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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086135
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】クリールロボット及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/06 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B65H67/06 D
B65H67/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201109
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】利山 裕介
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA07
3F112EB06
3F112GB02
(57)【要約】
【課題】キャップの破損を抑制しつつ、省力化を図ることが可能なクリールロボット及びシステムを提供する。
【解決手段】空の紙管100の端部にキャップ110が装着された給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の紙管100は、キャップ110が装着された状態でクリールスタンド30のペグ軸36から抜き取られ、空紙管収容箱84に収容される。空紙管収容箱84に収容された空の紙管100は、空の紙管100に装着されているキャップ110と、空の紙管100とに分離される。キャップ100が分離された後の空の紙管100は、空紙管回収箱に回収される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材の端部にキャップが装着された給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の筒状部材を、クリールスタンドのペグ軸から抜き取って回収するクリールロボットであって、
前記空の筒状部材を収容する収容部と、
前記空の筒状部材を、前記キャップが装着された状態で前記クリールスタンドのペグ軸から抜き取り、前記収容部に収容させる抜取部と、
前記収容部に収容された前記空の筒状部材に装着されている前記キャップと、当該空の筒状部材とを分離させる分離装置と、
を備え、前記キャップを分離した後の前記空の筒状部材が所定の回収容器に回収されるようにしたことを特徴とするクリールロボット。
【請求項2】
前記筒状部材は磁性を帯びていない一方、前記キャップは磁性を帯びた磁性部を少なくとも含み、
前記収容部は、
前記磁性部を吸着させることが可能な吸着部を有し、
前記分離装置は、
前記磁性部が前記吸着部に吸着された状態で、前記磁性部を有するキャップと前記空の筒状部材とを分離することが可能に構成されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のクリールロボット。
【請求項3】
前記分離装置は、
少なくとも前記磁性部が前記吸着部に吸着された状態で前記収容部を振動または揺動させることが可能に構成されてなる、
ことを特徴とする請求項2に記載のクリールロボット。
【請求項4】
前記吸着部は、
通電により磁力を発生させるものである、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のクリールロボット。
【請求項5】
前記キャップは、
前記筒状部材の内周に着脱自在に装着される装着部と、
前記筒状部材の外径よりも大きい外径を有するフランジ部と、を有し、
前記分離装置は、
前記筒状部材の外径よりも大きく且つ前記キャップの外径よりも小さい開口部を有し、前記キャップが前記開口部を通過せず且つ前記空の筒状部材が前記開口部を通過することによって、前記キャップと前記空の筒状部材とを分離させるよう構成されてなる、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のクリールロボット。
【請求項6】
給糸パッケージから解舒された糸を巻き取る巻取機を少なくとも含む機台と、
前記機台に隣接して設けられ、前記給糸パッケージから解舒された糸を前記機台に供給するクリールスタンドと、
前記クリールスタンドに前記給糸パッケージを供給するクリールロボットと、
を少なくとも備えるシステムであって、
前記給糸パッケージは、
筒状部材の端部にキャップが装着されたものであり、
前記クリールロボットは、
前記筒状部材の端部にキャップが装着された給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の筒状部材を、前記クリールスタンドのペグ軸から抜き取って収容する収容部を有して構成されており、
前記システムは、さらに、
前記収容部に収容された前記空の筒状部材に装着されている前記キャップと、当該空の筒状部材とを分離させる分離装置と、
前記分離装置により前記キャップから分離された後の前記空の筒状部材を回収する回収容器と、
を備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリールスタンドから空の紙管を取り出すクリールロボット及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、仮撚加工機においては、クリールスタンドが機台に隣接して設けられており、このクリールスタンドのペグ軸には、クリールロボットによって給糸パッケージが供給される。給糸パッケージは、円筒状の紙管の周囲に糸が巻かれていることで構成されている。クリールスタンドのペグ軸に供給された給糸パッケージから解舒された糸は、機台に供給され、例えば延伸仮撚加工される。
【0003】
例えば特許文献1には、給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の紙管をクリールスタンドのペグ軸から抜き取って、その代わりに新たな給糸パッケージを装着するクリールロボットが開示されている。このロボットは、クリールスタンドのペグ軸から抜き取った空の紙管を、クリールスタンドのペグ軸から離脱させ、紙管受台に落下させて回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-56352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、給糸パッケージから糸が解舒されるときのガイドとして、紙管の端部に、紙管の外径よりも大きな外径を有するキャップが装着される場合がある。
