(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086139
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A01C11/02 320B
A01C11/02 322Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201114
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和之
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】景浦 宏一
(72)【発明者】
【氏名】山下 英希
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA05
2B062AA11
2B062AB01
2B062BA07
2B062BA13
2B062BA26
2B062BA80
2B062CB08
(57)【要約】
【課題】資材の計画的な使用を可能として作業効率を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る苗移植機は、走行車体と、苗植付部と、制御部と、位置情報取得部と、走行車体は、前輪および後輪を有し、圃場内を走行可能である。苗植付部は、走行車体に設けられ、走行車体の走行中に、苗タンクにおいて搬送されてきた苗マットから植付爪で掻き取った苗を圃場へ植え付ける。制御部は、植付爪による苗取り量を変更するよう苗植付部を制御する。位置情報取得部は、走行車体の位置情報を取得する。制御部は、位置情報取得部で取得された位置情報から算出した第1車速と後輪の回転数から算出したの第2車速との差から走行車体のスリップ率を算出し、スリップ率に基づいて植付爪による苗取り量を補正する。制御部は、スリップ率が所定の値以上の場合には苗取り量を減らし、スリップ率が所定の値以下の場合には苗取り量を増やす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪を有し、圃場内を走行可能な走行車体と、
前記走行車体に設けられ、前記走行車体の走行中に、苗タンクにおいて搬送されてきた苗マットから植付爪で掻き取った苗を前記圃場へ植え付ける苗植付部と、
前記植付爪による苗取り量を変更するよう前記苗植付部を制御する制御部と、
前記走行車体の位置情報を取得する位置情報取得部と
を備え、
前記制御部は、
前記位置情報取得部で取得された前記位置情報から算出した前記走行車体の第1車速と前記後輪の回転数から算出した前記走行車体の第2車速との差から前記圃場内における前記走行車体のスリップ率を算出し、
前記スリップ率に基づいて前記植付爪による苗取り量を補正し、
前記制御部は、
前記スリップ率が所定の値以上の場合には前記苗取り量を減らし、前記スリップ率が所定の値以下の場合には前記苗取り量を増やす、
苗移植機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1車速に基づいて前記苗移植機による所定の作業面積を算出し、前記作業面積ごとに前記スリップ率を算出し、前記作業面積ごとの前記スリップ率に基づいて前記作業面積ごとに前記苗取り量を補正する、
請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記制御部は、
前記作業面積に応じて予め設定された苗の使用量情報を有し、
現在の苗の使用量を算出し、前記使用量と前記使用量情報の値とを比較し、前記使用量と前記使用量情報の値との間にずれがある場合には警告を発する、
請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記制御部は、
前記苗タンクにおける前記苗マットの送り量を制御し、
前記送り量を制御することで前記苗マットの圧縮率を任意に変化させる、
請求項1に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記苗タンクに設けられ、前記苗タンクにおける前記苗マットの電流値を測定する電極センサ
を備え、
前記制御部は、
前記電極センサで測定された前記電流値に基づいて前記苗マットの残量を算出する、
請求項1に記載の苗移植機。
【請求項6】
前記苗タンクに設けられ、前記苗タンクにおける前記苗マットまでの距離を測定する超音波センサ
を備え、
前記制御部は、
前記超音波センサで測定された前記距離に基づいて前記苗マットの残量を算出する、
請求項1に記載の苗移植機。
【請求項7】
前記苗タンクにおける前記苗マットの搬送路に設けられ、前記制御部に駆動制御される苗送りローラの回転によって前記搬送路の上流から下流へ前記苗マットを搬送する苗送りベルトと、
前記搬送路の中途位置に設けられるとともに前記搬送路上の前記苗マットと前記苗送りベルトとが重なる位置に設けられ、前記制御部に駆動制御されることで前記中途位置において前記苗マットを規制して、上段の前記苗マットと下段の前記苗マットとの境目に隙間を形成するストッパと、
前記ストッパよりも前記搬送路の下流側に設けられ、前記苗マットの有無を検知する検知スイッチと
を備え、
前記制御部は、
前記検知スイッチで前記苗マットが検知されるたびに、前記苗マットを1枚使用したとカウントするとともに、
前記搬送路上の上段の前記苗マットと下段の前記苗マットとの境目において前記検知スイッチで前記苗マットが無いことが検知されると、前記ストッパによる前記苗マットの規制を解除し、前記苗送りローラを回転させて、下段の前記苗マットに当接するまで上段の前記苗マットを搬送する、
請求項1~6のいずれか一つに記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場内を走行しながら圃場の土壌面に苗を植え付ける苗移植機において、圃場に対して苗マットを計画的に使用して作業効率を向上させるために、後輪の回転数などから後輪(苗移植機)のスリップ率を算出し、算出したスリップ率を考慮して走行距離を算出し、スリップ率を考慮した走行距離および植付作業を行う条数に応じて設定される作業幅から実作業面積を算出する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来技術では、スリップ率と後輪の圃場への沈下量との関係に基づいてスリップ率を算出するため、圃場の状態で常に変化するスリップ率の算出が煩雑となり、実際には苗の使用量が変動するおそれがある。