(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086182
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240620BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20240620BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240620BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240620BHJP
A61K 8/362 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/98
A61K8/36
A61K8/365
A61K8/362
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201184
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】八木 政幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 祐伽
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AB032
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC422
4C083AD091
4C083AD092
4C083CC02
4C083CC03
4C083DD21
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE11
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】本発明は、新たなローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤は、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び/又は(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーを有効成分として含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び/又は(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーを有効成分として含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤。
【請求項2】
前記ローヤルゼリーが、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の浸透促進剤。
【請求項3】
前記飽和脂肪酸が、10-ヒドロキシデカン酸を含む、請求項2に記載の浸透促進剤。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸が、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、デセン二酸、及びセバシン酸からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項2に記載の浸透促進剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の浸透促進剤とローヤルゼリーとを含む、化粧品組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の浸透促進剤を、ローヤルゼリーを含む化粧品組成物に配合させることを含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進する方法。
【請求項7】
請求項5に記載の化粧品組成物を皮膚に塗布することを含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ローヤルゼリーは、皮膚へ塗布することで、皮膚老化防止効果や、潤いとハリのある肌に導くといった美容効果などを発揮することが知られている(例えば、特許文献1)。これらの美容効果は、特に10-ヒドロキシ-2-デセン酸などのローヤルゼリーに特有な脂肪酸によるものであると考えられている。したがって、ローヤルゼリーの美容効果を十分に発揮させるためには、ローヤルゼリー、特にローヤルゼリーに特有の脂肪酸の皮膚への浸透性が重要である。特許文献2は、皮膚活性化成分としてローヤルゼリーエキスを含む皮膚外用剤が開示されており、該皮膚外用剤は皮膚上で水分を長時間安定に保持されることで、皮膚活性成分の皮膚への浸透性が高まると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-204418号公報
【特許文献2】特開2015-007123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、化粧品添加剤として用いられる(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーが、ローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進することを新たに見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、例えば以下の発明に関する。
[1](アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び/又は(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーを有効成分として含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤。
[2]上記ローヤルゼリーが、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含む、[1]の浸透促進剤。
[3]上記飽和脂肪酸が、10-ヒドロキシデカン酸を含む、[2]の浸透促進剤。