【0006】
ところで、上記のキャップは、空の紙管から取り外して新たな給糸パッケージに取り付けることで再利用されている。空の紙管は上述のとおりロボット(以下、「クリールロボット」と称する)により回収されるが、抜き取った空の紙管を紙管受台に落下させて回収するため、このとき空の紙管にキャップが装着されていると、キャップが破損してしまう虞がある。そのため、空の紙管がクリールロボットで回収される前にオペレータがキャップを回収しなければならない。この場合、わざわざオペレータがクリールスタンドに出向かなければならないので、オペレータの負荷が大きく、省力化の観点から改善の余地がある。
【0007】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、キャップの破損を抑制しつつ、省力化を図ることが可能なクリールロボット及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のクリールロボットは、
筒状部材の端部にキャップが装着された給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の筒状部材を、クリールスタンドのペグ軸から抜き取って回収するクリールロボットであって、
前記空の筒状部材を収容する収容部と、
前記空の筒状部材を、前記キャップが装着された状態で前記クリールスタンドのペグ軸から抜き取り、前記収容部に収容させる抜取部と、
前記収容部に収容された前記空の筒状部材に装着されている前記キャップと、当該空の筒状部材とを分離させる分離装置と、
を備え、前記キャップを分離した後の前記空の筒状部材が所定の回収容器に回収されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載のクリールロボットによれば、キャップが装着された状態でクリールスタンドのペグ軸から抜き取られた空の筒状部材は、キャップと分離された後、所定の回収容器に回収される。そのため、わざわざオペレータがクリールスタンドに出向いてキャップを回収しなくとも、キャップの破損を抑制しつつ空の筒状部材を回収することができ、省力化を図ることが可能となる。
【0010】
なお、上記の筒状部材は、例えば、糸条を巻回させることが可能なボビンである。
【0011】
(2)本発明のクリールロボットにおいて、前記筒状部材は磁性を帯びておらず、前記キャップは磁性を帯びた磁性部を少なくとも含むことが好ましく、前記収容部は、前記磁性部を吸着させることが可能な吸着部を有することが好ましい。また、前記分離装置は、前記磁性部が前記吸着部に吸着された状態で、前記磁性部を有するキャップと前記空の筒状部材とを分離することが可能に構成されてなることが好ましい。
【0012】
上記(2)に記載のクリールロボットによれば、磁性を帯びた磁性部を少なくとも含むキャップが吸着部に吸着された状態で、キャップと空の筒状部材とを分離させることができる。そのため、キャップと空の筒状部材とを分離するときにキャップを保持するための機構を備えることなく、簡単な構成で、キャップと空の筒状部材とを分離させることが可能となる。
【0013】
なお、磁性部を有するキャップと筒状部材との分離は、例えば、キャップに含まれる磁性部が吸着部に吸着された状態で空の筒状部材に対して力を作用することで、キャップと空の筒状部材とを分離させることができる。空の筒状部材に対して作用させる力は、キャップから空の筒状部材を物理的に離すことができれば、その態様はとくに限定されない。
【0014】
(3)本発明のクリールロボットにおいて、前記分離装置は、少なくとも前記磁性部が前記吸着部に吸着された状態で前記収容部を振動または揺動させることが可能に構成されてなることが好ましい。
【0015】
上記(3)に記載のクリールロボットによれば、磁性部が吸着部に吸着された状態で収容部を揺動または振動させることによって、キャップと空の筒状部材とを分離させることができる。そのため、キャップから空の筒状部材を物理的に分離させるための機構を備えることなく、簡単な構成で、キャップと空の筒状部材とを分離させることが可能となる。
【0016】
なお、収容部が水平に対して傾斜していることが好ましい。収容部を傾斜させることによって、収容部の振動または揺動によりキャップと空の筒状部材とが分離したときに、重力作用によって空の筒状部材が転動し、キャップと空の筒状部材とをより確実に分離させることが可能となる。
【0017】
(4)本発明のクリールロボットにおいて、前記吸着部は、通電により磁力を発生させるものであることが好ましい。
【0018】
上記(4)に記載のクリールロボットによれば、キャップと筒状部材とを分離させるときには通電を行う一方、キャップを回収するときには通電を行わないようにすることで、キャップを容易に回収することが可能となる。
【0019】
(5)本発明のクリールロボットにおいて、前記キャップは、前記筒状部材の内周に着脱自在に装着される装着部と、前記筒状部材の外径よりも大きい外径を有するフランジ部と、を有することが好ましい。また、前記分離装置は、前記筒状部材の外径よりも大きく且つ前記キャップの外径よりも小さい開口部を有し、前記キャップが前記開口部を通過せず且つ前記空の筒状部材が前記開口部を通過することによって、前記キャップと前記空の筒状部材とを分離させるよう構成されてなることが好ましい。
【0020】
上記(5)のクリールロボットによれば、筒状部材の外径よりも大きく且つキャップの外径よりも小さい開口部に空の筒状部材を通すだけの簡単な構成で、キャップと空の筒状部材とを分離させることが可能となる。
【0021】
(6)本発明のシステムは、
給糸パッケージから解舒された糸を巻き取る巻取機を少なくとも含む機台と、
前記機台に隣接して設けられ、前記給糸パッケージから解舒された糸を前記機台に供給するクリールスタンドと、
前記クリールスタンドに前記給糸パッケージを供給するクリールロボットと、
を少なくとも備えるシステムであって、
前記給糸パッケージは、
筒状部材の端部にキャップが装着されたものであり、
前記クリールロボットは、
