(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086136
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240620BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E02D27/00 C
E02D27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201110
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA12
2D046CA05
(57)【要約】
【課題】1本の柱を2本の杭で支持することを実現できる基礎構造を提供する。
【解決手段】4つの斜材7は、4本の小梁24のそれぞれに対応して設けられ、2本の杭2の並列方向に直交し小梁24から第1筒状体4まで斜め下方向に延びる。斜材7の上端部7aの上下方向に延びる長穴7cおよびガセットプレート31の貫通穴31aにボルト36が挿通されることで斜材7と小梁24とがガセットプレート31を介して接続されており、斜材7の下端部7bの上下方向に延びる長穴7cおよびガセットプレート32の貫通穴32aにボルト36が挿通されることで斜材7と第1筒状体4とがガセットプレート32を介して接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設置された2本の杭の間に配置された柱に前記2本の杭の並列方向において前記柱を挟んで接合され前記並列方向に延びる2本の第1梁、および前記並列方向に直交する方向において2本の杭のそれぞれの一方側および他方側に配置され前記並列方向に延びる4本の第2梁を有する基礎梁と、
上下方向に延び、前記2本の第1梁にそれぞれ接合された2つの第1筒状体と、
上下方向に延び、前記2本の杭のそれぞれの頭部の周囲を取り巻き、前記2つの第1筒状体のそれぞれの下端部の周囲を取り巻く2つの第2筒状体と、
前記2つの第1筒状体のうちの一方の前記第1筒状体の内部および前記2つの第2筒状体のうちの一方の前記第2筒状体の内部に充填された第1コンクリートと、
他方の前記第1筒状体の内部および他方の前記第2筒状体の内部に充填された第2コンクリートと、
前記4本の第2梁のそれぞれに対応して設けられ、前記並列方向に直交し前記第2梁から前記第1筒状体または前記第2筒状体まで斜め下方向に延びる4つの斜材とを備え、
前記4本の第2梁には、それぞれ第1接続部材が設けられており、
前記2つの第1筒状体または前記2つの第2筒状体には、それぞれ2つの第2接続部材が設けられており、
前記第1接続部材、前記第2接続部材、前記斜材の一端部および他端部には、それぞれ貫通穴が形成されており、
前記斜材の一端部の前記貫通穴および前記第1接続部材の前記貫通穴にピンが挿通されることで前記斜材と前記第2梁とが前記第1接続部材を介して接続されており、
前記斜材の他端部の前記貫通穴および前記第2接続部材の前記貫通穴にピンが挿通されることで前記斜材と前記第1筒状体または前記第2筒状体とが前記第2接続部材を介して接続されており、
前記第1接続部材の前記貫通穴および前記斜材の一端部の前記貫通穴の少なくともいずれかは、上下方向に延びる長穴であり、
前記第2接続部材の前記貫通穴および前記斜材の他端部の前記貫通穴の少なくともいずれかは、上下方向に延びる長穴であることを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記第2梁は、ウェブが水平となるように配置されたH形鋼により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記基礎梁上にはスラブが配置されており、
前記第2梁を形成するH形鋼の前記ウェブ上の空間が前記スラブで埋められていることを特徴とする請求項2に記載の基礎構造。
【請求項4】
前記基礎梁は、前記並列方向に直交する方向において前記柱を挟んで前記柱に接合され前記並列方向に直交する方向に延びる2本の第3梁をさらに有し、
前記4本の第2梁のうちの2本の第2梁は、前記2本の第3梁のうちの一方の前記第3梁を挟んで一方の前記第3梁に接合され、残りの2本の第2梁は、他方の前記第3梁を挟んで他方の前記第3梁に接合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基礎構造。
【請求項5】
前記基礎梁は、前記並列方向に直交する方向に延びる4本の第4梁をさらに有し、
