(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086122
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/248 20160101AFI20240620BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240620BHJP
【FI】
H01M8/248
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201078
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】北條 芙美
(72)【発明者】
【氏名】高井 希紗
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝浩
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126BB06
5H126DD05
(57)【要約】
【課題】積層体を構成する被積層物の外縁部に作用する押付け力と内側部位に作用する押付け力との差が、積層方向における各位置において大きく相違しない状態とする。
【解決手段】基板引寄せ具4が、積層体2を構成する各被積層物の間に挟み込まれたミドルプレート21a,21bと、エンドプレート3a,3bおよびプレート21の間に挟み込まれるようにして積層体2に並設された支持部材22a~22c等と、プレート3および支持部材22等を互いに引き寄せ、かつプレート21および支持部材22等を互いに引き寄せるボルト・ナット23a,23bおよびクランプ24a,24bとを備え、プレート3,21は、被積層物よりも高剛性に形成されると共に、積層体2における被積層物の積層方向で膜電極接合体の枠材と重なる領域およびガス拡散層や触媒層と重なる領域の双方において膜電極接合体以外の被積層物に対して面的に接触可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用セパレータおよび燃料電池用膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物を積層した積層体と、
前記積層体の両端に配設された一対の第1の基板と、
前記両第1の基板を互いに接近させる方向に引き寄せる基板引寄せ具とを備え、
前記基板引寄せ具によって前記両第1の基板が互いに接近する向きに引き寄せられて当該両第1の基板の間において前記各被積層物が互いに密着させられると共に当該両第1の基板に対して前記積層体が密着させられた燃料電池ユニットであって、
前記燃料電池用膜電極接合体は、前記燃料電池用セパレータに対して接触させられる一対の枠材の間に電解質膜が挟み込まれると共に、前記燃料電池用セパレータに対して面的に接触させられるガス拡散層、および前記電解質膜に対して面的に接触させられる触媒層が前記両枠材の内側にそれぞれ設けられ、
前記基板引寄せ具は、前記被積層物の間に挟み込まれた第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の間に挟み込まれるようにして前記積層体に並設された第1の部材と、前記第1の基板および前記第1の部材を互いに引き寄せ、かつ前記第2の基板および当該第1の部材を互いに引き寄せる第2の部材とを備え、
前記第1の基板および前記第2の基板は、前記被積層物よりも高剛性に形成されると共に、前記積層体における前記被積層物の積層方向で前記燃料電池用膜電極接合体の前記枠材と重なる領域、並びに前記ガス拡散層および前記電解質膜と重なる領域の双方において当該燃料電池用膜電極接合体以外の当該被積層物に対して面的に接触可能に構成されている燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記基板引寄せ具は、前記積層体における前記被積層物の積層方向において並ぶように配設された一対の前記第1の部材を互いに引き寄せる第3の部材を備えている請求項1記載の燃料電池ユニット。
【請求項3】
前記基板引寄せ具は、前記第1の基板と前記第1の部材との間、および前記第2の基板と当該第1の部材との間の少なくとも一方に圧縮弾性変形が可能な第4の部材が挟み込まれている請求項1または2記載の燃料電池ユニット。
【請求項4】
前記第2の基板は、導電性を有する材料で形成されている請求項1または2記載の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータおよび燃料電池用膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物を積層した積層体の両端に一対の基板が配設されると共に、両基板が互いに接近する方向に引き寄せられることによって両基板の間において各被積層物が互いに密着させられると共に両基板に対して積層体が密着させられた燃料電池ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料電池ユニットとして、複数の単セル電池が積層されて一体化された固体高分子型燃料電池スタック(以下、単に「燃料電池スタック」ともいう)の発明が下記の特許文献に開示されている。この燃料電池スタックでは、膜電極複合体(MEA)、酸化剤セパレータおよび燃料・冷却水セパレータによって単セル電池が構成され、この単セル電池が複数積層されて積層体が構成されている。また、この燃料電池スタックでは、導電性内部プレートおよび絶縁性外部プレートからなるエンドプレートが積層体の両端部に配置されると共に、絶縁性外部プレートを貫通させられた締め付けスタッドおよび締め付けスプリング(以下、単に「スタッド」および「スプリング」ともいう)によって両エンドプレートの間に配設された積層体が締め付け固定されている。これにより、この燃料電池スタックでは、必要とされる電力を得るのに十分な複数の単セル電池を一体化した製品を提供することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-179992号公報(第4-9頁、第1-6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献に開示の燃料電池スタック(燃料電池ユニット)には、以下のような解決すべき問題点が存在する。
【0005】
具体的には、上記特許文献に開示の燃料電池スタックでは、膜電極複合体(燃料電池用膜電極接合体)および各種セパレータ(燃料電池用セパレータ)などの各種の板体(以下、これらを総称して「被積層物」ともいう)を複数積層した積層体が一対のエンドプレート(一対の第1の基板)の間に挟み込まれると共に、両エンドプレートにおける絶縁性外部プレートがスタッドおよびスプリング(基板引寄せ具)によって互いに接近する方向に引き寄せられることで、両エンドプレートの間の各被積層物が互いに密着するようにして位置決め固定されている。すなわち、この燃料電池セルでは、両絶縁性外部プレートを貫通させられたスタッドの端部に配設されているスプリングの伸長力によって、両エンドプレートの間において各被積層物が互いに密着させられ、かつ両エンドプレートに積層体が密着させられる構成が採用されている。
【0006】
この場合、この種の燃料電池ユニットにおいて、セパレータについては、その板面における中央部に設けられた溝部から酸化剤(酸素:空気)や燃料(水素ガス等)が漏出するのを回避するために、他の被積層物に対して板面の全域を確実に密着させる必要があり、膜電極接合体については、過剰に強い力で圧縮されて処理能力が低下したり破損したりするのを回避しつつ、酸化剤や燃料などが漏出するのを回避するために、ガス拡散層や触媒層を囲むように配設した枠材をセパレータや電解質膜に対して確実に密着させる必要がある。このため、上記特許文献に開示の燃料電池スタックにおいても、各セパレータについては、他のセパレータに対して酸化剤や燃料を供給するための流路を構成する貫通孔の他に孔が存在しない平板状に形成されて、他の被積層物に対してその板面のほぼ全域を密着させると共に、膜電極接合体については、過剰に強い押付け力で密着させられることのないようにセパレータや電解質膜に対して枠材を十分な押付け力で密着させる構成が採用されている。
【0007】
この場合、上記特許文献に開示の燃料電池スタックにおいて、各被積層物の積層方向における両端に位置しているセパレータについては、エンドプレート側の板面のほぼ全域がエンドプレート(導電性内側プレートおよび絶縁性外部プレート)に対してほぼ均一な押付け力で押し付けられた状態となり、これらのセパレータにおける膜電極接合体側の板面(前述の溝部が形成されている面)における外縁部が膜電極接合体の枠材に対して強い力で押し付けられ、かつ内側部位が枠材に対する外縁部の押付け力よりも弱い力でガス拡散層に対して押し付けられた状態となる。
【0008】
また、両端に位置しているセパレータ以外のセパレータでは、膜電極接合体側の板面については、その外縁部が膜電極接合体の枠材に対して強い力で押し付けられ、かつ内側部位が枠材に対する外縁部の押付け力よりも弱い力でガス拡散層に対して押し付けられた状態となり、膜電極接合体側の板面の裏面側については、その外縁部(膜電極接合体側の板面が膜電極接合体の枠材に対して強い力で押し付けられている領域)が他の被積層物(他のセパレータ)に対して強い力で押し付けられ、かつ内側部位(裏面側のガス拡散層)が他の被積層物(他のセパレータ)に対してやや弱い力で押し付けられた状態となる。
【0009】
このため、上記特許文献に開示の燃料電池スタックでは、スタッドの端部に配設されたスプリングによって両エンドプレートに対して加えられた力が、両エンドプレートの間に積層されている各被積層物に対して積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに、積層方向の中央部寄りの被積層物ほど(エンドプレートから離間する被積層物ほど)、自身よりも中央部寄りの被積層物に対する押付け力が外縁部側に集中する現象が生じる。
【0010】
この場合、この燃料電池スタックでは、各被積層物の積層方向が水平方向と平行となるような設置状態において、被積層物の板面における各部に加わる押付け力の面内の総和(隣接する被積層物の間に作用する押付け力)が、両エンドプレートの間に挟み込まれているすべての被積層物においてほぼ等しくなる。このため、積層方向の両端側の被積層物(エンドプレートに近い被積層物)よりも、積層方向の中央部側の被積層物(エンドプレートから離れた被積層物)の方が、外縁部に押付け力が集中する分だけ、内側部位の押付け力が低下することとなる。したがって、積層方向の両端側の被積層物と積層方向の中央部側の被積層物とで、他の被積層物に対する内側部位(膜電極接合体においてガス拡散層や触媒層が配設されている部位、およびセパレータにおける溝部の形成領域)の押付け力に差異が生じた状態となる。