前記筒状部材の端部にキャップが装着された給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の筒状部材を、前記クリールスタンドのペグ軸から抜き取って収容する収容部を有して構成されており、
前記システムは、さらに、
前記収容部に収容された前記空の筒状部材に装着されている前記キャップと、当該空の筒状部材とを分離させる分離装置と、
前記分離装置により前記キャップから分離された後の前記空の筒状部材を回収する回収容器と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
上記(6)に記載のシステムによれば、キャップが装着された状態でクリールスタンドのペグ軸から抜き取られた空の筒状部材は、キャップと分離された後、所定の回収容器に回収される。そのため、わざわざオペレータがクリールスタンドに出向いてキャップを回収しなくとも、キャップの破損を抑制しつつ空の筒状部材を回収することができ、省力化を図ることが可能となる。
【0023】
なお、本発明のクリールロボットは、上記(1)~(5)に記載された構成の全部を備えることは必須でない。例えば、上記(1)に記載されたクリールロボットの発明において、上記(2)~(5)に記載された構成は必須でない。また、整合を図ることができる範囲で、上記(1)に記載された構成と、上記(2)~(5)に記載された構成のうちの一部の構成と、を任意に組み合わせたものを、本発明のクリールロボットとすることもできる。また、上記(1)に記載された構成と、上記(2)~(5)に記載された構成のうちの一部又は全部の構成とを組み合わせたものを本発明のクリールロボットとすることもできる。さらに、上記(6)に示される本発明のシステムは、整合を図ることができる範囲で、(1)~(5)に記載されたクリールロボットの構成の全部または一部の構成を備えることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、キャップの破損を抑制しつつ、省力化を図ることが可能なクリールロボット及びシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】仮撚加工システムの全体の配置構成を模式的に示す平面図の一例である。
図2】クリールロボットの外観を示す斜視図の一例である。
図3】空紙管収容分離装置を示す斜視図の一例である。
図4】クリールロボットによるクリールスタンドへの給糸パッケージの載せ替え動作を示す概略斜視図の一例である。
図5】クリールロボットによる空の紙管の回収動作を示す概略斜視図の一例である。
図6】全ての糸が解舒された空の紙管の斜視図の一例である。
図7】(A)全ての糸が解舒された後の空の紙管をペグ軸から空紙管収容箱に回収するときの動作を示す斜視図の一例である。(B)キャップと空の紙管とが分離される前を示す斜視図の一例である。
図8】(A)キャップと紙管とが分離された後を示す斜視図の一例である。(B)キャップが分離された後の紙管の回収動作を示す斜視図の一例である。
図9】空紙管回収シュートの概略を示す斜視図であって、(A)空紙管回収シュートを右側上方から見た斜視図の一例、(B)空紙管回収シュートを左側上方から見た斜視図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(仮撚加工システム1の概要)
図1は、仮撚加工システム1の全体の配置構成を模式的に示す平面図の一例である。図1に示されるように、仮撚加工システム1は、長手方向に機台10が延在している。機台10は、主として、例えば、仮撚加工機12と巻取機14とを備えている。仮撚加工機12の両側には、糸供給ローラ、過熱ヒータ、加撚装置(いずれも不図示)、及び上述の巻取機14等の糸処理機構(図示省略)を備えて構成される糸処理錘が多数並んで設けられている。仮撚加工機12に対しては、クリールスタンド30より、給糸パッケージから解舒された糸が供給される。クリールスタンド30は、機台10に隣接して設けられており、クリールロボット50によって給糸パッケージが供給され、供給された給糸パッケージから解舒された糸を仮撚加工機12へと供給する機構として構成されている。上記の仮撚加工システム1は、本願発明の「システム」に相当する。
【0028】
仮撚加工機12は、給糸パッケージから解舒された糸を仮撚加工する。仮撚加工された糸は、巻取機14で巻き取られる。
【0029】
クリールスタンド30に供給された給糸パッケージは、円筒状の紙管100(後述の図6参照)の周囲に糸が巻かれていることで構成されている。なお、紙管100は一般的にボビンとも称される。上記の紙管100は、本願発明の「筒状部材」に相当する。
【0030】
クリールスタンド30への給糸パッケージの供給は、レール20を移動するクリールロボット50により行われる。例えばクリールスタンド30の長手方向に隣接して設けられた原糸保管部26には工場全体の搬送装置から一時的に給糸パッケージがプールされており、クリールロボット50は、この原糸保管部26にプールされている給糸パッケージを、クリールスタンド30に運ぶ。
【0031】
給糸パッケージから全ての糸が解舒された後、周囲に糸が巻かれていない空の紙管100(後述の図6参照)は、レール20を移動するクリールロボット50により回収される。クリールロボット50により回収された空の紙管100は、例えば隣の機台(不図示)のクリールスタンド30Aの長手方向に隣接して設けられた空紙管回収シュート24を介して、空紙管回収箱22に回収される。上記の空紙管回収箱22は、本願発明の「回収容器」に相当する。
【0032】
(クリールロボット50)
図2は、クリールロボット50の外観を示す斜視図の一例である。
【0033】
図2に示されるように、クリールロボット50は、主として、レール20(図1参照)を転動する駆動輪54を備える走行台車52と、走行台車52に対して昇降自在に設けられた給糸交換装置60と、給糸交換装置60の向きを回転させる回転機構65と、給糸交換装置60を昇降させる昇降装置66と、クリールスタンド30(図1参照)が備えるペグ軸36(後述の図4参照)を回転させるためのペグ軸回転機構70と、空の紙管100(後述の図6参照)と後述のキャップ110(後述の図6参照)とを分離させるための空紙管収容分離装置80とを備える。
【0034】
給糸交換装置60は、原糸保管部26(図1参照)からの給糸パッケージの取り出し、クリールスタンド30へ給糸パッケージの供給、及びクリールスタンド30からの空の紙管100の回収等を行う装置として構成されている。
【0035】
