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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086175
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20240620BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20240620BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201167
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】永井 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
(72)【発明者】
【氏名】山本 大
(72)【発明者】
【氏名】中林 慶太
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604BB17
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DA14
5H604DB01
5H604PB03
5H604QA01
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB07
5H611BB08
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA01
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】巻線コイルの高温箇所の温度を適切に検出でき、組み付けを容易にできるモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、ステータ3と、回転可能に取り付けられたロータ2と、ステータ3に取り付けられ、複数の巻線巻回部11dが周方向に配列された絶縁性を有する筒状のインシュレータ11と、インシュレータ11の各巻線巻回部11dに巻線12aを巻回させて形成された複数の巻線コイル12と、巻線コイル12の温度を検出する温度検出センサ13と、を備えている。複数の巻線巻回部11dの少なくとも1つの外周側には、温度検出センサ13を巻線コイル12に接触させる開口部15eが設けられている。開口部15eは、巻線コイル12の積層方向に沿って形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
回転可能に取り付けられたロータと、
前記ステータに取り付けられ、複数の巻線巻回部が周方向に配列された絶縁性を有する筒状のインシュレータと、
前記インシュレータの各巻線巻回部に巻線を巻回させて形成された複数の巻線コイルと、
前記巻線コイルの温度を検出する温度検出センサと、を備えたモータであって、
前記複数の巻線巻回部の少なくとも1つの外周側には、前記温度検出センサを前記巻線コイルに接触させるための開口部が設けられ、
前記開口部は、前記巻線コイルの積層方向に沿って形成されている、
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記開口部は、前記巻線巻回部のそれぞれに設けられ、
前記温度検出センサは、前記巻線巻回部の少なくとも1つに固定されている、
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記開口部が設けられた前回巻線巻回部の外周側には、前記温度検出センサが収容可能な収容部が外周側に突出して設けられ、
前記温度検出センサは、前記開口部から前記巻線コイルに接触するように前記収容部に収容されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記巻線コイルは、前記インシュレータの径方向を中心軸方向として前記巻線を巻回させて前記巻線巻回部に設けられ、前記インシュレータの軸方向および径方向のそれぞれに直交する幅方向を有し、
前記収容部は、前記巻線コイルの前記幅方向の中心位置に、前記インシュレータの軸方向に沿って設けられ、
前記温度検出センサは、前記開口部から巻線コイルの内層側の巻線に接触させて前記収容部に収容されている、
ことを特徴とする請求項3記載のモータ。
【請求項5】
前記巻線コイルは、前記巻線の始点部および終点部を有し、前記始点部を前記巻線コイルの前記幅方向の一側部から突出させ、前記終点部を前記巻線コイルの前記幅方向の他側部から突出させて前記巻線巻回部に設けられ、
前記収容部は、前記始点部と前記終点部との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載のモータ。
【請求項6】
前記巻線は、断面略長方形の平角線であり、
前記巻線コイルは、前記巻線の面を積層させて巻回させて構成され、
前記温度検出センサは、前記巻線コイルの内層側に位置する複数の巻線に接触して固定されている、
ことを特徴とする請求項4記載のモータ。
【請求項7】
前記温度検出センサを前記巻線コイルに付勢する付勢部材を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項8】
前記温度検出センサを前記巻線コイルに付勢する付勢部材を備え、
前記収容部の外周側に係止溝が設けられ、
前記付勢部材は、前記温度検出センサを前記収容部に収容した状態で前記係止溝に係止し、前記温度検出センサを前記収容部から抜け止め保持する抜止片を有している、
ことを特徴とする請求項3記載のモータ。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記温度検出センサの外周側に取り付けられ、前記温度検出センサとともに前記収容部に収納され、前記収容部の外周面との間で生じる弾性力にて前記温度検出センサを前記巻線コイルに付勢する板バネ材である、
ことを特徴とする請求項8記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるブラシレスモータ等のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という。)の推進に向けた取り組みが国際規模で行われている。具体的に、SDGsの目標としては、「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」や、「目標12:作る責任、使う責任」等があり、これら目標の解決を目指した技術開発が望まれている。
【0003】