前記4本の第4梁のうちの2本の第4梁は、前記2本の第1梁のうちの一方の前記第1梁を挟んで一方の前記第1梁に接合され、残りの2本の第4梁は、他方の前記第1梁を挟んで他方の前記第1梁に接合され、かつ、前記4本の第4梁は、前記4本の第2梁のそれぞれに1本ずつ接合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の構造物を支持する基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の構造物を支持する基礎構造として、特許文献1には、基礎梁に接合された第1の筒状体と、地盤に設置された杭の頭部の周囲を取り巻き、かつ第1の筒状体の周囲の全部または一部を第1の筒状体の上端の下方において取り巻く第2の筒状体と、第1および第2の筒状体の内部に充填されたコンクリートとにより、基礎梁と杭とを接合する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、1本の柱を1本の杭で支持するものであるが、構造物の重量が大きい場合等において、1本の柱を2本の杭で支持する基礎構造が求められていた。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、1本の柱を2本の杭で支持することを実現できる基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の基礎構造は、地盤に設置された2本の杭の間に配置された柱に前記2本の杭の並列方向において前記柱を挟んで接合され前記並列方向に延びる2本の第1梁、および前記並列方向に直交する方向において2本の杭のそれぞれの一方側および他方側に配置され前記並列方向に延びる4本の第2梁を有する基礎梁と、上下方向に延び、前記2本の第1梁にそれぞれ接合された2つの第1筒状体と、上下方向に延び、前記2本の杭のそれぞれの頭部の周囲を取り巻き、前記2つの第1筒状体のそれぞれの下端部の周囲を取り巻く2つの第2筒状体と、前記2つの第1筒状体のうちの一方の前記第1筒状体の内部および前記2つの第2筒状体のうちの一方の前記第2筒状体の内部に充填された第1コンクリートと、他方の前記第1筒状体の内部および他方の前記第2筒状体の内部に充填された第2コンクリートと、前記4本の第2梁のそれぞれに対応して設けられ、前記並列方向に直交し前記第2梁から前記第1筒状体または前記第2筒状体まで斜め下方向に延びる4つの斜材とを備え、前記4本の第2梁には、それぞれ第1接続部材が設けられており、前記2つの第1筒状体または前記2つの第2筒状体には、それぞれ2つの第2接続部材が設けられており、前記第1接続部材、前記第2接続部材、前記斜材の一端部および他端部には、それぞれ貫通穴が形成されており、前記斜材の一端部の前記貫通穴および前記第1接続部材の前記貫通穴にピンが挿通されることで前記斜材と前記第2梁とが前記第1接続部材を介して接続されており、前記斜材の他端部の前記貫通穴および前記第2接続部材の前記貫通穴にピンが挿通されることで前記斜材と前記第1筒状体または前記第2筒状体とが前記第2接続部材を介して接続されており、前記第1接続部材の前記貫通穴および前記斜材の一端部の前記貫通穴の少なくともいずれかは、上下方向に延びる長穴であり、前記第2接続部材の前記貫通穴および前記斜材の他端部の前記貫通穴の少なくともいずれかは、上下方向に延びる長穴であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基礎構造によれば、1本の柱を2本の杭で支持することを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る基礎構造を示す平面図である。
【
図4】第1筒状体が斜材とは逆側に傾いた場合の斜材の状態を示す図である。
【
図5】第1筒状体が斜材側に傾いた場合の斜材の状態を示す図である。
【
図6】斜材の上端側のボルトと下端側のボルトとの中心軸間の距離の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0010】
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る基礎構造を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線に沿った断面図である。なお、以下の説明において、
図1の紙面に直交する方向を上下方向とし、紙面表方向を上方とする。上下方向は鉛直方向である。また、
図1の矢印で示す前後左右を前後左右方向とする。左右方向および前後方向は、互いに直交し、かつ、いずれも上下方向に直交し、水平方向に平行な方向である。
【0012】
図1、
図2に示すように、本実施の形態に係る基礎構造1は、2本の杭2と、基礎梁3と、2つの第1筒状体4と、2つの第2筒状体5と、2つのコンクリート6と、4つの斜材7とを備える。
【0013】
2本の杭2は、左右方向(並列方向に相当)に互いに離間して地盤8に設置されている。杭2は、上下方向に延びる円柱形状に形成されている。杭2は、その頭部2aを地盤8上に形成された捨てコンクリート9から上方へ突出させた状態で設置されている。杭2は、場所打ち杭であってもよいし、既製杭であってもよい。
【0014】
