(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086113
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】車両用クーラー
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20240620BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60H1/32 623Z
B60H1/32 623F
B60H1/32 626E
B60H1/32 626F
B60H1/00 101T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201061
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小見 良介
(72)【発明者】
【氏名】深井 優太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA32
3L211DA03
3L211DA25
3L211DA30
3L211EA12
3L211EA32
3L211EA38
3L211EA55
3L211EA83
3L211FB05
3L211GA03
3L211GA25
3L211GA29
(57)【要約】
【課題】長時間の利用が可能になる車両用クーラーを提供する。
【解決手段】車両10は、内燃機関11と、機関駆動式の第1コンプレッサ14と、コンデンサ15と、電動式のコンデンサファン16とを有する。車両用クーラーは、電動式の第2コンプレッサ31と、第2蓄電池32と、直流電圧を昇圧して出力する電力変換部33と、クーラー制御装置35とを備える。クーラー制御装置35は、基本運転処理と回転低下処理とを実行する。基本運転処理では、車室内の温度を利用者によって設定される設定温度にする態様で、コンデンサファン16の作動を制御するとともに第2コンプレッサ31の作動を制御する。回転低下処理では、第2コンプレッサ31の消費電力が上限値以上になったときに、そうでないときと比べて第2コンプレッサ31の回転速度が低くなるように、同第2コンプレッサ31の作動を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両動力源としての内燃機関と、冷媒を圧送する機関駆動式の第1コンプレッサと、前記冷媒の冷却に用いるコンデンサと、前記コンデンサへの送風を行う電動式のコンデンサファンと、を有する車両に適用され、
前記内燃機関の停止時において、前記冷媒を圧送する電動式の第2コンプレッサと、前記コンデンサファンおよび前記第2コンプレッサの電力源になる蓄電池と、前記蓄電池の直流電圧を昇圧して出力する電力変換部と、前記コンデンサファンおよび前記第2コンプレッサの作動を制御する制御部と、を備える車両用クーラーであって、
前記制御部は、基本運転処理と回転低下処理とを実行するものであり、
前記基本運転処理は、車室内の温度を利用者によって設定される設定温度にする態様で、前記コンデンサファンの作動を制御するとともに前記第2コンプレッサの作動を制御する処理であり、
前記回転低下処理は、前記第2コンプレッサの消費電力が上限値以上になったときに、そうでないときと比べて前記第2コンプレッサの回転速度が低くなるように、同第2コンプレッサの作動を制御する処理である、車両用クーラー。
【請求項2】
前記車室内の温度である実温度を検出する温度検出部と、
前記設定温度を設定する温度設定部と、を備え、
前記基本運転処理は、前記実温度と前記設定温度との差に基づいて前記コンデンサファンの回転速度についての第1制御目標値と前記第2コンプレッサの回転速度についての第2制御目標値とを算出する処理、および、前記第1制御目標値をもとに前記コンデンサファンの作動を制御するとともに前記第2制御目標値をもとに前記第2コンプレッサの作動を制御する処理を含むものであり、
前記回転低下処理は、前記第2コンプレッサの消費電力が前記上限値以上になったときに、そうでないときと比べて前記第2制御目標値を低い速度に相当する値に変更する処理を含むものである
請求項1に記載の車両用クーラー。
【請求項3】
前記回転低下処理は、前記第2コンプレッサの消費電力が前記上限値以上になってから下限値以下になるまでの期間において前記第2コンプレッサの回転速度を徐々に低くする低下処理と、前記第2コンプレッサの消費電力が前記下限値以下になってから前記上限値以上になるまでの期間において前記第2コンプレッサの回転速度を徐々に高くする上昇処理と、を含む
請求項1に記載の車両用クーラー。
【請求項4】
昼および夜のいずれであるかを検知する昼夜検知部を備え、
前記制御部は、上限設定処理を実行するものであり、
前記上限設定処理は、前記コンデンサファンの回転速度の上限値を、前記昼夜検知部によって前記昼と検知される場合よりも前記夜と検知される場合のほうが低い速度に相当する値になるように設定する処理と、前記コンデンサファンの回転速度を前記上限値によって制限する態様で前記コンデンサファンの作動を制御する処理と、を含む
請求項1に記載の車両用クーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クーラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、冷房装置(いわゆるクーラー)を有している。通常、内燃機関を動力源とする車両は、車両用クーラーの構成部品として、機関駆動式のコンプレッサや、冷媒冷却用の熱交換器であるコンデンサ、同コンデンサに送風するための電動式のコンデンサファンなどを有している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、内燃機関の停止時においても車両用クーラーを使用可能にするための構成が開示されている。そうした構成としては、電動式のコンプレッサ、内燃機関の停止時に電力源として利用される蓄電池、蓄電池の直流電圧を昇圧して出力する電力変換部、および各種の作動制御を実行する制御部が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の車両用クーラーでは、内燃機関の停止時において、蓄電池および電力変換部から供給される直流電力をもとに、制御部によって電動式のコンプレッサおよびコンデンサファンの作動が制御される。これにより、車両用クーラーが使用可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃機関の停止時においても使用可能になる車両用クーラーは、車両に寝泊まりする場合に利用したり、外出先において昼食を車両内部で摂る場合に利用したりするなど、様々な利用シーンが考えられる。そして、利用シーンによっては、周囲への騒音を抑えるために、コンデンサファンの回転速度を制限することが求められる場合がある。
