(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086158
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】塗料用樹脂エマルション
(51)【国際特許分類】
C09D 133/04 20060101AFI20240620BHJP
C08F 216/14 20060101ALI20240620BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240620BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C09D133/04
C08F216/14
C09D5/02
C09D133/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201143
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂元 芳峰
(72)【発明者】
【氏名】下道 謙太
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038CH011
4J038CH121
4J038KA09
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA03
4J038PB05
4J100AB02R
4J100AE18P
4J100AJ02Q
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL08R
4J100AL09Q
4J100BA02P
4J100BA08P
4J100BA56P
4J100BC04Q
4J100BC07R
4J100BC43P
4J100CA03
4J100DA09
4J100DA25
4J100DA50
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA20
4J100GC07
4J100JA01
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】湿度変化の激しい環境下で長期間使用しても、塗膜割れを抑制できる塗料の提供を課題とする。
【解決手段】上記課題は、芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構造単位(A)と、式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)と、反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有する重合体を含むことで解決できる。
[式(b1)において、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2およびR
3はアルキル基を表し、R
2およびR
3のアルキル基の合計炭素数は2~20であり、かつR
2の炭素数≦R
3の炭素数を満たす。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構造単位(A)と、式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)と、反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有する重合体を含む、塗料用樹脂エマルション。
【化1】
[式(b1)において、R
1は水素原子またはメチル基を表す。R
2およびR
3はアルキル基を表し、R
2およびR
3のアルキル基の合計炭素数は2~20であり、かつR
2の炭素数≦R
3の炭素数を満たす。]
【請求項2】
前記重合体における、構造単位(B)と構造単位(A)の質量比(構造単位(B)/構造単位(A))が、0.2~12である請求項1に記載の樹脂エマルション。
【請求項3】
前記重合体が、さらに酸基含有モノマーに由来する構造単位及び水酸基含有モノマーに由来する構造単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の樹脂エマルション。
【請求項4】
建築塗料用である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂エマルション。
【請求項5】
芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構造単位(A)と、式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)と、反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有する重合体を含む塗料。
【化2】
[式(b1)において、R
1は水素原子またはメチル基を表す。R
2およびR
3はアルキル基を表し、R
2およびR
3のアルキル基の合計炭素数は2~20であり、かつR
2の炭素数≦R
3の炭素数を満たす。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用樹脂エマルション及び塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁などに適用される塗料には、得られる塗膜の耐候性が求められる。
【0003】
例えば特許文献1には、共重合体エマルジョンを含む水性塗料について開示されており、該水性塗料から得られる塗膜の耐候性を高めるために、前記共重合体のガラス転移温度(Tg)を高めること、そのためには共重合を構成するモノマー成分として、メタクリル酸イソボロニルやメタクリル酸シクロヘキシルなどのホモポリマーのTgが20℃以上である炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレ-トを使用することなどが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、水性塗料に含まれる重合体を構成するモノマー成分として(メタ)アクリル酸のシクロヘキシルアルキルエステルやシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を用いることで、耐候性が向上することが記載されている。なお水性塗料に含まれる重合体を構成するモノマー成分としてスチレンを使用した際には、得られる塗膜の耐候性が劣ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-206800号公報
【特許文献2】特開2002-69131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで建築塗料の用途においては塗膜が湿度変化の激しい環境下に長時間さらされる場合があり、塗膜が吸水及び放水を繰り返すことで膨潤収縮が生じるために、塗膜割れが生じる場合があった。すなわち、塗料には、上記耐候性の他、湿度変化の激しい環境下で長時間使用しても塗膜割れを抑制できること(以下、塗膜割れ性という場合がある)が求められる。シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂環式モノマーを重合して得られた重合体を含む塗料は耐候性に優れるが、耐候性と塗膜割れ性の両立については未だ検討されていない。また、スチレンなどの芳香族モノマーを重合して得られた重合体を含む塗料は、耐候性に劣るが、汎用性が高いため、芳香族モノマーを使用して耐候性と塗膜割れ性に優れることも求められる。
【0007】
そこで本発明は、湿度変化の激しい環境下で長期間使用しても、塗膜割れを抑制できる塗料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマーと共に、特定の構造を有する化合物と反応性乳化剤とを共重合させることで、湿度変化の激しい環境下で長期間使用しても、塗膜割れを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構造単位(A)と、式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)と、反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有する重合体を含む、塗料用樹脂エマルション。
【化1】
[式(b1)において、R
1は水素原子またはメチル基を表す。R
2およびR
3はアルキル基を表し、R
2およびR
3のアルキル基の合計炭素数は2~20であり、かつR
2の炭素数≦R
3の炭素数を満たす。]
[2] 前記重合体における、構造単位(B)と構造単位(A)の質量比(構造単位(B)/構造単位(A))が、0.2~12である[1]に記載の樹脂エマルション。
[3] 前記重合体が、さらに酸基含有モノマーに由来する構造単位及び水酸基含有モノマーに由来する構造単位から選ばれる少なくとも1種を含む[1]または[2]に記載の樹脂エマルション。
[4] 建築塗料用である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[5] 芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構造単位(A)と、式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)と、反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有する重合体を含む塗料。
【化2】
[式(b1)において、R
1は水素原子またはメチル基を表す。R
2およびR
3はアルキル基を表し、R
2およびR
3のアルキル基の合計炭素数は2~20であり、かつR
2の炭素数≦R
3の炭素数を満たす。]
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿度変化の激しい環境下で長期間使用しても、塗膜割れを抑制できる塗料の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリロキシ」や「(メタ)アクリロイル」等の用語も同様である。また、「~由来の構造単位」とは、各モノマー成分が有するエチレン性不飽和二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が単結合(-C-C-)となった構造)に相当する。
【0012】
本発明の塗料用樹脂エマルション及び塗料は、芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構造単位(A)と、式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)と、反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有する重合体を含むことを特徴とする。
【0013】
[重合体]
以下、前記重合体を構成する各成分に関して説明する。
【0014】
[芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー]
前記重合体は、芳香族モノマー及び脂環式モノマーから選択される少なくとも1種のモノマー(以下、環状モノマーという場合がある)由来の構造単位(A)を有する。なお、本明細書において、後述する反応性乳化剤に該当する化合物は、環状モノマーに包含されない。
【0015】
前記芳香族モノマーとしては、分子中に少なくとも1個の芳香族炭化水素環と少なくとも1個の重合性不飽和基を有するものであることが好ましく、該芳香族炭化水素環としてはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられ、中でもベンゼン環が好ましい。
【0016】
芳香族モノマーとしては、スチレン系モノマー、アリール(メタ)アクリレート、アラルキル(メタ)アクリレート、ビスフェノール骨格を有するジ(メタ)アクリレート、アリール基を有するマレイミド等が挙げられる。
