(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086119
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】樹種区分判別システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240620BHJP
G06T 7/90 20170101ALI20240620BHJP
A01G 23/00 20060101ALI20240620BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/90 Z
A01G23/00 551Z
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201072
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久美子
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096FA32
5L096FA33
5L096GA19
5L096GA40
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち従来技術に比べてタイル画像の境界(あるいはその周辺)にある画素に対してより適切に樹種区分を自動判別することができる樹種区分判別システムを提供することである。
【解決手段】本願発明の樹種区分判別システムは、対象範囲の一部を撮影した空中写真から樹種区分を判別するシステムであって、タイル画像生成手段とモデル生成手段、判別手段を備えたものである。タイル画像生成手段は、タイル画像を構成する一部の画素が、隣接するタイル画像と重複するように、タイル割りすることによってタイル画像を生成する。教師データは、空中写真を構成する画素ごとに樹種区分が付与されて生成されるものである。判別手段は、入力されたタイル画像ごとであって画素ごとに樹種区分を判別する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象範囲の一部を撮影した空中写真から樹種区分を判別するシステムであって、
前記空中写真をタイル割りすることによって、1の該空中写真から複数のタイル画像を生成するタイル画像生成手段と、
前記タイル画像に基づいて生成される教師データを機械学習することによって、学習済みモデルを生成するモデル生成手段と、
前記タイル画像に基づいて生成される入力画像データを前記学習済みモデルに入力することによって、該タイル画像内の前記樹種区分を判別する判別手段と、を備え、
前記タイル画像生成手段は、前記タイル画像を構成する一部の画素が隣接する前記タイル画像と重複するようにタイル割りすることによって、該タイル画像を生成し、
前記教師データは、前記タイル画像を構成する画素ごとに、前記樹種区分が付与されて生成され、
前記判別手段は、入力された前記タイル画像ごとであって画素ごとに前記樹種区分を判別する、
ことを特徴とする樹種区分判別システム。
【請求項2】
前記判別手段は、入力された前記入力画像データごとに、各画素に対して暫定的な前記樹種区分である暫定樹種区分を付与し、
また前記判別手段は、同一の画素に対して異なる前記暫定樹種区分が付与されたときは、最多の該暫定樹種区分に基づいて前記樹種区分を判別する、
ことを特徴とする請求項1記載の樹種区分判別システム。
【請求項3】
前記教師データは前記タイル画像を構成する画素ごとに、正規化画素値及び前記樹種区分が付与されて生成され、
前記入力画像データは、前記タイル画像を構成する画素ごとに、前記正規化画素値が付与されて生成され、
前記正規化画素値は、前記対象範囲の全体の画素値の平均値である平均画素値と、該対象範囲の全体の画素値の標準偏差である標準偏差画素値と、実際の画素値である実画素値と、によって算出される、
ことを特徴とする請求項1記載の樹種区分判別システム。
【請求項4】
前記空中写真は、画素ごとに複数種類の色に係る画素値が付与され、
前記教師データが、それぞれの色に係る画素値ごとに生成され、
前記判別手段には、それぞれの色に係る画素値が付与された前記入力画像データがそれぞれ入力される、
ことを特徴とする請求項3記載の樹種区分判別システム。
【請求項5】
前記判別手段によって同一の前記樹種区分として判定された画素を集合した樹種区分ポリゴンを生成するポリゴン生成手段を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の樹種区分判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地表を撮影して得られた空中写真から樹種区分を判別する技術に関するものであり、より具体的には、空中写真をタイル割して樹種区分図を作成する際、タイル境界における画素についてもより適切に樹種区分を判別することができる樹種区分判別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地図の作成や、地形の分類、土地利用の分類を行う場合、空中写真が利用される。具体的には、空中写真を判読することによって、建物や農地、道路、河川、森林などを読み取って、地図を作成し、あるいは地形や土地利用の分類を行うわけである。
【0003】