【0011】
ここで、積層方向の両端側の被積層物において、隣接する被積層物の内側部位に対する押付け力が好適な押付け力となるようにスプリングの伸長力(両エンドプレートを互いに接近させようとする力)を規定したときには、積層方向の中央部側の被積層物において、隣接する被積層物の内側部位に対する押付け力が好適な押付け力よりも弱い押付け力となる。このため、積層方向の中央部側の膜電極複合体において処理能力が低下するおそれがある。また、積層方向の中央部側の被積層物において、隣接する被積層物の内側部位に対する押付け力が好適な押付け力となるようにスプリングの伸長力を規定したときには、積層方向の両端側の被積層物において、隣接する被積層物の内側部位に対する押付け力が好適な押付け力よりも強い力となる。このため、積層方向の両端部側の膜電極複合体が破損したり、積層方向の両端部側のセパレータにおいて溝部が変形したりするおそれがある。
【0012】
一方、この種の燃料電池ユニットは、被積層物の積層数(すなわち、積層体の長さ)、設置場所のスペース(燃料電池ユニットによる占有が許容される空間の形状や広さ)、および発電用の気体を導入/排出するための配管のレイアウトなどに応じて、各被積層物の積層方向が水平方向と平行となるような設置状態だけでなく、各被積層物の積層方向が垂直方向と平行となるような設置状態において使用されることがある。
【0013】
ここで、
図8に示すように、複数の被積層物52ax~52rx(以下、区別しないときには「被積層物52x」ともいう)が積層された積層体の両端に一対の基板51ax,51bxが配設されたユニット50xに対して、両基板51ax,51bxを互いに接近させる向きの力が加えられた状態では、基板51axと被積層物52axとの間、積層方向において隣接する2つの被積層物52x,52xの間、および基板51bxと被積層物52rxとの間に、両基板51ax,51bxに対して加えられている力に応じた押付け力Pxがそれぞれ加わった状態となる。また、同図に示すように、各被積層物52xの積層方向が垂直方向と平行となるように両基板51ax,51bxが支えられたユニット50xでは、各被積層物52xに対して、基板51bxの自重、および自身よりも上方に積層されている被積層物52xの自重の和に応じた下向きの力がそれぞれ加わった状態となる。
【0014】
このため、積層方向における上側に配置されている被積層物52rxは、自身の自重、および基板51bxの自重の和に前述の押付け力Pxを加えた力で被積層物52qxに対して押し付けられた状態となるのに対し、積層方向における下側に配置されている被積層物52axには、被積層物52bx~52rxの自重および基板51bxの自重の和に押付け力Pxを加えた力で被積層物52bxが押し付けられた状態となる。つまり、各被積層物52xの積層方向が垂直方向と平行となっているユニット50xでは、積層方向の上側に位置する被積層物52rx、52qx・・よりも、積層方向の下側に位置する被積層物52ax、52bx・・の方が、隣接する被積層物52xに対する押付け力が大きくなる傾向がある。
【0015】
したがって、前述の燃料電池スタックのように、両エンドプレートの間に非常に多くの被積層物(セパレータや膜電極複合体)が積層されている状態、すなわち、積層方向に下側に位置する被積層物に対して、自身よりも上方に位置する多数の被積層物の自重が加わる状態では、積層方向の上側に位置する被積層物を隣接する他の被積層物に対して好適な押付け力で押し付けることが可能にスプリングの伸長力を規定したときに、積層方向の下側に位置する被積層物が隣接する他の被積層物に対して過剰に強い力で押し付けられ、膜電極複合体が破損したり、セパレータにおいて溝部が変形したりするおそれがある。
【0016】
逆に、積層方向の下側に位置する被積層物を隣接する他の被積層物に対して好適な押付け力で押し付けることが可能にスプリングの伸長力を規定したときには、積層方向の上側に位置する被積層物を隣接する他の被積層物に対して押し付ける力が弱くなり過ぎて、セパレータと膜電極複合体(ガス拡散層)との密着が不十分となって処理能力が低下したり、酸化剤や燃料の漏出が生じたりするおそれがある。
【0017】
本発明は、かかる解決すべき解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、積層体を構成する被積層物の外縁部に作用する押付け力と内側部位に作用する押付け力との差が、被積層物の積層方向におけるいずれの位置においても大きく相違せず、被積層物の積層方向が垂直方向と平行となるような設置状態においても隣接する被積層物間に作用する押付け力が積層方向におけるいずれの位置においても大きく相違しない状態で使用可能な燃料電池ユニットを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の燃料電池ユニットは、燃料電池用セパレータおよび燃料電池用膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物を積層した積層体と、前記積層体の両端に配設された一対の第1の基板と、前記両第1の基板を互いに接近させる方向に引き寄せる基板引寄せ具とを備え、前記基板引寄せ具によって前記両第1の基板が互いに接近する向きに引き寄せられて当該両第1の基板の間において前記各被積層物が互いに密着させられると共に当該両第1の基板に対して前記積層体が密着させられた燃料電池ユニットであって、前記燃料電池用膜電極接合体は、前記燃料電池用セパレータに対して接触させられる一対の枠材の間に電解質膜が挟み込まれると共に、前記燃料電池用セパレータに対して面的に接触させられるガス拡散層、および前記電解質膜に対して面的に接触させられる触媒層が前記両枠材の内側にそれぞれ設けられ、前記基板引寄せ具は、前記被積層物の間に挟み込まれた第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の間に挟み込まれるようにして前記積層体に並設された第1の部材と、前記第1の基板および前記第1の部材を互いに引き寄せ、かつ前記第2の基板および当該第1の部材を互いに引き寄せる第2の部材とを備え、前記第1の基板および前記第2の基板は、前記被積層物よりも高剛性に形成されると共に、前記積層体における前記被積層物の積層方向で前記燃料電池用膜電極接合体の前記枠材と重なる領域、並びに前記ガス拡散層および前記電解質膜と重なる領域の双方において当該燃料電池用膜電極接合体以外の当該被積層物に対して面的に接触可能に構成されている。
【0019】
請求項2記載の燃料電池ユニットは、請求項1記載の燃料電池ユニットにおいて、前記基板引寄せ具は、前記積層体における前記被積層物の積層方向において並ぶように配設された一対の前記第1の部材を互いに引き寄せる第3の部材を備えている。
【0020】
請求項3記載の燃料電池ユニットは、請求項1または2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記基板引寄せ具は、前記第1の基板と前記第1の部材との間、および前記第2の基板と当該第1の部材との間の少なくとも一方に圧縮弾性変形が可能な第4の部材が挟み込まれている。
【0021】
請求項4記載の燃料電池ユニットは、請求項1または2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記第2の基板は、導電性を有する材料で形成されている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の燃料電池ユニットでは、積層体を構成する被積層物の間に挟み込まれた第2の基板と、積層体の両端に配設された第1の基板および第2の基板の間に挟み込まれるようにして積層体に並設された第1の部材と、第1の基板および第1の部材を互いに引き寄せ、かつ第2の基板および第1の部材を互いに引き寄せる第2の部材とを備えた基板引寄せ具によって両第1の基板が互いに接近する向きに引き寄せられると共に、第1の基板および第2の基板が、積層体を構成する被積層物よりも高剛性に形成されて、積層体における被積層物の積層方向で燃料電池用膜電極接合体の枠材と重なる領域、並びにガス拡散層および電解質膜と重なる領域の双方において燃料電池用膜電極接合体以外の被積層物に対して面的に接触させられている。
【0023】
したがって、請求項1記載の燃料電池ユニットによれば、両第1の基板を互いに接近させる向きの力によって両第1の基板の間に積層されている各被積層物(積層体を構成するすべての被積層物)を一括して互いに押し付ける構成と比較して、第1の基板と第2の基板とを互いに接近させる向きの力によって互いに押し付けた状態とする被積層物の数を少なくすることができるため、「押付け力が積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに被積層物の外縁部領域に押付け力が集中する現象」の程度を十分に小さくすることができる。これにより、積層方向における各部において、発電用のガスや空気が漏出したり、発電用のガスや空気を通過させる溝部の変形、およびガス拡散層や触媒層の破損や、燃料電池用膜電極接合体の処理能力の低下を招いたりする事態を回避することができるため、燃料電池ユニットの発電効率を十分に向上させることができる。
【0024】
また、請求項1記載の燃料電池ユニットによれば、積層体を構成する各被積層物の積層方向が垂直方向と平行となるような設置状態において使用するときに、第1の基板と第2の基板との間の被積層物に基板引寄せ具によって加える押付け力をそれぞれ調整して、下方に位置させられる被積層物(すなわち、自身よりも上方に位置する被積層物が多い被積層物)に対して基板引寄せ具によって加える力を弱くし、かつ上方に位置させられる被積層物(すなわち、自身よりも上方に位置する被積層物が少ない被積層物)に対して基板引寄せ具によって加える力を強くすることで、積層方向の各部において、各被積層物に加わる押付け力(基板引寄せ具によって加えられる力と、自身よりも上方に位置する構成要素の自重によって加わる力との和)が積層方向の各部(すなわち、上下方向の各部)において大きく相違する状態となるのを好適に回避することができる。これにより、上方に位置する被積層物から発電用のガスや空気が漏出したり、下方に位置する被積層物において破損や処理能力の低下が生じたりするのを好適に回避することができる。
【0025】
請求項2記載の燃料電池ユニットによれば、積層体における被積層物の積層方向において並ぶように配設された一対の第1の部材を互いに引き寄せる第3の部材を備えて基板引寄せ具を構成したことにより、両第1の基板の間に複数枚の第2の基板を挟み込んだ場合においても、両第2の基板間の各被積層物に対して加わる押付け量を第3の部材によって好適に調整することができる。このため、積層方向における中央部の被積層物において発電用のガスや空気が漏出するのを確実に回避することができる。