このため、上記したような従来技術は、苗マットなどの資材を計画的に使用する点について改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、資材の計画的な使用が可能となり、作業効率を向上させることができる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る苗移植機(1)は、前輪(11)および後輪(12)を有し、圃場(F)内を走行可能な走行車体(2)と、前記走行車体(2)に設けられ、前記走行車体(2)の走行中に、苗タンク(35)において搬送されてきた苗マット(MPL)から植付爪(38)で掻き取った苗を前記圃場(F)へ植え付ける苗植付部(3)と、前記植付爪(38)による苗取り量を変更するよう前記苗植付部(3)を制御する制御部(100)と、前記走行車体(2)の位置情報を取得する位置情報取得部(50)とを備え、前記制御部(100)は、前記位置情報取得部(50)で取得された前記位置情報から算出した前記走行車体(2)の第1車速と前記後輪(12)の回転数から算出した前記走行車体(2)の第2車速との差から前記圃場(F)内における前記走行車体(2)のスリップ率を算出し、前記スリップ率に基づいて前記植付爪(38)による苗取り量を補正し、前記制御部(100)は、前記スリップ率が所定の値以上の場合には前記苗取り量を減らし、前記スリップ率が所定の値以下の場合には前記苗取り量を増やす。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る苗移植機によれば、資材の計画的な使用が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る苗移植機を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る苗移植機の制御系を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、苗取り量補正の説明図(その1)である。
【
図4】
図4は、苗取り量補正の説明図(その1)である。
【
図5】
図5は、苗マットの圧縮機構の説明図(その1)である。
【
図6】
図6は、苗マットの圧縮機構の説明図(その2)である。
【
図7】
図7は、電極センサを用いた苗の残量検出の説明図である。
【
図8】
図8は、電流値および苗マットの位置の関係を示す図である。
【
図9】
図9は、超音波センサを用いた苗の残量検出の説明図である。
【
図10】
図10は、苗マットのカウント機構の説明図(その1)である。
【
図11】
図11は、苗マットのカウント機構の説明図(その2)である。
【
図12】
図12は、苗マットのカウント機構の説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する苗移植機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<苗移植機の概要>
図1を参照して実施形態に係る苗移植機1の概要について説明する。
図1は、実施形態に係る苗移植機1を示す概略側面図である。
【0011】
なお、
図1を含む各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0012】
また、以下では、苗移植機1や後述する走行車体2を指して「機体」という場合がある。苗移植機1は、圃場F(
図3参照)を走行しながら圃場Fの土壌面に苗を植え付ける作業を行う。
【0013】
図1に示すように、苗移植機1は、走行車体2と、苗植付部3とを備える。走行車体2は、圃場F内を走行可能なものである。苗植付部3は、苗移植機1における作業機であり、走行車体2に設けられる。苗植付部3は、圃場Fの土壌面に苗を植え付ける。苗移植機1は、操縦者(「作業者」ともいう)が搭乗して操縦する乗用型である一方、予め設定された作業経路に沿って自律走行しながら自動で苗の植え付け作業を行う機能を有する。
【0014】
走行車体2は、左右一対の前輪11と、左右一対の後輪12とを備える。走行車体2においては、たとえば、左右一対の前輪11が操舵輪であり、左右一対の後輪12が駆動輪である。なお、たとえば、4WDモードの場合は、左右一対の前輪11および左右一対の後輪12が駆動輪となる。
【0015】
また、走行車体2の車体骨格を形成するメインフレーム13の前部には、後述する苗植付部3などへ駆動力を伝達するミッションケース14と、エンジンE(
図2参照)やモータなどの駆動源から供給される駆動力、すなわち、駆動源(たとえば、エンジンE)の回転をミッションケース14へ出力する油圧式の無段変速装置(図示せず)とが設けられる。無段変速装置は、たとえば、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。なお、以下では、無段変速装置を「HST」という。
【0016】
ミッションケース14内には、路上走行時や苗の植え付け時などにおける走行モードを切り替える副変速機構(図示せず)が設けられる。走行車体2では、ミッションケース14の左右側方に前輪ファイナルケース15が設けられ、左右の前輪ファイナルケース15の操向方向を変更可能な支持部からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸に、前輪11がそれぞれ取り付けられる。
【0017】
また、メインフレーム13の後部には、左右方向に延設された後部フレームの左右側方に後輪ギヤケース16が設けられ、後輪ギヤケース16からそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸に、後輪12がそれぞれ取り付けられる。
【0018】
また、後部フレームの上部には、後述する昇降リンク17を支持する左右のリンク支持フレーム18が上方へ向けて延設される。左右のリンク支持フレーム18の間には、左右のアッパリンク19および左右のロワリンクアーム20が設けられる。左右のアッパリンク19および左右のロワリンクアーム20の左右方向の間には、油圧によって駆動される昇降シリンダ21が設けられる。
【0019】
左右のアッパリンク19および左右のロワリンクアーム20は、平行リンク機構である昇降リンク17を形成する。なお、左右のアッパリンク19、左右のロワリンクアーム20および昇降シリンダ21は、それぞれの一端が走行車体2側に連結され、それぞれの他端が苗植付部3側に連結される。
【0020】
また、メインフレーム13上には、駆動源であるエンジンが搭載される。エンジンの回転動力が、ベルト伝動装置(図示せず)およびHSTを介して、ミッションケース14へ伝達される。ミッションケース14へ伝達された回転動力は、ミッションケース14内の副変速機構によって変速された後、走行動力と外部取り出し動力とに分けられる。
【0021】
