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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008613
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】搬送設備
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240112BHJP
【FI】
G05D1/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110619
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 一也
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301EE02
5H301GG07
5H301LL03
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】搬送経路の各所で新たなタスクが随時発生する場合において、設備全体での物品の搬送効率を高める。
【解決手段】制御装置は、搬送車Vに対して、目的地Dへ向けて搬送経路Pを順方向Fに移動させる順方向移動指令と、目的地Dへ向けて搬送経路Pを逆方向Rに移動させる逆方向移動指令と、を出力可能に構成されている。制御装置は、タスクの1つである対象タスクが発生した場合に、対象タスクの発生時点において目的地Dよりも搬送経路Pの下流側に位置する搬送車Vも候補に含めて、複数の搬送車Vの中から対象タスクを実行させる搬送車Vを決定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め規定された搬送経路を順方向に移動して物品を搬送する複数の搬送車と、
前記搬送経路の複数箇所に配置され、前記物品が移載される対象となる移載対象箇所と、
前記搬送車による前記物品の搬送を必要とするタスクが発生した場合に、複数の前記搬送車のそれぞれに対して、前記タスクに係る前記移載対象箇所を目的地として指定した移動指令を出力する制御装置と、を備えた搬送設備であって、
前記制御装置は、前記搬送車に対して、前記目的地へ向けて前記搬送経路を前記順方向に移動させる順方向移動指令と、前記目的地へ向けて前記搬送経路を逆方向に移動させる逆方向移動指令と、を出力可能に構成され、
前記制御装置は、前記タスクの1つである対象タスクが発生した場合に、前記対象タスクの発生時点において前記目的地よりも前記搬送経路の下流側に位置する前記搬送車も候補に含めて、複数の前記搬送車の中から前記対象タスクを実行させる前記搬送車を決定する、搬送設備。
【請求項2】
前記制御装置は、複数の前記搬送車の中から前記対象タスクを実行させる前記搬送車を決定する場合に、更に、前記対象タスクの発生時点において前記目的地よりも前記搬送経路の上流側に位置する前記搬送車であって前記対象タスクの発生時点から減速を開始しても停止位置が前記目的地よりも下流側となる前記搬送車も前記候補に含める、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項3】
前記タスクが、前記移載対象箇所における前記物品の回収及び回収した前記物品の前記目的地への搬送であり、
前記制御装置は、前記物品を搬送していない状態の空の前記搬送車を前記候補とする、請求項1又は2に記載の搬送設備。
【請求項4】
前記目的地を通過した空の前記搬送車を通過搬送車とし、前記通過搬送車に対して前記搬送経路の上流側を移動する空の前記搬送車であって未だ前記目的地に到着していない前記搬送車を未到着搬送車として、
前記制御装置は、前記通過搬送車が前記逆方向に移動して前記目的地に到着するまでに要する第1所要時間と、前記未到着搬送車が前記順方向に移動して前記目的地に到着するまでに要する第2所要時間と、を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記第1所要時間が前記第2所要時間よりも短い場合には、前記通過搬送車を前記目的地に向かわせる前記逆方向移動指令を出力し、前記第1所要時間が前記第2所要時間よりも長い場合には、前記未到着搬送車を前記目的地に向かわせる前記順方向移動指令を出力する、請求項3に記載の搬送設備。
【請求項5】
前記物品を搬送している状態の前記搬送車を実搬送車とし、未だ前記目的地に到着していない前記実搬送車を未到着実搬送車として、
前記制御装置は、前記未到着実搬送車のうち前記目的地に最も近い前記未到着実搬送車が前記順方向に移動して前記目的地に到着するまでに要する第3所要時間を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記第1所要時間が前記第2所要時間よりも短い場合には、前記対象タスクに係る前記移載対象箇所での前記物品の移載に要する時間に前記第1所要時間を加えた時間が、前記第3所要時間よりも短いことを条件として、前記通過搬送車を前記目的地に向かわせる前記逆方向移動指令を出力する、請求項4に記載の搬送設備。
【請求項6】
前記搬送経路が分岐又は合流する分岐合流ゾーンを備え、
前記制御装置は、前記搬送経路に沿った前記通過搬送車と前記目的地との間に前記分岐合流ゾーンがある場合には、当該通過搬送車を前記候補から外す、請求項4に記載の搬送設備。