前記スチレン系モノマーとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のC1-4アルキル基)、ビニル基、アルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリC1-4アルコキシシリル基)等の置換基を1つ以上有していてもよいスチレンが挙げられる。前記置換基としては、ハロゲン原子及びアルキル基から選択される少なくとも1種が好ましい。前記スチレン系モノマーとしては、具体的に、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、p-スチリルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記アリール(メタ)アクリレートとしては、具体的に、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記アラルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的に、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記ビスフェノール骨格を有するジ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記アリール基を有するマレイミドとしては、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0017】
前記脂環式モノマーとしては、分子中に少なくとも1個の脂環式炭化水素環と少なくとも1個の重合性不飽和基を有するものであることが好ましく、該脂環式炭化水素環としては、飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。また、前記脂環式炭化水素環は、単環式であってもよく、二環、三環などの多環式であってもよい。多環式の場合、縮合環であることが好ましく、橋掛け環であることが特に好ましい。前記脂環式炭化水素環としては、炭素数3~10の環、例えば、シクロアルキル基、イソボルニル基、アダマンチル基などが好ましい。
【0018】
前記脂環式モノマーとしては、具体的に、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸とシクロアルカノールとのエステル;イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多環式アルコールとのエステル;N-シクロヘキシルマレイミド等のシクロアルキル基含有マレイミド;等が挙げられる。
【0019】
前記環状モノマーとしては、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸とシクロアルカノールとのエステル、(メタ)アクリル酸と多環式アルコールとのエステルが好ましく、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸と炭素数6~10のシクロアルカノールとのエステル、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましく、スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0020】
環状モノマー由来の構造単位(A)は、重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0021】
前記重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における環状モノマー由来の構造単位(A)の割合は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上であり、また、95質量%以下又は93質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下である。
【0022】
得られる塗膜の耐候性、及び湿度変化の激しい環境下での長期間使用時の塗膜割れ抑制効果(塗膜割れ性)をより高める観点からは、前記重合体は、脂環式モノマー由来の構造単位を有することが好ましく、該脂環式モノマーとしては、(メタ)アクリル酸とシクロアルカノールとのエステル、(メタ)アクリル酸と多環式アルコールとのエステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸と炭素数6~10のシクロアルカノールとのエステル、イソボルニル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。前記重合体における構造単位(A)100質量%中、脂環式モノマー由来の構造単位の割合は30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、70質量%以上、80質量%以上または90質量%以上であってもよい。
【0023】
[式(b1)で表される化合物]
前記重合体は、下記式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)を有しており、すなわち、前記重合体は、下記式(b1’)で表される構造単位(B)を有する。式(b1)で表される化合物は(メタ)アクリル酸と2級アルキルアルコールとのエステルに相当する。上記構造単位(A)を有する重合体を含む塗料から形成される塗膜は、堅脆く、特に湿度変化の激しい環境下で長期間使用することで塗膜割れが生じ得るところ、前記重合体がさらに後述の構造単位(C)と共に構造単位(B)を有することで、耐候性を維持または高めつつ、前記塗膜割れを防止できる。また、前記重合体が構造単位(B)を有することで、塗膜の吸水を抑制できる。
【0024】
【化3】
[式(b1)及び(b1’)において、R
1は水素原子またはメチル基を表す。R
2およびR
3はアルキル基を表し、R
2およびR
3のアルキル基の合計炭素数は2~20であり、かつR
2の炭素数≦R
3の炭素数を満たす。]
【0025】
R2及びR3で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0026】
R2及びR3で表されるアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル、n-ドデシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基、3-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル等の分岐鎖状アルキル基;が挙げられる。
【0027】
R2およびR3のアルキル基の合計炭素数は3~20であることが好ましく、より好ましくは3~15、さらに好ましくは5~14である。
また、R2のアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、より好ましくは1又は2である。
また、R3のアルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、より好ましくは4~10である。
【0028】
式(b1)で表される化合物としては、具体的に、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-ブチル(メタ)アクリレート、2-ペンチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ブチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2-ヘキシル(メタ)アクリレート、3,3-ジメチル-2-ブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ペンチル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-ペンチル(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-3-ペンチル(メタ)アクリレート、2-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-メチル-3-ヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヘプチル(メタ)アクリレート、4-ヘプチル(メタ)アクリレート、5-メチル-2-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル-3-ヘキシル(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-3-ヘキシル(メタ)アクリレート、3-オクチル(メタ)アクリレート、4-オクチル(メタ)アクリレート、5-メチル-2-ヘプチル(メタ)アクリレート、5-メチル-3-ヘプチル(メタ)アクリレート、6-メチル-2-ヘプチル(メタ)アクリレート、6-メチル-3-ヘプチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、2-オクチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
特に、2-オクチル(メタ)アクリレートは、バイオマス材料を原料として合成することができ、環境負荷低減の観点から好ましい。具体的に、トウゴマの種子から採取及び抽出されるひまし油から誘導されたリシノール酸をクラッキングした後、副生成物であるセバシン酸を含む混合物から蒸留するなどして得られた2-オクタノールと、(メタ)アクリル酸とをエステル化することで得ることができる。なおこの際使用される(メタ)アクリル酸は、バイオ由来であっても石油由来であってもよい。
【0030】
式(b1)で表される化合物由来の構造単位(B)は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0031】
前記重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における構造単位(B)の割合は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、90質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。構造単位(B)の割合を上記範囲に調整することで、長期間使用時の塗膜割れをより抑制することができる。
【0032】
また前記重合体における、構造単位(B)と構造単位(A)の質量比(構造単位(B)/構造単位(A))は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上であり、また12以下であることが好ましく、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。質量比(構造単位(B)/構造単位(A))を上記範囲に調整することで、長期間使用時の塗膜割れをより抑制することができる。
【0033】
[酸基含有モノマー]
前記重合体は、さらに酸基含有モノマー由来の構造単位を含むことが好ましい。重合体が酸基含有モノマー由来の構造単位を含むことにより、重合時の凝集物発生を抑制できる。
【0034】
酸基含有モノマーは、分子中に少なくとも1個の酸基と少なくとも1個の重合性不飽和基を有するもの(ただし、芳香族炭化水素環や脂環式炭化水素環は含まない)であればよく、前記酸基としては、スルホ基、カルボキシ基などが挙げられ、カルボキシ基が好ましい。酸基含有モノマーとしては、具体的に、(メタ)アクリル酸、ケイ皮酸、およびクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノエステル;無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸の無水物;2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。なかでも不飽和モノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
【0035】
酸基含有モノマー由来の構造単位は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0036】