【0007】
この場合において、コンデンサファンの送風能力が不足するようなことがあると、コンデンサの内部において冷媒が高温高圧のままになってしまう。そして、これに起因して電動式のコンプレッサの負荷(消費電力)が増大するおそれがある。この場合には、車両用クーラーの使用可能時間が短くなるばかりか、最悪の場合、車両用クーラーの消費電力が電力変換部の能力の限界を超えて同電力変換部が停止することで、車両用クーラーが停止してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための装置の各態様を記載する。
[態様1]車両動力源としての内燃機関と、冷媒を圧送する機関駆動式の第1コンプレッサと、前記冷媒の冷却に用いるコンデンサと、前記コンデンサへの送風を行う電動式のコンデンサファンと、を有する車両に適用され、前記内燃機関の停止時において、前記冷媒を圧送する電動式の第2コンプレッサと、前記コンデンサファンおよび前記第2コンプレッサの電力源になる蓄電池と、前記蓄電池の直流電圧を昇圧して出力する電力変換部と、前記コンデンサファンおよび前記第2コンプレッサの作動を制御する制御部と、を備える車両用クーラーであって、前記制御部は、基本運転処理と回転低下処理とを実行するものであり、前記基本運転処理は、車室内の温度を利用者によって設定される設定温度にする態様で、前記コンデンサファンの作動を制御するとともに前記第2コンプレッサの作動を制御する処理であり、前記回転低下処理は、前記第2コンプレッサの消費電力が上限値以上になったときに、そうでないときと比べて前記第2コンプレッサの回転速度が低くなるように、同第2コンプレッサの作動を制御する処理である、車両用クーラー。
【0009】
上記構成では、内燃機関の停止時において車両用クーラーを作動させる場合には、蓄電池および電力変換部からの電力供給をもとにコンデンサファンおよび第2コンプレッサが作動する。上記構成によれば、この場合において、第2コンプレッサの消費電力が上限値を超えない範囲で同第2コンプレッサを作動させることができる。これにより、コンデンサファンおよび第2コンプレッサによって消費される電力、換言すれば、電力変換部の出力(電力)が同電力変換部の能力の限界を超えないように、第2コンプレッサを作動させることが可能になる。そのため、蓄電池に電力が残存しているにも関わらず、能力限界を超えることで電力変換部が停止して車両用クーラーが停止する事態になることを回避できる。したがって、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。
【0010】
[態様2]前記車室内の温度である実温度を検出する温度検出部と、前記設定温度を設定する温度設定部と、を備え、前記基本運転処理は、前記実温度と前記設定温度との差に基づいて前記コンデンサファンの回転速度についての第1制御目標値と前記第2コンプレッサの回転速度についての第2制御目標値とを算出する処理、および、前記第1制御目標値をもとに前記コンデンサファンの作動を制御するとともに前記第2制御目標値をもとに前記第2コンプレッサの作動を制御する処理を含むものであり、前記回転低下処理は、前記第2コンプレッサの消費電力が前記上限値以上になったときに、そうでないときと比べて前記第2制御目標値を低い速度に相当する値に変更する処理を含むものである、[態様1]に記載の車両用クーラー。
【0011】
上記構成によれば、第2コンプレッサの消費電力が上限値以上になったときに、そうでないときと比べて、第2コンプレッサの回転速度を低くすることができる。これにより、第2コンプレッサの消費電力を低減させることができる。
【0012】
[態様3]前記回転低下処理は、前記第2コンプレッサの消費電力が前記上限値以上になってから下限値以下になるまでの期間において前記第2コンプレッサの回転速度を徐々に低くする低下処理と、前記第2コンプレッサの消費電力が前記下限値以下になってから前記上限値以上になるまでの期間において前記第2コンプレッサの回転速度を徐々に高くする上昇処理と、を含む、[態様1]または[態様2]に記載の車両用クーラー。
【0013】
上記構成では、第2コンプレッサの回転速度を変更した場合において、その変更タイミングに対して、冷媒温度が変化するタイミングや車室内温度が変化するタイミングには遅れがある。そのため、単に第2コンプレッサの回転速度を変更しても、そうした変化タイミングの遅れに起因して、第2コンプレッサの消費電力を適切に制御できない場合がある。
【0014】
この点、上記構成によれば、第2コンプレッサの消費電力を、上限値と下限値との間で増加と減少とを交互に繰り返す態様で、徐々に変化させることができる。これにより、第2コンプレッサの消費電力が上限値を大きく上回る現象、いわゆるオーバーシュート現象の発生を抑えることができる。そのため、車両用クーラーを構成する電気機器(第2コンプレッサを含む)の消費電力が電力変換部の能力の限界を超えることを抑えることができる。したがって、能力限界を超えることに起因する電力変換部の停止を抑えることができるため、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。しかも、第2コンプレッサの消費電力が下限値を大きく下回る現象、いわゆるアンダーシュート現象の発生を抑えることができる。これにより、第2コンプレッサの冷媒圧送機能が不要に低下することが抑えられるため、車両用クーラーの冷房機能の低下を抑えることができる。
【0015】
[態様4]昼および夜のいずれであるかを検知する昼夜検知部を備え、前記制御部は、上限設定処理を実行するものであり、前記上限設定処理は、前記コンデンサファンの回転速度の上限値を、前記昼夜検知部によって前記昼と検知される場合よりも前記夜と検知される場合のほうが低い速度に相当する値になるように設定する処理と、前記コンデンサファンの回転速度を前記上限値によって制限する態様で前記コンデンサファンの作動を制御する処理と、を含む、[態様1]~[態様3]のいずれか一つに記載の車両用クーラー。
【0016】
昼においては、夜と比べて外気温が高くなり易いため、第2コンプレッサの負荷(消費電力)が大きくなり易い。その一方で、昼においては、夜と比べて騒音が問題になり難いため、コンデンサファンの回転速度を高くすることが可能である。そして、コンデンサファンの回転速度が高くなると、同コンデンサファンによる冷媒の冷却能力の不足を招き難くなるため、冷却能力の不足に起因する第2コンプレッサの消費電力の増大も招き難くなる。