空中写真は、航空写真とも称され、地上の状態を忠実に再現するため上空から撮影される画像である。空中写真を取得するにあたっては、飛行機やヘリコプターを使用して上空から撮影したり、衛星から撮影したり、あるいはクレーン車や気球などを使用して撮影されることもある。そして地図作成などを目的とするケースでは、専用のカメラによって鉛直下方を撮影した垂直写真が取得される。なお、土地の利用は年々変化するため、定期的に同じ地域の空中写真が取得され、例えば国土地理院では平野部について5~10年周期で撮影している。
【0004】
上記したとおり空中写真を判読することによって、建物や農地といった種々の地物が抽出される。また森林などでは、樹種(林相区分)を判別するとともに林相区分を色分けした「林相区分図」が定期的に作成されている。従来、この林相区分の判別も空中写真の判読によって行われており、そして写真判読はオペレータの目視によって行われるのが主流であった。しかしながら、空中写真は広範囲を撮影したものであって、目視による写真判読はオペレータにとって相当に負担がかかる作業であり、また誤判読などいわゆるヒューマンエラーを完全に排除することは難しかった。
【0005】
そこで近年では、画像認識の技術を利用して林相区分を判別する処理が行われることも増えてきた。つまり、ソフトウェアに係る処理をコンピュータが実行することによって、空中写真から林相区分を自動的に判別するわけである。なお、このように自動判別された林相区分を最終判断として取り扱うこともあるし、その結果は一次的な判断としたうえで(つまり、スクリーニング処理としたうえで)最終的にオペレータが目視によって決定することもある。
【0006】
例えば特許文献1では、対象地域を撮影して得られた2時期の空中写真を利用することによって自動的に林相区分図を生成する技術について提案している。より詳しくは、第1時期の空中写真に基づいて作成された既知の林相区分図から、第2時期の空中写真に対して注目領域(林相区分に相当する領域)を設定するとともに、注目領域における画像の特徴情報の統計分布に基づいて林相区分の特徴情報に関する教師データを決定し、その教師データを手掛かりとして第2時期の空中写真から林相区分図を生成する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、林相区分を判別しようとする対象範囲は一般的に広範であり、当然ながら一部重複しながら撮影された複数の空中写真(特に、オルソ化された空中写真)が使用される。さらに、空中写真そのものも比較的広い範囲を撮影したものであるから、1の空中写真を分割(いわゆる、タイル割り)することによって複数の分割画像(以下、「タイル画像」という。)を設定している。そして、目視による写真判読にしろ、自動判別にしろ、タイル画像ごとに林相区分を判別しているのが実情である。
【0009】
このようにタイル画像ごとに林相区分を判別する場合、隣のタイル画像を考慮することなく林相区分を判別し、そして同種の林相区分からなる領域(以下、「林相区分ポリゴン」という。)を生成している。その結果、タイル画像の境界(あるいはその周辺)にある画素については誤った林相区分を判別する傾向にあり、タイル画像の境界で不自然に分断された林相区分ポリゴンが生成されることも多い。このように不適切な判別に基づいて作成された林相区分図を用いると、森林の状態を適格に把握することができず、ひいては森林を誤って管理することにもつながるおそれさえある。
【0010】
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち従来技術に比べてタイル画像の境界(あるいはその周辺)にある画素に対してより適切に樹種区分を自動判別することができる樹種区分判別システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、一部の画素が隣接するタイル画像と重複するように、換言すれば空中写真内で少しずつずらしながら、タイル割りすることによってタイル画像を生成し、このタイル画像に基づいて教師データと入力画像を生成するとともに、入力されたタイル画像(入力画像)ごとであってその画素ごとに樹種区分を判別する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0012】
本願発明の樹種区分判別システムは、対象範囲の一部を撮影した空中写真から樹種区分を判別するシステムであって、タイル画像生成手段とモデル生成手段、判別手段を備えたものである。このうちタイル画像生成手段は、空中写真をタイル割りすることによって、1の空中写真から複数のタイル画像を生成する手段である。またモデル生成手段は、空中写真に基づいて生成される「教師データ」を機械学習することによって「学習済みモデル」を生成する手段であり、判別手段は、タイル画像に基づいて生成される「入力画像データ」を学習済みモデルに入力することによって入力画像データ内の樹種区分を判別する手段である。またタイル画像生成手段は、タイル画像を構成する一部の画素が、隣接するタイル画像と重複するように、タイル割りすることによってタイル画像を生成する。なお教師データは、空中写真を構成する画素ごとに「樹種区分」が付与されて生成されるものである。そして判別手段は、入力されたタイル画像ごとであって画素ごとに樹種区分を判別する。
【0013】