【請求項7】
前記搬送車は、当該搬送車に対して前記搬送経路の下流側にある他の前記搬送車を検知する前方車両検知センサを備え、
前記前方車両検知センサは、他の前記搬送車を検知する検知範囲を、前記搬送車の通常走行中に選択される第1範囲と、当該第1範囲より広い第2範囲と、に変更可能であり、
前記制御装置は、前記通過搬送車に前記逆方向移動指令を出力する場合には、当該通過搬送車に対して前記搬送経路の上流側にいる後続の前記搬送車に搭載された前記前方車両検知センサの前記検知範囲を前記第2範囲に設定する、請求項4に記載の搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2006-113967号公報(特許文献1)には、ロードポートやバッファなどの複数の移載対象箇所の間で、搬送車を走行させて物品を搬送する搬送設備が開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された設備では、バッファ(46c,46d)及びロードポート(44b)が経路に沿って設けられた特定エリア(48)において、搬送車(6)が前進と後進とを繰り返すことで(例えば図4参照)、前後に並ぶバッファ(46c,46d)とロードポート(44b)との間で物品を移載している。このように、特許文献1に開示された設備では、通常では前進しか行わない搬送車(6)を、所定条件下で後進させることで、当該搬送車(6)に、経路を1周させて元の場所に戻らせることを避け、搬送車(6)の走行距離を短く抑えて与えられたタスクを効率的に実行させることができる。このような構成によれば、設備全体として搬送効率の向上に寄与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-113967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された設備では、搬送車(6)が特定エリア(48)に進入する以前に複数のタスクの処理順序を決定し、搬送車(6)に実行させる。そのため、特定エリア(48)において処理するタスクは、搬送車(6)が特定エリア(48)に進入する以前に発生したものに限られる。しかしながら、搬送車(6)が実行すべきタスクは、搬送車(6)が特定エリア(48)に進入する以前に発生するとは限らず、移動中の搬送車に対して、搬送経路の各所で新たなタスクが随時発生する場合もあり得る。しかしながら、特許文献1に開示された設備では、そのようなタスクを搬送車(6)により効率的に実行することは難しく、設備全体での物品の搬送効率を高めることが困難であった。
【0006】
上記実状に鑑みて、搬送経路の各所で新たなタスクが随時発生する場合において、設備全体での物品の搬送効率を高めることが可能な技術の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
予め規定された搬送経路を順方向に移動して物品を搬送する複数の搬送車と、
前記搬送経路の複数箇所に配置され、前記物品が移載される対象となる移載対象箇所と、
前記搬送車による前記物品の搬送を必要とするタスクが発生した場合に、複数の前記搬送車のそれぞれに対して、前記タスクに係る前記移載対象箇所を目的地として指定した移動指令を出力する制御装置と、を備えた搬送設備であって、
前記制御装置は、前記搬送車に対して、前記目的地へ向けて前記搬送経路を前記順方向に移動させる順方向移動指令と、前記目的地へ向けて前記搬送経路を逆方向に移動させる逆方向移動指令と、を出力可能に構成され、
前記制御装置は、前記タスクの1つである対象タスクが発生した場合に、前記対象タスクの発生時点において前記目的地よりも前記搬送経路の下流側に位置する前記搬送車も候補に含めて、複数の前記搬送車の中から前記対象タスクを実行させる前記搬送車を決定する。
【0008】
本構成によれば、通常は搬送経路を順方向に移動する搬送車を、状況に応じて逆方向に移動させることができる。そして、制御装置は、搬送経路を順方向に移動している搬送車を目的地へ向かわせる候補とするだけでなく、対象タスクの発生時点が遅かったこと等により目的地を既に通過した搬送車についても、目的地に向かわせる候補とすることができる。従って、本構成によれば、搬送経路の各所で新たなタスクが随時発生する場合において、目的地へ向かわせる候補となる搬送車の選択肢を増やすことができるため、設備全体での物品の搬送効率を高め易い。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】搬送設備の平面図
図2】移載対象箇所において物品が移載される様子を示す図
図3】制御ブロック図
図4】分岐合流ゾーンでの制御を示す図
図5】逆方向移動指令が出力される場合の一例を示す図
図6】逆方向移動指令が出力される場合の一例を示す図
図7】逆方向移動指令が禁止される場合の一例を示す図
図8】フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、搬送設備の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、搬送設備100は、予め規定された搬送経路Pを順方向F(図4等参照)に移動して物品Wを搬送する複数の搬送車Vと、搬送経路Pの複数箇所に配置され、物品Wが移載される対象となる移載対象箇所Mと、を備えている。複数の搬送車Vのそれぞれは、自らに与えられたタスクを実行する。物品Wを搬送していない状態の空の搬送車Vである空搬送車Veと、物品Wを搬送している状態の搬送車Vである実搬送車Vfとが、搬送経路Pにおいて混在している。