【0017】
上記構成によれば、昼においては、コンデンサファンの回転速度を比較的高速にすることができる。そのため、外気温が高いために第2コンプレッサの負荷が大きくなり易い状況であるとはいえ、コンデンサファンによる高い冷却効果が得られるため、冷却能力の不足に起因する第2コンプレッサの消費電力の増大を抑えることができる。しかも、夜においては、コンデンサファンの回転速度を低速にすることができる。これにより、騒音を抑えつつ、車両用クーラーを長時間にわたって利用することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態の車両用クーラーの概略構成図である。
【
図2】クーラー作動処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図3】(a)~(c)は夜と検知される場合におけるクーラー作動処理の実行態様の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】(a)~(c)は昼と検知される場合におけるクーラー作動処理の実行態様の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】第1設定処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図6】第2設定処理の実行手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態の車両用クーラーについて、
図1~
図4を参照して説明する。
<車両>
図1に示すように、車両10は、内燃機関11、発電機12、および第1蓄電池13を備えている。内燃機関11は車両動力源として機能する。発電機12は、内燃機関11の出力軸によって駆動される機関駆動式のものである。第1蓄電池13は、発電機12による発電電力によって充電されるとともに、車両10の電力源として機能する。
【0021】
<車両用クーラー>
車両10は、車両用クーラーの構成部品として、第1コンプレッサ14、コンデンサ15、コンデンサファン16、および冷却部17を有している。
【0022】
第1コンプレッサ14は、冷媒REを圧送するためのものである。第1コンプレッサ14としては、内燃機関11の出力軸によって駆動される機関駆動式のものが採用されている。
【0023】
コンデンサ15は、冷媒REを冷却するための熱交換器である。本実施形態では、第1コンプレッサ14によって圧送される冷媒REがコンデンサ15に流入するようになっている。
【0024】
コンデンサファン16は、コンデンサ15への送風を行うためのものである。コンデンサファン16からの送風により、コンデンサ15内を通過する冷媒REが冷却される。コンデンサファン16としては、電動式のものが採用されている。
【0025】
冷却部17は、空気を冷却しつつ車室内に送るためのものである。冷却部17は、冷媒REを減圧および膨張させるための膨張弁171と、熱交換器であるエバポレータ172と、同エバポレータ172に送風するためのブロアファン173とを有している。冷却部17には、コンデンサ15を通過した冷媒REが流入するようになっている。
【0026】
冷却部17に流入した冷媒REは、先ず、膨張弁171を通過する。このとき冷媒REが減圧および膨張されるため、同冷媒REの温度が低下するようになる。そして、膨張弁171を通過した後の冷媒REは、低温状態でエバポレータ172に流入する。冷却部17では、ブロアファン173によるエバポレータ172への送風が行われる。これにより、エバポレータ172に送風される空気と同エバポレータ172の内部を通過する冷媒REとの間での熱交換を通じて冷風が生成されて車室内に送られる。なお冷却部17を通過した後の冷媒REは、第1コンプレッサ14によって圧送される。本実施形態の車両用クーラーでは、内燃機関11の運転時においては、このようにして車室内の冷房が実行される。
【0027】
車両10には、各種のセンサ類が設けられている。センサ類としては、車室内の温度(以下、実温度TR)を検出する温度検出部としての温度センサ21や、車外の照度を検出するための照度センサ22が設けられている。その他、センサ類としては、車室内の温度の目標値(以下、設定温度TT)を設定する温度設定部としての設定スイッチ23や、内燃機関11の運転と運転停止とを切り替える運転スイッチ24などが設けられている。なお、設定スイッチ23および運転スイッチ24は、乗員によって操作される操作スイッチである。
【0028】
車両10には、マイクロコンピュータ等からなる車両制御装置18が設けられている。車両制御装置18は、各種のセンサ類の出力信号、およびコンデンサファン16の出力信号(詳しくは、コンデンサファン16の実際の回転速度[以下、実ファン回転速度RNF]を示す信号)を取り込んでいる。車両制御装置18は、各信号をもとに各種の演算を行うとともに、その演算結果に基づいて内燃機関11の運転制御や発電機12の作動制御など、車両10の運転にかかる各種制御を実行する。
【0029】
また車両制御装置18は、内燃機関11の運転時において、第1コンプレッサ14の作動制御や、コンデンサファン16の作動制御、冷却部17(詳しくは、ブロアファン173)の作動制御など、車両用クーラーの運転にかかる各種制御を実行する。具体的には、車両制御装置18は、実温度TRと設定温度TTとを一致させるように、第1コンプレッサ14の作動制御、コンデンサファン16の作動制御、および冷却部17の作動制御を実行する。
【0030】
本実施形態では、運転スイッチ24がオン操作されることで内燃機関11が運転されているときには、車両用クーラーにおける冷媒REの循環経路は、機関駆動式の第1コンプレッサ14、コンデンサ15、および冷却部17によって構成される。
【0031】
本実施形態の車両用クーラーは、運転スイッチ24がオフ操作されることで内燃機関11の運転が停止されているとき、すなわち機関駆動式の第1コンプレッサ14が作動しないときにおいても使用可能になっている。こうした構成を実現するために、車両10には、第2コンプレッサ31、第2蓄電池32、電力変換部33、クーラースイッチ34、および制御部としてのクーラー制御装置35が設けられている。なお本実施形態では、第2コンプレッサ31、第2蓄電池32、電力変換部33、クーラースイッチ34、およびクーラー制御装置35を既存の車両に組み付けることで、内燃機関11の停止時においても使用可能な車両用クーラーを実現可能になっている。
【0032】