本願発明の樹種区分判別システムは、入力された入力画像データごとに各画素に対して「暫定樹種区分(暫定的な樹種区分)」を付与したうえで、樹種区分を判別するものとすることもできる。この場合、判別手段は、同一の画素に対して異なる暫定樹種区分が付与されたときは、最多の暫定樹種区分に基づいて樹種区分を判別する。
【0014】
本願発明の樹種区分判別システムは、タイル画像を構成する画素ごとに「正規化画素値」及び「樹種区分」が付与されて生成された教師データと、タイル画像を構成する画素ごとに「正規化画素値」が付与されて生成された入力画像データを使用するものとすることもできる。なお正規化画素値は、対象範囲の全体の画素値の平均値である「平均画素値」と、対象範囲の全体の画素値の標準偏差である「標準偏差画素値」、実際の画素値である「実画素値」によって算出される。
【0015】
本願発明の樹種区分判別システムは、画素ごとに複数種類の色に係る画素値が付与された空中写真に基づいて樹種区分を判別するものとすることもできる。この場合、教師データはそれぞれの色に係る画素値ごとに生成され、また判別手段には、それぞれの色に係る画素値が付与された入力画像データがそれぞれ入力される。
【0016】
本願発明の樹種区分判別システムは、ポリゴン生成手段をさらに備えたものとすることもできる。このポリゴン生成手段は、判別手段によって同一の樹種区分として判定された画素を集合した「樹種区分ポリゴン」を生成する手段である。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の樹種区分判別システムには、次のような効果がある。
(1)一部の画素が隣接するタイル画像と重複するように(空中写真内で少しずつずらしながら)タイル割りすることによってタイル画像を生成し、このタイル画像に基づいて教師データと入力画像を生成するとともに、入力されたタイル画像(入力画像)ごとであってその画素ごとに樹種区分を判別する。これにより、従来技術に比べてタイル画像の境界(あるいはその周辺)にある画素に対してより適切に樹種区分を自動判別することができる。
(2)オペレータの目視による写真判読を回避、あるいは大幅に抑えることができ、樹種区分の判別にかかるコストを低減することができるとともに、誤判読などいわゆるヒューマンエラーを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】複数の空中写真によって網羅された対象範囲を模式的に示す平面図。
【
図2】空中写真をタイル割りして得られる「タイル画像」を模式的に示すモデル図。
【
図3】本願発明の樹種区分判別システムの主な構成を示すブロック図。
【
図4】統計画素値算出手段によってバンドごとに算出された統計画素値を模式的に示すモデル図。
【
図5】タイル画像生成手段によって部分的に重複するように生成されたタイル画像を模式的に示すモデル図。
【
図6】(a)は教師データ生成手段によってバンドごとに生成された教師データを模式的に示すモデル図、(b)は判別手段によってバンドごとに生成された入力画像データを模式的に示すモデル図。
【
図7】樹種区分記憶手段が特定の樹種区分に絞って記憶する例を説明するモデル図。
【
図8】樹種区分判別システムが学習済みモデルを生成するまでの主な処理の流れの一例を示すフロー図。
【
図9】樹種区分判別システムが画素ごとに樹種区分の判別を出力するまでの主な処理の流れの一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の樹種区分判別システムの実施形態の一例を、図に基づいて説明する。本願発明の樹種区分判別システムは、
図1に示すような対象範囲RGに含まれる森林等の樹種区分を判別するシステムである。そして、対象範囲RGを撮影した空中写真APを用いて、樹種区分を判別する。通常、空中写真APの撮影範囲より対象範囲RGの方が広いため、対象範囲RG全体を網羅するには
図1に示すように複数(図では49)の空中写真APが使用される。なお便宜上、
図1では隣接する空中写真APが重複(ラップ)しないように描いているが、通常は所定のサイドラップやオーバーラップを確保しつつ撮影されて空中写真APは取得される。
【0020】
また本願発明の樹種区分判別システムは、「教師データ」を機械学習することによって学習済みモデルを生成し、その学習済みモデルに「入力画像データ」を入力することによって画素(ピクセル)ごとに樹種区分を判別する。そして、これら教師データと入力画像データは、
図2に示すように複数の画素PXによって構成される空中写真APに基づいて生成され、また空中写真APをさらに分割した(タイル割りした)複数の分割画像(以下、「タイル画像TL」という。)単位で生成される。一般的に、空中写真APは相当程度に広い範囲で撮影されことから、適当な範囲からなるタイル画像TLに基づいて樹種区分を判別するわけである。
【0021】
図3は、本願発明の樹種区分判別システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように樹種区分判別システム100は、モデル生成手段101と判別手段102、タイル画像生成手段103を含んで構成され、さらに教師データ生成手段104や入力画像データ生成手段105、ポリゴン生成手段106、統計画素値算出手段107、画像データ記憶手段108、統計画素値記憶手段109、樹種区分記憶手段110、教師データ記憶手段111、モデル記憶手段112、ポリゴン記憶手段113などを含んで構成することもできる。
