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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086162
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20240620BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240620BHJP
   G02B 3/00 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
H01L33/58
H01L33/50
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201150
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 吉鎬
(72)【発明者】
【氏名】吉成 愛里砂
(72)【発明者】
【氏名】立花 佳織
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA14
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CD02
5F142CD18
5F142CE03
5F142CE15
5F142CE16
5F142DA14
5F142DA73
5F142DB02
5F142DB12
5F142DB17
5F142DB18
5F142FA18
(57)【要約】
【課題】発光装置から出射する出射光の狭角化を達成可能な発光装置及び発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の発光装置は、発光層を含む半導体発光素子を含み、前記発光層からの出射光が出射される上面を有する発光部と、前記発光部の上面を覆うように配され、上面の1の領域において上方に突出する複数の凸部が配列された光学機能部と、前記発光部の上面の外縁部と前記光学機能部の下面とに接して設けられた空間形成部であって、前記発光部の上面に接する空間が形成されるようになされた前記空間形成部と、を有し、前記空間形成部は、前記発光部の上面と直接接合されており、前記空間には、前記光学機能部の下面を構成する材料よりも屈折率の低い低屈折率材料が充填されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を含む半導体発光素子を含み、前記発光層からの出射光が出射される上面を有する発光部と、
前記発光部の上面を覆うように配され、上面の1の領域において上方に突出する複数の凸部が配列された光学機能部と、
前記発光部の上面の外縁部と前記光学機能部の下面とに接して設けられた空間形成部であって、前記発光部の上面に接する空間が形成されるようになされた前記空間形成部と、を有し、
前記空間形成部は、前記発光部の上面と直接接合されており、
前記空間には、前記光学機能部の下面を構成する材料よりも屈折率の低い低屈折率材料が充填されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記空間形成部は、前記発光部の上面と表面活性化接合によって直接接合されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記空間形成部の接合面、及び前記空間形成部と直接接合される前記発光部の上面の接合領域は、それぞれ表面粗さRaが0.5nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光部の上面又は前記光学機能部の下面と直接接合する前記空間形成部の接合面積は、前記発光部の上面又は前記光学機能部の下面の面積の1%以上8%未満であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記空間形成部は、前記光学機能部の下面から下方に突出した突出部、又は、前記発光部の上面から上方に突出した突出部であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記空間形成部は、硬質導光部材からなり、平板状、あるいは、平板部と該平板部の下面から下方に突出した突出部からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記低屈折率材料は、空気からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記空間の厚さは、1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記発光部の上面と前記光学機能部の下面との線熱膨張係数の差をΔα、前記空間形成部間の最大距離をL、及び前記発光部の上面から出射する光の波長をλとした場合に、
前記空間の厚さは、6.8LΔα0.5+2λ以上50λ以下であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
前記半導体発光素子は、上面の全面又は1の領域から、前記発光層の前記出射光が上方に出射される発光領域を有し、
前記発光部は、前記半導体発光素子の前記発光領域の上面を覆うように配された波長変換部材を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記光学機能部の上面は、外縁部に沿って5μm以上の幅を有する平坦面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項12】
前記光学機能部の前記複数の凸部は、複数のレンズ体であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項13】
前記光学機能部の前記複数の凸部は、複数の錐体、錐台体又は柱体であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項14】
蛍光体粒子を含むセラミックからなる波長変換部材を用意する工程と、
硬質導光部材を用意する工程と、
前記波長変換部材と前記硬質導光部材を表面活性化接合により、前記波長変換部材と前記硬質導光部材からなる第1の接合体を形成する工程と、
前記第1の接合体の前記硬質導光部材の表面に、複数の凸部が配列された光学部材を形成して、前記波長変換部材、前記硬質導光部材、および前記光学部材とからなる第2の接合体を形成する工程と、
前記第2の接合体の前記波長変換部材側を半導体発光素子上へ接合する工程と、を備え、
前記波長変換部材を用意する工程において、
前記波長変換部材に誘電体からなるコーティング層を形成する工程と、
前記コーティング層の表面を研磨する工程と、を有し、
前記硬質導光部材を用意する工程において、
前記硬質導光部材の表面を研磨する工程と、
前記硬質導光部材の研磨された面に、突出部を形成する工程と、を有し
前記第1の接合体を形成する工程において、
前記波長変換部材の前記コーティング層の研磨表面と、前記硬質導光部材の前記突出部の表面を対向させて前記表面活性化接合を行い、