基礎梁3は、建物等の構造物の柱11を支持する。柱11は、左右方向において2本の杭2の間に配置されている。基礎梁3上には、スラブ12が配置されている。なお、
図1においては、スラブ12の図示を省略している。
【0015】
基礎梁3は、左右方向に延びる2本の大梁21(第1梁に相当)と、前後方向に延びる2本の大梁22(第3梁に相当)と、前後方向に延びる4本の小梁23(第4梁に相当)と、左右方向に延びる4本の小梁24(第2梁に相当)とを備える。
【0016】
2本の大梁21は、左右方向において柱11を挟んで柱11に接合されている。2本の大梁21のうちの左側の大梁21は、左側の杭2の中心軸上に配置されている。左側の大梁21は、柱11の左側の側面の下端部に接合されている。右側の大梁21は、右側の杭2の中心軸上に配置されている。右側の大梁21は、柱11の右側の側面の下端部に接合されている。
【0017】
2本の大梁22は、前後方向において柱11を挟んで柱11に接合されている。2本の大梁22のうちの前側の大梁22は、柱11の前側の側面の下端部に接合されている。後側の大梁22は、柱11の後側の側面の下端部に接合されている。
【0018】
大梁21,22は、H形鋼からなる。大梁21,22は、それぞれのフランジ21a,22aが水平となるように配置されている。
【0019】
4本の小梁23は、4本の小梁24のそれぞれに1本ずつ接合され、かつ前後方向において2本の大梁21のそれぞれを挟んで2本の大梁21のそれぞれに接合されている。すなわち、4本の小梁23のうちの2本の小梁23は左側の大梁21に接合され、残りの2本の小梁23は右側の大梁21に接合されている。そして、左側の大梁21に接合された小梁23は、大梁22の左側において、左側の大梁21の前側と後側とに1本ずつ配置されている。また、右側の大梁21に接合された小梁23は、大梁22の右側において、右側の大梁21の前側と後側とに1本ずつ配置されている。
【0020】
小梁23は、H形鋼からなる。小梁23は、フランジ23aが水平となるように配置されている。
【0021】
小梁24は、大梁22と小梁23とをつなぐ梁である。4本の小梁24のうちの2本の小梁24は、前側の大梁22を挟んで前側の大梁22に接合され、残りの2本の小梁24は、後側の大梁22を挟んで後側の大梁22に接合されている。これにより、小梁24は、左側の大梁21の前側、左側の大梁21の後側、右側の大梁21の前側、および右側の大梁21の後側に1本ずつ配置されている。換言すれば、小梁24は、2本の杭2のそれぞれの前側(一方側)および後側(他方側)に1本ずつ配置されている。
【0022】
小梁24は、H形鋼からなる。小梁24は、ウェブ24bが水平となるように配置されている。そして、小梁24のウェブ24b上の空間がスラブ12で埋められている。すなわち、小梁24のウェブ24bと、2つのフランジ24aのウェブ24bから上側の部分とで規定される空間が、スラブ12で埋められている。
【0023】
4本の小梁24には、それぞれガセットプレート31(第1接続部材に相当)が設けられている。ガセットプレート31は、小梁24と斜材7とを接続するためのものである。ガセットプレート31は、小梁24の2つのフランジ24aのうちの杭2側(第1筒状体4側)のフランジ24aに立設されている。すなわち、杭2の前側の小梁24においては、後側のフランジ24aにガセットプレート31が立設されている。杭2の後側の小梁24においては、前側のフランジ24aにガセットプレート31が立設されている。
【0024】
ガセットプレート31には、後述するボルト(ピンに相当)36が挿通される貫通穴31aが形成されている。貫通穴31aは、ボルト36よりわずかに大きい直径を有し、ガセットプレート31に対するボルト36の移動を許容しない。
【0025】
第1筒状体4は、上下方向に延びる円筒形状の鋼管からなる。2つの第1筒状体4は、2本の大梁21にそれぞれ接合されている。第1筒状体4は、2つの半割れ管を、それらの上部において大梁21に接合し、下部においては互いに接合して形成されている。第1筒状体4は、その中心軸が、杭2の中心軸と一致するように配置されている。第1筒状体4の上端は、大梁21のフランジ21aの上面および大梁22の22aの上面と同じ高さ位置にある。第1筒状体4の下端は、杭2の上端より上方にある。
【0026】
2つの第1筒状体4には、それぞれ2つのガセットプレート32(第2接続部材に相当)が設けられている。ガセットプレート32は、第1筒状体4と斜材7とを接続するためのものである。第1筒状体4に設けられた2つのガセットプレート32は、前後方向に沿った第1筒状体4の中心線上において、第1筒状体4を挟んで第1筒状体4の外周上に立設されている。ガセットプレート32は、上下方向においては、ガセットプレート31より低い位置において、第2筒状体5の上端より高い位置に配置されている。
【0027】
ガセットプレート32には、後述するボルト(ピンに相当)36が挿通される貫通穴32aが形成されている。貫通穴32aは、ボルト36よりわずかに大きい直径を有し、ガセットプレート32に対するボルト36の移動を許容しない。