第2コンプレッサ31は、冷媒REを圧送するためのものである。第2コンプレッサ31としては、電動式のものが採用されている。本実施形態では、内燃機関11の停止時に、この第2コンプレッサ31を作動させることで、冷媒REを圧送することが可能になっている。
【0033】
第2蓄電池32は、内燃機関11の停止時において、車両用クーラーの電力源として機能するものである。第2蓄電池32は、内燃機関11の運転時において、発電機12による発電電力によって充電される。
【0034】
電力変換部33は、入力される直流電圧を昇圧して出力する昇圧コンバータである。詳しくは、電力変換部33は、第2蓄電池32から入力される直流電圧を昇圧して、車両用クーラーを構成する電気機器に出力する。この電気機器は、第2コンプレッサ31、コンデンサファン16、冷却部17、各種のセンサ類、およびクーラー制御装置35を含む。
【0035】
クーラースイッチ34は、車両用クーラーの作動と作動停止とを切り替えるためのスイッチである。クーラースイッチ34は、利用者によって操作される操作スイッチである。
クーラー制御装置35は、マイクロコンピュータ等を有して構成されている。クーラー制御装置35は、各種のセンサ類の出力信号、およびコンデンサファン16の出力信号を取り込んでいる。またクーラー制御装置35は、第2コンプレッサ31の出力信号(詳しくは、第2コンプレッサ31の実際の回転速度[以下、実コンプレッサ回転速度RNC]および消費電力WCを示す信号)と、クーラースイッチ34の出力信号とを取り込んでいる。クーラー制御装置35は、同信号をもとに各種の演算を行うとともに、その演算結果に基づいて第2コンプレッサ31の作動制御や、コンデンサファン16の作動制御、冷却部17の作動制御など、車両用クーラーの運転にかかる各種制御を実行する。
【0036】
本実施形態では、運転スイッチ24がオフ操作されることで内燃機関11が停止されているときには、車両用クーラーにおける冷媒REの循環経路は、電動式の第2コンプレッサ31、コンデンサ15、および冷却部17によって構成される。このとき第2コンプレッサ31やコンデンサファン16には、第2蓄電池32および電力変換部33から電力が供給される。
【0037】
そして、運転スイッチ24がオフ操作されることで内燃機関11が停止された状態で、クーラースイッチ34がオン操作されると、本実施形態の車両用クーラーは作動するようになる。具体的には、クーラー制御装置35により、基本運転処理、上限設定処理、および回転低下処理が実行される。
【0038】
<基本運転処理>
基本運転処理は、車室内の温度(実温度TR)を利用者によって設定される設定温度TTにする態様で、コンデンサファン16の作動を制御するとともに第2コンプレッサ31の作動を制御する処理である。
【0039】
基本運転処理では、先ず、温度センサ21によって検出される実温度TRと設定スイッチ23によって設定される設定温度TTとの差ΔT(=TT-TR)が算出される。そして、同差ΔTに基づいて、コンデンサファン16の回転速度についての第1制御目標値(以下、目標ファン回転速度TNF)が算出される。本実施形態では、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から、上記差ΔTと、実温度TRを設定温度TTに一致させるうえで適切なコンデンサファン16の回転速度との関係が予め求められている。そして、この関係が、上記差ΔTに基づいて目標ファン回転速度TNFを算出するための演算マップAとしてクーラー制御装置35に記憶されている。演算マップAには、具体的には、上記差ΔTが大きいときほど、目標ファン回転速度TNFとして高い速度が算出される関係が定められている。
【0040】
そして基本運転処理では、制御目標値である目標ファン回転速度TNFと実際の回転速度である実ファン回転速度RNFとを一致させるように、コンデンサファン16の作動がフィードバック制御される。
【0041】
また基本運転処理では、前記差ΔTに基づいて、第2コンプレッサ31の回転速度についての第2制御目標値(以下、目標コンプレッサ回転速度TNC)が算出される。本実施形態では、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から、前記差ΔTと、実温度TRを設定温度TTに一致させるうえで適切な第2コンプレッサ31の回転速度との関係が予め求められている。そして、この関係が、上記差ΔTに基づいて目標コンプレッサ回転速度TNCを算出するための演算マップBとしてクーラー制御装置35に記憶されている。演算マップBには、具体的には、上記差ΔTが大きいときほど、目標コンプレッサ回転速度TNCとして高い速度が算出される関係が定められている。
【0042】
そして基本運転処理では、制御目標値である目標コンプレッサ回転速度TNCと実際の回転速度である実コンプレッサ回転速度RNCとを一致させるように、第2コンプレッサ31の作動がフィードバック制御される。
【0043】
<上限設定処理>
上限設定処理は、以下のように実行される。
上限設定処理では、先ず、照度センサ22の出力信号をもとに、コンデンサファン16の回転速度についての上限値LNFが設定される。本実施形態では、照度センサ22によって検出される車外の照度が所定値以上である場合には、このとき車外が比較的明るいとして、「昼」と検知される。一方、照度センサ22によって検出される車外の照度が所定値未満である場合には、車外が暗くなっているとして「夜」と検知される。本実施形態では、照度センサ22が、昼および夜のいずれであるかを検知する昼夜検知部に相当する。
【0044】
上限設定処理では、コンデンサファン16の回転速度についての上限値LNFは、「昼」と検知される場合よりも「夜」と検知される場合のほうが低い速度に相当する値になるように設定される。具体的には、「昼」と検知される場合には、上限値LNFとしては、比較的高い速度(本実施形態では、コンデンサファン16の最大回転速度の70%)に相当する値L1が設定される。「夜」と検知される場合には、上限値LNFとしては、比較的低い速度(本実施形態では、コンデンサファン16の最大回転速度の30%)に相当する値L2が設定される。
【0045】
そして上限設定処理では、上限値LNFによってコンデンサファン16の回転速度を制限する態様で、同コンデンサファン16の作動が制御される。具体的には、上記差ΔTに基づき算出された目標ファン回転速度TNFが上限値LNFよりも大きい場合には、目標ファン回転速度TNFとして上限値LNFが設定される。一方、上記差ΔTに基づき算出された目標ファン回転速度TNFが上限値LNF以下である場合には、目標ファン回転速度TNFは上限値LNFに変更されない。こうした上限設定処理により、騒音が問題になり難い「昼」においてはコンデンサファン16の回転速度を比較的高い速度で制限する一方、騒音が問題になり易い「夜」においてはコンデンサファン16の回転速度を比較的低い速度で制限することができる。