前記突出部を除く領域において、前記波長変換部材と前記硬質導光部材との間に空間を形成することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1の接合体を形成する工程において、
前記表面活性化接合を行う前に、前記波長変換部材の前記コーティング層の前記研磨表面及び前記硬質導光部材の前記突出部の表面に、水酸基を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項14に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の発光素子を光源として用いた発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体発光素子と、半導体発光素子の上に積層された光波長変換部材及び透明部材を有し、当該透明部材状に複数の突部が設けられた発光モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-219163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1のような発光モジュールにおいては、透明部材の下面から入射した光が、上方に出射される際、発光モジュールに対して垂直方向、すなわち光軸方向に対して側方方向に広がり、光軸方向を基準とした場合に光が広角に出射される。従って、狭角成分が必要なデバイスにおいては、このような広角に光が出射される発光モジュールは適用困難である。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、発光装置から出射する出射光の狭角化を達成可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、発光層を含む半導体発光素子を含み、前記発光層からの出射光が出射される上面を有する発光部と、前記発光部の上面を覆うように配され、上面の1の領域において上方に突出する複数の凸部が配列された光学機能部と、前記発光部の上面の外縁部と前記光学機能部の下面とに接して設けられた空間形成部であって、前記発光部の上面に接する空間が形成されるようになされた前記空間形成部と、を有し、前記空間形成部は、前記発光部の上面と直接接合されており、前記空間には、前記光学機能部の下面を構成する材料よりも屈折率の低い低屈折率材料が充填されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1に係る発光装置の断面図である。
図2】本発明の実施例1に係る発光装置の透光部材の底面図である。
図3】本発明の実施例1に係る発光装置の低屈折率部の厚さによる集光率を示す図である。
図4】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図5】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における波長変換部材の接合面の拡大断面図である。
図6】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における波長変換部材の接合面の拡大断面図である。
図7】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における波長変換部材の接合面の拡大断面図である。
図8】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図9】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図10】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図11A】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における表面活性化接合方法を示す拡大断面図である。
図11B】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における表面活性化接合方法を示す拡大断面図である。
図12A】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における表面活性化接合方法を示す拡大断面図である。
図12B】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における表面活性化接合方法を示す拡大断面図である。
図13】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における表面活性化接合方法を示す拡大断面図である。
図14】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法時における表面活性化接合方法を示す拡大断面図である。
図15】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図16】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図17】本発明の実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図18】本発明の変形例1に係る発光装置の断面図である。
図19】本発明の変形例2に係る発光装置の断面図である。
図20】本発明の変形例3に係る発光装置の断面図である。
図21】本発明の変形例4に係る発光装置の断面図である。
図22】本発明の変形例5に係る発光装置の断面図である。
図23】本発明の変形例6に係る発光装置の透光部材の底面図である。
図24】本発明の変形例7に係る発光装置の透光部材の底面図である。
図25】本発明の変形例8に係る発光装置の透光部材の底面図である。
図26】本発明の変形例9に係る発光装置の透光部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施例1について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0010】
図1を参照しつつ、実施例1に係る発光装置1の構成について説明する。図1は、実施例1に係る発光装置1の断面図である。
【0011】
(発光装置)
発光装置1は、基板10と、基板10上に配された半導体発光素子21及び半導体発光素子21の上面上に配された波長変換部材27からなる発光部20と、発光部20の上方に配された透光部材31及び光学部材34を含む光学機能部30と、発光部20の上面と光学機能部30の下面との間に配された低屈折率層40と、発光部20の側面の下端から光学機能部30の側面の上端に至る領域を被覆する遮光部材50を備える。
【0012】
(基板)
基板10は、例えば、上面形状が矩形の窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックからなる絶縁性の平板基板である。
【0013】