【0022】
樹種区分判別システム100を構成するモデル生成手段101と判別手段102、タイル画像生成手段103、教師データ生成手段104、入力画像データ生成手段105、ポリゴン生成手段106、統計画素値算出手段107は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。すなわち、所定のプログラムによってコンピュータ装置に演算処理を実行させることで、それぞれの手段特有の処理を行うわけである。このコンピュータ装置は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)といったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、を具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバなどによって構成することができる。
【0023】
また、画像データ記憶手段108、統計画素値記憶手段109、樹種区分記憶手段110、教師データ記憶手段111、モデル記憶手段112、ポリゴン記憶手段113は、汎用的コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)の記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0024】
以下、本願発明の樹種区分判別システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0025】
(統計画素値算出手段)
統計画素値算出手段107は、画像データ記憶手段108から空中写真APを読み出し(
図3)、対象範囲RGを網羅する画像(以下、「対象全体画像」という。)に係る色情報の統計値を算出する手段である。既述したとおり、対象範囲RG全体を網羅するには、複数(例えば、
図1では49)の空中写真APが必要となる。そして、これら空中写真APはそれぞれ複数の画素PXによって構成されており(
図2)、すなわち対象全体画像(つまり、対象範囲RG)も複数の画素PXによって構成されることとなる。統計画素値算出手段107は、この対象全体画像を構成する画素PXの色情報について、統計処理を行うわけである。
【0026】
ところで本来、色は人の視覚で認識するものであり個人差が伴うものであるが、近年、この色をコンピュータで扱うべくモデル化されるようになった。色をモデル化する手法にも種々あり、赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)の3色を基本色とするRGB、シアン(Cyan)・マゼンタ(Magenta)・イエロー(Yellow)・ブラック(Key color)の4色を基本色とするCMYK、黄・赤・青・緑・黒・白の6色を基本色とするNCSやオストワルト表色系などが知られている。また色は、色相、彩度、明度からなる3つの属性を備えており、例えばRGBでは赤・緑・青の3原色を混ぜ合わせて(加法混色)種々の色相、彩度、明度を表現する。
【0027】
ここでいう色情報とは、RGBや、CMYK、NCS、オストワルト表色系といった色のモデル化によって規定される「色を特定するための値」である。例えば、3バンドの波長情報を備えているRGBのケースでは、純色の赤の色情報が(255、0、0)となり、純色の緑の色情報が(0、255、0)、純色の青の色情報が(0、0、255)となる。そして、空中写真APの画素PXには、それぞれ色情報が付与される。そこで便宜上ここでは、画素PXに付与された色情報のことを、「画素値」ということとする。例えば、RGBの場合、黄色は(255、255、0)で表されるが、このRとGとBの組み合わせである(255、255、0)が「画素値」とされ、またそれぞれRの「255」や、Gの「255」、Bの「0」もそれぞれ「画素値」とされる。便宜上ここでは、種々の色モデルのうちRGBの例で説明することとし、さらにRに係る画素値のことを特に「R画素値」と、Gに係る画素値のことを特に「G画素値」、Bに係る画素値のことを特に「B画素値」ということとする。
【0028】
上記したように統計画素値算出手段107は、対象全体画像に係る色情報、つまり対象全体画像を構成する画素PXの画素値について、統計処理を実行する手段である。より詳しくは、対象全体画像に係る画素値の平均値(以下、「平均画素値」という。)を算出するとともに、対象全体画像に係る画素値の標準偏差(以下、「標準偏差画素値」という。)を算出するものであり、さらに対象全体画像に係る画素値の中央値や最頻値、分散などを算出する仕様としてもよい。以下、平均画素値と標準偏差画素値を含む統計値のことを「統計画素値」ということとする。
【0029】
統計画素値算出手段107は、バンドごとに統計画素値(平均画素値と標準偏差画素値)を算出する仕様とすることができる。この場合、