【0046】
<回転低下処理>
回転低下処理は、以下のように実行される。
回転低下処理では、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になったときに、そうでないときと比べて第2コンプレッサ31の回転速度が低くなるように、同第2コンプレッサ31の作動が制御される。
【0047】
本実施形態では、第2コンプレッサ31の消費電力WCについての上限値LUと下限値LBとが予め定められるとともにクーラー制御装置35に記憶されている。上限値LUおよび下限値LBとしては、車両用クーラーを構成する電気機器(第2コンプレッサ31を含む)の消費電力が電力変換部33の能力の限界を超えることを回避可能な値が定められている。本実施形態では、上限値LUとしては、電力変換部33の定格電力の90%に相当する値(例えば、900ワット)が定められている。また、下限値LBとして、電力変換部33の定格電力の70%に相当する値(例えば、700ワット)が定められている。
【0048】
回転低下処理では、具体的には、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になってから下限値LBになるまでの期間T1においては、第2コンプレッサ31の回転速度を徐々に低くする低下処理が実行される。本実施形態では、目標コンプレッサ回転速度TNCを低い速度に相当する値に変更するための減速補正量KCが設定されている。低下処理では、この減速補正量KCが時間経過とともに徐々に大きくされる。
【0049】
回転低下処理では、低下処理の実行を通じて第2コンプレッサ31の消費電力WCが下限値LB以下になると、その後においては第2コンプレッサ31の回転速度を徐々に高くする上昇処理が実行される。上昇処理では、前記減速補正量KCが時間経過とともに徐々に小さくされる。この上昇処理は、第2コンプレッサ31の消費電力WCが下限値LB以下になってから上限値LU以上になるまでの期間T2において実行される。
【0050】
<クーラー作動処理>
以下、基本運転処理、上限設定処理および回転低下処理を含む処理であって、内燃機関11の停止時における車両用クーラーの作動制御にかかる処理(クーラー作動処理)について詳細に説明する。
【0051】
図2は、上記クーラー作動処理の実行手順を示している。なお、同図のフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の処理として、クーラー制御装置35により実行される。このクーラー作動処理は、運転スイッチ24がオフ操作された状態でクーラースイッチ34がオン操作されていることを条件に実行される処理である。
【0052】
図2に示すように、この処理では先ず、コンデンサファン16の回転速度(詳しくは、目標ファン回転速度TNF)についての上限値LNFが設定される(ステップS1~ステップS3)。具体的には、「昼」と検知される場合には(ステップS1:YES)、上限値LNFとして、比較的高い速度に相当する値L1が設定される(ステップS2)。一方、「夜」と検知される場合には(ステップS1:NO)、上限値LNFとして、比較的低い速度に相当する値L2が設定される(ステップS3)。
【0053】
その後、実温度TRと設定温度TTとの差ΔTに基づいて、演算マップAから、目標ファン回転速度TNFが算出される(ステップS4)。また、実温度TRと設定温度TTとの差ΔTに基づいて、演算マップBから、目標コンプレッサ回転速度TNCが算出される(ステップS4)。
【0054】
そして、目標ファン回転速度TNFおよび上限値LNFに基づいて、コンデンサファン16の作動が制御される(ステップS5)。詳しくは、上限値LNFによって制限された目標ファン回転速度TNFと実ファン回転速度RNFとを一致させるように、コンデンサファン16の作動がフィードバック制御される。
【0055】
その後、今回の作動期間において、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になった履歴があるか否かが判断される(ステップS6)。なお、作動期間とは、内燃機関11の停止時において車両用クーラーの作動が開始されてから停止されるまでの期間のことである。
【0056】
上記履歴がない場合には(ステップS6:NO)、減速補正量KCとして「0」が設定される(ステップS7)。この場合には、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になっていないため、目標コンプレッサ回転速度TNCは変更されない。
【0057】
一方、上記履歴がある場合には(ステップS6:YES)、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になってから下限値LB以下になるまでの期間T1であるか否かが判断される(ステップS8)。
【0058】
そして、期間T1である場合には(ステップS8:YES)、減速補正量KCに所定量Kを加算した値(=KC+K)が、新たな減速補正量KCとして設定される(ステップS9)。一方、期間T1ではない場合(ステップS8:NO)、すなわち第2コンプレッサ31の消費電力WCが下限値LB以下になってから上限値LU以上になるまでの期間T2である場合には、次のように減速補正量KCが設定される(ステップS10)。すなわち、減速補正量KCから所定量Kを減算した値(=KC-K)が、新たな減速補正量KCとして設定される。
【0059】
このようにして減速補正量KCが設定された後、この減速補正量KCによって目標コンプレッサ回転速度TNCが低い速度に相当する値に変更される(ステップS11)。具体的には、目標コンプレッサ回転速度TNCから減速補正量KCを減算した値(=TNC-KC)が、新たな目標コンプレッサ回転速度TNCとして設定される。
【0060】
その後、目標コンプレッサ回転速度TNCに基づいて、第2コンプレッサ31の作動が制御される(ステップS12)。詳しくは、目標コンプレッサ回転速度TNCと実コンプレッサ回転速度RNCとを一致させるように、第2コンプレッサ31の作動がフィードバック制御される。
【0061】
<作用効果>
以下、クーラー作動処理を実行することによる作用効果について説明する。
ここでは先ず、「夜」と検知される場合における作用効果について、
図3を参照しつつ説明する。
【0062】
図3に示す例では、時刻t11~t13においては、実温度TRと設定温度TTとの差ΔTが時間経過に伴って徐々に大きくなっている。
