(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008612
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】巻芯および巻重体
(51)【国際特許分類】
B65H 75/18 20060101AFI20240112BHJP
B65H 75/10 20060101ALI20240112BHJP
B65H 75/28 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B65H75/18 Z
B65H75/10
B65H75/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110616
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
(72)【発明者】
【氏名】南方 克哉
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA02
3F058AA03
3F058AA04
3F058AB01
3F058BB17
3F058CA00
3F058DA04
3F058DB03
3F058DB05
3F058DB07
3F058HA07
(57)【要約】
【課題】ウェブ材の巻き始めの部分での段差痕を防止または低減する。
【解決手段】円筒状の外周面を有し、ウェブ材を巻き取るための巻芯110は、両端部付近の大径部111よりも、上記大径部111の間に亘る中間部112の外径が小さく設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外周面を有し、ウェブ材を巻き取るための巻芯であって、
両端部付近の一対の大径部よりも、上記一対の大径部の間に亘る中間部の外径が小さく設定されていることを特徴とする巻芯。
【請求項2】
請求項1の巻芯であって、
上記一対の大径部の間の距離が、巻芯に巻き取られるウェブ材の幅よりも短く設定されるとともに、上記一対の大径部の外周面の半径と、上記中間部の外周面の半径との差が、巻芯に巻き取られるウェブ材の厚さ寸法以下に設定されていることを特徴とする巻芯。
【請求項3】
請求項2の巻芯であって、
上記一対の大径部の間の距離が、巻芯に巻き取られるウェブ材の幅よりも5mm以上、100mm以下だけ短く設定されるとともに、上記一対の大径部の外周面の半径と、上記中間部の外周面の半径との差が、巻芯に巻き取られるウェブ材の厚さ寸法の25%以上、100%以下に設定されていることを特徴とする巻芯。
【請求項4】
請求項3の巻芯であって、
上記一対の大径部の間の距離が、巻芯に巻き取られるウェブ材の幅よりも10mm以上、50mm以下だけ短く設定されるとともに、上記一対の大径部の外周面の半径と、上記中間部の外周面の半径との差が、巻芯に巻き取られるウェブ材の厚さ寸法の35%以上、60%以下に設定されていることを特徴とする巻芯。
【請求項5】
請求項1の巻芯であって、
上記一対の大径部、および中間部の少なくとも一方に、上記ウェブ材の巻き始め端部が接着される接着部が設けられていることを特徴とする巻芯。
【請求項6】
請求項1の巻芯に、幅方向寸法が上記一対の大径部の間の距離よりも長く、厚さが上記一対の大径部の外周面の半径と上記中間部の外周面の半径との差以上であるウェブ材が巻き取られていることを特徴とする巻重体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ材を巻き取るための巻芯、およびウェブ材等が巻き取られた巻重体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム状のウェブ材は、通常、円筒状の巻芯に巻き取られた状態で、搬送や保存等の取り扱いがなされる。上記ウェブ材の巻き始めの部分では、ウェブ材の先端部と巻芯の表面との間に生じる段差に起因して、2周目以降のウェブ材に線状の段差痕が生じ、ウェブ材の品質が損なわれることになる。そのような段差痕を防止するためには巻芯本体の外周面にクッション性を有したクッションテープを巻き付ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように巻芯本体の外周面にクッション性を有したクッションテープを巻き付けたとしても、クッション性がほとんどないウェブ材の端部とクッションテープとの境目に生じる段差を確実に解消することは困難であり、段差痕の発生を確実に阻止することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ウェブ材の巻き始めの部分での段差痕による品質低下を回避することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
円筒状の外周面を有し、ウェブ材を巻き取るための巻芯であって、
両端部付近の大径部よりも、上記大径部の間に亘る中間部の外径が小さく設定されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、上記一対の大径部、および中間部の少なくとも一方において、上記ウェブ材の巻き始め端部が接着される接着部が以下のように設けられてもよい。
【0008】
すなわち、上記接着部は、一方側の上記大径部から上記中間部を経由して他方側の上記大径部に亘って設けられてもよい。