これら目標の解決に貢献できる技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1には「この発明に係る回転電機は、胴部、および胴部の長さ方向の両端に連結された一対のフランジ部を有するインシュレータが、それぞれ、胴部の長さ方向をティースの径方向に一致させて、胴部の底面を該ティースの軸方向両端面に沿わせて配置され、集中巻コイルが、導体線を、ティースの軸方向両端の胴部と一対のフランジ部とにより形成される凹空間内を通って、ティースのまわりを多層に巻かれて構成されている。一対のフランジ部の一方のフランジ部が、ステータコアのコアバックの端面上に配置され、温度検出素子が一方のフランジ部に形成された素子挿入穴に挿入されて集中巻コイルのコイルエンドの温度を検出可能に設置されている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/132359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、巻線コイルは内層側の熱が逃げ難く高温になりやすい傾向にある。ところが、特許文献1に記載の回転電機では、一方のフランジ部に形成された素子挿入穴に挿入された温度検出素子(巻線コイル)で集中巻コイルのコイルエンドの温度を検出可能にしている。このため、集中巻コイルの高温箇所の温度を適切に検出できないという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の回転電機では、一方のフランジ部に素子挿入穴を形成し、この素子挿入穴に温度検出素子を挿入して、集中巻コイルのコイルエンドの温度を検出する構成としている。よって、素子挿入穴や温度検出素子を弾性変形させる等して、集中巻コイルとフランジ部との間に温度検出素子を圧入等する必要があるため、組み付けが容易でないという問題もある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、巻線コイルの高温箇所の温度を適切に検出でき、組み付けが容易なモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ステータと、回転可能に取り付けられたロータと、前記ステータに取り付けられ、複数の巻線巻回部が周方向に配列された絶縁性を有する筒状のインシュレータと、前記インシュレータの各巻線巻回部に巻線を巻回させて形成された複数の巻線コイルと、前記巻線コイルの温度を検出する温度検出センサと、を備えたモータであって、前記複数の巻線巻回部の少なくとも1つの外周側には、前記温度検出センサを前記巻線コイルに接触させるための開口部が設けられ、前記開口部は、前記巻線コイルの積層方向に沿って形成されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻線コイルの高温箇所の温度を適切に検出でき、組み付けを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態のモータを示す側面図である。
図2】上記モータの一部を軸方向に切り欠いて断面図として示した図である。
図3】上記モータの部分的な斜視図である。
図4】上記モータの部分的な径方向断面図である。
図5】上記モータの部分的な軸方向断面図である。
図6】上記モータの一部を切り欠いた側面図である。
図7】上記モータのインシュレータを示す斜視図である。
図8】上記モータのサーミスタを示す斜視図である。
図9】上記モータの板バネ材を示す図で、(A)は外側からの斜視図、(B)は内側からの斜視図である。
図10】上記モータのバスバーユニットを示すリア側からの斜視図である。
図11】上記バスバーユニットを示すフロント側からの斜視図である。
図12】上記モータをサイドマウント型の電動式自動二輪車に取り付けた状態を示す概略図である。
図13】上記モータをセンタマウント型の電動式自動二輪車に取り付けた状態を示す概略図である。
図14】上記モータの製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態のモータを示す側面図である。図2は、モータの一部を軸方向に切り欠いて断面図として示した図である。図3は、モータの部分的な斜視図である。図4は、モータの部分的な径方向断面図である。図5は、モータの部分的な軸方向断面図である。図6は、モータの一部を切り欠いた側面図である。図7は、モータのインシュレータを示す斜視図である。図8は、モータのサーミスタを示す斜視図である。図9は、モータの板バネ材を示す図で、(A)は外側からの斜視図、(B)は内側からの斜視図である。図10は、モータのバスバーユニットを示すリア側からの斜視図である。図11は、バスバーユニットを示すフロント側からの斜視図である。図12は、モータをサイドマウント式の電動式自動二輪車に取り付けた状態を示す概略図である。図13は、モータをセンタマウント式の電動式自動二輪車に取り付けた状態を示す概略図である。図14は、モータの製造工程を示す工程図である。
【0012】
<全体構成>
本一実施形態に係るモータ1は、いわゆるブラシレスモータと呼ばれる3相モータである。このモータ1は、例えば電動式自動二輪車用の駆動頻度が高く、高い耐久性等が求められる駆動用モータ等として用いられる。例えば、モータ1は、図12に示すように、駆動輪の脇で駆動するサイドマウント型の電動式自動二輪車や、図13に示すように、前論と後輪との間で駆動するセンタマウント型の電動式自動二輪車の駆動用モータとして用いられる。
【0013】
そして、モータ1は、ロータ(回転子)2にマグネット(永久磁石)が埋め込まれたIPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)である。具体的に、モータ1は、図2に示すように、略円筒状のステータ(固定子)3を備え、このステータ3の内側にロータ2が同心状に回転可能に取り付けたインナーロータ型の構成となっている。ロータ2は、回転軸2aの周りに回転可能に支持されている。なお、以下の記載において、特にその基準を特定しない限り、回転軸2aの軸心を基準として、周方向、軸方向、および径方向を規定する。
【0014】
ステータ3の軸方向の両端には、蓋体となるフロントブラケット4とリアブラケット5とが取り付けられ、フロントブラケット4とリアブラケット5との間にハウジングとなるケース体6が取り付けられている。フロントブラケット4には、ロータ2の回転軸2aの一端を挿通させて突出させる開口としての挿通孔4aが設けられている。なお、以下の記載において、フロントブラケット4が位置する側をフロント側と規定し、リアブラケット5が位置する側をリア側と規定する。