また、エンジンの回転動力は、油圧ポンプ(図示せず)へ伝達される。油圧ポンプで発生した油圧は、HSTや、ステアリングハンドル22のパワステ機構23(
図2参照)や昇降シリンダ21などへ供給される。
【0022】
ミッションケース14へ伝達された回転動力から取り出される外部取り出し動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチ24(
図2参照)へ伝達され、植付クラッチ24から植付伝動軸(図示せず)を介して苗植付部3へ伝達される。ミッションケース14の後部には、左右のドライブシャフト(図示せず)が設けられる。エンジンEからの回転動力は、ミッションケース14およびドライブシャフトを介して、左右の後輪ギヤケース16へ伝動される。
【0023】
なお、左右のドライブシャフトよりも動力伝達上流側には、左右のドライブシャフトに対する動力伝達を入切するサイドクラッチ25(
図2参照)が設けられる。
図1に示すように、たとえば、操縦席26の前方下部、かつ、左右側方には、左右のサイドクラッチ25を入切操作するサイドクラッチペダル(図示せず)が設けられる。
【0024】
左右のサイドクラッチペダルのうち、旋回内側のサイドクラッチペダルを踏み込んでサイドクラッチ25を切状態としてからステアリングハンドル22を操作して旋回走行すると、旋回内側の後輪12の駆動回転を遮断することができる。
【0025】
走行車体2におけるフロアステップ27の前方には、エンジンEを収容するボンネット28が設けられる。ボンネット28の後部には、操縦パネル29が設けられる。操縦パネル29には、メータパネルや、スイッチなどの各種操作具などが設けられる。また、ボンネット28の後部には、ステアリングハンドル22が設けられる。
【0026】
また、ボンネット28には、前輪11の操舵量を調整するために回転可能なステアリングハンドル(以下、「ハンドル」という)22、HSTや苗植付部3を操作する主変速レバー30、副変速機構を操作する副変速レバー31(
図2参照)などが設けられる。
【0027】
また、ボンネット28内には、燃料タンクやバッテリ、ハンドル22の操作に応じて左右の前輪11および左右の前輪ファイナルケース15の下部側を回動させる連動機構が設けられる。ボンネット28の前部は、開閉可能なフロントカバー28aによって覆われている。
【0028】
操縦席26の後方であって、メインフレーム13の後部には、後述する施肥装置40が設けられる。施肥装置40の駆動力は、左右の後輪ギヤケース16の左右の一側方から施肥装置40へ臨むように設けられる、施肥伝動機構によって伝達される。
【0029】
ボンネット28の下部における左右側方には、フロアステップ27が形成される。フロアステップ27は、略水平であるとともに一部格子状であり、フロアステップ27上を歩く操縦者(作業者)などの靴などについた泥がフロアステップ27に落ちても、落ちた泥などが圃場Fへ落下するようになる。
【0030】
また、走行車体2の前部、かつ、左右側方には、苗枠支柱32に複数の予備苗載せ台33を上下方向に間隔をあけて配置する予備苗枠34が設けられる。予備苗枠34は、苗植付部3に補給される苗マットM
PL(
図10~12参照)や肥料袋などの作業資材が載置可能である。
【0031】
また、昇降リンク17の後端部には、圃場Fに植え付ける苗PL(
図3参照)を含む苗マットM
PLを積載する苗タンク35が、左右方向に摺動させる摺動機構と共に連結される。苗タンク35には、苗タンク35の上面(苗マットM
PLの載置面)を左右方向において複数に仕切るためのフェンスが設けられる。苗タンク35の下方には、積載された苗マットM
PLから苗PLを掻き取り、掻き取った苗PLを圃場Fへ植え付ける植付爪38を含む植付装置36が設けられる。
【0032】
植付装置36は、上記したフェンスによって仕切られた植付条数と同数の苗PLを同時に植え付けるものである。植付装置36は、植付伝動ケース37と、植付爪38と、植付ロータリ39とを備える。植付装置36では、植付伝動ケース37が苗タンク35の下方に間隔をあけて設けられ、植付伝動ケース37の左右側方において植付爪38を回転させる植付ロータリ39が設けられる。植付装置36では、植付爪38が、回転しながら苗マットM
PLから苗PLを掻き取り、掻き取った苗PL(
図3参照)を圃場Fへ植え付ける。
【0033】
このように、苗植付部3では、走行車体2(苗移植機1)の走行中に、苗タンク35において搬送されてきた苗マットM
PLから植付爪38で掻き取った苗PLを圃場Fの土壌面へ植え付ける。なお、植付爪38による苗PLの掻き取り量(苗取り量)は、後述する制御部100(
図2参照)によってを変更可能に制御される。
【0034】
施肥装置40は、施肥ホッパ41と、繰出装置42と、ダクト43と、施肥ホース(図示せず)と、ブロア(図示せず)とを備える。施肥ホッパ41は、肥料を貯留する。施肥ホッパ41は、苗植付部3の作業条数と同数に仕切られている。なお、施肥ホッパ41は、たとえば、左右方向に長いと肥料の投入や着脱の利便性が低下することがあるため、全条の半分ずつ(たとえば、8条の場合は4条ずつ)に仕切られたものを左右にそれぞれ並べる、いわゆるサイド施肥構造であってもよい。
【0035】
繰出装置42は、施肥ホッパ41の下部に1条ごとに設けられ、肥料を設定量ずつ供給する。ダクト43は、繰出装置42の下方に設けられ、肥料を移動させる搬送風を通過させる。施肥ホースは、繰出装置42の下方に設けられ、苗植付部3の苗植付位置の近傍へ肥料を案内する。ブロアは、ダクト43の一側端部に設けられ、ブロア用電動モータ(図示せず)の駆動力で搬送風を発生させる。
【0036】
苗植付部3の下方には、フロート44が設けられる。フロート44は、中央のセンタフロート44aと、左右のサイドフロート44bとを備える。センタフロート44aおよび左右のサイドフロート44bは、圃場Fの土壌面に接地して、走行車体2の進行(前進)に伴い、土壌面上を滑走する。
【0037】
また、苗植付部3は、フロート44よりも前方に設けられ、土壌面の凹凸を整地する整地ロータ45を備える。なお、整地ロータ45は、センタフロート44aの前方および左右のサイドフロート44bの前方のそれぞれに設けられる。苗植付部3は、整地ロータ45で均した土壌面に苗を植え付ける。整地ロータ45には、ロータ伝動シャフト(図示せず)を介して駆動力が伝達される。
【0038】
また、苗植付部3の左右側方には、左右のいずれか一方が圃場Fの土壌面に接地して、次の作業条(次工程)における走行の目安とする溝(ガイド線)を形成する線引きマーカがそれぞれ設けられる。左右の線引きマーカは、左右のいずれか一方が下降して接地すると他方が上昇する。また、左右の線引きマーカは、機体旋回時に苗植付部3を上昇させたときには左右共に上昇し、機体旋回後に苗植付部3が下降すると、左右のいずれか一方が上昇して他方が下降(接地)する。