【0026】
請求項3記載の燃料電池ユニットによれば、第1の基板と第1の部材との間、および第2の基板と第1の部材との間の少なくとも一方に圧縮弾性変形が可能な第4の部材を挟み込んだことにより、第1の基板と第2の基板とを互いに接近させる向きに引き寄せる力を弱めるだけで第4の部材の弾性復帰によって第1の基板と第2の基板とを互いに離間させることができるため、各被積層物に加わる押付け力を容易に調整することができる。
【0027】
請求項4記載の燃料電池ユニットによれば、導電性を有する材料で第2の基板を形成したことにより、第2の基板を挟んで配設されている被積層物同士を電気的に接続するための導電性材料の金具やケーブルを配設しなくても、第2の基板を挟んで配設されている被積層物同士を確実かつ容易に電気的に接続することができる。これにより、燃料電池ユニットを構成する部品点数を少数化し、かつ組立てに要する時間を短縮することができるため、その製造コストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】セパレータ11,12,14の外観斜視図である。
【
図7】燃料電池ユニット1Aにおける支持部材32a~32cおよびクランプ34a~34cの配置について説明するための説明図である。
【
図8】被積層物52ax~52rxの積層方向が垂直方向と平行となるようにした状態のユニット50xについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、燃料電池ユニットの実施の形態について説明する。
【0030】
図1に示す燃料電池ユニット1は、「燃料電池ユニット」の一例であって、発電用の気体(一例として、水素ガスおよび空気(大気:酸素))が供給されることで電力を生じさせることができるように構成されている。具体的には、燃料電池ユニット1は、積層体2、エンドプレート3a,3bおよび基板引寄せ具4を備えて構成されている。
【0031】
積層体2は、「積層体」の一例であって、
図2に示すように、複数の燃料電池セル10、および各燃料電池セル10の間に挟み込まれた複数のセパレータ14を備えている。また、各燃料電池セル10は、セパレータ11,12(「燃料電池用セパレータ」の一例)の間にMEA13(「燃料電池用膜電極接合体」の一例)が挟み込まれている。なお、本例の燃料電池ユニット1では、セパレータ11,12,14およびMEA13が「被積層物」に相当する。
【0032】
この場合、セパレータ11には、発電用の気体の一例である水素ガスを通過させるための溝部(図示せず)が形成され、セパレータ12には、水素ガスと反応させる発電用の気体の一例である空気(大気)を通過させるための溝部(図示せず)が形成され、セパレータ14には、各燃料電池セル10を発電に適した温度となるように温度調整するための温度調整用の流体の一例である空気(大気)を通過させるための溝部(図示せず)が形成されている。具体的には、
図3に示すように、セパレータ11,12,14は、一例として、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS316L、SUS316、SUS304)によって平板状に形成された複数の薄厚プレートの積層物で平面視矩形状に形成されると共に、水素ガス、空気(発電用)および空気(温度調整用)を自身および隣接する他のセパレータ11,12,14に対して供給したり排出したりするための流路を構成する複数の貫通孔(図示せず)が外縁部領域Aoに形成され、かつ上記の溝部が内側領域Aiに形成されている。
【0033】
また、
図4に示すように、MEA13は、電解質膜13a、触媒層13b,13b、ガス拡散層13c,13cおよびガスケット13d,13dを備えている。電解質膜13aは、「電解質膜」の一例であって、本例の燃料電池ユニット1では、セパレータ11,12,14と同様の平面視矩形状に形成されている。触媒層13bおよびガス拡散層13cは、「電解質膜に対して面的に接触させられる触媒層」および「燃料電池用セパレータに対して面的に接触させられるガス拡散層」の一例であって、電解質膜13aよりも小さい平面視矩形状に形成されている。ガスケット13dは、「燃料電池用セパレータに対して接触させられる一対の枠材」の一例であって、FKM(フッ素ゴム)やPTFE(ポリテトラルフルオロエチレン)などの合成樹脂材料によって、その外形がセパレータ11,12,14や電解質膜13aと同様で内形が触媒層13bやガス拡散層13cと同様の「ロ」字状(方形枠状)に形成されている。
【0034】
このMEA13は、一対のガスケット13d,13dの間に電解質膜13aが挟み込まれると共に、触媒層13bおよびガス拡散層13cが両ガスケット13dの内側にそれぞれ配設されている。この場合、このMEA13では、後述するように、セパレータ11,12の間に挟み込まれた状態で板厚方向(後述の「積層方向」)に圧縮されたときに、触媒層13bおよびガス拡散層13cが過剰に強い力で圧縮されることなく、ガスケット13dが電解質膜13aの外縁部領域13aoおよびセパレータ11,12の外側領域Aoに押し付けられると共に、ガス拡散層13cがセパレータ11,12の内側領域Aiに対して押し付けられるように構成されている。
【0035】
なお、本例の燃料電池ユニット1では、上記のセパレータ11,12,14において、積層体2を構成する被積層物の積層方向(
図1における左右方向)でMEA13の触媒層13bおよびガス拡散層13cと重なる領域に内側領域Aiが規定されて溝部が形成されると共に、積層方向においてガスケット13dと重なる領域に外縁部領域Aoが規定されて貫通孔等が形成されている。
【0036】
エンドプレート3a,3b(以下、区別しないときには「エンドプレート3」ともいう)は、「積層体の両端に配設された一対の第1の基板」の一例であって、本例の燃料電池ユニット1では、一例として、上記のセパレータ11,12,14を構成する薄厚プレートなどと同様にオーステナイト系ステンレス鋼によって平板状に形成されており、その厚みをセパレータ11,12,14やMEA13の厚みよりも厚くすることでセパレータ11,12,14やMEA13よりも高剛性に形成されている。このエンドプレート3は、上記の「積層方向」においてセパレータ11,12,14の外縁部領域Aoと重なる領域にセパレータ11,12,14の貫通孔に連通する貫通孔が形成され、「積層方向」でMEA13のガスケット13dと重なる領域、並びに触媒層13bやガス拡散層13cと重なる領域の双方においてMEA13以外の「被積層物」(セパレータ11,12,14のいずれか)に対して面的に接触可能に構成されている。
【0037】
基板引寄せ具4は、「両第1の基板を互いに接近させる方向に引き寄せる基板引寄せ具」の一例であって、
図1に示すように、ミドルプレート21a,21b、支持部材22a~22c、ボルト・ナット23a,23b、クランプ24a,24bおよびパッキン25a~25cなどを備えている。
【0038】
ミドルプレート21a,21b(以下、区別しないときには「ミドルプレート21」ともいう)は、「被積層物の間に挟み込まれた第2の基板」の一例であって、本例の燃料電池ユニット1では、ミドルプレート21がセパレータ11,12,14を構成する薄厚プレートなどと同様にオーステナイト系ステンレス鋼(「導電性を有する材料」の一例)によって平板状に形成されており、その厚みをセパレータ11,12,14の厚みよりも厚くすることでセパレータ11,12,14よりも高剛性となっている。なお、前述のように、電解質膜13a、触媒層13b、ガス拡散層13cおよびガスケット13dなどを重ね合わせて一体化したMEA13は、セパレータ11,12,14よりも剛性が低いため、ミドルプレート21は、このMEA13よりも高剛性となっている。
【0039】
また、本例の燃料電池ユニット1では、ミドルプレート21が導電性材料で形成されているため、ミドルプレート21に隣接している被積層物(セパレータ11,12,14のいずれか)同士がミドルプレート21を介して電気的に相互に接続された状態となっている。したがって、ミドルプレート21を非導電性材料で形成した構成とは異なり、ミドルプレート21に隣接している被積層物(セパレータ11,12,14のいずれか)同士を電気的に接続するための導電性材料の金具やケーブルが不要となっている。
【0040】
また、本例の燃料電池ユニット1におけるミドルプレート21は、「積層方向」においてセパレータ11,12,14の外縁部領域Aoと重なる領域内に、前述の貫通孔と同様の貫通孔が形成されているものの、その他の孔や開口が設けられておらず、「積層方向」でMEA13のガスケット13dと重なる領域、並びに触媒層13bおよびガス拡散層13cと重なる領域の双方においてMEA13以外の「被積層物」(セパレータ11,12,14のいずれか)に対して面的に接触可能に構成されている。
【0041】
なお、燃料電池ユニット1の構成に関する理解を容易とするために、以下、上記の積層体2におけるエンドプレート3aとミドルプレート21aとの間の部位を積層体2aといい、積層体2におけるミドルプレート21a,21b間の部位を積層体2bといい、積層体2におけるミドルプレート21bとエンドプレート3bとの間の部位を積層体2cともいう。
【0042】
支持部材22a~22c(以下、区別しないときには「支持部材22」ともいう)は、「第1の基板および第2の基板の間に挟み込まれるようにして積層体に並設された第1の部材」に相当し、一例として、エンドプレート3a,3b、セパレータ11,12,14およびミドルプレート21などと同様にオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。この場合、本例の燃料電池ユニット1では、各支持部材22が積層体2(各燃料電池セル10およびセパレータ14)の外周部に対して図示しない絶縁シート(一例として、シリコンゴム性のシート体)を介して接するように両エンドプレート3の間に配設されている。
【0043】
なお、燃料電池ユニット1の構成に関する理解を容易とするために、以下、各支持部材22と積層体2との間に配設された絶縁シートについての説明を省略する。この場合、本例の燃料電池ユニット1では、積層体2aの周囲に4つの支持部材22a,22a・・が配設され、これにより、積層体2aを構成する各燃料電池セル10およびセパレータ14が、
図1における上下方向および紙面奥手前方向において各支持部材22a,22a・・によって支持される構成が採用されている。
【0044】