【0015】
ケース体6は、フロント側およびリア側のそれぞれが開口した略筒状に形成されている。モータ1は、図1および図2に示すように、ブロントブラケット4、リアブラケット5およびケース体6の三分割構造となっている。そして、モータ1は、ケース体6の内側にステータ3が装着固定され、フロントブラケット4の挿通孔4aから回転軸2aの一端を突出させて、これらフロントブラケット4とリアブラケット5との間に回転軸2aが固定されてロータ2がステータ3内で回転自在となっている。ステータ3のリア側の端部には、環状のバスバーユニット7が同心状に取り付けられている。バスバーユニット7のリア側には、例えばロータ2の回転速度を検出する回転センサに接続された導線(図示せず)が接続される略矩形平板状の回転センサ基板8が取り付けられている。回転センサ基板8は、回転軸2aの回転中心から偏心した位置に取り付けられている。また、図5および図6に示すように、ケース体6の外周部には、回転センサ基板8のコネクタ8aに接続された各導線を引き出すための出力コネクタ9Aが取り付けられている。さらに、ケース体6の外周部には、出力コネクタ9Aに隣接してターミナルホルダ9Bが取り付けられている。ターミナルホルダ9Bは、ターミナル9Dを介してバスバーユニット7の所定のバスバー端子7kに電気的に接続されている。
【0016】
ステータ3は、複数の電磁鋼板を積層して形成されたステータコア3aを備えている。ステータコア3aは、ケース体6に圧入されている。また、ケース体6のフロント側にはフロントブラケット4がボルト10aにて固定され、このケース体6のリア側にはリアブラケット5がボルト10bにて固定されている。なお、フロントブラケット4およびリアブラケット5は、別個のボルト10a,10bにてケース体6に固定されている。ステータコア3aは、円筒状のステータコア本体3bと、ステータコア本体3bの内周側から径方向内側に向けて突出する複数のティース3cと、を備えている。ティース3cは、例えば12個設けられ、周方向に等間隔に設けられている。各ティース3cにインシュレータ11が取り付けられ、インシュレータ11を介して各ティース3cに巻線コイル12が巻装されている。ステータ3は、周方向に12分割され、これら12分割されたステータの一部が、ステータ部材31として構成されている。ステータ部材31は、それぞれがステータコア本体3bを12分割した一部と、ティース3cとを有する同一形状に形成されている。また、各ステータ部材31のステータコア本体3bに相当する部分の周方向の端面には、互いに嵌合する凹凸面31aが形成されている。ステータ3は、インシュレータ11および計12個の巻線コイル12を有する構成となっている。
【0017】
インシュレータ11は、絶縁性を有する合成樹脂から成る2部品によって構成され、それぞれモータ1の軸方向両端側からティース3cに装着している。また、インシュレータ11は、ステータ3の外径寸法より小さな外径寸法に形成されている。具体的に、インシュレータ11は、ティース3cの外周面を被覆するように内周が四角形状に貫通し外周が長円状に形成された、例えば24個のインシュレータ本体11aを備えている。インシュレータ11は、これら計24個のインシュレータ本体11aの軸方向をモータ1の径方向に向け、これらインシュレータ本体11aを周方向に等間隔に並べた状態とされている。そして、インシュレータ11は、ステータコア本体3bが各インシュレータ本体11の外周側に突出して取り付けられている。
【0018】
各インシュレータ本体11aのステータコア本体3b側の周縁には、内側フランジ11bが全周に亘って設けられている。また、インシュレータ本体11aの内側フランジ11bとは反対側のティース3cの先端側の周縁には、外側フランジ11cが全周に亘って設けられている。そして、インシュレータ本体11a、内周フランジ11bおよび外周フランジ11cによって、巻線コイル12を装着するための巻線巻回部11dが形成されている。各巻線巻回部11dには、巻線12aが内周側から外周側に向けて複数回に亘って巻回されて形成された巻線コイル12が装着されている。巻線コイル12は、径方向を中心軸方向として巻線12aを巻回させて巻線巻回部11dに取り付けられている。巻線巻回部11dは、図7に示すように、周方向に向けて等間隔に離間されたて配列されている。
【0019】
巻線12aは、導電性を有する断面長方形の平角線であり、表面が絶縁性材にて被覆されている。巻線12aは、この巻線12aの一側面を巻線巻回部11dに接触させて巻回させてから、さらに、この巻回した巻線12aの他側面に巻線12aの一側面を接触させながら積層させて巻回されている。また、巻線12aは、巻線巻回部11dの外周側から内周側、さらに内周側から外周側へと交互にその巻回方向を変えながら、すでに巻回した巻線12aに隣接して接触するように巻回される。そして、巻線12aは、最終的に径方向に隣接した状態とされ巻線巻回部11dの内周側から外周側または外周側から内周側に整列巻きされた状態とされて巻線コイル12を形成している。
【0020】
インシュレータ11の外周フランジ11cのうち、ステータコア3aのステータコア本体3bに接触する両側部が平板状のステータコア受部11eとされている。また、外周フランジ11cのうち、ステータコア本体3bが接触しない軸方向の端部が平板状の外壁部11fとされている。外壁部11fは、ステータコア受部11eより肉厚に形成され、このステータコア受部11eの外側面より外壁部11fの外側面が外側に突出した鍔状に形成されている。この結果、外壁部11eとステータコア受部11との間には段部11gが形成され、軸方向の両端に位置する外壁部11fの段部11g間にステータコア本体3bが嵌合した構成となっている。
【0021】
インシュレータ11の各外壁部11fは、軸方向および径方向のそれぞれに直交する幅方向Aを有しており、軸方向視12角形状となるように周方向に並んだ状態となっている。各外壁部11fのリア側またはフロント側の端面には、一対の巻線嵌合溝部11h,11jが所定の間隔を空けて設けられている。これら巻線嵌合溝部11h,11jは、外壁部11fの端面側に開口し、外壁部11fを厚さ方向に貫通した凹溝状に形成されている。そして、一方の巻線嵌合溝部11hは、他方の巻線嵌合溝部11jよりも軸方向に浅く、要するに小さく切り欠かれた形状に形成されている。
【0022】