【0039】
また、走行車体2の左右方向の中央であり、かつ、ボンネット28の前方には、センタマスコット46が上方へ延伸するように立設される。センタマスコット46を、左右の線引きマーカによって圃場Fの土壌面に形成されたガイド線に合わせることで、直前の作業条の作業位置にあわせた走行が可能となり、作業精度の向上や、非作業の発生防止を図ることができる。
【0040】
なお、圃場Fの土質によっては、左右の線引きマーカによって形成したガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このような場合には、左右の線引きマーカよりも前方に設けられた左右のサイドマーカを用いるとよい。すなわち、左右のサイドマーカを外側へ移動させ、前工程で植え付けた苗の上方にサイドマーカを位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能となる。
【0041】
また、
図1に示すように、苗移植機1は、位置情報取得部50を備える。位置情報取得部50は、走行車体2(苗移植機1)の現在の自己位置P(
図3参照)(位置情報)を取得する。位置情報取得部50は、たとえば、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛生測位システムを利用して苗移植機1の現在の位置情報を取得する。なお、位置情報取得部50は、複数の装置で構成されてもよい。
【0042】
また、位置情報取得部50は、たとえば、アンテナフレーム51に支持され、走行車体2の上方に配置される。
【0043】
また、位置情報取得部50からの位置情報に基づいて作成される、直進制御用プログラムと旋回制御用プログラムとは、互いに別の場所に格納される。直進制御用プログラムは、たとえば、位置情報取得部50内の直進制御用ECU(Electronic Control Unit)に格納され、旋回制御用プログラムは、たとえば、ボンネット28に収容された旋回制御用ECUに格納される。直進制御用ECUおよび旋回制御用ECUは、後述する制御部100(
図2参照)に含まれる。なお、直進制御用ECUおよび旋回制御用ECUは、同一のECUであってもよい。
【0044】
<苗移植機の制御系>
次に、
図2を参照して苗移植機1(
図1参照)の制御系について説明する。
図2は、実施形態に係る苗移植機1の制御系を示す機能ブロック図である。なお、
図2には、制御部100を中心とする制御系の一例を示している。苗移植機1は、
図2に示すように、電子制御によって各部を制御することが可能なものであり、各部を制御する制御部100を備える。
【0045】
制御部100は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部、さらには入出力部を有し、これらが互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能なものである。なお、記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。制御部100は、記憶部などに格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
【0046】
制御部100には、たとえば、アクチュエータ類として、スロットルモータ60、油圧制御弁61,62、植付クラッチ作動ソレノイド63、サイドクラッチ作動ソレノイド64、HSTモータ65、ステアリングモータ66、線引きマーカ昇降モータ67、デフロック切替モータ68などが接続される。
【0047】
スロットルモータ60は、エンジンEの吸気量を調節するスロットルを作動させることで、エンジンEの出力軸の回転数を増減させる。油圧制御弁61は、昇降シリンダ21の伸縮動作を制御する。油圧制御弁62は、パワステ機構23を制御する。植付クラッチ作動ソレノイド63は、植付クラッチ24を作動させる。
【0048】
サイドクラッチ作動ソレノイド64は、後輪12(
図1参照)への動力伝達状態を切り替えるサイドクラッチ25を作動させる。HSTモータ65は、HSTのトラニオンの回動角度を変更することで、HSTの斜板の傾斜角を変更する。ステアリングモータ66は、操舵輪である前輪11(
図1参照)を操舵駆動する。ステアリングモータ66は、前輪11の操舵量(操舵角または切れ角ともいう)を調整するハンドル22を駆動するモータである。線引きマーカ昇降モータ67は、線引きマーカを昇降させる。
【0049】
デフロック切替モータ68は、左右の走行車輪(たとえば、左右の前輪11)を同じ回転速度で回転させるデファレンシャルロック機構(以下、デフロック機構という)69の作動および作動停止を切り替えるモータである。デフロック機構69が入状態になることで、強制的に四輪駆動(4WDモード)とすることができ、左右の走行車輪が同じ回転速度で回転する。
【0050】
また、制御部100には、後輪回転数センサ70、操舵量センサ71、傾斜センサ72などが接続される。後輪回転数センサ70は、左右の後輪12に対応して2つ設けられ、左右の後輪12の回転数をそれぞれ検出する。
【0051】
操舵量センサ71は、ハンドル22の回転、すなわち、前輪11(
図1参照)の操舵量を検出する。操舵量センサ71は、たとえば、ピットマンアームに連結する軸上に設けられる。
【0052】
傾斜センサ72は、苗移植機1(走行車体2)の傾きである傾斜角(たとえば、ロール角、ピッチ角)を検出する。
【0053】
また、制御部100には、操作信号として、たとえば、主変速レバー30、副変速レバー31、苗植付部昇降スイッチ73、線引きマーカ自動昇降スイッチ74、自動旋回切替スイッチ75、モード切替スイッチ76などから信号が入力される。
【0054】
苗植付部昇降スイッチ73は、苗植付部3を昇降を切り替えるスイッチである。苗植付部昇降スイッチ73は、「上昇」および「下降」位置に変更可能である。苗植付部昇降スイッチ73が「上昇」位置にあるときは、苗植付部3は、所定の非作業位置まで上昇し、植付装置36(
図1参照)が停止する非作業状態(苗植付部3の切状態)となる。苗植付部昇降スイッチ73が「下降」位置にあるときは、苗植付部3は、所定の作業位置まで下降し、植付装置36が作動する作業状態(苗植付部3の入状態)となる。すなわち、苗植付部昇降スイッチ73は、苗植付部3の作業状態が検出可能なスイッチである。
【0055】
