(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086137
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】容器詰無糖紅茶飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201111
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 藍
(72)【発明者】
【氏名】福井 美帆
(72)【発明者】
【氏名】岩城 正治
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 眞也
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB08
4B027FB13
4B027FC01
4B027FC02
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4B027FP72
4B027FP80
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4B027FP85
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、タンニンによる苦渋味が抑制された容器詰無糖紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】本発明の第1の飲料は、タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、バニリンの含有濃度が36μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料である。
また、本発明の第2の飲料は、タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、バニリンの含有濃度が36μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料。
【請求項2】
バニリンの含有濃度が36~300μg/Lである、請求項1に記載の容器詰無糖紅茶飲料。
【請求項3】
タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料。
【請求項4】
リナロールオキシドの含有濃度が135~8000μg/Lである、請求項3に記載の容器詰無糖紅茶飲料。
【請求項5】
ゲラニオールの含有濃度が3mg/L未満である、請求項3に記載の容器詰無糖紅茶飲料。
【請求項6】
さらに、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、請求項1に記載の容器詰無糖紅茶飲料。
【請求項7】
タンニンの含有濃度が200~900mg/Lである、請求項1~6のいずれかに記載の容器詰無糖紅茶飲料。
【請求項8】
タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法。
【請求項9】
タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法。
【請求項10】
タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法。
【請求項11】
タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰無糖紅茶飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、タンニンによる苦渋味(以下、単に「苦渋味」とも表示する)が抑制された容器詰無糖紅茶飲料、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
茶飲料は、独特な香気と、苦味、渋味が醸し出す爽やかな風味から、古くから嗜好飲料、健康飲料として親しまれてきた代表的な飲料である。茶飲料には、緑茶、半発酵茶(烏龍茶)、発酵茶(紅茶)等、各種の茶から調製されたものがあり、近年は、缶詰、ペットボトル詰、又は紙パック等の容器詰飲料として、流通に供されている。紅茶飲料は、紅茶の独特な香気と、苦味、渋味をもつ味覚から、嗜好の面から或いは健康志向の面から、茶飲料の中でも特に愛用されている飲料の一つであり、各種香味バリエーションに調製された紅茶飲料が、缶やペットボトルなどに充填された容器詰紅茶飲料として提供されている。
【0003】
ところで、紅茶のタンニン値を高くすると、呈味のベースとなる苦渋味が上がり、飲みごたえが向上する。その一方で、飲用した際、後に残る苦渋味が強くなり飲みづらくなるという課題があった。この課題は、特に無糖紅茶飲料において、より一層大きな課題であった。例えば特許文献1や、特許文献2には紅茶に含まれる有効成分を高濃度含有するにもかかわらず、紅茶飲料の苦渋味を改善する技術が示されている。具体的に、特許文献1にはタンニン及びテアフラビン類を、所定の量及び重量比で紅茶飲料に含有させる技術が開示されている。また、特許文献2には、プロアントシアニジン及びタンニンを所定の量で紅茶飲料に含有させる技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、所定濃度以上のタンニンを含有する容器詰無糖紅茶飲料に、所定濃度のバニリン又はリナロールオキシドを含有させることや、前述の容器詰無糖紅茶飲料に所定濃度のバニリン又はリナロールオキシドを含有させることによって上記の苦渋味を抑制できることはこれまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-125428号公報