【0013】
搬送経路Pは、直線路とカーブ路とを含んで構成されている。本実施形態では、搬送設備100は、搬送経路Pが分岐又は合流する分岐合流ゾーンZを備えている。
【0014】
搬送設備100は、例えば、半導体製造工場に用いられる。この場合、移載対象箇所Mとしては、物品Wに対する処理を行う処理装置Maを例示することができる。また、物品Wとしては、ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクルポッドを例示することができる。物品WがFOUPである場合、処理装置Maによる処理対象物は、ウェハとされる。物品Wがレチクルポッドである場合、処理装置Maによる処理対象物は、レチクルとされる。ここで例示する半導体製造工場においては、処理装置Maは、半導体基板に対して、例えば、薄膜形成、フォトリソグラフィー、エッチングなどの種々の処理を行う。処理装置Maは、当該処理装置Maに隣接して配置された載置台Mb上の物品Wの中から処理対象物を取り出して、当該処理対象物の処理を行うように構成されている。載置台Mbに対する物品Wの移載は、搬送車Vが行う。
【0015】
図2に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、天井付近に設定された搬送経路Pに沿って走行する天井搬送車として構成されている。搬送車Vは、物品Wを収容する収容部Vaと、物品Wを把持する把持部Vbと、把持部Vbを昇降させる昇降部Vcと、を備えている。
【0016】
搬送車Vは、移載対象箇所Mで停止して、把持部Vbを昇降させることにより、収容部Vaと、当該収容部Vaよりも下方に配置された載置台Mbとの間で物品Wを移載する。本例では、「物品の移載」には、移載対象箇所M(載置台Mb)から物品Wを受け取ることと、移載対象箇所M(載置台Mb)へ物品Wを引き渡すことと、が含まれる。図2には、載置台Mbに載置された物品Wを搬送車Vが受け取っている様子が例示されている。本例において、搬送車Vが移載対象箇所Mとの間で物品Wを移載する場合には、把持部Vbによる物品Wの把持動作または把持解除動作と、昇降部Vcによる把持部Vbの昇降動作と、が伴う。これらの動作が行われている時間の合計が、物品Wの移載に要する時間(以下、「移載時間Tt」と称する。)となる。
【0017】
図5に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、当該搬送車Vに対して搬送経路Pの下流側(すなわち前方)にある他の搬送車Vを検知する前方車両検知センサSeを備えている。例えば、前方車両検知センサSeが、前方を走行する他の搬送車Vを検知した場合には、当該前方車両検知センサSeを搭載した搬送車Vは、減速あるいは停止するなどして、上記他の搬送車Vへの追突を回避する。
【0018】
本実施形態では、前方車両検知センサSeは、他の搬送車Vを検知する検知範囲を、搬送車Vの通常走行中に選択される第1範囲A1と、当該第1範囲A1より広い第2範囲A2と、に変更可能に構成されている。なお、これに加えて、前方車両検知センサSeは、当該前方車両検知センサSeを搭載した搬送車Vがカーブ路を走行する場合などには、他の搬送車Vを検知する検知範囲を、第1範囲A1よりも狭い範囲(例えば第3範囲)等に変更可能であってもよい。搬送車Vがカーブ路を走行する場合には、前方車両検知センサSeによる検知範囲が搬送経路Pの外部に向き易いが、上記検知範囲を第1範囲A1よりも狭い範囲に変更することで、搬送車V以外の意図しない物(搬送経路Pの一部を構成する構造物等)が誤検知されることを回避できる。
【0019】
図3に示すように、搬送設備100は、制御装置Cを備えている。制御装置Cは、搬送車Vによる物品Wの搬送を必要とするタスクが発生した場合に、複数の搬送車Vのそれぞれに対して、前記タスクに係る移載対象箇所Mを目的地D(図5等参照)として指定した移動指令を出力するように構成されている。
【0020】
本実施形態では、制御装置Cは、上位コントローラCtとゾーンコントローラCzとを含む。上位コントローラCtとゾーンコントローラCzと搬送車Vとは、互いに通信可能に構成されている。制御装置C、すなわち上位コントローラCt及びゾーンコントローラCzは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各処理または各機能が実現される。
【0021】
上位コントローラCtは、複数の搬送車Vのそれぞれに対して、物品Wの搬送元と搬送先とを指定した搬送指令を行うように構成されている。上記移動指令は、搬送指令に含まれる。すなわち、上位コントローラCtは、物品Wの搬送を必要とするタスクに係る移載対象箇所Mを目的地Dとして指定した移動指令を、複数の搬送車Vのそれぞれに対して出力するように構成されている。
【0022】