給糸交換装置60は、給糸パッケージを保持する機構として構成される一対の給糸パッケージ保持部材64を備えている。一対の給糸パッケージ保持部材64は、水平方向に沿って片持ち状に延びるとともに互いに平行な一対の棒状部材として設けられている。給糸交換装置60は、一対の給糸パッケージ保持部材64を給糸パッケージの紙管100(後述の図6参照)に挿入することで、給糸パッケージを保持するように構成されている。
【0036】
回転機構65は、給糸交換装置60を、一対の給糸パッケージ保持部材64が水平方向に沿って向きを変えるように回転させる装置として構成されている。回転機構65が給糸交換装置60を回転させることにより、一対の給糸パッケージ保持部材64の先端が向く方向が変わる。本実施形態では、例えば、平面視で時計方向に向けて0~270[度]の範囲で給糸交換装置60を回転させることができるように構成されているが、給糸交換装置60を回転させることができる範囲はこれに限定されない。
【0037】
空紙管収容分離装置80は、給糸交換装置60に設けられており、回転機構65により給糸交換装置60が水平方向に沿って回転すると、これに伴って水平方向に沿って回転する。
【0038】
(空紙管収容分離装置80)
図3は、空紙管収容分離装置80を示す斜視図の一例である。説明の便宜上、上下方向、左右方向、及び、前後方向の各方向を、図3に示されるように定義する。ただし、図3に示される方向は、あくまでも説明の便宜上定義したものにすぎない。
【0039】
図3に示されるように、空紙管収容分離装置80は、全ての糸が解舒された後の空の紙管100を収容することができる空紙管収容箱84を備えている。空紙管収容箱84は、例えば、平面視が矩形の箱状であり、水平な四方向のうち三方向は壁85,86,87で囲まれている。この明細書において、壁85,86,87を、それぞれ、「第1壁85」、「第2壁86」、及び「第3壁87」と称する。また、水平な四方向のうち壁が形成されていない一方向は開口されている。この明細書において、この開口された部位を「開口部89」と称する。上記の空紙管収容箱84は、本願発明の「収容部」に相当する。
【0040】
ところで、一対の給糸パッケージ保持部材64(図2参照)の先端が向く方向と、空紙管収容箱84の開口部89の方向とは、平面視で概ね90度ずれた関係にある。例えば、一対の給糸パッケージ保持部材64の先端が前方を向いているとき、空紙管収容箱84の開口部89は右側を向いており、一対の給糸パッケージ保持部材64の先端が左側を向いているとき、空紙管収容箱84の開口部89は前方を向くこととなる。
【0041】
空紙管収容箱84は、上方が開口されており、下方に底板88を有する。この底板88は、第1壁85から第2壁86に向けて下り傾斜となっている。
【0042】
また、空紙管収容分離装置80は、ベース部材82と、ベース部材82に対して水平な前後方向に移動可能な抜取部90と、この抜取部90を移動させるための機構である抜取部移動機構(不図示)とを備える。抜取部90は、上下方向を長手方向とする棒状部材90aと、先端に棒状部材90aが取り付けられて前後方向を長手方向とする軸部材90bとを備える。抜取部移動機構は、周知な構成を採用しただけにすぎないため詳細な説明は省略するが、棒状部材90aを、軸部材90bを介して前後方向に移動させる機構である。このように、棒状部材90aを抜取部移動機構により前後方向に移動させることで、棒状部材90aを、開口部89に対して近接する位置と、開口部89に対して離間する位置との間を移動させることができる。
【0043】
また、クリールロボット50は、収容箱回転駆動機構94を備える。この収容箱回転駆動機構94は、例えば、操作部96、及びベース部材82に対して軸支されている軸支部95を有して構成されている。この軸支部95は、左右方向を軸方向としている。収容箱回転駆動機構94は、空紙管収容箱84を、ベース部材82に対して軸支部95を中心として回転させることが可能な機構として構成されている。空紙管収容箱84に空の紙管100が収容されているとき、後方に向けて下り傾斜となるように空紙管収容箱84が回転すると、後方に向けて空の紙管100を移動させることができる。一方、前方に向けて下り傾斜となるように空紙管収容箱84が回転すると、前方に向けて空の紙管100を移動させることができる。
【0044】
また、空紙管収容分離装置80は、電磁石92と、振動発生部93とを備える。この電磁石92及び振動発生部93は、便宜上、図3にのみ図示されており、他の図面では図示が省略されている。
【0045】
電磁石92は、例えば第3壁87の後方側の面に設けられている。第3壁87は、鉄やコバルトなどの強磁性体で構成されており、電磁石92が通電されると磁性体となり、電磁石92への通電が停止すると非磁性体となる。振動発生部93は、例えば底板88の下面に設けられている。振動発生部93は、例えば底板88を介して空紙管収容箱84を振動させることができる。上記の電磁石92及び振動発生部93のうち少なくともいずれかが、本発明の「分離装置」に相当する。
【0046】
(クリールスタンド30への給糸パッケージの載せ替え動作)
図4は、クリールロボット50によるクリールスタンド30への給糸パッケージの載せ替え動作を示す概略斜視図の一例である。図4において、便宜上、給糸パッケージの図示が省略されている。説明の便宜上、上下方向、左右方向、及び、前後方向の各方向を、図4に示されるように定義する。ただし、図4に示される方向は、図3に示される方向とは無関係である。
【0047】
図4に示されるように、上下方向を長手方向とするクリールスタンド30の支柱32には、回転筒34が外挿されている。この回転筒34は、支柱32の長手方向(すなわち上下方向)を軸方向として、支柱32に対して回転自在となるように構成されている。回転筒34には、ペグ軸36及び爪38が設けられている。この爪38は、クリールロボット50が備えるペグ軸回転機構70の係合部72が係合可能であり、ペグ軸回転機構70が作動すると、係合部72を介して支柱32に対して回転する。爪38が支柱32に対して回転すると、これに伴って、ペグ軸36が支柱32に対して回転する。
【0048】
クリールロボット50によるクリールスタンド30への給糸パッケージの載せ替え動作は、例えば次のように行われる。なお、クリールスタンド30への給糸パッケージの載せ替え動作が行われるとき、一対の給糸パッケージ保持部材64の先端は前方(すなわちクリールスタンド30の側)を向いており、空紙管収容箱84の開口部89は右方向を向いている。また、ペグ軸36の先端は後方(すなわちクリールロボット50の側)を向いている。