【特許文献2】特開2009-11204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、タンニンによる苦渋味が抑制された容器詰無糖紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述したように、タンニン値が所定濃度以上の容器詰紅茶飲料には、タンニンによる苦渋味が強く、飲みづらくなるという課題があり、無糖紅茶飲料においてその課題はより大きいものであった。
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製するか、あるいは、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することによって、タンニンによる苦渋味を抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、バニリンの含有濃度が36μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料;
(2)バニリンの含有濃度が36~300μg/Lである、上記(1)に記載の容器詰無糖紅茶飲料;
(3)タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料;
(4)リナロールオキシドの含有濃度が135~8000μg/Lである、上記(3)に記載の容器詰無糖紅茶飲料;
(5)ゲラニオールの含有濃度が3mg/L未満である、上記(3)又は(4)に記載の容器詰無糖紅茶飲料;
(6)さらに、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の容器詰無糖紅茶飲料;
(7)タンニンの含有濃度が200~900mg/Lである、上記(1)~(6)のいずれかに記載の容器詰無糖紅茶飲料;
(8)タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法;
(9)タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法;
(10)タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法;
(11)タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法;
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タンニンによる苦渋味が抑制された容器詰無糖紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
[1]タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、バニリンの含有濃度が36μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料(以下、「本発明の第1の飲料」とも表示する。);
[2]タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料(以下、「本発明の第2の飲料」とも表示する。);
(以下、本発明の第1の飲料と第2の飲料を併せて、「本発明の飲料」とも表示する。);
[3]タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法(以下、「本発明の第1の製造方法」とも表示する。);
[4]タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法(以下、「本発明の第2の製造方法」とも表示する。);
(以下、本明細書において、本発明の第1の製造方法と第2の製造方法を併せて、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[5]タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法(以下、「本発明の第1の抑制方法」とも表示する。);
[6]タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法(以下、「本発明の第2の抑制方法」とも表示する。);
(以下、本明細書において、本発明の第1の抑制方法と第2の抑制方法を併せて、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
等の実施態様を含む。
【0012】
(紅茶抽出物)
紅茶飲料には紅茶抽出物が含まれる。本明細書において、「紅茶抽出物」とは、紅茶葉を抽出処理に供することにより得られる抽出物を意味する。また、本明細書において紅茶抽出物には、紅茶葉からの抽出液(紅茶抽出液)それ自体や、その加工品類(例えば、紅茶抽出液を濃縮処理や粉末化処理等した紅茶抽出物エキス)等が含まれる。
【0013】
紅茶抽出物の原料として利用できる紅茶葉は特に限定されず、例えばCamelliasinensisの中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶されたものが挙げられる。茶期、茶葉の形状、産地、品種、等級、及び発酵条件等も特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。また、紅茶葉を抽出する際の茶葉の量、溶媒の量、抽出温度、抽出時間等の条件も特に限定されず、通常紅茶葉を抽出する際の条件を用いることができる。
【0014】
(紅茶飲料)
本発明において「紅茶飲料」とは、紅茶抽出物を含む飲料を意味する。
【0015】
(タンニン)
本発明の飲料におけるタンニンの含有濃度としては、200mg/L以上である限り、特に制限されないが、タンニンによる苦渋味がより強くなり、本発明の意義をより多く享受する観点から、好ましくは300mg/L以上、より好ましくは600mg/L以上が挙げられる。