図4に示すように統計画素値算出手段107は、対象全体画像の画素PXに係るR画素値を統計処理することで「R平均画素値」と「R標準偏差画素値」を算出し、同様に対象全体画像の画素PXに係るG画素値を統計処理することで「G平均画素値」と「G標準偏差画素値」を、対象全体画像の画素PXに係るB画素値を統計処理することで「B平均画素値」と「B標準偏差画素値」をそれぞれ算出する。あるいは、バンドごとに統計画素値を算出する仕様に代えて、(R、G、B)の組み合わせからなる画素値を統計処理することによって統計画素値を算出する仕様にすることもできる。この場合、全てのR画素値とG画素値、B画素値を対象として平均画素値と標準偏差画素値を算出したり、R画素値とG画素値、B画素値に重みづけを行ったうえで平均画素値と標準偏差画素値を算出したりすることができる。統計画素値算出手段107によって算出された画素PXごとの統計画素値(平均画素値と標準偏差画素値)は、統計画素値記憶手段109に記憶される(
図3)。
【0030】
(タイル画像生成手段)
タイル画像生成手段103は、画像データ記憶手段108から空中写真APを読み出し(
図3)、空中写真APをタイル割りすることによって「タイル画像TL」を生成する手段である。したがって、1の空中写真APから複数のタイル画像TLが得られることとなる。ただしタイル画像生成手段103は、
図5に示すように隣接するタイル画像TLどうしが部分的に重複するようにタイル画像TLを生成する。例えば
図5では、左右、あるいは上下に5ピクセル(画素PX)分だけスライドしながら(ずらしながら)タイル割りを行うことで、複数のタイル画像TLを生成している。これにより、タイル画像TLを構成する一部の画素PXが、隣接するタイル画像TLの画素PXと重なるわけである。なお、
図5の例では5ピクセル分だけスライドしながらタイル画像TLを生成しているが、これに限らず20ピクセル分などあらかじめ設定した所望の移動量でスライドさせることができる。
【0031】
(教師データ生成手段)
教師データ生成手段104は、タイル画像TLに基づいて、機械学習における学習用のデータ(以下、単に「教師用データ」という。)を生成する手段である。以下、教師データ生成手段104が教師用データを生成する手順について詳しく説明する。
【0032】
教師データ生成手段104は、まず統計画素値記憶手段109から統計画素値(平均画素値と標準偏差画素値)を読み出し、タイル画像TLを構成する画素PXごとに「正規化画素値」を付与する。ここで正規化画素値とは、その画素PXに付与された実際(実測)の画素値(以下、「実画素値」という。)を、統計画素値を用いていわば正規化した値であり、実画素値と平均画素値、標準偏差画素値に基づいて算出される値である。例えば、正規化画素値は、次式によって求めることができる。
「正規化画素値」=(「実画素値」-「平均画素値」)÷「標準偏差画素値」
もちろん、平均画素値と標準偏差画素値、実画素値に基づいて得られる値であれば、上式に種々の係数を乗ずるなど、様々な算式によって正規化画素値を求めることができる。
【0033】
また、統計画素値算出手段107がバンドごとに統計画素値(平均画素値と標準偏差画素値)を算出する場合、教師データ生成手段104もやはりバンドごとに正規化画素値を付与するとよい。より詳しくは、R標準偏差画素値とR標準偏差画素値、実画素値に基づいて正規化画素値(以下、「R正規化画素値」という。)を算出するとともに、G標準偏差画素値とG標準偏差画素値、実画素値に基づいて正規化画素値(以下、「G正規化画素値」という。)を算出し、B標準偏差画素値とB標準偏差画素値、実画素値に基づいて正規化画素値(以下、「B正規化画素値」という。)を算出したうえで、画素PXごとにR正規化画素値、G正規化画素値、B正規化画素値を付与する。つまりこの場合は、
図6(a)に示すように、教師データ生成手段104はバンドごとの教師データ(R用教師データとG用教師データ、B用教師データ)を生成するわけである。なお、正規化画素値の算出は、統計画素値算出手段107が実行する仕様にすることも、教師データ生成手段104が実行する仕様にすることもできる。
【0034】
また教師データ生成手段104は、樹種区分記憶手段110から「樹種区分」を読み出し、タイル画像TLを構成する画素PXごとに、ラベルとしての「樹種区分」を付与する。樹種区分記憶手段110は、既に作成された樹種区分図などを利用して領域ごとの樹種区分を記憶している。なお、樹種区分記憶手段110が記憶する樹種区分の分類は、樹種区分図などで設定されるすべての樹種区分とすることもできるし、ある特定の樹種区分に絞って記憶することもできる。
図7の左側には12種類に細分化された樹種区分を記憶する例を示しており、中央には「スギ、ヒノキ、マツ、竹など」に絞って記憶する例を、右側にはさらに「スギ、ヒノキ」に絞って記憶する例をそれぞれ示している。そして教師データ生成手段104は、タイル画像TLの画素PXと、領域ごとの樹種区分とを照らし合わせることによって、画素PXごとに樹種区分を付与していく。
【0035】
教師データ生成手段104は、上記した手順によって、つまりタイル画像TLを構成する画素PXごとに正規化画素値を付与するとともに、ラベルとしての樹種区分を付与することによって、教師用データを生成する。このとき、タイル画像生成手段103によって生成された全てのタイル画像TLについて、つまりタイル画像TLと同数の教師用データが生成される。また、統計画素値算出手段107がバンドごとに統計画素値を算出する場合、それぞれのタイル画像TLについて3バンド分の教師データ(R用教師データとG用教師データ、B用教師データ)が生成される。
【0036】