また、基板10は、上面に基板10の外部から半導体発光素子21に給電可能な金属からなる一対の配線電極である第1の基板配線13及び第2の基板配線15が形成されている。第1の基板配線13及び第2の基板配線15は、貫通電極等(図示せず)を介して基板10の下面まで導通するように形成されていてもよい。第1の基板配線13及び第2の基板配線15は、発光装置1の外部から給電可能なように形成されていればよい。
【0014】
なお、基板10は、AlNに限らず、窒化シリコン(SiN)或いはアルミナ(Al)等の他のセラミック基材又は単結晶シリコン(Si)等の高い熱伝導性を有する絶縁性材料を用いることもできる。
【0015】
(発光部)
発光部20は、発光装置1において、所望の色の光を出射する発光機能部である。発光部20は、上面に発光領域を有する半導体発光素子21及び半導体発光素子21の発光領域状に配された波長変換部材27を含む。
【0016】
(発光素子)
半導体発光素子21は、矩形の上面形状を有し、基板10の上面上に配された発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。
【0017】
半導体発光素子21は、透光性の成長基板の下面の側に窒化ガリウム(GaN)系の半導体構造層(図示せず)が形成されており、当該半導体構造層から青色の光を出射する。
【0018】
また、半導体発光素子21は、半導体構造層の下面に、当該半導体構造層と電気的に接続された一対の素子電極である第1の素子電極23及び第2の素子電極25を備えている。
【0019】
半導体発光素子21は、図1に示すように、第1の素子電極23及び第2の素子電極25の各々が、基板10の第1の基板配線13及び第2の基板配線15にそれぞれ導電性の接着剤(図示せず)を介して接合されている。すなわち、半導体発光素子21は、基板10に形成された第1の基板配線13及び第2の基板配線15を介して外部から電源供給可能に構成され通電可能となっている。
【0020】
半導体発光素子21は、成長基板の下面に形成された能動面である半導体構造層から出射した光が、成長基板の内部を通過して上面から光を出射するように構成されたフリップチップ接続態様のLED素子である。半導体発光素子21の側面は、後述する遮光部材50により覆われている。すなわち、半導体発光素子21の上面は、光を出射する光出射面であり、上面全体が半導体発光素子21の発光領域である。
【0021】
本実施例において、半導体発光素子21の上面形状は、1.0mm四方の正方形とした。従って、半導体発光素子21の上面である光出射面、すなわち半導体発光素子21の上面の発光領域は1.0mm四方の正方形である。
【0022】
なお、半導体発光素子21の半導体構造層の下面、特に半導体構造層と第1の素子電極23及び第2の素子電極25の各々との間には、光反射層が形成されていてもよい。成長基板と反対側の下方に出射する光は、光反射層によって反射され、半導体発光素子21の光出射面である上面へ向かわせることができる。すなわち、光反射層は、光出射面である成長基板の上面からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0023】
なお、半導体発光素子21には、他の接続形態のLED素子も用いることができる。半導体発光素子21は、例えば、不透光性の支持基板を備え、当該支持基板の上面上に半導体構造層及び半導体構造層に通電可能なワイヤボンディング用の電極パッドを有し、金(Au)等の導電性の金属線で第1の基板配線13及び第2の基板配線15と電極パッドとが電気的に接続されたワイヤボンディング態様の発光素子であってもよい。その場合、半導体発光素子21は、支持基板の上面上に形成された半導体構造層の上面が半導体発光素子21の光出射面、すなわち発光領域として実質的に機能する。
【0024】
また、半導体発光素子21は、導電性の支持基板の下面に形成された電極と支持基板上に形成された電極との間で半導体構造層に通電可能な発光素子であってもよい。
【0025】
本実施例においては、半導体発光素子21が基板10の上面と対向する面と反対の面、すなわち半導体発光素子21の上面から光を出射する素子であればよい。
【0026】
(波長変換部)
波長変換部材27は、例えば透光性の接着剤(図示せず)を介して半導体発光素子21の上面上に配されている。
【0027】
波長変換部材27は、図1に示すように、底面が半導体発光素子21の光出射面、すなわち半導体発光素子21の上面を覆うように形成されている。従って、波長変換部材27の底面は、半導体発光素子21から出射した光が入光する光入射面である。
【0028】
波長変換部材27は、光入射面である底面から入射する半導体発光素子21からの青色光の一部を黄色光に変換し、上面27Sから白色光を出射する。従って、波長変換部材27の上面27Sは、波長変換部材27から光が出射する光出射面である。
【0029】
波長変換部材27は、例えば、セリウム(Ce)を賦活剤としたイットリウムアルミニウムガーネット(Yttrium Aluminum Garnet、YAG:Ce)蛍光体粒子を含有するアルミナ(Al)からなるセラミック材である。
【0030】
また、波長変換部材27の上面27Sには、後述する表面活性化接合を行うための誘電体である酸化シリコン(SiO)又はアルミナ(Al)のコーティング層(図示せず)が形成されている。また、波長変換部材27の上面27Sは、その表面粗さRaが0.5nm未満となるように形成されている。
【0031】
また、本実施例においては、上面視における波長変換部材27の外形形状が、半導体発光素子21の上面と略一致する形状となるように形成した。すなわち、波長変換部材27の上面27S及び半導体発光素子21と対向する面である下面の形状は1.0mm四方の正方形である。
【0032】
さらに、上面視における波長変換部材27の底面形状は、半導体発光素子21の態様に応じ、例えば、上部にワイヤボンディングにより給電される電極を備える半導体発光素子21に対し、波長変換部材27は、ワイヤボンディング用電極パッド部分を覆わず、半導体構造層を覆う適宜な形状に形成される。すなわち、波長変換部材27の底面形状は、半導体発光素子21の上面における光出射面、すなわち発光領域の形状と略一致する形状である。
【0033】
(光学機能部)
光学機能部30は、波長変換部材27の上面27S上に配され、波長変換部材27の上面27Sから出射する光の配光制御を行う。光学機能部30は、波長変換部材27の上面27S上に配された透光部材31及び透光部材31の上面上に配された光学部材34を含む。
【0034】
(透光部材)
硬質導光部材としての透光部材31は、半導体発光素子21からの出射光及び波長変換部材27からの出射光を透過し、光学部材34に導光する。透光部材31は、硬質材料から構成されることにより、これを介して光学部材34を波長変換部材27へ表面活性化接合により接合することを可能とする。つまり、透光部材31が硬質材料から構成されることにより、小さな空間を高い精度で形成することができる。
【0035】
透光部材31は、例えば、硬質材料であるサファイア(屈折率n=約1.75)からなり、1μm~100μmの厚さを有する略平板形状を有する。
【0036】
本実施例においては、上面視における透光部材31の外形形状が、半導体発光素子21及び波長変換部材27からなる発光部20の外形形状と略一致している。すなわち、透光部材31の上面及び波長変換部材27の上面27Sと対向する面である下面の形状は1.0mm四方の正方形である。