また、本発明の飲料におけるタンニンの含有濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば3000mg/L以下、1500mg/L以下などが挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0016】
本発明において、飲料中のタンニン濃度は、例えば、紅茶抽出液を調製する際の、紅茶葉の使用量や、紅茶抽出液の加工品の使用量を調整すること等により調整することができる。
【0017】
本発明の飲料中のタンニン濃度は、酒石酸鉄吸光光度法(好ましくは、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法)を用いて測定することができる。
【0018】
(バニリン)
本発明の第1の飲料におけるバニリンの含有濃度としては、36μg/L以上であれば特に制限されないが、苦渋味の抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは46μg/L以上、より好ましくは56μg/L以上、さらに好ましくは76μg/L以上が挙げられる。また、バニリン由来のバニラ香の強さを調節する観点から、バニリンの含有濃度として、300μg/L以下、200μg/L以下、150μg/L以下、130μg/L以下、120μg/L以下、117μg/L以下、116μg/L以下が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0019】
また、苦渋味の抑制効果をより多く得ることと、バニラ香の程度とのバランスの観点から、バニリンの含有濃度として、好ましくは36~300μg/L、36~200μg/L、36~150μg/L、36~130μg/L、36~120μg/L、36~117μg/L、36~116μg/L、より好ましくは46~300μg/L、46~200μg/L、46~150μg/L、46~130μg/L、46~120μg/L、46~117μg/L、46~116μg/L、より好ましくは76~300μg/L、76~200μg/L、76~150μg/L、76~130μg/L、76~120μg/L、76~117μg/L、76~116μg/Lが挙げられる。
【0020】
本発明において、飲料中のバニリン濃度は、例えば、バニリン又はバニリン含有組成物を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。バニリンやバニリン含有組成物は市販されているものを用いることができる。
【0021】
本発明の飲料中のバニリン濃度は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いた方法など、公知の方法によって測定することができる。
【0022】
(リナロールオキシド)
本発明の第2の飲料におけるリナロールオキシドの含有濃度としては、135μg/L以上であれば特に制限されないが、苦渋味の抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは155μg/L以上又は205μg/L以上、より好ましくは435μg/L以上又は835μg/L以上又は1035μg/L以上、さらに好ましくは2035μg/L以上が挙げられる。また、リナロールオキシド由来の枝様の香りの強さを調節する観点から、リナロールオキシドの含有濃度として、8000μg/L以下、7000μg/L以下、6000μg/L以下、5500μg/L以下、5300μg/L以下、5200μg/L以下、5100μg/L以下、5035μg/L以下が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0023】
また、苦渋味の抑制効果をより多く得ることと、リナロールオキシド由来の枝様の香りの程度とのバランスの観点から、リナロールオキシドの含有濃度として、好ましくは135~8000μg/L、135~7000μg/L、135~6000μg/L、135~5500μg/L、135~5300μg/L、135~5200μg/L、135~5100μg/L、135~5035μg/L、より好ましくは155~8000μg/L、155~7000μg/L、155~6000μg/L、155~5500μg/L、155~5300μg/L、155~5200μg/L、155~5100μg/L、155~5035μg/L、あるいは、205~8000μg/L、205~7000μg/L、205~6000μg/L、205~5500μg/L、205~5300μg/L、205~5200μg/L、205~5100μg/L、205~5035μg/L、さらに好ましくは435~8000μg/L、435~7000μg/L、435~6000μg/L、435~5500μg/L、435~5300μg/L、435~5200μg/L、435~5100μg/L、435~5035μg/L、あるいは、835~8000μg/L、835~7000μg/L、835~6000μg/L、835~5500μg/L、835~5300μg/L、835~5200μg/L、835~5100μg/L、835~5035μg/L、あるいは、1035~8000μg/L、1035~7000μg/L、1035~6000μg/L、1035~5500μg/L、1035~5300μg/L、1035~5200μg/L、1035~5100μg/L、1035~5035μg/L、より好ましくは2035~8000μg/L、2035~7000μg/L、2035~6000μg/L、2035~5500μg/L、2035~5300μg/L、2035~5200μg/L、2035~5100μg/L、2035~5035μg/Lが挙げられる。