なお教師データ生成手段104は、画素PXごとに正規化画素値を付与することなく、すなわち画素PXが有する本来の実画素値を用いて教師用データを生成することもできる。つまり教師データ生成手段104は、タイル画像TLを構成する画素PXごとに、ラベルとしての樹種区分を付与することによって教師用データを生成するわけである。この場合も、タイル画像生成手段103によって生成された全てのタイル画像TLについて、つまりタイル画像TLと同数の教師用データが生成される。教師データ生成手段104によって生成された教師データは、教師データ記憶手段111に記憶される(
図3)。
【0037】
(入力画像データ生成手段)
入力画像データ生成手段105は、タイル画像TLに基づいて、入力用の画像データ(以下、単に「入力画像データ」という。)を生成する手段である。以下、入力画像データ生成手段105が入力画像データを生成する手順について詳しく説明する。
【0038】
まずタイル画像生成手段103が、画像データ記憶手段108から入力用の空中写真APを読み出し、この空中写真APをタイル割りすることによって入力用の「タイル画像TL」を生成する(
図3)。次いで、入力画像データ生成手段105が、統計画素値記憶手段109から統計画素値(平均画素値と標準偏差画素値)を読み出し、タイル画像TLを構成する画素PXごとに「正規化画素値」を付与する。このとき、教師用データを生成する際に用いた空中写真APに由来する統計画素値を読み出して正規化画素値を付与する仕様とすることもできるし、入力用の空中写真APに対して新たに統計画素値を算出するとともに統計画素値記憶手段109に記憶させ、この新たな統計画素値を読み出して正規化画素値を付与する仕様とすることもできる。また、統計画素値算出手段107がバンドごとに統計画素値を算出する場合、入力画像データ生成手段105もやはりバンドごとに正規化画素値を付与するとよい。より詳しくは、R平均画素値とR標準偏差画素値、実画素値に基づいて「R正規化画素値」を算出するとともに、G平均画素値とG標準偏差画素値、実画素値に基づいて「G正規化画素値」を算出し、B平均画素値とB標準偏差画素値、実画素値に基づいて「B正規化画素値」を算出したうえで、画素PXごとにR正規化画素値、G正規化画素値、B正規化画素値を付与する。つまりこの場合は、
図6(b)に示すように、入力画像データ生成手段105はバンドごとの入力画像データ(R用入力画像データとG用入力画像データ、B用入力画像データ)を生成するわけである。なお、正規化画素値の算出は、統計画素値算出手段107が実行する仕様にすることも、入力画像データ生成手段105が実行する仕様にすることもできる。
【0039】
入力画像データ生成手段105は、上記した手順によって、つまりタイル画像TLを構成する画素PXごとに正規化画素値を付与することによって、入力画像データを生成する。このとき、タイル画像生成手段103によって生成された全てのタイル画像TLについて、つまりタイル画像TLと同数の入力画像データが生成される。また、統計画素値算出手段107がバンドごとに統計画素値を算出する場合、それぞれのタイル画像TLについて3バンド分の入力画像データ(R用入力画像データとG用入力画像データ、B用入力画像データ)が生成される。
【0040】
なお入力画像データ生成手段105は、画素PXごとに正規化画素値を付与することなく、すなわち画素PXが有する本来の実画素値を用いて入力画像データを生成することもできる。つまり教師データ生成手段104は、タイル画像TLそのものを入力画像データとして設定するわけである。この場合も、タイル画像生成手段103によって生成された全てのタイル画像TLについて、入力画像データとして設定する。
【0041】
(モデル生成手段)
モデル生成手段101は、教師データを用いた機械学習を行うことによって「学習済みモデル」を生成する手段である。学習済みモデルを生成するための機械学習としては、CNN(Convolutional Neural Network)といったディープラーニングのほか、従来用いられている種々の機械学習技術を採用することができる。ただし、タイル画像TLを構成する画素PXごとに樹種区分の判別を出力する(推論する)ことができるように、学習済みモデルは生成される。
【0042】
ところで、教師データ生成手段104によってバンドごとの教師データ(R用教師データとG用教師データ、B用教師データ)が生成されることもある。この場合、モデル生成手段101は、3種類の教師データ(R用教師データとG用教師データ、B用教師データ)を同時に機械学習することによって学習済みモデルを生成する仕様とすることもできるし、それぞれ別に機械学習することによって学習済みモデルを生成する仕様とすることもできる。3種類の教師データを同時に機械学習するケースでは1の学習済みモデルが生成され、それぞれ別に機械学習するケースでは3種類の学習済みモデル(R用学習済みモデルとG用学習済みモデル、B用学習済みモデル)が生成されることとなる。モデル生成手段101によって生成された学習済みモデルは、モデル記憶手段112に記憶される(
図3)。
【0043】
(判別手段)
判別手段102は、モデル生成手段101によって生成された学習済みモデルを含んで構成され、入力された入力画像データに対して樹種区分の判別を出力する(推論する)手段である。ただし判別手段102は、入力画像データ(つまり、タイル画像TL)を構成する画素PXごとに樹種区分を判別して出力する。なお既述したとおり、ここで入力される入力画像データは、画素PXごとに正規化画素値が付与されたものであり、あるいは実画素値を用いた入力画像データ(つまり、タイル画像TLそのもの)である。