一方の巻線嵌合溝部11hには、巻線巻回部11dに巻線12aを巻き始める際に巻線12aの基部側である始点部12cが嵌合されて仮固定される。他方の巻線嵌合溝部11jには、巻線巻回部11dに巻線12aを巻回させて巻線コイル12を形成した状態の巻線12aの外周側から突出する終点部12bが嵌合されて仮固定される。すなわち、巻線コイル12は、巻線12aの始点部12cを巻線嵌合凹部11hに仮固定した状態で、この巻線12aが巻線巻回部11dへ内層側から徐々に巻回させてから、この巻線12aの終点部12bを巻線嵌合凹部11jに仮固定させてインシュレータ11の外周側に引き出して導出させる構成となっている。
【0023】
さらに、インシュレータ11は、図7に示すように、軸方向に2分割された構成とされ、この2分割されたリア側2分の1の部分が周方向に12分割され、これら12分割されたインシュレータ11の一部が、リア側インシュレータ部材51として構成されている。このリア側インシュレータ部材51は、それぞれがインシュレータ本体11a、内周フランジ11bおよび外周フランジ11cのリア側の2分の1を有する同一形状に構成されている。さらに、インシュレータ11を軸方向に2分割したうちのフロント側2分の1の部分もまた周方向に12分割され、これら12分割されたインシュレータ11の一部がフロント側インシュレータ部材61として構成されている。このフロント側インシュレータ部材61もまた、それぞれがインシュレータ本体11、内周フランジ11bおよび外周フランジ11cのフロント側の2分の1を有する同一形状に構成されている。
【0024】
<インシュレータ11の固定構成>
各リア側インシュレータ部材51の内周フランジ11bのうち、センサ取付部15と対向する軸方向の端部には内壁部11kが形成されている。内壁部11kは、ステータコア受部11eより肉厚に形成され、ステータコア受部11eの内側面より内壁部11kの内側面が内側に突出した鍔状に形成されている。そして、内壁部11kの内側には、内径方向に突出した挿入受部11mが設けられている。挿入受部11mは、図3図4および図7に示すように、断面凹状であってリア側が開口した受皿状に形成されている。挿入受部11mは、各リア側インシュレータ部材51のそれぞれに設けられ、インシュレータ11の周方向に向けて計12個が等間隔に配列された構成とされている。さらに、各挿入受部11mは、ステータ3にロータ2を取り付けた状態で、このロータ2の一部、要するにロータ2の外周縁を覆う位置まで内径方向に突出して設けられている。
【0025】
さらに、各リア側インシュレータ部材51の内壁部11kの幅方向Aの両端部には、この両端部が切り欠かれて嵌合段部11nが形成されている。嵌合段部11nは、内壁部11kのリア側の角部に設けられ、計12個のリア側インシュレータ部材51を組み合わせた状態で、隣接する嵌合段部11nにて凹状の嵌合溝部11pを形成する構成となっている。要するに、嵌合溝部11pは、インシュレータ11の挿入受部11m間に位置し、インシュレータ11のリア側に周方向に向けて計12個が等間隔に配列された構成とされている。
【0026】
インシュレータ11のリア側には、バスバーユニット7が同心状に固定されている。バスバーユニット7は、各巻線コイル12へ電力を供給するものであり、図4図10および図11に示すように、略円環状のバスバーユニット本体7aを備えている。バスバーユニット本体7aの内周側のフロント側寄りの位置には、インシュレータ11の挿入受部11mに挿入させるインシュレータ固定部としての挿入固定部7bが設けられている。バスバーユニット本体7aは、軸方向の厚さが挿入固定部7bより厚く形成されている。挿入固定部7bは、フロント側に突出し、リア側から挿入受部11mに挿入する突状である角柱状に形成されている。そして、挿入固定部7bは、周方向に向けて計12個が等間隔に配列された構成とされている。さらに、各挿入固定部7bは、ステータ3の外周にロータ2が配置された状態で、このロータ2の一部、要するにロータ2の外周縁を覆う位置まで内径方向に突出して設けられている。
【0027】
バスバーユニット本体7aのフロント側に位置する底面部には、図11に示すように、計12個の係止凸部7cが設けられている。係止凸部7cは、インシュレータ11のリア側にバスバーユニット7を同心状に固定させる際に、インシュレータ11の嵌合溝部11pに嵌合する構成となっている。バスバーユニット7は、このバスバーユニット7のフロント側の底面が巻線コイル12のリア側の表面に接触せず、所定のクリアランスが形成される構成となっている。係止凸部7cは、インシュレータ11に対するバスバーユニット7の周方向の位置合わせを容易にし、バスバーユニット7のインシュレータ11に対する回転方向の移動を規制して位置決め固定する構成となっている。
【0028】
さらに、バスバーユニット7は、このバスバーユニット7の係止凸部7cをインシュレータ11の嵌合溝部11pに嵌合させて位置決め固定させ、このバスバーユニット7の挿入固定部7bをインシュレータ11の挿入受部11mに挿入させた状態で、図4に示すように、バスバーユニット7の挿入固定部7bのフロント側の底面と、インシュレータ11の挿入受部11mの底面との間に、接着箇所となる所定の隙間Cが形成される構成となっている。
【0029】
そして、バスバーユニット本体7aの各挿入固定部7bのリア側には、この挿入固定部7bへ貫通した貫通孔7dを有する脚部7eが設けられている。脚部7eは、挿入固定部7bよりバスバーユニット本体7aの内周側に突出している。貫通孔7dは、脚部7eのリア側から挿入固定部7bのフロント側に亘って貫通し、インシュレータ11の挿入受部11mを挿入固定部7bに挿入させる挿入方向Dに縮径した円錐状、要するにロート状に形成されている。また、貫通孔7dは、脚部7eの厚さ寸法と挿入固定部7bの厚さ寸法とを足した長さ寸法を有し、貫通孔7dの内部容積が、この貫通孔7dへ充填される接着剤7fの充填量より大きくなるように設計されている。そして、図4に示すように、貫通孔7dは、流動性を有する接着剤7fがリア側から挿入固定部7bと挿入受部11mとの間の隙間Cに充填され、挿入固定部7bの側面が接着剤7fに浸かり、この挿入固定部7bと挿入受部11mとを接着固定させる接着剤充填口として機能する。
【0030】
さらに、各脚部7eは、平板状の内周鍔部7gにて周方向に連結され、これら各内周鍔部7gよりリア側に突出している。各内周鍔部7gは、バスバーユニット本体7aの内周面との間で段部7hを形成する。そして、この段部7hのうちの脚部7eの外周側の部分には、バスバーユニット本体7aの内周面を凹状に凹ませた形状の凹状段部7jが形成されている。
【0031】