【0024】
本発明において、飲料中のリナロールオキシド濃度は、例えば、リナロールオキシド又はリナロールオキシド含有組成物を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。リナロールオキシドやリナロールオキシド含有組成物は市販されているものを用いることができる。
【0025】
苦渋味の抑制効果をより多く得る観点から、本発明の第1の飲料の好適な態様として、タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、バニリンの含有濃度が36μg/L以上であり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料が挙げられる。かかる飲料における、リナロールオキシドの含有濃度の好ましい範囲としては、本発明の第2の飲料において前述した、リナロールオキシドの含有濃度の好ましい範囲を適用することができる。
【0026】
本発明の飲料中のリナロールオキシド濃度は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いた方法など、公知の方法によって測定することができる。
【0027】
(無糖飲料)
本明細書において、「無糖飲料」とは、飲料100mL当たり糖類0.5g未満の飲料を意味する。上記の「糖類」とは、結晶性糖類、及び、非結晶性糖類からなる群から選択される1種又は2種以上を意味する。上記の「結晶性糖類」としては、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖類、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖類が挙げられ、上記の「非結晶性糖類」としては、水あめ、異性化液糖(例えば果糖ぶどう糖液糖)等が挙げられる。また、本発明の飲料に乳成分を含有させた場合、本明細書における「糖類」は、乳成分由来の糖類(例えば乳糖)を包含する意味であってもよいし、乳成分由来の糖類(例えば乳糖)を除外した糖類を意味していてもよい。
【0028】
本発明における容器詰め無糖紅茶飲料の糖類濃度としては、飲料100mL当たり糖類0.5g未満である限り特に制限されないが、飲料100mL当たり糖類が0.25g以下、0.2g以下、0.15g以下、0.1g以下、0.05g以下、0.01g以下が好ましく挙げられ、糖類を含有しない又は配合しない飲料がより好ましく挙げられる。糖類を配合しない本発明の飲料として、乳成分由来の糖類以外の糖類が、飲料100mL当たり糖類が0.25g以下である、容器詰め無糖ミルクティー飲料が挙げられる。
【0029】
(任意成分)
本発明の容器詰め無糖紅茶飲料は、例えば、色素、酸味料、糖アルコール、高甘味度甘味料、乳成分、酸化防止剤(ビタミンC等)、保存料、増粘安定剤、乳化剤、及び、pH調整剤(重曹など)のいずれか1つ又は2つ以上を含んでいなくてもよいが、含んでいてもよい。本発明の一態様として、本発明の容器詰め無糖紅茶飲料は、糖アルコール、高甘味度甘味料のいずれか又はその両方を含んでいてもよいが、糖アルコール、高甘味度甘味料のいずれも含まなくてもよい。上記の「糖アルコール」としては、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトールが挙げられる。上記の「高甘味度甘味料」としては、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテームが挙げられる。本発明の他の一態様として、本発明の容器詰め無糖紅茶飲料は、ゲラニオールを3mg/L以上含有してもよいが、3mg/L未満であることや、0.1mg/L以上3mg/L未満であることが好ましい。ゲラニオールを3mg/L以上含有する無糖紅茶飲料では、バラ様の香りが強く感じされる結果、紅茶らしい香味が保持されなくなるからである。
【0030】
(乳成分)
本明細書において「乳成分」とは、乳脂肪及び/又は無脂乳固形分を意味する。乳成分や、乳成分含有組成物として、具体的には、生乳又はその加工品(例えば、濃厚牛乳、低脂肪乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、調製粉乳、脱脂粉乳、練乳、発酵乳、クリーム、チーズ、バター、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等)が挙げられる。乳成分は含んでいなくても、含んでいてもよいが、本発明の課題がより顕著となり、発明の意義をより多く享受し得るため、含んでいないことが好ましい。
【0031】
(本発明の飲料)
本発明の第1の飲料としては、タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、バニリンの含有濃度が36μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料である限り特に制限されない。
また、本発明の第2の飲料としては、タンニンの含有濃度が200mg/L以上であり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上である、容器詰無糖紅茶飲料である限り特に制限されない。
【0032】
単に、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料は従来から公知である。本発明の飲料は、タンニンの含有濃度が200mg/L以上であることに加えて、バニリンの含有濃度が36μg/L以上であるか、及び/又は、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上であること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の容器詰無糖紅茶飲料と特に相違する点はない。