【0049】
給糸パッケージをクリールスタンド30まで運んできたクリールロボット50は、ペグ軸36と一対の給糸パッケージ保持部材64とが概ね同じ高さとなるように、昇降装置66(図2参照)により給糸交換装置60(図2参照)の高さを調整する。クリールロボット50は、給糸交換装置60の高さを調整した後、一対の給糸パッケージ保持部材64を、ペグ軸36に対して進出させる(すなわち前方に向けて移動させる)。そして、クリールロボット50は、給糸交換装置60を下降させることで、給糸パッケージ保持部材64に保持されている給糸パッケージをペグ軸36に載せ、その後、一対の給糸パッケージ保持部材64を後方に向けて退避させる。クリールロボット50は、一対の給糸パッケージ保持部材64を後方に向けて退避させた後、ペグ軸回転機構70を駆動し、ペグ軸36の先端が前方を向くように、回転筒34を回転させる。
【0050】
(空の紙管100の回収動作)
図5は、クリールロボット50による空の紙管100の回収動作を示す概略斜視図の一例である。説明の便宜上、上下方向、左右方向、及び、前後方向の各方向を、図4に示される方向と同様に定義する。
【0051】
クリールロボット50による空の紙管100の回収は、例えば次のように行われる。なお、空の紙管100の回収動作が行われるとき、空紙管収容箱84の開口部89は前方(すなわちクリールスタンド30の側)を向いており、一対の給糸パッケージ保持部材64の先端は左方向を向いている。空の紙管100の回収動作が行われるとき、空紙管収容箱84の開口部89とペグ軸36の先端との前後方向における距離は、極力小さい方が好ましく、少なくとも空の紙管100の前後方向の長さよりも小さいことが好ましい。空の紙管100が、落下することなく空紙管収容箱84に収容されるようにするためである。
【0052】
クリールロボット50は、ペグ軸36に載せられている空の紙管100よりも前方に棒状部材90aを進出させるために、棒状部材90aの上端がペグ軸36に載せられている空の紙管100の下端よりも低くなるように、昇降装置66により高さを調整する。その後、クリールロボット50は、棒状部材90aがペグ軸36に載せられている空の紙管100よりも前方側に位置するように、軸部材90bを前方に向けて(すなわちペグ軸36に向けて)移動させる。その後、クリールロボット50は、棒状部材90aが空の紙管100に当接できるように、昇降装置66により高さを調整する。そして、棒状部材90aを、空の紙管100に当接させつつ、後方に向けて(すなわち開口部89に近付くように)移動させる。このようにして、ペグ軸36に載せられている空の紙管100を、開口部89に向けて移動させて、空紙管収容箱84に収容することができる。
【0053】
(紙管100及びキャップ110)
図6は、全ての糸が解舒された空の紙管100の斜視図の一例である。図6に示されるように、紙管100は円筒状の部材である。キャップ110は、外形が円形の例えばプラスチック磁石で構成されており、紙管100の長手方向における一方の端部102に装着される。
【0054】
キャップ110は、給糸パッケージから糸が解舒されるときのガイドとして、紙管100の端部に装着される。紙管100へのキャップ110の装着は、例えば、オペレータが給糸パッケージのテール継ぎを行うときに行われる。キャップ110は、中空部112を有する顎部111と、紙管100の内周面104において支持される被支持部材114と、を有する。被支持部材114は、顎部111の中空部112に設けられている。顎部111の外径(すなわちキャップ110の外径)は、紙管100の外径よりも大きい。上記の顎部111は、本願発明の「フランジ部」に相当する。また、上記の被支持部材114は、本願発明の「装着部」に相当する。
【0055】
被支持部材114は、紙管100の内周面104において支持される例えば4つの被支持部115(より詳しくは後述の図8(A)及び(B)参照)を有する。被支持部115が紙管100の内周面104に内挿されるように、紙管100の端面とキャップ110の面とを当接させると、キャップ110を紙管100に装着することができる。
【0056】
(紙管100とキャップ110との分離工程)
図7及び図8は、紙管100とキャップ110とを分離する工程の一例を示す図である。具体的には、図7(A)は、全ての糸が解舒された後の空の紙管100をペグ軸36から空紙管収容箱84に収容するときの動作を示す斜視図の一例である。図7(B)は、キャップ110と空の紙管100とが分離される前を示す斜視図の一例である。図8(A)は、キャップ110と紙管100とが分離された後を示す斜視図の一例である。図8(B)は、キャップ110が分離された後の紙管100の回収動作を示す斜視図の一例である。図7及び図8において、説明の便宜上、上下方向、左右方向、及び、前後方向の各方向を、図7及び図8に示されるように定義する。
【0057】
クリールロボット50による空の紙管100の回収動作については図5を参照して上述したとおりであるが、図7(A)に示されるように、空の紙管100は、棒状部材90aが前方側から当接している。紙管100の一方の端部(図7(A)では後方側の端部)には、キャップ110が装着されている。
【0058】
棒状部材90aが空の紙管100よりも前方側に位置している状態で、軸部材90bが後方側に向けて移動すると、ペグ軸36(図4参照)に載っている空の紙管100は、棒状部材90aとの当接によって後方側に向けて移動し、空紙管収容箱84に収容される。
【0059】
ところで、上述したように、キャップ110は例えばプラスチック磁石である。また、上述したように、第3壁87は、電磁石92が通電されることにより磁性体となるように構成されている。よって、第3壁87が磁性体であるとき、キャップ110の後方側の面が第3壁87に当接すると、図7(B)に示されるように、キャップ110の後方側の面が第3壁87に吸着された状態となる。上記の第3壁87は、本願発明の「吸着部」に相当する。
【0060】
キャップ110の後方側の面が第3壁87に吸着されたとき、キャップ110の外径が紙管100の外径より大きいため、空の紙管100が底板88から浮いた状態となる。そのため、空の紙管100は、重力作用により、キャップ110から脱落しようとする。
【0061】