バスバーユニット本体7aの外周部には、各巻線コイル12の始点部12cおよび終点部12bを位置決め固定するコイル結線部となる鍔状のバスバー端子7kが設けられている。各バスバー端子7kは、径方向に沿って外周側に突出し、巻線コイル12の個数と同様に計12個設けられ、周方向に等間隔に配列されている。各バスバー端子7kの外周縁には、巻線コイル12の始点部12cまたは終点部12bが溶接されて電気的に接続される一対の接続部7mが設けられている。
【0032】
<温度検出構成>
インシュレータ11の外周には、巻線コイル12の温度を検出するサーミスタ13と、このサーミスタ13を巻線コイル12に付勢する板バネ材14とが取り付けられている。これらサーミスタ13および板バネ材14は、インシュレータ11のリア側に位置する外壁部11fの外側に設けられたサーミスタ収容部15に取り付けられている。要するに、サーミスタ収容部15は、各リア側インシュレータ部材51のそれぞれに設けられている。そして、サーミスタ収容部15は、外壁部11fの外側に位置する一対の巻線嵌合溝部11h,11jの間であって、この外壁部11fの外側面の幅方向の中心位置に設けられている。すなわち、サーミスタ収容部15は、巻線コイル12の始点部12cと終点部12bとの間に位置して設けられている。
【0033】
さらに、サーミスタ収容部15は、リア側からサーミスタ13が嵌合される取付凹部15aを備えている。取付凹部15aは、軸方向に沿って設けられ、インシュレータ11の外周側、要するに外壁部11fの外側に突出したボックス形状に形成されている。また、取付凹部15aは、外壁部11fのリア側の端部から巻線巻回部11dの外周面に沿う位置までに亘って設けられている。さらに、取付凹部15aは、図3および図4に示すように、この取付凹部15aのフロント側の底部がステータコア本体3bのリア側の面に接触して、インシュレータ11の倒れを防止する機能を有している。
【0034】
取付凹部15aの外側面には、取付凹部15aを貫通する係止溝15bが設けられている。係止溝15bは、四角形状に形成され、リア側の開口縁が外壁部11fに対して垂直な係止面15cとなっている。また、取付凹部15aの外側面のインシュレータ本体11a側には、断面凹状の収容凹部15dが設けられている。収容凹部15dは、係止溝15bのインシュレータ本体11a側に連続して設けられている。また、収容凹部15dは、この収容凹部15dの係止面15cの反対側に位置する開口縁から幅方向Aに直交する高さ方向のリア側の端部に亘って設けられている。
【0035】
また、サーミスタ収容部15には、取付凹部15aに取り付けたサーミスタ13を巻線コイル12に直接接触させる開口部15eが形成されている。開口部15eは、リア側に貫通し、取付凹部15aの幅寸法より若干小さな幅寸法に形成されている。また、開口部15eは、外壁部11fのリア側の端部から巻線巻回部11dの外周面までを凹状に切り欠いた形状とされている。開口部15eは、幅方向Aの中心位置に軸方向に沿って設けられている。このため、開口部15eは、巻線巻回部11dに巻回された巻線コイル12の幅方向Aの中心位置において、この巻線コイル12の巻線12aの巻線方向である積層方向Bに沿って設けられている。この結果、サーミスタ13は、開口部15eから巻線コイル12の積層方向Bに沿って、この巻線コイル12の内層に位置する複数本の巻線12aに接触するようにサーミスタ収容部15に取り付けられている。
【0036】
そして、開口部15eの幅方向Aの両側部には、取付凹部15aの内側片が突出した係止片部15fが設けられている。係止片部15fは、取付凹部15aに取り付けたサーミスタ13の両側部近傍に位置し、このサーミスタ13の幅方向Aの移動を規制する。
【0037】
サーミスタ13は、図8に示すように、細長断面四角形状のサーミスタ本体13aを備えている。サーミスタ13は、サーミスタ本体13aの長手方向の一端側から一対の導線13bが導出した構成となっている。そして、サーミスタ本体13aの内部には、温度を検出する基点となる検出素子13cが収容されている。検出素子13cは、サーミスタ本体13aの他端面から一端側に所定の間隔を空けた位置に取り付けられている。また、検出素子13cのサーミスタ本体13aの長手方向の一端側には、一対のリード線13dが接続されている。そして、これら一対のリード線13dの端部が一対の導線13bに電気的に接続されている。
【0038】
板バネ材14は、サーミスタ13を巻線コイル12に付勢する付勢部材である。この板バネ材14は、図9(A)および図9(B)に示すように、細長平板状の板バネ体14aを備えている。板バネ体14aは、一端側がL状に屈曲され、他端側が一端側と同じ方向にV状に屈曲された形状とされ、巻線コイル12にサーミスタ13を付勢するための弾性力を有する構成となっている。そして、板バネ体14aの一端側のL状に屈曲した屈曲部14bには、サーミスタ13から突出する導線13aを挿通させる凹状の挿通凹部14cが設けられている。屈曲部14bは、挿通凹部14cにサーミスタ13の導線13bを挿通させ、サーミスタ収容部15に取り付けたサーミスタ13のサーミスタ本体13bの基端側を保持する構成となっている。
【0039】
一方、板バネ体14aの他端側のU状の弾性片部14dは、サーミスタ収容部15の取付凹部15aにサーミスタ13とともに挿入され、このサーミスタ13を係止する。そして、弾性片部14dは、この弾性片部14dの弾性力によって、サーミスタ収容部15に取り付けたサーミスタ13を巻線コイル12側に付勢する構成となっている。さらに、板バネ体14aの長手方向の中間部には、屈曲部14bの屈曲方向の逆側に突出した抜止片14eが設けられている。抜止片14eは、板バネ体14aの一部を切り起こして形成されている。そして、抜止片14eは、サーミスタ13とともに板バネ材14をサーミスタ収容部15の取付凹部15aに嵌合させた際に、このサーミスタ収容部15の係止面15cに係止して、サーミスタ13をサーミスタ収容部15へ抜け止め保持する、いわゆるスナップフィット構成となっている。
【0040】
さらに、図2に示すように、サーミスタ13および板バネ材14は、インシュレータ11の複数のリア側インシュレータ部材51のうちの1つのサーミスタ収容部15のみに1つずつ取り付けられている。サーミスタ13は、複数の巻線コイル12のうちの隣接する1つの巻線コイル12の温度を検出する構成となっている。ここで、サーミスタ13の導線13bの一方の出力側は、図5に示すように、出力コネクタ9Aへ引き回されて外部へ導出されている。また、この導線13bの他方のグランド側は、コネクタ8aを介して回転センサ基板8に電気的に接続されている。このため、サーミスタ13は、導線13bの長さを短くする観点から、この導線13bの引き回しを考慮し、回転センサ基板8のコネクタ8aおよび出力コネクタ9Aのそれぞれに近接するサーミスタ収容部15に取り付けられている。