【0033】
本発明の飲料は、「容器詰め無糖紅茶飲料」の一般的な製造方法において、いずれかの段階で、バニリンの含有濃度が36μg/L以上であるか、及び/又は、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上であるようにする(好ましくは、そのように調製する)ことによって製造することができる。
【0034】
本発明の飲料は、容器詰飲料である。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。
【0035】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0036】
(本発明の製造方法)
本発明の第1の製造方法としては、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法である限り特に制限されない。
また、本発明の第2の製造方法としては、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法である限り特に制限されない。
なお、本発明の第1の製造方法の好適な態様として、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料の製造方法が挙げられる。
【0037】
本発明の飲料は、タンニンの含有濃度を200mg/L以上とし、かつ、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように、及び/又は、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製すること以外は、容器詰無糖紅茶飲料の一般的な製造方法により製造することができる。容器詰無糖紅茶飲料の一般的な製造方法は公知であり、例えば、紅茶抽出液を調製し、調合工程、充填工程、加熱殺菌工程を経て紅茶飲料を製造することができる。本発明の飲料の製造においては、前述の任意成分を添加してもよく、これら任意成分の添加時期は特に制限されない。なお、前述の紅茶飲料の一般的な製造方法としては、より詳細には、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0038】
本発明における「バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製する」方法としては、本発明の飲料において、バニリン含有濃度が36μg/L以上となるように、容器詰無糖紅茶飲料の製造工程のいずれかで、「バニリン若しくはバニリン含有組成物」を紅茶飲料に含有させる方法が挙げられ、例えば、紅茶抽出液に、「バニリン若しくはバニリン含有組成物」を含有させる方法が挙げられる。
【0039】
本発明における「リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製する」方法としては、本発明の飲料において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように、容器詰無糖紅茶飲料の製造工程のいずれかで、「リナロールオキシド若しくはリナロールオキシド含有組成物」を紅茶飲料に含有させる方法が挙げられ、例えば、紅茶抽出液に、「リナロールオキシド若しくはリナロールオキシド含有組成物」を含有させる方法が挙げられる。
【0040】
本発明の製造方法においては、任意成分として、例えば、色素、酸味料、糖アルコール、高甘味度甘味料、酸化防止剤(ビタミンC等)、保存料、増粘安定剤、乳化剤、及び、pH調整剤(重曹など)のいずれか1つ又は2つ以上をさらに含有させてもよい。
【0041】
本発明の製造方法においては、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。製造原料が混合されている液を調製した後、容器に充填して密封し、本発明の飲料を得ることができる。
【0042】
(加熱殺菌)
本発明の製造方法は、紅茶飲料を加熱殺菌する工程を含んでいてもよい。かかる加熱殺菌する方法としては、容器詰飲料における通常の加熱殺菌方法を特に制限なく用いることができる。例えば、金属缶のように充填後に加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件等で殺菌処理を行うことができる。また、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、充填前に該飲料を、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間殺菌(UHT殺菌)した後、一定の温度まで冷却し、殺菌済み容器に充填する等の方法を採用することができる。
【0043】
(本発明の苦渋味抑制方法)
本発明の第1の抑制方法としては、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法である限り特に制限されない。
また、本発明の第2の抑制方法としては、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法である限り特に制限されない。
なお、本発明の第1の抑制方法の好適な態様として、タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製することを特徴とする、前記容器詰無糖紅茶飲料において、タンニンによる苦渋味を抑制する方法が挙げられる。
【0044】