【0037】
また、透光部材31の下面には、下方に突出し、透光部材31の下面と波長変換部材27の上面27Sとの間に閉空間を形成する空間形成部としての支持部32が形成されている。本実施例においては、支持部32は、透光部材31と同一の材料から構成されており、一体に形成されている。
【0038】
図2は、本実施例における透光部材31の底面を示す図である。図2において、支持部32の構造を明確にするために、支持部32の底面にハッチングを設け図示している。
【0039】
支持部32は、透光部材31の下面の少なくとも外縁に沿った領域に形成されている。支持部32は、波長変換部材27の上面27Sと接合され、波長変換部材27の上面27Sと透光部材31の下面との間を所定の間隔で離隔している。支持部32は、例えば、1μm以上20μm以下の範囲の高さで形成されている。
【0040】
例えば、本実施例においては、支持部32が、各々の辺に沿った領域を含む5行5列の格子形状で形成されている。従って、本実施例においては、各々の辺に沿った領域から250μmのピッチで支持部32が格子状に形成されている。
【0041】
支持部32の底面と波長変換部材27の上面27Sとは、樹脂等の接着剤を介さずに、表面活性化接合(Surface Activated Bonding:SAB接合)によって、直接接合されている。
【0042】
すなわち、波長変換部材27の上面27Sと透光部材31の下面との間には、支持部32に囲まれた閉空間が形成されている。本実施例において、閉空間内には、空気が満たされている。
【0043】
支持部32の高さ、すなわち上記閉空間の厚みは20μm以下と狭いため、樹脂等の接着剤を用いると、毛細管現象により閉空間内に接着剤が広がり、当該閉空間を接着剤で埋設するおそれがある。支持部32の底面と波長変換部材27の上面27Sを表面活性化接合により直接接合することにより、閉空間の厚みを安定して確保することができる。
【0044】
なお、透光部材31は、サファイアの他に、石英ガラス(SiO)、アルミナセラミック(Al)、酸化ガリウム(Ga)、スピネル(MgAl)又は窒化ガリウム(GaN)等の透明硬質材料を用いることもできる。透光部材31は、透光性を有しかつ表面活性化接合によって直接接合可能であればよい。
【0045】
(光学部材)
光学部材34は、透光部材31の上面を覆うように、透光性の熱硬化性のシリコーン樹脂等からなる透明接着剤39を介して接合されている。
【0046】
光学部材34は、例えば、透光性を有する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等から構成することもできる。また、光学部材34は、例えば、ナノインプリント用紫外硬化樹脂から構成することもできる。なお、光学部材34は、サファイアや石英ガラス等の表面活性化接合可能な材料から構成することもできる。
【0047】
光学部材34は、透明接着剤39と接合している面と反対の面である上面に上方に突出する複数の凸部35が配列するように形成されている。
【0048】
本実施例において、複数の凸部35は、例えば、直径が1μm~300μmの断面形状が半球面のレンズが光学部材34の上面に配列したマイクロレンズアレイである。
【0049】
なお、複数の凸部35は、半球面レンズに限定されず、楕円、放物線或いは双曲線の断面形状を有するレンズ、又は自由曲面レンズ等であってもよい。要は、複数の凸部35の内部に入射した光が凸部35の表面から光軸方向に狭角化可能なレンズであればよい。
【0050】
複数の凸部35は、光学部材34の上面の外縁に沿った領域に形成された平坦部36の内方に配列している。平坦部36は、光学部材34の上面の外縁から5μm以上の幅をもって形成されている。
【0051】
本実施例においては、上面視における光学部材34の外形形状が、半導体発光素子21、波長変換部材27及び透光部材31の外形形状と略一致している。すなわち、光学部材34の上面及び波長変換部材27の上面27Sと対向する面である下面の形状は1.0mm四方の正方形である。
【0052】
なお、それぞれの略一致する形状として、サイズに関し、各辺±10%程度は製造上の誤差として許容される。また、素子形態等に応じて各辺±20%程度は製造上の誤差として許容としてもよい。
【0053】
(低屈折率層)
低屈折率層40は、波長変換部材27の上面27S、透光部材31の下面及び支持部32によって形成された閉空間内に設けられ、透光部材31の屈折率よりも低い屈折率を有する層である。
【0054】
本実施例においては、低屈折率層40は、上記の通り、閉空間に満たされた空気(屈折率n=約1.0)である。言い換えれば、波長変換部材27の上面27S、透光部材31の下面及び支持部32によって形成された閉空間内には、透光部材31の下面を構成する材料よりも屈折率の低い低屈折材料として、空気が充填されている。
【0055】
波長変換部材27の上面27Sと透光部材31の下面との間に低屈折率層40を設けることにより、スネルの法則により、低屈折率層40と透光部材31との間の界面で、波長変換部材27の上面27Sから出射した光を、波長変換部材27の上面27Sに対して垂直方向(光軸方向)に狭角化させることができる。
【0056】
例えば、波長変換部材27の上面27Sから低屈折率層40内に入射する光がランバシアン配光の指向特性である場合、低屈折率層40である空気(屈折率n=1.0)から透光部材31であるサファイア(屈折率n=1.75)に入射した光は、当該透光部材31内において、光軸方向に対して凡そ±35°の範囲に強く狭角化された配光となる。
【0057】
これにより、発光装置1は、光学部材34の複数の凸部35の表面から出射する光を光軸方向に対して狭い角度範囲で出射させることが可能となる。
【0058】
なお、波長変換部材27の上面27Sから出射しかつ透光部材31の下面に入射する光をより多く狭角化するためには、低屈折率層40の厚みを薄く設けることが好ましい。言い換えれば、支持部32の形成高さを低く形成することが好ましい。
【0059】
低屈折率層40の厚みを薄くすることにより、波長変換部材27の上面27Sからランバシアン配光で出射する光のうち、側方方向、すなわち光軸方向に対して広角度方向に出射する光をより多く透光部材31の下面に入射させ、これを狭角化することが可能となる。言い換えれば、波長変換部材27の上面27Sから出射した光束量に対する透光部材31の下面に入射する光束量の比である、集光率を増加させることができる。
【0060】
なお、波長変換部材27の上面27Sから出射し、透光部材31の支持部32に入射する光は、その大半が光軸方向に対して広角方向に屈折して狭角化されないため、上記集光率には含まれない。
【0061】
また、波長変換部材27の上面27Sから出射した光のうち、支持部32との接合部から直接支持部32に入射する狭角制御不可能な光を少なくするためには、波長変換部材27の上面27Sと支持部32との接合面積は小さいほうが好ましい。言い換えれば、波長変換部材27の上面27Sから出射した光が低屈折率層40を介して透光部材31の下面に入射する光の集光率を増加させるためには、波長変換部材27の上面27Sと支持部32との接合面積は小さいほうが好ましい。