線引きマーカ自動昇降スイッチ74は、ハンドル22の操舵量(すなわち、前輪11の操舵量)に連動して線引きマーカを自動的に昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。線引きマーカ自動昇降スイッチ74が「ON」のときは、操舵量に連動して線引きマーカを自動的に昇降させる制御が実行される。一方、線引きマーカ自動昇降スイッチ74が「OFF」のときは、操舵量に連動して線引きマーカを自動的に昇降させる制御は実行されない。
【0056】
自動旋回切替スイッチ75は、操縦者が苗移植機1を手動で操縦する場合において自動旋回の実行を可とするか不可とするかを切り替えるスイッチである。なお、自動旋回切替スイッチ75が「ON」のときは、自動旋回の実行を可とする。自動旋回切替スイッチ75が「OFF」のときは、自動旋回の実行を不可とする。モード切替スイッチ76は、苗移植機1(走行車体2)の自律走行を実行するか否かを切り替えるスイッチである。
【0057】
なお、制御部100には、方位センサ(図示せず)などが接続されてもよい。方位センサは、たとえば、機体(走行車体2)の進行方向の絶対方位角(たとえば、「北」を0°(360°)、「東」を90°、「南」を180°、「西」を270°)を検出する。方位センサは、一定時間ごとに絶対方位角を検出し、検出した絶対方位角を制御部100へ送信する。
【0058】
制御部100は、操舵量センサ71の検出結果に基づいて、ステアリングモータ66を介してハンドル22を制御する。制御部100は、ハンドル22を制御しつつ、位置情報取得部50によって取得された走行車体2の位置情報(走行車体2の自己位置P)などにに基づいて、走行車体2の直進制御および旋回制御を行う。
【0059】
<苗取り量補正>
次に、
図3および4を参照して苗取り量補正について説明する。
図3および4は、苗取り量補正の説明図である。
【0060】
図3に示すように、制御部100(
図2参照)は、圃場F内を走行する苗移植機1(走行車体2)の後輪12(
図1参照)のスリップ率に基づいて、苗植付部3(
図1参照)の植付爪38(
図1参照)による苗PLの掻き取り量(苗取り量)を補正する。
【0061】
この場合、制御部100は、位置情報取得部50(
図2参照)によって取得された位置情報(走行車体2の自己位置P)から、圃場F内を走行中の走行車体2の車速(第1車速)を算出する。また、制御部100は、後輪回転数センサ70(
図2参照)によって検出された後輪12の回転数から、圃場F内を走行中の走行車体2の車速(第2車速)を算出する。
【0062】
制御部100は、第1車速および第2車速の2つの車速の差から、圃場F内における苗移植機1(走行車体2)のスリップ率を算出する。
【0063】
図3に示すように、苗移植機1では、所定の値のスリップ率に応じて植付爪38による苗取り量が予め設定されている。苗移植機1では、スリップ率が所定の値の場合には、苗移植機1(走行車体2)の進行方向における苗PLと苗PLとの間の距離(株間の距離)Dが想定された距離となり、制御部100は、設定値の苗取り量で圃場Fに苗PLを植え付けるように植付爪38を制御する。
【0064】
制御部100は、スリップ率が予め設定された所定の値以上の場合、すなわち、スリップ率が高い場合には、株間の距離D(D1)が短くなるため、苗取り量を減らすように植付爪38を制御する。また、制御部100は、スリップ率が予め設定された所定の値以下の場合、すなわち、スリップ率が低い場合には、株間の距離D(D2)が長くなるため、苗取り量を増やすように植付爪38を制御する。
【0065】
このように、スリップ率が所定の値以上の場合(すなわち、スリップ率が高い場合)には、株間の距離D1が短くなるため、苗PLを少なく植え、また、スリップ率が所定の値以下の場合(すなわち、スリップ率が低い場合)には、株間の距離D2が長くなるため、苗PLを多く植えることで、圃場F内を走行する走行車体2(苗移植機1)のスリップ率の変化による苗PLの使用量の変動を抑制することができる。
【0066】
すなわち、圃場F内を走行する走行車体2(苗移植機1)のスリップ率の変化による苗の使用量の変動を抑制することができる。これにより、資材(苗、苗マットMPL)を計画的に使用することができ、作業効率を向上させることができる。
【0067】
図4に示すように、制御部100(
図2参照)は、位置情報取得部50(
図2参照)によって取得された位置情報(走行車体2の自己位置P)に基づいて算出した第1車速から、圃場Fにおいて苗PL(
図3参照)を植え付けた面積(「作業面積」という)S
Wにおける苗取り量を補正する。
【0068】
この場合、制御部100は、第1車速に基づいて苗移植機1(走行車体2)による所定の作業面積SWを算出する。制御部100は、第1車速および第2車速の差から、苗移植機1(走行車体2)のスリップ率を作業面積SWごとに算出する。制御部100は、作業面積SWにおけるスリップ率の平均値を算出する。
【0069】
そして、制御部100は、作業面積S
Wごとのスリップ率(平均値)に基づいて、作業面積S
Wごとに植付爪38(
図1参照)による苗取り量を補正する。
【0070】
このように、走行車体2(苗移植機1)の所定の作業面積SWにおける平均的なスリップ率を用いて苗PLの使用量を補正することで、苗PLの使用量を安定させることができる。
【0071】
また、制御部100は、作業面積SWに応じて予め設定された苗PLの使用量情報を有する。制御部100は、現在の苗PLの使用量を算出して、算出した現在の苗PLの使用量と使用量情報の値とを比較する。
【0072】
そして、制御部100は、現在の苗PLの使用量と使用量情報の値との間にずれがある場合には警告を発するように、たとえば、苗移植機1が有するアラーム機能を制御する。なお、苗PLの使用量のずれの警告は、アラーム音やランプ点灯で報知してもよいし、モニタ表示で報知してもよい。
【0073】
このように、現在の苗PLの使用量と使用量情報の値とを比較することで、たとえば、10アールの作業面積SWに対して20枚の苗マットMPLを使用するなど、計画通りに苗PLが使用されているかを判断することができる。また、苗PLの使用量が計画からずれている場合に警告することで、苗PLが足りなくなるなどの問題を回避することができる。これにより、作業効率をさらに向上させることができる。
【0074】
また、制御部100は、苗タンク35における苗マットM
PL(
図10~12参照)の送り量を制御する。制御部100は、苗タンク35の苗送りローラ351(
図12参照)を制御することで、苗送りローラ351によって駆動される苗送りベルト352(
図12参照)を制御する。これにより、制御部100は、苗タンク35における苗マットM
PLの送り量の制御が可能となる。
【0075】
そして、制御部100は、苗マットMPLの送り量を制御することで、苗マットMPLの圧縮率を任意に変化させることができる。
【0076】