図4に示すように、ゾーンコントローラCzは、分岐合流ゾーンZにおいて搬送車Vを制御するように構成されている。例えば、搬送車Vは、分岐合流ゾーンZの手前において、分岐合流ゾーンZの通過許可をゾーンコントローラCzに求める。ゾーンコントローラCzは、分岐合流ゾーンZの付近に存在する複数の搬送車Vの状況等に基づいて、通過許可を求めた搬送車Vについて分岐合流ゾーンZの通過の認否を判断する。ゾーンコントローラCzは、搬送車Vに対して、通過を許可する場合は許可信号を発信し、通過を拒否する場合は停止信号を発信する。許可信号を受信した搬送車Vは、分岐合流ゾーンZに進入し、停止信号を受信した搬送車Vは、分岐合流ゾーンZの手前で待機する。図4に示すように、分岐合流ゾーンZを通過した搬送車Vは、分岐合流ゾーンZを通過した旨の通過完了通知をゾーンコントローラCzに対して行う。これにより、ゾーンコントローラCzは、次の搬送車Vに対して、分岐合流ゾーンZの通過許可を与えることが可能となる。
【0023】
図5等に示すように、制御装置C(本例では上位コントローラCt)は、搬送車Vに対して、目的地Dへ向けて搬送経路Pを順方向Fに移動させる順方向移動指令と、目的地Dへ向けて搬送経路Pを逆方向Rに移動させる逆方向移動指令と、を出力可能に構成されている。
【0024】
制御装置Cから順方向移動指令を受けた搬送車Vは、目的地Dへ向けて搬送経路Pを順方向Fに移動する。制御装置Cから逆方向移動指令を受けた搬送車Vは、目的地Dへ向けて搬送経路Pを逆方向Rに移動する。ここで、「順方向F」は、通常時に搬送車Vが搬送経路Pを移動する場合の正規の移動方向であり、「前進方向」と言い換えることもできる。「逆方向R」は、順方向Fに対して逆の方向であり、「後進方向」と言い換えることもできる。
【0025】
制御装置Cは、タスクの1つである対象タスクが発生した場合に、対象タスクの発生時点において目的地Dよりも搬送経路Pの下流側に位置する搬送車Vも候補に含めて、複数の搬送車Vの中から対象タスクを実行させる搬送車Vを決定する。これにより、制御装置Cは、搬送経路Pを順方向Fに移動している搬送車Vを目的地Dへ向かわせる候補とするだけでなく、対象タスクの発生時点が遅かったこと等により目的地Dを既に通過した搬送車Vについても、目的地Dに向かわせる候補とすることができる。従って、搬送経路Pの各所で新たなタスクが随時発生する場合において、目的地Dへ向かわせる候補となる搬送車Vの選択肢を増やすことができるため、設備全体での物品Wの搬送効率を高め易い。
【0026】
対象タスクを実行させる搬送車Vの候補には、対象タスクの発生時点において目的地Dよりも搬送経路Pの上流側に位置する搬送車Vと、対象タスクの発生時点において目的地Dに位置する搬送車Vとに加えて、対象タスクの発生時点において目的地Dよりも搬送経路Pの下流側に位置する搬送車Vも含まれる。なお、搬送車Vが目的地Dの直前を走行しているときに対象タスクが発生した場合であっても、搬送車Vは減速が間に合わずに目的地Dを通過してしまうことがある。
【0027】
本例では、図5に示すように、搬送車Vが目的地Dで適切に停止するための減速開始位置が、目的地Dの手前に設定されている。搬送車Vは、目的地Dで停止しようとする場合、減速開始位置または減速開始位置よりも手前で減速を開始することにより、目的地Dにおいて適切に停止することができる。一方、搬送車Vは、減速開始位置を過ぎてから減速を開始しても、目的地Dで適切に停止することはできない。すなわち、搬送車Vが目的地Dよりも手前を走行している際に対象タスクが発生したとしても、そのとき既に搬送車Vが減速開始位置を過ぎている場合には、搬送車Vは、減速が間に合わずに目的地Dを通過することになる。制御装置Cは、このような搬送車Vも、対象タスクを実行させる搬送車Vの候補とする。すなわち、本実施形態では、制御装置Cは、複数の搬送車Vの中から対象タスクを実行させる搬送車Vを決定する場合に、更に、対象タスクの発生時点において目的地Dよりも搬送経路Pの上流側に位置する搬送車Vであって対象タスクの発生時点から減速を開始しても停止位置が目的地Dよりも下流側となる搬送車Vも、対象タスクを実行させる搬送車Vの候補に含める。
【0028】
本実施形態では、搬送車Vに与えられるタスクが、移載対象箇所Mにおける物品Wの回収及び回収した物品Wの目的地Dへの搬送である。例えば、処理装置Maによる処理を終えた物品Wが、搬送車Vによる回収対象となる。この場合、処理装置Maによる処理を終えた時点が、タスクの発生時点となり得る。
【0029】
制御装置Cは、対象タスクの発生後に、当該対象タスクを実行させる候補となる搬送車Vを複数選択し、候補として選択した複数の搬送車Vの中から当該対象タスクを実行させる搬送車Vを決定する。
【0030】
上述のように、本実施形態では、搬送車Vに与えられるタスクが、移載対象箇所Mにおける物品Wの回収及び回収した物品Wの目的地Dへの搬送であるため、当該タスクは、既に物品Wを搬送している状態の実搬送車Vfでは実行することができない。そのため、本実施形態では、制御装置Cは、物品Wを搬送していない状態の空の搬送車V(空搬送車Ve)を、対象タスクを実行させる搬送車Vの候補とする。そして、制御装置Cは、候補として選択した複数の空搬送車Veの中から、対象タスクを実行させる1つの空搬送車Veを決定し、決定した空搬送車Veを目的地Dに向かわせる。対象タスクを実行させる空搬送車Veの決定は、予め設定された条件に基づいて行われる。
【0031】