前記重合体が酸基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における酸基含有モノマー由来の構造単位の割合は、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、また10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0037】
[水酸基含有モノマー]
前記重合体は、さらに水酸基含有モノマー由来の構造単位を含むことが好ましい。重合体が水酸基含有モノマー由来の構造単位を含むことにより、重合時の凝集物発生を抑制できる。
【0038】
水酸基含有モノマーは、分子中に少なくとも1個の水酸基と少なくとも1個の重合性不飽和基を有する(ただし、芳香族炭化水素環や脂環式炭化水素環は含まない)ものであればよい。水酸基含有モノマーとしては、具体的に、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン置換ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシエチルフタル酸等の変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;ビニルアルコール、アリルアルコール等の水酸基含有ビニルモノマー;等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0039】
水酸基含有モノマー由来の構造単位は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0040】
前記重合体が水酸基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合は、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上であり、また10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0041】
[(メタ)アクリル酸アルキルエステル]
前記重合体は、さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ただし、式(b1)で表される化合物を除く)由来の構造単位を有していてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸C1-14アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸C1-10アルキルエステルがより好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0044】
前記重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位を含む場合、前記重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(特に、メタクリル酸C1-14アルキルエステル)由来の構造単位の割合は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、75質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0045】
なお、長期使用時の塗膜割れをより低減する観点からは、前記重合体における、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-20℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルという場合がある)由来の構造単位の含有量が少ない方が好ましい。低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート等が挙げられる。特に、2-エチルヘキシルアクリレート由来の構造単位の含有量が少ないことが好ましい。
前記重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステル(特に、2-エチルヘキシルアクリレート)由来の構造単位の割合は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下又は5質量%未満、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であり、0質量%、すなわち低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステル(特に、2-エチルヘキシルアクリレート)由来の構造単位を含まないことが最も好ましい。
【0046】
[窒素原子含有モノマー]
前記重合体は、さらに、窒素原子含有モノマー由来の構造単位を有していてもよい。前記重合体が窒素原子含有モノマー由来の構造単位を有することにより、重合時の凝集物発生を抑制でき、また下地への密着性を向上できる。
【0047】
前記窒素原子含有モノマーは、分子中に窒素原子を構成員として含む置換基と重合性不飽和基とを少なくとも有するものであればよい。なお、窒素原子含有モノマーには、芳香族炭化水素環、脂環式炭化水素環、酸基及び水酸基の少なくとも1つを有する化合物は含まれない。
窒素原子含有モノマーとしては、窒素系複素環含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーなどが挙げられる。なお、アミノ基含有モノマーおよびアミド基含有モノマーであるものの、窒素系複素環を含有するモノマーについては、本明細書において窒素系複素環含有モノマーとして取り扱う。
【0048】
窒素系複素環含有モノマーとしては、具体的に、
N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン等のビニルラクタム系モノマー;
マレイミド等のマレイミド系モノマー;
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレート等のピペリジル(メタ)アクリル系モノマー;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2-アジリジニルエチルなどのアジリジニル基含有(メタ)アクリル系モノマー;
2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリン;等が挙げられる。
【0049】
前記アミノ基含有モノマーとしては、具体的に、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。
【0050】
アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマーなどが挙げられる。
【0051】
窒素原子含有モノマーとしては、窒素系複素環含有モノマーが好ましく、ビニルラクタム系モノマー、ピペリジル(メタ)アクリル系モノマーがより好ましく、N-ビニル-2-ピロリドン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
また光安定性を向上させる観点からは、ヒンダードアミン構造を有する窒素原子含有モノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、分子内に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン環構造と重合性不飽和基とを有するモノマーが好ましく、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン環構造と重合性不飽和基とを有するモノマーがより好ましく、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0052】
窒素原子含有モノマー由来の構造単位は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0053】
前記重合体が窒素原子含有モノマー由来の構造単位を含む場合、前記重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における窒素原子含有モノマー由来の構造単位の割合は0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは0.75質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上であり、また、15.0質量%以下が好ましく、より好ましくは12.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、特に好ましくは8.0質量%以下である。
【0054】
[架橋性モノマー]
前記重合体は、さらに、架橋性モノマー由来の構造単位を有していてもよい。前記重合体が架橋性モノマー由来の構造単位を有することにより、高湿度下での塗膜の割れ性や吸水をより抑制できる。
【0055】
前記架橋性モノマーは、芳香族炭化水素環、脂環式炭化水素環、酸基、水酸基、及び窒素原子を構成員として含む置換基をいずれも有さず、且つ、分子中に架橋性官能基と重合性不飽和基を有するものであればよい。前記架橋性官能基としては、重合性不飽和基、エポキシ基、加水分解性シリル基等が挙げられる。なお、加水分解性シリル基とは、加水分解性基(例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子など)が結合したシリル基を指す。
【0056】
架橋性モノマーとしては、例えば、重合性不飽和基を2つ以上有するモノマー、加水分解性シリル基と重合性不飽和基とを有するシランカップリング剤、エポキシ基と重合性不飽和基とを有する(但し、加水分解性シリル基は含まない)エポキシ基含有架橋性モノマー等が挙げられる 。
【0057】
前記重合性不飽和基を2つ以上有するモノマーとしては、具体的に、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;
エチレンオキシドの付加モル数が2~50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2~50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数2~4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2~50であるアルキルジ(メタ)アクリレート;
エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレート;
2-(2’-ビニルオキシエトキシエチル)(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0058】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;などが挙げられる。
【0059】
前記エポキシ基含有架橋性モノマーとしては、具体的に、グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニルモノマー;などが挙げられる。
【0060】
架橋性モノマー由来の構造単位は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0061】
前記重合体が架橋性モノマー由来の構造単位を含む場合、前記重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における架橋性モノマー由来の構造単位の割合は、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0062】
[他のモノマー]
前記重合体は、さらに、前述のモノマー(環状モノマー、式(b1)で表される化合物、酸基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子含有モノマー、架橋性モノマー、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル)以外の他のモノマー由来の構造単位を有していてもよい。他のモノマーとしては、前述のモノマー以外のモノマーであって、且つ分子中に少なくとも1個の重合性不飽和基を有するものであればよい。
【0063】
他のモノマーとしては、具体的に、