【0044】
ところで、タイル画像生成手段103が部分的に重複するようにタイル画像TLを生成する(
図5)ことから、入力画像データも隣接する入力画像データと一部重複することとなる。すなわち、1の画素PXに着目すると、その画素PXを含む複数のタイル画像TLが生成されることがあり、そしてタイル画像TLの数だけ入力画像データが生成され、すなわち同一の画素PXに対して入力画像データの数だけ樹種区分が判別されることとなる。この場合、入力画像データを学習済みモデルに入力して出力された結果を、ひとまず暫定的な樹種区分(以下、「暫定樹種区分」)として画素PXに付与し、複数の暫定樹種区分に基づいて最終的な樹種区分(以下、「決定樹種区分」という。)を定めるとよい。より詳しくは、同一の画素PXに対して複数の暫定樹種区分が付与された場合、すべて同じの暫定樹種区分であればそのままその暫定樹種区分を決定樹種区分として定めることとし、一方、同一の画素PXに対して異なる暫定樹種区分が付与されたときは、最多の暫定樹種区分を決定樹種区分として定めるわけである。
【0045】
モデル生成手段101によってバンドごとの学習済みモデル(R用学習済みモデルとG用学習済みモデル、B用学習済みモデル)が生成されているケースでは、判別手段102もそれぞれバンドごとに樹種区分を判別して出力するとよい。すなわち、R用学習済みモデルにR用入力画像データを入力して樹種区分を判別するとともに、G用学習済みモデルにG用入力画像データを入力して樹種区分を判別し、B用学習済みモデルにB用入力画像データを入力して樹種区分を判別するわけである。ただしこの場合、バンドごとにそれぞれ判別結果が異なることもある。そこで、3バンドの判別結果に基づいて、いずれか一つの樹種区分を判別するとよい。例えば、最も多く判定された樹種区分を最終的に「決定樹種区分」として採用する仕様としたり、周囲の画素PXに係る決定樹種区分を参照して3バンドのうちいずれかの樹種区分を「決定樹種区分」として採用する仕様としたりすることができる。
【0046】
(ポリゴン生成手段)
ポリゴン生成手段106は、判別手段102よって判別された結果に基づいて、同種の樹種区分(特に、決定樹種区分)によって形成される領域(以下、「樹種区分ポリゴン」という。)を生成する手段である。より具体的には、判別手段102よって同一の樹種区分とされた画素PXであって、近接する画素PXどうしを集合していくことによって樹種区分ポリゴンを生成していく。樹種区分ポリゴンを生成するにあたっては、クラスタリング処理など従来用いられている種々の技術を利用することができる。ポリゴン生成手段106によって生成された樹種区分ポリゴンは、ポリゴン記憶手段113に記憶される(
図3)。
【0047】
(処理の流れ)
以下、
図8と
図9を参照しながら本願発明の樹種区分判別システム100の主な処理について詳しく説明する。
図8は、樹種区分判別システム100が学習済みモデルを生成するまでの主な処理の流れの一例を示すフロー図であり、
図9は、樹種区分判別システム100が画素PXごとに樹種区分の判別を出力する(推論する)までの主な処理の流れの一例を示すフロー図である。なお
図8と
図9では、中央の列に実行する処理を示し、左列にはその処理に必要なものを、右列にはその処理から生ずるものを示している。なお便宜上ここでは、画素PXに正規化画素値が付与された教師データを用いるとともに、画素PXに正規化画素値が付与された入力画像データを用いる例で説明する。
【0048】
学習済みモデルを生成するにあたっては、まず
図8に示すように統計画素値算出手段107が対象全体画像の画素値に基づいて、統計画素値を算出する(
図8のStep201)。このとき統計画素値算出手段107は、RGBが備える3バンドの波長情報ごとに統計画素値を算出し、すなわち「R平均画素値」と「R標準偏差画素値」、「G平均画素値」と「G標準偏差画素値」、「B平均画素値」と「B標準偏差画素値」を算出するとよい。
【0049】
バンドごとの統計画素値が算出されると、タイル画像生成手段103が空中写真APをタイル割りすることによって「タイル画像TL」を生成する(
図8のStep202)。なおタイル画像生成手段103は、対象範囲RG全体を網羅する複数(例えば、
図1では49)の空中写真APについて、それぞれタイル画像TLを生成するとよい。
【0050】
タイル画像TLが生成されると、タイル画像TLを構成する画素PXごとに正規化画素値を算出する(
図8のStep203)。そして教師データ生成手段104が、画素PXに正規化画素値と樹種区分を付与することによって、タイル画像TLごとに教師用データを生成する(
図8のStep204)。このとき、統計画素値算出手段107がバンドごとの統計画素値を算出している場合、教師データ生成手段104もやはりバンドごとの教師データ、つまりR用教師データとG用教師データ、B用教師データをそれぞれ生成することができる。また教師データ生成手段104は、タイル画像生成手段103によって生成されるすべてのタイル画像TLに基づいて教師用データを生成するとよい。
【0051】
教師用データが生成されると、モデル生成手段101がその教師データを用いた機械学習を行うことによって「学習済みモデル」を生成する(