また、本例の燃料電池ユニット1では、積層体2bの周囲に4つの支持部材22b,22b・・が配設され、これにより、積層体2bを構成する各燃料電池セル10およびセパレータ14が、同図における上下方向および紙面奥手前方向において各支持部材22b,22b・・によって支持される構成が採用されている。また、本例の燃料電池ユニット1では、積層体2cの周囲に4つの支持部材22c,22c・・が配設され、これにより、積層体2cを構成する各燃料電池セル10およびセパレータ14が、同図における上下方向および紙面奥手前方向において各支持部材22c,22c・・によって支持される構成が採用されている。
【0045】
なお、本例の燃料電池ユニット1では、両エンドプレート3a,3bの間に、セパレータ11,12,14のいずれかに接するようにしてミドルプレート21a,21bがそれぞれ挟み込まれている。このような構成の燃料電池ユニット1では、ミドルプレート21aを「第2の基板」としたときに、支持部材22aが、エンドプレート3a(第1の基板)とミドルプレート21aとの間に配設された「第1の部材」に相当すると共に、支持部材22b,22cおよびクランプ24bが相俟って、エンドプレート3b(第1の基板)とミドルプレート21aとの間に配設された「第1の部材」を構成する。また、本例の燃料電池ユニット1では、ミドルプレート21bを「第2の基板」としたときに、支持部材22a,22bおよびクランプ24aが相俟って、エンドプレート3aとミドルプレート21bとの間に配設された「第1の部材」に相当すると共に、支持部材22cが、エンドプレート3bとミドルプレート21bとの間に配設された「第1の部材」を構成する。
【0046】
ボルト・ナット23a,23b(以下、区別しないときには「ボルト・ナット23」ともいう)は、クランプ24a,24bと相俟って「第2の部材」を構成する。この場合、本例の燃料電池ユニット1では、ボルト・ナット23が、「第1の基板」および「第1の部材」を互いに引き寄せ可能に配設されている。なお、「第1の基板および第1の部材を互いに引き寄せる第2の部材」については、本例の燃料電池ユニット1におけるボルト・ナット23のボルトおよびナットの位置関係を入れ替えたり、エンドプレート3(第1の基板)に形成したネジ孔に対して積層体2(積層体)の側からボルトをねじ込む構成を採用したり、エンドプレート3(第1の基板)に対して積層体2(積層体)の側に突出するように植設したスタッドボルトに対して積層体2の側からナットを締め込む構成を採用したりすることができる。
【0047】
クランプ24a,24b(以下、区別しないときには「クランプ24」ともいう)は、前述のようにボルト・ナット23と相俟って「第2の部材」を構成すると共に、「第3の部材」を構成する。このクランプ24は、一例として、オーステナイト系ステンレス鋼で断面コ字状に形成された基材と、基材に設けられたネジ孔にねじ込まれたボルトとを備えて構成されている。この場合、本例の燃料電池ユニット1では、クランプ24が「第2の部材」として機能して「第2の基板」および「第1の部材」を互いに引き寄せると共に、「第3の部材」として機能して「積層体」における「被積層物」の積層方向において並ぶように配設された一対の「第1の部材」を互いに引き寄せることができるように構成されている。
【0048】
なお、「第2の基板および第1の部材を互いに引き寄せる第2の部材」および「第3の部材」については、本例のようなクランプ24(基材およびボルト)のような構成に限定されず、例えば、クランプ24aに代えて、支持部材22aのフランジ部、支持部材22bのフランジ部およびミドルプレート21aを挿通させたボルトにナットを締め込むことで、ミドルプレート21aおよび支持部材22aを互いに引き寄せ、かつ支持部材22a,22bを互いに引き寄せる構成を採用することができる。また、支持部材22a,22bのいずれか一方のフランジにネジ孔を形成し、支持部材22a,22bの他方およびミドルプレート21aに形成した挿通用孔を挿通させたボルトを上記のネジ孔にねじ込むことで、ミドルプレート21aおよび支持部材22aを互いに引き寄せ、かつ支持部材22a,22bを互いに引き寄せる構成を採用することもできる。また、支持部材22a,22bのいずれか一方のフランジ部にスタッドボルトを植設すると共に支持部材22a,22bの他方およびミドルプレート21aに形成した挿通用孔を挿通させたスタッドボルトにナットを締め込むことで、ミドルプレート21aおよび支持部材22aを互いに引き寄せ、かつ支持部材22a,22bを互いに引き寄せる構成を採用したりすることもできる。
【0049】
パッキン25a~25c(以下、区別しないときには「パッキン25」ともいう)は、「圧縮弾性変形が可能な第4の部材」の一例であって、本例の燃料電池ユニット1では、FKM(フッ素ゴム)やPTFE(ポリテトラルフルオロエチレン)などの「絶縁性を有する弾性材料」で形成されたガスケットで構成されている。なお、本例の燃料電池ユニット1では、エンドプレート3aと支持部材22aとの間、およびミドルプレート21aと支持部材22aとの間の双方にパッキン25aを挟み込み、ミドルプレート21aと支持部材22bとの間、およびミドルプレート21bと支持部材22bとの間にパッキン25bを挟み込み、かつエンドプレート3bと支持部材22cとの間、およびミドルプレート21bと支持部材22cとの間の双方にパッキン25cを挟み込む構成を採用しているが、2箇所のうちのいずれか一箇所だけにパッキン25aを挟み込んだり、2箇所のうちのいずれか一箇所だけにパッキン25bを挟み込んだり、2箇所のうちのいずれか一箇所だけにパッキン25cを挟み込んだりすることもできる。
【0050】
この燃料電池ユニット1では、複数の燃料電池セル10および複数のセパレータ14が積層された積層体2の両端にエンドプレート3a,3bが配設され(エンドプレート3a,3bの間に積層体2が挟み込まれ)、両エンドプレート3a,3bが基板引寄せ具4によって互いに接近する方向に引き寄せられることで、エンドプレート3a,3bの間において各燃料電池セル10(セパレータ11,12およびMEA13)および各セパレータ14等の被積層物が互いに密着させられると共に、両エンドプレート3a,3bに対して積層体2が密着させられている。
【0051】
この場合、この燃料電池ユニット1では、ボルト・ナット23aにおけるナットの締め込み量を調整することによってエンドプレート3aに対する支持部材22aの相対的な位置(エンドプレート3aに対する支持部材22aの相対的な接近量)が調整されると共に、ボルト・ナット23bにおけるナットの締め込み量を調整することによってエンドプレート3bに対する支持部材22cの相対的な位置(エンドプレート3bに対する支持部材22cの相対的な接近量)が調整される。また、この燃料電池ユニット1では、クランプ24aにおけるボルトの締め込み量を調整することによってミドルプレート21aに対する支持部材22a,22bの相対的な位置(ミドルプレート21aに対する支持部材22a,22bの相対的な接近量)が調整されると共に、クランプ24bにおけるボルトの締め込み量を調整することによってミドルプレート21bに対する支持部材22b,22cの相対的な位置(ミドルプレート21bに対する支持部材22b,22cの相対的な接近量)が調整される。
【0052】
したがって、この燃料電池ユニット1では、ボルト・ナット23a,23bにおけるナットの締め込み量、およびクランプ24a,24bにおけるボルトの締め込み量をそれぞれ調整することで、エンドプレート3aに対するミドルプレート21aの相対的な位置(エンドプレート3aに対するミドルプレート21aの相対的な接近量)、エンドプレート3bに対するミドルプレート21bの相対的な位置(エンドプレート3bに対するミドルプレート21bの相対的な接近量)、およびミドルプレート21aに対するミドルプレート21bの相対的な位置(ミドルプレート21aに対するミドルプレート21bの相対的な接近量)が調整される。
【0053】
これにより、本例の燃料電池ユニット1では、エンドプレート3aとミドルプレート21aとの間の積層体2aにおいて「積層方向」で隣接する各構成要素間に押付け力Pa(
図1参照)が作用し、エンドプレート3bとミドルプレート21bとの間の積層体2cにおいて「積層方向」で隣接する各構成要素間に押付け力Pc(
図1参照)が作用し、かつミドルプレート21a,21bの間の積層体2bにおいて「積層方向」で隣接する各構成要素間に押付け力Pb(
図1参照)が作用する状態となっている。
【0054】
なお、前述したように、本例の燃料電池ユニット1では、エンドプレート3aと支持部材22aとの間、および支持部材22aとミドルプレート21aとの間にパッキン25aがそれぞれ挟み込まれ、ミドルプレート21aと支持部材22bとの間、および支持部材22aとミドルプレート21bとの間にパッキン25bがそれぞれ挟み込まれ、かつエンドプレート3bと支持部材22bとの間、および支持部材22bとミドルプレート21bとの間にパッキン25cがそれぞれ挟み込まれている。
【0055】
したがって、この燃料電池ユニット1では、ボルト・ナット23aにおけるナットを緩めるだけで、パッキン25aの弾性復帰によってエンドプレート3aに対して支持部材22aを離間させることができ、クランプ24aにおけるボルトを緩めるだけで、パッキン25aの弾性復帰によってミドルプレート21aに対して支持部材22aを離間させ、かつパッキン25bの弾性復帰によってミドルプレート21aに対して支持部材22bを離間させることができる。また、この燃料電池ユニット1では、クランプ24bにおけるボルトを緩めるだけで、パッキン25bの弾性復帰によってミドルプレート21bに対して支持部材22bを離間させ、かつパッキン25cの弾性復帰によってミドルプレート21bに対して支持部材22cを離間させることができ、ボルト・ナット23bにおけるナットを緩めるだけで、パッキン25cの弾性復帰によってエンドプレート3bに対して支持部材22cを離間させることができる。
【0056】
ここで、本例の燃料電池ユニット1では、前述のように、エンドプレート3a,3bが、積層体2(積層体2a~2c)を構成する各被積層物(セパレータ11,12,14およびMEA13)よりも高剛性に形成されると共に、隣接する被積層物(セパレータ11,12,14)の全域に対して面的に接触するように構成されている。したがって、積層体2aを構成する各積層物のうちのエンドプレート3aに隣接しているセパレータについては、エンドプレート3a側の板面のほぼ全域がエンドプレート3aに対してほぼ均一な押付け力で押し付けられた状態となる。また、エンドプレート3aに対して押し付けられたセパレータにおけるMEA13側の板面は、ガスケット13dに対する外縁部領域Aoの押し付け力がガス拡散層13cに対する内側領域Aiの押し付け力よりも大きくなるように、外縁部領域Aoがガスケット13dに対して押し付けられ、かつ内側領域Aiがガス拡散層13cに対して押し付けられた状態となる。