【0062】
また、発明者らの検証により、光学部材34の複数の凸部35の焦点位置は、低屈折率層40の厚さ方向の中央近傍とすることが好ましいことが見出された。言い換えれば、光学部材34の複数の凸部35の焦点位置を低屈折率層40の厚さ方向の中央近傍とするレンズ形状とすることで、複数の凸部35の各々の表面を出射した光、すなわち発光装置1の出射光は、最も狭角化されることが見出された。
【0063】
また、凸部35に半球面レンズを用いる場合、発光装置1の出射光を狭角化する観点において、低屈折率層40の上面と凸部35の頂部との距離は、凸レンズの直径の近傍の値となることが好ましい。
【0064】
(遮光部材)
遮光部材50は、光反射性を有し、半導体発光素子21の側面の下端から光学機能部30の側面の上端に至る領域を被覆する反射部材である。
【0065】
遮光部材50は、例えば、酸化チタン(TiO)粒子等の光散乱性粒子を含有するシリコーン樹脂等の透光性の熱硬化性樹脂である。
【0066】
遮光部材50は、内方から半導体発光素子21の側面及び波長変換部材27の側面に至った光を各々の内方へと戻すように反射又は散乱させる。これにより、遮光部材50は、半導体発光素子21及び波長変換部材27の各々の側面に至った光を外部に漏出してしまうことを防止し、かつ波長変換部材27の上面27Sから出射する光束量を増加させることができる。すなわち、遮光部材50を設けることにより、発光装置1の光取り出し効率を向上させることが可能となる。
【0067】
上述の通り、波長変換部材27の上面27S及び透光部材31の下面の各々の外縁に沿った領域は、支持部32によって直接接合されている。従って、硬化前の遮光部材50の前駆体を半導体発光素子21の側面の下端から光学部材34の側面の上端に塗布した際に、波長変換部材27の上面27Sと透光部材31の下面との間に形成される低屈折率層40に遮光部材50の前駆体が侵入することを防止できる。
【0068】
また、上述の通り、光学部材34の上面の外縁に沿った領域には、平坦部36が形成されている。従って、硬化前の遮光部材50の前駆体を半導体発光素子21の側面の下端から光学部材34の側面の上端に塗布した際に、光学部材34の上面の平坦部36と光学部材34の側面とが角をなすことにより、当該角における表面張力によって遮光部材50の前駆体が光学部材34の上面に乗りあがることを抑制することができる。
【0069】
なお、本実施例においては、基板10が平板状の基板である場合について説明したが、基板10の上面上に発光部20及び光学機能部30を取り囲むような枠体を設けてもよい。枠体は、例えば、遮光部材50に上記の光散乱性粒子を含有する熱硬化性樹脂を用いる場合等に、熱硬化前の樹脂前駆体を充填する際に有用となる。
【0070】
また、本実施例においては、遮光部材50として光散乱性粒子を含有するシリコーン樹脂を用いた場合について説明したが、遮光部材50には原子層堆積法(ALD: Atomic Layer Deposition)又はスパッタ法によって製膜された誘電体多層膜又は金属反射膜等の光反射性の膜を用いることもできる。この場合、基板10に枠体を設けることは不要である。
【0071】
(低屈折率層の厚さの下限値についての検証)
上述した通り、本実施例の発光装置1においては、波長変換部材27の上面27Sから出射した光が低屈折率層40を介して透光部材31の下面に入射する必要がある。また、この条件を満たす上で、低屈折率層40の厚さを薄く形成することが好ましい。しかしながら、光学的及び熱的な理由によりその下限値が規定される。
【0072】
まず、光学的な理由による低屈折率層40の厚さ下限値について説明する。
【0073】
半導体発光素子21又は、波長変換部材27の内部で波長変換部材27の上面27Sに向かう光が、波長変換部材27の上面27Sに対する臨界角以上の角度で入射すると、波長変換部材27の上面27Sにて全反射が生じる。
【0074】
波長変換部材27の上面27Sでの全反射の発生時において、その全反射点から波長変換部材27の上面27Sの上方に向かって染み出す光、すなわちエバネッセント光が生じる。このエバネッセント光が低屈折率層40を超え、透光部材31に光学的に結合した場合、波長変換部材27の上面27Sの他の点から光軸方向に対して広角度で出射した光が当該結合部に入射してしまうと、低屈折率層40と透光部材31とのスネルの法則による狭角作用が消失する可能性がある。
【0075】
従って、低屈折率層40の厚さは、波長変換部材27の上面27Sからのエバネッセント光が透光部材31に光学的に結合しない距離とする必要がある。
【0076】
発明者らの検証によれば、発光装置1から出射する光(本実施例においては半導体発光素子21の青色光と波長変換部材27の黄色光との混色光である白色光)の平均波長λを500nmとした場合、低屈折率層40の厚みが平均波長λの2倍(2λ=1μm)以上とすることにより、波長変換部材27の上面27Sからのエバネッセント光が透光部材31に光学的に結合しなくなることが見出された。
【0077】
従って、低屈折率層40の厚みは、1μm以上又は発光装置1からの出射する光の平均波長λの2倍以上であることが好ましい。
【0078】
次に、熱的な理由による低屈折率層40の厚さ下限値について説明する。
【0079】
発光装置1を駆動した際、半導体発光素子21が発熱し、波長変換部材27と透光部材31の線熱膨張係数の差により、透光部材31の下面が支持部32の間で下方に反り、透光部材31の下面と波長変換部材27の上面27Sとが接触する可能性がある。透光部材31の下面と波長変換部材27の上面27Sとが接触した部分は、低屈折率層40の介在がなされず、波長変換部材27の上面27Sから出射した光の狭角化ができなくなる。
【0080】
また、上記のエバネッセント波の影響により、透光部材31の下面が支持部32の間で下方に歪んだ場合においても、透光部材31の最下面と波長変換部材27の上面27Sとの間の距離が1μm以上であることが好ましい。
【0081】
発明者らは、発光装置1の平常時の温度(例えば、室温時)と、環境温度や発光装置1の駆動時に生じる発熱による波長変換部材27及び透光部材31の熱時の温度との最大温度差を125℃とし、透光部材31の支持部32間の最大距離Lを250μm~1000μmの範囲、波長変換部材27と透光部材31の材料差による線熱膨張係数の差Δαを0E-6/K~1E-5/Kの範囲として、透光部材31が波長変換部材27の側に沿った場合の反り量Dを計算し、これらの計算結果をべき乗関数でフィッティングを行った。
【0082】
この結果、透光部材31の支持部32間の最大距離Lを変数とした際の透光部材31の反り量Dのべき乗関数の係数は6.8となり、透光部材31の反り量Dの計算式は、D=6.8LΔα0.5となることが見出された。なお、波長変換部材27及び透光部材31の平常時と熱時との最大温度差を125℃、透光部材31の支持部32間の最大距離Lを1000μm、波長変換部材27と透光部材31の線熱膨張係数の差Δαを1E-6/Kとした場合、透光部材31の反り量Dは、6.9μmであった。
【0083】