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテート、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのカルボニル基含有(メタ)アクリレート;
酢酸ビニル、塩化ビニル、安息香酸ビニル等のビニル系モノマー;
エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;等が挙げられる。
【0064】
他のモノマー由来の構造単位は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0065】
前記重合体(好ましくは後述のモノマー成分由来の構造単位の合計)における他のモノマー由来の構造単位の割合は、例えば、50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、5又は3質量%以下であってもよい。また前記重合体における他のモノマー由来の構造単位の割合は、0質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。
【0066】
[反応性乳化剤]
前記重合体は、前述のモノマー成分(環状モノマー及び式(b1)で表される化合物、並びに、必要に応じて用いられる酸基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子含有モノマー、架橋性モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び他のモノマー)由来の構造単位に加えて、さらに反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有する。乳化重合の際に用いる乳化剤として反応性乳化剤を用いることで、前記重合体に構造単位(C)を導入できる。前記重合体が構造単位(B)と共に構造単位(C)を有することで、構造単位(A)を有する場合であっても、耐候性を維持または高めつつ、塗膜割れ性も向上できる。また、前記重合体が構造単位(C)を有することで、重合時の凝集物の発生を抑制でき、さらに前記重合体が構造単位(B)と共に構造単位(C)を有することで、高湿度環境下に繰り返し晒された場合に生じる基材の膨張収縮に追従し、塗膜の割れ性を抑制できる。
【0067】
なお、本明細書において、反応性乳化剤とは、重合性不飽和基と親水性基と疎水性基とを有するモノマーを指し、重合性不飽和基は1つ又は2つ以上であってもよい。
重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などが挙げられる。
親水性基としては、乳化剤(界面活性剤)として公知の基が挙げられ、例えば、スルホン酸基、リン酸基、硫酸エステル残基、リン酸エステル残基などのアニオン性基;ポリエーテル基、エステル基などのノニオン性基;が好ましい。
疎水性基としても乳化剤(界面活性剤)として公知の基が挙げられ、例えば、アルキル基(特に炭素数が8~40程度のアルキル基)、アリール基含有炭化水素基(特に、フェニル基を有する炭素数12~40程度の炭化水素基)、多環フェニル基が好ましい。
【0068】
反応性乳化剤としては、具体的に、
プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩(例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS-30など)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS-10など)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH-10など)、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンAR-10、アクアロンAR-20など)、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE-10など)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10、SR-20、SR-30など)、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩(例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS-60など)等の重合性不飽和基を有するアニオン性乳化剤;
ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンAN-10、アクアロンAN-20など)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-20など)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN-20など)、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE-10など)等の重合性不飽和基を有するノニオン性乳化剤;等が挙げられる。
【0069】
前記反応性乳化剤としては、重合性不飽和基を有するアニオン性乳化剤が好ましく、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩がより好ましい。
【0070】
また反応性乳化剤としては、下記式(c1)~(c3)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0071】
【化4】
[式(c1)中、
R
c1は、アルキル基を表し、
X
c1は、水素原子又は-SO
3NH
4を表し、
n1は、5~50の整数を表す。]
【0072】
【化5】
[式(c2)中、
R
c2は、アルキル基を表し、
X
c2は、水素原子又は-SO
3NH
4を表し、
n2は、5~50の整数を表す。]
【0073】
【化6】
[式(c3)中、
X
c3は、水素原子又は-SO
3NH
4を表し、
n3は、5~50の整数を表し、
m3は、1~3の整数を表す。]
【0074】
Rc1及びRc2で表されるアルキル基の炭素数は、8~40が好ましく、8~24がより好ましい。
Xc1~Xc3は、-SO3NH4が好ましい。
n1~n3は、10~40が好ましい。
【0075】
反応性乳化剤由来の構造単位(C)は、前記重合体中に、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0076】
前記重合体における構造単位(C)の含有量は、前述のモノマー成分由来の構造単位100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.3質量部以上であり、また10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0077】
[重合体の物性]
前記重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万~120万であることが好ましく、30万~110万であることがより好ましく、40万~100万であることがさらに好ましい。前記重合体のMwを上記範囲に調整することで、塗膜の油煙汚染を抑制でき、また塗膜の耐候性を向上させることができる。
【0078】
また、前記重合体における、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを用いて算出される分散度(Mw/Mn)は、10.0以下であることが好ましく、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは6.0以下である。また分散度の下限は1が好ましく、2又は3であってもよい。上記重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法によって算出することができる。
また、前記重合体における分子量が1000以下の低分子量成分の含有割合は、0.5質量%以下であってよく、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.25質量%以下であってよいが、0.23質量%以下が好ましく、0.20質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましく、0.13質量%以下が特に好ましい。低分子量成分の含有割合は、GPCにより得られた分子量分布を示す曲線に基づくピーク面積の割合から算出することができ、すなわち、分子量1000以下の低分子量成分の合計面積をポリマー全体の合計面積で除することにより求められる。
上述の所定の構成単位を有する本発明の重合体は、分散度を小さくすることができ、また、低分子量成分の含有割合を低くすることができる。これにより、塗膜の油煙汚染を抑制できる。
【0079】
前記重合体のガラス転移温度(Tg(℃))は、耐汚染性や耐候性の観点から、-20℃以上が好ましく、より好ましくは-15℃以上である。なお、上述の通り、耐汚染性や耐久性の観点からは、塗料に含まれる重合体のTgが高い方が好ましいところ、Tgが高くなると該重合体を含む塗料から形成される塗膜の伸び性が低下し、塗膜割れがより促進する場合がある。一方、本発明の上記重合体を含む塗料は、従来の塗料と比較して、Tgを高めることによる伸び性の低下を抑制できる点で好ましい。前記重合体のTgの上限は、高湿度環境下に繰り返し晒された場合に生じる基材の膨張収縮への追従性の観点から、100℃以下が好ましく、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
なお、重合体のTg(℃)は、示差熱量測定法(AST D3418-08)により測定することができるが、下記式(1)で示されるFox式から求められるTgA(K)から換算したものであってもよい。
【0080】
【数1】
[式(1)中、Tg
A:重合体のTg(K)、Tg
n:使用した各モノマーの単独重合体のTg(K)、W
n:使用した各モノマーの配合割合(質量%)]
【0081】
なお、後述するように、前記重合体から構成される樹脂エマルション粒子は単層であっても、多層構造であってもよい。樹脂エマルション粒子が多層構造である場合、多層構造のエマルション粒子を構成する重合体全体のガラス転移温度は、多段乳化重合の際に用いられたすべてのモノマー成分における各モノマーの配合割合とこれに対応する各モノマーの単独重合体のガラス転移温度を用いて、上記式から算出すればよい。
【0082】
[重合体の製造方法]
前記重合体の製造方法としては、前述のモノマー成分を、反応性乳化剤を含む乳化剤及び重合開始剤の存在下で水系溶剤中で、乳化重合する方法が好ましく挙げられる。乳化重合に用いる好ましいモノマー成分の種類、組み合わせ、配合比等は、上述の重合体を形成するためのモノマーについて説明した好ましい形態に準じる。乳化重合を行う際の具体的手段および条件については、従来公知の乳化重合方法における手段および技術を適宜選択し採用することができる。以下好ましい製造方法について詳述する。
【0083】
上記乳化重合を行う際に用いる乳化剤としては、反応性乳化剤を用いる。これにより、得られる重合体が、反応性乳化剤由来の構造単位(C)を有することができる。反応性乳化剤としては、上述で説明した反応性乳化剤を用いることができ、その好ましい態様も同様である。反応性乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0084】
また前記反応性乳化剤と共に、重合性不飽和基を含まない乳化剤(以下、非反応性乳化剤という場合がある)を用いてもよい。非反応性乳化剤としては、重合性不飽和基を含まないノニオン性乳化剤、重合性不飽和基を含まないアニオン性乳化剤、重合性不飽和基を含まないカチオン性乳化剤、重合性不飽和基を含まない両性乳化剤、重合性不飽和基を含まない高分子乳化剤等が挙げられ、従来公知の乳化剤を用いることができる。これらの非反応性乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。上記非反応性乳化剤の中でも、重合性不飽和基を含まないノニオン性乳化剤または重合性不飽和基を含まないアニオン性乳化剤が好ましい。
【0085】
重合性不飽和基を含まないアニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0086】