[4]上記不飽和脂肪酸が、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、デセン二酸、及びセバシン酸からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[2]の浸透促進剤。
[5][1]~[4]のいずれかの浸透促進剤とローヤルゼリーとを含む、化粧品組成物。
[6][1]~[4]のいずれかの浸透促進剤を、ローヤルゼリーを含む化粧品組成物に配合させることを含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進する方法。
[7][5]の化粧品組成物を皮膚に塗布することを含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進させることで、ローヤルゼリーを含む化粧品組成物の美容効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、10-ヒドロキシ-2-デセン酸の皮膚への浸透性を示す、イメージングMSの結果を示す。
【
図2】
図2は、10-ヒドロキシデカン酸の皮膚への浸透性を示す、イメージングMSの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明のローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤は、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び/又は(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーを有効成分として含む。
【0011】
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの単純エステルからなるモノマー1種以上とアクリル酸アルキルの共重合体をショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したものである。ここでアクリル酸アルキルは、具体的には、炭素数10~30のアルキルを有するアクリル酸アルキルである。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとしては、市販の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(例えば、ペミュレン(商標)TR-1)を使用してもよい。
【0012】
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーは、アクリロイルジメチルタウリンのアンモニウム塩とベヘネス-25のメタクリル酸エステルとの共重合体である。ベヘネス-25は、ベヘニルアルコールのポリエチレングリコールエーテルである。
【0013】
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーは、増粘剤や乳化安定剤として知られている化粧品成分であるが、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進効果はこれまで知られていなかった。
【0014】
ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進とは、ローヤルゼリーに含まれる成分特に、美容効果のある有効成分、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等の成分が、浸透促進剤を含まない場合に比べて、皮膚の角層へより深くまで浸透することを意味する。ここで、飽和脂肪酸としては10-ヒドロキシデカン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、3,10-ジヒドロキシデカン酸、カプリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては10-ヒドロキシ-2-デセン酸、デセン二酸、及びセバシン酸、trans-2-デセン酸等が挙げられ、好ましくは、飽和脂肪酸としては10-ヒドロキシデカン酸、不飽和脂肪酸としては10-ヒドロキシ-2-デセン酸、デセン二酸、及びセバシン酸である。
【0015】
ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進は、ローヤルゼリーに含まれる成分、特に、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等の成分を例えば実施例に示す方法にて解析することで評価することができる。具体的に、ローヤルゼリーと浸透促進剤を含む組成物を皮膚に塗布して、所定の時間後(例えば、30分後、1時間後、2時間後)に、テープストリッピング試験により角層サンプルを回収し、テープに付着したローヤルゼリーを検出する方法が挙げられる。
【0016】
角層に浸透したローヤルゼリー成分を検出する方法としては特に限定されず、例えば、本願の実施例に記載のように質量分析計を用いたイメージングによって検出してもよい。
【0017】
(ローヤルゼリー)
ローヤルゼリーは、蜜蜂のうち日齢3~12日の働き蜂が下咽頭腺及び大腮腺から分泌する分泌物を混合して作る乳白色のゼリー状物質である。ローヤルゼリー中の主な生理活性成分としては、例えば、ローヤルゼリーに特有な飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸等の有機酸類をはじめ、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、脂質、糖類、ビタミンB類、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸等のビタミン類、各種ミネラル類等が挙げられる。
【0018】
本明細書においてローヤルゼリーは、例えば生ローヤルゼリーであってもよく、生ローヤルゼリーに処理を施したローヤルゼリー処理物であってもよい。
【0019】
生ローヤルゼリーは、例えば、常法に従い養蜂産品として入手することができる。ローヤルゼリーの産地は、制限されず、日本、中国、ブラジル、ヨーロッパ諸国、オセアニア諸国、アメリカ等のいずれであってもよい。生ローヤルゼリーを採取するために利用される蜜蜂の種類は限定されない。生ローヤルゼリーは、採取したローヤルゼリーを凍結保存した凍結ローヤルゼリーを含む。
【0020】