【0041】
また、サーミスタ13は、板バネ材14とともにサーミスタ収容部15に圧入されて収納されている。そして、サーミスタ13は、サーミスタ収容部15の外周面との間で生じる板バネ材14の弾性力によって巻線コイル12側に押圧され、サーミスタ収容部15の開口部15eから巻線コイル12の内周側に位置する巻線12aに接触している。さらに、サーミスタ13は、巻線コイル12の内層側に位置する複数の巻線12aに接触して固定されている。
【0042】
<製造方法>
次に、上記一実施形態に係るモータ1の製造方法の製造工程について、図14を参照しながら説明する。
【0043】
(インシュレータ組立工程)
まず、ステータコア3aにインシュレータ11を取り付ける。このとき、リア側インシュレータ部材51とフロントインシュレータ部材61とを組み合わせて巻線巻回部11dを1つ形成する(S1)。
【0044】
(巻回工程)
この状態で、この巻線巻回部11dに巻線12aを巻回させて巻線コイル12を装着する(S2)。
【0045】
(ステータ組立工程)
次に、リア側インシュレータ部材51とフロント側インシュレータ部材61とを組み合わせて巻線コイル12を装着しステータ部材31を嵌合させたユニットを計12個準備する。そして、これら計12個のユニットのそれぞれの外壁部11f側を外周側に向けた状態として円弧状に配置する。このとき、隣接するステータ部材31の対向する凹凸面31a同士を嵌合させて円弧状のステータ3とする(S3)。
【0046】
(バスバーユニット組み付け工程)
この後、インシュレータ11のリア側にバスバーユニット7を組み付ける(S4)。このとき、バスバーユニット7の各挿入固定部7bをインシュレータ11の各挿入受部11mに挿入させるとともに、このバスバーユニット7の各係止凸部7cをインシュレータ11の各嵌合溝部11pに嵌合させる。
【0047】
(バスバー固定工程)
次いで、バスバーユニット7の各バスバー端子7kの接続部7mに、インシュレータ11に取り付けられた各巻線コイル12の始点部12cおよび終点部12bを溶接固定して、これら各巻線コイル12の始点部12cおよび終点部12bを所定のバスバー端子7kに電気的に接続する(S5)。
【0048】
(接着工程)
この状態で、バスバーユニット7の各貫通孔7dに所定量の接着剤7fを注入し、この接着剤7fをバスバーユニット7の挿入固定部7bとインシュレータ11の挿入受部11mとの間に形成された隙間Cに充填させて硬化させ、これらバスバーユニット7の挿入固定部7bとインシュレータ11の挿入受部11mとを接着剤7fにて接着固定する(S6)。
【0049】
(基板取付工程)
その後、バスバーユニット7に回転センサ基板8を取り付ける(S7)。
【0050】
(サーミスタ取付工程)
次いで、サーミスタ13の導線13bの基端部に、板バネ材14の挿通凹部14cに挿通させる。そして、このサーミスタ13のサーミスタ本体13aの外側に板バネ材14の板バネ体14aを隣接させた状態とする。この状態で、板バネ材14の弾性片部14d側を先頭にして、これらサーミスタ13および板バネ材14を、回転センサ基板8に近接して位置するサーミスタ収容部15の取付凹部15aに圧入する。このとき、この板バネ材14の抜止片14eがサーミスタ収容部15の係止面15cに係合して、サーミスタ13がサーミスタ収容部15に抜け止め保持される(S8)。
【0051】
サーミスタ収容部15内においては、取付凹部15aの外側面とサーミスタ13との間で板バネ材14の弾性片部14fが押圧されて弾性変形する。そして、この弾性片部14fの弾性力によって、サーミスタ13が巻線コイル12側に押圧され、サーミスタ13がサーミスタ収容部15の開口部15eから巻線コイル12の内周側に位置する複数の巻線12aに直接接触した状態となる。
【0052】
(導線接続工程)
この後、サーミスタ13の導線13bの一方の出力側を、出力コネクタ9Aへ引き回して外部へ導出させるとともに、この導線13bの他方のグランド側を、コネクタ8aを介して回転センサ基板8に電気的に接続させる(S9)。
【0053】
(ケース体組み付け工程)
その後、ステータ3およびインシュレータ11をケース体6に装着する(S10)。
【0054】
(フロントブラケット取付工程)
次いで、このケース体6のフロント側にフロントブラケット4を取り付け、ボルト10aにてフロントブラケット4をケース体6に固定する(S11)。
【0055】
(ロータ組み付け工程)
さらに、リア側からステータ3内にロータ2を挿入する(S12)。
【0056】
(リアブラケット取付工程)
その後、ステータ3のリア側にリアブラケット5を取り付けてから、ボルト10bにてリアブラケット5をケース体6に固定する(S13)。
【0057】
<作用効果>
以上説明したように、上記一実施形態に係るモータ1は、インシュレータ11のリア側にバスバーユニット7を同心状に固定した構成としている。よって、バスバーユニット7をインシュレータ11に強固に固定できるため、モータ1の駆動時に生じ得る振動を適切に抑制できる。
【0058】
特に、インシュレータ11の内周側に複数の挿入受部11mを設け、バスバーユニット7の内周側に複数の挿入固定部7bを設けた構成とし、これら挿入固定部7bを挿入受部11mに挿入させてから接着剤7fにて固定する構成としている。よって、バスバー端子7kと巻線コイル12の始点部12cおよび終点部12bとの接続部7mに掛かる応力を減縮できるから、バスバーユニット7をインシュレータ11に固定する際の応力による接続部7mの破断を防止できる。
【0059】
さらに、インシュレータ11の内径方向に突出させて挿入受部11mを設け、バスバーユニット7の内径方向に突出させて挿入固定部7bを設けた構成としている。このため、巻線コイル12の巻き始め部となる始点部12cおよび引き出し部となる終点部12bのそれぞれをインシュレータ11の外径側へ突出させたり、巻線コイル12の占積率向上の目的から巻線12の軸方向視の形状を略扇状にしたりしても、バスバー端子7kと巻線コイル12の始点部12cおよび終点部12bとの接続部7mと、インシュレータ11の挿入受部11mおよびバスバーユニット7の挿入固定部7bとをレイアウト的に干渉させることなく配置できる。
【0060】