重合性不飽和基を含まないノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0087】
重合性不飽和基を含まない高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0088】
上記乳化重合を行う際に用いる乳化剤100質量%中、反応性乳化剤の含有割合は、30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、また、100質量%であってもよく、90質量%以下であってもよい。
【0089】
乳化剤の使用量は、例えば、モノマー成分100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、また10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。なお、必要に応じ保護コロイド類を単独または乳化剤と共に使用することもできる。
【0090】
上記乳化重合を行う際に用いる重合開始剤としては、限定はされないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0091】
上記乳化重合を行う際に用いる重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、0.01~3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~2質量部、さらに好ましくは0.1~1質量部である。重合開始剤として過酸化物系重合開始剤を使用する場合に、重合速度を増大させたり反応温度を低下させたりする必要があれば、可溶性亜硫酸塩やアスコルビン酸等の還元剤あるいは硫酸第1鉄等の水中で重金属イオンを発生する金属化合物を、上記過酸化物系重合開始剤と組合せてレドックス系の開始剤とすることもできる。
【0092】
上記乳化重合を行う際の反応温度は、得られる重合体の重量平均分子量や、モノマー成分の配合割合、および、重合開始剤の種類等を考慮し、適宜設定できるが、反応温度は例えば0~100℃であり、好ましくは50~95℃、より好ましくは60~90℃であり、また反応時間は例えば0.5~30時間、好ましくは1~20時間、より好ましくは3~10時間である。反応圧力も特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧のいずれであってもよい。なお、重合反応は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが望ましい。
【0093】
上記乳化重合を行う際の水系溶剤としては、水をはじめ、水と水溶性有機溶剤の混合溶剤が挙げられる。水系溶剤における水の含有量は10~100質量%であることが好ましい。より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。残部は水溶性有機溶剤であることが好ましい。
【0094】
水溶性有機溶剤としては、例えば、
メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの低級アルコール;
プロピレングリコール、1,3プロパンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール;
モノエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールモノプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエチレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノエチレングリコールのエーテル;
モノプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノプロピレングリコールのエーテル;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル等のジエチレングリコールのエーテル;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のジプロピレングリコールのエーテル;
ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソプロピルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソブチルエーテル等のポリエチレングリコールのエーテル;
ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソブチルエーテル等のポリプロピレングリコールのエーテル;
2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等の複素環類;
アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;等が挙げられる。
【0095】
これらの中でも、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~4)のモノブチルエーテル、2-ピロリドンが好ましく、さらに好ましくは、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~4)のモノブチルエーテル、2-ピロリドンである。これらの水溶性有機溶剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0096】
上記乳化重合を行う際の水系溶剤の使用量は、限定はされないが、モノマー成分100質量部に対して、20~300質量部であることが好ましく、より好ましくは30~200質量部、さらに好ましくは40~150質量部である。
【0097】
上記乳化重合における具体的な重合方法としては、例えば、モノマー滴下重合法、プレエマルション滴下重合法、シード重合法および多段重合法等を挙げることができる。
【0098】
上記乳化重合における反応系内には、必要により、例えば、tert-ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤などの添加剤を適量で添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、モノマー成分100質量部に対し、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
【0099】
このような乳化重合法では、得られた重合体がエマルション粒子として水系溶剤中に分散した樹脂エマルションが得られる。本発明の塗料において、重合体を含ませる際、樹脂エマルションとして添加することが好ましく、すなわち本発明の塗料において、重合体はエマルション粒子として含まれることが好ましい。当該塗料用樹脂エマルションも本発明に包含される。以下、本発明の塗料用樹脂エマルションについて詳述する。
【0100】
[樹脂エマルション]
本発明の樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、上記重合体から構成されるエマルション粒子である。なおエマルション粒子を構成する重合体の組成や物性等の好ましい態様は、前記と同様である。本発明の樹脂エマルションにおけるエマルション粒子の含有割合は、ハンドリング性の観点から、10~80質量%が好ましく、より好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは30~65質量%である。なお、エマルション粒子の含有割合は、樹脂エマルションの不揮発分量(固形分量)として求めることができ、すなわち、樹脂エマルションの固形分量を上記範囲に調整することが好ましい。なお本明細書において、不揮発分(固形分)とは、溶剤を除いた成分を指す。
不揮発分の算出方法としては、公知の手法を用いることができ、樹脂エマルション全質量から、重合体、及び各種添加剤に含まれる揮発成分質量を除く質量として、以下の式1の通り算出してもよく、実施例記載の通り、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、下記式2の通り算出してもよい。
式1:〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕=(〔樹脂エマルション全質量-揮発成分質量〕÷〔樹脂エマルション全質量〕)×100
式2:〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルションの質量1g〕)×100
【0101】
前記エマルション粒子の形状は特に限定されないが、通常は球状である。形状は透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定することができる。また前記エマルション粒子は単層構造であってもよく、多層構造(例えば、コアシェル構造)であってもよい。
【0102】
前記エマルション粒子の体積平均粒子径は、50nm以上が好ましく、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、また500nm以下が好ましく、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。エマルション粒子の体積平均粒子径を上記範囲に調整することにより、塗料の粘度を適正な範囲に保ちながら、エマルション粒子を高濃度に配合し易くなる。なお、エマルション粒子の体積平均粒子径は、後述の実施例で示されるように、動的光散乱法による粒度分布測定器を用いて測定すればよい。
【0103】
エマルション粒子の分散媒体である水系溶剤は、乳化重合の際に使用した水系溶剤由来の溶剤であってもよく、乳化重合の反応液若しくは単離した重合体に別途添加した溶剤であってもよい。前記水系溶剤としては、乳化重合法に用いられる溶媒として説明した水系溶剤と同様のものが挙げられる。
【0104】
本発明の樹脂エマルションにおける水系溶剤の含有量は、ハンドリング性の観点から、エマルション粒子100質量部に対して、30~900質量部が好ましく、より好ましくは50~400質量部、さらに好ましくは70~250質量部である。
【0105】
本発明の樹脂エマルションには、例えば、tert-ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤などの添加剤が含まれていてもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、エマルション粒子100質量部に対し、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
【0106】
本発明の樹脂エマルションの粘度は、BH型粘度計で回転速度20rpmにおける25℃での粘度が、例えば、200~10000mPa・s、好ましくは300~8000mPa・s、より好ましくは400~5000mPa・sである。
【0107】
また、本発明の樹脂エマルションの最低成膜温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。本発明の樹脂エマルションの最低成膜温度の下限は、例えば-15℃であってもよい。なお、樹脂エマルションの最低成膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工して乾燥させ、クラックが生じたときの温度を意味する。
【0108】
[塗料]
本発明の塗料は、前記重合体(好ましくは前記エマルション粒子)を含むものである。塗料における前記重合体(好ましくは前記エマルション粒子)の含有割合は、塗料に要求される特性に応じて設定すればよいが、5質量%以上が好ましく、より好ましくは8質量%以上であり、また50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下である。塗料の固形分(不揮発分)における前記重合体(好ましくは前記エマルション粒子)の含有割合は、15質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上であり、また、100質量%であってもよく、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0109】