【0028】
第2筒状体5は、上下方向に延びる円筒形状の鋼管からなる。第2筒状体5は、捨てコンクリート9上に配置されている。2つの第2筒状体5は、2本の杭2のそれぞれの頭部2aの周囲を全周にわたって、頭部2aから間隔をおいて取り巻いている。また、2つの第2筒状体5は、2つの第1筒状体4のそれぞれの下端部4aの周囲を全周にわたって、下端部4aから間隔をおいて取り巻いている。第2筒状体5は、その中心軸が、杭2の中心軸および第1筒状体4の中心軸と一致するように配置されている。第2筒状体5を形成する鋼管は、好ましくは、第1筒状体4を形成する鋼管と同じ厚さを有し、第1筒状体4を形成する鋼管より内径および外径が大きい。
【0029】
2つのコンクリート6のうちの一方のコンクリート6(第1または第2コンクリートに相当)は、左側の第1筒状体4の内部および左側の第2筒状体5の内部に充填されている。他方のコンクリート6(第2または第1コンクリートに相当)は、右側の第1筒状体4の内部および右側の第2筒状体5の内部に充填されている。
【0030】
これにより、左側の第1筒状体4と左側の第2筒状体5とが左側のコンクリート6を介して相互に一体にされ、左側の第1筒状体4および左側の第2筒状体5と左側の杭2とが左側のコンクリート6を介して相互に一体にされている。さらに、左側の大梁21と左側の第1筒状体4および左側の第2筒状体5とが左側のコンクリート6を介して相互に一体にされている。また、右側の第1筒状体4と右側の第2筒状体5とが右側のコンクリート6を介して相互に一体にされ、右側の第1筒状体4および右側の第2筒状体5と右側の杭2とが右側のコンクリート6を介して相互に一体にされている。さらに、右側の大梁21と右側の第1筒状体4および右側の第2筒状体5とが右側のコンクリート6を介して相互に一体にされている。
【0031】
斜材7は、前後方向に沿って、すなわち2本の杭2の並列方向に直交し、小梁24から第1筒状体まで斜め下方向に延びる部材である。4つの斜材7は、4本の小梁24のそれぞれに対応して設けられている。斜材7の延びる方向の上下方向に対する角度は、例えば、45度とすることができる。
【0032】
斜材7の上端部(一端部に相当)7aおよび下端部(他端部に相当)7bには、それぞれ上下方向に延びる貫通穴である長穴7cが形成されている。
【0033】
斜材7の上端部7aの長穴7cおよびガセットプレート31の貫通穴31aにボルト36が挿通されることで斜材7と小梁24とがガセットプレート31を介して接続されている。
【0034】
斜材7の下端部7bの長穴7cおよびガセットプレート32の貫通穴32aにボルト36が挿通されることで斜材7と第1筒状体4とがガセットプレート32を介して接続されている。
【0035】
ボルト36には、ボルト36の脱落防止のためにナット(図示せず)が螺合されているが、斜材7とガセットプレート31,32とは固定されておらず、長穴7cによりボルト36に対する斜材7の上下方向の移動は許容される。
【0036】
本実施の形態では、斜材7は、ガセットプレート31,32を挟んでガセットプレート31,32に接続された2本の溝形鋼41により形成されている。
【0037】
次に、基礎構造1の作用について説明する。
【0038】
地震のない通常時には、
図3に示すように、斜材7は、自重により、上端部7aおよび下端部7bにおいてボルト36が長穴7cの上端にある状態になっている。なお、
図3は、前側の斜材7を示している。後述する
図4、
図5も同様である。
【0039】
ここで、前後方向における斜材7の上端側のボルト36と下端側のボルト36との中心軸間の距離をLとする。また、通常時における斜材7の上端側のボルト36と下端側のボルト36との中心軸間の距離をd1とする。
【0040】
地震の発生により、杭2の頭部2aに左右方向を回転軸とする回転(前後方向の揺動)が生じた場合、第1筒状体4および第2筒状体5と杭2とがコンクリート6を介して相互に一体にされていることから、第1筒状体4および第2筒状体5も回転する。
【0041】
この回転により、各斜材7において、前後方向における当該斜材7とは逆側に第1筒状体4が傾いた場合、すなわち、
図3に示した前側の斜材7であれば第1筒状体4が後側に傾いた場合、
図4に示すように、斜材7の上端側が上昇する。
【0042】
ここで、
図4に示すように、斜材7の上端側が上昇して、上端部7aにおいてボルト36が長穴7cの下端にあり、下端部7bにおいてボルト36が長穴7cの上端にある状態における斜材7の上端側のボルト36と下端側のボルト36との中心軸間の距離をd2とする。
【0043】
一方、各斜材7において、前後方向における当該斜材7側に第1筒状体4が傾いた場合、すなわち、
図3に示した前側の斜材7であれば第1筒状体4が前側に傾いた場合、
図5に示すように、斜材7の下端側が上昇する。
【0044】