ローヤルゼリー処理物としては、生ローヤルゼリーを濃縮又は希釈したローヤルゼリー濃縮物又は希釈物、生ローヤルゼリーを乾燥させて粉末化したローヤルゼリー粉末、ローヤルゼリーを水やエタノール等の溶媒で抽出したローヤルゼリーエキス(ローヤルゼリー抽出物)、ローヤルゼリーをタンパク質分解酵素で処理した酵素分解ローヤルゼリー等が挙げられる。ローヤルゼリー処理物は複数の処理が施されたものであってもよい。例えば、ローヤルゼリーは酵素分解及び粉末化された酵素分解ローヤルゼリー粉末であってもよい。
【0021】
ローヤルゼリー濃縮物は、例えば、生ローヤルゼリーから水分を除去することにより得ることができる。ローヤルゼリー希釈物は、例えば、生ローヤルゼリーに水分を添加することにより得ることができる。
【0022】
ローヤルゼリー粉末は、例えば、凍結乾燥及び噴霧乾燥等の本技術分野における公知の方法により生ローヤルゼリーを粉末化することにより得ることができる。乾燥方法としては、通風乾燥や天日乾燥等の自然乾燥、電気等で加熱して乾燥させる強制乾燥、凍結乾燥等、一般食品加工で採用される公知のいずれの方法を使用することができる。好ましくは、凍結乾燥である。なお、乾燥時間は特に制限されず、通風や天日乾燥等の自然乾燥の場合は、約3日程度、電気等で加熱して強制乾燥させる場合は、50℃程度で1~3日程度を挙げることができる。通常、水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下になるように乾燥させることが好ましい。なお、通風や天日乾燥等の自然乾燥の場合のように水分含量を10質量%以下にすることが難しい場合は、その後、凍結乾燥機にかけてさらに水分を下げる処理を行ってもよい。また、凍結乾燥又は噴霧乾燥後に粉砕機(例えば、ピンミル、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル)により粉砕してローヤルゼリー粉末を得てもよい。
【0023】
ローヤルゼリーエキス(ローヤルゼリー抽出物)は、例えば、水、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン等の溶媒を抽出溶媒として生ローヤルゼリー又はローヤルゼリー粉末、酵素分解ローヤルゼリーを抽出することで得ることができる。抽出時間は、原料として用いられるローヤルゼリーの形態、溶媒の種類及び量、抽出の際の温度及び攪拌条件等に応じて適宜設定することができる。抽出後、ろ過、遠心分離等により固形分を除去してもよい。また、抽出された抽出液をそのまま用いてもよいし、当該抽出液から溶媒を除去して、濃縮液又は乾燥粉末として用いてもよい。ローヤルゼリー抽出物としては、水で抽出したローヤルゼリー水抽出物であってよく、エタノールで抽出したローヤルゼリーエタノール抽出物であってよい。
【0024】
酵素分解ローヤルゼリーは、例えば、生ローヤルゼリー又はローヤルゼリー粉末をタンパク質分解酵素で処理することで得ることができる。タンパク質分解酵素としては、例えば、エンドペプチダーゼ作用を有する酵素、エキソペプチダーゼ作用を有する酵素、エンドペプチダーゼ作用とエキソペプチダーゼ作用の両方を有する酵素からなる群より選択されることが好ましい。特に、エンドペプチダーゼ作用とエキソペプチダーゼ作用の両方を同時に有するペプチダーゼであることが好ましい。かかるペプチダーゼを使用した酵素処理によれば、一段階酵素処理でタンパク質を低分子化することができるので、操作が簡便であるとともに、ローヤルゼリーに含まれる有用成分の生理活性の消失及び大幅な低減を防止することができるという利点がある。
【0025】
エンドペプチダーゼ活性を有する酵素の好ましい例としては、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)産生ペプチダーゼ(商品名:オリエンターゼ22BF、ヌクレイシン)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)産生ペプチダーゼ(商品名:アルカラーゼ)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼS)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)産生ペプチダーゼ(商品名:ニュートラーゼ)、バチルス属産生ペプチダーゼ(商品名:プロタメックス)を挙げることができる。
【0026】
エキソペプチダーゼ活性を有する酵素の好ましい例としては、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:ウマミザイムG、Promod 192P、Promod 194P、スミチームFLAP)、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)産生ペプチダーゼ(商品名:Sternzyme B15024)、アスペルギルス属産生ペプチダーゼ(商品名:コクラーゼP)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:ペプチダーゼR)を挙げることができる。
【0027】
エキソペプチダーゼ活性とエンドペプチダーゼ活性の両方を有する酵素の好ましい例としては、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillusoryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:スミチームLP-G、プロテアックス、フレーバーザイム(Flavourzyme)、プロテアーゼA)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)産生ペプチダーゼ(商品名:アクチナーゼAS)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼP)を挙げることができる。
【0028】
生ローヤルゼリー又はローヤルゼリー粉末をタンパク質分解酵素で処理する際の反応条件(タンパク質分解酵素の使用量、反応時の温度、pH、反応時間等)は、使用するタンパク質分解酵素の種類等に応じて、適宜設定すればよい。
【0029】
ローヤルゼリーとしては、酵素処理ローヤルゼリー又はローヤルゼリーエキスが好ましく、特に酵素処理ローヤルゼリーが好ましい。酵素処理ローヤルゼリーとしては、エキソペプチダーゼ活性とエンドペプチダーゼ活性の両方を有する酵素で処理して得られたものであることが好ましい。
【0030】