タンニンの含有濃度が200mg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料の製造において、バニリンの含有濃度が36μg/L以上となるように調製する方法や、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L以上となるように調製する方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0045】
(タンニンによる苦渋味が抑制された容器詰無糖紅茶飲料)
本発明の飲料は、タンニンによる苦渋味が抑制された容器詰無糖紅茶飲料である。本発明における「タンニンによる苦渋味」とは、タンニンに由来する苦渋味であって、飲用した際、後に残る苦渋味を意味する。かかる苦渋味には、例えば、抽出に用いる紅茶葉を増加させ、タンニン濃度を上昇させた場合に増加する、「後に残る苦渋味」が含まれる。
【0046】
本明細書において、「タンニンによる苦渋味が抑制された」容器詰無糖紅茶飲料としては、以下の(A)~(C)のいずれかの飲料などが挙げられ、中でも、(C)の飲料が好ましく挙げられる。
(A)バニリンの含有濃度が36μg/L未満(好ましくは20μg/L未満、より好ましくは17μg/L未満)であること以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料A」とも表示する。)と比較して、タンニンによる苦渋味が抑制された飲料;
(B)リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L未満(好ましくは40μg/L未満、より好ましくは36μg/L未満)であること以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料B」とも表示する。)と比較して、タンニンによる苦渋味が抑制された飲料;
(C)バニリンの含有濃度が36μg/L未満(好ましくは20μg/L未満、より好ましくは17μg/L未満)であり、かつ、リナロールオキシドの含有濃度が135μg/L未満(好ましくは40μg/L未満、より好ましくは36μg/L未満)であること以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料C」とも表示する。)と比較して、タンニンによる苦渋味が抑制された飲料;
なお、コントロール飲料A~Cからなる群から選択される1種又は2種以上を、単に「コントロール飲料」とも表示する。
【0047】
ある紅茶飲料における、苦渋味の程度や、かかる苦渋味の程度が本発明におけるコントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、苦渋味が抑制されているかどうか、どの程度抑制されているか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0048】
苦渋味の評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。飲料における苦渋味の程度を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば3名以上、好ましくは5名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の飲料における苦渋味の程度の評価は、その飲料における苦渋味の程度についてのパネル全員の評価の平均を採用してもよく、例えば、各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料における苦渋味の程度の評価として採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、苦渋味の程度が最も大きいときの評価点に相当する、その苦渋味の程度の認識をパネル間であらかじめ共通化した上で、各サンプル飲料の評価を行うことが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、例えば、評価点が1点;2点;3点;4点;5点の5段階である場合の、各パネルによる苦渋味の程度の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0049】
ある容器詰無糖紅茶飲料における、苦渋味の程度は、例えば後述の実施例の試験2等に記載の官能評価法と同様の方法、好ましくは、同じ方法により評価することができる。より具体的には、コントロール飲料における苦渋味の程度を基準(5点)として、サンプル飲料において苦渋味の程度が抑制されている程度を、「5点:コントロール飲料と比較して茶の苦渋味が抑制されていない」、「4点:コントロール飲料と比較して茶の苦渋味がやや抑制されている」、「3点:コントロール飲料と比較して茶の苦渋味が抑制されている」、「2点:コントロール飲料と比較して茶の苦渋味が大幅に抑制されている」、「1点:コントロール飲料と比較して茶の苦渋味が完全に抑制されている」の5段階で評価し、例えば複数のパネルによる評価点(平均値の小数第2位を四捨五入した値)で4.0点以下(好ましくは3.5点以下)の飲料は、苦渋味が抑制された飲料として挙げられる。
【0050】
本発明の飲料は、紅茶らしい香味が保持されつつ、タンニンによる苦渋味が抑制された容器詰無糖紅茶飲料であることが好ましい。本発明における「紅茶らしい香味が保持された」容器詰無糖紅茶飲料とは、紅茶らしい香味が保持された容器詰無糖紅茶飲料を意味する。ある紅茶飲料において、紅茶らしい香味が保持されているかどうかは、パネルによって、容易かつ明確に決定することができる。なお、紅茶らしい香味が保持されていない容器詰無糖紅茶飲料としては、バニリン濃度が516μg/L以上である容器詰無糖紅茶飲料や、リナロールオキシド濃度が10035μg/L以上であるである容器詰無糖紅茶飲料や、ゲラニオールを3mg/L以上含有する容器詰無糖紅茶飲料などが挙げられる。
【0051】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0052】