また、バスバーユニット7の挿入固定部7bに貫通孔7dを設け、この貫通孔7dから接着剤7fを流入させて、インシュレータ11の挿入受部11mにバスバーユニット7の挿入固定部7bを接着固定する構成としている。このため、バスバーユニット7をインシュレータ11に組み付けてから、バスバーユニット7の各バスバー端子7kの接続部7mに各巻線コイル12の始点部12cおよび終点部12bを溶接固定した後、貫通孔7dに接着剤7fを塗布してバスバーユニット7をインシュレータ11に固定できる。この結果、例えば接着剤7fを塗布してから、この接着剤7fが硬化する前にバスバーユニット7をインシュレータ11に組み付けた後、巻線コイル12の始点部12cおよび終点部12bをかしめて溶接した場合と比べて流動体である接着剤7fの挙動を予測および制御しやすく、接着面積の不足といった課題の発生を防止しやすい。また、バスバーユニット7をねじ止め等してインシュレータ11に固定する場合に比べ、バスバーユニット7の組み付け工数を少なくでき、モータ1のコストダウンが可能となる。
【0061】
さらに、インシュレータ11の挿入受部11mおよびバスバーユニット7の挿入固定部7bのそれぞれを、ロータ2の一部を覆う位置まで内径側に突出させる、要するに、これら挿入受部11mおよび挿入固定部7bが軸方向視でロータ2と重なるように配置している。この結果、挿入受部11mに挿入固定部7bを挿入させて固定する構成であるため、これら挿入受部11mおよび挿入固定部7bの固定構造をより径方向に大きく確保できる。よって、バスバーユニット7をより強固にインシュレータ11に固定できる。
【0062】
また、これら挿入受部11mおよび挿入固定部7bのそれぞれを、ロータ2の一部を覆う位置まで内径側に突出させた構成としたため、ステータ3のリア側からロータ2を組み付けできない。そこで、ステータ3のフロント側からロータ2を組み付けできるように、モータ1をフロントブラケット4、リアブラケット5およびケース体6の三分割構造としている。この結果、フロントブラケット4以外の構成を変更することなく、モータ1の取付対象に適合するようにブロントブラケット4の構造を適否変更することにより、取付対象に適合したモータ1にできる。よって、例えば、図12に示すサイドマウント型や、図13に示すセンタマウント型の電動式自動二輪車用駆動モータであっても、フロントブラケット4を設計し直すだけで対応できるので、モータ1の汎用性を大幅に向上できる。
【0063】
さらに、これら挿入受部11mおよび挿入固定部7bのそれぞれをインシュレータ11およびバスバーユニット7の周方向に向けて等間隔に複数配列させている。このため、これら挿入受部11mおよび挿入固定部7bにより、バスバーユニット7を内周側の周方向に亘る複数個所でインシュレータ11に固定できるから、バスバーユニット7をインシュレータ11に対して周方向に亘って強固に固定できる。また、インシュレータ11の挿入受部11mを凹状とし、この挿入受部11mにバスバーユニット7の挿入固定部7bを挿入させる構成としている。このため、バスバーユニット7をインシュレータ11に固定する構成を簡略にでき、バスバーユニット7をインシュレータ11に組み付ける作業を簡略化できる。よって、バスバーユニット7の組付け性を向上できる。
【0064】
また、バスバーユニット7の貫通孔7dを挿入方向Dに縮径したロート状に形成したことにより、合成樹脂製のバスバーユニット7を射出成形等して製造する際の型抜き性を向上できる。そして、貫通孔7dの接着剤7fを塗布する入口側の部分が広くなるため、接着剤7fを塗布するディスペンサによる、バスバーユニット7のインシュレータ11への固定を適切にできる。
【0065】
さらに、バスバーユニット7のバスバーユニット本体7aの軸方向の厚さを挿入固定部7bより大きくしたことにより、挿入固定部7bの上側の脚部7eを上側に突出できるため、貫通孔7dの内部容積を確保できる。そして、接着剤7fの塗布量よりも貫通孔7dの内部容積を大きく設定したことにより、貫通孔7dからの接着剤7fの溢れ出しを防止できる。
【0066】
また、上記一実施形態に係るモータ1は、インシュレータ11の外壁部11fの外側の幅方向Aの中心位置にサーミスタ収容部15を設け、このサーミスタ収容部15に巻線コイル12の積層方向Bに沿った開口部15eを形成している。そして、このサーミスタ収容部15にサーミスタ13を取り付けることにより、巻線コイル12の幅方向Bの中心位置であって、この巻線コイル12の積層方向Bの内層側の複数本の巻線12aにサーミスタ13が直接接触する構成としている。
【0067】
この結果、モータ1の駆動時等に最も熱が籠りやすく高温箇所となりやすい巻線コイル12の積層方向Bの内周側の巻線12aの温度を、巻線コイル12の外側からサーミスタ13にて検出でき、巻線コイル12の温度を精度よく検出できる。よって、モータ1が高温になることで生じ得るインシュレータ11の溶解や巻線コイル12の被膜剥離等に基づく誤作動や焼損故障等の発生を適切に抑制でき、モータ1の破損を防止できる。
【0068】
要するに、インシュレータ11の巻線巻回部12に巻線12aを巻回させる際にサーミスタ13を巻き込んで、巻線コイル12内にサーミスタ13を配置したり、巻線コイル12の表面にサーミスタ13を貼り付けたりした従来のモータに対し、モータ1はサーミスタ収容部15をインシュレータ11の外周に突出させて設けた構成としている。このため、巻線コイル12の巻線12aにサーミスタ13を巻き込む等する必要がなくなる等するため、モータ1の巻線コイル12周辺部の径方向の大きさを小さくでき、モータ1の径方向の小型化、要するにモータ1の薄型化が可能となる。そして、インシュレータ11の巻線12aを巻回させるスペースを減少させることなく、巻線コイル12の温度を正確に検出できる。
【0069】
また、インシュレータ11の外壁部11fの外側面からサーミスタ収容部15を突出させた構成とし、このサーミスタ収容部15にサーミスタ13を嵌合させて固定する構成としている。このため、サーミスタ13をサーミスタ収容部15に取り付けて固定する際に生じ得るステータ3やインシュレータ11等による物理的な干渉を少なくできる。よって、ステータコア3aの組み付け性を低下させることなく、サーミスタ13の組み付け作業を容易にできる。また、インシュレータ11の外壁部11f自体の径方向の厚さを厚くすることなく、この外壁部11fの外側にサーミスタ収容部15を突出させた構成としている。このため、インシュレータ11の外壁部11fを薄くできるから、合成樹脂製のインシュレータ11であっても、成型時の変形を抑制できる。よって、インシュレータ11を精度よく成形できるとともに、ステータコア3aの組み付け性を低下させることなく、サーミスタ13の組み付け性を向上できる。
【0070】
さらに、インシュレータ11の計12個の巻線巻回部11dそれぞれの外周側にサーミスタ収容部15をそれぞれ設けた構成としている。この結果、周方向に12分割された各リア側インシュレータ部材51のそれぞれにサーミスタ収容部15が設けられた構成となり、これら各リア側インシュレータ部材15を同一形状にできる。よって、インシュレータ11が周方向に12分割された構成であっても、インシュレータ11を構成するリア側インシュレータ部材51を共通化できるため、インシュレータ11の製造性を向上できる。