【0009】
また、上記接着部は、上記中間部の軸方向中央部付近と、両側の上記大径部とに設けられてもよい。
【0010】
また、上記接着部は、上記中間部の軸方向中央部付近だけに設けられてもよい。
【0011】
また、上記接着部は、上記大径部だけに設けられてもよい。
【0012】
また、上記接着部は、上記中間部における上記大径部の近傍だけに設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ウェブ材の巻き始めの先端部と巻芯の表面との間に生じる段差に起因して、2周目以降のウェブ材に生じる段差痕による品質低下を回避することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】巻芯にウェブ材が巻き取られた巻重体の構成を示す斜視図である。
【
図2】ウェブ材が巻き取られる前の巻芯の構成を示す斜視図である。
【
図4】ウェブ材の巻き始めの部分の例を示す模式的縦断面図である。
【
図8】他の変形例の巻芯の構成を示す斜視図である。
【
図9】さらに他の変形例の巻芯の構成を示す斜視図である。
【
図10】またさらに他の変形例の巻芯の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態や変形例において、他の実施形態等と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
巻重体100は、
図1、
図2に示すように、巻芯110にウェブ材120が巻き取られたものである。ウェブ材120は、シート状の例えばロール紙、合成樹脂フィルム、金属箔等から成る部材である。このウェブ材120は、例えば、幅が500~2500mm、好適には1000~2000mm、厚さが50~500μm、好適には100~300μmなどである。
【0017】
巻芯110は、例えば、内径が152.4mm(通称6インチコア)や、76.2mm(通称3インチコア)などで肉厚が4~15mm程度などの円筒状に形成されている。より詳しくは、巻芯110は、両端部の大径部111と、その間で、大径部111よりも外径が小さく設定された中間部112とを有している。
【0018】
上記大径部111、および中間部112の外周部には、所定の周方向の幅で巻芯110の軸心方向に延びる接着部113が設けられ、ウェブ材120の巻き始め端部が接着されている。上記接着部113は、例えば両面粘着テープを貼り付けることなどによって設けることができるが、特に限定されず、ウェブ材120の接着が可能であればよい。
【0019】
上記巻芯110の全長は、巻き取るウェブ材120の幅方向寸法よりも所定の余裕を持たせた長さに設定されている。また、上記大径部111と中間部112の軸心方向の長さは、例えば、
図3に巻芯110の一端側だけを例示するように、ウェブ材120の幅方向両縁部が掛かる寸法aが5mm以上、100mm以下程度、より好適には10mm以上、50以下で、大径部111の外周面の半径と、中間部112の外周面の半径との差bが、巻き取るウェブ材120の厚さ寸法の25%以上、100%以下、より好適には35%以上、60%以下程度に設定されている。
【0020】
上記のような巻芯110にウェブ材120が巻き取られる場合、巻き始めの部分では、
図4~
図6に模式的に示すようになる。すなわち、例えば接着部113は巻芯110の両端側の大径部111に亘って、大径部111における軸心方向に垂直な方向の壁部分も含めて密着するように設けられ、ウェブ材120の1巻目部分120aの巻き始め端部は、接着部113に密着するように固定される。すなわち、1巻目部分120aの端部の外周面は、大径部111、および中間部112の外径に沿うように巻き取りが開始され、大径部111に巻き取られる部分よりも中間部112に巻き取られる部分の方がわずかに凹んだ状態となる。また、ウェブ材120に作用する巻き取り方向の張力は、外径が大きい大径部111の部分に比べて中間部112の部分の方が小さくなる。そこで、ウェブ材120の2巻目部分120bは、巻芯110の大径部111では、
図5に示すように1巻目部分120aに密着する一方、中間部112では、
図6に示すように1巻目部分120aとの間に隙間が空いたり、密着する場合でも、その密着力が小さい状態となる。それゆえ、巻芯110の中間部112では、ウェブ材120の2巻目部分120b以降の部分の段差痕は防止または低減され、ウェブ材120の歩留まりを向上させることが容易にできる。
【0021】
ここで、巻芯110の大径部111部分に巻き取られるウェブ材120の幅方向両縁部では、2巻目部分120bが1巻目部分120aの巻き始め端部に押し付けられることによる段差痕が発生し得るが、そのような段差痕が生じるのはウェブ材120の両縁部で大径部111部分に掛かっている部分だけなので、その大径部111に掛かる寸法aを適切に設定することにより、ウェブ材120の歩留まりに影響しないようにすることが容易にできる。
【0022】
(変形例)
巻芯110に設けられる接着部113は、上記のように巻芯110における一方側の大径部111から中間部112を経由して他方側の大径部111に亘って軸心方向に連続的に設けられる形態には限られず、例えば