空紙管収容箱84に空の紙管100が収容されると、操作部96を操作して、空紙管収容箱84を後方に向けて下り傾斜となるように回転させることが好ましい。このようにすることで、空の紙管100を後方側に向けて移動させて、キャップ110の後方側の面と第3壁87とを当接させることができる。空紙管収容箱84が後方に向けて下り傾斜となるように空紙管収容箱84を回転させるための操作部96の操作は、CPUを搭載する制御部によって行われるようにしてもよいし、オペレータが手動で操作するようにしてもよい。
【0062】
なお、空紙管収容箱84は、後方に向けて下り傾斜となるように回転させなくとも、前方に向けて下り傾斜となるように回転させない限り、常に後方に向けて下り傾斜となっていてもよい。
【0063】
また、キャップ110の後方側の面と第3壁87との当接は、空紙管収容箱84を後方に向けて下り傾斜とすることに限定されず、例えば前後方向に長い部材を棒状部材90aに設けて、空の紙管100を後方側に向けて押して移動させるようにしてもよい。
【0064】
また、キャップ110は、プラスチック磁石で構成されているが、キャップ110の全体がプラスチック磁石であることは必須でなく、磁性体としての第3壁87にキャップ110を吸着させることができればよい。例えば、キャップ110の後方側の面の全部がプラスチック磁石である必要はなく、キャップ110の後方側の面の一部のみをプラスチック磁石としてもよい。さらには、第3壁87と当接する程度に強力な磁性を帯びていれば、キャップ110の後方側の面がプラスチック磁石でなくとも、キャップ110の前方側の面がプラスチック磁石であってもよい。なお、キャップ110のうちプラスチック磁石で構成されている部位が、本願発明の「磁性部」に相当する。
【0065】
また、上述のとおり空紙管収容分離装置80は振動発生部93を備えるが、この振動発生部93は、キャップ110の後方側の面が第3壁87に吸着された状態で、空紙管収容箱84を振動させる。
【0066】
ところで、上述のとおり、キャップ110の後方側の面が第3壁87に吸着されたとき、空の紙管100に対して重力が作用する。このような重力作用に加えて、振動発生部93が空紙管収容箱84を振動させることで、図8(A)に示されるように、キャップ110と空の紙管100とを容易に分離することができるようになる。
【0067】
また、上述のとおり、底板88は、開口部89が前方を向いているとき、右方に向けて下り傾斜であるため、キャップ110から分離された空の紙管100は、重力作用によって右方向に向けて(すなわちキャップ110から離れる方向に)転動する。そのため、キャップ110と空の紙管100とが分離した後、偶発的に、空の紙管100にキャップ110が装着されてしまうことを抑制でき、キャップ110と紙管100とをより確実に分離させることができる。振動発生部93は、空紙管収容箱の振動を開始してから例えば所定時間経過後に、空紙管収容箱84の振動を停止する。上記の所定時間は、例えば、キャップ110から空の紙管100を分離するために必要な時間として設定される。なお、紙管100は、磁性を帯びていないため、第3壁87に吸着されない。
【0068】
なお、空紙管収容箱84を振動させることに代えてまたは加えて、空紙管収容箱84を揺動させるようにしてもよい。
【0069】
キャップ110から空の紙管100が分離した後、図8(B)に示されるように、空紙管収容箱84が前方に向けて下り傾斜となるように操作部96を操作し、軸支部95を中心として空紙管収容箱84を回転させる。このようにすることで、キャップ110から分離された空の紙管100は、開口部89から前方側に向けて、空紙管収容箱84から放出される。空紙管収容箱84の開口部89から前方側に向けて放出された空の紙管100は、空紙管回収シュート24(図1参照)を介して空紙管回収箱22(図1参照)に回収される。なお、空紙管収容箱84が前方に向けて下り傾斜となるように空紙管収容箱84を回転させるための操作部96の操作は、CPUを搭載する制御部によって行われるようにしてもよいし、オペレータが手動で操作するようにしてもよい。
【0070】
なお、振動発生部93は、キャップ110から空の紙管100が分離すると空紙管収容箱84(より詳しくは例えば底板88)の振動を停止しているが、振動の停止タイミングはこれに限定されない。例えば、振動発生部93は、空紙管収容箱84の開口部89から前方側に向けて空の紙管100が放出された後、空紙管収容箱84の振動を停止するようにしてもよい。
【0071】
空紙管収容箱84の開口部89から前方側に向けて空の紙管100が放出された後、空紙管収容箱84が原点位置に戻るように操作部96を操作する。その後、電磁石92への通電を停止して第3壁87を非磁性体とし、キャップ110を回収する。キャップ110の回収は、オペレータが行ってもよいが、クリールロボット50が空紙管回収箱22とは別に設けられたキャップ回収箱(不図示)に移動し、このキャップ回収箱にキャップ110が回収されるようにすると好ましい。この場合、空紙管回収箱22とは異なる場所にキャップ回収箱を配置することができるため、キャップ回収箱の配置位置が制約を受けることなく、配置に関して自由度を高めることができる。なお、空紙管収容箱84を原点位置に戻すための操作部96の操作についても、CPUを搭載する制御部によって行われるようにしてもよいし、オペレータが手動で操作するようにしてもよい。
【0072】
(作用効果)
このように、本実施形態のクリールロボット50は、給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の紙管100を、クリールスタンド30のペグ軸36から抜き取って、空紙管収容箱84に収容する。空紙管収容箱84に収容された空の紙管100にはキャップ110が装着されている。そのため、空紙管収容箱84の第3壁87にキャップを吸着させた上で、空紙管収容箱84に振動を与えたり揺動させることで、キャップ110から空の紙管100を分離させる。キャップ110から分離された空の紙管100は空紙管回収箱22に回収され、キャップ110は空の紙管100とは別に回収される。そのため、わざわざオペレータがクリールスタンド30に出向いてキャップ110を回収しなくとも、キャップ110の破損を抑制しつつ空の紙管100を回収することができ、省力化を図ることが可能となる。
【0073】
また、本実施形態では、紙管100は磁性を帯びていない一方、キャップ110はプラスチック磁性を含んでいる。そのため、キャップ110を第3壁87に吸着させた状態で、空紙管収容箱84に振動を与えたり揺動させたりするだけの簡単な構成で、キャップ110と空の紙管100とを分離することができる。