このように、苗マットMPLの圧縮率を任意に変化させることで、苗PLの使用量を自動的に調整することができるとともに、簡素な構成で苗PLの使用量の自動調整が可能となる。
【0077】
図5および6は、苗マットM
PLの圧縮機構80の説明図である。なお、
図5においては、左図が苗タンク35を機体前方から見た図(苗タンク35の概略正面図)であり、右図が苗タンク35を機体左側方から見た図(苗タンク35の概略左側面図)である。また、
図6には、苗マットM
PLの圧縮機構80の構成を模式的に示している。
【0078】
図5に示すように、苗マットM
PLの圧縮機構80は、苗タンク35において苗マットM
PLが載置される苗載せ面とは反対の面(裏面)側に設けられる。
【0079】
図6に示すように、苗マットM
PLの圧縮機構80は、苗送りケーブル81と、ケーブルステー82と、モータ83と、ギヤ部84と、センサ85と、シリンダ86と、ベース部87とを備える。苗送りケーブル81は、一方が苗タンク35側アームへ向けて延びており、他方が苗送りアームへ向けて延びている。
【0080】
苗送りケーブル81は、苗取り量の調整機構である調整レバーの回動アームと接続される。調整レバーが操作されると、苗送りケーブル81の張り量が変化する。調整レバーが苗取り量を増やす方向へ操作されると、苗送りケーブル81が緩み、苗送りアームが下方へ垂れ下がり、苗送りベルト352の駆動量が増大する。苗送りアームは、苗タンク35の苗送りベルト352を駆動させるためのアームであり、ワンウェイクラッチが介在することで、苗送りアームを押し上げると苗送りベルト352が駆動するとともに、ばねなどの付勢力で苗送りアームは垂れ下がる方向へ戻る。苗送りケーブル81は、苗送りアームを引き上げており、苗送りケーブル81の張り量で苗送りアームの位置が変わり、苗送りベルト352の駆動量が変化する。
【0081】
苗マットMPLの圧縮機構80では、苗送りケーブル81の張り方向、ケーブルステー82の入出力軸(動作軸)およびモータ83の回転軸が同一方向である。また、苗マットMPLの圧縮機構80では、モータ83およびセンサ85は、ケーブルステー82よりも上方に設けられる。このように、モータ83やセンサ85を上方側へ配置することで、泥水などの浸入を抑制することができる。モータ83は、苗送りケーブル81を移動させる。また、センサ85は、ケーブルステーを移動させるギヤ部84の回転量を検出する。
【0082】
ケーブルステー82は、モータ83およびギヤ部84の組み合わせによって、モータ83の回転軸の方向へと移動可能に構成される。これにより、モータ83の回転軸とケーブルステー82の移動方向とを一致させることができる。なお、ケーブルステー82の移動量は、送りねじのピッチで決まり、たとえば、最大で±2.0mm程度であり、モータ83の回転量に対してケーブルステー82が僅かに移動する。
【0083】
ケーブルステー82には、苗送りケーブル81が固定されるための切欠きや、ねじ孔の軸方向へ延びているシリンダ86が設けられる。ケーブルステー82は、シリンダ86とベース部87のピンとによって、軸方向へスムーズに移動する。なお、ギヤ部84は、先端部がベース部87に設けられたボールベアリングへ挿入されているため、スムーズに回転する。
【0084】
制御部100は、たとえば、苗タンク35を左右いずれかの端部へ移動させる、いわゆるピタ寄せスイッチの操作に基づいて苗タンク35の左右の往復回数を測定し、苗マットMPLが追加で補給されるまでの苗タンク35の往復回数を測定する。そして、制御部100は、苗マットMPLの数回の追加補給までの苗タンク35の往復回数から、苗マットMPLが1枚使用されるときの苗タンク35の往復回数を算出し、さらに、苗取り量から苗マットの圧縮率を算出する。
【0085】
図7は、電極センサ91を用いた苗PL(苗マットM
PL)の残量検出の説明図である。なお、
図7には、苗タンク35を機体前方から見た図(苗タンク35の概略正面図)を示している。
図8は、電流値および苗マットの位置の関係を示す図である。
【0086】
図7に示すように、苗移植機1(
図1参照)は、電極センサ91を備える。電極センサ91は、苗タンク35に設けられる。電極センサ91は、苗タンク35における苗マットM
PLの各搬送路を斜めに横切るように配置される。電極センサ91は、苗マットM
PLの電流値を測定する。
【0087】
なお、電極センサ91の上端から下端までの距離は、苗マットMPL1枚分よりも短いことが好ましい。また、電極センサ91は、矩形状の苗マットMPLの対角線上に配置され、苗マットMPLの内寸よりも小さくなるように配置されることが好ましい。
【0088】
制御部100は、電極センサ91で測定された電流値に基づいて苗マットM
PLの残量を算出する。制御部100は、
図8に示すように、苗マットM
PLが抵抗となって、電極センサ91によって測定した電流値が変動するごとに1枚の苗マットM
PLとしてカウントする。これにより、制御部100は、苗マットM
PLの残量を算出することができる。
【0089】
このように、苗マットMPLを抵抗として電流値が変動することを利用して、苗マットMPL(苗PL)の残量を算出することができる。これにより、作業者による苗マットMPL(苗PL)の残量の把握が可能となる。
【0090】
なお、
図7に示すように、苗マットM
PLの各搬送路には、上記した電極センサ91の下方に、電極センサ91aがさらに設けられてもよい。すなわち、各搬送路において2つの電極センサ91,91aで電流値を測定してもよい。2つの電極センサ91,91aは、互いに平行とならないように配置されることが好ましい。また、下側の電極センサ91aは、苗タンク35の摺動方向(左右方向)に対して平行となるように配置されることが好ましい。
【0091】
このような電極センサ91,91aを用いた苗マットM
PLの残量検出では、たとえば、苗マットM
PLの搬送路において、苗マットM
PLに押されることで苗マットM
PLを検出する検知スイッチ(たとえば、
図10を用いて後述する検知スイッチ96など)が設けられている場合、制御部100は、苗検出スイッチが押されていない場合には電流値の記録を行わない。なお、苗検出スイッチが設けられている場合には、2つの電極センサ91,91aは、苗検出スイッチよりも上方に配置される。
【0092】
制御部100は、各搬送路における苗マットMPLの電流値を、所定領域の植え付け作業が終了するまで記録する。制御部100は、所定領域の植え付け作業終了後に記録した電流値データをもとに、現在の電流値から苗残量を予測する。
【0093】