【0057】
また、本例の燃料電池ユニット1では、前述のように、ミドルプレート21a,21bが、積層体2(積層体2a~2c)を構成する各被積層物(セパレータ11,12,14およびMEA13)よりも高剛性に形成されると共に、隣接する被積層物(セパレータ11,12,14)の全域に対して面的に接触するように構成されている。したがって、積層体2aを構成する各積層物のうちのミドルプレート21aに隣接しているセパレータについては、ミドルプレート21a側の板面のほぼ全域がミドルプレート21aに対してほぼ均一な押付け力で押し付けられた状態となる。また、エンドプレート3aに対して押し付けられたセパレータにおけるMEA13側の板面は、ガスケット13dに対する外縁部領域Aoの押し付け力がガス拡散層13cに対する内側領域Aiの押し付け力よりも大きくなるように、外縁部領域Aoがガスケット13dに対して押し付けられ、かつ内側領域Aiがガス拡散層13cに対して押し付けられた状態となる。
【0058】
一方、積層体2aを構成する各積層物のうちのエンドプレート3aやミドルプレート21aに隣接しているセパレータ以外のセパレータでは、MEA13側の板面については、外縁部領域Aoの押し付け力がガス拡散層13cに対する内側領域Aiの押し付け力よりも大きくなるように、外縁部領域Aoがガスケット13dに対して押し付けられ、かつ内側領域Aiがガス拡散層13cに対して押し付けられた状態となる。また、このセパレータにおけるMEA13側の板面の裏面側については、その外縁部領域Ao(MEA13側の板面がガスケット13dに対して強い力で押し付けられている領域)が他のセパレータに対して強い力で押し付けられ、かつ内側領域Ai(MEA13側の板面がガス拡散層13cに対してやや弱い力で押し付けられている部位)が他のセパレータに対してやや弱い力で押し付けられた状態となる。
【0059】
したがって、この燃料電池ユニット1では、例えば、ボルト・ナット23aにおけるナットの締込み、およびクランプ24aにおけるボルトの締込みによってエンドプレート3aおよびミドルプレート21aに対して加えられた力(エンドプレート3aおよびミドルプレート21aを互いに接近させようとする力)が、エンドプレート3aおよびミドルプレート21aの間の積層体2aを構成する各被積層物に対して、積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに、MEA13を構成する触媒層13bやガス拡散層13cが過剰に強い力で圧縮されて処理能力が低下する状態となるのを回避できるものの、積層方向の中央部寄りの被積層物ほど(エンドプレート3aやミドルプレート21aから離間する被積層物ほど)、自身よりも中央部寄りの被積層物に対する押付け力が外縁部領域Ao側に集中する現象が生じる。
【0060】
しかしながら、エンドプレート3aとミドルプレート21aとの間に積層されている被積層物の枚数は、エンドプレート3a,3bの間に存在する被積層物の枚数よりも少数となっている。したがって、例えば、エンドプレート3a,3bを互いに接近させることでエンドプレート3a,3bの間の積層体2を構成する各被積層物を一括して密着させたときよりも、エンドプレート3aおよびミドルプレート21aを互いに接近させることでエンドプレート3aとミドルプレート21aとの間の積層体2aを構成する各被積層物を互いに密着させたときの方が、上記の「押付け力が積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに外縁部領域Aoに押付け力が集中する現象」が生じる箇所が少数となる。
【0061】
このため、本例の燃料電池ユニット1では、積層体2aにおける積層方向の両端側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位(MEA13のガス拡散層13cや、セパレータ11,12,14における内側領域Ai)に押し付けられる押付け力と、積層方向における中央部側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位(MEA13のガス拡散層13cや、セパレータ11,12,14における内側領域Ai)に押し付けられる押付け力との差が十分に小さくなっている。なお、詳細な説明を省略するが、エンドプレート3bとミドルプレート21bとの間の積層体2cや、ミドルプレート21a,21bの間の積層体2bについても、上記の積層体2aと同様にして、積層方向の両端側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位に押し付けられる押付け力と、積層方向における中央部側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位に押し付けられる押付け力との差が十分に小さくなっている。
【0062】
つまり、この燃料電池ユニット1では、エンドプレート3a,3bの間の積層体2についてミドルプレート21a,21bの挟み込みよって分割された積層体2a~2c毎にボルト・ナット23a,23bやクランプ24a,24bによって押付け力を加える構成を採用したことで、積層体2a~2cの積層方向における中央部において外縁部領域Aoに押付け力が集中する度合いを低減し、これにより、積層方向のいずれの位置においても、MEA13のガス拡散層13cに対してセパレータ11,12の内側領域Aiを好適な押付け力で押し付け、かつセパレータ11,12の内側領域Aiに対してセパレータ14の内側領域Aiを好適な押付け力で押し付けた状態とすることが可能となっている。
【0063】
このように、この燃料電池ユニット1では、積層体2を構成する被積層物の間に挟み込まれたミドルプレート21a,21bと、積層体2の両端に配設されたエンドプレート3a,3bおよびミドルプレート21a,21bの間に挟み込まれるようにして積層体2に並設された支持部材22a~22cと、エンドプレート3a,3bおよび支持部材22a~22cを互いに引き寄せ、かつミドルプレート21a,21bおよび支持部材22a~22cを互いに引き寄せるボルト・ナット23a,23bおよびクランプ24a,24bとを備えた基板引寄せ具4によって両エンドプレート3a,3bが互いに接近する向きに引き寄せられると共に、エンドプレート3a,3bおよびミドルプレート21a,21bが、積層体2を構成する被積層物よりも高剛性に形成されて、積層体2における被積層物の積層方向でMEA13のガスケット13dと重なる領域およびMEA13のガス拡散層13cや触媒層13bと重なる領域の双方においてMEA13以外の被積層物(セパレータ11,12,14のいずれか)に対して面的に接触させられている。
【0064】
したがって、この燃料電池ユニット1によれば、エンドプレート3a,3bを互いに接近させる向きの力によってエンドプレート3a,3bの間に積層されている各被積層物(積層体2を構成するすべての被積層物)を一括して互いに押し付ける構成と比較して、エンドプレート3aとミドルプレート21aとを互いに接近させる向きの力によって互いに押し付けた状態とする被積層物の数、ミドルプレート21a,21bを互いに接近させる向きの力によって互いに押し付けた状態とする被積層物の数、およびエンドプレート3bとミドルプレート21bとを互いに接近させる向きの力によって互いに押し付けた状態とする被積層物の数を少なくすることができるため、「押付け力が積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに被積層物の外縁部領域Aoに押付け力が集中する現象」の程度を十分に小さくすることができる。これにより、積層方向における各部において、水素ガス等が漏出したり、水素ガスや空気を通過させる溝部の変形、触媒層13bやガス拡散層13cの破損、およびMEA13の処理能力の低下を招いたりする事態を回避することができるため、燃料電池ユニット1の発電効率を十分に向上させることができる。
【0065】
また、この燃料電池ユニット1によれば、積層体2における被積層物の積層方向において並ぶように配設された一対の支持部材22a,22bおよび支持部材22b,22cを互いに引き寄せるクランプ24a,24bを備えて基板引寄せ具4を構成したことにより、エンドプレート3a,3bの間に複数枚のミドルプレート21a,21bを挟み込んだ場合においても、ミドルプレート21a,21b間の各被積層物に対して加わる押付け量をクランプ24a,24bにおけるボルトの締込み量によって好適に調整することができる。このため、積層方向における中央部の被積層物において水素ガス等が漏出するのを確実に回避することができる。
【0066】
また、この燃料電池ユニット1によれば、エンドプレート3a,3bと支持部材22a,22cとの間、およびミドルプレート21a,21bと支持部材22a~22cとの間の少なくとも一方(本例では双方)に圧縮弾性変形が可能なパッキン25a~25cを挟み込んだことにより、エンドプレート3aとミドルプレート21aとを互いに接近させる向きに引き寄せる力を弱めるだけでパッキン25a,25aの弾性復帰によってエンドプレート3aとミドルプレート21aとを互いに離間させることができ、ミドルプレート21a,21bを互いに接近させる向きに引き寄せる力を弱めるだけでパッキン25b,25bの弾性復帰によってミドルプレート21a,21bを互いに離間させることができ、かつエンドプレート3bとミドルプレート21bとを互いに接近させる向きに引き寄せる力を弱めるだけでパッキン25c,25cの弾性復帰によってエンドプレート3bとミドルプレート21bとを互いに離間させることができるため、各被積層物に加わる押付け力Pa~Pcを容易に調整することができる。
【0067】
また、この燃料電池ユニット1によれば、導電性を有する材料でミドルプレート21a,21bを形成したことにより、ミドルプレート21aを挟んで配設されている被積層物同士を電気的に接続するための導電性材料の金具やケーブルを配設したり、ミドルプレート21bを挟んで配設されている被積層物同士を電気的に接続するための導電性材料の金具やケーブルを配設したりしなくても、ミドルプレート21a,21bを挟んで配設されている被積層物同士を確実かつ容易に電気的に接続することができる。これにより、燃料電池ユニット1を構成する部品点数を少数化し、かつ組立てに要する時間を短縮することができるため、その製造コストを十分に低減することができる。
【0068】
次に、「燃料電池ユニット」の他の実施の形態について説明する。なお、上記の燃料電池ユニット1の構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0069】