従って、上述のエバネッセント波の影響も考慮し、低屈折率層40の厚みの下限値は、6.8LΔα0.5+2λ以上とすることが好ましい。
【0084】
(支持部の接合面積率及び低屈折率層の厚さに対する集光率についての検証)
図3は、低屈折率層40の厚さに対する集光率を示すシミュレーション結果である。
【0085】
図3の横軸は、低屈折率層40の厚さを示している。
【0086】
また、図3の縦軸は、波長変換部材27の上面27Sから出射する光束量のうち、低屈折率層40を介して透光部材31の下面に入射する光束量の比を示している。なお、波長変換部材27の上面27Sから出射し、透光部材31の支持部32に入射する光は、スネルの法則により光軸方向に対して広角方向に屈折して狭角化されないため、上記集光率には含まれない。
【0087】
なお、本シミュレーションにおいては、波長変換部材27の上面27Sから出射する光が、ランバシアン配光で出射される場合についてシミュレーションを行った。
【0088】
また、本シミュレーションにおいては、実施例で説明した構造と同様に、波長変換部材27の上面27S及び透光部材31の下面がそれぞれ1.0mm四方の正方形である場合についてシミュレーションを行った。また、図2に示したように、透光部材31の下面に形成された支持部32が、各々の辺に沿った領域から250μmのピッチで5行5列の格子状に形成されている場合にてシミュレーションを行った。
【0089】
また、本シミュレーションにおいては、集光率が90%以上となる領域を、発光装置1の出射光が狭角化されかつ高い光束量を有すると判断する基準とした。
【0090】
また、図3は、透光部材31の支持部32の幅を4μm、6μm及び8μmとした際の集光率の変化のシミュレーション結果を示している。
【0091】
図3中の実線は、支持部32の幅が4μmの場合を示している。なお、この際の波長変換部材27の上面27Sの面積に対する支持部32との接合面積率は3.96%である。
【0092】
図3中の破線は、支持部32の幅が6μmの場合を示している。なお、この際の波長変換部材27の上面27Sの面積に対する支持部32との接合面積率は5.91%である。
【0093】
図3中の一点鎖線は、支持部32の幅が8μmの場合を示している。なお、この際の波長変換部材27の上面27Sの面積に対する支持部32との接合面積率は7.84%である。
【0094】
図3に示す通り、低屈折率層40の厚さを厚くしていくと、集光率は低下する傾向が見られた。また、低屈折率層40の厚さが20μmを超えると、支持部32の幅が8μm(接合面積率は7.84%)での集光率は90%以下となった。
【0095】
また、図3において、接合面積率による集光率の挙動を見ると、いずれの低屈折率層40の厚さにおいても、ほぼ同等の低下幅で集光率が低下していた。すなわち、接合面積率に関わらず、低屈折率層40の厚さに対する集光率の傾きはほぼ一定であった。
【0096】
よって、低屈折率層40の厚さで20μm以下かつ集光率が90%以上となる範囲は、支持部32の接合面積率が8%未満であれば達成可能であると推測される。
【0097】
以上より、低屈折率層40の厚さの上限値は、20μm以下であることが好ましい。また、本実施例において、波長変換部材27の上面27Sから出射する光の平均波長λが500nmであるため、低屈折率層40の厚さの上限値は、発光装置1から出射する光の平均波長λの50倍(50λ)以下であることが好ましい。なお、より好ましくは、低屈折率層40の厚さを5μm以下とすることで、非常に高い集光率を示す。
【0098】
また、この場合での波長変換部材27の上面27Sの面積に対する支持部32との接合面積率は、8%未満であることが好ましい。
【0099】
接合面積率において、波長変換部材27の上面27Sと透光部材31の支持部32との接合である表面活性化接合は非常に強固な接合強度を有する。
【0100】
発明者らの実験によれば、例えば、発光装置1の波長変換部材27の上面27Sの面積に対する透光部材31の支持部32との接合面積率が1%の場合で、耐振性能として120G(Gは重力加速度)の加速度においても、波長変換部材27から透光部材31が脱落しないことが検証された。
【0101】
以上より、本実施例において、低屈折率層40の厚さは、1μm以上20μm以下が好ましい。又は、低屈折率層40の厚さは、透光部材31の支持部32間の最大距離をL、波長変換部材27と透光部材31の線熱膨張係数の差をΔα、波長変換部材27の上面27Sから出射する光の平均波長をλとした場合、低屈折率層40の厚さは、6.8LΔα0.5+2λ以上50λ以下とすることが好ましい。
【0102】
さらに、本実施例において、波長変換部材27の上面27Sの面積に対する支持部32との接合面積率は、1%以上8%未満であることが好ましい。
【0103】
(発光装置の製造方法)
図4乃至図17を用いて、発光装置1の製造方法、特に、波長変換部材27と透光部材31の表面活性化接合及び光学部材34の製造手順について説明する。図4図8乃至図10及び図15乃至図17は、各工程における断面を示している。また、図5乃至図7は、波長変換部材27の材料であるセラミック焼結体27Mにおける、上面27S形成時の拡大断面図である。また、図11乃至図14は、セラミック焼結体27Mの上面27Sと支持部32の表面活性化接合の手順を示す拡大断面図である。
【0104】
まず、図4に示すように、波長変換部材27の基材として蛍光体粒子を含有する平板状のアルミナからなるセラミック焼結体27Mを用意する(工程1)。
【0105】
なお、本工程においては、セラミック焼結体27Mの透光部材31の支持部32と表面活性化接合を行うための処理として上面27Sの形成を行う。
【0106】
図5に示すように、多結晶体であるセラミック焼結体27Mは、微結晶の結合体であるため、その表面には種々の結晶方位面が露出している。従って、セラミック焼結体27Mの表面は、種々の結晶方位面に起因する凹凸形状となっている。
【0107】
図6に示すように、セラミック焼結体27Mの表面活性化接合を行う面に対し、誘電体である酸化シリコン(SiO)からなるコーティング膜CFを形成する(工程2)。
【0108】
次に、図7に示すように、コーティング膜CFの研磨を行い、セラミック焼結体27Mの表面活性化接合を行う面である上面27Sを形成する(工程3)。この時、セラミック焼結体27Mの上面27Sには、コーティング膜CFが残留するように研磨を行う。
【0109】
コーティング膜CFの研磨は、機械研磨を行った後、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)をさらに行い、その後に表面洗浄を行う。なお、セラミック焼結体27Mの上面27Sは、表面活性化接合を行うために表面粗さRaが0.5nm未満であることが好ましい。なお、コーティング膜CFはアルミナ(Al)であってもよい。
【0110】
次に、図8に示すように、透光部材31の基材としてサファイア平板31Mを用意する(工程4)。なお、サファイア平板31Mの表面活性化接合を行う面、すなわち支持部32の形成面は、セラミック焼結体27Mの上面27Sと同様に、予め機械研磨、化学的機械研磨及び表面洗浄を行い、表面粗さRaを0.5nm未満としている。