制御部100は、記録した電流値データの最大値時には、苗マットMPLが電極センサ91のすべてに接触しており、記録した電流値データの最小値時には、電極センサ91の下端より下方に苗マットMPLがあると判断する。また、苗マットMPLが電極センサ91の上端と下端との間を移動するときには、制御部100は、出力される電流が記録した電流値の最大値と最小値との間をリニアに移動するとして、苗マットMPLの現在位置を推測する。なお、苗マットMPLの電流値の記録は、植え付け作業時、苗タンク35が左右いずれかの端部へ移動したことを検知した都度行う。
【0094】
図9は、超音波センサ92を用いた苗PL(苗マットM
PL)の残量検出の説明図である。なお、
図9においては、左図が苗タンク35を機体左側方から見た図(苗タンク35の概略左側面図)であり、右図が苗タンク35を機体後方から見た図(苗タンク35の概略背面図)である。
【0095】
図9に示すように、苗移植機1(
図1参照)は、上記した電極センサ91(91a)に代えて、超音波センサ92を備えてもよい。超音波センサ92は、苗タンク35に設けられる。超音波センサ92は、たとえば、苗タンク35における苗マットM
PLの各搬送路の上端部に設けられる。超音波センサ92は、苗マットM
PLまでの距離を測定する。すなわち、超音波センサ92は、苗タンク35(苗マットM
PLの搬送路)の上端部の所定の位置から苗マットM
PLの上端部までの距離を測定する。
【0096】
制御部100は、超音波センサ92で測定された距離に基づいて苗マットMPLの残量を算出する。制御部100は、所定の位置から苗マットMPLまでの距離が急激に変化した場合(具体的には、苗マットMPLまでの距離が急に短くなった場合)には苗マットMPLが1枚追加されたと判断して、1枚の苗マットMPLとしてカウントする。これにより、制御部100は、苗マットMPLの残量を算出することができる。
【0097】
このように、所定の位置から苗マットMPLまでの距離が急激に変化した場合(具体的には、苗マットMPLまでの距離が急に短くなった場合)には苗マットMPLが1枚追加されたと判断することができ、使用した苗マットMPLをカウントすることができるため、苗マットMPL(苗PL)の残量を算出することができる。これにより、作業者による苗マットMPL(苗PL)の残量の把握が可能となる。
【0098】
図10~12は、苗マットM
PLのカウント機構の説明図である。なお、
図10においては、左図が苗タンク35を機体左側方から見た図(苗タンク35の概略左側面図)であり、右図が苗タンク35を機体後方から見た図(苗タンク35の概略背面図)である。また、
図11および12には、苗タンク35を機体後方から見た図(苗タンク35の概略背面図)を示している。また、
図12には、図中の左側に苗マットM
PLの縦送り前を示し、図中の右側に苗マットM
PLの縦送り後を示している。
【0099】
図10~12に示すように、苗マットM
PLのカウント機構は、苗タンク35の苗送りローラ351(
図12参照)と、苗送りベルト352(
図12参照)と、ストッパ95と、検知スイッチ96によって構成される。
【0100】
苗送りローラ351は、苗タンク35における苗マットM
PLの各搬送路に設けられ、回転駆動されることで、苗送りベルト352を上方から下方へ回転させる。苗送りローラ351は、制御部100(
図2参照)によって駆動制御される。苗送りベルト352は、苗タンク35における苗マットM
PLの各搬送路に設けられる。苗送りベルト352は、苗マットM
PLの搬送路の搬送面の一部を形成するように設けられる。苗送りベルト352は、苗送りローラ351の回転によって、苗マットM
PLの搬送路の上流から下流へ苗マットM
PLを搬送する。
【0101】
ストッパ95は、苗マットMPLの各搬送路の中途位置に設けられる。ストッパ95は、苗マットMPLの搬送路上における苗マットMPLと苗送りベルト352とが重なる位置に設けられる。ストッパ95は、苗マットMPLの搬送路へ向けて、たとえば、側方から進退可能に設けられる。ストッパ95は、搬送路へ進出することで、搬送路の中途位置において苗マットMPLの下方への移動を規制する。ストッパ95は、搬送路から退避することで、苗マットMPLの規制を解除し、苗マットMPLの下流への搬送を可能とする。
【0102】
ストッパ95は、苗マットMPLの移動を規制することで、上段の苗マットMPLと下段の苗マットMPLとの境目Bに隙間を形成する。ストッパ95は、制御部100によって駆動制御される。
【0103】
検知スイッチ96は、苗マットMPLの各搬送路において、ストッパ95よりも搬送路の下流側に設けられる。検知スイッチ96は、搬送路における苗マットMPLの有無を検知する。なお、検知スイッチ96は、苗マットMPLの搬送路の左右方向の略中央に配置される。また、検知スイッチ96は、たとえば、畦クラッチで入切が可能な条(苗マットMPLの搬送路)に1つずつ配置されてもよい。この場合、検知スイッチ96は、8~7条植えであれば4箇所、6~5条植えであれば3箇所配置される。
【0104】
制御部100は、検知スイッチ96によって苗マットMPLが検知されると、苗マットMPLを1枚使用したとカウントする。制御部100は、検知スイッチ96によって苗マットMPLが検知されるたびに、苗マットMPLをカウントする。
【0105】
図12に示すように、制御部100は、苗マットM
PLの搬送路上における上段の苗マットM
PLと下段の苗マットM
PLとの境目Bにおいて検知スイッチ96によって苗マットM
PLが無いことが検知されると、ストッパ95を進出させて、ストッパ95による苗マットM
PLの規制を解除する。そして、制御部100は、苗送りローラ351を回転させて、下段の苗マットM
PLに当接するまで上段の苗マットM
PLを搬送することで、上段の苗マットM
PLと下段の苗マットM
PLとの境目Bの隙間をなくす。
【0106】
このように、苗マットMPLの搬送路において上段の苗マットMPLと下段の苗マットMPLとの境目Bにストッパ95による隙間が形成されることで、検知スイッチ96による苗マットMPLのカウントを確実に行うことができる。また、検知スイッチ96がストッパ95よりも下流側に設けられることで、検知スイッチ96による苗マットMPLのカウントを確実に行うことができる。また、苗マットMPLの搬送路において規制された苗マットMPLが苗送りベルト352と重なるため、ストッパ95によって苗マットMPLが規制されても、苗送りベルト352によって苗マットMPLが下流へ搬送されるようになる。
【0107】
上述してきた実施形態により、以下の苗移植機1が実現される。
【0108】