ローヤルゼリーは、市販されているものを用いてもよい。ローヤルゼリーの具体例としては、例えば、ローヤルゼリーFD末(株式会社中原)、ローヤルゼリーエキスSF(松浦薬業株式会社)、脱蛋白ローヤルゼリー粉末F(丸善製薬株式会社)、脱蛋白ローヤルゼリーエキス(アピ株式会社)等が挙げられる。
【0031】
ローヤルゼリーは、例えば、皮膚老化防止効果、潤いやハリのある皮膚に導くといった美容効果を有するものであれば、特に限定されないが、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含むことが好ましく、飽和脂肪酸が10-ヒドロキシ-2-デセン酸を含むことが好ましく、不飽和脂肪酸が、10-ヒドロキシデカン酸、デセン二酸、及びセバシン酸からなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。本発明の浸透促進剤は、ローヤルゼリーを含有する皮膚外用剤、化粧品組成物等に用いることができる。
【0032】
(化粧品組成物)
本発明の化粧品組成物は、本発明のローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤、及び、ローヤルゼリーを含む。
【0033】
化粧品組成物における(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの含有量は、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進作用を発揮できる量(有効量)であればよく、例えば、化粧品組成物の全量に対して、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上であってよく、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下であってよい。
【0034】
化粧品組成物における(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーの含有量は、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進作用を発揮できる量(有効量)であればよく、例えば、化粧品組成物の全量に対して、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上であってよく、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下であってよい。化粧品組成物が(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー及び(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーの両方を含む場合は、その合計含有量が上記含有量の範囲内であればよい。
【0035】
化粧品組成物におけるローヤルゼリーの含有量は、ローヤルゼリーが美容効果を発揮できる範囲であれば、特に限定されず、例えば、化粧品組成物の全量に対して0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、15質量%以上であってよく、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下であってよい。
【0036】
化粧品組成物としては、固体、液体、ペースト等のいずれの形態であってもよい。化粧品は薬用化粧品(すなわち、医薬部外品)であってよい。化粧品組成物には、動物(特にヒト)の皮膚、粘膜、体毛、頭髪、頭皮、爪、歯、顔皮、口唇等の部位に適用され得る、あらゆる化粧品組成物が含まれる。このうち、ローヤルゼリーの浸透促進の観点から、全身の皮膚、例えば顔、頭皮、口唇等に適用される化粧品組成物であることが好ましい。
【0037】
化粧品組成物は、本発明の浸透促進剤及びローヤルゼリーの他、化粧品として許容される成分を含んでいてもよい。化粧品として許容される成分としては、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤を挙げることができる。
【0038】
化粧品組成物の剤形は、例えば、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油2層系、水-油-粉末3層系等であってよい。化粧品としては、例えば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク、ミスト、UV予防化粧品等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、イライナー、マスカラ等のメークアップ化粧品、洗顔料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、へアートリートメント、整髪料、へアートニック剤、ヘアミスト、ヘアフォーム、ヘアリキッド、ヘアジェル、ヘアスプレー、育毛剤、制汗剤、入浴剤、マウスリンス、口腔化粧品、歯磨剤、ハンドクリーム、ハンドソープ等であってよい。
【0039】
上記化粧品組成物の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、化粧品の製造工程における中間製品又は最終製品に、上記浸透促進剤及びローヤルゼリーを混合等して、上記の目的に用いられる化粧品組成物を得ることができる。
【0040】
(ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進方法)
一実施形態のローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進する方法は、本発明の浸透促進剤を、ローヤルゼリーを含む化粧品組成物に配合させることを含む。本発明の浸透促進剤を、ローヤルゼリーを含む化粧品組成物に配合させることにより、得られた化粧品組成物を皮膚に塗布する際には、本発明の浸透促進剤の存在により、本発明の浸透促進剤を含まない化粧品組成物よりも、化粧品組成物に含まれるローヤルゼリーの皮膚への浸透が促進される。
【0041】
他の実施形態のローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進する方法は、本発明の化粧品組成物を皮膚に塗布することを含む。本発明の化粧品組成物を皮膚に塗布することにより、本発明の浸透促進剤の存在により、本発明の浸透促進剤を含まない化粧品組成物よりも、化粧品組成物に含まれるローヤルゼリーの皮膚への浸透が促進される。