【0111】
次に、図9に示すように、サファイア平板31Mの研磨を行った面において、支持部32の形成領域にフォトレジストPRを形成し、支持部32の形成領域を除く部分にエッチングを行い、支持部32を形成する(工程5)。その後、フォトレジストPRを除去し、支持部32の接合面を露出させる。
【0112】
次に、図10に示すように、セラミック焼結体27Mの上面27Sとサファイア平板31Mの支持部32の接合面とを対向させて表面活性化接合によって接合を行い、第1の接合体を形成する(工程6)。
【0113】
表面活性化接合の接合過程について、図11乃至図14を用いて説明する。
【0114】
例えば、図11A及び図11Bに示すように、サファイア平板31Mの支持部32の接合面及びセラミック焼結体27Mの上面27Sにアルゴン(Ar)プラズマを300Wで5分程度照射し、表面を活性化させる。具体的には、サファイア平板31Mの支持部32の接合面及びセラミック焼結体27Mの上面27Sに付着する不純物を除去し、それぞれの面にダングリングボンドDB(本来目視できるものではないが、説明の便宜上、図中短い直線で示す)を生成する。照射するプラズマ種は、例えば、酸素(O)又は窒素(N)等であってもよい。
【0115】
次に、図12A及び図12Bに示すように、プラズマ照射を行ったセラミック焼結体27M及びサファイア平板31Mを大気に暴露し、それぞれのプラズマ照射面のダングリングボンドDBに水酸基HY(-OH)を形成する。
【0116】
次に、セラミック焼結体27Mの上面27Sとサファイア平板31Mの支持部32の接合面とが所定の位置関係となるように位置合わせを行い、両者を貼り合わせて仮接合を行う。この時、セラミック焼結体27Mの上面27Sの水酸基HYとサファイア平板31Mの支持部32の接合面の水酸基HYとが水素結合し、水素結合部HBを形成することで仮接合される。
【0117】
次に、例えば、この状態のセラミック焼結体27Mとサファイア平板31Mとを2MPの圧力で加圧しつつ、大気雰囲気下で200℃で2時間加熱を行い、本接合を行う。
【0118】
この時、加圧及び加熱によってセラミック焼結体27Mとサファイア平板31Mの表面の水酸基同士は熱分解し、酸素結合-O-を形成する一方、余剰分は水(HO)となって接合界面から離脱する。これにより、セラミック焼結体27Mの上面27Sとサファイア平板31Mの支持部32の接合面とが、接着剤等の接合材を用いることなく、原子間で直接接合される。
【0119】
次に、図15に示すように、表面活性化接合を行ったサファイア平板31Mの上面上に、透明接着剤39を介して光学部材34の材料となる、熱可塑性の樹脂平板34Mを貼り付ける(工程7)。本工程においては、まず、サファイア平板31Mの上面上に透明接着剤39の原料である熱硬化性シリコーン樹脂の前駆体を塗布し、当該前駆体に接するように樹脂平板34Mを載置する。これを加熱し、透明接着剤39を熱硬化させることでサファイア平板31Mの上面上に樹脂平板34Mを貼り付ける。
【0120】
次に、図16に示すように、インプリント工法にて樹脂平板34Mの上面に複数の凸部35を形成する(工程8)。本工程においては、まず、樹脂平板34Mの上面方向から、複数の凸部35の形状でパターン形成された金型を加熱して樹脂平板34Mの上面に近づけ、樹脂平板34Mを軟化させる。次に、加熱した金型を樹脂平板34Mに接触させ、金型に形成された複数の凸部35の形状を樹脂平板34Mの上面にパターン転写する。次に、金型を冷却させた後に樹脂平板34Mの上面から離型して複数の凸部35を形成する。
【0121】
上記の工程7及び工程8は、セラミック焼結体27M、サファイア平板31M及び複数の凸部35を備える樹脂平板34Mがそれぞれ接合された第2の接合体を形成する工程として処理される。
【0122】
次に、図17に示すように、セラミック焼結体27M、サファイア平板31M及び樹脂平板34Mからなる第2の接合体を所定の位置にてダイシングを行い個片化する(工程9)。これにより、波長変換部材27、透光部材31及び光学部材34がそれぞれ接合されつつ、波長変換部材27の上面27S、透光部材31の下面及び透光部材31の支持部32に囲まれた閉空間に空気からなる低屈折率層40が形成された複合部材を形成することができる。
【0123】
この複合部材の波長変換部材27の下面を、予め基板10の上面上に接合された半導体発光素子21の上面上に透光性の接着剤(図示せず)を介して接合する。また、その後、半導体発光素子21の側面の下端から光学部材34の側面の上端に至る領域に遮光部材50を形成することにより、発光装置1を製造することが可能となる。
【0124】
なお、本実施例においては、光学部材34及び複数の凸部35に熱可塑性樹脂を用いた場合について説明したが、光学部材34及び複数の凸部35は、紫外線硬化性の樹脂材料を用いることもできる。その場合、透明接着剤39を用いずに、サファイア平板31Mの上面上に紫外線硬化樹脂の前駆体を直接塗布してもよい。また、石英からなる型を紫外線硬化樹脂の前駆体に接触させてパターン転写を行いつつ、当該型を介して紫外線硬化樹脂の前駆体に紫外線を照射して紫外線硬化させてもよい。
【0125】
(変形例1)
本実施例においては、空間形成部としての支持部32が透光部材31と一体的に形成されている場合について説明した。しかしながら、支持部32は、波長変換部材27の上面27S上に形成してもよい。
【0126】
図18は、本願の変形例1に係る発光装置1Aの断面図である。発光装置1Aは、実施例の発光装置1と基本的に同様な構成を有する。支持部29が波長変換部材27Aの上面27S上に形成されている点で発光装置1と相違する。
【0127】
発光装置1Aの製造方法において、支持部29は、波長変換部材27Aの上面27S上にコーティング膜CFを形成して研磨を行った後に、支持部29の形成領域にフォトレジストPRを形成し、支持部29の形成領域を除く部分にエッチングを行うことで形成できる。
【0128】
波長変換部材27Aの上面27S上に支持部29を形成する場合においても、実施例の製造方法にて説明した方法で表面活性化接合を行うことができる。
【0129】
(変形例2)
また、図19に示す変形例2に係る発光装置1Bのように、支持部82は、透光部材31又は波長変換部材27のコーティング膜CFと別体で形成してもよい。
【0130】
例えば、支持部82は、予め格子状に形成された酸化シリコン(SiO2)を用い、波長変換部材27の上面27S及び透光部材31の下面の双方と表面活性化接合によって接合を行ってもよい。
【0131】
また、支持部82は、波長変換部材27の上面27S又は透光部材31Aの下面に有機金属気相成長法(MOCVD)等によって製膜されてもよい。
【0132】
上記のいずれの方法においても、実施例の製造方法にて説明した方法で表面活性化接合を行うことができる。
【0133】
(変形例3)
また、図20に示す変形例3に係る発光装置1Cのように、光学部材34Bと波長変換部材27の上面27Sとは、透光部材31を用いずに、表面活性化接合によって直接接合されてもよい。
【0134】
例えば、この場合、光学部材34Bは、硬質部材であるサファイアや石英ガラス等の表面活性化接合可能な材料を基材とする。また、複数の凸部35Bは、プラズマエッチング又はレーザ加工等の方法により形成できる。