図5,6に示す燃料電池ユニット1Aは、「燃料電池ユニット」の他の一例であって、前述の燃料電池ユニット1と同様にして、発電用の気体が供給されることで電力を生じさせることができるように構成されている。この燃料電池ユニット1Aは、燃料電池ユニット1における基板引寄せ具4に代えて基板引寄せ具4aを備え、積層体2を構成する各被積層物の積層方向が垂直方向と平行になるような設置状態においても好適に発電をすることができるように構成されている。この場合、基板引寄せ具4aは、「両第1の基板を互いに接近させる方向に引き寄せる基板引寄せ具」の他の一例であって、ミドルプレート21a,21b、支持部材32a~32c、ボルト・ナット33a~33c、クランプ34a~34cおよびパッキン35a~35cを備えている。
【0070】
支持部材32a~32c(以下、区別しないときには「支持部材32」ともいう)は、「第1の基板および第2の基板の間に挟み込まれるようにして積層体に並設された第1の部材」の他の一例であって、前述の基板引寄せ具4における各支持部材22と同様にして、オーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。この場合、本例の燃料電池ユニット1Aでは、各支持部材32が積層体2(各燃料電池セル10およびセパレータ14)の外周部に対して図示しない絶縁シート(一例として、シリコンゴム性のシート体)を介して接するように両エンドプレート3の間に配設されている。
【0071】
なお、燃料電池ユニット1Aの構成に関する理解を容易とするために、以下、各支持部材32と積層体2との間に配設された絶縁シートについての説明を省略する。この場合、本例の燃料電池ユニット1では、
図5,7に示すように、積層体2aの周囲に積層体2aを挟んで2つの支持部材32a,32aが対向配設され、これにより、積層体2aを構成する各燃料電池セル10およびセパレータ14が、
図7における左右方向において各支持部材32a,32aによって支持される構成が採用されている。
【0072】
また、本例の燃料電池ユニット1では、
図6,7に示すように、積層体2bの周囲に積層体2bを挟んで2つの支持部材32b,32bが対向配設され、これにより、積層体2bを構成する各燃料電池セル10およびセパレータ14が、
図7における上下方向において各支持部材32b,32bによって支持される構成が採用されている。さらに、本例の燃料電池ユニット1では、
図5,7に示すように、積層体2cの周囲に積層体2cを挟んで2つの支持部材32c,32cが対向配設され、これにより、積層体2cを構成する各燃料電池セル10およびセパレータ14が、
図7における左右方向において各支持部材32c,32cによって支持される構成が採用されている。
【0073】
なお、本例の燃料電池ユニット1Aでは、両エンドプレート3a,3bの間に、セパレータ11,12,14のいずれかに接するようにしてミドルプレート21aおよびミドルプレート21bがそれぞれ挟み込まれている。このような構成の燃料電池ユニット1Aでは、ミドルプレート21aを「第2の基板」としたときに、支持部材32aが、エンドプレート3a(第1の基板)とミドルプレート21aとの間に配設された「第1の部材」に相当すると共に、支持部材32b,32c、ボルト・ナット33b、クランプ34b,34cおよびミドルプレート21bが相俟って、エンドプレート3b(第1の基板)とミドルプレート21aとの間に配設された「第1の部材」を構成する。また、本例の燃料電池ユニット1Aでは、ミドルプレート21bを「第2の基板」としたときに、支持部材32a,32b、ボルト・ナット33b、クランプ34a,34bおよびミドルプレート21aが相俟って、エンドプレート3aとミドルプレート21bとの間に配設された「第1の部材」に相当すると共に、支持部材32cが、エンドプレート3bとミドルプレート21bとの間に配設された「第1の部材」を構成する。
【0074】
ボルト・ナット33a~33c(以下、区別しないときには「ボルト・ナット33」ともいう)のうち、ボルト・ナット33a,33cは、クランプ34a,34cと相俟って「第2の部材」を構成し、ボルト・ナット33bは、「第5の部材」を構成する。この場合、本例の燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33a,33cが、「第1の基板」および「第1の部材」を互いに引き寄せ可能に配設され、ボルト・ナット33bが、隣合う2つの「第2の基板」を互いに引き寄せ可能に配設されている。なお、「第2の部材」や「第5の部材」については、本例の燃料電池ユニット1Aにおけるボルト・ナット33のボルトおよびナットの位置関係を入れ替えたり、エンドプレート3(第1の基板)や支持部材32(第1の部材)またはミドルプレート21(第2の基板)に形成したネジ孔に対してボルトをねじ込む構成を採用したり、エンドプレート3(第1の基板)やミドルプレート21に対して積層体2(積層体)の側に突出するように植設したスタッドボルトに対して積層体2の側からナットを締め込む構成を採用したりすることができる。
【0075】
クランプ34a~34c(以下、区別しないときには「クランプ34」ともいう)のうち、クランプ34a,34cは、前述のようにボルト・ナット33a,33cと相俟って「第2の部材」を構成する。このクランプ34は、一例として、オーステナイト系ステンレス鋼で断面コ字状に形成された基材と、基材に設けられたネジ孔にねじ込まれたボルトとを備えて構成されている。この場合、本例の燃料電池ユニット1Aでは、クランプ34が「第2の部材」として機能して「第2の基板」および「第1の部材」を互いに引き寄せることができるように構成されている。
【0076】
なお、「第2の基板および第1の部材を互いに引き寄せる第2の部材」については、本例のようなクランプ34(基材およびボルト)のような構成に限定されず、例えば、クランプ34aに代えて、支持部材32aのフランジ部およびミドルプレート21aを挿通させたボルトにナットを締め込むことで、ミドルプレート21aおよび支持部材32aを互いに引き寄せる構成を採用することができる。また、支持部材32aのフランジにネジ孔を形成し、ミドルプレート21aに形成した挿通用孔を挿通させたボルトを上記のネジ孔にねじ込むことで、ミドルプレート21aおよび支持部材32aを互いに引き寄せる構成を採用することもできる。また、支持部材32aのフランジ部およびミドルプレート21aのいずれか一方にスタッドボルトを植設すると共に支持部材32aのフランジ部およびミドルプレート21aの他方に形成した挿通用孔を挿通させたスタッドボルトにナットを締め込むことで、ミドルプレート21aおよび支持部材32aを互いに引き寄せる構成を採用したりすることもできる。
【0077】
パッキン35a~35c(以下、区別しないときには「パッキン35」ともいう)は、「圧縮弾性変形が可能な第4の部材」の他の一例であって、本例の燃料電池ユニット1Aでは、FKM(フッ素ゴム)やPTFE(ポリテトラルフルオロエチレン)などの「絶縁性を有する弾性材料」で形成されたガスケットで構成されている。なお、本例の燃料電池ユニット1Aでは、エンドプレート3aと支持部材32aとの間、およびミドルプレート21aと支持部材32aとの間の双方にパッキン35aを挟み込み、ミドルプレート21aと支持部材32bとの間、およびミドルプレート21bと支持部材32bとの間にパッキン35bを挟み込み、かつエンドプレート3bと支持部材32cとの間、およびミドルプレート21bと支持部材32cとの間の双方にパッキン35cを挟み込む構成を採用しているが、2箇所のうちのいずれか一箇所だけにパッキン35aを挟み込んだり、2箇所のうちのいずれか一箇所だけにパッキン35bを挟み込んだり、2箇所のうちのいずれか一箇所だけにパッキン35cを挟み込んだりすることもできる。
【0078】
この燃料電池ユニット1Aでは、複数の燃料電池セル10および複数のセパレータ14が積層された積層体2の両端にエンドプレート3a,3bが配設され(エンドプレート3a,3bの間に積層体2が挟み込まれ)、両エンドプレート3a,3bが基板引寄せ具4aによって互いに接近する方向に引き寄せられることで、エンドプレート3a,3bの間において各燃料電池セル10(セパレータ11,12およびMEA13)および各セパレータ14等の被積層物が互いに密着させられると共に、両エンドプレート3a,3bに対して積層体2が密着させられている。
【0079】
この場合、この燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33aにおけるナットの締め込み量を調整することによってエンドプレート3aに対する支持部材32aの相対的な位置(エンドプレート3aに対する支持部材32aの相対的な接近量)が調整される。また、この燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33bにおけるナットの締め込み量を調整することによってミドルプレート21aに対する支持部材32bの相対的な位置(ミドルプレート21aに対する支持部材32bの相対的な接近量)が調整される。さらに、この燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33cにおけるナットの締め込み量を調整することによってエンドプレート3bに対する支持部材32cの相対的な位置(エンドプレート3bに対する支持部材32cの相対的な接近量)が調整される。
【0080】
また、この燃料電池ユニット1Aでは、クランプ34aにおけるボルトの締め込み量を調整することによってミドルプレート21aに対する支持部材32aの相対的な位置(ミドルプレート21aに対する支持部材32aの相対的な接近量)が調整され、クランプ34bにおけるボルトの締め込み量を調整することによってミドルプレート21bに対する支持部材32bの相対的な位置(ミドルプレート21bに対する支持部材32bの相対的な接近量)が調整され、クランプ34cにおけるボルトの締め込み量を調整することによってミドルプレート21bに対する支持部材32cの相対的な位置(ミドルプレート21bに対する支持部材32cの相対的な接近量)が調整される。
【0081】
したがって、この燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33aにおけるナットの締め込み量、およびクランプ34aにおけるボルトの締め込み量をそれぞれ調整することで、エンドプレート3aに対するミドルプレート21aの相対的な位置(エンドプレート3aに対するミドルプレート21aの相対的な接近量)が調整され、ボルト・ナット33bにおけるナットの締め込み量、およびクランプ34bにおけるボルトの締め込み量をそれぞれ調整することで、ミドルプレート21a,21bの相対的な位置(ミドルプレート21a,21bの相対的な接近量)が調整され、かつボルト・ナット33cにおけるナットの締め込み量、およびクランプ34cにおけるボルトの締め込み量をそれぞれ調整することで、エンドプレート3bに対するミドルプレート21bの相対的な位置(エンドプレート3bに対するミドルプレート21bの相対的な接近量)が調整される。