また、全期間(時刻t11~t18)において、コンデンサファン16の回転速度(詳しくは、目標ファン回転速度TNF)は、常に上限値LNF(具体的には、値L2)によって制限される状態になっている。これにより、実ファン回転速度RNF(
図3(a))は上限値LNFで略一定になっている。
【0063】
さらに、時刻t11~t13において、第2コンプレッサ31の回転速度(詳しくは、
図3(b)に示す実コンプレッサ回転速度RNC)は、上記差ΔTが大きくなるのに伴って徐々に高くなっている。
【0064】
また、時刻t11~t13において、第2コンプレッサ31の消費電力WC(
図3(c))は、上記差ΔTが大きくなるのに伴って大きくなっている。
本例では、時刻t12以前においては、コンデンサファン16による冷媒REの冷却能力が足りている。そのため、このとき第2コンプレッサ31の消費電力WCは、実コンプレッサ回転速度RNC(
図3(b))の上昇に合わせて徐々に高くなっている。
【0065】
本例では、時刻t12において、コンデンサファン16の送風による冷媒REの冷却能力が不足する状態になる。そのため、時刻t12以降においては、第2コンプレッサ31の消費電力WCが急速に大きくなる。こうした状態になると、第2コンプレッサ31の消費電力WCの急増によって、車両用クーラーを構成する電気機器(第2コンプレッサ31を含む)の消費電力が電力変換部33の能力の限界を超えるおそれがある。そして、この場合には車両用クーラーが停止してしまう。
【0066】
本例では、時刻t13において、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LUに達する。これにより、時刻t13以降においては、回転低下処理を通じて、実コンプレッサ回転速度RNCを低くする態様で第2コンプレッサ31の作動が制御される。
【0067】
本実施形態によれば、時刻t13以降において、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LUを超えない範囲で同第2コンプレッサ31を作動させることができる。そのため、車両用クーラーを構成する電気機器による消費電力が電力変換部33の能力の限界を超えない程度に第2コンプレッサ31の消費電力WCを抑えつつ、同第2コンプレッサ31を作動させることができる。しかも、第2蓄電池32に電力が残存しているにも関わらず、電力変換部33の能力限界を超えることで同電力変換部33が停止して車両用クーラーが停止する事態になることを回避できる。本実施形態によれば、このようにして車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。
【0068】
ここで、目標コンプレッサ回転速度TNCを変更した場合において、その変更タイミングに対して、冷媒REの温度が変化するタイミングや車室内温度が変化するタイミングには遅れがある。そのため、単に目標コンプレッサ回転速度TNCを変更しても、そうした変化タイミングの遅れに起因して、第2コンプレッサ31の消費電力WCを適切に制御できない場合がある。
【0069】
この点、本実施形態では、時刻t13以降の回転低下処理において、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になってから下限値LBになるまでの期間T1(時刻t13~t14、t15~t16、t17~t18)では、低下処理が実行される。この低下処理では、実コンプレッサ回転速度RNC(
図3(b))が徐々に低くなるように第2コンプレッサ31の作動が制御される。そのため、期間T1においては、第2コンプレッサ31の消費電力WC(
図3(c))は徐々に小さくなる。
【0070】
一方、時刻t13以降の回転低下処理において、第2コンプレッサ31の消費電力WCが下限値LB以下になってから上限値LU以上になるまでの期間T2(時刻t14~t15、t16~t17)では、上昇処理が実行される。この上昇処理においては、実コンプレッサ回転速度RNCが徐々に高くなるように第2コンプレッサ31の作動が制御される。そのため、期間T2においては、第2コンプレッサ31の消費電力WCが徐々に大きくなる。
【0071】
本実施形態によれば、時刻t13以降の回転低下処理において、第2コンプレッサ31の消費電力WCを、上限値LUと下限値LBとの間で増加と減少とを交互に繰り返す態様で、徐々に変化させることができる。これにより、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LUを上回る現象、いわゆるオーバーシュート現象の発生を抑えることができる。そのため、第2コンプレッサ31を含む前記電気機器の消費電力が電力変換部33の能力の限界を超えることを抑えることができる。したがって、能力限界を超えることに起因する電力変換部33の停止を抑えることができるため、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。また、第2コンプレッサ31の消費電力WCが下限値LBを下回る現象、いわゆるアンダーシュート現象の発生を抑えることができる。これにより、第2コンプレッサ31の冷媒圧送機能が不要に低下することが抑えられるため、車両用クーラーの冷房機能の低下を抑えることができる。
【0072】
次に、「昼」と検知される場合にクーラー作動処理を実行することによる作用効果について、
図4を参照しつつ説明する。
図4に示す例では、時刻t21~t24においては、実温度TRと設定温度TTとの差ΔTが時間経過に伴って徐々に大きくなっている。
【0073】
また、時刻t21~t22においては、コンデンサファン16の回転速度(詳しくは、
図4(a)に示す実ファン回転速度RNF)は、上記差ΔTが大きくなるのに伴って徐々に高くなっている。本例では、時刻t22において、コンデンサファン16の回転速度(詳しくは、目標ファン回転速度TNF)は、上限値LNF(具体的には、値L1)によって制限される状態になる。したがって、時刻t22以降においては、実ファン回転速度RNFは上限値LNFで一定になる。
【0074】
さらに、時刻t21~t24において、第2コンプレッサ31の回転速度(詳しくは、
図4(b)に示す実コンプレッサ回転速度RNC)は、上記差ΔTが大きくなるのに伴って徐々に高くなっている。
【0075】
また、時刻t21~t24において、第2コンプレッサ31の消費電力WC(
図4(c))は、上記差ΔTが大きくなるのに伴って大きくなっている。
本例では、時刻t23以前においては、コンデンサファン16による冷媒REの冷却能力が足りている。そのため、このとき第2コンプレッサ31の消費電力WCは、実コンプレッサ回転速度RNCの上昇に合わせて徐々に高くなっている。