以下、図5図7を参照して詳細に説明する。なお、以下では、目的地Dを通過した空搬送車Veを通過搬送車Veとし、通過搬送車Veに対して搬送経路Pの上流側を移動する空搬送車Veであって未だ目的地Dに到着していない空搬送車Veを未到着搬送車Veとする。また、上述したように物品Wを搬送している状態の搬送車Vを実搬送車Vfとする。そして、未だ目的地Dに到着していない実搬送車Vfを未到着実搬送車Vfとする。ここでは、搬送車Vが、物品Wを搬送していない状態の空搬送車Veであるか、物品Wを搬送している状態の実搬送車Vfであるかにより、「Ve」と「Vf」との参照符を使い分ける。従って、上記のように、空搬送車Veである通過搬送車及び未到着搬送車には、参照符として「Ve」を用い、実搬送車Vfである未到着実搬送車には、参照符として「Vf」を用いる。
【0032】
図5に示すように、制御装置Cは、通過搬送車Veが逆方向Rに移動して目的地Dに到着するまでに要する第1所要時間T1と、未到着搬送車Veが順方向Fに移動して目的地Dに到着するまでに要する第2所要時間T2と、を算出するように構成されている。本実施形態では、制御装置Cは、未到着搬送車Veのうち目的地Dに最も近い未到着搬送車Veを対象として第2所要時間T2を算出する。
【0033】
第1所要時間T1は、例えば、通過搬送車Veの現在位置から目的地Dまでの距離を、通過搬送車Veが逆方向Rに移動する速度(平均速度)で除算することにより算出される。第2所要時間T2は、例えば、未到着搬送車Veの現在位置から目的地Dまでの距離を、未到着搬送車Veが順方向Fに移動する速度(平均速度)で除算することにより算出される。例えば、通過搬送車Veが逆方向Rに移動する速度は、未到着搬送車Veが順方向Fに移動する速度よりも低く設定される。速度が低いほど所要時間は長くなり易く、速度が高いほど所要時間は短くなり易い。
【0034】
制御装置Cは、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも短い場合には、通過搬送車Veを目的地Dに向かわせる逆方向移動指令を出力する。すなわち、この場合、制御装置Cは、通過搬送車Veを、対象タスクを実行させる搬送車Vとして決定する。制御装置Cは、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも長い場合には、未到着搬送車Veを目的地Dに向かわせる順方向移動指令を出力する。すなわち、この場合、制御装置Cは、未到着搬送車Veを、対象タスクを実行させる搬送車Vとして決定する。これにより、目的地Dに到着するまでに要する所要時間が最も短い搬送車Vを目的地Dに向かわせることができ、設備全体として搬送効率を高め易くなる。図5は、制御装置Cが、通過搬送車Veに対して逆方向移動指令を出力し、当該通過搬送車Veが目的地Dへ向けて搬送経路Pを逆方向Rに移動している様子を示している。
【0035】
上述のように、前方を走行する他の搬送車Vを検知するための前方車両検知センサSeの検知範囲は、通常時は第1範囲A1に設定されている。本実施形態では、制御装置Cは、通過搬送車Veに逆方向移動指令を出力する場合には、当該通過搬送車Veに対して搬送経路Pの上流側にいる後続の搬送車Vに搭載された前方車両検知センサSeの検知範囲を第2範囲A2に設定する。先行の搬送車Vが後続の搬送車Vとは逆方向に走行する場合には、両者が互いに同じ方向に走行する場合に比べて相対速度が高くなる。しかし、上記のように、通過搬送車Veに後続する搬送車V(図5に示す例では未到着搬送車Ve)に搭載された前方車両検知センサSeの検知範囲を、第1範囲A1から第2範囲A2に設定変更することで、先行している通過搬送車Veを早期に検知することができる。従って、先行の搬送車V及び後続の搬送車Vの双方の移動速度を低下させなくても両者の干渉を回避する制御を行う時間を確保することが可能となる。
【0036】
ここで、未到着実搬送車Vfについては、物品Wを搬送している状態であり、自らに与えられたタスクを実行中である。そのため、未到着実搬送車Vfの移動を妨げないようにすることが、設備全体の搬送効率の向上に繋がるので好ましい。従って、通過搬送車Veに対して逆方向移動指令を出力する場合には、当該逆方向移動指令により移動する通過搬送車Veが未到着実搬送車Vfの移動を妨げないという条件が付加されることが好ましい。以下、詳細に説明する。
【0037】
図6に示すように、本実施形態では、制御装置Cは、未到着実搬送車Vfのうち目的地Dに最も近い未到着実搬送車Vfが順方向Fに移動して目的地Dに到着するまでに要する第3所要時間T3を算出するように構成されている。
【0038】
第3所要時間T3は、例えば、未到着実搬送車Vfの現在位置から目的地Dまでの距離を、未到着実搬送車Vfが順方向Fに移動する速度(平均速度)で除算することにより算出される。
【0039】
制御装置Cは、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも短い場合には、対象タスクに係る移載対象箇所M(目的地D)での物品Wの移載に要する時間(上述の「移載時間Tt」である。図2参照。)に第1所要時間T1を加えた時間が、第3所要時間T3よりも短いことを条件として、通過搬送車Veを目的地Dに向かわせる逆方向移動指令を出力する。これにより、未到着実搬送車Vfが目的地Dに到着するまでの間に、通過搬送車Veが、目的地Dへ向かって移動し、当該目的地Dにおいて物品Wの移載を終えることができる。そのため、未到着実搬送車Vfの移動を妨げないようにすることができる。
【0040】