【0074】
なお、空紙管収容箱84の底板88は、水平に対して傾斜していることが好ましい。空紙管収容箱84の底板88を傾斜させることによって、空紙管収容箱84の振動または揺動によりキャップ110と空の紙管100とが分離したときに、重力作用によって空の紙管100が転動し、キャップ110と空の紙管100とをより確実に分離させることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態において、第3壁87は、第3壁87の後方に設けられた電磁石92が通電されることにより磁力が発生する。そのため、キャップ110と空の紙管100とを分離させるときには電磁石92に通電を行う一方、キャップ110を回収するときには電磁石92に通電を行わないようにして第3壁87を非磁性体とすることで、キャップ110を容易に回収することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態において、電磁石92が通電されると第3壁87が磁性体となるように構成されているが、これに限定されず、例えば、第1壁85、第2壁86、及び底板88のうち少なくともいずれかが第3壁87と同様に磁性体となるように構成してもよい。また、第1壁85、第2壁86、第3壁87、及び底板88の全部が、第3壁87と同様に磁性体となるように構成してもよい。
【0077】
また、本実施形態において、第3壁87の例えば後方側の面に電磁石92を設けて、この電磁石92が通電されると第3壁87が磁性体となるように構成されているが、電磁石92に代えて永久磁石としてもよい。このようにした場合、キャップ110を第3壁87から取り外す必要は生じるものの、例えば電磁石92を通電する等の制御を行うことなく、第3壁87にキャップ110を容易に吸着させることができる。
【0078】
また、本実施形態において、振動発生部93は、キャップ110の前方側の面が第3壁87に吸着された状態で、空紙管収容箱84を振動させることで、キャップ110と空の紙管100とを分離させているが、これに限定されない。上述したように、空紙管収容箱84を振動させることに代えてまたは加えて、空紙管収容箱84を揺動させるようにしてもよい。空紙管収容箱84の揺動は、例えば、空紙管収容箱84を例えば左右方向に揺動させることができる揺動発生部を備えることで行うことができる。揺動発生部は、キャップ110の後方側の面が第3壁87に吸着された状態で空紙管収容箱84を揺動させることで、キャップ110と空の紙管100とを分離させることができる。また、空紙管収容箱84を振動させたり揺動させることに代えてまたは加えて、キャップ110の後方側の面が第3壁87に吸着された状態で、例えばキャップ110の面に沿った方向に紙管100に対して力を作用させて、キャップ110と空の紙管100とを分離させるようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、クリールロボット50が空紙管収容分離装置80を備えているが、クリールロボット50が空紙管収容分離装置80を備えることは必須でない。例えば、空紙管収容分離装置80は、クリールロボット50とは別に設けられるようにしてもよい。この場合、クリールロボット50は、全ての糸が解舒された後の空の紙管100(キャップ110が装着された空の紙管100)を、ペグ軸36から回収し、その後、クリールロボット50とは別に設けられた空紙管収容分離装置80に供給するようにするとよい。この場合、空紙管収容分離装置80においてキャップ110から分離された空の紙管100は、空紙管回収シュート24を介して空紙管回収箱22に回収されるようにするとよい。すなわち、給糸パッケージから解舒された糸を加工する仮撚加工機12、及び仮撚加工機12で加工された糸を巻き取る巻取機14を少なくとも含む機台10と、機台10に隣接して設けられ、給糸パッケージから解舒された糸を機台10(仮撚加工機12)に供給するクリールスタンド30と、クリールスタンド30に給糸パッケージを供給するクリールロボット50と、を少なくとも備える仮撚加工システム1に関する発明であってもよい。この場合、給糸パッケージは、紙管100の端部102にキャップ110が装着されたものであり、クリールロボット50は、紙管100の端部102にキャップ110が装着された給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の紙管100を、クリールスタンド30のペグ軸36から抜き取って収容する空紙管収容箱84を有することが好ましい。また、仮撚加工システム1は、さらに、空紙管収容箱84に収容された空の紙管100に装着されているキャップ110と、空の紙管100とを分離させる空紙管収容分離装置80と、空紙管収容分離装置80によりキャップ110から分離された後の空の紙管100を回収する空紙管回収箱22と、を備えることが好ましい。このような仮撚加工システム1であっても、キャップ110が装着された状態でクリールスタンド30のペグ軸36から抜き取られた空の紙管100は、キャップ110と分離された後、空紙管回収箱22に回収される。そのため、わざわざオペレータがクリールスタンドに出向いてキャップ110を回収しなくとも、キャップ110の破損を抑制しつつ空の紙管100を回収することができ、省力化を図ることが可能となる。
【0080】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の空紙管収容分離装置80に代えて、後述の分離装置80Aにより、空の紙管100とキャップ110とを分離するようにしてもよい。以下、図9を参照して、分離装置80Aについて説明する。説明の便宜上、上下方向、左右方向、及び、前後方向の各方向を、図9に示されるように定義する。
【0081】
図9は、空紙管回収シュート24Aの概略を示す斜視図であって、(A)空紙管回収シュート24Aを右側上方から見た斜視図の一例、(B)空紙管回収シュート24Aを左側上方から見た斜視図の一例である。
【0082】
図9(A)及び(B)に示されるように、変形例では、空紙管回収シュート24Aが、キャップ110と空の紙管100とを分離させる分離装置80Aを備えている。空紙管回収シュート24Aは、例えば、図1に示される空紙管回収シュート24と同じ位置に配置されている。空紙管回収シュート24Aは、仮撚加工システムにおいていずれの場所に配置されてもよいが、空紙管回収箱と隣接して配置されることが好ましい。