【0082】
これにより、本例の燃料電池ユニット1Aでは、エンドプレート3aとミドルプレート21aとの間の積層体2aにおいて「積層方向」で隣接する各構成要素間に押付け力Pa(
図5参照)をボルト・ナット33aにおけるナットの締め込み量、およびクランプ34aにおけるボルトの締め込み量によって調整し、ミドルプレート21a,21bの間の積層体2bにおいて「積層方向」で隣接する各構成要素間に押付け力Pb(
図5参照)をボルト・ナット33bにおけるナットの締め込み量、およびクランプ34bにおけるボルトの締め込み量によって調整し、かつエンドプレート3bとミドルプレート21bとの間の積層体2cにおいて「積層方向」で隣接する各構成要素間に押付け力Pc(
図5参照)をボルト・ナット33cにおけるナットの締め込み量、およびクランプ34cにおけるボルトの締め込み量によって調整することが可能となっている。
【0083】
なお、本例の燃料電池ユニット1Aでは、エンドプレート3aと支持部材32aとの間、および支持部材32aとミドルプレート21aとの間にパッキン35aがそれぞれ挟み込まれ、ミドルプレート21aと支持部材32bとの間、および支持部材32bとミドルプレート21bとの間にパッキン35bがそれぞれ挟み込まれ、かつエンドプレート3bと支持部材32cとの間、および支持部材32cとミドルプレート21bとの間にパッキン35cがそれぞれ挟み込まれている。
【0084】
したがって、この燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33aにおけるナットを緩めるだけで、パッキン35aの弾性復帰によってエンドプレート3aに対して支持部材32aを離間させることができ、クランプ34aにおけるボルトを緩めるだけで、パッキン35aの弾性復帰によってミドルプレート21aに対して支持部材32aを離間させることができる。また、この燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33bにおけるナットを緩めるだけで、パッキン35bの弾性復帰によってミドルプレート21aに対して支持部材32bを離間させることができ、クランプ34bにおけるボルトを緩めるだけで、パッキン35bの弾性復帰によってミドルプレート21bに対して支持部材32bを離間させることができる。また、この燃料電池ユニット1Aでは、ボルト・ナット33cにおけるナットを緩めるだけで、パッキン35cの弾性復帰によってエンドプレート3bに対して支持部材32cを離間させることができ、クランプ34cにおけるボルトを緩めるだけで、パッキン35cの弾性復帰によってミドルプレート21bに対して支持部材32cを離間させることができる。
【0085】
ここで、本例の燃料電池ユニット1Aでは、前述の燃料電池ユニット1と同様にして、エンドプレート3a,3bが、積層体2(積層体2a~2c)を構成する各被積層物(セパレータ11,12,14およびMEA13)よりも高剛性に形成されると共に、隣接する被積層物(セパレータ11,12,14)の全域に対して面的に接触するように構成されている。したがって、積層体2aを構成する各積層物のうちのエンドプレート3aに隣接しているセパレータについては、エンドプレート3a側の板面のほぼ全域がエンドプレート3aに対してほぼ均一な押付け力で押し付けられた状態となる。また、エンドプレート3aに対して押し付けられたセパレータにおけるMEA13側の板面は、外縁部領域AoがMEA13のガスケット13dに対して押し付けられ、かつ内側領域Aiがガス拡散層13cに対して押し付けられた状態となる。この結果、このセパレータにおいては、ガスケット13dに対する外縁部領域Aoの押し付け力がガス拡散層13cに対する内側領域Aiの押し付け力よりも大きくなる。
【0086】
また、本例の燃料電池ユニット1Aでは、前述の燃料電池ユニット1と同様にして、ミドルプレート21a,21bが、積層体2(積層体2a~2c)を構成する各被積層物(セパレータ11,12,14およびMEA13)よりも高剛性に形成されると共に、隣接する被積層物(セパレータ11,12,14)の全域に対して面的に接触するように構成されている。したがって、積層体2aを構成する各積層物のうちのミドルプレート21aに隣接しているセパレータについては、ミドルプレート21a側の板面のほぼ全域がミドルプレート21aに対してほぼ均一な押付け力で押し付けられた状態となり、このセパレータにおけるMEA13側の板面は、外縁部領域AoがMEA13のガスケット13dに対して強い力で押し付けられ、かつ内側領域Aiがガスケット13dに対する外縁部領域Aoの押付け力よりも弱い力でガス拡散層13cに対して押し付けられた状態となる。
【0087】
一方、積層体2aを構成する各積層物のうちのエンドプレート3aやミドルプレート21aに隣接しているセパレータ以外のセパレータでは、MEA13側の板面については、その外縁部領域AoがMEA13のガスケット13dに対して強い力で押し付けられ、かつ内側領域Aiがガスケット13dに対する外縁部領域Aoの押付け力よりも弱い力でガス拡散層13cに対して押し付けられた状態となり、MEA13側の板面の裏面側については、その外縁部領域Ao(MEA13側の板面がガスケット13dに対して強い力で押し付けられている領域)が他のセパレータに対して強い力で押し付けられ、かつ内側領域Ai(MEA13側の板面がガス拡散層13cに対してやや弱い力で押し付けられている部位)が他のセパレータに対してやや弱い力で押し付けられた状態となる。
【0088】
したがって、この燃料電池ユニット1Aでは、例えば、ボルト・ナット33aにおけるナットの締込み、およびクランプ34aにおけるボルトの締込みによってエンドプレート3aおよびミドルプレート21aに対して加えられた力(エンドプレート3aおよびミドルプレート21aを互いに接近させようとする力)が、エンドプレート3aおよびミドルプレート21aの間の積層体2aを構成する各被積層物に対して、積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに、MEA13を構成する触媒層13bやガス拡散層13cが過剰に強い力で圧縮されて処理能力が低下する状態となるのを回避できるものの、積層方向の中央部寄りの被積層物ほど(エンドプレート3aやミドルプレート21aから離間する被積層物ほど)、自身よりも中央部寄りの被積層物に対する押付け力が外縁部領域Ao側に集中する現象が生じる。
【0089】
しかしながら、エンドプレート3aとミドルプレート21aとの間に積層されている被積層物の枚数は、エンドプレート3a,3bの間に存在する被積層物の枚数よりも少数となっている。したがって、例えば、エンドプレート3a,3bを互いに接近させることでエンドプレート3a,3bの間の積層体2を構成する各被積層物を一括して密着させたときよりも、エンドプレート3aおよびミドルプレート21aを互いに接近させることでエンドプレート3aとミドルプレート21aとの間の積層体2aを構成する各被積層物を互いに密着させたときの方が、上記の「押付け力が積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに押付け力が外縁部領域Aoに集中する現象」が生じる箇所が少数となる。
【0090】
このため、本例の燃料電池ユニット1Aでは、積層体2aにおける積層方向の両端側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位(MEA13のガス拡散層13cや、セパレータ11,12,14における内側領域Ai)に押し付けられる押付け力と、積層方向における中央部側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位(MEA13のガス拡散層13cや、セパレータ11,12,14における内側領域Ai)に押し付けられる押付け力との差が十分に小さくなっている。なお、詳細な説明を省略するが、エンドプレート3bとミドルプレート21bとの間の積層体2cや、ミドルプレート21a,21bの間の積層体2bについても、上記の積層体2aと同様にして、積層方向の両端側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位に押し付けられる押付け力と、積層方向における中央部側の被積層物において他の被積層物に対する内側部位に押し付けられる押付け力との差が十分に小さくなっている。
【0091】
つまり、この燃料電池ユニット1Aでは、前述の燃料電池ユニット1と同様にして、エンドプレート3a,3bの間の積層体2についてミドルプレート21a,21bの挟み込みよって分割された積層体2a~2c毎にボルト・ナット33a,33cやクランプ34a,34bによって押付け力を加える構成を採用したことで、積層体2a~2cの積層方向における中央部において外縁部領域Aoに押付け力が集中する度合いを低減し、これにより、積層方向のいずれの位置においても、MEA13のガス拡散層13cに対してセパレータ11,12の内側領域Aiを好適な押付け力で押し付け、かつセパレータ11,12の内側領域Aiに対してセパレータ14の内側領域Aiを好適な押付け力で押し付けた状態とすることが可能となっている。
【0092】
一方、本例の燃料電池ユニット1Aでは、
図5,6に示すように積層体2を構成する各被積層物の積層方向が垂直方向と平行になるように設置したときに、積層体2を構成する各被積層物に対して、エンドプレート3bの自重、および自身よりも上方に積層されている被積層物の自重などの和に応じた下向きの力が加わった状態となる。このため、積層方向の最上部に配置されている被積層物は、自身の自重、およびエンドプレート3bの自重等の和に前述の押付け力Pcを加えた力で上から2番目の被積層物に対して押し付けられた状態となるのに対し、積層方向における最下部に配置されている被積層物には、最下部から2番目までの多数の被積層物の自重、およびエンドプレート3bの自重等の和に押付け力Paを加えた力で最下部から2番目の被積層物が押し付けられた状態となる。つまり、各被積層物の積層方向が垂直方向と平行となるように燃料電池ユニット1Aを設置したときには、積層方向の上側に位置する被積層物(例えば、積層体2cを構成する被積層物)よりも、積層方向の下側に位置する被積層物(例えば、積層体2aを構成する被積層物)の方が、隣接する被積層物に対する押付け力が大きくなる傾向がある。
【0093】