【0135】
また、例えば、予め格子状に形成された酸化シリコン(SiO2)の支持部82を用い、波長変換部材27の上面27S及び光学部材34Bの下面の双方と表面活性化接合によって直接接合を行ってもよい。また、例えば、光学部材34Bの下面又は波長変換部材27のコーティング膜CFにエッチング等の方法により、光学部材34Bの下面又は波長変換部材27のコーティング膜CFと一体的に形成された支持部を設け、光学部材34Bと波長変換部材27との表面活性化接合を行ってもよい。
【0136】
(変形例4)
また、図21に示す変形例4に係る発光装置1Dのように、半導体発光素子21から出射する光の波長変換を行わない場合は、波長変換部材27を設けずともよい。
【0137】
例えば、光学部材34Bは、本変形例3と同様に、サファイアや石英ガラス等の表面活性化接合可能な材料を基材とする。
【0138】
また、例えば、予め格子状に形成された酸化シリコン(SiO2)の支持部82を用いてもよいし、光学部材34Bの下面にエッチング等の方法により、光学部材34Bと一体的に形成された支持部を設けてもよい。
【0139】
また、通常、フリップチップ態様の半導体発光素子21の上面側である成長基板にはサファイア(Al)基板が用いられる。従って、半導体発光素子21の上面21Sは、酸化シリコン(SiO)膜等の表面活性化接合を行うための接合膜の形成することなく表面活性化接合を行うことが可能となる。
【0140】
また、透光性を有さない支持基板及び支持基板の上面上の1の領域に設けられた半導体構造層を有する半導体発光素子21を用いる場合、通常、半導体発光素子21の半導体構造層を含む上面21S上には、保護膜として酸化シリコン(SiO)膜が形成されている。従って、半導体発光素子21の半導体構造層を含む上面21Sも、表面活性化接合を行うことが可能となる。
【0141】
(変形例5)
また、図22に示す変形例5に係る発光装置1Eのように、光学部材34Cの上面に形成される複数の凸部35Cは、錐形状又は錐台形状としたマイクロコーン形状としてもよい。
【0142】
また、複数の凸部35Cの底面形状又は光学部材34に平行な面の断面形状は、円、矩形又は多角形の形状であってもよい。
【0143】
複数の凸部35Cは、上記のようなマイクロコーン形状としても、当該複数の凸部35Cの表面から狭角化された光を出射することが可能である。
【0144】
複数の凸部35Cは、実施例の製造方法と同じように、インプリント工法によるパターン転写によって形成可能である。
【0145】
また、変形例3及び4のように、光学機能部30Cは、光学部材34C及び複数の凸部35にサファイア等の硬質部材を用い、光学部材34Cの下面に支持部を形成し、透光部材31を用いずに波長変換部材27の上面27S又は半導体発光素子21の上面21Sと表面活性化接合によって直接接合してもよい。
【0146】
(変形例6)
本実施例においては、空間形成部としての支持部32が透光部材31の下面に外縁に沿った領域を含む格子形状に形成されている場合について説明した。しかしながら、支持部32の形状はこれに限定されない。
【0147】
図23に示す変形例6に係る透光部材31Bの底面に示すように、支持部32Bは、透光部材31Bの下面の外縁に沿った領域のみに形成されていてもよい。
【0148】
支持部32Bを透光部材31Bの下面の外縁に沿った領域のみに形成することにより、集光率を向上させることが可能となる。
【0149】
なお、支持部32Bの高さは、実施例にて説明したように、発光装置1の駆動時の発熱によって、低屈折率層40が厚さの上限値及び下限値の範囲内に入ることが必要である。
【0150】
(変形例7)
また、図24に示す変形例7に係る透光部材31Cの底面に示すように、透光部材31Bの下面の外縁に沿った領域に形成された支持部32B及び支持部32Bに囲まれた領域内に配列された柱状の複数の支持部32Cが形成されていてもよい。
【0151】
透光部材31Cは、支持部32Bに囲まれた領域内に柱状の支持部32Cを配列することにより、波長変換部材27の上面27Sとの接合面積を小さくしかつ半導体発光素子21駆動時の反り抑制を同時に行うことが可能となる。
【0152】
透光部材31Cは、実施例の透光部材31の製造方法と同様に、透光部材31の下面にフォトレジストPRを形成しエッチングを行うことで形成可能である。
【0153】
(変形例8)
また、図25に示す変形例8に係る発光装置1の透光部材31Dの底面に示すように、透光部材31Bの下面の外縁に沿った領域に形成された支持部32B及び支持部32Bに囲まれた領域内に矩形の環状に形成された複数の支持部32Dが形成されていてもよい。
【0154】
複数の支持部32Dを環状に形成することにより、半導体発光素子21駆動時の透光部材31Dの反りによる支持部32Dの波長変換部材27の上面27Sへの応力を分散させることができる。
【0155】
(変形例9)
また、図26に示す変形例9に係る発光装置1の透光部材31Eの底面に示すように、透光部材31Bの下面の外縁に沿った領域に形成された支持部32B及び支持部32Bに囲まれた領域内に円形の環状に形成された複数の支持部32Eが形成されていてもよい。
【0156】
これにより、変形例8と同様に、半導体発光素子21駆動時の透光部材31Dの反りによる支持部32Eの波長変換部材27の上面27Sへの応力を分散させることができる。
【0157】
なお、本説明における実施例及び変形例の各部の構成は適宜組み合わせることが可能である。例えば、いずれの実施例及び変形例においても、変形例2のように別材料の支持部82を組み込んでもよいし、変形例3及び4のように光学部材34Bを波長変換部材27の上面27S又は半導体発光素子21の上面21Sに表面活性化接合を行ってもよい。
【0158】
また、例えば、いずれの実施例及び変形例においても、変形例5のマイクロコーンを備えた光学部材34Cを組み込むこともできる。
【0159】
また、例えば、いずれの実施例及び変形例においても、変形例6乃至9のような支持部32B及び支持部32C~32Eの構造を組み込んでもよい。
【0160】
以上のように、記載の実施例は発明の範囲を限定することは意図していない。記載の実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、それら変形例も、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
1 発光装置
10 基板
13 第1の基板配線
15 第2の基板配線
20 発光部
21 半導体発光素子
23 第1の素子電極
25 第2の素子電極
27 波長変換部材
30 光学機能部
31 透光部材
32、82 支持部
34 光学部材
35 複数の凸部
36 平坦部
39 透明接着剤
40 低屈折率層
50 遮光部材
図1
図2
図3
図4
図5
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図11A
図11B
図12A
図12B
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