルトレイに固結前の育苗培土を充填し展圧した後、風乾により固結させ、野菜などの植物の種子を1セルに対して1粒ずつ播種機を用いて播種し、固結前の育苗培土で覆土した後、潅水を行うなど通常の作業を行い発芽させ育苗をすることができる。また、固結前の育苗培土に、あらかじめ野菜などの植物の種子を混合したものを、市販のセルトレイに播種機を用いて充填し、展圧した後、風乾により固結させて、潅水を行うなど通常の作業を行い発芽させ育苗をすることもできる。また、種子以外にも挿し木して発根させ育苗をすることもできる。
【0037】
本発明の育苗培土は、野菜用、水稲用などの農業用や、園芸用に用いることができる。本発明の育苗培土による育苗に適する植物としては、例えば、野菜セル苗用途、果菜セル苗用途、切り花用途、鉢物、苗物、花壇用途切り花用途などが挙げられる。
【0038】
野菜セル苗用途としては、例えば、ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、アスパラガスなどのユリ科;セルリー、ミツバ、パセリ、ニンジン、明日葉などのセリ科;ホウレンソウ、フダンソウ、オカヒジキ等のアカザ科;ハクサイ、キャベツ、水菜、小松菜、メキャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、チンゲンサイ、コールラピ、ターサイ、ツケナ、高菜、クレソン、大根、菜の花などのアブラナ科;レタス、シュンギグ、ゴボウ、フキ、ヤーコンなどのキク科、シソなどのシソ科;ビートなどのヒユ科、ゴマなどのゴマ科;エンダイブなどのキク科;リーキなどのヒガンバナ科などが挙げられる。
これらの中でも、培土構成素材に使用する土の比率が多い点から、また根が細く、根鉢部分の崩壊が生じやすいユリ科の育苗に好適である。
【0039】
果菜セル苗用途としては、例えば、小麦、大麦、米などのイネ科;メロン、キュウリ、スイカ、カボチャ、トウガン、キンシウリ、ゴーヤ、ズッキーニなどのウリ科;トマト、ナス、ピーマン、パプリカ、とうがらし、じゃがいもなどのナス科;オクラ、モロヘイヤなどのアオイ科;スイートコーン(トウモロコシ)、インゲンなどのマメ亜科;エンドウ、エダマメ、ソラマメなどのマメ科などが挙げられる。
【0040】
また、固結前育苗培土または固結後の育苗培土に挿し木するのに適する植物としては、キク、カーネーション、宿根カスミソウなどの挿し木で繁殖できる植物が挙げられる。
【0041】
切り花用途としては、例えば、トルコギキョウ、キンギョソウ、ブプレウルム、ユーストマ、ストック、アネモネ、カンパニュラ、ダリア、スカピオサ、デルフィニウム、ラークスパー、ニゲラ、ハナシノブ、ブルーレースフラワー、マトリカリア、シンテッポウユリ、リモニウムシニュアータ、オキシペタルム、クラスペディア、ユウギリソウなどが挙げられる。
【0042】
鉢物、苗物、花壇用途としては、例えば、アゲラタム、イソトマ、インパチェンス、エキザカム、ガーベラ、ガザニア、カルセオラリア、クリサンセマム、コリウス、サルビア、シザンサス、シネラリア、ゼラニウム、トレニア、パンジー、ビンカ、プリムラ、ペチュニア、ベコニア、マリーゴールド、ラナンキュラス、カーネーションなどが挙げられる。
【0043】
本発明の育苗培土を用いて植物を育苗した後、移植機を用いてセル苗やポット苗などを分離し、根鉢を地床に移植する。本発明の育苗培土用固結剤および育苗培土は、固結性能が良好で、含水時の根鉢強度の低下を抑制することができるので、育苗培土が含水していても、機械移植の際に根鉢部が崩壊したり、根部と培土とが分離したりすることを抑制できる。また育苗培土に固結剤として含まれるキサンタンガムおよびグァーガムは生分解性が良好で、環境汚染の懸念がない。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用した育苗培土用固結剤は以下のとおりである。
<育苗培土用固結剤>
固結剤A:キサンタンガム
固結剤B:グァーガム
固結剤C:アルギン酸ナトリウム
固結剤D:カッパーカラギナン
固結剤E:イオタカラギナン
固結剤F:脱アシル型ジェランガム
固結剤G:寒天
固結剤H:ローカストビーンガム
固結剤I:タマリンドシードガム