(1)前輪11および後輪12を有し、圃場F内を走行可能な走行車体2と、走行車体2に設けられ、走行車体2の走行中に、苗タンク35において搬送されてきた苗マットMPLから植付爪38で掻き取った苗を圃場Fへ植え付ける苗植付部3と、植付爪38による苗取り量を変更するよう苗植付部3を制御する制御部100と、走行車体2の位置情報を取得する位置情報取得部50とを備え、制御部100は、位置情報取得部50で取得された位置情報から算出した走行車体2の第1車速と後輪12の回転数から算出した走行車体2の第2車速との差から圃場F内における走行車体2のスリップ率を算出し、スリップ率に基づいて植付爪38による苗取り量を補正し、制御部100は、スリップ率が所定の値以上の場合には苗取り量を減らし、スリップ率が所定の値以下の場合には苗取り量を増やす、苗移植機1。
【0109】
このような苗移植機1によれば、圃場F内を走行する走行車体2(苗移植機1)のスリップ率の変化による苗の使用量の変動を抑制することができる。これにより、資材(苗、苗マットMPL)を計画的に使用することができ、作業効率を向上させることができる。走行車体2(苗移植機1)のスリップ率は、株間の距離Dに応じて所定の値に予め設定されている。このような苗移植機1によれば、スリップ率が予め設定された所定の値以上の場合(すなわち、スリップ率が高い場合)には、株間の距離D(D1)が短くなるため、苗PLを少なく植え、また、スリップ率が所定の値以下の場合(すなわち、スリップ率が低い場合)には、株間の距離D(D2)が長くなるため、苗PLを多く植えることで、圃場F内を走行する走行車体2(苗移植機1)のスリップ率の変化による苗PLの使用量の変動を抑制することができる。
【0110】
(2)上記(1)において、制御部100は、第1車速に基づいて苗移植機1による所定の作業面積を算出し、作業面積ごとにスリップ率を算出し、作業面積ごとのスリップ率に基づいて作業面積ごとに苗取り量を補正する、苗移植機1。
【0111】
このような苗移植機1によれば、上記(1)の効果に加えて、走行車体2(苗移植機1)の所定の作業面積SWにおける平均的なスリップ率を用いて苗PLの使用量を補正することで、苗PLの使用量を安定させることができる。
【0112】
(3)上記(2)において、制御部100は、作業面積に応じて予め設定された苗の使用量情報を有し、現在の苗の使用量を算出し、使用量と前記使用量情報の値とを比較し、使用量と使用量情報の値との間にずれがある場合には警告を発する、苗移植機1。
【0113】
このような苗移植機1によれば、上記(2)の効果に加えて、現在の苗PLの使用量と使用量情報の値とを比較することで、計画通りに苗PLが使用されているかを判断することができる。また、苗PLの使用量が計画からずれている場合に警告することで、苗PLが足りなくなるなどの問題を回避することができる。これにより、作業効率をさらに向上させることができる。
【0114】
(4)上記(1)において、制御部100は、苗タンク35における苗マットMPLの送り量を制御し、送り量を制御することで苗マットMPLの圧縮率を任意に変化させる、苗移植機1。
【0115】
このような苗移植機1によれば、上記(1)の効果に加えて、苗PLの使用量を自動的に調整することができるとともに、簡素な構成で苗PLの使用量の自動調整が可能となる。
【0116】
(5)上記(1)において、苗タンク35に設けられ、苗タンク35における苗マットMPLの電流値を測定する電極センサ91を備え、制御部100は、電極センサ91で測定された電流値に基づいて苗マットMPLの残量を算出する、苗移植機1。
【0117】
このような苗移植機1によれば、上記(1)の効果に加えて、苗マットMPLを抵抗として電流値が変動することを利用して、苗マットMPL(苗PL)の残量を算出することができる。これにより、作業者による苗マットMPL(苗PL)の残量の把握が可能となる。
【0118】
(6)上記(1)において、苗タンク35に設けられ、苗タンク35における苗マットMPLまでの距離を測定する超音波センサ92を備え、制御部100は、超音波センサ92で測定された距離に基づいて苗マットMPLの残量を算出する、苗移植機1。
【0119】
このような苗移植機1によれば、上記(1)の効果に加えて、所定の位置から苗マットMPLまでの距離が急激に変化した場合(具体的には、苗マットMPLまでの距離が急に短くなった場合)には苗マットMPLが1枚追加されたと判断することができ、使用した苗マットMPLをカウントすることができるため、苗マットMPL(苗PL)の残量を算出することができる。これにより、作業者による苗マットMPL(苗PL)の残量の把握が可能となる。
【0120】
(7)上記(1)~(6)のいずれかにおいて、苗タンク35における苗マットMPLの搬送路に設けられ、制御部100に駆動制御される苗送りローラ351の回転によって搬送路の上流から下流へ苗マットMPLを搬送する苗送りベルト352と、搬送路の中途位置に設けられるとともに搬送路上の苗マットMPLと苗送りベルト352とが重なる位置に設けられ、制御部100に駆動制御されることで中途位置において苗マットMPLを規制して、上段の苗マットMPLと下段の苗マットMPLとの境目Bに隙間を形成するストッパ95と、ストッパ95よりも搬送路の下流側に設けられ、苗マットMPLの有無を検知する検知スイッチ96とを備え、制御部100は、検知スイッチ96で苗マットMPLが検知されるたびに苗マットMPLを1枚使用したとカウントするとともに、搬送路上の上段の苗マットMPLと下段の苗マットMPLとの境目Bにおいて検知スイッチ96で苗マットMPLが無いことが検知されると、ストッパ95による苗マットMPLの規制を解除し、苗送りローラ351を回転させて、下段の苗マットMPLに当接するまで上段の苗マットMPLを搬送する、苗移植機1。
【0121】
このような苗移植機1によれば、上記(1)~(6)のいずれかの効果に加えて、苗マットMPLの搬送路において上段の苗マットMPLと下段の苗マットMPLとの境目Bにストッパ95による隙間が形成されることで、検知スイッチ96による苗マットMPLのカウントを確実に行うことができる。また、検知スイッチ96がストッパ95よりも下流側に設けられることで、検知スイッチ96による苗マットMPLのカウントを確実に行うことができる。また、苗マットMPLの搬送路において規制された(止まった)苗マットMPLが苗送りベルト352と重なるため、ストッパ95によって苗マットMPLが規制されても(止まっても)、苗送りベルト352によって苗マットMPLが下流へ搬送されるようになる。
【0122】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 苗移植機
2 走行車体
3 苗植付部
11 前輪
12 後輪
35 苗タンク
38 植付爪
50 位置情報取得部
95 ストッパ
96 検知スイッチ
100 制御部
351 苗送りローラ
352 苗送りベルト
B 境目
D 距離
F 圃場
MPL 苗マット
PL 苗
SW 作業面積