【実施例0042】
以下、本願を具体的に説明するために、実施例を以下に示す。なお、本願は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(酵素処理ローヤルゼリーエキスの調製)
酵素処理ローヤルゼリーエキスは、生ローヤルゼリーをWO2020/196065 A1に記載の方法に従って調製した。具体的には、生ローヤルゼリー474gにイオン交換水400mlを加えて均一になるまで攪拌してローヤルゼリー希釈液を調製した。2N NaOH水溶液を加えてローヤルゼリー希釈液のpHを7.8に調整した。次に、エンドペプチダーゼ作用とエキソペプチダーゼ作用の両方を有するプロテアックス(天野エンザイム株式会社)4.75gをイオン交換水20mLに溶かした溶液をローヤルゼリー希釈液に加え、さらにイオン交換水を全量が980gになるように加えた。反応混合物をプロペラで撹拌しながら50℃(恒温水槽)で2時間反応させて、加水分解を行った。恒温水槽の温度を80℃に上げて15分間攪拌しプロテアーゼを失活させた。得られた酵素処理ローヤルゼリー溶液を粒子孔径3μmにてろ過を行い、酵素処理ローヤルゼリー溶液を得た。酵素処理ローヤルゼリー溶液の濃度が2.5重量%となるよう、ブチレングリコール、ペチレングリコール、フェノキシエタノール、精製水を添加し、酵素処理ローヤルゼリーエキスを得た。
【0044】
(処方例1の化粧品組成物の調製)
酵素処理ローヤルゼリーエキス、浸透促進剤としての(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び表1に記載の他の原料を所定の配合で混和し、処方例1の酵素処理ローヤルゼリーエキスを含む化粧品組成物を調製した。得られた処方例1の組成は表1に示す。
【0045】
【0046】
(処方例2の化粧品組成物の調製)
酵素処理ローヤルゼリーエキス、浸透促進剤としての(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、及び表2に記載の他の原料を所定の配合で混和し、ホモジナイザーを用いて3000rpm、10分間攪拌して処方例2の化粧品組成物を調製した。得られた処方例2の組成は表2に示す。
【0047】
【0048】
(比較例の化粧品組成物の調製)
酵素処理ローヤルゼリーエキス及び表3に記載の他の原料を所定の配合で混和し、比較例の化粧品組成物を調製した。得られた比較例の組成は表3に示す。
【0049】
【0050】
(皮膚浸透試験)
処方例1、処方例2及び比較例の化粧品組成物の皮膚浸透性を以下の方法にて評価した。まず、テープストリッピング試験にてサンプルを作製した。1名の志願者の前腕部を洗浄し、15分室温で放置した。処方例1、処方例2及び比較例の化粧品組成物を50mg/cm2の量で前腕部の6.25cm2の正方形皮膚に塗布し、2時間静置した。塗布部を洗浄し、15分放置した。その後、塗布した皮膚部に直径2cmの円形テープ(D-Squame sampling discs (CUDERM))を貼り、1分間加圧した後、円形テープを剥がし、剥がした円形テープの円の中心部を5mm幅でカットし、イメージング質量分析(イメージングMS)サンプルとした。同様に円形テープを塗布した皮膚部に貼って剥がすことを更に9回繰り返し、円形テープの円の中心部を5mm幅でカットした合計10個のイメージングMS用サンプルを得た。被検化粧品組成物を塗布前の皮膚も対照として同じように10個のサンプルを作製した。
【0051】
イメージングMSは、DESI Xevo G2 XS QTof (Waters)を用いて行った。ローヤルゼリーに含まれる10-ヒドロキシ-2-デセン酸、及び、10-ヒドロキシデカン酸は、m/z 185.1172、m/z 187.1328イオンを検出することで、各サンプルにおける付着量を定量した。
【0052】
図1及び
図2は、それぞれ10-ヒドロキシ-2-デセン酸、及び10-ヒドロキシデカン酸、の皮膚への浸透性を示すイメージングMSの結果を示す。
図1及び
図2から、対象及び比較例の化粧品組成物において、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、及び10-ヒドロキシデカン酸の皮膚への浸透が認められなかったのに対して、処方例1の化粧品組成物において、6枚目のテープまで10-ヒドロキシ-2-デセン酸及び10-ヒドロキシデカン酸が検出されており、また、処方例2の化粧品組成物においても、5枚目のテープまで10-ヒドロキシ-2-デセン酸及び10-ヒドロキシデカン酸が検出された。このことから、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー又は、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーを添加することで、ローヤルゼリーの皮膚への浸透を促進できることを判明した。
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び/又は(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーを有効成分として含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤。
ローヤルゼリーエキス(ローヤルゼリー抽出物)は、例えば、水、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン等の溶媒を抽出溶媒として生ローヤルゼリー又はローヤルゼリー粉末、酵素処理ローヤルゼリーを抽出することで得ることができる。抽出時間は、原料として用いられるローヤルゼリーの形態、溶媒の種類及び量、抽出の際の温度及び攪拌条件等に応じて適宜設定することができる。抽出後、ろ過、遠心分離等により固形分を除去してもよい。また、抽出された抽出液をそのまま用いてもよいし、当該抽出液から溶媒を除去して、濃縮液又は乾燥粉末として用いてもよい。ローヤルゼリー抽出物としては、水で抽出したローヤルゼリー水抽出物であってよく、エタノールで抽出したローヤルゼリーエタノール抽出物であってよい。
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及び/又は(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーを有効成分として含む、ローヤルゼリーの皮膚への浸透促進剤。