一方、制御装置Cは、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも短い場合であっても、対象タスクに係る移載対象箇所M(目的地D)での移載時間Ttに第1所要時間T1を加えた時間が、第3所要時間T3よりも長い場合には、通過搬送車Veに対して逆方向移動指令を出力しない。この場合、制御装置Cは、対象タスクを実行させる候補を新たに選択する。
【0041】
ここで、図4を参照して上述したように、ゾーンコントローラCzは、複数の搬送車Vと通信を行うことで、分岐合流ゾーンZの付近に存在する複数の搬送車Vの状況等に基づいて、分岐合流ゾーンZにおいて搬送車Vを制御している。また本例では、分岐合流ゾーンZを通過した搬送車Vは、分岐合流ゾーンZを通過した旨の通過完了通知をゾーンコントローラCzに対して行う。このような理由から、分岐合流ゾーンZを一度通過した搬送車Vを、逆方向Rに移動させることは、制御上複雑になると共にその負荷が増大するため好ましくない。また、分岐合流ゾーンZにおいて搬送車Vを逆方向Rに移動させることは、分岐合流ゾーンZにおける搬送経路Pの構造上からも好ましくない場合がある。
【0042】
図7に示すように、本実施形態では、制御装置Cは、搬送経路Pに沿った通過搬送車Veと目的地Dとの間に分岐合流ゾーンZがある場合には、当該通過搬送車Veを、対象タスクを実行させる搬送車Vの候補から外す。これに加えて、制御装置Cは、分岐合流ゾーンZの入口を過ぎた後、当該分岐合流ゾーンZの出口を通過する前の通過搬送車Veにあっても、対象タスクを実行させる搬送車Vの候補から外す。すなわち、制御装置Cは、通過搬送車Veの第1所要時間T1が未到着搬送車Veの第2所要時間T2よりも短い場合であっても、上記の場合には、対象タスクを実行させる候補から通過搬送車Veを外す。このような構成により、ゾーンコントローラCzによる分岐合流ゾーンZの制御が複雑にならないようにできる。また、搬送車Vを逆方向Rに移動させることが不向きな分岐合流ゾーンZにおいて、搬送車Vを逆方向Rに移動させないようにできる。なお、分岐合流ゾーンZの内部に目的地Dがある場合であっても同様に、制御装置Cは、目的地Dを通過した通過搬送車Veを、対象タスクを実行させる候補から外す。
【0043】
次に、図8のフローチャートを参照して、制御の流れについて説明する。
【0044】
対象タスクが発生すると(ステップ#1)、制御装置Cは、複数の搬送車Vの中から対象タスクを実行させる候補を選択する(ステップ#2)。
【0045】
ステップ#2の後、制御装置Cは、通過搬送車Veが逆方向Rに移動して目的地Dに到着するまでに要する第1所要時間T1が、未到着搬送車Veが順方向Fに移動して目的地Dに到着するまでに要する第2所要時間T2よりも短いか否かを判断する(ステップ#3)。制御装置Cは、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも短いと判断した場合には(ステップ#3:Yes)、対象タスクに係る移載対象箇所M(目的地D)での移載時間Ttに第1所要時間T1を加えた時間が、第3所要時間T3よりも短いか否かを判断する(ステップ#4)。制御装置Cは、移載時間Ttに第1所要時間T1を加えた時間が、第3所要時間T3よりも短いと判断した場合には(ステップ#4:Yes)、通過搬送車Veに対して逆方向移動指令を出力する(ステップ#5)。これにより、制御装置Cは、通過搬送車Veに対象タスクを実行させる。なお、ステップ#4において、制御装置Cは、移載時間Ttに第1所要時間T1を加えた時間が、第3所要時間T3よりも短くないと判断した場合には(ステップ#4:Nо)、対象タスクを実行させる候補を新たに選択する(ステップ#2)。
【0046】
ステップ#5の後、又はそれと同時に、制御装置Cは、上記通過搬送車Veに後続する未到着搬送車Veに搭載された前方車両検知センサSeの検知範囲を、第1範囲A1から第2範囲A2に拡大する(ステップ#6)。なお、上記通過搬送車Veが逆方向Rの移動を終えた後は、制御装置Cは、後続の未到着搬送車Veに搭載された前方車両検知センサSeの検知範囲を、第2範囲A2から第1範囲A1に戻す。
【0047】
ステップ#3において、制御装置Cは、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも短くないと判断した場合には(ステップ#3:Nо)、後続の未到着搬送車Veに対して順方向移動指令を出力する(ステップ#7)。これにより、制御装置Cは、後続の未到着搬送車Veに対象タスクを実行させる。
【0048】
〔その他の実施形態〕
次に、搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0049】
(1)上記の実施形態では、搬送車Vに与えられるタスクが、移載対象箇所Mにおける物品Wの回収及び回収した物品Wの目的地Dへの搬送である例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、搬送車Vに与えられるタスクは、例えば、移載対象箇所Mへの物品Wの搬送であってもよい。この場合、物品Wを搬送している状態の搬送車Vである実搬送車Vfが、対象タスクを実行させる候補とされる。
【0050】