本発明の塗料は、さらに溶剤を含有することが好ましい。前記溶剤は、塗料の粘度を調整する希釈剤として作用する。溶剤としては、環境負荷低減の観点から水系溶剤を好適に用いることができる。
【0110】
前記水系溶剤は、乳化重合の際に使用した水系溶剤由来の溶剤であってもよく、乳化重合の反応液若しくは単離した重合体に別途添加した溶剤であってもよい。前記水系溶剤としては、乳化重合法に用いられる溶媒として説明した水系溶剤と同様のものが挙げられる。
【0111】
本発明の塗料における溶剤の含有量は、所望する塗料の粘度等に応じて設定すればよく、特に限定されないが、ハンドリング性の観点から、例えば、0~60質量%であり、好ましくは1~55質量%、より好ましくは2~50質量%である。
【0112】
本発明の塗料はさらに増粘剤を有していてもよい。増粘剤としては、例えば、ウレタン会合型増粘剤、塩基を添加することで水に溶解する(アルカリ可溶する)前記重合体以外のアクリル系樹脂[例えば、(メタ)アクリル酸由来の単位とアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート)由来の単位を少なくとも含むアクリル系樹脂]などが挙げられる。増粘剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
ウレタン会合型増粘剤としては、例えば、ウレタン系樹脂を好適に使用することができる。ウレタン系樹脂は、水溶性であることが好ましい。また、ウレタン系樹脂は、疎水性部位(疎水性基)と親水性部位(親水性基)を有していることが好ましい。
【0114】
ウレタン系樹脂における疎水性基の結合箇所は、特に限定されず、疎水性基は、ウレタン系樹脂の末端に有していてよく、ウレタン系樹脂の片末端に有していてもよいし、両末端に有していてもよく、両末端に有していることが好ましい。なお、疎水性基は、会合部位として作用しうる。例えば、水系溶剤中で、疎水性基部位(特に、末端の疎水性基)が前述のエマルション粒子表面と会合(物理的結合)、及び/又は、疎水性基同士が会合していてもよい。
【0115】
疎水性基としては、例えば、炭化水素基(例えば、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数3~30の脂肪族炭化水素基)などが挙げられる。
【0116】
ウレタン系樹脂における親水性基の結合箇所は、特に限定されず、親水性基は、ウレタン系ポリマーの主鎖に有していてもよいし、側鎖に有していてもよい。
【0117】
親水性部位(親水性基)としては、特に限定されないが、例えば、エーテル結合を有する部位(例えば、ポリオキシエチレンなどのオキシアルキレン単位)などが挙げられる。エーテル結合を有する部位は、例えば、ウレタン系樹脂の構造単位であるポリオール由来の単位であってもよい。
【0118】
ウレタン会合型増粘剤は、商業的に容易に入手することができるものであってもよい。ウレタン会合型増粘剤としては、例えば、アデカノールUH-420、アデカノールUH-438、アデカノールUH-450VF〔以上、(株)ADEKA製、商品名〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中でも、アデカノールUH-420などが好ましい。
【0119】
また、前記アクリル系樹脂は、会合部位(例えば、前記例示のウレタン系樹脂における疎水性基など)を有していてもよい。前記アクリル系樹脂としては、例えば、アクリセットWR-507、アクリセットWR-650〔以上、(株)日本触媒製、商品名〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0120】
本発明の塗料において、前記重合体(好ましくは前記エマルション粒子):増粘剤の質量比は、例えば100:0.01~100:2であり、好ましくは100:0.1~100:1.5、より好ましくは100:0.15~100:1である。
【0121】
また、本発明の塗料がウレタン会合型増粘剤と前記アクリル系樹脂を含む場合、ウレタン会合型増粘剤:前記アクリル系樹脂の質量比は、例えば100:1~100:100であり、好ましくは100:5~100:90、より好ましくは100:10~100:80である。
【0122】
本発明の塗料はさらに成膜助剤を有していてもよい。成膜助剤としては、グリコールエーテル類、エステル類を好適に使用できる。
【0123】
前記グリコールエーテル類としては、水溶性有機溶剤として例示したモノエチレングリコールのエーテル、モノプロピレングリコールのエーテル、ジエチレングリコールのエーテル、ジプロピレングリコールのエーテル、ポリエチレングリコールのエーテル、ポリプロピレングリコールのエーテルであってもよく、他のグリコールエーテル類であってもよい。
【0124】
成膜助剤として好適に用いられるグリコールエーテル類としては、例えば、
エチレングリコールモノエーテル{例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのエチレングリコールモノC1-12アルキルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル}、プロピレングリコールモノエーテル{例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノC1-12アルキルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル}などのアルカンジオールモノエーテル;
ジエチレングリコールモノエーテル{例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのジエチレングリコールモノC1-12アルキルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル}、ジプロピレングリコールモノエーテル{例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのジプロピレングリコールモノC1-12アルキルエーテル}、トリエチレングリコールモノエーテル{例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのトリエチレングリコールモノC1-12アルキルエーテル}、トリプロピレングリコールモノエーテル{例えば、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのトリプロピレングリコールモノC1-12アルキルエーテル}などのポリアルキレングリコールモノエーテル;
エチレングリコールジエーテル{例えば、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエチレングリコールジC1-12アルキルエーテル}などのアルカンジオールジエーテル;
ジエチレングリコールジエーテル{例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジC1-12アルキルエーテル}、ジプロピレングリコールジエーテル{例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのジプロピレングリコールジC1-12アルキルエーテル}、トリエチレングリコールジエーテル{例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのトリエチレングリコールジC1-12アルキルエーテル}などのポリアルキレングリコールジエーテル;
などが挙げられる。
【0125】
前記エステル類としては、脂肪族ポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステル、脂肪族ポリカルボン酸エステル、芳香族ポリカルボン酸エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル等が挙げられる。
【0126】
脂肪族ポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステルとしては、アルカンポリオールアシレート等が挙げられ、具体的には、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートなどが挙げられる。
中でも、C2-10アルカンポリオールC1-20アシレートが好ましく、C3-10アルカンジオールモノ又はジC1-12アシレートがより好ましく、C4-8アルカンジオールモノ又はジC3-10アシレートがさらに好ましい。
【0127】
脂肪族ポリカルボン酸エステルとしては、
アジピン酸エステル{例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)}、セバシン酸エステル{例えば、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)}などの脂肪族ジカルボン酸エステル;
クエン酸エステル{例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリノルマルブチル、クエン酸アセチルトリノルマルブチル、クエン酸アセチル2-エチルヘキシル}などの脂肪族トリカルボン酸エステルなどが挙げられる。
中でも、脂肪族ジカルボン酸エステルが好ましく、炭素数3以上の脂肪族ジカルボン酸エステルがより好ましく、C4-10脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルがさらに好ましく、C4-10アルカンジカルボン酸ジアルキルエステルが特に好ましい。
【0128】
芳香族ポリカルボン酸エステルとしては、
フタル酸エステル{例えば、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ビス(2-ブトキシエチル)}などの芳香族ジカルボン酸エステル
トリメリット酸エステル{例えば、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル}などの芳香族トリカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0129】
脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、ミリスチン酸エステル{例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ラウリル}などの炭素数6以上の脂肪族モノカルボン酸エステルなどが挙げられる。中でも、C10-30脂肪族モノカルボン酸エステルが好ましい。
【0130】
成膜助剤としては、エステル類が好ましく、脂肪族ポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステルがより好ましい。
【0131】
成膜助剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0132】
本発明の塗料において、前記重合体(好ましくは前記エマルション粒子):成膜助剤の質量比は、例えば100:1~100:100であり、好ましくは100:2~100:60、より好ましくは100:5~100:40である。
【0133】
本発明の塗料はさらに消泡剤を有していてもよい。消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。消泡剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。本発明の塗料において、前記重合体(好ましくは前記エマルション粒子):消泡剤の質量比は、例えば100:0.05~100:5であり、好ましくは100:0.1~100:2である。
【0134】
本発明の塗料はさらに顔料を有していてもよい。なお本発明の塗料をクリア塗料として用いる場合は、顔料を有しなくてよい。顔料としては、特に限定されず、公知の顔料を使用することができる。顔料は着色剤であってもよく、体質顔料(増量剤)であってもよい。顔料は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0135】