固結剤J:グルコマンナン
固結剤K:アラビアガム
固結剤L:カラヤガム
固結剤M:トラガントガム
固結剤N:LMペクチン
固結剤O:HMペクチン
固結剤P:サイリウトシードガム
固結剤Q:CMC(カルボキシメチルセルロース)
【0045】
(実施例1~9、比較例1~21)
<育苗培土の製造>
表1に示す含有量(体積%)となるように各種培土構成素材をミキサー(光洋機械産業株式会社製)に投入して攪拌混合し、培土基材1~4とした。次いで培土基材100質量部に対して、表2A、表2Bに示す育苗培土用固結剤が同表に示す含有量(質量部)となるように添加して、10分間攪拌混合し、固結前の育苗培土を得た。この固結前の育苗培土は、袋詰めした。
【0046】
<播種作業>
播種機(OSE-110:みのる産業株式会社製)を用いて、袋詰めされた固結前の育苗培土を448穴のセルトレイ(ポット448育苗箱:みのる産業株式会社製)に一定量充填し、展圧した後、常温で1週間風乾して、育苗培土を固結させた。
この固結させた育苗培土に、タマネギの種子を1穴に対して1粒ずつ再度播種機を用いて播種し、一定量の固結前の育苗培土で覆土した後、一定量の潅水を行い、播種作業を完了した。なお、潅水時の温度、保管温度を20℃、30℃の2水準用意し、以下の試験は2水準でそれぞれ実施した。
【0047】
実施例および比較例で得られた育苗培土について、保水性を評価し、発根状況を指標としてタマネギの生育性を評価した。また、タマネギの定植性および根鉢強度を評価した。
【0048】
<保水性>
上記育苗から10日後、一定量を潅水した。潅水前後の培土質量(無水物)に対して、5:200%以上、4:200%未満150%以上、3:150%未満130%以上、2:130%未満110%以上、1:110%未満の5段階で観察評価した。
【0049】
<タマネギの発根状況>
上記の実施例および比較例で得られた播種後の育苗培土について、播種後は1日1回の潅水を一定量行い育苗し、30日後の発根状況について、以下の基準で評価した。
発根状況の評価基準
◎:発根状況が極めて良好であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することができる。
○:発根状況が良好であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することができる。
△:発根状況はやや不良であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することはできない。
×:発根状況は不良であり、セルトレイから抜き取った育苗培土の外周面においてタマネギの主根を目視で確認することはできない。
【0050】
<タマネギの定植性>
上記育苗から60日後、セルトレイからの移植機(玉ネギ移植機歩行4条植:みのる産業株式会社製)によるタマネギの定植性について、セルトレイからの抜取り性や根痛みなどの総合評価として以下の基準で評価した。
タマネギの定植性の評価基準
◎:セルトレイからの抜取り性が良く、根傷みが全くなく、定植性が優良である。
○:セルトレイからの抜取り性が良く、根傷みがほとんどなく、定植性が良好である。
△:セルトレイからの抜取り性がやや悪く、根傷みがわずかにあり、定植性はやや不良である。
×:セルトレイからの抜取り性が悪く、根傷みがあり、定植性は不良である。
【0051】
<タマネギの根鉢強度>
上記育苗から60日後、タマネギの苗をセルトレイから抜取り、50cmの高さから落下させ、落下前後の質量から算出した残存率よりタマネギの根鉢強度を評価した。
落下試験
タマネギの根鉢強度の評価基準(落下前後の質量から算出した残存率)
5+:残存率が95%以上である。
5:残存率が90%以上95%未満である。
4:残存率が70%以上90%未満である。
3:残存率が50%以上70%未満である。
2:残存率が30%以上50%未満である。
1:残存率が30%未満である。
【0052】
以上の評価結果を表2A、表2Bに示す。なお、表2A、表2Bにおいて、根鉢強度の評価における落下試験において評価点3以下は発明の課題を解決しないと判断した。
【0053】
【0054】
【0055】