試験1.[タンニン含有濃度の、苦渋味への影響]
無糖紅茶飲料のタンニン含有濃度が、苦渋味の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0053】
(1.紅茶飲料の調製)
紅茶葉を80℃のお湯に入れて7分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。各紅茶抽出液のタンニン濃度を、表2記載のタンニン濃度となるように調整した。
上記の各紅茶抽出液に、表2記載の配合量でビタミンC及び重曹を添加して混合して、容器詰めした後、レトルト殺菌(加圧殺菌)処理して、試験例1~5の容器詰無糖紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。
【0054】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1~5の無糖紅茶飲料サンプルの苦渋味(すなわち、タンニンに由来する苦渋味であって、飲用した際、後に残る苦渋味)の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表1に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の苦渋味の程度の差、2点と3点の苦渋味の程度の差、3点と4点の苦渋味の程度の差、4点と5点の苦渋味の程度の差は、それぞれ同程度とした。
なお、各試験例サンプルにおける苦渋味の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0055】
【0056】
なお、表1の評価基準において、タンニン由来の苦渋味の課題があると判断することができる評価点の一例として、2点以上が挙げられる。
【0057】
試験例1~5の無糖紅茶飲料サンプルについての官能評価試験の結果を表2に示す。
【0058】
【0059】
表2の結果から分かるように、タンニン濃度が100mg/Lの場合(試験例1)は、タンニンによる苦渋味の問題はほぼ生じなかったが、タンニン濃度が200mg/L以上の場合は、タンニンによる苦渋味の問題が発生し、タンニン濃度が高くなると苦渋味も強くなる傾向が認められた。
【0060】
試験2.[苦渋味へのバニリンの影響]
バニリン濃度が、タンニンによる苦渋味の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0061】
(1.紅茶飲料の調製)
表4記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例6~13の容器詰無糖紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。なお、試験2では、試験1と異なり、バニリンをさらに添加している。
【0062】
(2.官能評価試験)
得られた試験例6~13の無糖紅茶飲料サンプルの苦渋味(すなわち、タンニンに由来する苦渋味であって、飲用した際、後に残る苦渋味)の抑制の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表3に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。表3の評価基準において、1点と2点の苦渋味の抑制の程度の差、2点と3点の苦渋味の抑制の程度の差、3点と4点の苦渋味の抑制の程度の差、4点と5点の苦渋味の抑制の程度の差は、それぞれ同程度とした。
表3の評価基準で官能評価試験を行う際、試験例6~13とタンニン濃度が同じで、バニリン無添加である試験例4(バニリン濃度16μg/L)をコントロール飲料とし、タンニンによる苦渋味の基準とした。
なお、各試験例サンプルにおける苦渋味の抑制の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0063】
【0064】
なお、表3の評価基準において、タンニンによる苦渋味が抑制されていると判断することができる評価点の一例として、4.0点以下が挙げられる。
【0065】
試験例6~13の無糖紅茶飲料サンプルについての官能評価試験の結果を表4に示す。
【0066】
【0067】
表4の結果から、例えばバニリン濃度が36μg/L以上の場合には、苦渋味の評価が4.0点以下となり、タンニンによる苦渋味への抑制効果が得られることが示された。なお、バニリン濃度が516μg/Lである場合(試験例13)は、バニリン由来のバニラ香が強すぎて紅茶としての香味が不調和であり、紅茶飲料として成立していないと考えられた。
これらのことから、バニリン濃度は例えば36~300μg/L(好ましくは36~120μg/Lなど)であることが好適であることが示された。
なお、試験例6~13のサンプル飲料を訓練した専門パネル5名によって、紅茶らしい香味の官能評価を行ったところ、試験例13のサンプル飲料では、紅茶らしい香味は保持されていなかったが、試験例6~12のサンプル飲料では、紅茶らしい香味が保持されていた。
【0068】
試験3.[苦渋味へのリナロールオキシドの影響]
バニリン濃度が、リナロールオキシドによる苦渋味の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0069】
(1.紅茶飲料の調製)
表5記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例14~23の容器詰無糖紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。なお、試験3では、試験1と異なり、リナロールオキシドをさらに添加している。
【0070】
(2.官能評価試験)