代表的な顔料としては、例えば、無機系顔料(例えば、酸化チタン、酸化鉄、アルミニウム、パール顔料等の無機系着色顔料)、有機系顔料(例えば、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、アンスラピリミジン、フタロシアニン、スレン、ジオキサジン、カーボンブラック等の有機系着色顔料)、体質顔料(例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、タルク等)を挙げることができる。
【0136】
特に着色隠蔽性や塗膜表面を高光沢にすることから、酸化チタンを少なくとも使用することが好ましい。顔料の配合量としては、前記重合体(好ましくは前記エマルション粒子)100重量部に対して、例えば5~80質量部であり、好ましくは7~70質量部、より好ましくは10~65質量部程度である。
【0137】
前記顔料は、塗料中で、分散剤で分散安定化されていることが好ましい。上記分散剤としては、たとえば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩等のポリ(メタ)アクリル酸(塩);(メタ)アクリル酸(塩)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸(塩)以外の前記モノマー成分の1種または2種以上との共重合体;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0138】
後述の通り、本発明の塗料は、トップコート又は上塗り材として好適に用いられる。この際、本発明の塗料は実質的にセメントを含まないことが好ましい。本発明の塗料におけるセメントの含有量は、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0質量%、すなわちセメントを含まないことが特に好ましい。
【0139】
[その他添加剤]
本発明の塗料は、さらに、本発明の目的が阻害されない範囲内で、添加剤を含んでいてもよい。例えば、架橋剤、界面活性剤、分散剤、染料、沈殿防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、防腐・防黴剤、防藻剤、滑剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、凍結防止剤、湿潤剤、pH調整剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
【0140】
上記添加剤を添加する場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の塗料中、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。また添加効果を発揮するためには0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。
【0141】
本発明の塗料の粘度は、BH型粘度計で回転速度20rpmにおける25℃での粘度として測定した際、300~20000mPa・sが好ましく、より好ましくは500~10000mPa・s、さらに好ましくは700~8000mPa・sである。
【0142】
[塗料の製造方法]
本発明の塗料の製造方法は特に限定されない。例えば、前記重合体、並びに、必要に応じて用いられる溶剤、増粘剤、成膜助剤、消泡剤、顔料及びその他添加剤を混合することにより、製造することができる。以下には塗料の製造方法の一例を示すが、これに限定されるものではない。
【0143】
まず、前記重合体を含む樹脂エマルションを準備する。前記樹脂エマルションとしては、上述の樹脂エマルションとして説明したエマルションを用いることができる。当該エマルションは、上記したように従来公知の乳化重合法により製造することができる。
【0144】
また、顔料を用いる場合、顔料が水系溶剤に分散されてなる顔料分散体を調製しておくことが好ましい。上記顔料分散体は、たとえば、水等の水系溶剤に、顔料および分散剤を混合し、ビーズミル等で分散処理を行うことにより製造することができる。分散剤としては、上記で説明した分散剤と同様のものを使用できる。
【0145】
顔料分散体は各社より市販されているものを使用してもよく、例えば、トーヨーケム(株)製LIOFASTカラー、LIOFAST SFカラー、LIOCONCカラー、EMカラー等、大日精化工業(株)アクアファインカラー、マスターファインカラー、EPカラー、AMカラー、WAカラー、ETベースカラー、FTRベースカラー、STベースカラー、VT-Uベースカラー等、横浜化成(株)製ユニラント水性コンク、ユニラント33、ユニラント77、ユニラント88、ユニラント55、ユニラントハイコンク等、DIC(株)製ディスパースSDカラー、ディスパースUNIカラー、ディスパースSRカラー、ディスパースHGカラー、ディスパースSDPカラー等がある。
【0146】
顔料分散体における顔料の含有率は、特に限定されないが、顔料分散体100質量%に対し、5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。
【0147】
次に、上記樹脂エマルション、並びに、必要に応じて顔料分散体、増粘剤、溶剤、成膜助剤、消泡剤及びその他添加剤を混合する。混合にあたり、上記増粘剤、溶剤、成膜助剤、消泡剤及びその他添加剤は、該化合物をそのまま用いてもよいし、溶剤等で希釈した溶液として添加してもよい。上記の各成分を混合する方法や順番は特に限定されない。混合後は遠心分離やフィルター濾過等を必要に応じて行うことができる。
【0148】
[塗料の使用方法]
本発明の塗料は、例えば、各種素材(例えば、金属、ガラス、磁器、コンクリート、サイディングボード、樹脂など)で形成された基材の表面仕上げ等に使用してもよい。
【0149】
本発明の塗料は、建築塗料用として用いることが好ましく、トップコート又は上塗り材(例えば、内装材や外装材等の建材のトップコート又は上塗り材)に好適に使用することができる。
【0150】
建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどの無機質建材;瓦、外壁材などの窯業系建材;ガルバリウム鋼板(登録商標)などの金属系建材;などの各種建材が挙げられる。窯業系建材は、例えば、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。
【0151】
このような建材の表面には、通常、所望の意匠を付与する等のために、上塗り材が塗布されている。より具体的には、トップコート又は上塗り材は、太陽光や風雨などの外的環境から建築物を保護したり、建築物の美観や意匠性を持たせるための塗料(建築塗料)として使用されている。本発明の塗料は、このトップコート用又は上塗り材として好適に使用することができる。特に本発明のエマルションで形成された塗料は、得られる塗膜の耐汚染性や耐候性が優れ、さらには湿度変化の激しい環境下で長期間使用しても塗膜割れを抑制できるため、建築塗料(特に、外装用塗料)に使用した場合にも、良好な塗膜を得ることができる。
【0152】
本発明の塗料を用いて形成される表面塗膜の状態としては透明、着色半透明、着色隠蔽等、種々の形態のものであり得るが、トップコート用又は上塗り材として用いる場合、建材に形成した下層塗膜層もしくは古くなった上塗り塗膜層を隠蔽する目的(改修目的)で、着色隠蔽状態のものが特に多い。
【0153】
本発明の塗料は、単独で1層で塗工してもよく、2層以上に重ね塗りすることによって塗工してもよい。2層以上に重ね塗りすることによって塗工する場合、その一部の層のみが本発明の塗料によって形成されてもよく、全部の層が本発明の塗料で形成されてもよい。重ね塗りは、例えば、プライマー処理やシーラー処理などを施した被塗物に、第1層(例えば、下塗り層)用塗料を塗布して乾燥させた後 、第2層(例えば、上塗り層)用塗料を上塗りし、乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明はかかる方法によって限定されるものではない。
【0154】
塗料を塗布する際には、例えば、スプレー、ローラー、ハケ、コテなどを用いることができる。塗布量は、塗料や基材の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、10~300g/m2程度であることが好ましい。
【0155】
塗料の塗布後の乾燥条件は、塗料に使用されている溶剤を十分に蒸散させることができればよく、塗料に使用される溶剤の種類、量などによって異なるので一概には決定することができない。自然環境下で乾燥硬化(常温乾燥)させてもよく、例えば50~150℃、好ましくは60~120℃の温度に加熱することによって乾燥させてもよい。なお、乾燥時間は、塗膜が十分に乾燥すればよく、特に限定されない。
【0156】
本発明の塗料を用いて形成された塗膜の乾燥後の厚さは、特に限定されないが、例えば1~300μm程度である。
【実施例0157】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0158】
(実施例1)
滴下ロート、撹拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水400部を仕込んだ。
滴下ロートに脱イオン水465部、乳化剤(反応性乳化剤、(株)第一工業製薬製、商品名:アクアロンAR-10)の25%水溶液120部、2-オクチルアクリレート(2OA)320部、メチルメタクリレート(MMA)460部、スチレン(St)200部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)5部、アクリル酸(AA)10部、架橋性モノマー(商品名:KBM-503)5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの100部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウムの5%水溶液60部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。
【0159】
次に、滴下用プレエマルションの残部を180分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をpHが9となるようにフラスコ内に添加し、重合反応を終了した。
【0160】
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、樹脂エマルションを得た。
【0161】
(実施例2~15、比較例1~5)
モノマー及び乳化剤の種類及び配合割合を表1に記載のようにした以外は実施例1と同様にして、樹脂エマルションを得た。
なお、表1において、2EHAとは2-エチルヘキシルアクリレートを示し、nOAとはn-オクチルアクリレートを示し、2OMAとは2-オクチルメタクリレートを示し、IBOAとはイソボルニルアクリレートを示し、CHMAとはシクロヘキシルメタクリレートを示す。
また、実施例4で使用の乳化剤SR-10は、反応性乳化剤であって、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10(アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレン硫酸エステル塩)を示し、実施例5で使用の乳化剤NF-08は、非反応性乳化剤であって、(株)第一工業製薬製、商品名:ハイテノールNF-08(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)を示す。
【0162】
得られた樹脂エマルションの物性を、以下のように測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
エマルション粒子(重合体)のガラス転移温度は、重合体を構成するモノマー成分に使用されている各モノマーの単独重合体のガラス転移温度を用いて、
下記式(1)で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度として算出した。
【0163】
【数2】
[式(1)中、Tg
A:重合体のTg(絶対温度:K)、Tg
n:使用した各モノマーの単独重合体のTg(絶対温度:K)、W
n:使用した各モノマーの配合割合(質量%)]
【0164】
[固形分量(N.V.)]