【0076】
本例では、時刻t23において、コンデンサファン16の送風による冷媒REの冷却能力が不足する状態になる。そのため、時刻t23以降においては、第2コンプレッサ31の消費電力WCが急速に大きくなる。そして本例では、時刻t24において、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LUに達する。これにより、時刻t24以降においては、回転低下処理を通じて、実コンプレッサ回転速度RNCを低くする態様で第2コンプレッサ31の作動が制御される。
【0077】
本実施形態によれば、時刻t24以降において、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LUを超えない範囲で同第2コンプレッサ31を作動させることができる。そのため、車両用クーラーを構成する電気機器による消費電力が電力変換部33の能力の限界を超えない程度に第2コンプレッサ31の消費電力WCを抑えつつ、同第2コンプレッサ31を作動させることができる。しかも、第2蓄電池32に電力が残存しているにも関わらず、電力変換部33の能力限界を超えることで同電力変換部33が停止して車両用クーラーが停止する事態になることを回避できる。したがって、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。
【0078】
本実施形態では、時刻t24以降の回転低下処理において、前記期間T1(時刻t24~t25、t26~t27、t28~t29)では、低下処理が実行される。この低下処理においては、実コンプレッサ回転速度RNC(
図4(b))が徐々に低くなるため、第2コンプレッサ31の消費電力WC(
図4(c))が徐々に小さくなる。
【0079】
一方、時刻t24以降の回転低下処理において、前記期間T2(時刻t25~t26、t27~t28)では、上昇処理が実行される。この上昇処理においては、実コンプレッサ回転速度RNCが徐々に高くなるため、第2コンプレッサ31の消費電力WCが徐々に大きくなる。
【0080】
本実施形態によれば、時刻t24以降の回転低下処理において、第2コンプレッサ31の消費電力WCを、上限値LUと下限値LBとの間で増加と減少とを交互に繰り返す態様で、徐々に変化させることができる。これにより、第2コンプレッサ31を含む前記電気機器の消費電力が電力変換部33の能力の限界を超えることに起因する電力変換部33の停止を抑えることができるため、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。しかも、第2コンプレッサ31の冷媒圧送機能が不要に低下することが抑えられるため、車両用クーラーの冷房機能の低下を抑えることができる。
【0081】
<作用効果>
本実施形態の車両用クーラーによる作用効果について説明する。
(1)クーラー制御装置35は、基本運転処理と回転低下処理とを実行する。基本運転処理においては、実温度TRを設定温度TTにする態様で、コンデンサファン16の作動を制御するとともに第2コンプレッサ31の作動を制御する。回転低下処理においては、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になったときに、そうでないときと比べて第2コンプレッサ31の回転速度が低くなるように、同第2コンプレッサ31の作動を制御する。
【0082】
本実施形態によれば、車両用クーラーを構成する電気機器によって消費される電力が電力変換部33の能力の限界を超えないように、第2コンプレッサ31を作動させることができる。これにより、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。
【0083】
(2)基本運転処理においては、実温度TRと設定温度TTとの差ΔTに基づいて、目標ファン回転速度TNFと目標コンプレッサ回転速度TNCとを算出する。そして、目標ファン回転速度TNFをもとにコンデンサファン16の作動を制御するとともに、目標コンプレッサ回転速度TNCをもとに第2コンプレッサ31の作動を制御する。回転低下処理においては、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になったときに、そうでないときと比べて目標コンプレッサ回転速度TNCを低い速度に相当する値に変更する。
【0084】
本実施形態によれば、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になったときに、そうでないときと比べて第2コンプレッサ31の回転速度を低くすることができる。これにより、第2コンプレッサ31の消費電力WCを低減することができる。
【0085】
(3)回転低下処理は、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上になってから下限値LB以下になるまでの期間T1において第2コンプレッサ31の回転速度を徐々に低くする低下処理を含む。回転低下処理は、第2コンプレッサ31の消費電力WCが下限値LB以下になってから上限値LU以上になるまでの期間T2において第2コンプレッサ31の回転速度を徐々に高くする上昇処理を含む。
【0086】
本実施形態によれば、第2コンプレッサ31の消費電力WCを、上限値LUと下限値LBとの間で増加と減少とを交互に繰り返す態様で、徐々に変化させることができる。これにより、能力限界を超えることに起因する電力変換部33の停止を抑えることができるため、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。しかも、第2コンプレッサ31の冷媒圧送機能が不要に低下することが抑えられるため、車両用クーラーの冷房機能の低下を抑えることができる。
【0087】
(4)クーラー制御装置35は、上限設定処理を実行する。上限設定処理においては、目標ファン回転速度TNFについての上限値LNFを、「昼」と検知される場合よりも「夜」と検知される場合のほうが低い速度に相当する値になるように設定する。上限設定処理においては、目標ファン回転速度TNFを上限値LNFによって制限する態様で、コンデンサファン16の作動を制御する。
【0088】
「昼」においては、「夜」と比べて外気温が高くなり易いために、第2コンプレッサ31の負荷(具体的には、消費電力WC)が大きくなり易い。その一方で、「昼」においては、「夜」と比べて騒音が問題になり難いため、コンデンサファン16の回転速度を高くすることが可能である。そして、コンデンサファン16の回転速度が高くなると、同コンデンサファン16による冷媒REの冷却能力の不足を招き難くなる。そのため、前述した冷却能力の不足に起因する第2コンプレッサ31の消費電力WCの増大も招き難くなる。