図7に示すように、中間部112に接着部113の設けられていない部分が存在するなど、離散的に設けられるようにしてもよい。この場合でも、中間部112の部分でウェブ材120が中間部112の表面に向けて押し付けられる力は軽減されるので、やはり、段差痕は防止または低減することが容易にできる。
【0023】
また、例えば
図8に示すように、巻芯110における中間部112の軸方向中央部付近だけに接着部113が設けられるようにして、ウェブ材120の幅方向両縁部付近は巻芯110の大径部111には固定されないようにしてもよい。この場合には、ウェブ材120の幅方向両縁部付近ではウェブ材120に巻き取り方向の張力が作用しないようにできるので、ウェブ材120の幅方向両縁部付近の段差痕も防止や低減することが容易にできる。
【0024】
さらに、例えば
図9に示すように、巻芯110における大径部111だけに接着部113が設けられるようにしてもよい。この場合でも、やはり、中間部112の部分でウェブ材120が中間部112の表面に向けて押し付けられる力は軽減されるので、段差痕は防止または低減することが容易にできる。
【0025】
また、例えば
図10に示すように、上記接着部113が、巻芯110の中間部112における大径部111の近傍だけに接着部113が設けられるようにしてもよい。この場合、ウェブ材120に作用する巻き取り方向の張力は、中間部112の接着部113が設けられている位置付近では、他の部分に比べて大きくなり得るが、この位置では中間部112の外径が近傍の大径部111の外径よりも小さいので、ウェブ材120が中間部112の表面に向けて押し付けられる力は比較的小さくなる。一方、接着部113が設けられていない大径部111の位置、すなわちウェブ材120の幅方向両縁部付近ではウェブ材120に巻き取り方向の張力が作用しにくいようにできるので、やはり、ウェブ材120が大径部111の表面に向けて押し付けられる力は比較的小さくなる。
【0026】
上記のように、中間部112の外径が小さいことやウェブ材120に作用する張力が小さいことによる押し付け力の低減を図ることによって、ウェブ材120に生じる段差痕を防止したり低減したりすることが容易にできる。
【0027】
(その他の事項)
上記実施形態の例(
図1等)では、接着部113を設けてウェブ材120を巻芯110に固定する形態を示したが、特段の接着部113を設けずに、例えば水や溶剤等による表面張力を利用して、ウェブ材120を巻芯110に密着させ、巻取り巻重体を作製することもできる。
【0028】
巻芯110にウェブ材120を確実に固定するという点からは、接着部113を設けることが好ましく、より強固に固定するという観点からは、接着部113を大径部111や中間部112の外面の周回方向の全体に亘って設けてもよい。
【0029】
もっとも、一般には、巻き始めの1巻目においてウェブ材120が、巻芯110の外面の周回方向の全体に亘って固定する場合、ウェブ材120の幅方向の端部は巻芯110の端部に対し厳密に平行である必要がある。ウェブ材120の幅方向の端部が巻芯110の端部に対し平行ではないと、巻取りを続けていくうちにウェブ材120の幅方向の両端部がズレてしまう。巻取りながらズレを修正しようとしてもウェブ材120の始端部が接着部113によって巻芯110の外面の周回方向の全体に亘って固定されているので、ズレの修正が難しい場合がある。
【0030】
一方、接着部113を大径部111や中間部112の外面の周回方向の全体に亘って設けるのではなく、例えば、
図1、
図7~
図10に示したように巻芯110の軸心方向に設ける場合には、巻き取りのテンションを加減することによって、ウェブ材120の幅方向両縁部における巻き取り始め以外の部分で巻芯110の軸心方向の位置を制御しやすいので、ウェブ材120の幅方向の両端部のズレを修正しやすい。それゆえ、上記両端部でのずれを修正しやすくする観点からは、通常、接着部113は大径部111や中間部112の外面の周回方向の一部、巻芯110の軸心方向に設けることが好ましいことがある。
【0031】
上記実施形態の例(
図1、2)では、巻芯110の両端部まで大径部111となっている例を示したが、端部の形状はこれに限らず、例えば
図7~
図10に示したように中間部112と同じ外径に形成されるなどしてもよい。そのような場合、例えば全長に亘って一定の外径を有する円筒状または円柱状の部材に、前記円筒状または円柱状の部材の外径よりも大きい一対のリング状の部材が嵌め込まれるなどして巻芯110が形成されるようにしてもよい。この場合リング状の部材が大径部111となり、一対のリング状の部材の間に位置する円筒状または円柱状の部分が中間部112となる。また、そのような場合、接着部113は、一対のリング状の部材と一対のリング状の部材の間に位置する円筒状または円柱状の部分とに亘って設けられることもできるし、リング状の部材の外側に位置する円筒状または円柱状の部材の両端部まで巻芯110の全長に亘って設けられるなどしてもよい。
【0032】
また、接着部113による固定の方法としては、巻芯110の外面とウェブ材120の巻取始部の内面との間に両面粘着テープを挟み、ウェブ材120を巻芯110に固定する方法の他、片面粘着テープを用い、ウェブ材120の巻取始部を巻芯110に固定してもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 巻重体
110 巻芯
111 大径部
112 中間部
113 接着部
120 ウェブ材
120a 1巻目部分
120b 2巻目部分