樹脂エマルションにおける不揮発分量(固形分量)は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、下記式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(%)〕=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルションの質量1g〕)×100
に基づいて求めた。
【0165】
[粘度]
BH型粘度計〔東京計器株式会社製〕で回転速度20rpmにおける25℃での粘度を求めた。
【0166】
[体積平均粒子径]
樹脂エマルション粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380〕を用いて測定した。
【0167】
[最低成膜温度(MFT)]
熱勾配試験機(テスター産業社製)の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工し、クラックが生じたときの温度を最低成膜温度とした。
【0168】
-伸び性及び塗膜吸水率の評価-
[処方例1A]
実施例1にて得られた樹脂エマルション100.0部に対し、ホモディスパーで回転速度1000min-1にて撹拌しながら、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(JNC社製、CS-12)8.0部、および全体で固形分が40.0%となるようにイオン交換水を加えた。更に粘度が2,000mPa・sとなるように増粘剤[ADEKA株式会社製、UH-420]を加え、消泡剤[サンノプコ社製、ノプコ8034L]0.1部を加え、更に30分間撹拌した後、150μmの金網で濾過することで水性塗料を調製した。
【0169】
[処方例2A-15A、比較例処方例1A-5A]
実施例1にて得られた樹脂エマルションに代えて、実施例2~15、比較例1~5で得られた樹脂エマルションを各々用いた以外は処方例1Aと同様にして、水性塗料を得た。
【0170】
(1)伸び性
離型紙に水性塗料を乾燥後厚さが200μmとなるように塗布し、80℃で2時間乾燥させた後、形成された塗膜(縦:1cm程度、横:7cm程度、厚さ:200μm)を試験体として用いた。
【0171】
得られた試験体を25℃に温度調節した恒温ボックス内で3時間温度調節した後、当該試験体の短辺を引っ張り試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAGS-100D〕のチャックに掴持し、初期標線間距離50mm、引っ張り速度200mm/minの条件で引っ張り、下記式:
〔伸張率(%)〕=〔(破断時の伸び-50mm)÷(50mm)〕×100
に基づいて塗膜の伸び性を評価した。
【0172】
また各試験体について、上記で求めた伸張率と使用したエマルション粒子(重合体)のTg用い、Tgに対する伸び性を評価した。下記式を満足する場合は○とし、満足しない場合は×とした。
344.85e-0.04x≦伸張率(%)
上記式中、eはネイピア数を示し、xはエマルション粒子のTg(℃)を示す。
当該評価結果より、本発明の樹脂エマルションを使用して得られた塗膜は、Tgに対する伸び性の低下が抑制されていることが分かる。
【0173】
(2)塗膜吸水率
離型紙に水性塗料を乾燥後厚さが100μmとなるように塗布し、80℃で2時間乾燥させた後、形成された塗膜(縦:3cm程度、横:3cm程度、厚さ:100μm)を試験体として用いた。
【0174】
得られた試験体を25℃に温度調節したイオン交換水に6時間浸漬した後、当該試験体を取り出し余分な水分を拭き取った後に、下記式:
〔塗膜吸水率(%)〕=〔(6時間浸漬後の質量-初期質量)÷(初期質量)〕×100
に基づいて塗膜吸水率を評価した。
【0175】
-塗膜割れ性及び促進耐候性の評価-
[処方例1B]
実施例1にて得られた樹脂エマルション50.0部に対し、ホモディスパーで回転速度1000min-1にて撹拌しながら、ユニラント77(横浜化成株式会社製)20.0部、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(JNC社製、CS-12)4.0部、および全体で固形分が40.0%となるようにイオン交換水を加えた。更に粘度が2,000mPa・sとなるように増粘剤[ADEKA株式会社製、UH-420]を加え、消泡剤[サンノプコ社製、ノプコ8034L]0.1部を加え、更に30分間撹拌した後、150μmの金網で濾過することで水性白塗料を調製した。
【0176】
[処方例2B-15B、比較処方例1B-5B]
実施例1にて得られた樹脂エマルションに代えて、実施例2~15、比較例1~5で得られた樹脂エマルションを各々用いた以外は処方例1Bと同様にして、水性白塗料を得た。
【0177】
<試験体の作製>
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕に、シーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150/m2の塗布量で均一に塗布し、100℃で10分間乾燥させた。
次に、形成された塗膜上に、水性白塗料を刷毛で100g/m2の塗布量で塗布し、100℃で10分間乾燥させることにより、試験体を得た。
【0178】
(3)塗膜割れ性
試験体を-20℃で6時間および40℃90%RHで18時間の繰り返し試験を行い10サイクル時点での塗膜割れ性を評価した。なお塗膜割れ性の評価は、以下の基準に基づき塗膜外観を目視で評価した。
-評価基準-
◎:長さが1mm以上の割れ無し。
〇:長さが1mm以上の割れの数が1~9個である。
×:長さが1mm以上の割れの数が10個以上である。
【0179】
(4)促進耐候性
試験体を5cm×5cmの大きさに裁断し、その裏面および側面をアルミニウムテープでシールし、以下の条件で耐候性試験を1,000時間実施し評価した。
【0180】
-耐候性の測定条件-
試験機:メタルウェザー〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU-R4〕
照射:気温:65℃、相対湿度70%の雰囲気中で4時間照射(照射強度:80mW/cm2)
湿潤:気温35℃、相対湿度98%の雰囲気中で4時間湿潤
シャワー:湿潤の前後にそれぞれ60秒間シャワー
【0181】
試験前後における試験板表面の光沢度を、光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕により測定し、下記式:
〔光沢維持率(%)〕=〔(試験前の光沢度-試験後の光沢度)÷(試験前の光沢度)〕×100
に基づき、光沢維持率を算出した。
-評価基準-
◎:1,000時間後の塗膜の60°光沢維持率が100~80%である。
〇:1,000時間後の塗膜の60°光沢維持率が81~60%である。
×:1,000時間後の塗膜の60°光沢維持率が59%以下である。
【0182】
【0183】
表1中、「モノマーb/環状モノマー」とは、樹脂エマルションの製造に用いた式(b1)で表される化合物と環状モノマーの質量比(式(b1)で表される化合物/環状モノマー)を指し、すなわち、樹脂エマルション中の重合体における構造単位(B)と構造単位(A)の質量比(構造単位(B)/構造単位(A))に相当する。
本発明の重合体や該重合体を含む樹脂エマルションは、湿度変化の激しい環境下で長期間使用しても、塗膜割れを抑制できるため、塗料(特に、建築塗料)として好適に使用することができる。