【0071】
また、インシュレータ11の巻線嵌合溝部11h,11jの間にサーミスタ収容部15を設けた構成としている。このため、インシュレータ11の外壁部11fのうちの脆弱な箇所となりやすい幅方向Aの中心位置、すなわち巻線嵌合溝部11h,11j間の部分をサーミスタ収容部15にて補強できる。よって、インシュレータ11の外壁部11f、強いてはインシュレータ11自体の剛性を向上できる。このため、インシュレータ11の巻線巻回部11dに巻線12aを巻回させる際にインシュレータ11の外壁部11fに応力が掛かった場合に生じ得るインシュレータ11の歪みを抑制できる。
【0072】
さらに、巻線12aを平角線とし、この巻線12aの一側面を巻線巻回部11dに接触させて巻回させてから、この巻回した巻線12aの他側面に巻線12aの一側面を接触させながら積層させた整列巻きで巻線コイル12を形成した構成としている。この結果、巻線12aを丸棒線とした場合に比べ、巻線コイル12の内層側に位置する複数本の巻線12aにサーミスタ13を接触できるともに、巻線12aとサーミスタ13との間の接触面積を大きくできる。よって、巻線コイル12の温度をサーミスタ13にて正確に検出できる。
【0073】
また、インシュレータ11のサーミスタ収容部15へ板バネ材14とともにサーミスタ13を圧入して収納する構成とし、この板バネ材14の弾性力にてサーミスタ13を巻線コイル12に押圧して、サーミスタ収容部15の開口部15eから巻線コイル12の内層側の巻線12aにサーミスタ13を付勢して接触させる構成としている。この結果、サーミスタ13と巻線コイル12との間に空間が生じなくなり、外部から衝撃を受けたりモータ1の駆動にて振動が生じたりしても、これら衝撃や振動を板バネ材14の弾性力にて吸収できる。このため、サーミスタ13と巻線コイル12との間に空間が生じたり、サーミスタ13がずれたりすることを板バネ材14の弾性力にて防止できる。よって、サーミスタ13による巻線コイル12の温度検出を適切にできる。
【0074】
さらに、サーミスタ13の導線13bの基端部を、板バネ材14の挿通凹部14cに挿通させる構成とし、このサーミスタ13を板バネ材14とともにサーミスタ収容部15の取付凹部15aに圧入した際に、板バネ材14の抜止片14eがサーミスタ収容部15の係止面15cに係合するスナップフィット構造としている。この結果、板バネ材14によってサーミスタ13がサーミスタ収容部15に抜け止め保持される。よって、例えば接着剤を塗布したり別部材を組み付けたりする等の、サーミスタ13をサーミスタ収容部15へ抜け止め保持するための別工程が不要になる。このため、インシュレータ11へサーミスタ13を容易に取り付けでき、サーミスタ13の組み付け性を大幅に向上できる。
【0075】
特に、サーミスタ13をインシュレータ11のサーミスタ収容部15に抜け止め保持し、このサーミスタ収容部15に固定したサーミスタ13を巻線コイル12に付勢して接触させる部材として1つの板バネ材14を用いた構成としている。このため、サーミスタ13を巻線コイル12へ付勢する構成、およびサーミスタ13をサーミスタ収容部15に抜け止め保持する構成を、板バネ材14という比較的簡単な1つの部材で適切に実現できる。
【0076】
以上により、本発明に係るモータ1は、SDGsの目標である、「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」や、「目標12:作る責任、使う責任」等の目標の解決に寄与している。
【0077】
(その他)
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0078】
例えば、上記一実施形態に係るモータ1は、図12に示すサイドマウント型の電動式自動二輪車や、図13に示すセンタマウント型の電動式自動二輪車の駆動用モータとして用いるほか、ホイール内で駆動するインホール型の電動式自動二輪車や、小型の電動式自動車など、駆動力が適合する様々な電動式装置の動力として用いることもできる。
【0079】
また、上記一実施形態においては、インシュレータ11のサーミスタ取付部15に板バネ材14を用いてサーミスタ13を抜け止め保持して巻線コイル12に押し付ける構成のモータ1としたが、例えば、接着剤を用いてサーミスタ13をサーミスタ取付部15に固定させたり、サーミスタ13をサーミスタ取付部15にねじ止め固定したりする構成とすることもできる。
【0080】
さらに、共振によるバスバーユニット7の変形を抑制できる構成であれば、接着剤7fを用いずにボルトや圧入等を利用してバスバーユニット7をインシュレータ11に固定する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0081】
1 モータ
2 ロータ
2a 回転軸
3 ステータ
3a ステータコア
3b ステータコア本体
3c ティース
4 フロントブラケット
4a 挿通孔
5 リアブラケット
6 ケース体
7 バスバーユニット
7a バスバーユニット本体
7b 挿入固定部(固定部)
7c 係止凸部
7d 貫通孔
7e 脚部
7f 接着剤
7g 内周鍔部
7h 段部
7j 凹状段部
7k バスバー端子
7m 接続部
8 回転センサ基板
8a コネクタ
9A 出力コネクタ
9B ターミナルホルダ
9D ターミナル
10a,10b ボルト
11 インシュレータ
11a インシュレータ本体
11b 内周フランジ
11c 外周フランジ
11d 巻線巻回部
11e ステータコア受部
11f 外壁部
11h,11j 巻線嵌合溝部
11k 内壁部
11m 挿入受部(受部)
11n 嵌合段部
11p 嵌合溝部
12 巻線コイル
12a 巻線
12b 終点部
12c 始点部
13 サーミスタ(温度検出センサ)
13a サーミスタ本体
13b 導線
13c 検出素子
13d リード線
14 板バネ材(付勢部材)
14a 板バネ体
14b 屈曲部
14c 挿通凹部
14d 弾性片部
14e 抜止片
15 サーミスタ収容部(収容部)
15a 取付凹部
15b 係止溝
15c 係止面
15d 収容凹部
15e 開口部
15f 係止片部
31 ステータ部材
31a 凹凸面
51 リア側インシュレータ部材
61 フロント側インシュレータ部材
A 幅方向
B 積層方向
C 隙間
D 挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14