(2)上記の実施形態では、制御装置Cが、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも短い場合には、対象タスクに係る移載対象箇所M(目的地D)での移載時間Ttに第1所要時間T1を加えた時間が、第3所要時間T3よりも短いことを条件として、通過搬送車Veに対して逆方向移動指令を出力する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御装置Cは、第1所要時間T1が第2所要時間T2よりも短い場合には、いかなる条件によらずに、通過搬送車Veに対して逆方向移動指令を出力するようにしてもよい。この間に後続の未到着実搬送車Vfが目的地Dに到着し得る場合には、通過搬送車Veが目的地Dでの物品Wの移載を終えるまで、目的地Dの手前で未到着実搬送車Vfを待機させておくとよい。
【0051】
(3)上記の実施形態では、分岐合流ゾーンZにおける制御上の負荷を軽減するため、制御装置Cは、搬送経路Pに沿った通過搬送車Veと目的地Dとの間に分岐合流ゾーンZがある場合には、当該通過搬送車Veを、対象タスクを実行させる候補から外す例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御装置Cは、上記のような場合であっても、通過搬送車Veを、対象タスクを実行させる候補としてもよい。この場合、一度分岐合流ゾーンZを通過した通過搬送車Veが逆方向Rに移動して再び分岐合流ゾーンZに進入する際には、ゾーンコントローラCzに対して通過許可要求および通過完了通知を改めて行うようにするとよい。
【0052】
(4)上記の実施形態では、移載対象箇所Mとして、物品Wに対する処理を行う処理装置Maを例示した。しかし、このような例に限定されることなく、移載対象箇所Mは、物品Wを仮置きするためのバッファであってもよいし、各種搬送装置との受け渡し場所であってもよい。
【0053】
(5)上記の実施形態では、搬送車Vが、天井付近に設定された搬送経路Pに沿って走行する天井搬送車として構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、搬送車Vは、例えば、床面に沿って走行する有軌道式あるいは無軌道式の無人搬送車であってもよい。この場合の物品Wの移載は、床面を走行する搬送車Vと同等の高さに配置された移載対象箇所Mに対して、コンベヤやアーム等を用いて行われる。
【0054】
(6)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0055】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した搬送設備について説明する。
【0056】
予め規定された搬送経路を順方向に移動して物品を搬送する複数の搬送車と、
前記搬送経路の複数箇所に配置され、前記物品が移載される対象となる移載対象箇所と、
前記搬送車による前記物品の搬送を必要とするタスクが発生した場合に、複数の前記搬送車のそれぞれに対して、前記タスクに係る前記移載対象箇所を目的地として指定した移動指令を出力する制御装置と、を備えた搬送設備であって、
前記制御装置は、前記搬送車に対して、前記目的地へ向けて前記搬送経路を前記順方向に移動させる順方向移動指令と、前記目的地へ向けて前記搬送経路を逆方向に移動させる逆方向移動指令と、を出力可能に構成され、
前記制御装置は、前記タスクの1つである対象タスクが発生した場合に、前記対象タスクの発生時点において前記目的地よりも前記搬送経路の下流側に位置する前記搬送車も候補に含めて、複数の前記搬送車の中から前記対象タスクを実行させる前記搬送車を決定する。
【0057】
本構成によれば、通常は搬送経路を順方向に移動する搬送車を、状況に応じて逆方向に移動させることができる。そして、制御装置は、搬送経路を順方向に移動している搬送車を目的地へ向かわせる候補とするだけでなく、対象タスクの発生時点が遅かったこと等により目的地を既に通過した搬送車についても、目的地に向かわせる候補とすることができる。従って、本構成によれば、搬送経路の各所で新たなタスクが随時発生する場合において、目的地へ向かわせる候補となる搬送車の選択肢を増やすことができるため、設備全体での物品の搬送効率を高め易い。
【0058】
前記制御装置は、複数の前記搬送車の中から前記対象タスクを実行させる前記搬送車を決定する場合に、更に、前記対象タスクの発生時点において前記目的地よりも前記搬送経路の上流側に位置する前記搬送車であって前記対象タスクの発生時点から減速を開始しても停止位置が前記目的地よりも下流側となる前記搬送車も前記候補に含める、と好適である。
【0059】
本構成によれば、対象タスクの発生時点から減速を開始しても停止位置が目的地よりも下流側となる搬送車も候補に含めて、対象タスクを実行させる搬送車を決定することができるため、設備全体での物品の搬送効率をより一層高め易い。
【0060】
前記タスクが、前記移載対象箇所における前記物品の回収及び回収した前記物品の前記目的地への搬送であり、
前記制御装置は、前記物品を搬送していない状態の空の前記搬送車を前記候補とする、と好適である。
【0061】
本構成によれば、タスクを実行することができる空の搬送車を適切に選択して、当該搬送車に対象タスクを実行させることができる。
【0062】
前記目的地を通過した空の前記搬送車を通過搬送車とし、前記通過搬送車に対して前記搬送経路の上流側を移動する空の前記搬送車であって未だ前記目的地に到着していない前記搬送車を未到着搬送車として、