図8のStep205)。このとき、教師データ生成手段104がバンドごとの教師データ(R用教師データとG用教師データ、B用教師データ)を生成している場合、教師データ生成手段104もR用教師データとG用教師データ、B用教師データそれぞれで機械学習を行うこととし、すなわちバンドごとの学習済みモデル(R用学習済みモデルとG用学習済みモデル、B用学習済みモデル)を生成することもできる。
【0052】
学習済みモデルが生成されると、タイル画像生成手段103が入力用の空中写真APをタイル割りすることによって「タイル画像TL」を生成する(
図9のStep206)。このときタイル画像生成手段103は、新たに撮影された空中写真AP、つまり推論しようとする空中写真APを対象として、タイル画像TLを生成する。なおタイル画像生成手段103は、対象範囲RG全体を網羅する複数(例えば、
図1では49)の空中写真APについて、それぞれタイル画像TLを生成するとよい。
【0053】
タイル画像TLが生成されると、タイル画像TLを構成する画素PXごとに正規化画素値を算出する(
図9のStep207)。正規化画素値を算出するための「統計画素値」は、学習済みモデルを生成する際に用いられた統計画素値をそのまま使用することもできるし、新たに撮影された空中写真APに基づいて統計画素値算出手段107が改めて算出した統計画素値を使用することもできる。そして入力画像データ生成手段105が、画素PXに正規化画素値を付与することによって、タイル画像TLごとに入力画像データを生成する(
図9のStep208)。このとき、統計画素値算出手段107がバンドごとの統計画素値を算出している場合、入力画像データ生成手段105もやはりバンドごとの入力画像データ、つまりR用入力画像データとG用入力画像データ、B用入力画像データをそれぞれ生成することもできる。また入力画像データ生成手段105は、タイル画像生成手段103によって生成されるすべてのタイル画像TLに基づいて入力画像データを生成するとよい。
【0054】
入力画像データが生成されると、判別手段102は入力画像データに対して樹種区分の判別を出力する(
図9のStep209)。具体的には、学習済みモデルに入力画像データが入力されると、入力画像データ(つまり、タイル画像TL)を構成する画素PXごとに樹種区分の判別をして出力する(推論する)。このとき、同一の画素PXを含む異なる入力画像データが生成されることがあり、すなわち同一の画素PXに対して複数種類の樹種区分が判別されることもある。この場合、入力画像データを学習済みモデルに入力して出力された結果を「暫定樹種区分」として画素PXに付与し、複数の暫定樹種区分に基づいて最終的な「決定樹種区分」を定める(
図9のStep210)。より詳しくは、同一の画素PXに対して異なる暫定樹種区分が付与されたときは、最多の暫定樹種区分を決定樹種区分として定めるわけである。
【0055】
また、モデル生成手段101がバンドごとの学習済みモデル(R用学習済みモデルとG用学習済みモデル、B用学習済みモデル)を生成し、入力画像データ生成手段105がバンドごとの入力画像データ(R用入力画像データとG用入力画像データ、B用入力画像データ)を生成している場合、判別手段102もそれぞれバンドごとに樹種区分を判別して出力することもできる。すなわち、R用学習済みモデルにR用入力画像データを入力して樹種区分を判別するとともに、G用学習済みモデルにG用入力画像データを入力して樹種区分を判別し、B用学習済みモデルにB用入力画像データを入力して樹種区分を判別するわけである。ただしこの場合、バンドごとにそれぞれ判別結果が異なることもある。そこで、3バンドの判別結果に基づいて、いずれか一つの樹種区分を判別するとよい(
図9のStep210)。例えば、最も多く判定された樹種区分を最終的に「決定樹種区分」として採用する仕様としたり、周囲の画素PXに係る決定樹種区分を参照して3バンドのうちいずれかの樹種区分を「決定樹種区分」として採用する仕様としたりすることができる。
【0056】
判別手段102よって樹種区分(特に、決定樹種区分)が判別されると、ポリゴン生成手段106が「樹種区分ポリゴン」を生成する(
図9のStep211)。具体的には、判別手段102よって同一の樹種区分とされた画素PXであって、近接する画素PXどうしを集合していくことによってポリゴン生成手段106が樹種区分ポリゴンを生成していく。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明の樹種区分判別システムは、樹種区分図を作成する際に特に好適に利用することができる。本願発明によれば、容易かつ的確に樹種区分を判別することができることから、森林の状態を適格に把握することができ、ひいては森林を適切に管理することができることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0058】
100 本願発明の樹種区分判別システム
101 モデル生成手段
102 判別手段
103 タイル画像生成手段
104 教師データ生成手段
105 入力画像データ生成手段
106 ポリゴン生成手段
107 統計画素値算出手段
108 画像データ記憶手段
109 統計画素値記憶手段
110 樹種区分記憶手段
111 教師データ記憶手段
112 モデル記憶手段
113 ポリゴン記憶手段
AP 空中写真
PX 画素
RG 対象範囲
TL タイル画像