ここで、
図5に示すように、斜材7の下端側が上昇して、上端部7aにおいてボルト36が長穴7cの上端にあり、下端部7bにおいてボルト36が長穴7cの下端にある状態における斜材7の上端側のボルト36と下端側のボルト36との中心軸間の距離をd3とする。
【0045】
上述した距離d1~d3は、
図6に示すように、d2<d1<d3の大小関係にあり、第1筒状体4および第2筒状体5の回転により、斜材7の上端側のボルト36と下端側のボルト36との中心軸間の距離は変化する。一方、地震による第1筒状体4および第2筒状体5の回転角度θは微小であるため、前後方向におけるボルト36間の距離Lは一定とみなすことができる。
【0046】
このことから、杭2、第1筒状体4、および第2筒状体5の左右方向を回転軸とする回転を許容しつつ、前後方向において杭2、第1筒状体4、および第2筒状体5を拘束して移動を抑えることができる。すなわち、前後方向において、基礎梁3と杭2の頭部2aとの間の曲げモーメントの伝達は回避しつつ、せん断力は伝達可能になっている。
【0047】
ここで、基礎構造1は、2本の杭2の並列方向である左右方向については、基礎梁3と杭2の頭部2aとの間の曲げモーメントおよびせん断力の伝達が可能な構造である。
【0048】
一方、前後方向については、大梁21の弱軸方向であるため、基礎梁3と杭2の頭部2aとの間で曲げモーメントを伝達することが困難である。前後方向についても左右方向と同様に基礎梁3と杭2の頭部2aとの間で曲げモーメントを伝達可能としようとすると、大断面の鉄骨を用いた補助梁等が必要となり、実現が困難である。
【0049】
これに対し、基礎構造1では、上述のように、斜材7を設けることで、大梁21の弱軸方向(前後方向)において、基礎梁3と杭2の頭部2aとの間の曲げモーメントの伝達は回避しつつ、せん断力は伝達可能としている。このため、せん断力を主要因とする回転は抑えられるとともに、横座屈も抑えられる。
【0050】
これにより、基礎構造1によれば、2本の杭2の並列方向に直交する前後方向が弱軸方向となるように大梁21が設置されていても、1本の柱11を2本の杭2で支持することを実現できる。
【0051】
また、基礎構造1では、斜材7が接続された小梁24は、ウェブ24bが水平となるように配置されている。このように、小梁24の強軸方向を前後方向とすることで、前後方向における杭2、第1筒状体4、および第2筒状体5の拘束力を高めることができる。
【0052】
また、基礎構造1では、小梁24のウェブ24b上の空間がスラブ12で埋められている。これにより、小梁24がスラブ12に拘束されるので、前後方向における杭2、第1筒状体4、および第2筒状体5の拘束力をより高めることができる。
【0053】
なお、上述した実施の形態では、斜材7に設けられた貫通穴が長穴7cであるとした。しかし、斜材7に設けられた貫通穴が長穴ではなく、ガセットプレート31,32に設けられた貫通穴が上下方向に延びる長穴であってもよい。また、斜材7の貫通穴およびガセットプレート31,32の貫通穴がいずれも、上下方向に延びる長穴であってもよい。
【0054】
また、上述した実施の形態では、斜材7と第1筒状体4とがガセットプレート32を介して接続されている構成について説明した。しかし、ガセットプレート32が第2筒状体5に設けられ、斜材7と第2筒状体5とがガセットプレート32を介して接続されている構成でもよい。
【0055】
また、上述した実施の形態では、斜材7とガセットプレート31,32とをボルト36により接続したが、これに限らず、ボルト以外のピンを用いてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態では、2本の杭2の並列方向に直交する方向(前後方向)が弱軸方向となるように大梁21が設置されている構成について説明したが、強軸方向が前後方向となるように大梁21が設置されている場合でも、本発明は適用可能である。
【0057】
また、上述した実施の形態では、斜材7は、2本の溝形鋼41からなるものとしたが、これに限らず、例えば、1本の溝形鋼や、H型鋼、I形鋼、T形鋼、山形鋼、平鋼やそれらを組み合わせたものでもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態では、小梁24を、ウェブ24bが水平となるように配置したが、フランジ24aが水平になるように配置してもよい。
【0059】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 基礎構造
2 杭
3 基礎梁
4 第1筒状体
5 第2筒状体
6 コンクリート
7 斜材
7a 上端部
7b 下端部
7c 長穴
8 地盤
9 捨てコンクリート
11 柱
12 スラブ
21,22 大梁
23,24 小梁
21a,22a,23a,24a フランジ
24b ウェブ
31,32 ガセットプレート
31a,32a 貫通穴
36 ボルト
41 溝形鋼