前記制御装置は、前記通過搬送車が前記逆方向に移動して前記目的地に到着するまでに要する第1所要時間と、前記未到着搬送車が前記順方向に移動して前記目的地に到着するまでに要する第2所要時間と、を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記第1所要時間が前記第2所要時間よりも短い場合には、前記通過搬送車を前記目的地に向かわせる前記逆方向移動指令を出力し、前記第1所要時間が前記第2所要時間よりも長い場合には、前記未到着搬送車を前記目的地に向かわせる前記順方向移動指令を出力する、と好適である。
【0063】
本構成によれば、目的地に到着するまでに要する所要時間が最も短い搬送車を目的地に向かわせることができる。従って、設備全体として搬送効率を高め易い。
【0064】
前記物品を搬送している状態の前記搬送車を実搬送車とし、未だ前記目的地に到着していない前記実搬送車を未到着実搬送車として、
前記制御装置は、前記未到着実搬送車のうち前記目的地に最も近い前記未到着実搬送車が前記順方向に移動して前記目的地に到着するまでに要する第3所要時間を算出するように構成され、
前記制御装置は、前記第1所要時間が前記第2所要時間よりも短い場合には、前記対象タスクに係る前記移載対象箇所での前記物品の移載に要する時間に前記第1所要時間を加えた時間が、前記第3所要時間よりも短いことを条件として、前記通過搬送車を前記目的地に向かわせる前記逆方向移動指令を出力する、と好適である。
【0065】
通過搬送車が逆方向に移動して目的地に到着するまでに要する第1所要時間が、未到着搬送車が順方向に移動して目的地に到着するまでに要する第2所要時間よりも短い場合には、通過搬送車は未到着搬送車よりも早期に目的地に到着する。しかし、通過搬送車が目的地に到着して物品の移載を終えるまでに、未到着搬送車以外の実搬送車である未到着実搬送車が当該目的地を通過する場合には、当該未到着実搬送車と通過搬送車とが干渉する可能性がある。またこのような干渉を避けるためには、当該未到着実搬送車を目的地よりも搬送経路の上流側で待機させる必要があり、当該未到着実搬送車の搬送スケジュールが遅延し得る。本構成によれば、制御装置が通過搬送車を目的地に向かわせる逆方向移動指令を出力するための条件として、第1所要時間が第2所要時間よりも短いことに加えて、対象タスクに係る移載対象箇所での物品の移載に要する時間に第1所要時間を加えた時間が、未到着実搬送車が順方向に移動して目的地に到着するまでに要する第3所要時間よりも短いことを条件としている。そのため、逆方向移動指令を出力することが通過搬送車に後続する未到着実搬送車の移動に影響を与える可能性を低減することができる。
【0066】
前記搬送経路が分岐又は合流する分岐合流ゾーンを備え、
前記制御装置は、前記搬送経路に沿った前記通過搬送車と前記目的地との間に前記分岐合流ゾーンがある場合には、当該通過搬送車を前記候補から外す、と好適である。
【0067】
分岐合流ゾーンでは、搬送経路の構造上、搬送車を逆方向に移動させることができない場合があり、また、搬送車を逆方向に移動させることができたとしても複数の搬送車の干渉を避けるための制御が複雑になる場合がある。すなわち、構造上や制御上の観点から、搬送車を逆方向に走行させることが好ましくないという問題があり得る。本構成によれば、分岐合流ゾーンを逆方向に移動し得る通過搬送車を目的地へ向かわせる候補から外すことができるため、上記のような問題を避けることができる。
【0068】
前記搬送車は、当該搬送車に対して前記搬送経路の下流側にある他の前記搬送車を検知する前方車両検知センサを備え、
前記前方車両検知センサは、他の前記搬送車を検知する検知範囲を、前記搬送車の通常走行中に選択される第1範囲と、当該第1範囲より広い第2範囲と、に変更可能であり、
前記制御装置は、前記通過搬送車に前記逆方向移動指令を出力する場合には、当該通過搬送車に対して前記搬送経路の上流側にいる後続の前記搬送車に搭載された前記前方車両検知センサの前記検知範囲を前記第2範囲に設定する、と好適である。
【0069】
先行の搬送車が後続の搬送車とは逆方向に走行する場合には、両者が互いに同じ方向に走行する場合に比べて、相対速度が高くなる。本構成によれば、制御装置が、通過搬送車に逆方向移動指令を出力する場合には、当該通過搬送車に対して搬送経路の上流側にいる後続の搬送車に備えられた前方車両検知センサの検知範囲を、通常走行中に選択される第1範囲よりも広い第2範囲に設定する。これにより、後続の搬送車が、先行している通過搬送車を早期に検知することができる。従って、先行の搬送車及び後続の搬送車の双方の移動速度を低下させなくても両者の干渉を回避する制御を行う時間を確保することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示に係る技術は、搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 :搬送設備
V :搬送車
Ve :通過搬送車
Ve :未到着搬送車
Vf :実搬送車
Vf :未到着実搬送車
C :制御装置
Se :前方車両検知センサ
A1 :第1範囲
A2 :第2範囲
P :搬送経路
Z :分岐合流ゾーン
M :移載対象箇所
D :目的地
T1 :第1所要時間
T2 :第2所要時間
T3 :第3所要時間
Tt :移載時間
W :物品
F :順方向
R :逆方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8