【0083】
空紙管回収シュート24Aは、紙管進入口241Aを備えており、図示しないクリールロボットから放出された空の紙管100は、紙管進入口241Aから空紙管回収シュート24Aに進入する。
【0084】
上記の図示しないクリールロボットは、本実施形態において説明したクリールロボット50が備える電磁石92及び振動発生部93(いずれも図3参照)を備えていないが、この点を除いて、図2に示されるクリールロボット50と同様である。すなわち、上記の図示しないクリールロボットは、空紙管収容箱84(図3参照)を備えており、キャップ110が装着された給糸パッケージから全ての糸が解舒された後の空の紙管100を、クリールスタンド30のペグ軸36(いずれも図4参照)から抜き取って収容できるように構成されている。また、上記の図示しないクリールロボットは、収容箱回転駆動機構94(図3参照)を備えており、クリールスタンド30のペグ軸36から抜き取って空紙管収容箱84に収容された空の紙管100は、前方に向けて放出される。なお、空紙管収容箱84に収容された空の紙管100は、キャップ110が装着された状態で放出される。このようにして放出された空の紙管100が、上述の紙管進入口241Aから空紙管回収シュート24Aに進入する。
【0085】
分離装置80Aは、紙管進入口241Aから空紙管回収シュート24Aに進入した空の紙管100の通過経路に、設けられている。この分離装置80Aは、例えば板状部材であって、開口部81Aが形成されている。また、板状部材である分離装置80Aは、例えば左側に向けて下り傾斜となるように設けられている。
【0086】
分離装置80Aよりも重力方向の下流側には、紙管回収通路242Aとキャップ回収通路243Aとが形成されている。紙管回収通路242Aとキャップ回収通路243Aとの間は仕切られている。紙管回収通路242Aよりも重力方向の下流側には空紙管回収箱(不図示)が配置されており、キャップ回収通路243Aよりも重力方向の下流側にはキャップ回収箱(不図示)が配置されている。
【0087】
開口部81Aは、紙管進入口241Aから空紙管回収シュート24Aに進入した空の紙管100が重力作用により落下したときに通過できるように、例えば、空の紙管100の外径よりも大きい円形の開口部である。ただし、開口部81Aは、キャップ110が備える顎部111(図6参照)の外径よりも小さい。紙管進入口241Aから空紙管回収シュート24Aに進入した空の紙管100にはキャップ110が装着されているため、空の紙管100に装着されたキャップ110は開口部81Aを通過せず、空の紙管100は開口部81Aを通過する。
【0088】
分離装置80Aでキャップ110と空の紙管100とが分離されると、キャップ110から分離された空の紙管100は、紙管回収通路242Aを通過し、空紙管回収箱(不図示)に回収される。一方、空の紙管100から分離されたキャップ110は、例えば左側に向けて下り傾斜となるように設けられている分離装置80Aに沿って左側に向けて移動し、キャップ回収通路243Aを通過する。そして、キャップ回収通路243Aを通過したキャップ110は、キャップ回収箱(不図示)に回収される。キャップ回収箱は、例えば、回収されるキャップ110が破損しないように、空紙管回収箱よりも高い位置に設けられていたり、緩衝部材が設けられていることが好ましい。
【0089】
このように、変形例の分離装置80Aは、クリールロボット(不図示)の空紙管収容箱84(図3参照)から放出された空の紙管100を、この空の紙管100に装着されているキャップ110と、空の紙管100とを分離させることができる。また、キャップ110と空の紙管100とが分離された後、空の紙管100は紙管回収通路242Aを流下し、キャップ110はキャップ回収通路243Aを流下する。そのため、互いに分離された後のキャップ110及び空の紙管100を、それぞれ、別の回収箱に回収することができる。よって、わざわざオペレータがクリールスタンド30(図1参照)に出向いてキャップ110を回収しなくとも、キャップ110の破損を抑制しつつ空の紙管100を回収することができ、省力化を図ることが可能となる。
【0090】
なお、上述の分離装置80Aは、空紙管回収シュート24Aが備えているが、これは必須でない。例えば、クリールロボット(不図示)が上述の分離装置80Aを備えるようにしてもよい。
【0091】
また、上述のクリールロボット(不図示)は、電磁石92及び振動発生部93(いずれも図3参照)を備えていない旨を説明したが、これに限定されない。例えば、仮撚加工システム(不図示)は、本実施形態において説明した空紙管収容分離装置80(図3参照)を備えるクリールロボット50と、変形例において説明した分離装置80Aを備える空紙管回収シュート24Aとの両方を備えていてもよい。この場合、空紙管収容分離装置80においてキャップ110と空の紙管100とを分離することができなかったとしても、分離装置80Aにおいてキャップ110と空の紙管100とを分離することが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
1 仮撚加工システム
10 機台
22 空紙管回収箱
30 クリールスタンンド
36 ペグ軸
50 クリールロボット
80 空紙管収容分離装置
80A 分離装置
81A 開口部
87 第3壁
90 抜取部
111 顎部
114 被支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
(仮撚加工システム1の概要)
図1は、仮撚加工システム1の全体の配置構成を模式的に示す平面図の一例である。図1に示されるように、仮撚加工システム1は、長手方向に機台10が延在している。機台10は、主として、例えば、仮撚加工機12と巻取機14とを備えている。仮撚加工機12の両側には、糸供給ローラ、熱ヒータ、加撚装置(いずれも不図示)、及び上述の巻取機14等の糸処理機構(図示省略)を備えて構成される糸処理錘が多数並んで設けられている。仮撚加工機12に対しては、クリールスタンド30より、給糸パッケージから解舒された糸が供給される。クリールスタンド30は、機台10に隣接して設けられており、クリールロボット50によって給糸パッケージが供給され、供給された給糸パッケージから解舒された糸を仮撚加工機12へと供給する機構として構成されている。上記の仮撚加工システム1は、本願発明の「システム」に相当する。