【0089】
本実施形態によれば、「昼」においては、コンデンサファン16の回転速度を比較的高速にすることができる。これにより、外気温が高いために第2コンプレッサ31の負荷が大きくなり易い状況であるとはいえ、コンデンサファン16による高い冷却効果が得られる。そのため、コンデンサファン16による冷媒REの冷却能力の不足に起因する第2コンプレッサ31の消費電力WCの増大を抑えることができる。しかも、「夜」においては、コンデンサファン16の回転速度を低速にすることができる。これにより、騒音を抑えつつ、車両用クーラーを長時間にわたって利用することが可能になる。
【0090】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0091】
・第2蓄電池32の電圧RVが判定値JV以下になったときに、第2コンプレッサ31の回転速度(詳しくは、目標コンプレッサ回転速度TNC)についての上限値LNCを設定する第1設定処理を実行するようにしてもよい。同構成においては、例えば第2蓄電池32として定格電圧が「12ボルト」のものを採用するとともに、上記判定値JVとして「10ボルト」を設定することができる。
【0092】
図5に上記第1設定処理の一例を示す。
図5に示すように、この処理では、第2蓄電池32の電圧RVが判定値JV以下になったときには(ステップS20:YES)、目標コンプレッサ回転速度TNCについての上限値LNCが設定される(ステップS21)。一方、第2蓄電池32の電圧RVが判定値JVよりも高いときには(ステップS20:NO)、上限値LNCは設定されない(ステップS21の処理がジャンプされる)。
【0093】
ここで、第2蓄電池32の電圧RVがごく低くなると、これに起因して電力変換部33の出力電圧が低下する場合がある。この場合には、能力限界を超えることに起因する電力変換部33の停止を招き易くなってしまう。この点、上記構成によれば、そうした場合に上限値LNCが設定されるため、この上限値LNCによって第2コンプレッサ31の回転速度を低い速度で制限することができる。そのため、このとき第2蓄電池32の電圧RVがごく低くなっているとはいえ、第2コンプレッサ31の消費電力WCを少量に抑えることで、車両用クーラーの作動を継続することが可能になる。
【0094】
・第2コンプレッサ31の消費電力WCについての上限値LUを、今回の作動期間において同消費電力WCが上限値LU以上になった回数に応じて可変設定する第2設定処理を実行するようにしてもよい。
【0095】
図6に上記第2設定処理の一例を示す。
図6に示すように、この処理では、上記回数が多いときほど、上限値LUとして、小さい電力に相当する値が設定される(ステップS30)。具体的には、上記回数が「0回」の場合には、上限値LUとして、所定値LU0(例えば、電力変換部33の定格電力の90%)が設定される。また、上記回数が「1回」の場合には、上限値LUとして、所定値LU1(例えば、電力変換部33の定格電力の85%)が設定される。上記回数が「2回」の場合には、上限値LUとして、所定値LU2(例えば、電力変換部33の定格電力の80%)が設定される。上記回数が「3回以上」の場合には、上限値LUとして、所定値LU3(例えば、電力変換部33の定格電力の75%)が設定される。なお上記回数は、クーラー制御装置35によりカウントされるとともに同クーラー制御装置35に記憶されている。
【0096】
上記構成によれば、上記回数が多いときほど、すなわちコンデンサファン16の冷却能力の不足による第2コンプレッサ31の消費電力WCの急増を招き易いときほど、上限値LUとして小電力に相当する値を設定することができる。これにより、第2コンプレッサ31の消費電力WCが大きくなり易いときには、同消費電力WCを小電力に抑えることができる。そのため、車両用クーラーの長時間の利用が可能になる。
【0097】
・クーラー制御処理において、リセット処理を実行するようにしてもよい。リセット処理は、所定期間にわたって第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LU以上にならない場合に、前記履歴を消去する処理である。なお所定期間としては、所定時間(例えば、30分)を設定したり、第2コンプレッサ31の消費電力WCが上限値LNC以上になってから所定値(例えば、電力変換部33の定格電力の60%)に低下するまでの期間を設定したりすることができる。
【0098】
上記リセット処理を実行することにより、第2コンプレッサ31の消費電力WCが小電力に抑えられる状況(例えば、深夜)になったときには、回転低下処理による同第2コンプレッサ31の回転速度や消費電力WCについての制限を解除することができる。これにより、以後において車両用クーラーの冷房機能が好適に発揮されるようになる。
【0099】
・昼および夜のいずれであるかを検知する昼夜検知部として、照度センサ22を設けることに代えて、車外の温度を検出するための外気温センサを設けるようにしてもよい。その他、クーラー制御装置35が有する時間情報や日付情報をもとに、昼および夜のいずれであるかを検知するようにしてもよい。この場合には、クーラー制御装置35が昼夜検知部に相当する。
【0100】
・昼および夜のいずれであるかに関わらず、コンデンサファン16の回転速度についての上限値LNFとして、予め定められた一定値を設定するようにしてもよい。この場合、昼夜検知部を省略することができる。
【0101】
・上記実施形態にかかる車両用クーラーは、「昼」と検知される場合にはコンデンサファン16の回転速度についての上限値LNFが設定されないタイプの車両用クーラーにも適用することができる。
【0102】
・回転低下処理において、低下処理および上昇処理を実行することに代えて、消費電力WCが上限値LU以上になる度に減速補正量KCを所定量Kだけ大きくする処理を実行するようにしてもよい。
【0103】
・第2蓄電池32としては、発電機12による発電電力によって充電されるものを設けることに限らず、家庭用電源などの外部電源によって充電されるものを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 車両
11 内燃機関
12 発電機
13 第1蓄電池
14 第1コンプレッサ
15 コンデンサ
16 コンデンサファン
17 冷却部
171 膨張弁
172 エバポレータ
173 ブロアファン
18 車両制御装置
21 温度センサ
22 照度センサ
23 設定スイッチ
24 運転スイッチ
31 第2コンプレッサ
32 第2蓄電池
33 電力変換部
34 クーラースイッチ
35 クーラー制御装置