そこで、各被積層物の積層方向が垂直方向と平行になるように燃料電池ユニット1Aを設置して使用するときには、積層体2cに対して加える押付け力Pcよりも積層体2bに対して加える押付け力Pbを小さくすると共に、積層体2bに対して加える押付け力Pbよりも積層体2aに対して加える押付け力Paを小さくする。具体的には、押付け力Pbが、積層体2cおよびミドルプレート21bの自重等の分だけ押付け力Pcよりも弱くなり、押付け力Pcが、積層体2b,2cおよびミドルプレート21a,21bの自重等の分だけ押付け力Pbよりも弱くなるように押付け力Pa~Pcを調整する。
【0094】
より具体的には、積層体2cについては、積層体2cを構成する各被積層物のうちの上方に位置する被積層物において水素ガスなどが漏出することがなく、かつ下方に位置する被積層物において変形や破損などが生じたり処理能力が低下したりすることのない押付け力で各被積層物が密着させられた状態となるように、エンドプレート3bの自重と、各被積層物の上方に位置する被積層物(積層体2cを構成する被積層物)の自重とを考慮して、ボルト・ナット33cにおけるナットの締め込み、およびクランプ34cにおけるボルトの締め込みによって加える押付け力Pcを調整する。
【0095】
また、積層体2bについては、積層体2bを構成する各被積層物のうちの上方に位置する被積層物において水素ガスなどが漏出することがなく、かつ下方に位置する被積層物において変形や破損などが生じたり処理能力が低下したりすることのない押付け力で各被積層物が密着させられた状態となるように、エンドプレート3bの自重と、各被積層物の上方に位置する被積層物(積層体2cを構成する被積層物、積層体2bを構成する被積層物およびミドルプレート21b)の自重などを考慮して、ボルト・ナット33bにおけるナットの締め込み、およびクランプ34bにおけるボルトの締め込みによって加える押付け力Pbを調整する。
【0096】
さらに、積層体2aについては、積層体2aを構成する各被積層物のうちの上方に位置する被積層物において水素ガスなどが漏出することがなく、かつ下方に位置する被積層物において変形や破損などが生じたり処理能力が低下したりすることのない押付け力で各被積層物が密着させられた状態となるように、エンドプレート3bの自重と、各被積層物の上方に位置する被積層物(積層体2cを構成する被積層物、積層体2bを構成する被積層物、積層体2aを構成する被積層物、およびミドルプレート21a,21b)の自重などを考慮して、ボルト・ナット33aにおけるナットの締め込み、およびクランプ34aにおけるボルトの締め込みによって加える押付け力Pcを調整する。
【0097】
このような調整を行うことで、積層体2aを構成する各被積層物の隣接する積層物に対する押付け力の平均値、積層体2bを構成する各被積層物の隣接する積層物に対する押付け力の平均値、および積層体2cを構成する各被積層物の隣接する積層物に対する押付け力の平均値をほぼ同等とすることができる。これにより、この燃料電池ユニット1Aでは、積層体2を構成する各被積層物について、積層方向の下側に位置する被積層物(積層体2aを構成する被積層物)が隣接する他の被積層物に対して過剰に強い力で押し付けられることがないため、MEA13における処理能力の低下やMEA13(触媒層13bおよびガス拡散層13c)の破損、およびセパレータ11,12,14における溝部の変形が好適に回避されると共に、積層方向の上側に位置する被積層物を隣接する他の被積層物に対して押し付ける力が弱くなり過ぎることがないため、水素ガス等の漏出が好適に回避される。
【0098】
このように、この燃料電池ユニット1Aでは、積層体2を構成する被積層物の間に挟み込まれたミドルプレート21a,21bと、積層体2の両端に配設されたエンドプレート3a,3bおよびミドルプレート21a,21bの間に挟み込まれるようにして積層体2に並設された支持部材32a~32cと、エンドプレート3a,3bおよび支持部材32a~32cを互いに引き寄せ、かつミドルプレート21a,21bおよび支持部材32a~32cを互いに引き寄せるボルト・ナット33a,33cおよびクランプ34a~34cとを備えた基板引寄せ具4aによって両エンドプレート3a,3bが互いに接近する向きに引き寄せられると共に、エンドプレート3a,3bおよびミドルプレート21a,21bが、積層体2を構成する被積層物よりも高剛性に形成されて、積層体2における被積層物の積層方向でMEA13のガスケット13dと重なる領域およびMEA13の触媒層13bやガス拡散層13cと重なる領域の双方においてMEA13以外の被積層物(セパレータ11,12,14のいずれか)に対して面的に接触させられている。
【0099】
したがって、この燃料電池ユニット1Aによれば、エンドプレート3a,3bを互いに接近させる向きの力によってエンドプレート3a,3bの間に積層されている各被積層物(積層体2を構成するすべての被積層物)を一括して互いに押し付ける構成と比較して、エンドプレート3aとミドルプレート21aとを互いに接近させる向きの力によって互いに押し付けた状態とする被積層物の数、ミドルプレート21a,21bを互いに接近させる向きの力によって互いに押し付けた状態とする被積層物の数、およびエンドプレート3bとミドルプレート21bとを互いに接近させる向きの力によって互いに押し付けた状態とする被積層物の数を少なくすることができるため、「押付け力が積層方向の中央部に向かって順次伝達されるときに被積層物の外縁部領域Aoに押付け力が集中する現象」の程度を十分に小さくすることができる。これにより、積層方向における各部において、水素ガス等が漏出したり、水素ガスや空気を通過させる溝部の変形、触媒層13bやガス拡散層13cの破損、およびMEA13の処理能力の低下を招いたりする事態を回避することができるため、燃料電池ユニット1の発電効率を十分に向上させることができる。
【0100】
また、この燃料電池ユニット1Aによれば、積層体2を構成する各被積層物の積層方向が垂直方向と平行となるような設置状態において使用するときに、エンドプレート3aとミドルプレート21aとの間の被積層物に加える押付け力Paをボルト・ナット33aにおけるナットの締込み量、およびクランプ34aにおけるボルトの締込み量によって調整し、ミドルプレート21a,21bの間の被積層物に加える押付け力Pbをボルト・ナット33bにおけるナットの締込み量、およびクランプ34bにおけるボルトの締込み量によって調整し、かつエンドプレート3bとミドルプレート21bとの間の被積層物に加える押付け力Pcをボルト・ナット33cにおけるナットの締込み量、およびクランプ34cにおけるボルトの締込み量によって調整して、下方に位置させられる被積層物(すなわち、自身よりも上方に位置する被積層物が多い被積層物)に対して基板引寄せ具4aによって加える力を弱くし、かつ上方に位置させられる被積層物(すなわち、自身よりも上方に位置する被積層物が少ない被積層物)に対して基板引寄せ具4aによって加える力を強くすることで、積層方向の各部において、各被積層物に加わる押付け力(基板引寄せ具4aによって加えられる力と、自身よりも上方に位置する構成要素の自重によって加わる力との和)が積層方向の各部(すなわち、上下方向の各部)において大きく相違する状態となるのを好適に回避することができる。これにより、上方に位置する被積層物から水素ガス等が漏出したり、下方に位置する被積層物において破損や処理能力の低下が生じたりするのを好適に回避することができる。
【0101】
また、この燃料電池ユニット1Aによれば、エンドプレート3a,3bと支持部材32a~32cとの間、およびミドルプレート21a,21bと支持部材32a~32cとの間の少なくとも一方(本例では双方)に圧縮弾性変形が可能なパッキン25a~25cを挟み込んだことにより、エンドプレート3aとミドルプレート21aとを互いに接近させる向きに引き寄せる力を弱めるだけでパッキン35a,35aの弾性復帰によってエンドプレート3aとミドルプレート21aとを互いに離間させることができ、ミドルプレート21a,21bを互いに接近させる向きに引き寄せる力を弱めるだけでパッキン23b,35bの弾性復帰によってミドルプレート21a,21bを互いに離間させることができ、かつエンドプレート3bとミドルプレート21bとを互いに接近させる向きに引き寄せる力を弱めるだけでパッキン35c,35cの弾性復帰によってエンドプレート3bとミドルプレート21bとを互いに離間させることができるため、各被積層物に加わる押付け力Pa~Pcを容易に調整することができる。
【0102】
また、この燃料電池ユニット1Aによれば、導電性を有する材料でミドルプレート21a,21bを形成したことにより、ミドルプレート21aを挟んで配設されている被積層物同士を電気的に接続するための導電性材料の金具やケーブルを配設したり、ミドルプレート21bを挟んで配設されている被積層物同士を電気的に接続するための導電性材料の金具やケーブルを配設したりしなくても、ミドルプレート21a,21bを挟んで配設されている被積層物同士を確実かつ容易に電気的に接続することができる。これにより、燃料電池ユニット1Aを構成する部品点数を少数化し、かつ組立てに要する時間を短縮することができるため、その製造コストを十分に低減することができる。
【0103】
なお、「燃料電池ユニット」の構成は、上記の燃料電池ユニット1の構成の例に限定されない。
【0104】
例えば、「被積層物」の一例であるセパレータ11,12,14を構成する薄厚プレートと同じ素材でエンドプレート3やミドルプレート21を形成し、その厚みをセパレータ11,12,14などの厚みよりも厚くすることでセパレータ11,12,14などよりもエンドプレート3やミドルプレート21が高剛性となるように構成した例について説明したが、「被積層物」の素材よりも縦弾性係数が大きい(ヤング率が高い)素材で「被積層物」と同じ厚みに「第1の基板」や「第2の基板」を形成して「被積層物」よりも「第1の基板」や「第2の基板」が高剛性となる構成を採用することもできる。
【0105】
また、エンドプレート3a,3bの間にミドルプレート21a,21bの2枚を挟み込んで積層体2を積層体2a~2cの3つに分割して各被積層物を押付け力Pa~Pcでそれぞれ押し付ける構成の燃料電池ユニット1,1Aを例に挙げて説明したが、「一対の第1の基板」の間に挟み込む「第2の基板」の枚数は、1枚、または3枚以上の複数枚をすることができる。
【符号の説明】
【0106】
1,1A 燃料電池ユニット
2,2a~2c 積層体
3a,3b エンドプレート
4,4a 基板引寄せ具
10 燃料電池セル
11,12,14 セパレータ
13 MEA
13a 電解質膜
13ai 内側領域
13ao 外縁部領域
13b 触媒層
13c ガス拡散層
13d ガスケット
21a,21b ミドルプレート
22a~22c,32a~32c 支持部材
23a,23b,33a~33c ボルト・ナット
24a,24b,34a~34c クランプ
25a~25c,35a~35c パッキン
Ai 内側領域
Ao 外縁部領域
Pa~Pc 押付け力Pa~Pc