得られた試験例14~23の無糖紅茶飲料サンプルの苦渋味(すなわち、タンニンに由来する苦渋味であって、飲用した際、後に残る苦渋味)の抑制の程度について、訓練した専門パネル5名によって、上記の表3に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。その際、試験例14~23とタンニン濃度が同じで、リナロールオキシド無添加である試験例4(リナロールオキシド濃度35μg/L)をコントロール飲料とし、タンニンによる苦渋味の基準とした。
なお、各試験例サンプルにおける苦渋味の抑制の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0071】
試験例14~23の無糖紅茶飲料サンプルについての官能評価試験の結果を表5に示す。
【0072】
【0073】
表5の結果から、リナロールオキシド濃度が135μg/L以上の場合には、タンニンによる苦渋味への抑制効果が得られることが示された。なお、リナロールオキシド濃度が10035μg/Lである場合は、リナロールオキシド由来の枝様の香りが強すぎて紅茶としての香味が不調和であり、紅茶飲料として成立していないと考えられた。
これらのことから、リナロールオキシド濃度は例えば135~8000μg/L(好ましくは135~5200μg/Lなど)であることが好適であることが示された。
なお、試験例14~23のサンプル飲料を訓練した専門パネル5名によって、紅茶らしい香味の官能評価を行ったところ、試験例23のサンプル飲料では、紅茶らしい香味は保持されていなかったが、試験例14~22のサンプル飲料では、紅茶らしい香味が保持されていた。
【0074】
試験4.[バニリンとリナロールオキシドの併用]
バニリンとリナロールオキシドを併用した場合について、以下の実験により調べた。
【0075】
(1.紅茶飲料の調製)
表6記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例24~25の容器詰無糖紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。なお、試験4では、試験1と異なり、バニリン及びリナロールオキシドをさらに添加している。
【0076】
(2.官能評価試験)
得られた試験例24~25の無糖紅茶飲料サンプルの苦渋味(すなわち、タンニンに由来する苦渋味であって、飲用した際、後に残る苦渋味)の抑制の程度について、訓練した専門パネル5名によって、上記の表3に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。その際、試験例24~25とタンニン濃度が同じで、バニリンもリナロールオキシドも無添加である試験例4(バニリン濃度16μg/L、及び、リナロールオキシド濃度35μg/L)をコントロール飲料とし、タンニンによる苦渋味の基準とした。
なお、各試験例サンプルにおける苦渋味の抑制の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0077】
試験例24~25の無糖紅茶飲料サンプルについての官能評価試験の結果を表6に示す。
【0078】
【0079】
表6の結果から、バニリンとリナロールオキシドを併用すると、苦渋味への抑制効果が顕著となることが示された。
なお、試験例24~25のサンプル飲料を訓練した専門パネル5名によって、紅茶らしい香味の官能評価を行ったところ、試験例24~25のサンプル飲料では、紅茶らしい香味が保持されていた。
【0080】
試験5.[タンニン濃度の変化による影響]
タンニン濃度の変化が、バニリンやリナロールオキシドによる、苦渋味への抑制効果にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0081】
(1.紅茶飲料の調製)
表7記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例26~31の容器詰無糖紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。なお、試験5では、試験1と異なり、バニリン又はリナロールオキシドをさらに添加している。
【0082】
(2.官能評価試験)
得られた試験例26~31の無糖紅茶飲料サンプルの苦渋味(すなわち、タンニンに由来する苦渋味であって、飲用した際、後に残る苦渋味)の抑制の程度について、訓練した専門パネル5名によって、上記の表3に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。その際、試験例26~27については、タンニン濃度が同じ900mg/Lで、バニリンもリナロールオキシドも無添加である試験例5(バニリン濃度16μg/L、及び、リナロールオキシド濃度35μg/L)をコントロール飲料とし、
試験例28~29については、タンニン濃度が同じ300mg/Lで、バニリンもリナロールオキシドも無添加である試験例3(バニリン濃度16μg/L、及び、リナロールオキシド濃度35μg/L)をコントロール飲料とし、
試験例30~31については、タンニン濃度が同じ200mg/Lで、バニリンもリナロールオキシドも無添加である試験例2(バニリン濃度16μg/L、及び、リナロールオキシド濃度35μg/L)をコントロール飲料とし、タンニンによる苦渋味の基準とした。
なお、各試験例サンプルにおける苦渋味の抑制の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0083】
【0084】
表7の結果から、タンニン濃度にかかわらず、バニリンやリナロールオキシドによる、苦渋味への抑制効果が得られることが示された。
なお、試験例26~31のサンプル飲料を訓練した専門パネル5名によって、紅茶らしい香味の官能評価を行ったところ、試験例26~31のサンプル飲料では、紅茶らしい香味が保持されていた。